JP4998263B2 - 多官能(メタ)アクリル酸エステル組成物の製造方法 - Google Patents

多官能(メタ)アクリル酸エステル組成物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、例えば塗料、接着剤、及び印刷インクの分野において用いられ、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル酸エステル組成物の製造方法に関する。本願では、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルを(メタ)アクリル酸エステルといい、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を(メタ)アクリロイルオキシ基という。
近年、例えば塗料、接着剤、及び印刷インクの分野においては、環境保全、省資源、省エネルギー等の観点から、紫外線硬化型又は電子線硬化型の剤の使用が増加しつつある。例えば(メタ)アクリロイル基を2個以上有する(メタ)アクリル酸エステル(本願では多官能(メタ)アクリル酸エステルという)は、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂の反応性希釈剤として広く使用されている。特に、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール及びこれらの誘導体を(メタ)アクリロイル化して得られる多官能性(メタ)アクリル酸エステルは、速い硬化性、高い硬度等の特徴を有しており、その使用量は増大しつつある。
従来、多官能(メタ)アクリル酸エステルは、硫酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸等の酸触媒の存在下における、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化反応により製造される。こうして得られる反応生成物中には、触媒、未反応物、さらには副反応物が残存することから、反応液に各種の後処理が施されることにより精製が行われている。例えば、反応液中の未反応(メタ)アクリル酸及び酸触媒を除去する目的で中和処理が行われ、この中和処理では、1〜25%濃度の水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)水溶液及び炭酸ナトリウム(炭酸ソーダ)水溶液が使用されている。更に、水を用いて反応液を精製することも行われる。
具体的には、触媒の存在下におけるヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステルの付加重合によりヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステルリゴマーが製造される際に、反応液をケイ酸マグネシウム等の吸着剤と接触させたり、アルカリ水溶液を用いて反応液を精製したりする方法が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。また、以下のような多官能性(メタ)アクリル酸エステルの製造方法が開示されている(例えば、特許文献2を参照)。すなわち、酸触媒の存在下において、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とが有機溶媒中でエステル化反応することにより、反応生成物が得られる。次いで、この反応生成物に中和処理が施された後、さらにアミン類を用いた精製処理が施される。
ところで、多官能(メタ)アクリル酸エステルの製造においては、(メタ)アクリロイル基の密度をより高めるために、エステル化反応は通常、単官能(メタ)アクリル酸エステルの製造に比べて長時間で行われ、或いはより高い反応温度で行われる。そのような条件下でエステル化反応が行われると、(メタ)アクリル酸エステル特有の副反応が生じて副反応物が生成される。
一方、エステル化反応後の後処理においては、反応液の中和工程及び水を用いた洗浄工程において、有機層と水層との分離が不十分となる乳化現象が発生することがある。このような乳化現象が生じた場合、有機層と水層との分離に長時間を要することから生産性が低下したり、さらに有機層と水層との分離が不十分な状態でそれらが分離される場合には、最終製品に不純分が混入して純度が低下したりするという問題が生じていた。このような乳化の原因は、前記副反応物によるものではないかと疑われていた。そのような副反応物(以下、乳化性化合物という)を除去するために、特許文献1に記載の吸着剤を用いた方法では物理的な吸着が行われている。しかしながら、この方法では、反応生成物から乳化性化合物を十分に除去することができなかった。
また、特許文献2に記載の方法においては、アミン類を用いた処理工程で酸触媒の誘導体、例えばスルホン酸エステルが分解される(特許文献2を参照)。従って、この方法は、乳化の原因となる乳化性化合物の分解に着目しておらず、乳化性化合物を十分に分解して除去することができなかった。そのため、乳化性化合物が除去されていない多官能(メタ)アクリル酸エステルが、例えばインク等の耐乳化性を要する用途に供される場合には、インクのにじみ、製造設備の汚染等の様々な弊害が生じるという問題があった。
特開昭61−134350号公報 特開平6−219991号公報
