JP5000743B2 - ふっ素含有排水の処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ふっ素を含有する排水を処理する方法に関し、特に強酸性のふっ素含有排水を処理する方法に関する。
ふっ素を含有する排水は、半導体・液晶製造工場や金属表面酸洗処理工場などより排出され、強酸性であることが多い。このようなふっ素含有排水の処理方法として、消石灰などのカルシウム化合物を添加し、ふっ素を難溶性のふっ化カルシウム(CaF2)として固液分離する方法(以下、「カルシウム法」という)が常用されている。しかし、この方法は十分な除去率を得るために、排水中のふっ素量に対して過剰当量の消石灰添加が必要であり、その結果分離されるCaF2に過剰消石灰の混入が避けられない。更に排水中に硫酸または硫酸塩が溶解共存している場合、硫酸カルシウム二水塩も同時に析出し、分離されるCaF2に混入する。このように「カルシウム法」は排水中のふっ素の除去方法としては優れているが、分離される固形物量が増えるため廃棄物量が増え、更に固形物中のCaF2の含有率が低いためリサイクル利用も困難になるという短所がある。
これに対し、硫酸マグネシウムなどのマグネシウム化合物を添加し、ふっ素を微溶性のふっ化マグネシウム(MgF2)として固液分離する方法(以下、「マグネシウム法」という)が知られている。この方法はマグネシウム化合物を過剰に添加してもMgF2以外の固形物の生成がない。これは「カルシウム法」と異なり硫酸塩の溶解度が高いため、排水中に硫酸または硫酸塩が溶解していてもその影響を受けないからである。更に、MgF2の式量は62.3とCaF2の式量78.1より20%小さく、分離されるふっ素化合物の質量が少なくて済む。このように「マグネシウム法」は、分離される固形物量が少なく、処理・処分が容易になるという長所がある。しかし、一方ではふっ素の除去到達濃度が「カルシウム法」より高いという短所がある。これは、MgF2の飽和溶解度がCaF2の飽和溶解度より若干高いことと、後述するように可溶性錯体を形成するためである。
一方、上述した「マグネシウム法」はもとより、「カルシウム法」もまた1段の処理で排水中のふっ素を排水基準である8mg/L以下にすることは困難である。このため後段に二次処理が必要になり、この処理方法として各種の方法が知られている。非特許文献1には、「水酸化物共沈法」 として、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムを析出させることにより、析出した水酸化物に溶存フッ素化合物を吸着共同沈殿させる方法が記載されている。また「吸着法」として、ふっ素吸着樹脂を使用する方法も記載されている。
特許文献1には、「マグネシウム法」の一例として、フッ素含有廃水からフッ素化合物をリサイクルに適した高純度スラッジとして分離回収する方法、即ちフッ素含有廃水に硫酸マグネシウムなどのマグネシウム化合物を添加してMgF2を生成する工程と、生成されたMgF2を凝集させて分離回収する工程とからなるフッ素含有廃水の処理方法が提案されている。しかし、フッ素除去を1段で行うため、処理後のフッ素イオン濃度は排水基準を大きく上回る200mg/L程度である。
また特許文献2には、廃水中のフッ素を回収する工程において副産物を全く発生することなく、処理水中に残存するフッ素を排水基準まで低減させるフッ素含有水の処理方法が提案されている。即ちフッ素含有水にマグネシウム化合物を添加して、該フッ素含有水中のフッ素をMgF2として不溶化し、不溶化物を固液分離して処理水を得る第1のフッ素除去工程と、該第1のフッ素除去工程の処理水をマグネシア系吸着剤と接触させて、該処理水中に残留するフッ素を該吸着剤に吸着させる第2のフッ素除去工程とを有し、該第1のフッ素除去工程で分離されたMgF2を含む不溶化物と、該第2のフッ素除去工程から得られるフッ素を吸着したマグネシア系吸着剤とを硫酸と反応させて、フッ化水素と硫酸マグネシウムとを生成させる再生工程を有し、該再生工程で生成した硫酸マグネシウムを前記第1のフッ素除去工程のマグネシウム化合物として使用する循環工程を有するフッ素含有水の処理方法が提案されている。
この処理方法では、第1,2の工程でフッ素を除去することで、廃水のフッ素処理濃度として排水基準8mg/L以下の5mg/Lを達成しているが、フッ化水素を回収することを前提としている。また第1工程に硫酸マグネシウムを循環させてフッ素除去のためのマグネシウム化合物として使用するため、第1工程で分離されたMgF2と第2工程から得られるマグネシア系吸着剤から硫酸マグネシウムを回収するための硫酸が多量に必要となるという問題がある。
