JP3964673B2 - 樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、タンパク質を主成分とする樹脂組成物に関し、特に、機械的強度、耐熱性、耐水性に優れたタンパク質系樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
20世紀は石油資源を採掘し、プラスチックの原料やエネルギーとして限りなく使用してきた。しかしながら、近年、石油を初めとする化石資源の枯渇化、プラスチックの燃焼に伴なう大気汚染や大量の二酸化炭素の発生による地球温暖化の問題、産業廃棄物による環境汚染等が深刻な環境問題となっている。
そこで、石油や石炭由来のような化石資源ではなく、天然物由来の資源(いわゆる非化石資源)を利用した環境破壊の恐れの少ないプラスチック材料の開発が盛んに進められている。例えば、非化石資源の一つであるタンパク質では、トウモロコシタンパク質、大豆タンパク質、小麦タンパク質(グルテン)等の植物性タンパク質やカゼイン等の動物性タンパク質を用いた検討がなされている(特開平7−11142号公報)。しかし、これらのタンパク質系プラスチックは一般的に機械的強度、耐熱性が低く、しかも、耐水性が著しく劣るため、限られた用途でしか使用できないという欠点があり、実用上問題が多かった、
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような成形材料用プラスチックの問題点に鑑みてなされたものであり、資源の枯渇の恐れがあり、また環境に対する負荷が大きな石油や石炭のような化石資源を用いることなく、環境問題の原因となる恐れの少ない非化石資源であるタンパク質系樹脂組成物において、汎用性があり、機械的強度、耐熱性、耐水性に優れた樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0004】
本発明は、(A)タンパク質と、(B)ロジン誘導体とテルペンフェノール樹脂の内の少なくとも1種、および(C)前記(B)成分と架橋反応可能な官能基を有する化合物を必須成分としてなる樹脂組成物であり、前記(A)タンパク質は、カゼイン、ゼラチン、コラーゲン、大豆タンパク、グルテンから選ばれる少なくとも1種のタンパク質を用いるものであり、(B)成分及び(C)成分については以下の組み合わせで用いる。
【0006】
第1の組み合わせは、前記(B)ロジン誘導体として、カルボキシル基含有ロジン、マレイン化ロジン、エポキシ化ロジン、ロジンアミン、ロジンアミドから選ばれる少なくとも1種の化合物を用いた場合には、前記(C)成分として、2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物を用いるものである。
第2の組み合わせは、前記(B)ロジン誘導体として、ロジン骨格含有ジオール化合物、ロジン変性フェノール樹脂から選ばれる化合物を用いた場合には、前記(C)成分として、(i)2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物、(ii)多価カルボン酸および天然油脂からなる混合物、から選ばれる化合物を用いるものである。
第3の組み合わせは、前記(B)ロジン誘導体として、カルボキシル基含有ロジンを用いた場合には、前記(C)成分として、多価アルコールおよび天然油脂からなる混合物を用いるものである。
【0007】
第4の組み合わせは、前記(B)テルペンフェノール樹脂としては、(a)環状テルペン化合物とフェノール類を共重合させて得られる環状テルペンフェノール樹脂、(b)環状テルペン化合物1分子にフェノール類2分子の割合で付加させてなる環状テルペン骨格含有フェノール化合物、(c)この環状テルペン骨格含有フェノール化合物とアルデヒド類とを縮合反応させて得られる環状テルペン骨格含有フェノール樹脂と、(d)環状テルペン化合物1分子にフェノール類1分子の割合で付加させてなる環状テルペン骨格含有フェノール化合物とアルデヒド類とを縮合反応させて得られる環状テルペン骨格含有フェノール樹脂、から選ばれる少なくとも1種の組成物を用いる場合に、前記(C)成分が、(i)2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物、(ii)2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物、(iii)多価カルボン酸および天然油脂からなる混合物、から選ばれる少なくとも1種の化合物を用いる。
【0008】
第2の本発明は、上記樹脂組成物に、さらに、植物性繊維粉末を配合してなることを特徴とする樹脂組成物である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の樹脂組成物について、さらに詳細に説明する。
[タンパク質]
本発明で用いられる(A)タンパク質は、特に限定されるものではなく、例えば、カゼイン、ゼラチン、コラーゲンなどの動物性タンパク質、大豆タンパク、小麦タンパクのグルテンなどの植物性タンパク質等が挙げられる。
カゼインは、アミノ酸がペプチド結合によって長鎖状に連なった高分子化合物であり、工業的製法の違いにより、乳酸カゼイン、塩酸カゼイン、レンネットカゼインなどがある。大豆タンパクは大豆カゼイン(植物カゼイン)とも呼ばれ、カゼインと類似した性状を示す。
ゼラチンは、ペプチド結合によって結合されたα−アミノ酸およびイミノ酸から構成されており、動物の皮、骨、腱などを形成する主タンパク成分のコラーゲンを酸、アルカリまたは熱水で処理することにより得られる可溶性タンパク質である。ゼラチンとコラーゲンはアミノ酸組成が同じである。
【0010】
グルテンは、穀物に含まれる水不溶性タンパク質の混合物であり、穀物を混和、水洗し、デンプン、可溶性タンパク質を洗い流して得られる。小麦タンパクはグルテンが大部分であり、グルテンはグルテニンとグリアジンから成る。構成アミノ酸はグルタミン酸が多い。
本発明においては、上記のタンパク質以外に、血漿中に多く含まれる血液タンパクであるアルブミン、トウモロコシタンパクのゼイン、落花生タンパク、絹タンパクのフィブロインや羊毛タンパクのケラチンなどのタンパク質も用いることができる。
【0011】
[ロジン誘導体]
本発明で用いられる(B)ロジン誘導体としては、反応可能な官能基を有するロジン誘導体であれば良く、特に限定されるものではない。例えば、カルボキシル基含有ロジン、マレイン化ロジン、エポキシ化ロジン、ロジンアミン、ロジンアミド、ロジン骨格含有ジオール化合物、ロジン変性フェノール樹脂等が挙げられる。
【0012】
カルボキシル基含有ロジンとしては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等の天然ロジン、不均化ロジン、水添ロジン、重合ロジン、グリコール酸変性ロジン、高純度精製ロジン等が挙げられる。このようなロジンの市販品としては、荒川化学(株)製のKR−85、KR−604、KR−610、KR−612、AG−100等が挙げられる。
