JP4998155B2 - 水分吸収能力を有する樹脂組成物インジケーターおよびそれを用いた積層体 - Google Patents

水分吸収能力を有する樹脂組成物インジケーターおよびそれを用いた積層体 Download PDF

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本発明は水分吸収能力を有する樹脂組成物およびそれを用いた積層体に関し、特に、吸湿前後で光線透過率が変化することで、水分を吸収しているか否かの判別が可能なインジケーターとしての機能を示す、水分吸収能力を有する樹脂組成物およびそれを用いた積層体に関する。
各種内容物を包装するパッケージ事業という分野において、「パッケージ」あるいは「包装」のキーワードとしては大きく以下の内容が挙げられる。(1)消費者に対する購買意識の付与、危険性の提示といった「表示効果」。(2)充填した内容物自体に包装体が侵されないための「内容物耐性」。(3)外部刺激に対する「内容物の保護」。これらのキーワードは更に細分化され、細かい要求品質へと展開される。そのうち、「内容物の保護」という点で特に注目を浴びているのが、酸素や水分からの内容物の保護が挙げられる。特に最近では、食品分野、工業製品分野、医療・医薬品分野等の各分野において、酸素や水分に対する内容物の保護性が重要視されるようになってきた。その背景として、酸素については酸化による内容物の分解、変質、水分については吸湿や加水分解に伴う内容物の変質が挙げられる。
このように、酸素あるいは水分による内容物の変質を防ぐ為、様々な方法が検討されてきた。その一つが、酸素バリアあるいは水分バリア性を有する材料を用いた包装体を設計することが挙げられる。水分バリアという点で例を挙げると、防湿性のあるポリオレフィン系樹脂を用いる、あるいは、これらのポリオレフィン系樹脂やポリエステル樹脂やポリアミド樹脂からなるフィルムにポリビニリデンクロライド系コーティング層を設けることで防湿性を付与したフィルムが一般的である。
これらの水分バリア性材料を用いた包装体は、その高い水分バリア性から各種用途に展開が広がっている。しかしながら、これらの水分バリア性材料は塩素系ポリマーを用いていることからその代替案が検討されている状態である。また、一部の内容物によっては、ヘッドスペース中のわずかな湿度や水分によって劣化を伴う場合もあり、包装容器外側からの水分バリア性だけでなく、ヘッドスペース中の湿度や水分も除去したいというニーズが出てきている。
これらのニーズに答える為に、小袋状の乾燥剤を内容物と共に配置する、あるいはキャップあるいは蓋材の内側に、粘着剤を設けた小袋状の乾燥剤を貼りあわせるなどして、容器内の水分を除去する試みがされている。しかしながら、小袋状の乾燥剤は誤飲、誤食の問題が有り、また粘着剤を用いてキャップや蓋材の内側に貼りつける場合には、装着工程が煩雑などの問題点を抱えている。また、小袋状乾燥剤は比較的嵩高い形状を示していることから、内容積が小さい包装容器形態では充填が可能な小袋状乾燥剤の大きさが限定されるといった問題点があった。
上述した小袋状の乾燥剤の代替案として、各種容器に乾燥剤を練り込むことで、吸湿性を付与した包装体が開発されている。これらの技術は特許文献1〜4に開示されているように公知の技術である。このような包装体を開発することで、小袋状の乾燥剤を用いることによる課題事項を改善することが可能になった。しかしながら、これらの包装体では果たすことが困難な機能を小袋状乾燥剤は有する。これが水分インジケーター機能である。一般的に小袋状乾燥剤、特にシリカゲルは青ゲルと呼ばれるインジケーター機能を有するシリカゲルを用いることで、乾燥剤の能力確認や包装体内部の湿度状態を目視で観察でき
るメリットがある。この青ゲルと呼ばれるシリカゲルは、吸湿により水和物を形成することで色調変化を示すコバルト塩が用いられており、コバルトイオンに配位している水分子の数が多いほど赤色、少ないほど青色に変化することを利用している。近年はこのコバルト塩のように水和物を形成することで色調変化を示す化合物を水溶液化し、それを濾紙などに含浸させたシート状水分インジケーターも見受けられるようになった。しかしながらコバルト塩は水和物を作りやすく、大気中の湿度に敏感に反応し、大気中に置いておくだけで呈色状態が青色から赤色に変化する。また、この呈色状態は可逆的であり、乾燥により再使用が可能である反面、メモリ-性が乏しく、水濡れ履歴等を必要とする際には、不都合であるという問題点がある。