本発明は上述の課題に鑑みてなされ、後処理工程において発生する有機層と水層との分離が不十分となる乳化による弊害を抑制することができる多官能(メタ)アクリル酸エステル組成物の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の一態様では、多官能(メタ)アクリル酸エステル組成物の製造方法が提供される。その多官能(メタ)アクリル酸エステル組成物の製造方法は、主成分である(A)成分として2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物、及び副成分である(B)成分として前記(A)成分における(メタ)アクリロイルオキシ基のいずれか1個が下記化学式(1)で表される基で置換された化合物を含有する組成物であるとともに、該組成物中の(B)成分の含有量が1000ppm以下である多官能(メタ)アクリル酸エステル組成物の製造方法であって、多官能(メタ)アクリル酸エステル組成物を製造するエステル化反応工程と、前記多官能(メタ)アクリル酸エステル組成物中の前記(B)成分の含有量が1000ppm以下となるように前記多官能(メタ)アクリル酸エステル組成物を精製する精製工程とからなり、前記精製工程は、得られた前記多官能(メタ)アクリル酸エステル組成物を中和処理する中和処理工程と、中和処理後の反応液をけん化処理するけん化処理工程とを含み、前記エステル化反応工程は、酸触媒の存在下において、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とを有機溶媒中でエステル化反応する工程であり、前記中和処理工程は、前記エステル化反応後の反応液中の前記酸触媒及び未反応(メタ)アクリル酸等からなる酸分を除去するために、前記反応液中の酸分に対してモル比で1.0〜1.6倍のアルカリ成分を含有するアルカリ水溶液を使用して中和処理する工程であり、前記けん化処理工程は、前記(B)成分の含有量を減ずるために、前記中和処理後の有機層、アルカリ水溶液を使用してけん化処理する工程であり、前記けん化処理工程で使用するアルカリ水溶液に含有されるアルカリの量は、前記中和処理工程で使用するアルカリ水溶液に含有されるアルカリの量に対して重量比で0.5〜2倍の量とする。
Figure 0004998263
〔化学式(1)において、Rは水素原子又はメチル基を表す。〕
この構成によれば、(A)成分における(メタ)アクリロイルオキシ基のいずれか1個が化学式(1)で表される基で置換された(B)成分は乳化性を示す化合物に該当し、その含有量が1000ppm以下であることから、乳化性化合物を減少させて、後処理工程において発生する有機層と水層との分離が不十分となる乳化による弊害を抑制することができる。
(A)成分は、好ましくは3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である。さらに、(A)成分は、より好ましくはジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリル酸エステル又はジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリル酸エステルであり、(B)成分は、好ましくは下記化学式(2)で表される化合物である。この構成によれば、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリル酸エステル又はジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリル酸エステルの多官能(メタ)アクリル酸エステルについて、上述の効果を発揮することができる。
Figure 0004998263
〔化学式(2)において、Rは水素原子又はメチル基を表し、A〜Aは(メタ)アクリロイル基又は水素原子を表す。〕
の構成によれば、前記(B)成分を指標として多官能(メタ)アクリル酸エステル組成物の精製を行うことによって、上述の効果を有する多官能(メタ)アクリル酸エステル組成物を容易に製造することができる。
前記精製工程は、好ましくは前記エステル化反応後の反応液を水洗処理する工程、前記水洗処理後の処理液を中和処理する工程、及び中和処理後の処理液をけん化処理する工程を含む。この構成によれば、有する多官能(メタ)アクリル酸エステル組成物をより容易に製造することができる
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本実施形態の多官能(メタ)アクリル酸エステル組成物は、主成分である(A)成分として2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物、及び副成分である(B)成分として前記(A)成分における(メタ)アクリロイルオキシ基のいずれか1個が下記化学式(1)で表される基で置換された化合物を含有する。多官能(メタ)アクリル酸エステル組成物における(B)成分の含有量は1000ppm以下である。(B)成分の含有量は、高速液体クロマトグラフィ(以下、HPLCという)により測定される。具体的には、(B)成分の含有量は以下の条件で測定される。
検出器:紫外線検出器
カラムの種類:ODSカラム
カラムの温度:40℃
溶離液:酸性水溶液/メタノール系(酸性水溶液のpHは2〜3が好ましい。酸性水溶液としては、リン酸水溶液が好ましい。)
Figure 0004998263
〔化学式(1)において、Rは水素原子又はメチル基を表す。〕
多官能(メタ)アクリル酸エステルの製造時には、高温及び長時間のエステル化反応により特有の副反応が起きて種々の乳化性化合物が生成されるが、(B)成分もそのような乳化性化合物の1つであり、乳化の原因となる化合物である。
