本発明は、樹脂封止体を個片化して半導体デバイス等のパッケージを製造する目的で樹脂封止体を切断する、切断装置及び切断方法に関するものである。そして、切断される対象物である樹脂封止体は、リードフレーム、プリント基板、半導体基板等の回路基板(以下「基板」という。)において設けられた複数のチップ状電子部品(以下「チップ」という。)が樹脂封止されたものである。
従来における、基板に装着された半導体チップ、チップコンデンサ等からなるチップが樹脂封止された樹脂封止体を切断することによって、最終製品であるパッケージに個片化する工程について、図1を参照して説明する。なお、以下の説明において使用するいずれの図についても、わかりやすくするために、適宜省略し又は誇張して模式的に描かれている。
図1(1)〜(3)は、基板に装着されたチップを樹脂封止する工程から樹脂封止体を切断する工程までを説明する、それぞれ断面図である。樹脂封止体を切断する工程では、回転する外周刃(回転刃)を使用したダイサ(ダイシングソー)が、主に使用されている(例えば、特許文献1参照)。ここでいうダイサ(ダイシングソー)とは、「高速回転するスピンドルの先端に取り付けられた極薄外周刃によりウェーハのストリートに沿って切削し又は切溝を加工する装置」をいう(例えば、非特許文献1参照)。言い換えれば、ウェーハ切断用のダイサを樹脂封止体の切断に転用しているのである。また、近年では、樹脂封止体の特徴に応じて、次の2つの切断方式が使用され始めている。その1つは、レーザを使用した切断方式である(例えば、特許文献1参照)。もう1つは、高圧水と砥粒(研磨材)とを使用した切断方式、すなわちアブレシブ式のウォータージェットである(例えば、特許文献2参照)。
個片化されたパッケージを製造するには、次の工程を順次行う。まず、基板1に設けられた格子状の領域2にそれぞれチップ3を装着し、チップ3と基板1とがそれぞれ有する電極(図示なし)をワイヤ4により電気的に接続する。次に、図1(1)に示すように、下型5に基板1を載置し、下型5と上型6とを型締めし、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂からなる流動性樹脂(図示なし)を、樹脂流路7を経由してキャビティ8に充填する。次に、引き続き流動性樹脂を加熱して硬化させて、硬化樹脂からなる封止樹脂9を形成する(図1(2)参照)。ここまでの工程によって、樹脂封止体10を完成させる。なお、基板1の上に複数のチップが積層するようにして装着されたパッケージ(スタック型パッケージ)もある。
次に、図1(2)に示すように、下型5と上型6とを型開きして、樹脂封止体10を取り出す。次に、図1(3)に示すように、樹脂封止体10をステージ11に固定し、ステージ11と回転刃(図示なし)とを相対的に移動させる。これにより、各領域2の境界線からなる切断線12において(図1(3)の太い矢印の位置を参照)、回転刃と樹脂封止体10の主面Sとを接触させて樹脂封止体10をその厚さ方向に切削する。そして、回転刃を使用して樹脂封止体10をその厚さ方向に完全に切削することによって、樹脂封止体10を切断する。これにより、樹脂封止体10が個片化されて、基板1の各領域2に対応するパッケージが完成する。
なお、樹脂封止体10を切断する工程では、図1(3)に示すように、吸着によって樹脂封止体10をステージ11に固定している。具体的には、ステージ11に凹部13が設けられ、その凹部13が管路14と弁(図示なし)とを介して減圧タンク(図示なし)に接続されている。そして、ステージ11に樹脂封止体10を位置決めして配置した後に、管路14を介して凹部13を減圧する。これにより、吸気15によって、樹脂封止体10を吸着してステージ11に固定することができる。また、ステージ11においては、各領域2の境界線、すなわち樹脂封止体10が切断される線である切断線12に対応して、回転刃が収容される溝16が設けられている。
ここで、被切断物である樹脂封止体10に使用される基板1について説明する。この基板1には、例えば、次のようなものがある。それは、ガラスエポキシ基板・フレキシブル基板・テープキャリア等の樹脂ベースのプリント基板、アルミナ基板等のセラミックスベースの基板、Cu等からなる金属ベースのリードフレームである。
ところで、従来は、パッケージの平面形状は長方形(正方形を含む)だけだったので、基板1の各領域2の境界線、すなわち樹脂封止体10が切断される線である切断線12は線分だけであった。しかし、近年では、平面形状が実質的な長方形であるが(言い換えれば平面形状が全体としては長方形であるが)、平面視した外形に曲線又は折れ線を含むパッケージが登場するようになった。そして、このことにより、曲線又は折れ線の少なくともいずれかを含む切断線12を有する樹脂封止体10が登場してきた。なお、ここでいう折れ線とは、線分(有限直線)がつなぎ合わされて生成された線を意味する。