このような課題を克服する為に、pH指示薬など吸湿により酸-塩基の反応を伴う化合物のpH変化をpH指示薬で追うことにより、不可逆性のインジケーターインキなどが開発されるようになった。しかしながら、これらインキは最終的にはシート状等の形状に施した水分インジケーターとする必要があり、小袋状乾燥剤のディメリット、つまり包材に封入しなければならないといった課題は残されている。
一方で水分吸収能力を有する包装体は、通常、熱可塑性樹脂に乾燥剤を配合して得られた樹脂組成物を用いて形成される。この樹脂組成物は水分吸収能力に関しトリガー機能を持たないため、防湿包装を完璧に行わないと吸湿してしまい、機能低下を伴う。しかしながら、通常乾燥剤を配合したフィルムに関しては吸湿前後で大きな変化を伴わないことから、最終的に製造された包装体が機能を有するか否かは、実際に水分吸収能力を測定する必要がある。この水分吸収能力の評価は、比較的時間のかかる評価方法であり、最終的な出荷検査での水分吸収能力の評価は必要であれ、製造プロセス(工程)ごとに管理検査を行うには、時間がかかりすぎてしまう。そのため、ある程度、製造プロセスにおける管理という点では簡易的な方法を用いる必要があり、製造プロセス(工程)や流通段階で水分吸収機能を目視確認できるようなインジケーター機能が要望されている。
米国特許第6,214,255号明細書 特開平3−109916号公報 特開平5−39379号公報 特開2005−272009号公報
本発明は上記の実情を考慮し問題点を克服するために発明されたものである。本発明の目的は、水分インジケーター機能を有する包装材への展開と共に、吸湿による包装材の機能低下部分を目視で容易に判別することが可能であることから、包装材の製造プロセス(工程)や包装材の流通段階での吸湿による機能低下を判別し管理することが可能な、水分吸収能力を有するフィルムを提供することにある。
本発明の請求項1に係る発明は、ポリオレフィン系樹脂に酸化カルシウムを配合した樹
脂組成物の、吸湿前の光線透過率(T1)が70〜90%であり、吸湿後の光線透過率(T2)が、(T2)/(T1)≦0.9の関係を有した、樹脂組成物からなる水分吸収能力を有する樹脂組成物インジケーター。ここで、光線透過率はJIS−K−7105(プラスチックの光学的特性試験方法)、またはJIS−K−7361(プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法)に順じた測定法による値である。
また本発明の請求項2に係る発明は、前記酸化カルシウムが脂肪酸により表面処理されていることを特徴とする、請求項1に記載の水分吸収能力を有する樹脂組成物インジケーターである。
また本発明の請求項に係る発明は、請求項1または2記載の水分吸収能力を有する樹脂組成物を、少なくとも印刷層を設けたバリア性基材と共に貼り合わせ、吸湿前後の水分吸収能力を有するフィルムの光線透過率変化を利用して、印刷層の目視確認性を低下させたインジケーターとして作用することを特徴とする、積層体である。
本発明の樹脂組成物は、それ自身及びそれを用いた包装体の製造プロセス(工程)や流通段階での吸湿による機能低下を判別、管理することが可能である。すなわち、本発明の、吸湿に伴い光線透過率が変化する水分吸収能力を有する樹脂組成物を用いることで、誤って工程間で吸湿してしまった材料を、包装材料の製造に用いるといったトラブルを回避することが可能になる。またさらには吸湿部分を目視で観察することが可能であることから、例えばフィルム用途への展開の場合、吸湿してしまった局所的な部分をスリット加工などにより除去し、能力が残っている部分のみを包装材料の製造に用いることも可能になる。この内容は、従来の乾燥剤を配合した樹脂組成物では対応することが困難な内容である。
また、本発明の樹脂組成物を、印刷層を設けた積層体と共に貼り合わせ、吸湿前後の樹脂組成物の光線透過率変化を利用して、印刷層の目視確認性を変化させることでインジケーターとして使用することが可能である。さらにまた、本発明の樹脂組成物を貼り合わせた積層体を包装用インジケーター資材として利用するだけでなく、本発明の樹脂組成物を貼り合わせた積層体を軟包装用途に使用して、インジケーター機能付き包材としての展開も可能である。
以下、本発明を一実施形態に基づいて詳細に説明する。
