JP4998155B2 - 水分吸収能力を有する樹脂組成物インジケーターおよびそれを用いた積層体 - Google Patents
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るメリットがある。この青ゲルと呼ばれるシリカゲルは、吸湿により水和物を形成することで色調変化を示すコバルト塩が用いられており、コバルトイオンに配位している水分子の数が多いほど赤色、少ないほど青色に変化することを利用している。近年はこのコバルト塩のように水和物を形成することで色調変化を示す化合物を水溶液化し、それを濾紙などに含浸させたシート状水分インジケーターも見受けられるようになった。しかしながらコバルト塩は水和物を作りやすく、大気中の湿度に敏感に反応し、大気中に置いておくだけで呈色状態が青色から赤色に変化する。また、この呈色状態は可逆的であり、乾燥により再使用が可能である反面、メモリ-性が乏しく、水濡れ履歴等を必要とする際には、不都合であるという問題点がある。
脂組成物の、吸湿前の光線透過率(T1)が70〜90%であり、吸湿後の光線透過率(T2)が、(T2)/(T1)≦0.9の関係を有した、樹脂組成物からなる水分吸収能力を有する樹脂組成物インジケーター。ここで、光線透過率はJIS−K−7105(プラスチックの光学的特性試験方法)、またはJIS−K−7361(プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法)に順じた測定法による値である。
細かい亀裂(クラック)だけでなく、樹脂と乾燥剤の界面付近でも歪が生じ、空隙状あるいは細かいひび割れ状の亀裂(ボイドあるいはクレーズ)(A3)、(A5)が発生する。この亀裂の発生により、図2(a)に示す吸湿前の樹脂組成物(A)の光線透過より、図2(b)に示す吸湿後のフィルムの方が、これらの亀裂による光散乱の影響が強くなり、必然的に光線透過率が低くなり透明性が低下する。本発明では、この吸湿による体積膨張を伴う樹脂組成物内の亀裂の発生による光線透過率の低下を利用して、下記に記載する包装体や、インジケーター機能等への展開をはかるものである。
のフィルムの光線透過率をアップさせるために、空隙(A3)の影響で乱反射した光(L3)を減らすことが課題となる。酸化カルシウム(A1)とポリオレフィン系樹脂(A2)と空隙(A3)が存在する環境では、吸湿前の樹脂組成物(A)の光線透過を妨げる要因が大幅に増えることになる。要因として、酸化カルシウム(A1)とポリオレフィン樹脂(A2)が密着している部分における酸化カルシウム(A1)とポリオレフィン樹脂(A2)の界面での光屈折の影響、空隙(A3)を介している部分では、酸化カルシウム(A1)と空気の界面での光屈折の影響、及びポリオレフィン系樹脂(A2)と空気の界面での光屈折の影響、さらに、空気層を介した酸化カルシウム(A1)とポリオレフィン樹脂(A2)の界面での光屈折の影響が考えられる。そこで、脂肪酸(A4)により表面処理を施した酸化カルシウムを用いることで、図3(b)に模式的に示すように、空隙(A3)をなくし上述した光線透過率を低下させる要因をなくすことが可能になる。つまりは吸湿前の光線透過率を向上させることが可能になり、吸湿後の光線透過率とのギャップを大きくさせることが可能になり、より明確なインジケーター機能を付与することが可能になる。
図4に示すように、例えば、中間層として30μmの樹脂組成物(A)を設けたトータル厚み60μmの多層フィルムの,幅750mm×長さ2000mからなるロール(R)
を吸湿させた場合を説明する。ただし、巻芯コア(R4)の防湿性は高く中心側からの吸湿は無視できる。この場合、図4(b)に示すようにロール端面部(R1)とロール外層部(R2)が吸湿の影響を受けやすい。ロール内層部(R3)はロール端面部(R1)とロール外層部(R2)により吸湿を防止されているために、吸湿能力を維持している。この場合、吸湿しているロール端面部(R1)及びロール外層部(R2)と吸湿していないロール内層部(R3)とは、光線透過率の違いを利用することで明瞭に見分けることが可能である。例えば、このロールを用いた包装材料を製造するにあたって、吸湿により水分吸収能力を発現することができない部位を除去することが可能になり、水分吸収フィルムとしての不良品の混入が防止される。また、光線透過率の低下したロール外層部(R2)を取り除き、さらには光線透過率の低下したロール端面部(R1)をロールの段階、あるいは各種基材と貼り合わせた段階で耳切りスリットを行って除去することで、水分吸収機能を発現しうるロール内層部(R3)を有効利用することが可能になり、ロール全体を廃棄することなく材料のロス低減につながる。