前記(A)成分は、好ましくは3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である。(A)成分としては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリル酸エステル、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリル酸エステル、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリル酸エステル、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリル酸エステル、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリル酸エステル、及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
(A)成分がトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリル酸エステルの場合、前記(B)成分としては下記化学式(3)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0004998263
(A)成分がジトリメチロールプロパントリ又はテトラ(メタ)アクリル酸エステルの場合、前記(B)成分としては下記化学式(4)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0004998263
(A)成分がペンタエリスリトールトリ又はテトラ(メタ)アクリル酸エステルの場合、前記(B)成分としては下記化学式(5)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0004998263
(A)成分がジペンタエリスリトールペンタ又はヘキサ(メタ)アクリル酸エステルの場合、前記(B)成分としては下記化学式(2)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0004998263
化学式(2)〜(5)において、Rは水素原子又はメチル基を表し、A〜Aは(メタ)アクリロイル基又は水素原子を表す。
次に、多官能(メタ)アクリル酸エステル組成物の製造方法について説明する。
(メタ)アクリル酸エステル組成物は、エステル化反応工程と、その後の精製工程とを経て製造される。エステル化反応工程では、酸触媒の存在下において、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とが有機溶媒中でエステル化反応することにより、多官能(メタ)アクリル酸エステル組成物が製造される。精製工程では、多官能(メタ)アクリル酸エステル組成物中の(B)成分の割合が1000ppm以下となるように、多官能(メタ)アクリル酸エステル組成物が精製される。以下、両工程について順に説明する。
〔エステル化反応工程〕
本エステル化反応工程におけるエステル化反応は、多官能(メタ)アクリル酸エステルの製造における常法に従って行われる。すなわち、エステル化反応は、酸触媒の存在下において、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とが有機溶媒中で脱水縮合することにより行われる。
前記多価アルコールとしては、例えば二価アルコール、分岐状又は直鎖状長鎖アルキルジオール、ポリアルキレングリコール、ビスフェノール及び該ビスフェノールのアルキレンオキシド付加物、ポリオール及び該ポリオールのアルキレンオキシド付加物、並びにトリス−2−ヒドロキシエチルイソシアヌレートが挙げられる。二価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、及びネオペンチルグリコールが挙げられる。分岐状又は直鎖状長鎖アルキルジオールとしては、例えば水添ポリブタジエンのジオールが挙げられる。ポリアルキレングリコールとしては、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、及びポリプロピレングリコールが挙げられる。ビスフェノールとしては、例えばビスフェノールA及びビスフェノールFが挙げられる。ポリオールとしては、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、及びジペンタエリスリトールが挙げられる。前記アルキレンオキシドとしては、例えばエチレンオキシド及びプロピレンオキシドが挙げられる。上述の多価アルコールの具体例の中でも、(メタ)アクリロイル基の密度が高い多官能(メタ)アクリル酸エステルが得られることから、水酸基数が3〜6であるアルコール又はそのアルキレンオキシド付加物が好ましい。
(メタ)アクリル酸はアクリル酸又はメタクリル酸であり、これらは、目的とするエステルが多官能アクリル酸エステルであるか、又は多官能メタクリル酸エステルであるかによって選択される。(メタ)アクリル酸の使用量は、得られる多官能(メタ)アクリル酸エステルが目的とする水酸基価を有するように、多価アルコールの全水酸基1モルに対して調整される。
酸性触媒としては、例えば硫酸、パラトルエンスルホン酸、及びメタンスルホン酸が挙げられる。反応温度は、使用される原料及び目的に応じて適宜設定され得るが、反応時間の短縮と重合防止の観点とから65〜140℃が好ましく、75〜120℃がより好ましい。この反応温度が65℃未満の場合には、エステル化反応が遅くなったり、収率が低下したりするおそれがある。反応温度が140℃を越える場合には、(メタ)アクリル酸又は生成された多官能(メタ)アクリル酸エステルの熱重合が起きるおそれがある。