本発明では、水分を吸収する能力を有する酸化カルシウム(A1)を、ポリオレフィン系樹脂(A2)に配合した樹脂組成物(A)を用いる。一般に乾燥剤としては、シリカゲル、アルミナ、硫酸マグネシウムや焼明礬といった硫酸塩化合物などが挙げられるが、本発明では、水分と反応することで吸湿作用を示す酸化カルシウムが最も好ましく用いられる。酸化カルシウムは吸湿することで水酸化カルシウムに変化し、その反応は比重変化、すなわち体積変化を伴う。この比重変化は酸化カルシウムが3.30g/cm3であるのに対し、水酸化カルシウムは2.24g/cm3である。酸化カルシウムが水分を吸収して水酸化カルシウムへ変化することは、反応式(1)に示すように、体積約16.97cm3を占める1モル(mol)の酸化カルシウムは体積約33.03cm3を占める1モル(mol)の水酸化カルシウムになることを意味する。つまり、吸湿による水との反応で体積膨張を伴うことが挙げられる。
この体積膨張を伴うことで、図1(a)(吸湿前)、図1(b)(吸湿後)に模式的に示すように、乾燥剤粒子内に細かい亀裂(クラック)が発生する。このような現象が乾燥剤を配合した樹脂組成物(A)でおきると、図2に模式的に示すように、乾燥剤粒子内の
細かい亀裂(クラック)だけでなく、樹脂と乾燥剤の界面付近でも歪が生じ、空隙状あるいは細かいひび割れ状の亀裂(ボイドあるいはクレーズ)(A3)、(A5)が発生する。この亀裂の発生により、図2(a)に示す吸湿前の樹脂組成物(A)の光線透過より、図2(b)に示す吸湿後のフィルムの方が、これらの亀裂による光散乱の影響が強くなり、必然的に光線透過率が低くなり透明性が低下する。本発明では、この吸湿による体積膨張を伴う樹脂組成物内の亀裂の発生による光線透過率の低下を利用して、下記に記載する包装体や、インジケーター機能等への展開をはかるものである。
本発明の機能を発現させるための原理としては上述した通りであるが、本発明では、ポリオレフィン系樹脂(A2)に酸化カルシウム(A1)を配合した樹脂組成物(A)の吸湿前の光線透過率(T1)が70〜90%であり、吸湿後の光線透過率(T2)が、(T2)/(T1)≦0.9の関係を有することを特徴とする。樹脂組成物(A)の吸湿前の光線透過率(T1)が70%より低いと、吸湿後の光線透過率(T2)との比率の影響で、明瞭な光線透過率の低下を伴わない、つまりは吸湿前後で透明性が大きく変化しないことが挙げられる。また、樹脂組成物(A)の光線透過率を90%より高くすることは、樹脂組成物(A)の厚さを薄く、かつ、乾燥剤濃度を少なくすることが必要になる。この結果、樹脂組成物中に配合されている酸化カルシウムの量が少ないことになり、上述した本発明の原理から考慮すると、吸湿しても透過光を散乱させることが可能な酸化カルシウムに相当する箇所が少なく、(T2)/(T1)≦0.9の関係を満たせなくなる。つまり本発明では、酸化カルシウムの絶対量が多く配合されており、かつ、吸湿前の光線透過率(T1)の値が高く、吸湿により、吸湿後の光線透過率(T2)を大きく低下させることが可能な材料設計が求められる。
酸化カルシウムを配合するポリオレフィン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−αオレフィン共重合体、ポリプロピレン、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−αオレフィン共重合体、シクロペンタジエンやノルボルネンなどの環状オレフィンを共重合させた、エチレン−環状オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体あるいはその部分または完全けん化物、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体あるいはこのエステル化物、あるいはイオン架橋物、エチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル三元共重合体などから選定することが可能である。またこれら熱可塑性樹脂の2種以上のブレンド物でも構わない。これらのポリオレフィン系樹脂には、さらに各種添加剤、例えば酸化防止剤、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、分散剤、光安定剤など各種添加剤を配合してもかまわない。
