JP5001549B2 - α−アルキルシンナムアルデヒド類の製造方法 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1には、ベンズアルデヒドとオクタナールからのα-ヘキシルシンナムアルデヒドの製造法が開示されている。この方法においては、水酸化カリウムが触媒として使用され、そしてグリコールが溶媒として使用されているが、大量の溶媒が使用されなければならない為、生産能力が低いと言う欠点がある。
特許文献2に記載の方法では、アルドール縮合は溶媒の非存在下で、アルカナールと少量のカルボン酸をベンズアルデヒドと触媒としての塩基(ピロリジン)を含む混合物にゆっくりと添加することにより行うことができるが、高選択性が得られる触媒は高価な5員環化合物のピロリジンのみに限られており、高価な触媒を水洗廃棄する必要があると言う欠点がある。
例えば、特許文献3には、リン酸アルミニウム等の固体触媒を用いた、ベンズアルデヒドまたはその芳香環上に置換基を有するベンズアルデヒドとアルカナールのアルドール縮合によるα-アルキルシンナムアルデヒドの製造法が開示されている。しかし、この特許文献3の実施例においては、全て10%以上のアルカナールの自己縮合物が生成しており、選択性の面で満足できるものではない。
また、環境への負荷を低減すべく、触媒の回収、再使用に関する方法をも提供することである。
さらに、有機酸については、pKaが2〜6の酸を用いることが反応性の点で有効であり、また、触媒としての1級アミンをシリカゲル等の担体に固定化させた固体触媒を用いることにより、選択性は均一系アミン触媒と同等で、ろ過することにより触媒を容易に回収できることを見出した。
即ち、本発明は、前記1級アミンと有機酸との割合が、有機酸の酸基/1級アミンのNH 2 基のモル比で0.5〜20であり、前記ベンズアルデヒド類がベンズアルデヒド、メチルベンズアルデヒド、アニスアルデヒド、p-イソプロピルベンズアルデヒド、及びp-ターシャリブチルベンズアルデヒドからなる群から選ばれる1種以上であり、前記アルカナールが式:R−CH 2 −CHO(式中、Rは炭素数1〜10のアルキル基を示す。)で表されるものである、α−アルキルシンナムアルデヒド類の製造方法を提供する。
さらに、本発明の製造方法によれば、アルカナールの自己縮合物の生成が少ないのでα-アルキルシンナムアルデヒド類の精製が容易である。
また、触媒としての1級アミンをシリカゲル等の担体に固定化させた固体触媒を用いることにより、選択性は均一系アミン触媒と同等で、ろ過することにより触媒を容易に回収することができる。
さらに、回収した触媒は、再びアルドール縮合の触媒として利用できる。
以下、各成分について説明する。
なお、酸基/NH2基のモル比とは、酸のモル数にカルボキシ基等酸基の個数を掛けた値を、アミンのモル数にアミノ基の個数を掛けた値で除した値である。
また、本発明に用いられるベンズアルデヒド類は、アルドール縮合に不活性である基がベンゼン環に置換されていてもよく、または置換されていなくてもよい。具体的には、ベンズアルデヒド、メチルベンズアルデヒド、アニスアルデヒド、p-イソプロピルベンズアルデヒド、p-ターシャリブチルベンズアルデヒド等が挙げられる。
使用されるベンズアルデヒド類とアルカナールの比は、特には重要ではない。アルカナールの高い反応性及びアルカナールの自己縮合のために、アルカナールに対してベンズアルデヒド類が過剰となる条件が一般的に用いられる。アルカナール対ベンズアルデヒド類のモル比は、好ましくは1.0〜2.5、より好ましくは1.2〜1.8のモル比が使用される。
また、反応方法において、アルカナールは、ベンズアルデヒド類及びアミン触媒、酸を含む反応混合物に、計量して時間をかけて滴下導入することが好ましい。
アミンの量は、広い範囲内で変化させることができるが、使用されるアルカナール1モルに対して、NH2基として、好ましくは0.01〜0.5モル、より好ましくは0.05〜0.20モルである。