【0013】
マレイン化ロジンは、ロジンと無水マレイン酸を反応させて得られるロジン−無水マレイン酸付加体である。
エポキシ化ロジンは、ロジンとエピクロルヒドリンを反応させて得られるロジングリシジルエステルである。
ロジンアミン、ロジンアミドは、ロジンのカルボキシル基を変性してアミノ基、アミド基としたものである。
【0014】
ロジン骨格含有ジオール化合物は、ジエポキシ化合物1分子とロジン2分子とを触媒存在下、120〜200℃で酸価5以下となるまで開環付加反応させて得られる。かかるジエポキシ化合物としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル等が挙げられる。かかる触媒としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ベンジルジメチルアミン、ピリジン、2−イミダゾール等のアミン系触媒、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩、ルイス酸、ホウ酸エステル、有機金属化合物、有機金属塩等を使用できる。このようにして製造されるロジン骨格含有ジオール化合物の市販品としては、荒川化学(株)製のKE−601、KE−615、KE−624等が挙げられる。
【0015】
ロジン変性フェノール樹脂は、ロジンとフェノールホルムアルデヒド初期縮合物を混合し、200〜300℃の高温に加熱してから、グリセリン、ペンタエリスリトール、またはエチレングリコールなどでロジン中のカルボキシル基をエステル化して製造される。このようにして製造されるロジン変性フェノール樹脂の市販品としては、荒川化学(株)製のタマノル135、145等が挙げられる。
【0016】
本発明における(B)ロジン誘導体の添加量は特に制限されないが、(A)タンパク質100重量部に対して、10〜150重量部が好ましい。10重量部未満では樹脂組成物の特性(耐熱性、耐水性)の向上効果が不十分であり、150重量部を超えるといわゆる生分解性が低下する。
【0017】
本発明で用いられる(C)成分の前記(B)ロジン誘導体と架橋反応可能な官能基を有する化合物としては、ロジン誘導体が有する官能基の種類に応じて、そのロジン誘導体と反応可能な官能基を含有し、架橋性を有する多官能性化合物を適宜選んで使用することができる。このようなロジン誘導体と架橋性を有する多官能性化合物の組合せの具体的例について、各態様ごとに詳しく説明する。
【0018】
(ロジン誘導体を用いる第1の態様)
(B)ロジン誘導体が、カルボキシル基含有ロジン、マレイン化ロジン、エポキシ化ロジン、ロジンアミン、ロジンアミドから選ばれる少なくとも1種の化合物である場合、前記(C)成分としては、2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物が好適に使用される。
本発明で用いられるエポキシ化合物としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであれば良く、特に限定されるものではない。その具体的例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール系のノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリまたはテトラ(ヒドロキシフェニル)アルカンから誘導されるエポキシ化合物、ビスヒドロキシビフェニル系エポキシ樹脂、フェノールアラルキル樹脂のエポキシ化物等が挙げられる。これらのエポキシ化合物は、単独でまたは2種以上混合して使用することができる。
【0019】
ここで、エポキシ化合物の添加量は特に制限されないが、(B)ロジン誘導体100重量部に対して、10〜80重量部の範囲とすることが好ましく、20〜70重量部の範囲とすることがさらに好ましい。10重量部未満では樹脂組成物の特性(機械的強度、耐熱性)の向上効果が見られず、80重量部を超えると架橋密度が高くなり、再利用する場合にリサイクル性が低下する。
また、本発明においては、エポキシ化合物と(B)ロジン誘導体の官能基の反応を促進するための硬化促進剤を適宜配合することができる。その硬化促進剤としては、例えば塩基性触媒が使用でき、その具体例としては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ(p−メチルフェニル)ホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスフィン等の有機ホスフィン化合物;2−エチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾール化合物およびその誘導体;DBU(1,8−ジアザビシクロウンデセン−7)またはそのフェノール塩、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロウンデセン−7等が挙げられる。
【0020】
(ロジン誘導体を用いる第2の態様)
(B)ロジン誘導体が、ロジン骨格含有ジオール化合物、ロジン変性フェノール樹脂から選ばれる化合物である場合、前記(C)成分としては、(i)2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物、(ii)多価カルボン酸および天然油脂からなる混合物、から選ばれる化合物が好適に使用される。
本発明で用いられる(i)ポリイソシアネート化合物としては、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するものであれば良く、特に限定されるものではない。その具体的例としては、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4´−ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイシシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物、グリセリンやトリメチロールプロパン等のポリオール類と上記イソシアネート化合物との付加反応物等が挙げられる。これらのポリイソシアネート化合物は、単独でまたは2種以上混合して使用することができる。
【0021】
ここで、(i)ポリイソシアネート化合物の添加量は特に制限されないが、(B)ロジン誘導体100重量部に対して、10〜80重量部の範囲とすることが好ましく、20〜70重量部の範囲とすることがさらに好ましい。10重量部未満では樹脂組成物の特性(機械的強度、耐熱性)の向上効果が見られず、80重量部を超えると架橋密度が高くなり、再利用する場合にリサイクル性が低下する。
また、本発明においては、(i)ポリイソシアネート化合物と(B)ロジン誘導体の水酸基の反応を促進するウレタン化反応触媒として活性水素原子化合物を適宜配合することができる。その活性水素原子化合物としては、例えばエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン4,4´−ジアミン等が挙げられる。