上述した酸化カルシウムは水分吸収することで体積膨張を伴うことから、樹脂組成物がその体積膨張による亀裂やクラックの影響で破壊を伴う恐れがある。よって、酸化カルシウムを配合するポリオレフィン系樹脂としては、この亀裂やクラックによって破壊を伴わないような、軟質あるいはゴム弾性を示す材料であることが好ましい。このような材料としては、エチレン−αオレフィン共重合体、特に代表的な例として、シクロペンタジエニル誘導体の周期律表第III、IV、V、VI、IX、X族遷移金属原子からなる錯体および、上記金属錯体に必要に応じてメチルアルミノキサンからなる、シングルサイト触媒を用いて得られた、密度が0.930g/cm3以下、さらに好ましくは密度領域が0.850〜0.925g/cm3の範囲のエチレン−αオレフィン共重合体が好ましい。この領域のエチレン−αオレフィン共重合体はポリオレフィンエラストマーあるいはプラストマーの領域に入り、強度物性という点で非常に好ましい。前記触媒の例として、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムクロリドにメチルアミノキサンを加えて得られたシングルサイト触媒(カミンスキー触媒)やその誘導体が挙げられる。金属としては特に、チタニウムやジルコニウムやハフニウムなどの周期律第IV族の遷移金属が用いられるが、特にこれらに限定されるものでない。また、上記触媒は、嵩高い2つのシクロペンタジエニル基に遷移金属が導入された構造を有するが、チタン系の幾何拘束触媒を用いることで、C6〜C8、あるいはC9以上の高級αオレフィンも導入することが可能であることから非常に好ましい。このような、シングルサイト系触媒を用いる利点としては以下の内容が挙げられる。(1)分子量分布が狭い。(2)コモノマーの導入位置が制御しやすい。(3)ラメラ間に存在するタイ分子が多いため、引裂きなどに対する強度に優れる。(4)柔軟性を付与することが可能(5)ストレスクラッキング耐性に優れる等である。
また詳細原理は不明であるが、シングルサイト系触媒によるエチレン−αオレフィン共重合体は無機化合物の分散性に優れる。特に上記密度範囲はなおさら有効である。このような強度物性、柔軟性、無機化合物分散性という点で、上述した材料系を用いることは非常に好ましい。またチタン系の幾何拘束触媒を用いたエチレン−αオレフィン共重合体は、コモノマーの分布位置だけでなく、C9以上の高級αオレフィン(イオン重合における生成物)をコモノマーとして導入させることが可能であり、シングルサイト系触媒でありながら、低密度ポリエチレンのような長鎖分岐を構造中に取り込むことが可能である。この内容は、エチレン−αオレフィン共重合体でありながら溶融張力が大きい、せん断速度に対する溶融粘度の変化が顕著(高せん断で低粘度)など、各種成形加工に展開が可能である意味でも好ましい。
また本発明の、ポリオレフィン系樹脂に配合する酸化カルシウムは脂肪酸にて表面処理されていることが好ましい。この時の脂肪酸は、飽和あるいは不飽和を問わず、さらには、分岐脂肪酸、環状脂肪酸、ヒドロキシル脂肪酸を用いることが可能である。これらのグリセリド(油脂)でも構わないが、酸化カルシウムの表面を被覆する効果を期待するにあたっては、脂肪酸を用いた方が好ましい。脂肪酸としては、ブチル酸、バレリアン酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプロン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、パルミトイ酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、エレステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、ネルボン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸など各種脂肪酸を用いることが可能であるが、界面活性剤的な作用、および生石灰への表面処理を行うにあたり、これら脂肪酸を液状化状態で加工できる温度を考慮すると、高級脂肪酸でも特にステアリン酸やオレイン酸などの脂肪酸が好適に用いられる。
脂肪酸で表面処理をする効果は大きく二つ挙げられる。一つは、脂肪酸で表面処理することにより酸化カルシウムの吸湿する速度を制御するということである。これは未処理の酸化カルシウムを用いると、あまりにも水に対する反応性が高いため、樹脂組成物の製造段階、あるいはこの樹脂組成物を用いた包装材料を製造する工程における吸湿の恐れがある。特に樹脂組成物の製造段階では、剥き出し状態の酸化カルシウムとポリオレフィン系樹脂を2軸押出機等で混練する際に酸化カルシウムが吸湿する恐れが高く、製造環境を極力低湿度環境にしなければならない、といった配慮が必要となる。そのような意味で、脂肪酸による表面処理は、特に2軸押出機等で混練する工程での酸化カルシウムの吸湿を防止するという点で効果的である。