例えばサイズ50mm×100mm、厚み200μmの吸湿シートを射出成形で成形した場合、吸湿シートの機能性という点を考慮すると、成形直後にすぐ防湿包装をすることが好ましい。しかしながら、この防湿包装が不十分であった場合は、吸湿シートとしての機能を損なう可能性が高い。このような場合、未吸湿のシートとの光線透過率を比較することで、この材料の性能が保持されているか否かの判別を行うことが可能である。
図5は、例えば、印刷層(S2)を設けたバリア性基材(S1)に、樹脂組成物(A)を積層させた積層体(S)を説明する模式図である。図5に示すように、積層体(S)は、バリア基材(S1)に印刷層(S2)を設け、接着剤層(S3)を介して、樹脂組成物(A)からなるフィルムまたはシートを積層させた構成となっている。吸湿前の状態では人間の目(E)は印刷層を認識することが可能であるが、吸湿により生じた酸化カルシウム(A1)自体あるいは、樹脂組成物(A)のポリオレフィン樹脂(A2)と酸化カルシウムの界面近傍の亀裂(A5)により光が散乱し、人間の目(E)は印刷層を認識しにくくなる。このようにして印刷層を目視認識可能か否かでインジケーター機能を付与させることができる。
次に、前記した図5におけるバリア性基材(S1)としてアルミニウム箔、アルミ蒸着フィルム、シリカ・アルミナなどの無機化合物蒸着フィルム、ポリ塩化ビニリデン系コート剤を設けたニ軸延伸ポリプロピレンフィルムやニ軸延伸ナイロンフィルム、あるいはエチレン-環状オレフィン共重合体などの防湿性基材を含む基材を用いることで、軟包装形態に展開することが可能である。この場合、軟包装の外側から透過する水分の影響を防止する意味でも、アルミニウム箔やシリカ・アルミナなどの無機化合物蒸着フィルムを用いることが好ましい。基材にバリアフィルムを用いることで、樹脂組成物(A)は微量なヘッドスペース中の水分のみを吸収することになる。ここで仮に、この軟包装体にピンホールやシール不良など外部からの水分が浸入しやすい欠陥があった場合、樹脂組成物(A)はヘッドスペース中の微量な水分以上の過剰な水分を吸収することになり、光線透過率が低下する。これにより、開封時の内部の印刷状態を確認することで、軟包装体の未開封性や、ピンホールの発生あるいはシール不良といった欠陥を認識することが可能になり、本発明の積層体をインジケーター機能を有する軟包装体として利用することが可能になる。
<実施例及び比較例1〜15>
ステアリン酸による表面処理が有り又は無しの酸化カルシウムと、ポリエチレン系ワックスと、低密度ポリエチレン(MFR=2)からなる混合物を、二軸押出機を用いて溶融混練することで樹脂組成物(A)を作成した。酸化カルシウムの配合濃度は表1に記載するように5〜50重量%の範囲で変化させた。この樹脂組成物(A)を、多層空冷インフレーション製膜機を用いて、PE系樹脂/樹脂組成物(A)/PE系樹脂の2種3層の層構成からなる多層フィルムに製膜した。ここで、樹脂組成物(A)の厚みは30μmと100μmの2水準とした。また、内層及び外層に相当するPE系樹脂は、樹脂組成物(A)の作成に用いたと同じ低密度ポリエチレンであり、それぞれ厚さ20μmである。この乾燥剤を配合した多層フィルムの吸湿前後の光線透過率を、JIS−K−7105(プラスチックの光学的特性試験方法)、またはJIS−K−7361(プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法)に順じた測定が可能である日本電色工業株式会社製濁度計(12V50Wハロゲンランプを搭載したNDH−1001DP)を用いて測定した。吸湿前のサンプルは製膜直後のフィルムサンプルを用い、吸湿後のサンプルは40℃90%R.H.(相対湿度)環境で2週間保管したサンプルを用いた。評価結果は○△×形式で行い、さらに×は×(1)、×(2)で不良要因を分別した。×(1)は吸湿前の光線透過率は良好であるが、吸湿後の光線透過率も比較的高いためT2/T1の低下率が小さく、インジケーター機能を発現させることが困難であったことを示し、×(2)は吸湿前の光線透過率が低すぎて、吸湿後の光線透過率との変化が明確でなく、その結果T2/T1の低下率が低く、インジケーター機能を十分発現できなかったことを示す。ここでの評価では吸湿前後の光線透過率の相対比較になるため、〇ほど明瞭な変化ではないがインジケーター機能としては十分作用しうるもについて△評価を与えている。