【0022】
さらに、樹脂組成物の特性を損なわない範囲で、公知の多価アルコールを適宜添加しても差し支えない。その多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ブタンジオール、プロパンジオール、トリメチロールプロパン等の1分子中に2個以上の水酸基を有するアルコールが挙げられる。
【0023】
本発明で用いられる(ii)成分の化合物は、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸および天然油脂からなる混合物である。多価カルボン酸としては、例えば(無水)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、(無水)トリメリット酸、アジピン酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、安息香酸、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スペリン酸等が挙げられる。これらの多価カルボン酸は、単独でまたは2種以上混合して使用することができる。
【0024】
また、天然油脂の具体的例としては、アマニ油、サフラワー油、桐油、ひまし油、大豆油、綿実油、米糠油、ごま油、コーン油、なたね油、オリーブ油、ヤシ油、ひまわり油、落花生油、エノ油、つばき油等の植物油、鯨油、魚油、肝油等の動物油およびそれらの脂肪酸が挙げられる。これらの天然油脂は単独でまたは2種以上混合して使用することができる。
本発明において、(ii)成分の多価カルボン酸と天然油脂からなる混合物は(B)ロジン誘導体の水酸基と反応してエステル結合を形成することにより架橋反応を行なうことができる。また、多価カルボン酸または天然油脂に含まれる不飽和二重結合を付加重合させることにより、さらに強固な架橋構造を形成することが可能となる。
【0025】
ここで、(ii)成分の多価カルボン酸と天然油脂からなる混合物の添加量は特に制限されないが、(B)ロジン誘導体100重量部に対して、10〜80重量部の範囲とすることが好ましく、20〜70重量部の範囲とすることがさらに好ましい。10重量部未満では樹脂組成物の特性(機械的強度、耐熱性)の向上効果が見られず、80重量部を超えると架橋密度が高くなり、再利用する場合にリサイクル性が低下する。
また、多価カルボン酸と天然油脂の混合比率は、重量比で80:20〜20:80の範囲であることが好ましい。この範囲から外れると樹脂組成物の特性(機械的強度、耐熱性)の向上効果が不十分となる。
【0026】
本発明においては、(ii)成分の多価カルボン酸と天然油脂からなる混合物と(B)ロジン誘導体の水酸基の反応を促進するためのエステル化触媒を適宜配合することができる。そのエステル化反応触媒としては、例えば、テトラブチルジルコネート、ジルコニウムナフテート、テトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、シュウ酸第1スズ、テトラフェニルスズ、ジブチルスズジクロライド、酢酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、鉄アセチルアセトネート、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸マンガン、トリフェニルビスマス、マグネシウムチタネート、マグネシウムジルコネート、酸化亜鉛、塩化スズ、酢酸マンガン、酢酸コバルト、酢酸ニッケル、オクチル酸ブチルスズ、テトラフェニルスズ、テトラブチルスズ等が挙げられる。
【0027】
また、本発明においては、(ii)成分の多価カルボン酸と天然油脂からなる混合物に含まれる不飽和二重結合の重合を促進する重合触媒を適宜配合することができる。その重合触媒としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド(BPO)、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、m−トルイルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等が挙げられる。
さらに、樹脂組成物の特性を損なわない範囲で、公知の多官能性アルコールを適宜添加しても差し支えない。その多官能性アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ブタンジオール、プロパンジオール等の多価アルコールまたはアリルアルコール、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、3−ブテン−2−オール、2−ヘキセン−1−オール、4−アリルカテコール等の不飽和結合を有するアルコールが挙げられる。
【0028】
(ロジン誘導体を用いる第3の態様)
(B)ロジン誘導体が、カルボキシル基含有ロジンである場合、前記(C)成分としては、多価アルコールおよび天然油脂からなる混合物が好適に使用される。
本発明で用いられる多価アルコールとしては、1分子中に2個以上の水酸基を有するものであれば良く、特に限定されるものではない。その具体的例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ブタンジオール、プロパンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。これらの多価アルコールは、単独でまたは2種以上混合して使用することができる。
【0029】
また、天然油脂の具体的例としては、アマニ油、サフラワー油、桐油、ひまし油、大豆油、綿実油、米糠油、ごま油、コーン油、なたね油、オリーブ油、ヤシ油、ひまわり油、落花生油、エノ油、つばき油等の植物油、鯨油、魚油、肝油等の動物油およびそれらの脂肪酸が挙げられる。これらの天然油脂は単独でまたは2種以上混合して使用することができる。
本発明において、かかる多価アルコールと天然油脂からなる混合物は(B)ロジン誘導体のカルボキシル基と反応してエステル結合を形成することにより架橋反応を行なうことができる。また、多価アルコールまたは天然油脂に含まれる不飽和二重結合を付加重合させることにより、さらに強固な架橋構造を形成することが可能となる。
ここで、多価アルコールと天然油脂からなる混合物の添加量は特に制限されないが、(B)ロジン誘導体100重量部に対して、10〜80重量部の範囲とすることが好ましく、20〜70重量部の範囲とすることがさらに好ましい。10重量部未満では樹脂組成物の特性(機械的強度、耐熱性)の向上効果が見られず、80重量部を超えると架橋密度が高くなり、再利用する場合にリサイクル性が低下する。
【0030】