酸化カルシウムを脂肪酸で表面処理をする効果のもう一点は、吸湿前のフィルム光線透過率の向上である。樹脂組成物(A)に含まれる酸化カルシウム(A1)とポリオレフィン系樹脂(A2)の界面は、通常は両者の濡れ状態があまり良好でないため、ミクロ的には図3(a)に模式的に示すように,空隙(A3)が存在している状態である。吸湿前の樹脂組成物に入射する光(L)は、透過する光(L1)、酸化カルシウム(A1)で散乱する光(L2)、そして空隙(A3)の影響で乱反射する光(L3)となる。本発明では吸湿前後の光線透過率の変化を利用してインジケーター機能を付与するため、吸湿前は極力光を透過させ、吸湿後は光を透過させず散乱させることが求められる。ここで、吸湿前
のフィルムの光線透過率をアップさせるために、空隙(A3)の影響で乱反射した光(L3)を減らすことが課題となる。酸化カルシウム(A1)とポリオレフィン系樹脂(A2)と空隙(A3)が存在する環境では、吸湿前の樹脂組成物(A)の光線透過を妨げる要因が大幅に増えることになる。要因として、酸化カルシウム(A1)とポリオレフィン樹脂(A2)が密着している部分における酸化カルシウム(A1)とポリオレフィン樹脂(A2)の界面での光屈折の影響、空隙(A3)を介している部分では、酸化カルシウム(A1)と空気の界面での光屈折の影響、及びポリオレフィン系樹脂(A2)と空気の界面での光屈折の影響、さらに、空気層を介した酸化カルシウム(A1)とポリオレフィン樹脂(A2)の界面での光屈折の影響が考えられる。そこで、脂肪酸(A4)により表面処理を施した酸化カルシウムを用いることで、図3(b)に模式的に示すように、空隙(A3)をなくし上述した光線透過率を低下させる要因をなくすことが可能になる。つまりは吸湿前の光線透過率を向上させることが可能になり、吸湿後の光線透過率とのギャップを大きくさせることが可能になり、より明確なインジケーター機能を付与することが可能になる。
次に樹脂組成物(A)の製造方法を以下に記載する。最終製品の成形方法および必要とされる吸湿機能により設定した各種所定配合量の材料を、リボンミキサー、タンブラーミキサー、ヘンシェルミキサーなどを用いてドライブレンドし、単軸押出機、二軸押出機などの押出機、バンバリーミキサーなどの混練機を用いて、ベースとなる熱可塑性樹脂にもよるが、融点以上280℃以下、好ましくは260℃以下、さらに好ましくは240℃以下で混練することで得られる。その際、必要に応じて酸化カルシウムをあらかじめオレフィン系ワックスなどの分散剤で分散前処理を施しても構わない。得られたストランドは空冷あるいは水冷により冷却し、ペレタイズ後、アルミ包装袋などの包装形態中で保管する。その後、以下に記載する成形法を用いて包装体を得ることが可能である。
本発明の樹脂組成物(A)を用いて、水分インジケーター機能を発現させるためには、吸湿前後の透過率変化を確認する方向軸の厚みとして、基本的に制限はなく、上記記載の光線透過率のパラメーターの範疇に納まっていれば問題はないが、概ね10〜200μmの範囲に調整することが好ましい。10μmより薄い、あるいは200μmより厚いケースでは、吸湿前後の光線透過率変化を利用したインジケーター機能が不明確になる恐れがある。
本発明の樹脂組成物(A)は、約100〜200μmの厚み範囲では、射出成形、異型押出成形、真空・圧空成形、プレス成形、シート成形、カレンダー成形等の各種成形法により得られた厚物系物品として使用することが可能である。また、約10〜100μmの厚み範囲では、インフレーション製膜、Tダイキャスト製膜等の各種製膜法により得られたフィルムとして使用することが可能である。上述した、厚み範囲に対応した樹脂組成物の成形あるいは製膜方法は、あくまで好適に利用できる成形あるいは製膜法をまとめたものであり、これに限定されるものではない。また、樹脂組成物(A)として必要な厚み範囲を満たせば良いので、例えば、多層の構造体からなる一部の層として上記厚み範囲の樹脂組成物(A)を設けた積層体として使用しても構わない。例示すると、「インフレーション製膜により得られたトータル厚60μmの中間層に30μmの樹脂組成物(A)を設けた多層フィルム」などが挙げられるが、これに限定されない。
本発明の樹脂組成物(A)のインジケーター機能について、その用途例を以下説明する。
<水分吸収フィルムとしての吸湿管理>
図4に示すように、例えば、中間層として30μmの樹脂組成物(A)を設けたトータル厚み60μmの多層フィルムの,幅750mm×長さ2000mからなるロール(R)