特許文献3には、硼素及び/又は弗素含有排水の効率的な処理方法として、排水に約1400℃以下の温度で焼成した特定の酸化マグネシウムを添加し、硼素及び/又は弗素を吸着除去させる方法が提案されている。この方法は、焼成した特定の酸化マグネシウムが水中で徐々に加水分解され、水酸化マグネシウムとなる際に硼素、弗素が取り込まれ除去されるとしており、非特許文献1で言う「水酸化物共沈法」の一変法と言える。
特許文献4には、硫酸マグネシウム放流法湿式排煙脱硫装置の排液からのフッ素イオンの除去方法として、排液に消石灰を添加しCaF2の沈殿として固液分離し、更に分離した液に酸化マグネシウムを添加し反応させて固液分離し、固液分離して得られるスラリーを排煙脱硫装置のアルカリ剤として再利用する方法が提案されている。しかし、この方法は「カルシウム法」によりCaF2の沈殿として固液分離するものであるから、「カルシウム法」固有の短所を有し、系外へ排出されるスラッジが多く、更に「カルシウム法」のための消石灰と「水酸化物共沈法」のための酸化マグネシウムと2種の処理剤を供給する必要があり、装置が複雑になるという問題もある。
更に、特許文献5には、第一処理として排水からフッ素をCaF2として除去し、第二処理として第一処理排水に酸化マグネシウム粉末を添加し、該粉末に排水中のフッ素を吸着させ、フッ素吸着酸化マグネシウム粉末を第一処理用の排水に溶解させて、マグネシウム化合物をスラッジとしてほとんど発生させない処理方法が提案されている。この方法は、特許文献4(硫酸マグネシウム含有排液)以外の排水、即ち実質的に硫酸塩を含まないフッ素含有排水に適用され、使用する処理剤は第一処理用の排水からフッ素をCaF2として除去するためのカルシウム化合物および必要に応じたpH調整用の塩酸と第二処理用の酸化マグネシウムである。特許文献4と同様「カルシウム法」と「水酸化物共沈法」との組み合わせであり、複雑な装置構成となっている。
特開2005−144209号公報 特開2004−846号公報 特開2001−340872号公報 特公平3−71197号公報 特開2005−840号公報
新・公害防止の技術と法規2008〔水質編〕、2008年1月20日、社団法人産業環境管理協会発行 II−232〜II−235
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものである。ふっ素含有排水にマグネシウム化合物を添加し、ふっ素をMgF2として固液分離する「マグネシウム法」は、廃棄物量を少なくできるという長所がある。しかし、従来技術にあっては、処理後の排水中のふっ素を排水基準である8mg/L以下にしつつ、MgF2のみを排出することにより廃棄物量を少なくする方法は知られていなかった。本発明は、処理後の排水中のふっ素濃度を8mg/L以下にしつつ、廃棄物量を最少とし、かつ系外から供給する処理剤を1種類に止めたふっ素含有排水の処理方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、強酸性のふっ素含有排水を処理するにあたり、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、プロセスを2段で構成し、後段で軽焼マグネシアの水和により生成する水酸化マグネシウムのふっ素吸着作用を利用し、前段でこの水酸化マグネシウムを酸の中和剤として利用するとともに、MgF2の晶析に利用するという着想に至った。つまり単一の処理剤を水酸化物共沈剤として有効に利用した後、酸中和剤・MgF2晶析剤として再度有効に利用するという着想である。本発明者らは、この着想を基に簡略かつ合理的なふっ素含有排水の処理方法を発明するに至った。
即ち、本発明の「ふっ素含有排水の処理方法」は、
ふっ素含有排水にマグネシウム化合物を添加してMgF2結晶を析出させ、該MgF2結晶を固液分離する排水処理方法であって、次の工程を有することを特徴とするふっ素含有排水の処理方法である。
(A)強酸性のふっ素含有排水に後段より再循環する塩基性マグネシウム化合物を添加して中和するとともに、MgF2結晶を析出させる工程、
(B)次いでこのスラリーからMgF2結晶を固液分離する工程、
(C)ふっ素濃度が低減された液に軽焼マグネシアを添加して水酸化マグネシウムを析出