ここで、図2を参照して、平面視した外形に曲線又は折れ線の少なくともいずれかを含むパッケージが複数個含まれる樹脂封止体と、そのようなパッケージとを説明する。図2(1)は外形に曲線又は折れ線を含むメモリーカードを製造する際の中間品である樹脂封止体を、図2(2)は上述したメモリーカードのパッケージを、それぞれ示す平面図である。図2において、樹脂封止体17を切断線18X,18Yにおいて切断することによって、メモリーカードのパッケージ19が製造される。ここで、切断線18XはX方向に沿って樹脂封止体17を切断する切断線であり、切断線18YはY方向に沿って樹脂封止体17を切断する切断線である。
以下、樹脂封止体17におけるメモリーカードのパッケージ19に相当する部分の配置について、説明する。図2(1)において示された領域Pが、メモリーカードのパッケージ19に相当する部分である。また、領域Pの周囲には、最終的に廃棄される不要部A,B,Cが設けられている。また、領域Pとその上隣から時計方向に順次配置された不要部A,B,Cとが、1個の単位部分U(図中でハッチングを付した部分)を形成している。そして、樹脂封止体17には複数個の単位部分Uが格子状に配置されている。なお、樹脂封止体17において、右端の不要部B,Cと内部の不要部B,Cとは、寸法形状が同一ではないが便宜上同じ符号で示されている。また、上端の不要部A,Bと内部の不要部A,Bとについても同様である。更に、樹脂封止体17の左端と下端との部分にも、不要部(符号なし)が設けられている。
図2(2)に示されているように、このメモリーカードのパッケージ19には、平面視した外形に凹凸20と各コーナーにおける面取り部(図示なし)とが設けられている。したがって、図2(1)に示された樹脂封止体17を切断する際における切断線18X,18Yは、折れ線と曲線とを含んでいる。なお、この凹凸20は、取り扱う際に指でつまみやすいようにすること、及び、メモリーカードをデジタルカメラや携帯電話等の機器に挿入する際に機器側の部材とメモリーカードとを係止させることを目的として、設けられている。また、図2(2)に示されているように、メモリーカードのパッケージ19によっては、取り扱う際に指でつまみやすいようにするために、肉厚部Tが設けられている場合がある。
また、図2(2)に示されたメモリーカードのパッケージ19とは異なる平面形状、例えば、四辺形の1つのコーナーを切り落としたような平面形状を有するメモリーカードも存在する。このようなメモリーカードも、そのコーナーをはさむ2辺において折れ線を含むパッケージであるといえる。
さて、従来の切断技術によれば、図2(1)に示された樹脂封止体17を切断して図2(2)に示されたメモリーカードのパッケージ19を製造しようとすれば、次のような問題があった。第1に、回転刃を使用したダイサによる切断技術によれば、直線に沿ってしか被切断物を切断することができないので、曲線又は折れ線を含む切断線18X,18Yに沿って樹脂封止体17を切断することができない。したがって、平面視した外形に曲線又は折れ線の少なくともいずれかを含むパッケージの製造にはダイサを使用することができないという問題がある。加えて、小型化されたパッケージの場合には、切断する際に回転するブレードによってパッケージに加えられる力がこれを吸着する力よりも強くなるので、切断されたパッケージが飛散するおそれがあるという問題がある。この問題は、特に1辺が0.3mm以下のパッケージにおいて顕著である。
第2に、レーザを使用する切断技術によれば、曲線又は折れ線を含む切断線18X,18Yに沿って樹脂封止体17を切断することはできるが、熱による切断(溶断)であることに起因する次の問題がある。それは、パッケージの外縁における仕上がりの品位が低下するおそれがあるという問題である。また、メモリーカードに使用される基板(図1の基板1参照)は、通常、樹脂ベースのプリント基板なので、溶断による仕上がりの品位の低下が生じやすい。特に、一般のユーザーが取り扱うメモリーカードにおいては、このような仕上がりの品位は重要視される。
第3に、レーザを使用する切断技術によれば、切断する際の加工熱がチップに悪影響を与えるおそれがある。特に、近年では、メモリーカードに対して小型化及び記憶容量の大容量化という要請が強まっているので、基板の小型化、チップの大型化、及び、積層されるチップ数の増大という傾向が強くなっている。これらの傾向により、メモリーカードの表面(上面及び側面)とチップとの間の距離が小さくなってきたので、加工熱がチップやワイヤ等に与える悪影響が大きくなっている。したがって、大容量のメモリーカードに対してはレーザによる切断を適用しにくいという問題がある。また、LED等の光学素子のパッケージを製造する場合には、透明樹脂が使用されている。レーザを使用する切断技術によれば、加工熱によって透明樹脂が白濁するおそれがあるので、光学素子に対してはレーザによる切断を適用しにくいという問題がある。
第4に、レーザを使用する切断技術によれば、高価なレーザ発振器と、光路とが必要になる。したがって、装置コストの低減と装置の小型化とを図ることが困難であるという問題がある。
