JP3958865B2 - ジメチロールアルカン酸の製造方法 - Google Patents

ジメチロールアルカン酸の製造方法 Download PDF

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  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)
  • Low-Molecular Organic Synthesis Reactions Using Catalysts (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ジメチロールアルカン酸の製造方法に関する。詳しくは、トリアルキルアミン触媒の存在下、脂肪族アルデヒドとホルムアルデヒドとの縮合反応により得たジメチロールアルカナール、未反応のホルムアルデヒド、水を含む反応液よりトリアルキルアミン触媒を効果的に除き、次のジメチロールアルカナールの過酸化水素による酸化反応を有効に行わしめる方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ジメチロールアルカナールはポリウレタン樹脂やエポキシ樹脂の原料として用いられるジメチロールアルカン酸の中間原料として有用である(USP3,412,054,EP735069A、特開昭61−44916号、特開平1−104613号)。
ジメチロールアルカナールはα−炭素原子に2個の水素原子を有する脂肪族アルデヒドとホルムアルデヒド(ホルマリン水溶液)とを無機塩基性物質(例えばNaOH)の存在下で縮合反応させて得られるトリメチロールアルカンの中間体として得られる(特公昭52−20965号)。
一般的には次式に従って反応が進行する。
【0003】
【化2】
Figure 0003958865
【0004】
上式から明らかなように1モルのジメチロールアルカナールを製造するのに要するホルムアルデヒドの量は2モルであるが、実際には反応率を上げるため前記公告公報に記載されるように過剰(2.5〜10モル)のホルムアルデヒドを使用するのが一般的である。その場合トリメチロールアルカンへの反応が進行するので、ジメチロールアルカナールを選択的製造することは容易でない。
【0005】
また、得られたジメチロールアルカナールを含む反応生成液から未反応のホルムアルデヒドを蒸留等により分離除去した後、特に縮合反応触媒を除去することなく、過酸化水素を用いて酸化反応してジメチロールアルカン酸を生成させ、この酸化反応液を晶析処理してジメチロールアルカン酸製品を取得することが知られている。
【0006】
しかしながら、塩基触媒として、無機塩基性物質に代えてトリアルキルアミン触媒を用いた場合には、酸化反応で生成したジメチロールアルカン酸とトリアルキルアミンが反応してジメチロールアルカン酸のアミン塩を生成し、このアミン塩は晶析処理時にジメチロールアルカン酸の溶解度を増加させ、晶析収率を悪化させることを我々は見い出した。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記脂肪族アルデヒド又はα−アルキルアクロレインとホルムアルデヒドとの縮合反応により得られたジメチロールアルカナールを含む反応生成液からトリアルキルアミン触媒をジメチロールアルカナールの熱変質又は損失を防止しつつ、且つ効率よく分離し、工業的有利にジメチロールアルカナールを精製し、後のジメチロールアルカナールの酸化反応により得られたジメチロールアルカン酸の晶析を容易とする方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、α−炭素原子に2個の水素原子を有する炭素数3〜9の脂肪族アルデヒド又はα−アルキルアクロレィンとホルムアルデヒドとをトリアルキルアミン触媒および水の存在下で縮合反応させて得られる一般式(I)
【0009】
【化3】
Figure 0003958865
【0010】
(式中、Rは炭素数1〜7のアルキル基を示す。)
