JP4999474B2 - 誘導機制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、誘導機のトルク制御に関するもので、特に、複数台誘導機の一括トルク制御時の脱調状態を回避するものである。
図2は、一従来例を示すブロック図である。101、102、103、104は誘導機、2は電流検出器、3は電力変換器、4はトルク制御手段、5は磁束演算器、6は周波数演算器、7はすべり演算器、8は速度演算器、9はすべり周波数演算器である。
図2において、誘導機は4台しか示されていないが、複数台であれば、何台であっても良い。以下、誘導機は4台であるとして説明する。
電流検出器2は、電力変換器3につながる個々の誘導機に流れる電流の相毎の総和である総和電流iを検出する。
電圧系磁束演算器5は、総和電流iと電力変換器3に入力される電圧指令vから、誘導機磁束φを式(1)で演算する。
Figure 0004999474
ここで、R1は全誘導機の一次抵抗合成値、L2は二次自己インダクタンス合成値、Mは相互インダクタンス合成値、Lekは漏れインダクタンス合成値である。漏れインダクタンス合成値Lekは、
Figure 0004999474
で与えられる。ここで、L1は全誘導機の一次自己インダクタンス合成値である。
周波数演算器6は、誘導機磁束φから、式(3)を用いて誘導機周波数ω1を演算する。
Figure 0004999474
ここで、FAとFBは誘導機磁束φの成分である。
すべり演算器7は、総和電流iと誘導機磁束φから、式(4)を用いて推定すべりωscを演算する。
Figure 0004999474
ここで、R2は全誘導機の二次抵抗合成値である。
速度演算器8は、誘導機周波数ω1と推定すべりωscから、式(5)を用いて誘導機速度ωmを演算する。
Figure 0004999474
式(5)で演算される誘導機速度ωmは、個々の誘導機速度の平均値となり、式(6)で示される値となる。
Figure 0004999474
ここで、ωm1は誘導機101の速度、ωm2は誘導機102の速度、ωm3は誘導機103の速度、ωm4は誘導機104の速度である。
すべり指令演算器9は、磁束指令φ*、トルク指令τ*から、式(7)を用いてすべり指令ωsrを演算する。
Figure 0004999474
トルク制御手段4は、運転指令NがONのときは、誘導機速度ωmと総和電流iを基に、全誘導機のすべりと磁束とトータルトルクがすべり指令ωsr、磁束指令φ*、トルク指令τ*となるような電圧指令vを出力する。運転指令NがOFFのときは、電圧指令vを0として、誘導機を無制御状態とする。
電力変換器3は、電圧指令vを増幅し、負荷である誘導機101〜104に電力を供給する。
運転指令Nは、トルク制御手段4へ入力する代わりに電力変換器3へ入力し、運転指令NがONで電圧指令vに相当する電力を誘導機101〜104に供給し、運転指令NがOFFで電力供給停止としても、同等の機能を得ることができる。
以上の構成とすることにより、運転指令NがONのときは、複数台誘導機のトータルトルクをトルク指令τ*に制御することができる。運転指令NをOFFにすれば、複数台誘導機を無制御状態にすることができる。
車両においては、台車制御、1車両制御が一般的であるため、複数台誘導機の一括トルク制御が多用されている。
特開平11−069895
従来技術においては、以下に示す問題点がある。
車両において一括制御している一部車輪軸が空転し、例えば誘導機103の速度ωm3がωm1とωm2とωm4に比べて大きくなった場合、式(6)によれば、ωm1、ωm2、ωm3、ωm4に対する誘導機速度ωmの演算誤差が発生する。誘導機103の空転が大きく、誘導機速度ωmの演算誤差が大きくなれば、誘導機103が脱調状態となる。さらに、誘導機103の空転が大きくなれば、誘導機103だけでなく、誘導機101や誘導機102や誘導機104も脱調状態となる。
また、一部車輪軸の滑走が大きくなった場合も、空転時と同じく、誘導機が脱調状態になる可能性がある。
誘導機が脱調状態になると、トルク制御不能となり、最悪の場合、過電流や過電圧により、誘導機破壊、電力変換器素子破壊へとつながる。