また、多価アルコールと天然油脂の混合比率は、重量比で80:20〜20:80の範囲であることが好ましい。この範囲から外れると樹脂組成物の特性(機械的強度、耐熱性)の向上効果が不十分となる。
本発明においては、多価アルコールと天然油脂からなる混合物と(B)ロジン誘導体のカルボキシル基の反応を促進するためのエステル化触媒を適宜配合することができる。そのエステル化反応触媒としては、前記第2の態様に記載されたものと同様の触媒を用いることができる。
また、本発明においては、多価アルコールと天然油脂からなる混合物に含まれる不飽和二重結合の重合を促進する重合触媒を適宜配合することができる。その重合触媒としては、前記第2の態様に記載されたものと同様の重合触媒を用いることができる。
【0031】
さらに、樹脂組成物の特性を損なわない範囲で、公知の多価カルボン酸を適宜添加しても差し支えない。その多価カルボン酸としては、例えば(無水)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、(無水)トリメリット酸、アジピン酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、安息香酸、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スペリン酸等が挙げられる。
【0032】
[テルペンフェノール樹脂]
本発明で用いられる(B)テルペンフェノール樹脂とは、(a)環状テルペン化合物とフェノール類を共重合させて得られる環状テルペンフェノール樹脂、(b)環状テルペン化合物1分子にフェノール類2分子の割合で付加させてなる環状テルペン骨格含有フェノール化合物、(c)この環状テルペン骨格含有フェノール化合物とアルデヒド類とを縮合反応させて得られる環状テルペン骨格含有フェノール樹脂と、(d)環状テルペン化合物1分子にフェノール類1分子の割合で付加させてなる環状テルペン骨格含有フェノール化合物とアルデヒド類とを縮合反応させて得られる環状テルペン骨格含有フェノール樹脂、から選ばれる少なくとも1種のテルペンフェノール樹脂である。
これらのテルペンフェノール樹脂は、単独で使用することもできるし、2種類以上を併用して使用することもできる。
【0033】
本発明で用いられる(B)テルペンフェノール樹脂を製造するための原料のテルペン化合物は、単環のテルペン化合物であっても、双環のテルペン化合物であってもよく、特に限定されるものではない。その具体的例としては、α−ピネン、β−ピネン、ジペンテン、リモネン、フェランドレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、テルピノレン、1,8−シネオール、1,4−シネオール、ターピネオール、パラメンテン類、パラメンタジエン類、カレン類等が挙げられる。
【0034】
また、本発明で用いられる(B)テルペンフェノール樹脂を製造するための他方の原料であるフェノール類としては、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、ブチルフェノール、キシレノール、プロピルフェノール、ノニルフェノール、フェニルフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコール、メトキシフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ナフトール等の化合物が挙げられる。これらの化合物は単独もしくは2種以上混合して使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
(a)環状テルペンフェノール樹脂は、環状テルペン化合物とフェノール類をフリーデルクラフツ型触媒の存在下で共重合させることにより製造することができる。
(a)の環状テルペンフェノール樹脂を製造するための環状テルペン化合物とフェノール類の共重合反応は、環状テルペン化合物1モルに対してフェノール類を0.1〜12モル、好ましくは0.2〜6モル使用し、フリーデルクラフツ型触媒の存在下で0〜120℃の温度で1〜10時間行なわせる。そのフリーデルクラフツ型触媒としては塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素もしくはその錯体等が挙げられる。このようにして製造される環状テルペンフェノール樹脂の市販品としては、ヤスハラケミカル(株)製のYSポリスターやマイテイエース等が挙げられる。
【0036】
(b)環状テルペン骨格含有フェノール化合物は、環状テルペン化合物とフェノール類とを酸性触媒の存在下で付加反応させることにより製造することができる。
(b)の環状テルペン化合物1分子とフェノール類2分子との付加反応は、環状テルペン化合物1モルに対してフェノール類を1〜12モル、好ましくは2〜8モル使用し、酸性触媒の存在下で20〜150℃の温度で1〜10時間行なわせる。その酸性触媒としては、塩酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸、三フッ化ホウ素もしくはその錯体、陽イオン交換樹脂、活性白土等が挙げられる。このようにして製造される環状テルペン骨格含有フェノール化合物の市販品としては、ヤスハラケミカル(株)製のYP−90等が挙げられる。
【0037】
(c)環状テルペン骨格含有フェノール樹脂は、上記環状テルペン骨格含有フェノール化合物とアルデヒド類とを縮合反応させることにより製造することができる。
(c)の環状テルペン骨格含有フェノール樹脂を製造するための縮合剤として使用するアルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド等が挙げられる。
前記(b)環状テルペン骨格含有フェノール化合物とアルデヒド類との縮合反応においては、通常のノボラック化反応の方法が用いられる。この縮合反応におけるフェノール化合物とアルデヒド類との反応割合は、フェノール化合物1モルに対してアルデヒド類が0.1〜1.0モル、好ましくは0.2〜0.7モルであり、酸性触媒の存在下で40〜200℃の温度で1〜12時間反応させる。アルデヒド類が多すぎると環状テルペン骨格含有フェノール樹脂が高分子量化する。その縮合反応用酸性触媒としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、トルエンスルホン酸等の有機酸を使用することができる。このようにして製造される(c)環状テルペン骨格含有フェノール樹脂の市販品としては、ヤスハラケミカル(株)製のテルペン変性ノボラック樹脂(YP−90をノボラック化したもの)、ジャパンエポキシレジン(株)製のテルペン変性フェノールノボラック樹脂(MP402FPY)等が挙げられる。
【0038】
また、(d)環状テルペン骨格含有フェノール樹脂は、環状テルペン化合物1分子にフェノール類1分子の割合で酸性触媒の存在下で付加反応させてなる環状テルペン骨格含有フェノール化合物とアルデヒド類とを縮合反応させることにより製造することができる。