エステル化反応では、この反応で生成される水と共沸混合物を形成する有機溶媒が使用され、水を共沸させて脱水を促進する有機溶媒が使用されることが好ましい。好ましい有機溶媒としては、例えば芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、及びケトンが挙げられる。芳香族炭化水素としては、例えばトルエン、ベンゼン、及びキシレンが挙げられる。脂肪族炭化水素としては、例えばヘキサン及びヘプタンが挙げられる。ケトンとしては、例えばメチルエチルケトン及びシクロヘキサノンが挙げられる。有機溶媒の使用量は、前記多価アルコールと(メタ)アクリル酸との合計量に対して0.1〜10倍量(質量比)が好ましく、2〜5倍量がより好ましい。この有機溶媒は、反応後又は後処理後の減圧操作により留去されてもよいが、臭気の問題を有してない有機溶媒が使用される場合には、組成物の粘度調整のために留去されることなく組成物中に残存してもよい。
エステル化反応は、常圧(0.1MPa)又は減圧された状態で行われることが好ましい。また、(メタ)アクリル酸又は生成された多官能(メタ)アクリル酸エステルの熱重合を防止する目的で、エステル化反応が酸素の存在下で行われることが好ましい。同様の目的で、反応液に重合禁止剤が添加されることが好ましい。そのような重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、3−ヒドロキシルチオフェノール、α−ニトロソ−β−ナフトール、p−ベンゾキノン、及び銅塩が挙げられる。重合禁止剤の添加量は、原料の(メタ)アクリル酸に対して0.001〜5.0質量%が好ましく、0.01〜1.0質量%がより好ましい。重合禁止剤の添加量が0.001質量%未満の場合には、重合禁止効果が不十分となる傾向がある。重合禁止剤の添加量が5.0質量%を越えても、重合禁止効果はそれ以上向上しないことから、過剰な重合禁止剤が無駄になりやすい。エステル化反応の進行度を確認する方法としては、例えば(メタ)アクリル酸及び多価アルコールの残量をモニターする方法があり、エステル化反応により生成される水の量、すなわち脱水量をモニターする方法が好ましい。
〔精製工程〕
次に、エステル化反応工程で得られる反応生成物から(B)成分を除去する精製工程について説明する。この精製工程は、中和処理工程、けん化処理工程、水洗処理工程、及び脱溶剤処理工程を含む。
(中和処理工程)
中和処理工程は、前記エステル化反応工程でのエステル化反応後における反応液中の例えば未反応(メタ)アクリル酸及び酸触媒の酸分を除去する目的で行われる。
中和処理工程は常法に従って行われる。この常法としては、例えば反応液にアルカリ成分としてのアルカリ水溶液が添加された後に攪拌及び混合される方法が挙げられる。アルカリ水溶液としては、例えば水酸化ナトリウム水溶液が挙げられる。この場合、アルカリ成分の量は通常、反応液の酸分に対してモル比で1倍以上であり、好ましくは1.1〜1.6倍である。この添加量が反応液の酸分に対してモル比で1倍未満の場合には、酸分の中和が不十分となる場合がある。アルカリ水溶液の濃度は、1〜25質量%が好ましく、10〜25質量%がより好ましい。アルカリ水溶液の濃度が1質量%未満の場合には、中和処理後の排水量が増大するおそれがある。アルカリ水溶液の濃度が25質量%を越える場合には、多官能(メタ)アクリル酸エステルが重合するおそれがある。撹拌及び混合の時間は、5分から60分が好ましい。
(けん化処理工程)
前記中和処理工程では、酸触媒及び未反応の(メタ)アクリル酸が除去されるものの、(B)成分等の乳化性化合物は十分に除去されない。
(B)成分等の乳化性化合物の除去方法としては、例えば酸化カルシウム等の吸着剤、及びスチレン−ジビニルベンゼン共重合体等のイオン交換樹脂による除去方法が挙げられる。しかしながら、除去効率が高くて工業的に有利であることから、中和処理後の処理液にさらにアルカリ水溶液を添加して処理液を攪拌することにより、該処理液にけん化処理を施す方法が好ましい。
中和処理工程とけん化処理工程とは、まとめて実施されてもよいし、別々に実施されてもよい。中和処理工程とけん化処理工程とがまとめて実施される場合には、反応生成物に対して、アルカリ成分が中和に必要な量より過剰に加えられる。具体的には、アルカリ成分を中和に必要な量に対して1.4倍以上使用することが好ましい。処理時間は、投入時間を含めて10分以上が好ましい。処理温度は、中和熱を加味して20〜70℃が好ましい。高濃度のアルカリ水溶液が使用される場合には、処理工程中に(メタ)アクリル酸ナトリウムの濃度が高くなることから、重合及び塩析に注意する必要がある。
次に、中和処理工程とけん化処理工程とが別々に実施される場合について説明する。
けん化処理工程におけるけん化処理では、前記中和処理工程後又は後記水洗処理工程後で得られる有機層が、けん化処理剤としてのアルカリで処理されることにより、(B)成分等の乳化性化合物とアルカリとのけん化反応が行われて(B)成分等の乳化性化合物が分解される。このけん化処理工程は、前記中和処理工程と別個に行われることにより、けん化反応を効果的に行うことができる。
けん化処理の方法としては、例えば前記中和処理後又は後記水洗処理後に得られる有機層にけん化処理剤が添加されて攪拌及び混合される方法が挙げられる。
このけん化処理工程では、投入されるけん化処理剤としてのアルカリ水溶液の濃度、量、攪拌時間、及び処理温度が幅広く選択され得る。このため、けん化処理は、アルカリによって、(B)成分であるカルボキシル基を有するエステルのエステル結合を、対応する(メタ)アクリル酸〔実質上(メタ)アクリルアルカリ金属塩〕と多価アルコールとに加水分解する。分解生成物は、水に溶解して除去される。
