JP5006548B2 - 熱電池 - Google Patents
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Description
電流密度0.5A/cm2程度で熱電池を放電させる場合、正極活物質に上記の二硫化鉄を含む複合材料を用いた素電池の電圧は2.1V程度であり、正極活物質に二硫化鉄を単独で用いた素電池の電圧(約1.8V)よりも増大するため、熱電池の高さを低減することが可能である。
前記チタン含有硫化物は、一般式:Ti1-αMαSx(式中、Mは、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Ge、Zr、Nb、Mo、Ag、Cd、Sn、およびWからなる群より選ばれた少なくとも一種であり、αおよびxは、それぞれ0<α≦0.95および1.5≦x≦2.75を満たす。)で表される化合物である。
このため、大電流放電時においても高電圧を維持することができ、優れた高負荷放電特性が得られる。また、高負荷放電特性を損なうことなく、使用する素電池の数を減らして高負荷放電仕様の熱電池の小型化が可能となる。
αは元素Mの置換量を示し、xは化学量論組成からのずれを示す。αが0.95以下の範囲で、チタンの一部を元素Mで置換することにより放電電圧がさらに増大する。x<1.5、2.75<xのとき、放電電圧が若干低下する。
特に、高い放電電圧が得られる点で、元素MはCoがより好ましい。これは、CoがTiの固相内に均一に拡散しやすく、結晶の均質性が向上して元素Mの置換による効果が発揮されやすいためであると考えられる。
チタン含有硫化物は、例えば、チタン粉末、硫黄粉末、および元素Mの粉末をボールミル等にて混合し、その混合物を焼成して得られる。
素電池7と発熱剤5とを交互に複数個積み重ねた発電部が、金属製の外装ケース1に収納されている。発電部の最上部には、着火パッド4が配され、着火パッド4の上部に近接して点火栓3が設置されている。発電部の周囲には導火帯6が配されている。発熱剤5は鉄などを含み、導電性を有するため、素電池7は、発熱剤5を介して電気的に直列に接続されている。発熱剤5は、例えば、FeとKClO4の混合物からなり、電池の活性化時には発熱剤5の燃焼にともないFe粉が焼結するため、放電初期(燃焼初期)から放電末期(燃焼末期)まで、発熱剤5の導電性は維持される。
正極13は、例えば、上記のチタン含有硫化物の粉末と、シリカ粉末等の結着材と、後述する電解質14に用いられる塩との混合物からなる。この塩はイオン伝導性を改善するために用いられる。
点火端子2に接続された電源より、点火端子2に高電圧が印加されると点火栓3が発火する。これにより、着火パッド4および導火帯6へ燃焼が伝わり、発熱剤5が燃焼して素電池7が加熱される。そして、素電池7の電解質14が溶融し、溶融塩すなわちイオン伝導体となる。このようにして、電池が活性化し、放電が可能となる。
以下に、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の手順により、図2と同様の素電池を作製した。なお、素電池の作製は、全て露点−45℃以下の乾燥空気中で水分の影響を極力排除した環境下で行った。
(1)正極活物質の作製
磁製のボールミルにてチタン粉末と硫黄粉末とを原子比1:2の割合で混合した。得られた混合物を磁製のるつぼにて約450℃で3時間加熱して焼成し、TiS2の焼成物を得た。この焼成物を磁製のボールミルにて200メッシュ以下になるよう粉砕・分級し、正極活物質としてTiS2粉末を得た。
上記で得られたTiS2粉末と、共晶塩としてLiCl−KClと、結着材としてシリカ粉末とを、磁製のボールミルにて重量比240:110:7の割合で混合した。この混合物を、アルゴンガス雰囲気下にて、450℃で1時間焼成した。その後、焼成物を磁製のボールミルにて200メッシュ以下になるよう粉砕・分級し、正極合剤を得た。この正極合剤を2ton/cm2の圧力で直径13mmおよび厚さ0.4mmの円盤状に加圧成形し、正極13を得た。