させることにより、液中のふっ素を吸着共同沈殿させる工程、
(D)次いでこのスラリーからふっ素が吸着共同沈殿した水酸化マグネシウムと未反応軽
焼マグネシアを固液分離し、これらを工程(A)に再循環する工程。
更に、本発明においては、工程(A)において、pHを4〜6に制御しつつ中和することが好ましい。
本発明によれば、塩酸・硫酸・硝酸などが共存する強酸性のふっ素含有排水を処理するにあたり、排水のふっ素規制値を遵守しつつ、ふっ素含有廃棄物量を最少とし、かつ系外から供給する処理剤を安価な軽焼マグネシアのみとすることが可能となる。
本発明を示す概念図である。
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明のふっ素含有排水の処理方法は、前段を工程(A)、工程(B)で構成し、後段には工程(C)、工程(D)を有し、当該工程(C)において軽焼マグネシアを添加し、工程(D)で生成したマグネシウム化合物を固液分離し、前段の工程(A)で再使用する処理方法である。以下に、図1に基づいて本発明の各工程を説明する。
[工程(A)の説明]
本発明は、工程(A)として、強酸性のふっ素含有排水に後段より再循環する塩基性マグネシウム化合物を添加して中和するとともに、MgF2結晶を析出させる工程を備える。強酸性のふっ素含有排水1を前段反応槽10に導入し、後段より再循環する塩基性マグネシウム化合物スラリー、即ち後段シックナーアンダーフロー7を添加し、pH制御しつつ中和する。ここで強酸性とはpH2以下をいうが、特にpH1以下が好ましい。ふっ素含有排水のpHが2を超える場合、これに硫酸などの強酸を添加してpH2以下に調整したものも含む。
再循環する塩基性マグネシウム化合物とは、後段で添加した軽焼マグネシアから生成した固形物、即ちふっ素化合物を吸着した水酸化マグネシウムと未反応の軽焼マグネシアである。前段反応槽10でこれらの固形物は排水中の酸を中和して溶解し、排水中のふっ素と水酸化マグネシウムに吸着されたふっ素化合物はMgF2結晶に転換される。
前段反応槽10における液中の溶解ふっ素濃度は、排水のふっ素濃度にかかわらず50〜400mg/Lとなり、マグネシウムイオン濃度が低いほど、pHが高いほど溶解ふっ素濃度は低くなる。なおこの濃度はMgF2の飽和溶解度(Fとして53mg/L)よりもかなり高い。その理由はふっ素がマグネシウムイオンと可溶性錯体(おそらくMgF+)を形成するためである。
この際、結晶を大きく成長させ固液分離を良好にするため、MgF2の過飽和度を低くする。このため、反応槽を単一槽とし、かつ種晶となるMgF2の結晶をできるだけ高濃度で存在させることが好ましい。
前段反応槽10において制御するpHは、4〜6が好ましい。pHが4より低いと溶解ふっ素濃度が高くなり、後段で除去しきれなくなる。pHが6より高いと塩基性マグネシウム化合物なかでも軽焼マグネシアの溶解が遅くなり、未反応のまま残る。
[工程(B)の説明]
本発明は、工程(B)として、次いでこの前段反応後スラリー2からMgF2結晶を固液分離する工程を備える。工程(B)は、工程(A)の液からMgF2結晶を分離する。固液分離にあたっては、前段シックナー11・液体サイクロンなどの予備濃縮とフィルタープレス13・遠心分離機などを組み合わせ、できるだけ含液率の低いMgF2ケーク9とする。ろ液は前段シックナー11に返送する。なお、この際前段シックナーアンダーフロー8の一部を前段シックナーアンダーフロー一時貯留槽12から工程(A)に返送し、種晶濃度をより高くすることが好ましい。
[工程(C)の説明]
本発明は、工程(C)として、ふっ素濃度が低減された液に軽焼マグネシアを添加して水酸化マグネシウムを析出させることにより、液中のふっ素を吸着共同沈殿させる工程を備える。工程(C)は、ふっ素濃度が低減された液としての前段シックナーオーバーフロー3に対して後段反応槽14で軽焼マグネシア6を添加し、水和反応により水酸化マグネシウムを析出させ、析出した水酸化マグネシウムに溶存ふっ素化合物を吸着共同沈殿させる。この結果、溶存ふっ素濃度を排水基準である8mg/L以下とすることができる。ここで言う軽焼マグネシアとは、天然の鉱物であるマグネサイト(菱苦土石・主成分は炭酸マグネシウムMgCO3)を、800〜900℃で▲カ▼焼し、次いで粉砕・粒度調整したものを指す。軽焼マグネシアの主成分は酸化マグネシウムMgOである。溶存ふっ素濃度は、軽焼マグネシアのスラリー濃度が高いほど、温度が高いほど、反応時間が長いほど低くできる。後段反応槽14は、反応促進のため直列複数14a、14b、14c、14dの反応槽とすることが好ましい。なお、軽焼マグネシアの添加量は排水に含まれる酸の量と等当量となる。