けん化処理剤として用いられるアルカリとしては、アルカリ水溶液が好ましい。アルカリ水溶液におけるアルカリ成分としてはアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩が挙げられ、例えばアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、及びアルカリ土類金属水酸化物が挙げられる。アルカリ金属水酸化物としては、例えば水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが挙げられる。アルカリ金属炭酸塩としては、例えば炭酸ナトリウムが挙げられる。アルカリ土類金属水酸化物としては、例えば水酸化カルシウムが挙げられる。これらの中でも、けん化処理の効果が高いことから、アルカリ金属水酸化物が好ましい。アルカリ水溶液の濃度は、1〜25質量%が好ましく、10〜25質量%がより好ましい。アルカリの使用量は、中和処理時のアルカリの使用量に対して0.2〜4倍が好ましく、処理槽の大きさ及び排水量を考慮して0.5〜2倍がより好ましい。けん化処理は撹拌下で行われることが好ましく、その際の撹拌時間は10分から3時間が好ましい。この場合、けん化処理剤として中和処理剤と同じ処理剤が使用されることにより、両処理を効率よく行うことができる。けん化処理の処理温度は、乳化性化合物のけん化処理を常温(20℃)又は少しの加熱で容易に行うことができることから、20〜70℃が好ましい。
けん化工程は、上述した好ましい条件の範囲内における処理により完了するが、必要に応じて、けん化工程の進行度は管理可能である。けん化処理の進行度を管理する方法として、水層のアルカリ価、有機層の伝導率(電気伝導率)、及び界面張力を測定する方法が挙げられる。水層のアルカリ価は、例えばエステルの種類、副反応の増減、及び用いられるアルカリ水溶液の濃度によって異なることから、製造銘柄及び処方ごとにアルカリ価の推移を調べる必要がある。一般に、アルカリ価による管理方法では、けん化処理中のアルカリ価の変動が小さくなった時点をけん化処理工程の終了の目安にすることができる。
有機層の伝導率は、有機層中に含まれるイオン成分が多いときに高くなり、このような状態では、主に乳化性化合物がアルカリ金属塩として存在している。けん化反応の進行に伴い、イオン成分は分解されて有機層からアルカリ水溶液層に移行していく。このため、水層のアルカリ価と同様に、有機層の伝導率は銘柄及び処方によって異なるものの、伝導率の変動が小さくなった時点をけん化処理工程の終了の目安とすることができる。
有機層の界面張力も、上述のアルカリ価及び伝導率と同様に考えられることができる。乳化性化合物が有機層に存在すると界面張力は小さい値となるが、乳化性化合物が分解及び除去されるに伴って界面張力は上昇する。このため、界面張力の変動が小さくなった時点をけん化処理工程の終了の目安とすることができる。
(水洗処理工程)
本発明では、前記反応液又は処理液に水洗処理が施されることが好ましい。水洗処理は、前記エステル化反応で得られた反応液、前記中和後の有機層及び前記けん化処理後の有機層に対して行われることができる。どの時点で水洗処理が行われるかは、使用される成分及び目的に応じて適宜選択される。
水洗処理は常法に従って行われる。常法としては、例えば前記エステル化反応で得られた反応液、前記中和後の有機層及び前記けん化処理後の有機層に水が添加されて攪拌及び混合される方法が挙げられる。
(脱溶剤処理工程)
前記中和処理、けん化処理又は水洗処理後、生成された多官能(メタ)アクリル酸エステル類を含有する有機層(上層)が得られ、次いでこの有機層から有機溶媒が公知の方法で除去されることにより、多官能(メタ)アクリル酸エステルを得ることができる。
この脱溶剤処理工程では、多官能(メタ)アクリル酸エステルの熱重合を抑えるために、有機層に酸素が供給されたり重合禁止剤が添加されたりするとともに、温度が例えば80℃以下に維持され、更に処理が減圧下で行われる。多官能(メタ)アクリル酸エステルは、必要に応じて精留により精製され得る。
(印刷インク用途への応用例)
次に、本実施形態の多官能(メタ)アクリル酸エステルは、特に印刷インクとして好適に用いられるが、優れたインク特性を有する多官能(メタ)アクリル酸エステルを得るためには、けん化処理工程及びその後の処理が以下のように行われることが好ましい。すなわち、けん化処理工程では、けん化反応を促進するために、30〜60℃の処理温度、及び好ましくは1〜25質量%、より好ましくは10〜25質量%のアルカリ水溶液の濃度の条件でけん化処理が行われる。
より優れた分散性を有する製品を得るために、けん化処理後の有機層が酸性水で洗浄されることが好ましい。酸性水としては、例えば硫酸アンモニウム水溶液、塩化アンモニウム水溶液、及び塩酸水溶液が挙げられる。これにより、副反応及び中和処理で生成されたカルボン酸ナトリウム(−COONa)を含む化合物からナトリウムが脱離される。この処理により、アルカリ金属塩の形態を有する乳化性化合物が酸構造を有する化合物となった後、脱溶剤処理により除去される。このような処理が行われることにより、インク顔料の優れた分散性を有するインクを得ることができる。
さて、本実施形態の作用について説明すると、多官能(メタ)アクリル酸エステルの製造の際に、エステル化反応工程におけるエステル化反応で生成される反応生成物に中和処理が施され、さらに精製工程におけるけん化処理工程でけん化処理が施される。このけん化処理では、(B)成分であるカルボキシル基を有するエステル化合物のエステル結合がアルカリによって加水分解される。それにより、(B)成分が(メタ)アクリル酸、多価アルコール等の水溶性化合物に分解される。その後、水洗処理によりそれらの分解生成物が水に溶解して除去される。その結果、(メタ)アクリル酸エステル組成物中の(B)成分の含有量が1000ppm以下に抑えられる。