共晶塩としてLiCl−KClと、保持材としてMgOとを重量比60:40で混合し、得られた混合物を2ton/cm2の圧力で直径13mmおよび厚さ0.4mmの円盤状に加圧成形して電解質14を得た。
直径11mmおよび厚さ0.7mmの円盤状のLi箔からなる負極合剤層15をステンレス鋼SUS304製のカップ状の集電体16に入れ、集電体16の開口端部を内方に折り曲げて、負極合剤層15の周縁部をかしめて、集電体16の折り曲げ部と底部との間で締め付けた。このようにして、負極合剤層15を集電体16内に固定し、直径13mmおよび厚さ1.2mmの円盤状の負極12を得た。
上記で得られた正極13と負極12とを電解質14を介して重ね合わせて素電池を得た。
磁製のボールミルにてチタン粉末と、硫黄粉末とを、原子比1:xの割合で混合した。得られた混合物を磁製のるつぼにて約450℃で3時間加熱して焼成し、TiSxの焼成物を得た。この焼成物を磁製のボールミルにて200メッシュ以下になるよう粉砕・分級し、正極活物質としてTiSx粉末を得た。
このとき、TiSxのx値を表1に示すように種々に変えてそれぞれ正極活物質を作製した。そして、これらの正極活物質を用いて参考例1と同様の方法によりそれぞれ素電池を作製した。
磁製のボールミルにてチタン粉末と、元素Mの粉末と、硫黄粉末とを、原子比1−α:α:xの割合で混合した。この混合物を磁製のるつぼにて約450℃で3時間加熱して焼成し、Ti1-αMαSxの焼成物を得た。この焼成物を磁製のボールミルにて200メッシュ以下になるよう粉砕・分級し、正極活物質としてTi1-αMαSx粉末を得た。
このとき、Ti1-αMαSxのα値、x値、および元素Mを表2〜5に示すように種々に変えてそれぞれ正極活物質を作製した。そして、これらの正極活物質を用いて参考例1と同様の方法によりそれぞれ素電池を作製した。
磁製のボールミルにて鉄粉末と、硫黄粉末とを、原子比1:2の割合で混合した。この混合物を磁製のるつぼにて約450℃で3時間加熱して焼成し、FeS2の焼成物を得た。この焼成物を磁製のボールミルにて200メッシュ以下になるよう粉砕・分級し、正極活物質としてFeS2粉末を得た。この正極活物質を用いて参考例1と同様の方法により素電池を作製した。
硫黄粉末と、鉄粉末と、イリジウム粉末とを、重量比53.4:36.6:10の割合で混合した。この混合物を磁製のるつぼにて約450℃で3時間加熱して焼成した。焼成物を磁製の乳鉢にて粉砕し200メッシュ以下に粉砕・分級した。この焼成工程と粉砕工程とを交互に3回ずつ繰り返し行い、正極活物質として、FeS2とIrS2の複合材料(イリジウム含有量:10重量%)を得た。この正極活物質を用いて参考例1と同様の方法により素電池を作製した。
イリジウム粉末の代わりにチタン粉末を用いた以外は、比較例2と同様の方法により正極活物質として、FeS2とTiS2の複合材料(チタン含有量:10重量%)を得た。この正極活物質を用いて参考例1と同様の方法により素電池を作製した。
イリジウム粉末の代わりにバナジウム粉末を用いた以外は、比較例2と同様の方法により正極活物質として、FeS2とVS2の複合材料(バナジウム含有量:10重量%)を得た。この正極活物質を用いて参考例1と同様の方法により素電池を作成した。
上記で作製した素電池について以下のような評価を行った。
温度の制御が可能な2枚の熱板で素電池を挟んで試験用セルを構成した。そして、試験用セルを定電流放電(終止電圧:0.4V)し、素電池の放電電圧を調べた。
放電試験は、熱板により、電解質にLiCl−KClを用いた熱電池の平均的な動作温度である550℃に素電池を加熱して行った。そして、放電開始から10秒経過した時点の電圧を放電電圧とした。電流密度は0.5、1.0、1.5、および2.0A/cm2とした。
上記放電試験の結果を表1〜6に示す。
これは、チタン含有硫化物である参考例1〜7の正極活物質が、二硫化鉄を含む比較例1〜4の正極活物質よりも高い反応性を有するとともに、平衡電位が高く、放電時の過電圧が小さいためであると考えられる。