本発明は、以上の問題点を解決するためになされたものである。
前述の問題点を解決するために、請求項1の発明によれば、複数台誘導機を持ち、全誘導機の総和電流と電圧から誘導機磁束を演算する磁束演算器と、該誘導機磁束と該総和電流から推定すべりを演算するすべり演算器と、前記誘導機磁束と該推定すべりから誘導機速度を演算する速度演算器と、磁束指令とトルク指令からすべり指令を演算するすべり指令演算器を有し、前記総和電流と前記誘導機速度と該すべり指令と該磁束指令と該トルク指令と運転指令を基に該複数台誘導機のトルクを一括制御するトルク制御手段を有する誘導機制御装置において、推定すべりωscとすべり指令ωsrを入力し誤差率dωを出力するすべり差演算器10と、誤差率dωを積分し誤差時間Tωを出力する積分器11と、時間設定値Tnと誤差時間Tωを比較し検知信号Kを出力する比較器12と、運転指令Nと検知信号Kから制御指令NNを作成する運転論理器13を新たに追加し、運転指令Nの代わりに制御指令NNをトルク制御手段4に入力することを特徴とする。
請求項2の発明によれば、請求項1記載の誘導機制御装置の前記すべり差演算器において、
前記推定すべりωscと前記すべり指令ωsrを比較して、|ωsc−ωsr|<αで前記誤差率を0、|ωsc−ωsr|>αで前記誤差率を1とすることを特徴とする。
請求項3の発明によれば、請求項1記載の誘導機制御装置の前記すべり差演算器において、前記推定すべりωscと前記すべり指令ωsrから、α<βなる定数を用いて、前記誤差率dωを
dω=(|ωsc−ωsr|−α)/(β−α)
で演算することを特徴とする。
誘導機が脱調状態となる前に、一部車輪軸の空転、滑走が大きくなったことを検知でき、誘導機のトルク制御を停止させることができる。
一部車輪軸の空転、滑走の度合いにより、検知するまでの時間を変える事ができる。
すべり差演算器10と積分器11と比較器12を新たに追加することにより、全誘導機中の一部車輪軸に空転あるいは滑走が発生していることが検知できる。また、すべり差演算器10の演算内容により、一部車輪軸の空転、滑走の度合いに対して、検知するまでの時間を変える事ができる。検知した信号を運転論理器13にて処理して制御指令を作成し、トルク制御手段4に入力することにより、誘導機のトルク制御を停止させることができる。
図1は、本発明の一実施例を示すブロック図であり、10はすべり差演算器、11は積分器、12は比較器、13は運転論理器である。
すべり差演算器10は、推定すべりωscとすべり指令ωsrを入力し、誤差率dωを出力する。すべり差演算器10内では、以下の3点を満たすような誤差率dωを演算する。
・dωは無次元の単位となるようにする。
・|ωsc−ωsr|=αにてdω=0とする。
・|ωsc−ωsr|>αではdω>0とする。
積分器11は、誤差率dωを積分して、誤差時間Tωとする。ただし、誤差時間Tωは0以上とし、0未満は0とする。比較器12は、誤差時間Tωと時間設定値Tnを入力し、Tω<Tnでは検知信号KをON、Tω>Tnでは検知信号KをOFFとする。
すべり差演算器10、積分器11、比較器12を組み合わせることにより|ωsc−ωsr|が大きくなると、時間設定値Tnに依存した時間経過後、検知信号KがONからOFFへと切り替わる。
運転論理器13は、運転指令Nと検知信号Kの論理積を行い、制御指令NNを出力する。運転指令Nと検知信号KのどちらかがOFFであれば、制御指令NNはOFFとなる。
トルク制御手段4は、制御指令NNがONのときは、誘導機速度ωmと総和電流iを基に、全誘導機の磁束とトータルトルクが磁束指令φ*、トルク指令τ*となるような電圧指令vを出力する。制御指令NNがOFFのときは、電圧指令vを0として、誘導機を無制御状態とする。
制御指令NNは、トルク制御手段4へ入力する代わりに電力変換器3へ入力し、制御指令NNがONで電圧指令vに相当する電力を誘導機101〜104に供給し、制御指令NNがOFFで電力供給停止としても、同等の機能を得ることができる。
誘導機101〜104の中で誘導機103だけが空転し、ωm1、ωm2、ωm4に対して、ωm3が大きくなったとする。式(6)により、速度演算誤差は、ωm>ωm1、ωm>ωm2、ωm>ωm4、ωm<ωm3となる。その結果、トルク指令τ*、磁束指令φ*から予定されるすべり指令ωsに対して、誘導機101、102、104の実すべりは大きくなり、誘導機103の実すべりは小さくなる。
