JP2010270294A - 接着性に優れたポリエステル樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】固有粘度が0.08〜0.25dl/gの範囲の第1の芳香族ポリエステル樹脂100重量部と、固有粘度が0.5〜2.0dl/gの範囲の第2の芳香族ポリエステル樹脂を5〜300重量部と、を加熱混合して生成され、固有粘度が0.08〜0.35dl/gの範囲の接着性に優れたポリエステル樹脂組成物であり、また、第1の芳香族ポリエステル樹脂及び/又は第2の芳香族ポリエステル樹脂に、リサイクル材料を用いることも可能である。
【選択図】図1
Description
また、その一方で、環境保全の見地からこれらの使用後のペットボトルを再利用する処理技術であるリサイクル法についての開発研究が鋭意多岐に亘って行われている。このリサイクル法は、排出物を粉砕して溶融コンパウンドにして樹脂ペレットとして回収し、射出成形品などに再利用する物理的リサイクル法と、化学的処理を加えるケミカルリサイクル法に大別される。物理的リサイクル法は、リサイクルにかかるエネルギー消費などは、ケミカルリサイクル法よりも有利であるが、回収時に混入する異物の選別及び除去にコストを要し、また、成形品の市場が低付加価値品に制約されるという課題を抱えている。
一方、ケミカルリサイクル法では、この方法の代表例として、粉砕した使用後のペットボトルを解重合して得られるモノマーからペットボトルの原料であるテレフタル酸又はテレフタル酸ジメチルを生成し、使用後のペットボトルから再びペットボトルや繊維を製造することが挙げられる。この場合、前述の異物に関する対策は容易であるが、解重合、解重合生成物からモノマー生成分離などに大量のエネルギーを消費するという大きな欠点を有している。このような課題を解決するためにペットボトルなどの廃棄物を再利用する技術については様々な検討がなされている。
この特許文献1に開示された発明において、ポリエステル系樹脂組成物の製造方法は、ポリエステル系樹脂と多価アルコールを250℃以上320℃以下の範囲の温度で混練する工程と、ポリエステル系樹脂と多価アルコールにポリスチレン系樹脂を加えて250℃以上320℃以下の範囲の温度で混練する工程とを有するものである。
このポリエステル系樹脂組成物では、ポリエステル系樹脂と多価アルコールを加熱下で混練して、ポリエステル系樹脂のエステル基に多価アルコールの水酸基を反応させてポリエステル系樹脂の主鎖を切断して分子量を低下させることにより、生成されるポリエステル系樹脂組成物の溶融時の高流動性を可能にしている。また、多価アルコールがポリエステル系樹脂の主鎖に結合して分岐構造を与えることにより結晶性を低下させるので、結晶化に伴う白濁を防止し、透明性を保持することができる。さらに、ポリスチレン系樹脂を添加して、ポリエステル系樹脂中にポリスチレン系樹脂を微細分散させることによって、低分子量のポリエステル系樹脂に強度を補強し靭性を付与することを可能にしている。また、ポリエステル系樹脂には、バージン樹脂以外にも粉砕したペットボトルなどの廃棄物を用いることができる。
この特許文献2に開示された発明は、脂環族ジアルコールから誘導される成分単位及び/又は脂環族ジカルボン酸から誘導される成分単位を有する未変性芳香族ポリエステルに、エチレン性不飽和カルボン酸化合物が0.1〜50重量%の量で均一にグラフト重合し、ガラス転移温度が20〜150℃の範囲にある変性ポリエステルからなるものである。また、この変性ポリエステルからなる接着剤成分に熱可塑性ポリエステルを含有させることもできる。
接着剤成分にポリエチレンテレフタレートや好ましくは変性ポリエステルと親和性のある熱可塑性ポリエステルを含有させても、接着性が良好である。しかし、実施例、例えば実施例17〜19および比較例1に見られるように、未変性ポリエステルと同種の熱可塑性ポリエステルを混合しても、熱可塑性ポリエステルの配合により剥離強度は低下しており、改善することは示唆されていない。
この特許文献3に開示された発明は、エチレンテレフタレート単位を主たる繰返し単位とする固有粘度1.0以上のポリエステルチップに、このポリエステルチップよりも固有粘度が0.2以上低いポリエステルチップを0.5〜10.0重量%混合して溶融紡糸するものである。
このように、高分子量ポリマー中に低分子量ポリマーを少量混合すると、高分子成分中に低分子成分が分散した状態で溶融紡糸されて、低分子ポリマーの分散によって伸長粘度が低めとなり、曳糸性を改善することができる。しかも、混合後の平均分子量を想定して、ポリエステルチップの固有粘度や低高分子ポリマーの添加量を調整し、製造される繊維の固有粘度が0.85以上になるようにしているので、高強度のポリエステル繊維を得ることが可能となる。