を吸湿させた場合を説明する。ただし、巻芯コア(R4)の防湿性は高く中心側からの吸湿は無視できる。この場合、図4(b)に示すようにロール端面部(R1)とロール外層部(R2)が吸湿の影響を受けやすい。ロール内層部(R3)はロール端面部(R1)とロール外層部(R2)により吸湿を防止されているために、吸湿能力を維持している。この場合、吸湿しているロール端面部(R1)及びロール外層部(R2)と吸湿していないロール内層部(R3)とは、光線透過率の違いを利用することで明瞭に見分けることが可能である。例えば、このロールを用いた包装材料を製造するにあたって、吸湿により水分吸収能力を発現することができない部位を除去することが可能になり、水分吸収フィルムとしての不良品の混入が防止される。また、光線透過率の低下したロール外層部(R2)を取り除き、さらには光線透過率の低下したロール端面部(R1)をロールの段階、あるいは各種基材と貼り合わせた段階で耳切りスリットを行って除去することで、水分吸収機能を発現しうるロール内層部(R3)を有効利用することが可能になり、ロール全体を廃棄することなく材料のロス低減につながる。
<射出成形部材としての吸湿管理>
例えばサイズ50mm×100mm、厚み200μmの吸湿シートを射出成形で成形した場合、吸湿シートの機能性という点を考慮すると、成形直後にすぐ防湿包装をすることが好ましい。しかしながら、この防湿包装が不十分であった場合は、吸湿シートとしての機能を損なう可能性が高い。このような場合、未吸湿のシートとの光線透過率を比較することで、この材料の性能が保持されているか否かの判別を行うことが可能である。
以上説明した例は、水分吸収能力を有する包装材あるいは包装資材を生産する際に、その製品自身が吸湿の影響により機能低下しているか否かの判断を行うためのインジケーター機能であり、その作用としては吸湿部と未吸湿部の光線透過率の相対比較によって行われる。
<水分インジケーターシート>
図5は、例えば、印刷層(S2)を設けたバリア性基材(S1)に、樹脂組成物(A)を積層させた積層体(S)を説明する模式図である。図5に示すように、積層体(S)は、バリア基材(S1)に印刷層(S2)を設け、接着剤層(S3)を介して、樹脂組成物(A)からなるフィルムまたはシートを積層させた構成となっている。吸湿前の状態では人間の目(E)は印刷層を認識することが可能であるが、吸湿により生じた酸化カルシウム(A1)自体あるいは、樹脂組成物(A)のポリオレフィン樹脂(A2)と酸化カルシウムの界面近傍の亀裂(A5)により光が散乱し、人間の目(E)は印刷層を認識しにくくなる。このようにして印刷層を目視認識可能か否かでインジケーター機能を付与させることができる。
<水分インジケーター機能付き包装体>
次に、前記した図5におけるバリア性基材(S1)としてアルミニウム箔、アルミ蒸着フィルム、シリカ・アルミナなどの無機化合物蒸着フィルム、ポリ塩化ビニリデン系コート剤を設けたニ軸延伸ポリプロピレンフィルムやニ軸延伸ナイロンフィルム、あるいはエチレン-環状オレフィン共重合体などの防湿性基材を含む基材を用いることで、軟包装形態に展開することが可能である。この場合、軟包装の外側から透過する水分の影響を防止する意味でも、アルミニウム箔やシリカ・アルミナなどの無機化合物蒸着フィルムを用いることが好ましい。基材にバリアフィルムを用いることで、樹脂組成物(A)は微量なヘッドスペース中の水分のみを吸収することになる。ここで仮に、この軟包装体にピンホールやシール不良など外部からの水分が浸入しやすい欠陥があった場合、樹脂組成物(A)はヘッドスペース中の微量な水分以上の過剰な水分を吸収することになり、光線透過率が低下する。これにより、開封時の内部の印刷状態を確認することで、軟包装体の未開封性や、ピンホールの発生あるいはシール不良といった欠陥を認識することが可能になり、本発明の積層体をインジケーター機能を有する軟包装体として利用することが可能になる。
以下に本発明の具体的実施例及び比較例について説明する。
<実施例及び比較例1〜15>
ステアリン酸による表面処理が有り又は無しの酸化カルシウムと、ポリエチレン系ワックスと、低密度ポリエチレン(MFR=2)からなる混合物を、二軸押出機を用いて溶融混練することで樹脂組成物(A)を作成した。酸化カルシウムの配合濃度は表1に記載するように5〜50重量%の範囲で変化させた。この樹脂組成物(A)を、多層空冷インフレーション製膜機を用いて、PE系樹脂/樹脂組成物(A)/PE系樹脂の2種3層の層構成からなる多層フィルムに製膜した。ここで、樹脂組成物(A)の厚みは30μmと100μmの2水準とした。また、内層及び外層に相当するPE系樹脂は、樹脂組成物(A)の作成に用いたと同じ低密度ポリエチレンであり、それぞれ厚さ20μmである。この乾燥剤を配合した多層フィルムの吸湿前後の光線透過率を、JIS−K−7105(プラスチックの光学的特性試験方法)、またはJIS−K−7361(プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法)に順じた測定が可能である日本電色工業株式会社製濁度計(12V50Wハロゲンランプを搭載したNDH−1001DP)を用いて測定した。