で示されるジメチロールアルカナールを含む反応生成液に非極性有機溶媒を接触させ、反応生成液からトリアルキルアミン触媒を選択的に非極性有機溶媒層に抽出せしめ、相分離によって非極性有機溶媒層を反応生成液層から分離した後、該反応生成液層を過酸化水素で酸化し、得られたジメチロールアルカン酸を含む酸化反応液を有機溶媒で晶析処理してジメチロールアルカン酸を得ることを特徴とするジメチロールアルカン酸の製造方法を提供するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
次に本発明を詳細に説明する。
一般式(I)で示されるジメチロールアルカナールとしては、例えばジメチロールプロパナール、ジメチロールブタナール、ジメチロールペンタナール、ジメチロールヘキサナール、ジメチロールヘプタナール、ジメチロールオクタナール等が挙げられる。
【0012】
このジメチロールアルカナールは、例えば下記の(i)、(ii)の方法で製造される
(i).α−炭素原子に2個の水素原子を有する炭素数3〜9の脂肪族アルデヒドとホルムアルデヒドとをトリアルキルアミン触媒、水の存在下で縮合反応させて得る。
(ii).α−アルキルアクロレイン〔CH2 =C(R)−CHO〕とホルムアルデヒドとをトリアルキルアミン触媒、水の存在下で縮合反応させて得る。
本発明において用いられる脂肪族アルデヒドは、α−炭素原子に2個の水素原子を有するアルデヒド、すなわち、一般式
【0013】
【化4】
R−CH2 −CHO
【0014】
(式中、Rは炭素数が1〜7、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基を表わす。)
で示されるアルデヒドで、例えばプロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、n−ペンチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−ヘプチルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド等が好適に用いられる。
【0015】
ホルムアルデヒドとしては取扱いの面から水で希釈したものが好ましく、その濃度が10〜70重量%の水溶液を使用するのが好ましく、さらに30〜50重量%の水溶液がより好ましく、特にホルマリン水溶液が好適である。
トリアルキルアミン触媒としては、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジエチルメチルアミン、ジエチルプロピルアミン等のアルキル基の炭素数が1〜4の第3級脂肪族アミンが使用される。
上記脂肪族アルデヒドとホルムアルデヒドとをトリアルキルアミン触媒の存在下で縮合反応させることにより得られるジメチロールアルカナールは一般式(I)
【0016】
【化5】
Figure 0003958865
【0017】
(式中、Rは上記脂肪族アルデヒドのRと同一である。)
で示される化合物であり、該脂肪族アルデヒドがプロピオンアルデヒドの場合にはジメチロールプロパナールが、またn−ブチルアルデヒドの場合にはジメチロールブタナールが生成される。
上記縮合反応において脂肪族アルデヒドに対するホルムアルデヒドの使用モル比は、通常2以上、好ましくは2.5〜50、より好ましくは10〜40、特に好ましくは15〜30の範囲である。
【0018】
また、脂肪族アルデヒドに対する水の使用モル比は10〜80、好ましくは20〜80の範囲である。
さらに脂肪族アルデヒドに対する塩基性触媒のトリアルキルアミンの使用モル比は0.03〜0.30、好ましくは0.05〜0.25の範囲である。
上記ホルムアルデヒド/脂肪族アルデヒドのモル比があまり低い(2未満)と、脂肪族アルデヒドの転換率が低く、且つジメチルアルカナールへの選択率も低い。
【0019】
また、水/脂肪族アルデヒドのモル比が下限未満では反応速度が低下し、且つ副生物、特にα−アルキルアクロレイン〔CH2 =C(R)−CHO〕が増加する。また、上限より大きいとトリメチロールアルカナールの副生量が増加し、ジメチロールアルカナールへの選択率が低下してくる。