第5に、アブレシブ式のウォータージェットを使用する切断技術によれば、曲線又は折れ線を含む切断線18X,18Yに沿って樹脂封止体17を切断することはできるが、水タンク、高圧水発生装置、配管系、キャッチタンク、砥粒回収装置等が必要になる。それに加えて、樹脂封止体17を切断した高圧水を減衰させるための空間が必要になる。したがって、装置の小型化を図ることが困難であるという問題がある。
第6に、アブレシブ式のウォータージェットを使用する切断技術によれば、装置の構成要素のうち、噴射ノズル、配管系、ステージ等の部材が砥粒によって摩耗しやすいという問題がある。加えて、この摩耗によるメンテナンスコストの増加及び装置稼働率の低下という問題もある。
第7に、レーザを使用する切断技術とアブレシブ式のウォータージェットを使用する切断技術とによれば、異種材料である基板と封止樹脂とからなる樹脂封止体17を切断する際に、異種材料の境目で切断品位が変わり、例えば断面視した場合に段差が発生するという問題がある。この問題は、材料によってレーザ光の吸収特性が異なること、及び、材料によって硬度が異なることに起因して発生する。そして、この問題は、基板がCu系等の金属製のリードフレームからなる場合に顕著である。具体的には、金属が樹脂よりも切断されにくいので、リードフレームが有する端子部において、樹脂部よりも突出する部分が発生するおそれがある。
第8に、レーザを使用する切断技術とアブレシブ式のウォータージェットを使用する切断技術とによれば、メモリーカードのパッケージ19に設けられている肉厚部Tを切断する際に、次のような問題がある。それは、肉厚部Tにおいては、それ以外の部分に比較して長い切断時間を要するという問題である。加えて、レーザを使用する場合にはレーザ光を光学的に絞っているために、また、アブレシブ式のウォータージェットを使用する場合には高圧水が拡散するために、切断部における側面がテーパ状になるおそれがあるという問題もある。
特開平9−036151号公報(第3頁、図2)
特開2005−161460号公報(第2−3頁、図1)
(社)日本半導体製造装置協会編、「半導体製造装置用語辞典」、第4版、日刊工業新聞社、1997年11月20日、p.280
本発明が解決しようとする課題は、「従来の切断装置及び切断方法によれば、次の特長をすべて備えることができない」ということである。それらの特長とは、曲線又は折れ線を含む切断線に沿って樹脂封止体を切断できること、良好な仕上がりの品位を確保できること、加工熱による悪影響を排除できること、装置コストの低減と装置の小型化とが可能であること、メンテナンスコストが抑制されること、及び、装置稼働率が向上することである。
以下の説明における()内の符号は、説明における用語と図面に示された構成要素とを対比しやすくする目的で記載されたものである。また、これらの符号は、「図面に示された構成要素に限定して、説明における用語を解釈すること」を意味するものではない。
上述の課題を解決するために、本発明に係る切断装置は、基板(1)における複数の領域(P)に各々設けられたチップ状電子部品(3)が一括して樹脂封止された樹脂封止体(17)を各領域(P)に相当する各パッケージ(19)に個片化する目的で、複数の領域(P)が各々有する境界線を少なくとも含む切断線(12C,12S,18X,18Y)に沿って樹脂封止体(17)を切断する切断装置であって、樹脂封止体(17)を固定する固定手段(21,22)と、細線(24,30,32)と砥粒(31)とからなる切断手段と、樹脂封止体(17)の主面(S)に対して一定の位置関係をなすようにして細線(24,30,32)を張設する張設手段(25)と、一定の位置関係を保ちながら細線(24,30,32)を少なくとも1方向に駆動して走行させる駆動手段と、固定手段(21,22)と細線(24,30,32)とを相対的に移動させる移動手段とを備えるとともに、複数の領域(P)は実質的な長方形からなる平面形状を各々有しており、少なくとも領域(P)を各々含む複数の単位部分(U)が格子状に設けられており、境界線の少なくとも一部には折れ線又は曲線が含まれており、切断手段は境界線に沿って樹脂封止体(17)に接触することによって樹脂封止体(17)を切断し、固定手段(21,22)には該固定手段(21,22)と細線(24,30,32)とが相対的に移動可能であるような空間(23)が設けられ、細線(24,30,32)は一定の位置関係が樹脂封止体の主面に対して実質的に垂直であるような垂直部(WV)を有するようにして張設され、複数の領域(P)における1列に並んでいる領域(P)を含む列状領域(R1,R2)の各々において、移動手段は、細線(24,30,32)が樹脂封止体(17)に対して2つの相対的な移動を行うように固定手段(21,22)と細線(24,30,32)とを相対的に移動させるとともに、2つの相対的な移動は、列状領域(R1,R2)が有する各長方形における3辺によって構成され折れ線又は曲線を含む切断線に沿って垂直部(WV)が移動する第1の移動と、各長方形における3辺以外の1辺を含む直線状の切断線(12S)に沿って垂直部(WV)が移動する第2の移動とからなり、各列状領域(R1,R2)において2つの相対的な移動が第1の移動と第2の移動との順番で行われることによって、各列状領域(R1,R2)における各領域(P)が境界線に沿って切断されることを特徴とする。