吸湿前のサンプルは製膜直後のフィルムサンプルを用い、吸湿後のサンプルは40℃90%R.H.(相対湿度)環境で2週間保管したサンプルを用いた。評価結果は○△×形式で行い、さらに×は×(1)、×(2)で不良要因を分別した。×(1)は吸湿前の光線透過率は良好であるが、吸湿後の光線透過率も比較的高いためT2/T1の低下率が小さく、インジケーター機能を発現させることが困難であったことを示し、×(2)は吸湿前の光線透過率が低すぎて、吸湿後の光線透過率との変化が明確でなく、その結果T2/T1の低下率が低く、インジケーター機能を十分発現できなかったことを示す。ここでの評価では吸湿前後の光線透過率の相対比較になるため、〇ほど明瞭な変化ではないがインジケーター機能としては十分作用しうるもについて△評価を与えている。
<実施例及び比較例16〜18>
次に、同様にして、ステアリン酸による表面処理が有り又は無しの酸化カルシウムと、ポリエチレン系ワックスと、低密度ポリエチレン(MFR=2)からなる混合物を、二軸押出機を用いて溶融混練することで樹脂組成物(A)を作成した。酸化カルシウムの配合濃度は表1に記載するように5、10、20重量%とした。この樹脂組成物(A)を、射出成形法により100×100mmサイズで厚み200μmのプレートを作製した。評価方法および判定方法は上述した実施例1〜15と同様である。
以上の結果から、当然ながら酸化カルシウムの濃度が高くなると吸湿前の光線透過率(T1)は低下傾向にあるが、(T1)が70〜90%の間であり、かつ吸湿後の光線透過率(T2)との間で、(T2)/(T1)が0.9より小さいと、吸湿前後の光線透過率の差を利用したインジケーター機能が発揮された評価が得られた。このインジケーター機能については、表面処理なしの酸化カルシウムよりも脂肪酸により表面処理した酸化カルシウムを用いた方が、同じ酸化カルシウム濃度であっても吸湿前の光線透過率T1を向上させることが可能になり、幅広い酸化カルシウム濃度範囲において、吸湿前後の光線透過率の差を利用したインジケーター機能を発現することが可能になった。樹脂組成物(A)の厚さが厚くなると、少ない酸化カルシウム添加量でも機能を発現させることが可能になるが、厚み依存性よりは、吸湿前の光線透過率(T1)を70〜90%の範囲になるように樹脂組成物(A)の材料配合を行うことの寄与が大きく、その一つの手段として、表面処理を施した酸化カルシウムを用いることが有効であった。
<参考例1>
表1に記載する比較例5、7及び実施例11からなる多層フィルムを7.62cm径の
プラスチックコアにロール状で巻取り、幅750mm×巻長2000mのロールを作製した。このロールを、アルミニウム箔を介在させた一般軟包装用積層フィルムを用いて防湿梱包を行ない、この防湿梱包に意図的に傷を設けることで、その部位の影響による吸湿の影響を評価した。評価環境は25℃−65%R.H.(相対湿度)環境で2週間である。2週間後に、この防湿梱包を解体し、ロールの吸湿状態を判別した。比較例5と7のロールは保管前後で明瞭な変化が認められないのに対し、実施例11のロールは、ロール外層部(図4のR2に相当)は白濁し、そのロール外層部を除去すると、ロール端面部(図4のR1に相当)が幅50mmの範囲で明瞭に白濁しているのが確認された。
次に、酸化カルシウム配合量が同量の比較例5及び実施例11のロールについて、上記した吸湿後のロール外層部を、実施例11は全面が白濁したロール外層部からロール端面部が幅50mmの範囲で明瞭に白濁しているのが確認される内側の数量まで除去し、比較例5も実施例11と同じ数量除去し、残ったロールから、それぞれロール端面部を含む100×100mmサイズのサンプルを採取し、その水分吸収能力を測定した。この時、比較例5のサンプルでは100×100mmの範囲で透明性の差が目立たない状態であるのに対し、実施例11のサンプルは、約半分のところで光線透過率の差が顕著に表れて白濁している状態であった。水分吸収能力の測定結果は、比較例5、実施例11とも所定能力のほぼ半分の能力である事が確認された。これはそれぞれロール端面部からの吸湿で水分吸収能力が消費されたものと見られるが、比較例5のサンプルでは、能力低下の目視確認ができなかったのに対し、実施例11のサンプルでは、能力低下の目視確認ができた。
<参考例2>