(d)の環状テルペン骨格含有フェノール樹脂の前駆体である環状テルペン骨格含有フェノール化合物を製造するための環状テルペン化合物1分子とフェノール類1分子の付加反応は、環状テルペン化合物1モルに対してフェノール類を0.5〜6モル、好ましくは1〜4モル使用し、酸性触媒の存在下で20〜150℃の温度で1〜10時間行なう。その酸性触媒としては、塩酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸、三フッ化ホウ素もしくはその錯体、陽イオン交換樹脂、活性白土等が挙げられる。
【0039】
(d)の環状テルペン骨格含有フェノール樹脂を製造するための上記環状テルペン骨格含有フェノール化合物とアルデヒド類との縮合反応は、前記(c)の環状テルペン骨格含有フェノール樹脂と同様に行なう。このようにして製造される(d)環状テルペン骨格含有フェノール樹脂の市販品としては、ヤスハラケミカル(株)製のDLN−120、DLN−140等が挙げられる。
【0040】
本発明における(B)テルペンフェノール樹脂の添加量は特に制限されないが、(A)タンパク質100重量部に対して、10〜150重量部が好ましい。10重量部未満では樹脂組成物の特性(耐熱性、耐水性)の向上効果が不十分であり、150重量部を超えるといわゆる生分解性が低下する。
【0041】
本発明で用いられる(C)成分の前記(B)テルペンフェノール樹脂と架橋反応可能な官能基を有する化合物としては、テルペンフェノール樹脂の水酸基と反応可能な官能基を含有し、架橋性を有する公知の多官能性化合物が挙げられるが、なかでも、(i)2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物、(ii)2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物、(iii)多価カルボン酸および天然油脂からなる混合物のうちから選ばれる化合物が好適に使用される。
【0042】
本発明で用いられる(i)エポキシ化合物としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであれば良く、特に限定されるものではない。その具体的例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール系のノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリまたはテトラ(ヒドロキシフェニル)アルカンから誘導されるエポキシ化合物、ビスヒドロキシビフェニル系エポキシ樹脂、フェノールアラルキル樹脂のエポキシ化物等が挙げられる。これらのエポキシ化合物は、単独でまたは2種以上混合して使用することができる。
ここで、(i)エポキシ化合物の添加量は特に制限されないが、(B)テルペンフェノール樹脂100重量部に対して、10〜80重量部の範囲とすることが好ましく、20〜70重量部の範囲とすることがさらに好ましい。10重量部未満では樹脂組成物の特性(機械的強度、耐熱性)の向上効果が見られず、80重量部を超えると架橋密度が高くなり、再利用する場合にリサイクル性が低下する。
【0043】
また、本発明においては、(i)エポキシ化合物と(B)テルペンフェノール樹脂の水酸基の反応を促進するための硬化促進剤を適宜配合することができる。その硬化促進剤としては、例えば塩基性触媒が使用でき、その具体例としては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ(p−メチルフェニル)ホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスフィン等の有機ホスフィン化合物;2−エチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾール化合物およびその誘導体;DBU(1,8−ジアザビシクロウンデセン−7)またはそのフェノール塩、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロウンデセン−7等が挙げられる。
【0044】
本発明で用いられる(ii)ポリイソシアネート化合物としては、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するものであれば良く、特に限定されるものではない。その具体的例としては、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4´−ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイシシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物、グリセリンやトリメチロールプロパン等のポリオール類と上記イソシアネート化合物との付加反応物等が挙げられる。これらのポリイソシアネート化合物は、単独でまたは2種以上混合して使用することができる。
【0045】
ここで、(ii)ポリイソシアネート化合物の添加量は特に制限されないが、(B)テルペンフェノール樹脂100重量部に対して、10〜80重量部の範囲とすることが好ましく、20〜70重量部の範囲とすることがさらに好ましい。10重量部未満では樹脂組成物の特性(機械的強度、耐熱性)の向上効果が見られず、80重量部を超えると架橋密度が高くなり、再利用する場合にリサイクル性が低下する。
【0046】
また、本発明においては、(ii)ポリイソシアネート化合物と(B)テルペンフェノール樹脂の水酸基の反応を促進するウレタン化反応触媒として活性水素原子化合物を適宜配合することができる。その活性水素原子化合物としては、例えばエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン4,4´−ジアミン等が挙げられる。
【0047】
さらに、樹脂組成物の特性を損なわない範囲で、公知の多価アルコールを適宜添加しても差し支えない。その多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ブタンジオール、プロパンジオール、トリメチロールプロパン等の1分子中に2個以上の水酸基を有するアルコールが挙げられる。
【0048】
本発明で用いられる(iii)成分の化合物は、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸および天然油脂からなる混合物である。多価カルボン酸としては、例えば(無水)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、(無水)トリメリット酸、アジピン酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、安息香酸、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スペリン酸等が挙げられる。これらの多価カルボン酸は、単独でまたは2種以上混合して使用することができる。