この状態で、総和電流iを一定となるようにトルク制御手段4でトルク制御を実施すると、トータルトルクはトルク指令τ*に一致するが、式(4)による推定すべりωscは、誘導機101、102、103、104の平均値となり、すべり指令ωsrと異なる。|ωsc−ωsr|の大きさは、空転の度合いによるが、空転が大きければ、|ωsc−ωsr|の大きさは大きくなることを利用し、時間設定値Tnを用いて、検知信号Kを作成している。ここでは空転を例としたが、滑走の場合も同様である。
以上の構成とすることにより、|ωsc−ωsr|の大きさは大きくなり時間設定値Tnに依存した時間が経過した後、検知信号KがOFFとなる。その結果、誘導機が脱調状態となる前に、一部車軸の空転、滑走が大きくなったことを検知でき、誘導機のトルク制御を停止させることができる。
車両制御の一部車輪軸の空転、滑走による速度演算誤差に限らず、トルクの一括制御対象となっている複数台誘導機の一部の軸速度に差ができた場合であっても、本発明は有効である。
図3はすべり差演算器10の一実施例を示す図であり、|ωsc−ωsr|<αで誤差率dωを0、|ωsc−ωsr|>αで誤差率dωを1とする。誤差率dωは積分器11に入力される。ここで、αは0以上の定数とする。
以下、積分器11、比較器12、運転論理器13、トルク制御手段4、電力変換器3については、実施例1と同じ動作となる。
以上の構成とすることにより、|ωsc−ωsr|>αの状態が合計時間でTn存在すると検知信号KがOFFとなる。その結果、誘導機が脱調状態となる前に、一部車軸の空転、滑走が大きくなったことを検知でき、誘導機のトルク制御を停止させることができる。
ところで、積分器11の出力である誤差時間Tωを誘導機トルク制御停止状態で0にすれば、検知信号KはONとなり、再度のトルク制御開始可能となる。そのとき、同様に一部車軸の空転、滑走が大きくなれば、再度、本発明の検知が初期状態から行われ、条件を満たせば誘導機のトルク制御が停止する。
また、積分器11の出力である誤差時間Tωを|ωsc−ωsr|<αで0にすれば、時間Tn経過以前に|ωsc−ωsr|<αとなった時、検知は初期状態に戻る。よって、|ωsc−ωsr|>αの状態が時間Tn継続した時に検知信号KがOFFとなる。
図4はすべり差演算器10の一実施例を示す図であり、定数α、βを用いて、式(8)にて誤差率dωを演算している。ただし、α<βとする。
Figure 0004999474
定数α、βの値により、|ωsc−ωsr|に対する誤差率dωのレベルが異なってくる。
以下、積分器11、比較器12、運転論理器13、トルク制御手段4、電力変換器3については、実施例1と同じ動作となる。
すべり差演算器10、積分器11、比較器12の構成により、|ωsc−ωsr|の大きさに寄与した時間で検知信号KがOFFとなる。例えば、|ωsc−ωsr|=βの状態が時間Tn継続すると検知信号KがOFFとなる。このように、|ωsc−ωsr|の大きさによって、検知信号KがOFFするまでの時間は変化する。
実施例1で述べたように、空転、滑走の度合いが大きければ、誤差率dωは大きくなり、検知信号Kは早期にOFFすることになる。逆に、空転、滑走の度合いが小さければ、誤差率dωは小さくなり、検知信号KはなかなかOFFしない。空転、滑走の度合いにより、検知信号KがOFFするまでの時間が変化する。
以上の構成とすることにより、誘導機が脱調状態となる前に、一部車軸の空転、滑走が大きくなったことを検知でき、誘導機のトルク制御を停止させることができる。誘導機のトルク制御を停止させるまでの時間は、空転、滑走の度合いによって変化させることができる。
ところで、積分器11の出力である誤差時間Tωを誘導機トルク制御停止状態で0にすれば、検知信号KはONとなり、再度のトルク制御開始可能となる。そのとき、同様に一部車軸の空転、滑走が大きくなれば、再度、本発明の検知が初期状態から行われ、条件を満たせば誘導機のトルク制御が停止する。