また、本発明に係る切断装置は、基板(1)における複数の領域(P)に各々設けられたチップ状電子部品(3)が一括して樹脂封止された樹脂封止体(17)を各領域(P)に相当する各パッケージ(19)に個片化する目的で、複数の領域(P)が各々有する境界線を少なくとも含む切断線(12C,12S,18X,18Y)に沿って樹脂封止体(17)を切断する切断装置であって、樹脂封止体(17)を固定する固定手段(21,22)と、細線(24,30,32)と砥粒(31)とからなる切断手段と、樹脂封止体(17)の主面(S)に対して一定の位置関係をなすようにして細線(24,30,32)を張設する張設手段(25)と、一定の位置関係を保ちながら細線(24,30,32)を少なくとも1方向に駆動して走行させる駆動手段と、固定手段(21,22)と細線(24,30,32)とを相対的に移動させる移動手段とを備えるとともに、複数の領域(P)は実質的な長方形からなる平面形状を各々有しており、少なくとも領域(P)を各々含む複数の単位部分(U)が格子状に設けられており、境界線の少なくとも一部には折れ線又は曲線が含まれており、切断手段は境界線に沿って樹脂封止体(17)に接触することによって樹脂封止体(17)を切断し、固定手段(21,22)には該固定手段(21,22)と細線(24,30,32)とが相対的に移動可能であるような空間(23)が設けられ、細線(24,30,32)は各々一定の位置関係が樹脂封止体の主面に対して実質的に垂直であるような垂直部(WV)と実質的に平行であるような水平部(WH)とを有するようにして張設され、複数の領域(P)における1列に並んでいる領域(P)を含む列状領域の(R1,R2)各々において、移動手段は、細線(24,30,32)が樹脂封止体(17)に対して2つの相対的な移動を行うように固定手段(21,22)と細線(24,30,32)とを相対的に移動させるとともに、2つの相対的な移動は、列状領域(R1,R2)が有する各長方形における3辺によって構成され折れ線又は曲線を含む切断線に沿って垂直部(WV)が移動する第1の移動と、各長方形における3辺以外の1辺を含む直線状の切断線(12S)に向かって水平部(WH)が移動する第2の移動とからなり、各列状領域(R1,R2)において2つの相対的な移動が第1の移動と第2の移動との順番で行われることによって、各列状領域(R1,R2)における各領域(P)が境界線に沿って切断されることを特徴とする。
また、本発明に係る切断装置は、上述の切断装置において、張設される細線(24,30,32)は複数であって、複数の個所において樹脂封止体(17)が同時に切断されることを特徴とする。
また、本発明に係る切断装置は、上述の切断装置において、細線(24,30,32)は側面視して樹脂封止体(17)を取り囲むようにしてループ状に張設されていることを特徴とする。
また、本発明に係る切断装置は、上述の切断装置において、細線(24,30,32)を送り出す送り出し手段(26,27)と、細線(24,30,32)を巻き取る巻き取り手段(27,26)とを備え、駆動手段は細線(24,30,32)を1方向に連続的に駆動した後に逆方向に連続的に駆動することを特徴とする。
また、本発明に係る切断装置は、上述の切断装置において、固定手段(21,22)は、第2の移動における切断線(12S)に対して交差する方向に各々移動可能に設けられた第1の可動部分(21)と第2の可動部分(22)とを有し、樹脂封止体(17)を切断する場合には、第1の移動の際には第1の可動部分(21)と第2の可動部分(22)との少なくともいずれかが列状領域(R1,R2)を固定し、第2の移動の際には第2の可動部分(22)が列状領域(R1,R2)の下方の位置まで移動して該位置において列状領域(R1,R2)を固定するとともに、第1の移動及び第2の移動の際には第1の可動部分(21)と第2の可動部分(22)との間において固定手段(21,22)と細線(24,30,32)とが相対的に移動可能であるような空間(23)が設けられていることを特徴とする。
また、本発明に係る切断装置は、上述の切断装置において、樹脂封止体(17)と細線(24,30,32)との少なくとも一方に振動を付加する加振手段(28,29)を備えるとともに、振動は単振動又は回転振動であることを特徴とする。
また、本発明に係る切断装置は、上述の切断装置において、細線(30)は縒り線であることを特徴とする。
また、本発明に係る切断装置は、上述の切断装置において、細線(32)においては砥粒(31)が付着している付着部(33)と砥粒(31)が付着していない非付着部(34)とが細線(32)の軸方向に沿って交互に設けられていることを特徴とする。