[工程(D)の説明]
本発明は、工程(D)として、次いでこの後段反応後スラリー4からふっ素が吸着共同沈殿した水酸化マグネシウムと未反応軽焼マグネシアを固液分離し、これらを工程(A)に再循環する工程を備える。工程(D)での固液分離の目的は、含液率の低いケークを得る工程(B)の目的と異なり、清澄液を得ることにある。固形物に同伴する液分が少ないほうが好ましいがそれは副次的である。具体的には、後段シックナー15、遠心沈降機(デカンター)、液体サイクロンなどにより清澄液を得る。
後段シックナーオーバーフロー、即ちふっ素濃度を排水基準とした処理後排水5のpHは、9〜10である。これを系外に排水するにあたり、必要に応じpHを調整し、排水基準の5.8〜8.6とする。中和剤としては、硫酸または塩酸が好ましい。
固液分離された固形物のスラリー、即ち後段シックナーアンダーフロー7を後段シックナーアンダーフロー一時貯留槽16に受け、続いて工程(A)にpH制御しつつ再循環する。
なお、工程(C)の反応速度向上のため、このスラリーの一部を後段シックナーアンダーフロー7'として後段反応槽14に返送してもよい。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
モデル排水として、塩化水素10g/L、硫酸5g/L、ふっ化水素lg/Lを含む温度50℃の溶液を調製した。この溶液のふっ素濃度は950mg/L、pHは0.4である。この排水10m3/hを、撹拌機付きの前段反応槽(内容積20m3)に送り、同時に後段より再循環される塩基性マグネシウム化合物スラリーを添加し、pH5.0に制御しつつ中和した。この結果、溶存ふっ素濃度は90mg/Lに低下した(工程(A))。
前段反応槽からスラリーを、直径5mの前段シックナーに送った。前段シックナーからアンダーフロー1m3/hを抜き出し、前段シックナーアンダーフロー一時貯留槽(内容積5m3)に受けた。ここから平均0.8m3/hを前段反応槽に返送し、残りの平均0.2m3/hをフィルタープレスにより脱液した。MgF2ケークは系外に産業廃棄物として排出し、ろ液は前段シックナーに返送した。MgF2ケークの量は、平均37kg/hであり、その組成は、MgF216kg/h、その他固形物(軽焼マグネシアの不溶物)12kg/h、液分9kg/hであった(工程(B))。
工程(B)の前段シックナーオーバーフローを後段反応槽に送った。後段反応槽は4槽直列、各5m3であり、第1槽に軽焼マグネシア98kg/hを供給した。この軽焼マグネシアとして、中国からの輸入品を使用した。その性状は、枸溶性酸化マグネシウム88wt%、325メッシュ篩残分4wt%であった。第4槽には、高分子凝集剤(ミヨシ油脂株式会社製、ミヨフロックAP800)の500mg/L溶液100L/hを供給し、フロックを形成させた(工程(C))。
次にこの後段反応後スラリーを直径8mの後段シックナーに送り、スラリーを清澄とした。後段シックナーアンダーフロー3m3/hを抜き出し、後段シックナーアンダーフロー一時貯留槽(内容積15m3)に受け、続いて前段反応槽にpH制御しつつ送った。オーバーフロー(処理後排水)は、10.1m3/hであり、その組成・性状は以下のとおりであった。塩化マグネシウム13g/L、硫酸マグネシウム6g/L、ふっ素5mg/L、pH9.2(工程(D))。
[実施例2]
モデル排水の組成を、硫酸5g/L、ふっ化水素1g/Lとした。この溶液のふっ素濃度は実施例1と同じく950mg/L、pHは0.9である。この排水を用い、軽焼マグネシアの供給量を35kg/hとした以外、実施例1と同様の条件で装置を運転した。その結果、前段反応槽の溶存ふっ素濃度は58mg/Lとなり、処理後排水の組成・性状は硫酸マグネシウム6g/L、ふっ素6mg/L、pH9.6となった。また、MgF2ケークの量は、平均26kg/hであり、その組成は、MgF216kg/h、その他固形物(軽焼マグネシアの不溶物)4kg/h、液分6kg/hであった。
[比較例1]