【0049】
また、天然油脂の具体的例としては、アマニ油、サフラワー油、桐油、ひまし油、大豆油、綿実油、米糠油、ごま油、コーン油、なたね油、オリーブ油、ヤシ油、ひまわり油、落花生油、エノ油、つばき油等の植物油、鯨油、魚油、肝油等の動物油およびそれらの脂肪酸が挙げられる。これらの天然油脂は単独でまたは2種以上混合して使用することができる。
【0050】
本発明において、(iii)成分の多価カルボン酸と天然油脂からなる混合物は(B)テルペンフェノール樹脂の水酸基と反応してエステル結合を形成することにより架橋反応を行なうことができる。また、多価カルボン酸または天然油脂に含まれる不飽和二重結合を付加重合させることにより、さらに強固な架橋構造を形成することが可能となる。
ここで、(iii)成分の多価カルボン酸と天然油脂からなる混合物の添加量は特に制限されないが、(B)テルペンフェノール樹脂100重量部に対して、10〜80重量部の範囲とすることが好ましく、20〜70重量部の範囲とすることがさらに好ましい。10重量部未満では樹脂組成物の特性(機械的強度、耐熱性)の向上効果が見られず、80重量部を超えると架橋密度が高くなり、再利用する場合にリサイクル性が低下する。
【0051】
また、多価カルボン酸と天然油脂の混合比率は、重量比で80:20〜20:80の範囲であることが好ましい。この範囲から外れると樹脂組成物の特性(機械的強度、耐熱性)の向上効果が不十分となる。
本発明においては、(iii)成分の多価カルボン酸と天然油脂からなる混合物と(B)テルペンフェノール樹脂の水酸基の反応を促進するためのエステル化触媒を適宜配合することができる。そのエステル化反応触媒としては、例えば、テトラブチルジルコネート、ジルコニウムナフテート、テトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、シュウ酸第1スズ、テトラフェニルスズ、ジブチルスズジクロライド、酢酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、鉄アセチルアセトネート、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸マンガン、トリフェニルビスマス、マグネシウムチタネート、マグネシウムジルコネート、酸化亜鉛、塩化スズ、酢酸マンガン、酢酸コバルト、酢酸ニッケル、オクチル酸ブチルスズ、テトラフェニルスズ、テトラブチルスズ等が挙げられる。
【0052】
また、本発明においては、(iii)成分の多価カルボン酸と天然油脂からなる混合物に含まれる不飽和二重結合の重合を促進する重合触媒を適宜配合することができる。その重合触媒としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド(BPO)、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、m−トルイルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等が挙げられる。
さらに、樹脂組成物の特性を損なわない範囲で、公知の多官能性アルコールを適宜添加しても差し支えない。その多官能性アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ブタンジオール、プロパンジオール等の多価アルコールまたはアリルアルコール、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、3−ブテン−2−オール、2−ヘキセン−1−オール、4−アリルカテコール等の不飽和結合を有するアルコールが挙げられる。
【0053】
[添加剤]
本発明の樹脂組成物においては、上記(A)〜(C)成分からなる必須成分のみでも機械的特性、耐熱性、耐水性の優れた樹脂組成物を得ることができるが、木材資源の有効利用と樹脂成形品の高強度化を図るために、さらに、植物性繊維粉末を配合することもできる。その植物性繊維粉末としては、例えば、木粉、紙粉、セルロース繊維の粉末等が挙げられる。
木粉としては、破砕チップ、木材パルプ、木材の加工廃材、おが屑等を微粉砕したものが挙げられる。
紙粉としては、バージンパルプや古紙パルプの粉末、古紙を微粉砕したもの等が挙げられる。古紙としては、OA用紙等の上質紙、新聞紙・週刊誌・ダンボール等の再生済古紙等を用いることができる。
セルロース繊維としては、機械パルプ、化学パルプ、セミケミカルパルプおよびこれらのリサイクルパルプ等の粉末を用いることができる。かかるセルロース繊維の原料としては、針葉樹や広葉樹を原料とする木材繊維、コウゾ、ケフナ、マニラ麻、ワラ、パガス、竹、籾殻などの非木材繊維が挙げられ、いずれをも使用することができる。また、セルロース繊維はボール紙、新聞紙等の各種紙製品を解繊して得たものを用いることもできる。
【0054】
本発明において、植物性繊維粉末のサイズは特に制限されないが、20〜300メッシュの範囲に粉砕された粉砕粉であることが好ましい。サイズが粗すぎると植物性繊維粉末の分散が悪くなり、添加効果が不十分であり、細かすぎると樹脂組成物の成形性が低下する。
また、植物性繊維粉末の添加量は特に制限されないが、添加量が少ないと高強度化の効果が見られず、多すぎると樹脂組成物の成形性が著しく低下する。
本発明の樹脂組成物には、上述したような成分に加え、さらに必要に応じて、無機充填剤、可塑剤、離型剤、顔料、着色剤、溶剤、難燃剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、相溶剤、発泡剤、香料、抗菌抗カビ剤、防腐剤等の各種添加剤を適宜配合することもできる。
【0055】
[組成物の調製方法]
本発明の樹脂組成物の調製方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法によって行なうことができる。例えば、上述したような各成分を加熱ロール、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ニーダー、万能混合攪拌機、単軸あるいは二軸押出機等を用いて溶融混練することによって容易に調製することができる。また、(C)成分として多価カルボン酸または多価アルコールと天然油脂からなる混合物を用いる場合には、まず第一段階として溶融混練によりエステル化反応を行ない、次いで、第二段階として重合触媒を添加して再び混合処理する方法を用いることができる。
【0056】
本発明の樹脂組成物の成形方法としては、圧縮成形、フィルム成形、押出成形、射出成形、インフレーション成形、ブロー成形などの従来公知の方法により適宜所望の形状に成形して、各種成形品を製造することができる。
本発明で成形した樹脂組成物は、フィルム、シート、成形体、発泡体等の任意の形状で、包装用容器、発泡体、シート、建材や自動車、家電製品、OA機器の部材、内装材、ハウジング等に有効に利用することができる。