この特許文献4に開示された発明は、固有粘度が0.7以下であるポリブチレンテレフタレートを1〜99量部と、固有粘度が1.0以上であるポリブチレンテレフタレートを99〜1量部とをブレンドしたものである。
このように高分子量のポリブチレンテレフタレートと低分子量のポリブチレンテレフタレートをブレンドすると、実質上の流動性を改善することをできる。したがって、通常、低分子化させることにより流動性が確保できるが、一方で、低分子量化に伴って増加する末端カルボン酸濃度の作用による加水分解性を防止することが困難であったが、この方法によると、末端カルボン酸濃度を増加させることなく、耐加水分解性を有し、且つ高流動性を備えるポリエステル樹脂組成物を得ることを可能にしている。しかも、ブレンドする低分子量のポリブチレンテレフタレートは安価であるので、廉価なポリエステル樹脂組成物となる。
上記構成のポリエステル樹脂組成物では、接着性を有する低粘度である第1の芳香族ポリエステル樹脂と高粘度である第2の芳香族ポリエステル樹脂を加熱混合すると、予想外のことに異種の熱可塑性ポリエステルであっても均一に溶解混合し、低粘度で接着性が改善されたポリエステル樹脂組成物を生成するように作用する。
上記構成のポリエステル樹脂組成物では、請求項1に記載の発明の作用に加えて、多価アルコールによって、第1の芳香族ポリエステルはアルコール分解されて分子量が低下するように作用し、接着性を有する低粘度の芳香族ポリエステル樹脂を廉価で得られるように作用する。
上記構成のポリエステル樹脂組成物では、請求項1又は請求項2に記載の発明の作用に加えて、第1の芳香族ポリエステル樹脂において、酸成分にテレフタル酸とイソフタル酸を用いた共重合体にすると、接着性が向上するように作用し、特に、酸成分のモル比率においてテレフタル酸が70〜98の範囲にあり、イソフタル酸が30〜2の範囲にあるとき、接着性が向上するように作用する。
上記構成のポリエステル樹脂組成物では、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の発明の作用に加えて、ポリブチレンテレフタレートが有する特性、特に耐熱性をポリエステル樹脂組成物に付与するように作用する。
上記構成のポリエステル樹脂組成物では、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の発明の作用に加えて、粉砕したペットボトルの廃棄物などのリサイクル材料を使用することができる。
本実施の形態に係るポリエステル樹脂組成物は、固有粘度が0.08〜0.25dl/gの範囲の第1の芳香族ポリエステル樹脂100重量部と、固有粘度が0.5〜2.0dl/gの範囲の第2の芳香族ポリエステル樹脂を5〜300重量部とを加熱混合して生成され、固有粘度が0.08〜0.35dl/g、さらに好ましくは0.10〜0.30dl/gの範囲にあるものである。
なお、本願明細書内において、全ての芳香族ポリエステル樹脂に対する固有粘度は、重量比で5対5となるフェノールと1,1,2,2−テトラクロロエタンとの混合溶媒中、濃度1重量%において30℃で測定した溶液粘度である。
本実施の形態に係るポリエステル樹脂組成物の詳細な製造方法については後述するが、低粘度の第1の芳香族ポリエステル樹脂と、高粘度の第2の芳香族ポリエステル樹脂を加熱混合すると、溶融した低粘度の第1の芳香族ポリエステル樹脂中に高粘度の第2の芳香族ポリエステル樹脂が微細分散した構造を有する、低粘度のポリエステル樹脂組成物が形成される。このポリエステル樹脂組成物は、主に、低粘度の第1の芳香族ポリエステル樹脂が備える良好な接着性と、高粘度の第2の芳香族ポリエステル樹脂が備える耐熱性とを兼ね備える樹脂組成物である。
第1の芳香族ポリエステル樹脂及び第2の芳香族ポリエステル樹脂は、芳香環を重合体の連鎖単位に有するポリエステル樹脂で、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体と、ジオール又はそのエステル形成性誘導体とを主成分として、これらの縮合反応により得られる重合体又は共重合体である。
なお、これらの芳香族ジカルボン酸は単独で用いてもよいし、複数のものを混合して使用してもよい。また、少量であれば、これらの芳香族ジカルボン酸に加えて、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸や、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸や、又はp−オキシ安息香酸のようなオキシカルボン酸を複数使用することもできる。