また、本発明のアルドール縮合においては、アミン触媒として上記の1級アミンと酸を用いる。適切な酸としては、好ましくはpKaが2〜6の酸であり、例えば酢酸(pKa=4.56)、オクタン酸(pKa=4.89)等のモノカルボン酸、クエン酸(pKa=2.87、4.35、5.69)やリンゴ酸(pKa=3.24,4.71)等の多塩基酸等を好適に用いることができる。多塩基酸を用いる場合、解離段によりpKaが異なるが、全てのpKaが本項の範囲内であってもよいし、少なくとも1つのpKaが範囲内であってもよい。これらのpKa値は、化学便覧 基礎編II(丸善株式会社)の338〜342頁で参照できる。これらの有機酸は、1種を用いてもよく、2種以上を組み合せて用いてもよい。なお、2種以上の有機酸を用いる場合、混合有機酸のpKaが2〜6であればよい。
アミンと酸の量比は、酸基/NH2基のモル比が0.5〜20モルである。反応性の観点から、該モル比は、好ましくは1.0〜10モルであり、さらに好ましくは1.5〜8モルである。使用した過剰の酸は蒸留により回収し、再使用可能である。
アルドール縮合が実行される温度は、好ましくは70〜140℃、より好ましくは100〜120℃であり、アルドール縮合により生成する水は系外に除去することが、縮合反応を促進する観点から望ましい。
また、固定化触媒等の非均一触媒を使用した場合は、反応終了後、減圧ろ過により触媒を除去し、粗液を蒸留することにより、触媒は回収して再使用が可能となり、廃棄物が低減される。
300mLの4つ口フラスコに、ベンズアルデヒド91.6g(0.86mol)、ブチルアミン6.3g(0.09mol)、酢酸(pKa=4.56)15.2g(0.25mol)を加え、撹拌棒、温度計、滴下チューブを接続するゴム栓、ジムロートを付け、120℃に設定されたオイルバスで撹拌しながら、オクタナール74.8g(0.58mol)を約4時間かけて滴下し、滴下後20分間熟成した。反応終了後、ガス・リキッド・クロマトグラフィー(GLC)により分析を行った結果、ベンズアルデヒドの転化率69.5%、オクタナールの転化率100%に達した。α-ヘキシルシンナムアルデヒドのオクタナールに対する選択率は87.7%であり、α-ヘキシルシンナムアルデヒドに対するオクタナールの自己縮合物(α-ヘキシルデセナール)は1.9%であった。
300mLの4つ口フラスコに、ベンズアルデヒド91.8g(0.87mol)、ブチルアミン6.3g(0.09mol)、酢酸15.5g(0.26mol)を加え、撹拌棒、温度計、滴下チューブを接続するゴム栓、水分留器を付け、120℃に設定されたオイルバスで撹拌しながら、オクタナール74.7g(0.58mol)を約4時間かけて滴下し、滴下後20分間熟成した。なお、反応中に生成する水は系外に留去させた。
反応終了後、GLCにより分析を行った結果、ベンズアルデヒドの転化率74.9%、オクタナールの転化率100%に達した。α-ヘキシルシンナムアルデヒドのオクタナールに対する選択率は89.5%であり、α-ヘキシルシンナムアルデヒドに対するオクタナールの自己縮合物(α-ヘキシルデセナール)は0.9%であった。
300mLの4つ口フラスコに、ベンズアルデヒド91.4g(0.86mol)、ブチルアミン2.1g(0.03mol)、酢酸15.8g(0.26mol)を加え、撹拌棒、温度計、滴下チューブを接続するゴム栓、水分留器を付け、120℃に設定されたオイルバスで撹拌しながら、オクタナール74.5g(0.58mol)を約4時間かけて滴下し、滴下後20分間熟成した。なお、反応中に生成する水は系外に留去させた。
反応終了後、GLCにより分析を行った結果、ベンズアルデヒドの転化率66.0%、オクタナールの転化率99.8%に達した。α-ヘキシルシンナムアルデヒドのオクタナールに対する選択率は87.1%であり、α-ヘキシルシンナムアルデヒドに対するオクタナールの自己縮合物(α-ヘキシルデセナール)は3.6%であった。
300mLの4つ口フラスコに、ベンズアルデヒド91.8g(0.87mol)、ブチルアミン6.3g(0.09mol)、クエン酸(pKa=2.87,4.35,5.69)5.6g(0.03mol)を加え、撹拌棒、温度計、滴下チューブを接続するゴム栓、水分留器を付け、120℃に設定されたオイルバスで撹拌しながら、オクタナール74.7g(0.58mol)を約7時間半かけて滴下し、滴下後20分間熟成した。
なお、反応中に生成する水は系外に留去させた。反応終了後、GLCにより分析を行った結果、ベンズアルデヒドの転化率72.8%、オクタナールの転化率99.9%に達した。α-ヘキシルシンナムアルデヒドのオクタナールに対する選択率は89.3%であり、α-ヘキシルシンナムアルデヒドに対するオクタナールの自己縮合物(α-ヘキシルデセナール)は1.4%であった。