また、本発明に係る切断方法は、基板(1)における複数の領域(P)に各々設けられたチップ状電子部品(3)が一括して樹脂封止された樹脂封止体(17)を各領域(P)に相当する各パッケージ(19)に個片化する目的で、複数の領域(P)が各々有する境界線を少なくとも含む切断線(12C,12S,18X,18Y)に沿って樹脂封止体(17)を切断する切断方法であって、各々移動可能に設けられた第1の可動部分(21)と第2の可動部分(22)とからなる固定手段(21,22)に樹脂封止体(17)を固定する工程と、砥粒(31)とともに使用される細線(24,30,32)を樹脂封止体(17)の主面(S)に対して一定の位置関係をなすようにして張設する工程と、一定の位置関係を保ちながら細線(24,30,32)を少なくとも1方向に駆動する工程と、固定手段(21,22)と細線(24,30,32)とを相対的に移動させ樹脂封止体(17)と細線(24,30,32)とを接触させることによって樹脂封止体(17)を切断する工程とを備えるとともに、複数の領域(P)は実質的な長方形からなる平面形状を各々有しており、少なくとも領域(P)を各々含む複数の単位部分(U)が格子状に設けられており、境界線の少なくとも一部には折れ線又は曲線が含まれており、固定する工程では第1の可動部分(21)と第2の可動部分(22)との間において固定手段(21,22)と細線(24,30,32)とが相対的に移動可能であるような空間(23)を設け、切断する工程では細線(24,30,32)が境界線に沿って樹脂封止体(17)に接触することにより樹脂封止体(17)を切断し、張設する工程では細線(24,30,32)において一定の位置関係が樹脂封止体の主面に対して実質的に垂直であるような垂直部(WV)を設けるようにして細線(24,30,32)を張設し、切断する工程では、複数の領域(P)における1列に並んでいる領域(P)からなる列状領域(R1,R2)において、細線(24,30,32)が樹脂封止体(17)に対して2つの相対的な移動を行うように固定手段(21,22)と細線(24,30,32)とを相対的に移動させるとともに、2つの相対的な移動は、列状領域(R1,R2)が有する各長方形における3辺によって構成され折れ線又は曲線を含む切断線に沿って垂直部(WV)が移動する第1の移動と、該第1の移動の後において各長方形における3辺以外の1辺を含む直線状の切断線(12S)に沿って垂直部(WV)が移動する第2の移動とからなることを特徴とする。
また、本発明に係る切断方法は、基板(1)における複数の領域(P)に各々設けられたチップ状電子部品(3)が一括して樹脂封止された樹脂封止体(17)を各領域(P)に相当する各パッケージ(19)に個片化する目的で、複数の領域(P)が各々有する境界線を少なくとも含む切断線(12C,12S,18X,18Y)に沿って樹脂封止体(17)を切断する切断方法であって、各々移動可能に設けられた第1の可動部分(21)と第2の可動部分(22)とからなる固定手段(21,22)に樹脂封止体(17)を固定する工程と、砥粒(31)とともに使用される細線(24,30,32)を樹脂封止体(17)の主面(S)に対して一定の位置関係をなすようにして張設する工程と、一定の位置関係を保ちながら細線(24,30,32)を少なくとも1方向に駆動する工程と、固定手段(21,22)と細線(24,30,32)とを相対的に移動させ樹脂封止体(17)と細線(24,30,32)とを接触させることによって樹脂封止体(17)を切断する工程とを備えるとともに、複数の領域(P)は実質的な長方形からなる平面形状を各々有しており、少なくとも領域(P)を各々含む複数の単位部分(U)が格子状に設けられており、境界線の少なくとも一部には折れ線又は曲線が含まれており、固定する工程では第1の可動部分(21)と第2の可動部分(22)との間において固定手段(21,22)と細線(24,30,32)とが相対的に移動可能であるような空間(23)を設け、切断する工程では細線(24,30,32)が境界線に沿って樹脂封止体(17)に接触することにより樹脂封止体(17)を切断し、張設する工程では細線(24,30,32)において一定の位置関係が樹脂封止体の主面に対して実質的に垂直であるような垂直部(WV)と実質的に平行であるような水平部(WH)とを各々設けるようにして細線(24,30,32)を張設し、切断する工程では、複数の領域(P)における1列に並んでいる領域(P)からなる列状領域(R1,R2)において、細線(24,30,32)が樹脂封止体(17)に対して2つの相対的な移動を行うように固定手段(21,22)と細線(24,30,32)とを相対的に移動させるとともに、2つの相対的な移動は、列状領域(R1,R2)が有する各長方形における3辺によって構成され折れ線又は曲線を含む切断線に沿って垂直部(WV)が移動する第1の移動と、該第1の移動の後において各長方形における3辺以外の1辺を含む直線状の切断線(12S)に向かって水平部(WH)が移動する第2の移動とからなることを特徴とする。