TiSxにおいて、x<1.5または2.75<xである参考例2および7の素電池では、正極活物質が単一相でないため、放電電圧が若干低下した。このことから、xは1.5〜2.75であるのが好ましいことがわかった。
その中でも、元素MがCoである実施例9〜18の素電池は、放電電圧が大きく、優れた高負荷放電特性を示した。これは、CoがTiの固相内に均一に拡散しやすく、結晶の均質性が向上して元素Mの置換による効果が発揮されやすくなったためであると考えられる。
しかし、αが0.98である正極活物質を用いた素電池では、特に電流密度1.5〜2.0/cm2の大電流放電時において、αが0.95である正極活物質を用いた素電池よりも放電電圧が低下した。これは、元素Mの置換量αが0.95を超えると、放電電圧の増大などの元素Mの置換による効果が大きくなりすぎ、それ以上にTiによる反応性向上の効果が相対的に小さくなったためと考えられる。このことから、元素Mの置換量αは0.95以下であるのが好ましいことがわかった。
Ti1-αMαSxにおいて、元素M、α、xを表7に示すように変えて、参考例2と同様の方法により正極活物質を得た。このとき、表7に示すように2種類の元素M(原子比1:1)を組み合わせて用いた。例えば、元素MにCoとCrとを用いた実施例63の正極活物質の組成はTi0.5Co0.25Cr0.25S2である。
これらの正極活物質を用いて参考例1と同様の方法により素電池を作製し、上記と同様の放電試験を行った。その結果を表7に示す。
なお、本実施例で示した元素Mの組み合わせ以外に、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Ge、Zr、Nb、Mo、Ag、Cd、Sn、およびWの元素を2種以上組み合わせた場合でも、本実施例と同様の効果が得られる。
上述した図1と同じ構造の熱電池を作製した。なお、熱電池の作製は、全て露点−45℃以下の乾燥空気中で水分の影響を極力排除した環境下で行った。
素電池7と発熱剤5とを交互に積み重ね発電部を構成した。このとき、素電池7を13個用いた。発熱剤5には、FeとKClO4との混合物を用い、電池作動中の平均温度が550℃となるように混合比を調整した。
点火栓3の点火剤には、硝酸カリウム、硫黄、および炭素を重量比75:10:15の割合で混合したものを用いた。断熱材9aおよび9bには、シリカとアルミナを主成分とするセラミック繊維材料を用いた。このようにして、作動温度が550℃の熱電池を作製した。
上記実施例では、正極中のLiCl−KClの含有量を約31重量%、シリカ粉末の含有量を約2重量%としたが、これらの含有量に特に制限は無く、正極の強度や性能に応じて必要量を適宜添加すればよい。
2 点火端子
3 点火栓
4 着火パッド
5 発熱剤
6 導火帯
7 素電池
8 負極リード板
9a、9b 断熱材
10a 正極端子
10b 負極端子
11 電池蓋
12 負極
13 正極
14 電解質
15 負極合剤層
16 集電体
Claims (3)
- 正極、負極、および前記正極と前記負極との間に配された電解質からなる素電池を複数個備えた熱電池であって、
前記電解質は前記熱電池の作動温度で溶融する塩を含み、前記正極は活物質としてチタン含有硫化物を含み、
前記チタン含有硫化物は、一般式:Ti 1-α M α S x (式中、Mは、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Ge、Zr、Nb、Mo、Ag、Cd、Sn、およびWからなる群より選ばれた少なくとも一種であり、αおよびxは、それぞれ0<α≦0.95および1.5≦x≦2.75を満たす。)で表される化合物である熱電池。 - 前記αが、0.25〜0.75である、請求項1記載の熱電池。
- 前記xが、1.75〜2.25である、請求項1または2記載の熱電池。
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