また、すべり差演算器10の式(8)の演算結果0以下を0に下限リミットすれば、|ωsc−ωsr|<αであっても誤差時間Tφは減少しない。これにより、|ωsc−ωsr|がαを境として振動していたとしても、検知信号KはそのうちにOFFとなる。逆に、すべり差演算器10の式(8)の演算結果0以下を0に下限リミットしなければ、|ωsc−ωsr|がαを境として振動しているときは、検知信号KはOFFとなり難くなる。
また、積分器11の出力である誤差時間Tωを|ωsc−ωsr|<αで0にすれば、|ωsc−ωsr|>αの状態が時間設定値Tnに依存した時間継続した時に検知信号KがOFFとなる。
車両のような複数台誘導機制御において、一部車輪軸の空転、滑走を検知することができる。さらに、一部車輪軸の空転、滑走が大きくなることにより発生する誘導機脱調状態に至る前に、検知信号Kにより誘導機制御を停止させることができる。
すべり差演算器10の演算の仕方により、一部車輪軸の空転、滑走の度合いで検知するまでの時間を変えることができる。例えば、一部車輪軸の空転、滑走の度合いが少なければ、検知するまでの時間を長くすることができる。一部車輪軸の空転、滑走の度合いが大きければ、検知するまでの時間を短くすることができる。
車両制御の一部車輪軸の空転、滑走による速度演算誤差に限らず、トルクの一括制御対象となっている複数台誘導機の一部の軸速度に差ができた場合であっても、誘導機脱調状態に至る前に、検知信号Kにより誘導機制御を停止させることができる。
誘導機制御を停止することにより、誘導機脱調状態が原因である過電流や過電圧による誘導機破壊、電力変換器3の素子破壊を防止することができる。
図1は、本発明の一実施例を示すブロック図である。 図2は、一従来例を示すブロック図である。 図3は、すべり差演算器の一実施例を示す図である。 図4は、すべり差演算器の一実施例を示す図である。
符号の説明
101 誘導機
102 誘導機
103 誘導機
104 誘導機
2 電流検出器
3 電力変換器
4 トルク制御手段
5 磁束演算器
6 周波数演算器
7 すべり演算器
8 速度演算器
9 すべり指令演算器
10 すべり差演算器
11 積分器
12 比較器
13 運転論理器

i・・・総和電流
v・・・電圧指令
τ*・・・トルク指令
φ*・・・磁束指令
ω1・・・誘導機周波数
ωm・・・誘導機速度
ωsc・・推定すべり
ωsr・・すべり指令
φ・・・誘導機磁束
N・・・運転指令
α・・・しきい値
β・・・定数
dω・・・誤差率
Tω・・・誤差時間
Tn・・・時間設定値
K・・・検知信号
NN・・・制御指令

Claims (3)

  1. 複数台誘導機を持ち、全誘導機の総和電流と電圧から誘導機磁束を演算する磁束演算器と、該誘導機磁束と該総和電流から推定すべりを演算するすべり演算器と、前記誘導機磁束と該推定すべりから誘導機速度を演算する速度演算器と、磁束指令とトルク指令からすべり指令を演算するすべり指令演算器を有し、前記総和電流と前記誘導機速度と該すべり指令と該磁束指令と該トルク指令と運転指令を基に該複数台誘導機のトルクを一括制御するトルク制御手段を有する誘導機制御装置において、
    前記推定すべりと前記すべり指令を入力し誤差率を出力するすべり差演算器と、該誤差率を積分し誤差時間を出力する積分器と、時間設定値と該誤差時間を比較し検知信号を出力する比較器と、該運転指令と前記検知信号から制御指令を作成する運転論理器を新たに追加し、前記運転指令の代わりに該制御指令を該トルク制御手段に入力することを特徴とする誘導機制御装置。
  2. 前記すべり差演算器において、
    前記推定すべりωscと前記すべり指令ωsrを比較して、|ωsc−ωsr|<αで前記誤差率を0、|ωsc−ωsr|>αで前記誤差率を1とすることを特徴とする請求項1記載の誘導機制御装置。
  3. 前記すべり差演算器において、
    前記推定すべりωscと前記すべり指令ωsrから、α<βなる定数を用いて、前記誤差率dωを
    dω=(|ωsc−ωsr|−α)/(β−α)
    で演算することを特徴とする請求項1記載の誘導機制御装置。
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