また、本発明に係る切断方法は、上述の切断方法において、細線(24,30,32)を張設する工程では複数の細線(24,30,32)を張設し、切断する工程では複数の細線(24,30,32)を使用して複数の個所において樹脂封止体(17)を同時に切断することを特徴とする。
また、本発明に係る切断方法は、上述の切断方法において、張設する工程では側面視して細線(24,30,32)が樹脂封止体(17)を取り囲むようにして細線(24,30,32)をループ状に張設していることを特徴とする。
また、本発明に係る切断方法は、上述の切断方法において、張設する工程では送り出し手段(26,27)と巻き取り手段(27,26)との間において細線(24,30,32)を張設し、駆動する工程では細線(24,30,32)を1方向に連続的に駆動した後に逆方向に連続的に駆動することを特徴とする。
また、本発明に係る切断方法は、上述の切断方法において、固定する工程では、第1の可動部分(21)と第2の可動部分(22)とが各々第2の移動における切断線(12S)に対して交差する方向に移動し、固定する工程では、切断する工程において第1の移動を行う場合には第1の可動部分(21)と第2の可動部分(22)との少なくともいずれかが列状領域(R1,R2)を固定し、切断する工程において第2の移動を行う場合には第2の可動部分(22)が列状領域(R1,R2)の下方の位置まで移動して該位置において列状領域(R1,R2)を固定することを特徴とする。
また、本発明に係る切断方法は、上述の切断方法において、樹脂封止体(17)と細線(24,30,32)との少なくとも一方に振動を付加する工程を備えるとともに、振動は単振動又は回転振動であることを特徴とする。
本発明によれば、細線(24,30,32)の一部である垂直部(WV)を使用して、曲線又は折れ線を含む切断線(12C,12S,18X,18Y)に沿って樹脂封止体(17)を切断することができる。したがって、平面視した外形に曲線又は折れ線を含むパッケージ(19)を製造することができる。また、細線(24,30,32)を使用することによって、パッケージ(19)に加えられる力が小さくなる。したがって、樹脂封止体(17)を切断して小型化されたパッケージ(19)を製造する場合において、切断されたパッケージ(19)が飛散するという問題が解消される。
また、本発明によれば、溶断による切断ではなく、砥粒(31)と細線(24,30,32)とを使用して樹脂封止体(17)を切断する。したがって、被切断部における仕上がりの品位が向上するとともに、パッケージ(19)の表面(上面及び側面)とチップとの間の距離が小さい場合においても加工熱による悪影響を排除することができる。更に、透明樹脂が使用された樹脂封止体(17)を切断する場合においても、加工熱による悪影響を排除することができる。
また、本発明によれば、細線(24,30,32)と砥粒(31)とからなる切断手段を使用し、加えて、細線(24,30,32)の一部である垂直部(WV)が境界線に沿って樹脂封止体(17)に接触することによって樹脂封止体(17)を切断する。これにより、適切な砥粒や切断条件等を設定すれば、異種材料である基板(1)と封止樹脂(9)とからなる樹脂封止体(17)を切断する場合であっても、異種材料の境目で切断品位が変わるという問題は発生しない。更に、肉厚部(T)を有するパッケージ(19)を切断する場合であっても、肉厚部(T)と他の部分とを同じ切断時間で切断することができるとともに、肉厚部(T)の切断部において側面がテーパ状になるおそれはない。
また、本発明によれば、細線(24,30,32)を張設し駆動する機構と、それぞれ固定手段である左側ステージ21及び右側ステージ22と、それらのステージに付随する移動手段であるテーブル(図示なし)とによって、切断装置が基本的に構成される。したがって、装置コストの低減と装置の小型化とを図ることができる。
また、本発明によれば、左側ステージ21及び右側ステージ22等の部材においては、摩耗する部分がない。加えて、摩耗するのは切断手段である細線(24,30,32)における砥粒(31)だけであって、砥粒(31)が摩耗し又は脱落すれば、その細線(24,30,32)を交換し又は砥粒を追加するだけでよい。したがって、切断装置において、メンテナンスコストを抑制することができ、また、装置稼働率を向上させることができる。
また、本発明によれば、細線(24,30,32)の一部である垂直部(WV)が樹脂封止体(17)の主面(上面)(S)に対して実質的に垂直になるようにして、細線(24,30,32)が張設されている。したがって、完成したパッケージ(19)においては、4つの側面はいずれも主面(S)に対して実質的に垂直になるので、それらの側面が斜面になるという不具合は発生しない。
また、本発明によれば、樹脂封止体(17)を切断する際に、屈曲状切断には細線(24,30,32)の垂直部(WV)を、直線状切断には水平部(WH)を、それぞれ使用する。また、水平部(WH)が樹脂封止体(17)の主面(上面)(S)に対して実質的に平行になるようにして、細線(24,30,32)が張設されている。これらのことにより、直線状切断を行う際に、水平部(WH)を使用して、切断線(12S)の全体において短いストロークで樹脂封止体(17)を実質的に同時に切断するので、効率が大幅に向上する。したがって、樹脂封止体(17)を切断して各パッケージ(19)に個片化する際の効率が大幅に向上する。