そして、アルコール分解法に対して、第1の芳香族ポリエステル樹脂の分解前ポリエステル(以下、アルコール分解前ポリエステルと略する)及び第2の芳香族ポリエステル樹脂に用いる芳香族ポリエステル樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリへキシレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレン−1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレートなどや、共重合体であるポリエチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリブチレンテレフタレート/デカンジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレ−ト/ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。また、これらの芳香族ポリエステル樹脂が酸無水物のグラフト共重合などで変性されていてもよい。アルコール分解前ポリエステルと第2の芳香族ポリエステル樹脂は同種でも、別種であっても構わない。
また、酸成分においてテレフタル酸とイソフタル酸のモル比率は、テレフタル酸が70〜98の範囲で、イソフタル酸が30〜2の範囲にある共重合体が好適である。ここで、テレフタル酸とイソフタル酸は、それぞれのモル比率を加算して100になるように選定し、例えば、テレフタル酸が70のときイソフタル酸は30となり、テレフタル酸が98のときイソフタル酸は2となる。なお、イソフタル酸を酸成分に加えることにより、ホモのポリエステル樹脂の結晶性が低下し、また、ガラス転移温度も低下するので、接着性は向上するが、一方で、イソフタル酸が多過ぎると、低結晶性、低融点となり、接着後の耐熱性が低下するとともに、接着強度も低下する。
また、ポリブチレンテレフタレ−ト/ポリテトラメチレングリコール共重合体やポリエチレンテレフタレート/ポリテトラメチレングリコール共重合体などのポリエステルエラストマーを用いると、得られるポリエステル樹脂組成物の靭性を向上することができる。
このように第2の芳香族ポリエステル樹脂の種類を選定することにより、耐熱性や靭性などの特性を調整することが可能となる。
図1は、本発明の本実施の形態に係るポリエステル樹脂組成物のアルコール分解法を利用した製造方法を示す概念図である。
図1において、ポリエステル樹脂組成物は、アルコール分解前ポリエステルと多価アルコールを投入して加熱下で混練し、続いて、第2の芳香族ポリエステル樹脂を投入して加熱下で混練し、冷却することによって製造することができる。
なお、得られるポリエステル樹脂組成物においては、効果を阻害しない範囲内で、プラスチックや接着剤分野において公知の添加剤、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、顔料や離型剤などを配合させてもよい。また、ポリオレフィン系樹脂やポリアミド系樹脂などの樹脂を配合することもできる。
ホットメルト接着剤として利用する場合は、200℃以下の温度で融解が可能であるので操作が容易で、手塗り作業でも接着面に均一に塗布させることができる。
また、充填剤のバインダーとしては、官能基としてカルボキシル基や水酸基を多数有しているので、充填剤への密着性が良好となる。また、高流動性であるので、微粉タイプの充填剤の間隙にも浸透が可能となる。そして、第2の芳香族ポリエステル樹脂の種類を選定して低耐熱性とすると、繊維や木粉のような有機充填剤に対しても充填剤の酸化による変色を防止することができる。有効な充填剤は、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、タルク、カオリン、水酸化アルミ、アルミナ、ワラストナイト、炭酸カルシウム、フェライト、カーボンブラック、酸化チタン、鉄粉などの無機充填剤や、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、木綿、木粉、竹粉などの有機充填剤などが挙げられる。
また、第1の芳香族ポリエステル樹脂及び第2の芳香族ポリエステル樹脂にリサイクル材料を用いることができるので、近年増加しているプラスチック廃棄物を有効に活用することが可能である。
2軸押出機(スクリュー径:30mm、軸間距離:27mm、L/D:40、同方向回転、プラスチック工学研究所製、先端に400メッシュフィルター付き)を用いて第1の芳香族ポリエステル樹脂を以下の条件で連続的に製造した。なお、Lはスクリューの長さであり、Dはスクリュー径である。