さらにトリアルキルアミン/脂肪族アルデヒドのモル比(0.03〜0.30)が下限未満では反応速度が著しく低下し、一方、上限より大きいとトリメチロールアルカンの副生量が増加し、ジメチロールアルカナールへの選択率が低下してくる。
【0020】
上記縮合反応は0〜100℃、望ましくは30〜80℃の温度範囲で実施される。反応圧力としては常圧〜数気圧の範囲内でよく、反応時間としては数分〜120分の範囲内である。反応器としては撹拌槽型反応器や管式反応器等が用いられる。
この反応で副生したα−アルキルアクロレインはホルムアルデヒドと反応してジメチロールアルカナールを形成する(英国特許第1,535,826号)ので、反応系に戻し、ホルムアルデヒドと反応させジメチロールアルカナールの製造に利用するのが好ましい。
【0021】
前記方法で得られたジメチロールアルカナール、未反応のホルムアルデヒドを含む反応生成液は次いで酸化反応系に供せられ、ジメチロールアルカン酸の製造に供されるが、本発明においては上記縮合反応生成液に非極性有機溶媒を接触させ、該縮合反応生成液からトリアルキルアミン触媒を選択的に非極性有機溶媒層に抽出せしめ、相分離によって非極性有機溶媒層を反応生成液層から分離してジメチロールアルカナールを含む反応液よりトリアルキルアミンを除去し、次の酸化工程で得られたジメチロールアルカン酸の晶析を容易とする。
【0022】
トリアルキルアミンの分離に用いる非極性有機溶媒としては、トリアルキルアミン触媒を選択的に溶解し、ジメチロールアルカナール、水及びホルムアルデヒドをほとんど溶解しないものであればよく、20℃における誘電率(ε)が6以下、好ましくは4以下の有機溶媒であって、その沸点が50〜200℃、好ましくは50〜150℃のものであればよい。具体的には、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。
【0023】
上記抽出処理は次の分離処理と組合わせて、通常の液−液抽出処理に用いられる方法、例えば、回分又は連続方式、並流又は向流接触、一段又は多段処理のいずれかの方法の組合せによって実施される。
上記抽出処理における縮合反応生成液および非極性有機溶媒の使用量は該縮合反応生成液/該非極性有機溶媒の重量比で通常1/0.2〜1/20、望ましくは1/0.5〜1/10の範囲内である。
【0024】
上記縮合反応生成液及び非極性有機溶媒との抽出処理温度としては0〜100℃、望ましくは0〜80℃、さらに望ましくは10〜60℃の範囲であり、また抽出時間としては3分〜5時間、望ましくは5分〜1時間の範囲である。上記抽出処理においては、該縮合反応生成液と非極性有機溶媒を撹拌処理等の両者を十分接触させる等の接触効率を上げる方法を採用するのが望ましい。
【0025】
上記抽出処理後の抽出液の分離処理は通常の粗分離、即ち油水分離に用いられる装置及び方法、例えば静置分離や遠心分離等の方法により実施できる。
上記抽出処理およびその相分離処理によって非極性有機溶媒層には縮合反応生成液中のトリアルキルアミン触媒が選択的に抽出され、一方縮合反応生成液層はトリアルキルアミン触媒を実質的に含有しないものが得られる。
【0026】
上記処理で得られたトリアルキルアミン触媒を実質的に含有しない縮合反応生成液層は次いで酸化反応系に供するに先だち、該縮合反応生成液から未反応のホルムアルデヒドを分離除去する。ホルムアルデヒドの残存量がジメチルアルカナールに対して30モル%以下、望ましくは5モル%以下にし、酸化反応系での蟻酸の生成をジメチロールアルカナールに対して30モル%以下、好ましくは5モル%以下にし、ジメチロールアルカン酸のメチロール基と蟻酸とのエステル化反応による損失を防止する。
【0027】
酸化反応は上記ジメチロールアルカナールを水性媒体中で塩基性物質の存在下、過酸化水素により実施される。該酸化反応系でのジメチロールアルカナール濃度としては5〜60重量%、望ましくは20〜50重量%の範囲である。
ジメチロールアルカナール1モルに対し、過酸化水素は0.2〜2モル、好ましくは0.5〜1.5モルの割合で用いられる。
【0028】
反応温度は通常20〜100℃、好ましくは40〜80℃の範囲である。上記酸化反応は未反応のジメチロールアルカナールが残存しなくなるまで行なう。