本実施形態は以下の利点を有する。
本実施形態の多官能(メタ)アクリル酸エステル組成物は、主成分である(A)成分として2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物、及び副成分である(B)成分として前記(A)成分における(メタ)アクリロイルオキシ基のいずれか1個が前記化学式(1)で表される基で置換された化合物を含有している。多官能(メタ)アクリル酸エステル組成物における(B)成分の含有量は1000ppm以下である。このため、乳化性化合物を減少させて、該乳化性化合物によって多官能(メタ)アクリル酸エステル組成物が乳化性を示す弊害を抑制することができる。その結果、多官能(メタ)アクリル酸エステルが例えばインクに用いられる場合、インクのにじみ及び製造設備の汚染を抑制することができる。
前記(A)成分は、好ましくは3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である。さらに、(A)成分がジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリル酸エステル又はジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリル酸エステルであり、(B)成分が前記化学式(2)で表される化合物であることにより、それらの多官能(メタ)アクリル酸エステルについて上述の効果を十分に発揮することができる。
多官能(メタ)アクリル酸エステル組成物の製造方法では、酸触媒の存在下において、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とが有機溶媒中でエステル化反応して多官能(メタ)アクリル酸エステル組成物が製造される。次いで、多官能(メタ)アクリル酸エステル組成物中の(B)成分の割合が1000ppm以下となるように多官能(メタ)アクリル酸エステル組成物が精製される。この製造方法では、前記(B)成分を指標として多官能(メタ)アクリル酸エステル組成物の精製を行うことによって、上述の効果を有する多官能(メタ)アクリル酸エステル組成物を容易に製造することができる。
従って、上述のようにして得られる多官能(メタ)アクリル酸エステル組成物は、印刷インクのほか、耐乳化性が必要とされる塗料、接着剤等の分野に好適に用いられことができる。
以下に、合成例、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明はそれらの実施例に限定されるものではない。
(合成例1)
攪拌機及び温度計を備えた2L反応器に、ジペンタエリスルトール315g(1.24モル)、アクリル酸643g(8.9モル)、トルエン526g、塩化第ニ銅1.5g、78%硫酸15gを仕込み、53kPaの圧力下、100℃に設定されたオイルバスで反応器を加熱してエステル化反応を開始した。トルエンとともに共沸する縮合水をディーンスターク装置にて除去してエステル化反応を進め、8時間後に反応を停止した。このときの反応液重量は1380gであり、その酸価は1.75meq/gであった。
得られた反応液を冷却した後、トルエン740gを加えて希釈した。希釈された反応液を中和処理用の槽に移し、純水350gを加えて5分間攪拌した後、30分静置して上層と下層とを分離した。
上層700gに、20%水酸化ナトリウム水溶液115g(上層中の酸分に対して等モル量)を加え、5分間攪拌した後30分間静置し、上層と下層とを分離した。上層の酸価を測定したところ、酸価は0.82meq/gであった。
分離された上層の重量は650gであった。この液(以下、本液という)を用い、(B)成分の単離及び分析を行った。
(B)成分の単離及び分析
合成例1で得られた本液を減圧及び濃縮して残渣を得た。この残渣2.5gを酢酸エチル15mlに溶解した後、0.5%炭酸ナトリウム水溶液10mlで2回抽出した。これらの抽出により得られる下層を合わせた後、1M塩酸を加えてpH1.5の酸性水溶液を得た。該水溶液を酢酸エチル15mlで抽出し、この抽出により得られる上層を蒸留水5mlで洗浄した後、無水硫酸ナトリウム1gを加えて脱水した。濾過後に得られた酢酸エチル溶液を湯浴に浸して濃縮し、残渣15mgを得た。
得られた残渣について、プロトン−NMR(核磁気共鳴スペクトル)分析法、IR(赤外線吸収スペクトル)分析法及びMALDI−TOFMS(マトリックス支援レーザ脱離イオン化質量スペクトル)分析法により分析を行った。得られたスペクトルをそれぞれ図1〜3に示す。さらに、残渣をDMF(ジメチルホルムアミド)−ジメチルアセタールにより処理して、メチルエステル化して得られた試料について、MALDI−TOFMSにより分析を行った。得られたスペクトルを図4に示す。
以上の分析結果より、下記の化学式(6)で表される化合物、化学式(7)で表される化合物、及び化学式(8)で表される化合物をそれぞれ確認することができた。
Figure 0004998263
Figure 0004998263
Figure 0004998263
前記化学式(6)で表される化合物、及び化学式(7)で表される化合物は、前記化学式(2)において、Rが水素原子を表し、A〜Aの内の4個がアクリロイル基を表すとともに残り1個が水素原子を表す化合物である。前記化学式(8)で表される化合物は、前記化学式(2)において、Rが水素原子を表し、A〜Aがアクリロイル基を表す化合物である。