【0057】
本発明の樹脂組成物は、三次元架橋構造を有するが従来の熱硬化性樹脂に比べて架橋密度が低く、しかも生分解性を有するタンパク質を含有するため、公知の分解剤を用いることにより容易に分解することができ、再利用あるいはリサイクルが可能である。
【0058】
【実施例】
以下、本発明を実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
[実施例1〜14、比較例1〜3]
原料として、以下に示す各成分を用いた。
タンパク質A:カゼイン
タンパク質B:ゼラチン
タンパク質C:コラーゲン
タンパク質D:大豆タンパク
タンパク質E:グルテン
ロジン誘導体A:カルボキシル基含有ロジン(荒川化学社製、KR−610、酸価170)
ロジン誘導体B:マレイン化ロジン(荒川化学社製、酸価366)
ロジン誘導体C:エポキシ化ロジン(荒川化学社製、エポキシ当量350)
ロジン誘導体D:ロジンアミン(荒川化学社製)
ロジン誘導体E:ロジンアミド(荒川化学社製)
ロジン誘導体F:ロジン骨格含有ジオール化合物(荒川化学社製、KE−601、水酸基価110)
ロジン誘導体G:ロジン変性フェノール樹脂(荒川化学社製、タマノル135、酸価18)
ロジン誘導体H:ロジンエステル(荒川化学社製、KE−100、官能基なし)
エポキシ化合物:オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(住友化学社製、ESCN−195XL、エポキシ当量197)
硬化促進剤: 2−ヘプタデシルイミダゾール(四国化成社製、C17Z)
ポリイソシアネート化合物:4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート
活性水素化合物:トリエチレンジアミン
多価カルボン酸A:無水マレイン酸
多価カルボン酸B:アジピン酸
多価アルコール:ジエチレングリコール
天然油脂:アマニ油
エステル化反応触媒:テトラブチルジルコネート
重合触媒:ジ−t−ブチルパーオキサイド
植物性繊維粉末A:木粉(三木産業社製、リグノセル)
植物性繊維粉末B:古紙(新聞紙)の微粉砕粉
植物性繊維粉末C:粉末セルロース(三木産業社製、アーボセル)
上記各成分を下記表1及び表2(実施例1〜14、比較例1〜3)に示す割合で配合し、以下のように調製して所望の樹脂組成物を得た。表中の配合量は重量部を示す。
【0059】
(実施例1〜5および11、比較例1〜3の調製)
まず、タンパク質、ロジン誘導体、エポキシ化合物、硬化促進剤もしくは植物性繊維粉末をヘンシェルミキサーで混合し、約60〜約120℃の加熱ロールによって溶融混練した。次に、この混合物をシート状に取出し、冷却した後、粉砕することによって所望の樹脂組成物を得た。
【0060】
(実施例6、7および12の調製)
まず、タンパク質、ロジン誘導体、ポリイソシアネート化合物、活性水素化合物もしくは植物性繊維粉末をヘンシェルミキサーで混合した後、約40〜約100℃に加熱したニーダーによって溶融混練した。次に、この混合物をシート状もしくはバルク状に取出し、所望の樹脂組成物を得た。
【0061】
(実施例8〜10および13、14の調製)
まず、タンパク質、ロジン誘導体、多価カルボン酸または多価アルコール、天然油脂およびエステル化反応触媒を万能混合攪拌機にて約100〜約150℃、真空減圧下で溶融混合しながらエステル化反応を行なった。次に、この混合物に重合触媒、もしくは植物性繊維粉末を加えて、ニーダーによって混合し、混合物をシート状もしくはブロック状に取出し、所望の樹脂組成物を得た。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
これら実施例1〜14、比較例1〜3に係る17種の樹脂組成物について、下記のような評価試験を行なった。各樹脂組成物を用いて、圧縮成形機により成形温度150℃、成形圧力100kgf/cm2で10分間圧縮成形し、厚さ4mmの板状の成形品を得た。この成形品を各評価試験の試験片として用いた。
(1)機械的強度
オートグラフを用いて、各樹脂組成物の成形品の引張強度を測定した。
(2) 耐熱性
示差走査型熱量計(DSC)を用いて、各樹脂組成物の成形品のガラス転移温度を測定した。
(3)耐水性
各樹脂組成物の板状の成形品を25℃の水中に24時間浸漬し、重量変化を測定して吸水率を求めた。
得られた評価結果を、下記表3及び表4に示す。
【0065】
【表3】
【0066】
【表4】
【0067】
上記表3及び4に示されるように、本発明の樹脂組成物(実施例1〜14)は、機械的強度、耐熱性、耐水性が優れていることが確認された。
これに対して表4に示されるように、タンパク質だけからなる樹脂組成物(比較例1)は機械的強度、耐熱性、耐水性が著しく劣っている。(C)成分を含まない樹脂組成物(比較例2)は機械的強度、耐熱性が不十分である。また、(C)成分が配合されていても(B)成分が官能基を持たないロジンエステル(ロジン誘導体H)の場合(比較例3)も機械的強度、耐熱性が不十分である。
【0068】
[実施例15〜25、比較例4〜6]
原料として、以下に示す各成分を用いた。
タンパク質A:カゼイン
タンパク質B:ゼラチン
タンパク質C:コラーゲン
タンパク質D:大豆タンパク
タンパク質E:グルテン
テルペンフェノール樹脂a:環状テルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル社製、YSポリスターN125、水酸基当量300)
テルペンフェノール樹脂b:環状テルペン骨格含有フェノール化合物(ヤスハラケミカル社製、YP−90、水酸基当量160)
テルペンフェノール樹脂c:環状テルペン骨格含有フェノール樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、MP402、水酸基当量174)
テルペンフェノール樹脂d:環状テルペン骨格含有フェノール樹脂(ヤスハラケミカル社製、DLN−120、水酸基当量190)
テルペン樹脂:(ヤスハラケミカル社製、YSレジンPX1250、水酸基なし)
エポキシ化合物A:オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(住友化学社製、ESCN−195XL、エポキシ当量197)
エポキシ化合物B:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、エピコート828、エポキシ当量190)
硬化促進剤: 2−ヘプタデシルイミダゾール(四国化成社製、C17Z)
ポリイソシアネート化合物A:4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート
ポリイソシアネート化合物B:イソホロンジイソシアネート
活性水素化合物:トリエチレンジアミン
多価カルボン酸A:無水マレイン酸