また、本発明によれば、細線(24,30,32)は側面視して樹脂封止体(17)を取り囲むようにしてループ状に張設されている。これにより、いずれも樹脂封止体(17)の切断に寄与する垂直部(WV)と水平部(WH)とが張設される。また、細線(24,30,32)を送り出す送り出し手段(26,27)と、細線(24,30,32)を巻き取る巻き取り手段(27,26)とを備えることもできる。これにより、樹脂封止体(17)の切断に寄与する垂直部(WV)が張設されるとともに、機構が簡素化される。
また、本発明によれば、細線(24,30,32)が樹脂封止体(17)を切断する際には、第1の可動部分(21)と第2の可動部分(22)との間において固定手段(21,22)と細線(24,30,32)とが相対的に移動可能であるような空間(23)が設けられている。これにより、細線(24,30,32)が樹脂封止体(17)を切断する際には、その空間(23)において細線(24,30,32)が固定手段(21,22)に接触することなく移動可能になる。
また、本発明によれば、樹脂封止体(17)と細線(24,30,32)との少なくとも一方に、単振動又は回転振動が付加される。これにより、切りくずの排出が促されるので、切断効率が向上するとともに、被切断部における仕上がりの品位が向上する。
また、本発明によれば、細線(30)として縒り線が使用される。また、砥粒(31)が付着している付着部(33)と砥粒(31)が付着していない非付着部(34)とが細線(32)の軸方向に沿って交互に設けられているような細線(32)が使用される。これらにより、切りくずの排出が促されるので、切断効率が向上するとともに、被切断部における仕上がりの品位が向上する。
ループ状に張設され固定砥粒(31)を有する金属線(24,30,32)が、1方向に高速で走行する。その金属線(24,30,32)と、左側ステージ(21)と右側ステージ(22)との上面に固定されている樹脂封止体(17)とを相対的に移動させることによって、金属線(24,30,32)と樹脂封止体(17)とを接触させる。このことにより、金属線(24,30,32)が樹脂封止体(17)を切断する。具体的には、まず、樹脂封止体(17)が有する1個の列状領域(R1)において、金属線(24,30,32)の一部である垂直部(WV)が、曲線又は折れ線を含む切断線(12C)を含む切断線に沿って樹脂封止体(17)を切断する。次に、金属線(24,30,32)の一部である水平部(WH)が、直線(線分)のみからなる切断線(12S)の全体において、樹脂封止体(17)を同時に切断する。以上の工程によって、その列状領域(R1)に含まれる各領域(P)がそれぞれパッケージ(19)に個片化される。
本発明に係る切断装置及び切断方法の実施例1について、図3〜図5を参照して説明する。図3は、本実施例に係る切断装置を示す斜視図である。図4(1)は本実施例に係る切断装置及び切断方法によって樹脂封止体を切断する際の1工程を示す平面図であり、図4(2)はその1工程を示す部分断面図である。図5(1)は図4に示す1工程の次工程を示す平面図であり、図5(2)はその次工程を示す部分断面図である。なお、以下に示される各斜視図においては、金属線のぶれを防止するためのガイドプーリが適宜省略されている。
図3に示されているように、それぞれ図のX方向・Y方向に進退可能な左側ステージ21と右側ステージ22とが、上面が面一になるようにして相対向して設けられている。左側ステージ21と右側ステージ22との少なくともいずれかが進退することにより、それらの間に適当な間隔の空間23が設けられることが可能である。また、左側ステージ21と右側ステージ22とが配置されているテーブル(図示なし)は、図のX方向・Y方向・Z方向に移動自在であり、かつ、θ方向に回動自在であるようにして設けられている。左側ステージ21と右側ステージ22との上面には、被切断物である樹脂封止体17が位置合わせされて固定される。樹脂封止体17の固定は、左側ステージ21と右側ステージ22との少なくともいずれかにおける吸着によって行われる。このような構成において、テーブル(図示なし)は、左側ステージ21と右側ステージ22との上面に固定された樹脂封止体17をX方向・Y方向・Z方向・θ方向に移動させる移動手段である。
以下、細線について説明する。この細線は、金属線によって構成されている。図3に示されているように、側面視して左側ステージ21と右側ステージ22との上部を取り囲むようにして、すなわち樹脂封止体17を取り囲むようにして、金属線24がループ状に張設されている。この金属線24は、1本の金属線の両端において溶接、ろう付、Ni電着等をして接合することによって製造される。図3では、4つのプーリ25(図示されているのは3つ)によって金属線24が張設され、そのうちの1つのプーリ25がモータ等の駆動手段(図示なし)に連結されている。そして、駆動手段によってその1つのプーリ25が回転することによって、金属線24が一方向(図では手前の部分において下向き)に高速で走行する。この走行方向は、被切断物である樹脂封止体17の固定方向や特性等に応じて、適当に選択することができる。