構成として、外側よりポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)/接着剤/アルミニウム箔(Al)/印刷層からなる基材を用い、ドライラミネート手法により、比較例5及び実施例11の多層フィルムを内側、印刷層側に積層させて積層体を得る。
上記積層体において、ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚みを250μmにした比較的剛性に優れる積層シートを作製した。印刷部は黒印刷により「吸湿不可」を促す文字およびマークを施した。このマークが見えている状態では吸湿していない、という指示効果を与えている。この積層シートを50×100mmサイズに断裁し、40℃−90%R.H.(相対湿度)環境に保管したところ、比較例5の多層フィルムを積層した積層シートでは吸湿前後で大きな変化認められないが、実施例11の多層フィルムを積層した積層シートでは、光線透過率が低下することで上記文字およびマークが確認できなくなり、インジケーター効果を示すことが確認された。この材料を用いることで、比較的形状事由度の高いインジケーター機能を有する包装資材を提供することが可能になり、各種包装形態に挿入・装着・装填することで、水分インジケーター機能を付与することが可能になる。
<参考例3>
次に、上記積層体において、ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚みを12μmにした軟包装用の積層フィルムを作製した。印刷部は前記積層シートと同様に、黒印刷により「吸湿不可」を促す文字およびマークを施した。この積層フィルムをA4サイズに切り取り、ヒートシール方を用いて3方シールを行うことで、パウチサイズA5の包装体を作製した。さらに、この包装体にピンホールを意図的に設けたサンプルも作製した。ピンホール有り無しのサンプルで40℃−90%R.H.(相対湿度)環境に保管したところ、比較例5の多層フィルムを積層した積層フィルムでは吸湿前後で、包装体内面に大きな変化は認められないが、実施例11の多層フィルムを積層した積層フィルムでは、光線透過率が低下して内面が白濁することで上記文字およびマークが確認できなくなり、インジケーター効果を示すことが確認された。
本発明の樹脂組成物(A)の、酸化カルシウムの吸湿による体積膨張(内クラック発生)を説明する模式図。(a):吸湿前、(b):吸湿後 本発明の樹脂組成物(A)の吸湿による光線透過率低下を説明する模式図。(a):吸湿前、(b):吸湿後 酸化カルシウムの脂肪酸表面処理による光線透過率向上を説明する模式図。(a):脂肪酸処理なし、(b):脂肪酸処理あり 本発明の樹脂組成物のロール状での吸湿の状態を説明する模式図。(a):ロール外観、(b):ロール断面図 本発明の樹脂組成物を、印刷層を設けたバリア基材と貼り合わせたインジケーターの模式図。(a):吸湿前、(b):吸湿後
符号の説明
A・・・樹脂組成物 A1・・・酸化カルシウム
A2・・・ポリオレフィン系樹脂 A3・・・空隙
A4・・・脂肪酸処理部分 A5・・・亀裂(樹脂)
L・・・光線 L1・・・透過光 L2・・・酸化カルシウムによる散乱光
L3・・・空隙A3による散乱光
R・・・ロール R1・・・ロール端面部 R2・・・ロール外層部
R3・・・ロール内層部 R4・・・巻芯コア
S・・・積層体(インジケーター部材) S1・・・バリア性基材
S2・・・印刷層 S3・・・接着剤層 E・・・目

Claims (3)

  1. ポリオレフィン系樹脂に酸化カルシウムを配合した樹脂組成物の、吸湿前の光線透過率(T1)が70〜90%であり、吸湿後の光線透過率(T2)が、(T2)/(T1)≦0.9の関係を有した、樹脂組成物からなる水分吸収能力を有する樹脂組成物インジケーター
    ここで、光線透過率はJIS−K−7105(プラスチックの光学的特性試験方法)、またはJIS−K−7361(プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法)に順じた測定法による値である。
  2. 前記酸化カルシウムが脂肪酸により表面処理されていることを特徴とする、請求項1に記載の水分吸収能力を有する樹脂組成物インジケーター
  3. 請求項1または2記載の水分吸収能力を有する樹脂組成物インジケーターを、少なくとも印刷層を設けたバリア性基材と共に貼り合わせ、吸湿前後の水分吸収能力を有するフィルムの光線透過率変化を利用して、印刷層の目視確認性を低下させたインジケーターとして作用することを特徴とする、積層体。
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