多価カルボン酸B:アジピン酸
天然油脂:アマニ油
エステル化反応触媒:テトラブチルジルコネート
重合触媒:ジ−t−ブチルパーオキサイド
植物性繊維粉末A:木粉(三木産業社製、リグノセル)
植物性繊維粉末B:古紙(新聞紙)の微粉砕粉
植物性繊維粉末C:粉末セルロース(三木産業社製、アーボセル)
上記各成分を下記表5及び表6(実施例15〜25、比較例4〜6)に示す割合で配合し、以下のように調製して所望の樹脂組成物を得た。表中の配合量は重量部を示す。
【0069】
(実施例15〜19および23、比較例4〜6の調製)
まず、タンパク質、テルペンフェノール樹脂、エポキシ化合物、硬化促進剤もしくは植物性繊維粉末をヘンシェルミキサーで混合し、約60〜約120℃の加熱ロールによって溶融混練した。次に、この混合物をシート状に取出し、冷却した後、粉砕することによって所望の樹脂組成物を得た。
【0070】
(実施例20、21および24の調製)
まず、タンパク質、テルペンフェノール樹脂、ポリイソシアネート化合物、活性水素化合物もしくは植物性繊維粉末をヘンシェルミキサーで混合した後、約40〜約100℃に加熱したニーダーによって溶融混練した。次に、この混合物をシート状もしくはバルク状に取出し、所望の樹脂組成物を得た。
【0071】
(実施例22および25の調製)
まず、タンパク質、テルペンフェノール樹脂、多価カルボン酸、天然油脂およびエステル化反応触媒を万能混合攪拌機にて約100〜約150℃、真空減圧下で溶融混合しながらエステル化反応を行なった。次に、この混合物に重合触媒、もしくは植物性繊維粉末を加えて、ニーダーによって混合し、混合物をシート状もしくはブロック状に取出し、所望の樹脂組成物を得た。
【0072】
【表5】
【0073】
【表6】
【0074】
これら実施例15〜25、比較例4〜6に係る14種の樹脂組成物について、下記のような評価試験を行なった。各樹脂組成物を用いて、圧縮成形機により成形温度150℃、成形圧力100kgf/cm2で10分間圧縮成形し、厚さ4mmの板状の成形品を得た。この成形品を各評価試験の試験片として用いた。
(1)機械的強度
オートグラフを用いて、各樹脂組成物の成形品の引張強度を測定した。
耐熱性
示差走査型熱量計(DSC)を用いて、各樹脂組成物の成形品のガラス転移温度を測定した。
(3)耐水性
各樹脂組成物の板状の成形品を25℃の水中に24時間浸漬し、重量変化を測定して吸水率を求めた。
得られた評価結果を、下記表7及び表8に示す。
【0075】
【表7】
【0076】
【表8】
【0077】
上記表7及び8に示されるように、本発明の樹脂組成物(実施例15〜25)は、機械的強度、耐熱性、耐水性が優れていることが確認された。
これに対して表8に示されるように、タンパク質だけからなる樹脂組成物(比較例4)は機械的強度、耐熱性、耐水性が著しく劣っている。(C)成分を含まない樹脂組成物(比較例5)は機械的強度、耐熱性が不十分である。また、(C)成分が配合されていても(B)成分が水酸基を持たないテルペン樹脂の場合(比較例6)も機械的強度、耐熱性が不十分である。
【0078】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、機械的強度、耐熱性、耐水性に優れたタンパク質系の樹脂組成物を提供することができる。
また、本発明の樹脂組成物は、架橋密度が低く、しかも生分解性を有するタンパク質を含有するため、容易に分解することができ、再利用あるいはリサイクルが可能である。
Claims (6)
- (A)カゼイン、ゼラチン、コラーゲン、大豆タンパク、グルテンから選ばれる少なくとも1種のタンパク質と、(B)カルボキシル基含有ロジン、マレイン化ロジン、エポキシ化ロジン、ロジンアミン、ロジンアミドから選ばれる少なくとも1種の化合物からなるロジン誘導体と、および(C)前記(B)成分と架橋反応可能な2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物を必須成分としてなることを特徴とする樹脂組成物。
- (A)カゼイン、ゼラチン、コラーゲン、大豆タンパク、グルテンから選ばれる少なくとも1種のタンパク質と、(B)ロジン骨格含有ジオール化合物、ロジン変性フェノール樹脂から選ばれる化合物からなるロジン誘導体と、および(C)前記(B)成分と架橋反応可能な(i)2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物、(ii)多価カルボン酸および天然油脂からなる混合物、から選ばれる化合物を必須成分としてなることを特徴とする樹脂組成物。
- (A)カゼイン、ゼラチン、コラーゲン、大豆タンパク、グルテンから選ばれる少なくとも1種のタンパク質と、(B)カルボキシル基含有ロジンと、および(C)前記(B)成分と架橋反応可能な多価アルコールおよび天然油脂からなる混合物を必須成分としてなることを特徴とする樹脂組成物。
- (A)カゼイン、ゼラチン、コラーゲン、大豆タンパク、グルテンから選ばれる少なくとも1種のタンパク質と、(B)(a)環状テルペン化合物とフェノール類を共重合させて得られる環状テルペンフェノール樹脂、(b)環状テルペン化合物1分子にフェノール類2分子の割合で付加させてなる環状テルペン骨格含有フェノール化合物、(c)この環状テルペン骨格含有フェノール化合物とアルデヒド類とを縮合反応させて得られる環状テルペン骨格含有フェノール樹脂と、(d)環状テルペン化合物1分子にフェノール類1分子の割合で付加させてなる環状テルペン骨格含有フェノール化合物とアルデヒド類とを縮合反応させて得られる環状テルペン骨格含有フェノール樹脂、から選ばれる少なくとも1種の組成物からなるテルペンフェノール樹脂、および(C)前記(B)成分と架橋反応可能な官能基を有する化合物を必須成分としてなることを特徴とする樹脂組成物。
- 前記(C)成分が、(i)2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物、(ii)2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物、(iii)多価カルボン酸および天然油脂からなる混合物、から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項4に記載の樹脂組成物。
- 請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の樹脂組成物に、さらに、植物性繊維粉末を配合してなることを特徴とする樹脂組成物。
Priority Applications (1)
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JP2001400600A JP3964673B2 (ja) | 2001-12-28 | 2001-12-28 | 樹脂組成物 |
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