1)図1(プロトン−NMRスペクトル)
図1において、2.5〜2.6ppmのシグナルは、−O−CH−CH−COOH(カルボン酸)のα−メチレンに由来するものである。
〔測定機器と条件〕
270MHz、日本電子製、JNM−EX270型
測定条件: 重クロロホルム溶液、積算回数 32回、常温
2)図2(IRスペクトル)
図2において、1721.7cm−1は、エステル結合の吸収を示す。
〔測定機器と条件〕
ニコレー社製、Impact−400D
アクセサリー: μ−ATR(SensIRテクノロジー製)、ダイヤモンドクリスタル1回反射型
測定条件: 分解能 4cm−1、積算回数 32回
3)図3(MALDI−TOFMSスペクトル)
図3において、m/z564は、化学式(6)で表される化合物及び化学式(7)で表される化合物に、イオン化助剤に由来するナトリウムが付加したものを示す。
m/z586は、化学式(6)で表される化合物及び化学式(7)で表される化合物のナトリウム塩に、イオン化助剤に由来するナトリウムが付加したものを示す。
m/z618は、化学式(8)で表される化合物に、イオン化助剤に由来するナトリウムが付加したものを示す。
m/z640は、化学式(8)で表される化合物のナトリウム塩に、イオン化助剤に由来するナトリウムが付加したものを示す。
〔測定機器と条件〕
装置: PE biosystems社製、Voyager−DE RP型
レーザ: Nレーザ(λ=337nm)
加速電圧: 20kV
測定モード: リニアーモード
測定対象イオン: ポジティブイオン
試料調製方法
a)各試料10mgをアセトン1mlに溶解させる。
b)マトリックス:2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHB)10mgをアセトン1mlに溶解させる。
c)イオン化助剤:ヨウ化ナトリウム5mgをアセトン1mlに溶解させる。
d)前記a)〜c)の各溶液を2μlずつ採取して混合し、1μlの混合液をMALDI−TOFMS用試料プレート上に滴下して結晶を生成させる。
4)図4(メチルエステル誘導化後のMALDI−TOFMSスペクトル)
図4において、m/z578は、化学式(6)及び(7)のカルボキシル基がメチルエステル化された化合物に、イオン化助剤に由来するナトリウムが付加したものを示す。
m/z632は、化学式(8)のカルボキシル基がメチルエステル化された化合物に、イオン化助剤に由来するナトリウムが付加したものを示す。
(B)成分の定量
合成例1で得られた本液をHPLC(高速液体クロマトグラフ)分析したところ、(B)成分〔化学式(6)、(7)及び(8)の化合物〕が8000ppm含まれていた。HPLCの条件を以下に示す。
(HPLC分析方法と条件)
装置:(株)島津製作所製LC−20AD型
カラム:ジーエルサイエンス(株)製Inertsil ODS−2(4.6mmI.D.×150mm)
溶離液:流速1.0ml/min
0.015%リン酸水/メタノール(質量比)=55/45(Initial)
=50/50(10min)
=30/70(40min)
=20/80(45min)
=0/100(55min)
カラム温度:40℃
検出波長:210nm
試料:100mg/10ml(アセトニトリル)、注入量5μl
(B)成分濃度計算法:(B)成分の濃度は以下の式により計算された。
濃度(ppm)=(化合物の検出ピーク面積)/(0〜55分までの検出ピークの全面積)×10
次に、前記本液を用いて、以下の実施例1〜3及び比較例1を実施した。
(実施例1)
合成例1で得られた本液に、20%水酸化ナトリウム水溶液を中和処理時の添加量の2倍量(230g)添加し、液温を30℃に維持しながら1時間攪拌してけん化処理を行った。そして、30分間静置した後に下層を除去した。上層をHPLC分析したところ、(B)成分が100ppm以下であった。上層に純水70gを加えて5分間攪拌し、1時間静置した後に上層を分離した。上層にハイドロキノンモノメチルエ−テルを固形分に対して400ppm添加し、減圧下で脱溶剤処理を行った。
この際、オイルバス温度を80℃に設定し、液温が該温度を越えないようにした。また、酸素含有窒素ガスを必要に応じて吹き込んで重合防止措置をとった。得られた多官能アクリル酸エステル組成物中の(B)成分は、100ppm以下であった。その多官能アクリル酸エステル組成物について、以下の方法に従い耐乳化性試験を行った。その結果を表1に示す。
(耐乳化性試験方法)
試験管にキシレン6.6gを入れ、更に得られた多官能アクリル酸エステル組成物3.3gを添加して溶解させ、この溶液に水9.9gを加えた。そして、試験管を30秒間に10往復する速度で攪拌した後に静置して試験管内を目視で観察し、以下の基準で判定した。
◎:上層及び下層が5分以内に分離し、両層の透明性が高い。
○:上層及び下層が10分以内に分離し、前記“◎”に比べて両層の透明性が若干低下するが良好である。
△:上層及び下層が分離はするものの、両層の透明性が良くない。
×:上層及び下層が分離しないか、又は上層と下層との間に中間層が発生する。
(実施例2)
合成例1で得られた本液に、20%水酸化ナトリウム水溶液115g(中和処理にて使用された20%水酸化ナトリウムと同量)を使用した以外は、実施例1と同様にしてけん化処理を行い、多官能アクリル酸エステル組成物を得た。得られた多官能アクリル酸エステル組成物について、実施例1と同様にして評価した。その結果を表1に示す。
(実施例3)