そして、粉砕した共重合ポリエステル樹脂18.8kgに、多価アルコールとしてのグリセリン1.2kgを2軸押出機に投入した。
2軸押出機において、ホッパー下以外のシリンダー温度を320℃、回転数を250rpmとして、共重合ポリエステル樹脂とグリセリンを混練した。なお、共重合ポリエステル樹脂及び多価アルコールは連続的に供給されるが、2軸押出機内部での平均の混練時間は5分である。
混練が終了すると、2軸押出機の出口ノズルから、低粘度の溶融樹脂が排出された。この溶融樹脂を水に浮かべたアルミパンに取り出して冷却すると脆い無色透明の固体が得られた。得られた固体を室温で粉砕して粉体とし、第1の芳香族ポリエステル樹脂となる試料1とした。試料1の固有粘度は0.14dl/gであり、また、樹脂劣化黒点は目視観察されなかった。この試料1をフライパン上で加熱すると、約100℃で流動性の高い液体となり、再度冷却すると80℃で固体となった。
そして、粉砕したポリエチレンテレフタレート樹脂18.8kgに、多価アルコールとしてのグリセリン1.2kgを2軸押出機に投入した。
2軸押出機において、ホッパー下以外のシリンダー温度を320℃、回転数を250rpmとして、ポリエチレンテレフタレート樹脂とグリセリンを混練した。なお、ポリエチレンテレフタレート樹脂及び多価アルコールは連続的に供給されるが、2軸押出機内部での平均の混練時間は5分である。
混練が終了すると、2軸押出機の出口ノズルから、低粘度の溶融樹脂が排出された。この溶融樹脂を水に浮かべたアルミパンに取り出して冷却すると脆い無色半透明の固体が得られた。得られた固体を室温で粉砕して粉体とし、第1の芳香族ポリエステル樹脂となる試料2とした。試料2の固有粘度は0.17dl/gであった。
そして、粉砕した共重合ポリエステル樹脂19.0kgに、多価アルコールとしてのグリセリン1.0kgを2軸押出機に投入した。
試料1と同様の条件で、すなわち、2軸押出機において、ホッパー下以外のシリンダー温度を320℃、回転数を250rpmとして、共重合ポリエステル樹脂とグリセリンを混練した。なお、共重合ポリエステル樹脂及び多価アルコールは連続的に供給されるが、2軸押出機内部での平均の混練時間は5分である。
混練が終了すると、2軸押出機の出口ノズルから、低粘度の溶融樹脂が排出された。この溶融樹脂を水に浮かべたアルミパンに取り出して冷却すると脆い無色透明の固体が得られた。得られた固体を室温で粉砕して粉体とし、第1の芳香族ポリエステル樹脂となる試料3とした。試料3の固有粘度は0.22dl/gであった。
各試料100重量部に対してタルク粉末(林化成社製タルカンパウダーPK−C、平均粒径11μm)200重量部を、2軸押出機を用いて220℃でコンパウンドし、ペレットを得た。このペレットを210℃に加熱後、3mm厚みの100mm角の平板をプレスを用いて圧縮成形により得た。この平板を1mの高さからコンクリートの床に落下させて破損の有無を目視した。
得られた結果を表1に示す。
Claims (5)
- 固有粘度が0.08〜0.25dl/gの範囲の第1の芳香族ポリエステル樹脂100重量部と、固有粘度が0.5〜2.0dl/gの範囲の第2の芳香族ポリエステル樹脂を5〜300重量部と、を加熱混合して生成され、固有粘度が0.08〜0.35dl/gの範囲にあることを特徴とする接着性に優れたポリエステル樹脂組成物。
- 前記第1の芳香族ポリエステル樹脂は、多価アルコールを用いてアルコール分解して生成されることを特徴とする請求項1に記載の接着性に優れたポリエステル樹脂組成物。
- 前記第1の芳香族ポリエステル樹脂は、酸成分にテレフタル酸とイソフタル酸を用いた共重合体であり、この共重合体における酸成分のモル比率はテレフタル酸が70〜98の範囲にあり、イソフタル酸が30〜2の範囲にあることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の接着性に優れたポリエステル樹脂組成物。
- 前記第2の芳香族ポリエステル樹脂は、ポリブチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の接着性に優れたポリエステル樹脂組成物。
- 前記第1の芳香族ポリエステル樹脂及び/又は前記第2の芳香族ポリエステル樹脂は、リサイクル材料であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の接着性に優れたポリエステル樹脂組成物。
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