ふっ化ナトリウム2.1g/Lを含む液に濃硫酸を加えて、pHを2.1としたモデル排水を調製した。この溶液のふっ素濃度は実施例1と同じく950mg/Lである。この排水を用い、軽焼マグネシアの供給量を20kg/hとした以外、実施例1と同様の条件で装置を運転した。その結果、前段反応槽の溶存ふっ素濃度は55mg/Lとなり、処理後排水のふっ素濃度は20mg/L、pH9.8となった。また、MgF2ケークの量は、平均36kg/hであり、その組成は、MgF215kg/h、未反応軽焼マグネシア9kg/h、その他固形物(軽焼マグネシアの不溶物)1kg/h、液分11kg/hであった。
[比較例2]
実施例1で定常運転した後、前段反応槽のpH制御値を3.5に変更した。この結果、前段反応槽の溶存ふっ素濃度は90mg/Lから190mg/Lに上昇し、処理後排水の溶存ふっ素濃度も5mg/Lから14mg/Lに上昇した。
[比較例3]
実施例1で定常運転した後、前段反応槽のpH制御値を6.5に変更した。この結果、後段より再循環される塩基性マグネシウム化合物スラリーの流量が増え、一時貯留槽のレベルが低下した。このため軽焼マグネシアの供給量を98kg/hから120kg/hに増やしたところ、一時貯留槽のレベルが一定となった。この運転条件下で、前段反応槽の溶存ふっ素濃度は90mg/Lから70mg/Lに低下し、処理後排水の溶存ふっ素濃度も5mg/Lから4mg/Lに低下したが、MgF2ケークの量は、37kg/hから69kg/hに増加し、その組成は、MgF216kg/h、未反応軽焼マグネシア22kg/h、その他固形物(軽焼マグネシアの不溶物)12kg/h、液分19kg/hとなった。
実施例1、2では、強酸性のふっ素含有排水を処理するにあたり、排水基準を遵守する5mg/L、6mg/Lとしつつ、分離されたMgF2ケーク中に未反応軽焼マグネシアがなく、処理剤を有効に利用できた。これに対して、比較例1では、ふっ素含有排水のpHが2.1と本発明の強酸性のpH範囲を外れたため、処理後排水のふっ素濃度は20mg/Lと排水基準を満たすことができず、分離されたMgF2ケーク中に未反応軽焼マグネシアも多かった。比較例2は、運転途中でpH制御値が3.5に変更されたため、工程(A)のふっ素濃度が上昇し、処理後排水のふっ素濃度は排水基準を満たすことができなかった。比較例3は、運転途中でpH制御値が6.5に変更されたため、工程(A)の軽焼マグネシアの中和反応が遅くなり、塩基性マグネシウム化合物の添加量が増加し、必要以上に軽焼マグネシアを消費し、分離されたMgF2ケークも多くなった。
本発明によれば、塩酸・硫酸・硝酸などが共存する強酸性のふっ素含有排水を処理するにあたり、排水基準を遵守しつつ、簡略かつ合理的な方法でふっ素含有廃棄物量を最少とすることが可能となる。ふっ素含有排水としては、例えば半導体・液晶製造工場や金属表面酸洗処理工場などより排出される強酸性である排水があり、これらを処理対象とすることができる。
1: ふっ素含有排水
2: 前段反応後スラリー
3: 前段シックナーオーバーフロー
4: 後段反応後スラリー
5: 後段シックナーオーバーフロー(処理後排水)
6: 軽焼マグネシア
7、7': 後段シックナーアンダーフロー
8: 前段シックナーアンダーフロー
9: MgF2ケーク
10: 前段反応槽
11: 前段シックナー
12: 前段シックナーアンダーフロー一時貯留槽
13: フィルタープレス
14、14a、14b、14c、14d: 後段反応槽
15: 後段シックナー
16: 後段シックナーアンダーフロー一時貯留槽

Claims (2)

  1. ふっ素含有排水にマグネシウム化合物を添加してふっ化マグネシウム結晶を析出させ、該ふっ化マグネシウム結晶を固液分離する排水処理方法であって、次の工程を有することを特徴とするふっ素含有排水の処理方法。
    (A)強酸性のふっ素含有排水に後段より再循環する塩基性マグネシウム化合物を添加して中和するとともに、ふっ化マグネシウム結晶を析出させる工程、
    (B)次いでこのスラリーからふっ化マグネシウム結晶を固液分離する工程、
    (C)ふっ素濃度が低減された液に軽焼マグネシアを添加して水酸化マグネシウムを析出
    させることにより、液中のふっ素を吸着共同沈殿させる工程、
    (D)次いでこのスラリーからふっ素が吸着共同沈殿した水酸化マグネシウムと未反応軽
    焼マグネシアを固液分離し、これらを工程(A)に再循環する工程。
  2. 工程(A)において、pHを4〜6に制御することを特徴とする請求項1記載のふっ素含有排水の処理方法。
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