1000mLの4つ口フラスコに、ベンズアルデヒド275.1g(2.59mol)、ブチルアミン12.7g(0.17mol)、酢酸62.4g(1.04mol)を加え、撹拌棒、温度計、滴下チューブを接続するゴム栓を付け10段精留塔に接続し、120℃に設定されたオイルバスで撹拌しながら、オクタナール220.2g(1.72mol)を約4時間かけて滴下し、滴下後20分間熟成した。なお、反応中に生成する水は塔を通して系外に留去させた。反応終了後、GLCにより分析を行った結果、ベンズアルデヒドの転化率70.2%、オクタナールの転化率99.9%に達した。α-ヘキシルシンナムアルデヒドのオクタナールに対する選択率は90.4%であり、α-ヘキシルシンナムアルデヒドに対するオクタナールの自己縮合物(α-ヘキシルデセナール)は1.0%であった。
得られた反応混合物は、そのまま10段精留塔を使用し、まず酢酸を13.3〜6.0kPa、常温〜56℃、還流比1→0.5で55.1g留去し、さらに未反応のベンズアルデヒドを6.0〜0.3kPa、常温〜41℃、還流比2→10で76.6g留去し、さらに少量の中間フラクションを留去した後、0.27kPa、135〜139℃で97%以上の高純度のα-ヘキシルシンナムアルデヒド281.3gを得た。
3-アミノプロピルトリエトキシシラン(アルドリッチ社製品番号440140)4.6gとシリカMCM−41(アルドリッチ社製品番号64,364-5)4.5gとトルエン60mLを還流条件下1.5時間撹拌し、生成したエタノールとトルエンを常圧下留去した。得られた白色固体10.1gをジクロロメタンで還流洗いにより、過剰な3-アミノプロピルトリエトキシシランを除去し、乾燥後、120℃のオーブンで窒素雰囲気下24時間焼成した。得られた3-アミノプロピル修飾シリカゲル粉末5.7gは、熱重量測定から有機部位重量15%(文献値12%)を含んでいることが確認出来た。
100mLの4つ口フラスコに、ベンズアルデヒド25.0g(0.24mol)、上記で調整した3-アミノプロピル修飾シリカゲル3.4g(NH2基=0.009mol)、酢酸2.9g(0.05mol)を加え、撹拌棒、温度計、滴下チューブを接続するゴム栓・水分留器を付け、120℃に設定されたオイルバスで撹拌しながら、オクタナール20.3g(0.16mol)を約4時間かけて滴下し、滴下後20分間熟成した。なお、反応中に生成する水は系外に留去させた。反応終了後、GLCにより分析を行った結果、ベンズアルデヒドの転化率66.0%、オクタナールの転化率98.9%に達した。α-ヘキシルシンナムアルデヒドのオクタナールに対する選択率は90.3%であり、α-ヘキシルシンナムアルデヒドに対するオクタナールの自己縮合物(α-ヘキシルデセナール)は3.2%であった。反応終了後、反応粗液を減圧ろ過し、ろ過粉末を4.2g得た。回収により得られた3-アミノプロピル修飾シリカゲル粉末は、次の実施例7の反応に使用した。
100mLの4つ口フラスコに、ベンズアルデヒド25.0g(0.24mol)、実施例6で回収した3-アミノプロピル修飾シリカゲル4.2g(NH2基=0.011mol)、酢酸2.8g(0.05mol)を加え、撹拌棒、温度計、滴下チューブを接続するゴム栓・水分留器を付け、120℃に設定されたオイルバスで撹拌しながら、オクタナール20.4g(0.16mol)を約4時間かけて滴下し、滴下後20分間熟成した。
なお、反応中に生成する水は系外に留去させた。反応終了後、GLCにより分析を行った結果、ベンズアルデヒドの転化率35.2%、オクタナールの転化率67.5%であった。α-ヘキシルシンナムアルデヒドのオクタナールに対する選択率は76.5%であり、α-ヘキシルシンナムアルデヒドに対するオクタナールの自己縮合物(α-ヘキシルデセナール)は16.7%であり、初回に比べ転化率、選択率共に低下していたが、回収しても触媒活性は残っていることが確認できた。