実施例2において、攪拌時間を3時間にする以外は、実施例2と同様の方法により多官能アクリル酸エステル組成物を得た。得られた多官能アクリル酸エステル組成物について、実施例1と同様に評価した。その結果を表1に示す。
(比較例1)
合成例1で得られた本液に、純水70gを加えて5分間撹拌し、5時間静置した後に下層を除去した。すなわち、けん化処理を行わなかった。そして、上層を実施例1と同様にして減圧下で脱溶剤処理し、多官能アクリル酸エステル組成物を得た。得られた多官能アクリル酸エステル組成物について、実施例1と同様に評価した。その結果を表1に示す。
Figure 0004998263
表1に示したように、実施例1〜3においては、多官能アクリル酸エステル組成物中の(B)成分の含有量がいずれも100ppm以下であることから、耐乳化性試験の結果も良好であった。一方、比較例1では、多官能アクリル酸エステル組成物中の(B)成分の含有量が8000ppmであることから、耐乳化性試験の結果が不良であった。
前記実施形態は、次のように変更して具体化され得る。
乳化性化合物として、前記(B)成分とそれ以外の化合物とを指標として多官能(メタ)アクリル酸エステル組成物の精製が行われてもよい。
多官能(メタ)アクリル酸エステル組成物中の乳化性化合物の含有量をより低下させるために、前記けん化処理が複数回行われてもよい。その場合、けん化処理剤として用いられるアルカリ水溶液の濃度が変更されたり、処理温度が変更されたりすることが好ましい。
けん化処理剤として、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属塩及び水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水溶液が用いられてもよい。
けん化処理が20℃未満の処理温度で行われ、けん化処理の処理時間が長くなってもよい。
合成例1の残渣についてのNMRスペクトルを示すチャート。 合成例1の残渣についてのIRスペクトルを示すチャート。 合成例1の残渣についてのMALDI−TOFMSスペクトルを示すチャート。 合成例1の残渣(メチルエステル化したもの)についてのMALDI−TOFMSスペクトルを示すチャート。

Claims (4)

  1. 主成分である(A)成分として2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物、及び副成分である(B)成分として前記(A)成分における(メタ)アクリロイルオキシ基のいずれか1個が下記化学式(1)で表される基で置換された化合物を含有する組成物であるとともに、該組成物中の(B)成分の含有量が1000ppm以下である多官能(メタ)アクリル酸エステル組成物の製造方法であって、
    多官能(メタ)アクリル酸エステル組成物を製造するエステル化反応工程と、前記多官能(メタ)アクリル酸エステル組成物中の前記(B)成分の含有量が1000ppm以下となるように前記多官能(メタ)アクリル酸エステル組成物を精製する精製工程とからなり、
    前記精製工程は、得られた前記多官能(メタ)アクリル酸エステル組成物を中和処理する中和処理工程と、中和処理後の反応液をけん化処理するけん化処理工程とを含み、
    前記エステル化反応工程は、酸触媒の存在下において、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とを有機溶媒中でエステル化反応する工程であり、
    前記中和処理工程は、前記エステル化反応後の反応液中の前記酸触媒及び未反応(メタ)アクリル酸等からなる酸分を除去するために、前記反応液中の酸分に対してモル比で1.0〜1.6倍のアルカリ成分を含有するアルカリ水溶液を使用して中和処理する工程であり、
    前記けん化処理工程は、前記(B)成分の含有量を減ずるために、前記中和処理後の有機層、アルカリ水溶液を使用してけん化処理する工程であり、
    前記けん化処理工程で使用するアルカリ水溶液に含有されるアルカリの量は、前記中和処理工程で使用するアルカリ水溶液に含有されるアルカリの量に対して重量比で0.5〜2倍の量とすることを特徴とする多官能(メタ)アクリル酸エステル組成物の製造方法。
    Figure 0004998263
    〔化学式(1)において、Rは水素原子又はメチル基を表す。〕
  2. 前記(A)成分が、3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である請求項1に記載の多官能(メタ)アクリル酸エステル組成物の製造方法
  3. 前記(A)成分がジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリル酸エステル又はジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリル酸エステルであり、(B)成分が下記化学式(2)で表される化合物であることを特徴とする請求項2に記載の多官能(メタ)アクリル酸エステル組成物の製造方法
    Figure 0004998263
    〔化学式(2)において、Rは水素原子又はメチル基を表し、A〜Aは(メタ)アクリロイル基又は水素原子を表す。〕
  4. 前記精製工程は、前記エステル化反応後の反応液を水洗処理する工程、前記水洗処理後の処理液を中和処理する工程、及び中和処理後の処理液をけん化処理する工程を含む請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の多官能(メタ)アクリル酸エステル組成物の製造方法
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