<実施例及び比較例16〜18>
次に、同様にして、ステアリン酸による表面処理が有り又は無しの酸化カルシウムと、ポリエチレン系ワックスと、低密度ポリエチレン(MFR=2)からなる混合物を、二軸押出機を用いて溶融混練することで樹脂組成物(A)を作成した。酸化カルシウムの配合濃度は表1に記載するように5、10、20重量%とした。この樹脂組成物(A)を、射出成形法により100×100mmサイズで厚み200μmのプレートを作製した。評価方法および判定方法は上述した実施例1〜15と同様である。
表1に記載する比較例5、7及び実施例11からなる多層フィルムを7.62cm径の
プラスチックコアにロール状で巻取り、幅750mm×巻長2000mのロールを作製した。このロールを、アルミニウム箔を介在させた一般軟包装用積層フィルムを用いて防湿梱包を行ない、この防湿梱包に意図的に傷を設けることで、その部位の影響による吸湿の影響を評価した。評価環境は25℃−65%R.H.(相対湿度)環境で2週間である。2週間後に、この防湿梱包を解体し、ロールの吸湿状態を判別した。比較例5と7のロールは保管前後で明瞭な変化が認められないのに対し、実施例11のロールは、ロール外層部(図4のR2に相当)は白濁し、そのロール外層部を除去すると、ロール端面部(図4のR1に相当)が幅50mmの範囲で明瞭に白濁しているのが確認された。
構成として、外側よりポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)/接着剤/アルミニウム箔(Al)/印刷層からなる基材を用い、ドライラミネート手法により、比較例5及び実施例11の多層フィルムを内側、印刷層側に積層させて積層体を得る。
<参考例3>
次に、上記積層体において、ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚みを12μmにした軟包装用の積層フィルムを作製した。印刷部は前記積層シートと同様に、黒印刷により「吸湿不可」を促す文字およびマークを施した。この積層フィルムをA4サイズに切り取り、ヒートシール方を用いて3方シールを行うことで、パウチサイズA5の包装体を作製した。さらに、この包装体にピンホールを意図的に設けたサンプルも作製した。ピンホール有り無しのサンプルで40℃−90%R.H.(相対湿度)環境に保管したところ、比較例5の多層フィルムを積層した積層フィルムでは吸湿前後で、包装体内面に大きな変化は認められないが、実施例11の多層フィルムを積層した積層フィルムでは、光線透過率が低下して内面が白濁することで上記文字およびマークが確認できなくなり、インジケーター効果を示すことが確認された。
A2・・・ポリオレフィン系樹脂 A3・・・空隙
A4・・・脂肪酸処理部分 A5・・・亀裂(樹脂)
L・・・光線 L1・・・透過光 L2・・・酸化カルシウムによる散乱光
L3・・・空隙A3による散乱光
R・・・ロール R1・・・ロール端面部 R2・・・ロール外層部
R3・・・ロール内層部 R4・・・巻芯コア
S・・・積層体(インジケーター部材) S1・・・バリア性基材
S2・・・印刷層 S3・・・接着剤層 E・・・目
Claims (3)
- ポリオレフィン系樹脂に酸化カルシウムを配合した樹脂組成物の、吸湿前の光線透過率(T1)が70〜90%であり、吸湿後の光線透過率(T2)が、(T2)/(T1)≦0.9の関係を有した、樹脂組成物からなる水分吸収能力を有する樹脂組成物インジケーター。
ここで、光線透過率はJIS−K−7105(プラスチックの光学的特性試験方法)、またはJIS−K−7361(プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法)に順じた測定法による値である。 - 前記酸化カルシウムが脂肪酸により表面処理されていることを特徴とする、請求項1に記載の水分吸収能力を有する樹脂組成物インジケーター。
- 請求項1または2記載の水分吸収能力を有する樹脂組成物インジケーターを、少なくとも印刷層を設けたバリア性基材と共に貼り合わせ、吸湿前後の水分吸収能力を有するフィルムの光線透過率変化を利用して、印刷層の目視確認性を低下させたインジケーターとして作用することを特徴とする、積層体。
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