200mLの4つ口フラスコに、t-ブチルベンズアルデヒド45.1g(0.28mol)、ブチルアミン3.1g(0.04mol)、酢酸7.6g(0.13mol)を加え、撹拌棒、温度計、滴下チューブを接続するゴム栓・ジムロートを付け、120℃に設定されたオイルバスで撹拌しながら、プロピオンアルデヒド25.7g(0.44mol)を約4時間かけて滴下し、滴下後20分間熟成した。反応終了後、GLCにより分析を行った結果、t-ベンズアルデヒドの転化率93.0%、プロピオンアルデヒドの転化率99.8%に達した。交差アルドール体のt-ブチルベンズアルデヒドに対する選択率は93.6%であった。また、プロピオンアルデヒドの自己縮合物が約4g(選択率約20%)生成していたが、これは目的物に対して非常に低沸点であり、蒸留精製可能であった。
300mLの4つ口フラスコに、ベンズアルデヒド91.7g(0.86mol)、ブチルアミン6.5g(0.09mol)、硫酸4.2g(0.04mol)を加え、撹拌棒、温度計、滴下チューブを接続するゴム栓・水分留器を付け、120℃に設定されたオイルバスで撹拌しながら、オクタナール74.6g(0.58mol)を4時間かけて滴下し、滴下後20分間熟成した。なお、反応中に生成する水は系外に留去させた。反応終了後、GLCにより分析を行った結果、ベンズアルデヒドの転化率44.1%、オクタナールの転化率87.8%と酢酸、クエン酸に比べて低転化率であった。また、α-ヘキシルシンナムアルデヒドのオクタナールに対する選択率は68.8%であり、α-ヘキシルシンナムアルデヒドに対するオクタナールの自己縮合物(α-ヘキシルデセナール)は14.6%と多く副生した。
300mLの4つ口フラスコに、ベンズアルデヒド99.0g(0.93mol)、ピロリジン2.1g(0.03mol)、酢酸0.4g(0.01mol)を加え、撹拌棒、温度計、滴下チューブを接続するゴム栓・ジムロートを付け、90℃に設定されたオイルバスで撹拌しながら、オクタナール74.8g(0.58mol)を約4時間かけて滴下し、滴下後20分間熟成した。反応終了後、GLCにより分析を行った結果、ベンズアルデヒドの転化率29.3%、オクタナールの転化率81.4%とブチルアミンを同mol使用した実施例3に比べて低転化率であった。また、α-ヘキシルシンナムアルデヒドのオクタナールに対する選択率は59.0%であり、α-ヘキシルシンナムアルデヒドに対するオクタナールの自己縮合物(α-ヘキシルデセナール)は38.3%と比較例1よりさらに多く副生した。
Claims (8)
- 1級アミンと有機酸の存在下、ベンズアルデヒド類とアルカナールとを縮合させる、α-アルキルシンナムアルデヒド類の製造方法であって、
前記1級アミンと有機酸との割合が、有機酸の酸基/1級アミンのNH2基のモル比で0.5〜20であり、
前記ベンズアルデヒド類がベンズアルデヒド、メチルベンズアルデヒド、アニスアルデヒド、p-イソプロピルベンズアルデヒド、又はp-ターシャリブチルベンズアルデヒドであり、
前記アルカナールが式:R−CH2−CHO(式中、Rは炭素数1〜10のアルキル基を示す。)で表されるものである、α−アルキルシンナムアルデヒド類の製造方法。 - 有機酸が、カルボン酸及び/又は多塩基酸の中から選ばれ、pKaが2〜6である請求項1に記載の製造方法。
- ベンズアルデヒド類とアルカナールの反応時に発生する水を除去しながら反応を行う請求項1又は2に記載の製造方法。
- アルカナールを、ベンズアルデヒド類及び1級アミンと有機酸を含む反応混合物に滴下する請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
- ベンズアルデヒド類とアルカナールを70〜140℃で反応させる請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
- α-アルキルシンナムアルデヒド類が、α−へキシルシンナムアルデヒドである請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
- 1級アミンが担体に固定化されている請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
- 担体に固定された1級アミンと有機酸の存在下、ベンズアルデヒド類とアルカナールとを縮合させた後、反応粗液のろ過粉末を回収し、該回収ろ過粉末を用いる請求項1〜6のいずれかに記載のα−アルキルシンナムアルデヒド類の製造方法。
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