上記方法により得られた酸化反応液は、次いで晶析等の精製によりジメチロールアルカン酸を取得する。晶析処理に用いられる有機溶剤としては、酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸アルキルエステル類が挙げられる。
【0029】
有機溶媒はジメチロールアルカン酸100部当り、50〜400重量部の割合で用いられる。晶析は、両者を撹拌後、10℃以下、好ましくは5℃以下の低い温度に冷却し、静置することにより行われる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
【0030】
【実施例】
実施例1
1リットルの内容積のガラス製フラスコ内に50%ホルマリン水溶液582.5gとn−ブチルアルデヒド36.6gを加え、更にトリエチルアミン5.2gを撹拌しながら添加し、40℃で1時間縮合反応を行ってジメチロールブタナール(DMBAD)が生成した反応液を得た。
次いで、得た縮合反応液にn−ヘキサンを重量比(縮合反応液/n−ヘキサン)で1/0.58の割合で加え、30℃で6分間の抽出処理を行った後、残液を静置分離してn−ヘキサンに富む相と反応液に富む相に分け、反応液に富む相を更に同様な操作で抽出操作を2回繰り返して行い、トリエチルアミンを実質的に含有しない反応液を得た。
【0031】
この反応液を還流冷却器、撹拌器を備えた3リットルのフラスコ内に入れ、更に水1,310gを加え、次いで加熱して未反応のホルムアルデヒドを水と共に留出させ除去した。その後、室温迄冷却後、30%の過酸化水素水114.61gをフラスコ内に滴下し、(H2 2 /DMBADモル比は2.6)、60℃の温度で5時間酸化反応を行ってジメチロールブタン酸を含有する反応液を得た。
【0032】
得られた酸化反応液を減圧(34mmHg)で濃縮脱水して固体29.5gを得た後、これに酢酸エチルを100g加え、2℃に冷却して晶析処理してジメチロールブタン酸20.6gを得た。
得られたジメチロールブタン酸の晶析率は、70%であった。
又、用いたn−ブチルアルデヒド当りのジメチロールブタン酸結晶の収率は38%であった。
【0033】
実施例2〜3
実施例1において、縮合反応条件又は抽出条件を表1のように変更して行なった外は同様にしてジメチロールブタン酸の製造を行なった。その結果を表1に示す。
【0034】
比較例1〜2
実施例1において、n−ヘキサンによる抽出処理を行なわなかった外は同様にしてジメチロールブタン酸の製造を行なった。酢酸エチルによるジメチロールブタン酸の晶析はできなかった。
【0035】
【表1】
Figure 0003958865
【0036】
【発明の効果】
触媒のトリアルキルアミンを除くことにより、ジメチロールアルカナールの過酸化水素による酸化反応を効率よく行うことができ、得られるジメチロールアルカン酸の有機溶媒による晶析を容易とすることができた。

Claims (3)

  1. α−炭素原子に2個の水素原子を有する炭素数3〜9の脂肪族アルデヒド又はα−アルキルアクロレィンとホルムアルデヒドとをトリアルキルアミン触媒および水の存在下で縮合反応させて得られる一般式(I)
    Figure 0003958865
    (式中、Rは炭素数1〜7のアルキル基を示す。)
    で示されるジメチロールアルカナールを含む反応生成液に非極性有機溶媒を接触させ、反応生成液からトリアルキルアミン触媒を選択的に非極性有機溶媒層に抽出せしめ、相分離によって非極性有機溶媒層を反応生成液層から分離した後、該反応生成液層を過酸化水素で酸化して得られたジメチロールアルカン酸を含む酸化反応液を有機溶媒で晶析処理してジメチロールアルカン酸を得ることを特徴とするジメチロールアルカン酸の製造方法。
  2. トリアルキルアミンが、トリエチルアミンまたはトリプロピルアミンである、請求項1記載の製造方法。
  3. 非極性有機溶媒が、20℃における誘電率が6以下、沸点が50〜200℃の脂肪族炭化水素または芳香族炭化水素より選ばれたものである、請求項1記載の製造方法。
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