金属線24は、その一部である手前側の垂直部WVが、樹脂封止体17の主面(上面)Sに対して実質的に垂直になるようにして、張設されている。また、金属線24は、他の一部である水平部WHが、樹脂封止体17の主面Sに対して実質的に平行になるようにして、張設されている。なお、ここでいう「実質的に垂直」とは、樹脂封止体17の主面Sに対して実質的に90°をなしていればよく、90°を中心にして多少ずれのある角度であってもよい。また、「実質的に平行」とは、樹脂封止体17の主面Sに対して実質的に0°であればよく、0°を中心にして多少ずれのある角度であってもよい。これにより、水平部WHは、樹脂封止体10の主面Sに対して実質的に同時に接触することができる。また、手前側の垂直部WVが張設されていれば、金属線24は図3に示されている以外の態様で張設されていてもよい。例えば、3個のプーリ25を使用して金属線24を張設してもよい。
金属線24は、例えば、ピアノ線のような細径の金属線からなり、その表面にはダイヤモンド、SiC(炭化ケイ素)、cBN(立方晶窒化ホウ素)等からなる砥粒(図示なし)が固着されている。これらの砥粒(固定砥粒)は、例えば、電着や接着等によって金属線24の表面に固着されている。また、金属線24を使用していくと、これらの砥粒は摩耗し又は脱落していく。この場合には、古い金属線24を新しい金属線24に交換すればよい。すなわち、金属線24は消耗品として取り扱われる。
本実施例に係る切断方法について、図4,図5を参照して説明する。本実施例においては、固定砥粒を有し高速で走行する金属線24と、左側ステージ21と右側ステージ22との上面に固定されている樹脂封止体17とを相対的に移動させることによって、金属線24の一部である垂直部WVと樹脂封止体17とを接触させる。このことにより、金属線24の垂直部WVが樹脂封止体17を切断する。本実施例においては、左側ステージ21と右側ステージ22とが配置されているテーブル(図示なし)をX方向とY方向とに移動させることにより、金属線24と樹脂封止体17とを相対的に移動させる。また、本実施例では、樹脂封止体17においてY方向に沿って延びる各領域Pを含む列状領域R1,R2,・・・のそれぞれにおいて、樹脂封止体17を切断してメモリーカード(図2(2)のメモリーカードのパッケージ19を参照)に個片化する。
まず、図4(1)、(2)に示すように、左側ステージ21と右側ステージ22との上面に樹脂封止体17を位置決めして配置する。そして、左側ステージ21と右側ステージ22との一方を使用して、吸着によって樹脂封止体17を固定する(仮固定)。その後に、左側ステージ21と右側ステージ22との他方を進退させることにより、樹脂封止体17の下方に所定の空間23を設ける。そして、図4(2)に示すように、左側ステージ21と右側ステージ22との上面に、吸着によって樹脂封止体17を固定する(本固定)。この吸着は、左側ステージ21と右側ステージ22とのいずれか一方を使用して行ってもよいが、樹脂封止体17を安定して切断するためには左側ステージ21と右側ステージ22との双方を使用することが好ましい。
ここで、空間23は、1個の列状領域(図では右端の列状領域R1)を切断する際に金属線24が相対的に移動する線である切断線を、平面視して全て含んでいる。ここでいう切断線は、図4(1)に示されている列状領域R1における切断線12C,12Sを意味する。なお、樹脂封止体17について一般論として説明すれば、切断線18Xは直線(線分)のみからなる切断線である。また、切断線18Yのうち、切断線12Cは曲線を又は折れ線を含んでいる切断線であり、切断線12Sは直線(線分)のみからなる切断線である。
次に、テーブル(図示なし)をX方向とY方向とに適当に移動させることにより、図4(1)において矢印を付した太い破線で示すように、列状領域R1において金属線24の一部である垂直部WVが樹脂封止体17を切断する。具体的には、メモリーカードのパッケージ19に対応する1個の単位部分U(領域P,A,B,C)における領域Pが有する4辺のうち、曲線又は折れ線を有する辺を含む3辺において、金属線24の垂直部WVが樹脂封止体17を順次切断する。この3辺は、そのうちの少なくとも1辺が曲線又は折れ線を含んでいるような3辺である。
本実施例では、列状領域R1において、図4(1)における上から下に向かって、上述した3辺とこれにY方向に隣接する別の3辺とをつなぐ線(AとBとの境界線)とを、屈曲状に順次切断して樹脂封止体17を切断する。以下、この切断を屈曲状切断という。また、屈曲状切断が行われる場合における金属線24の垂直部WVと樹脂封止体17との相対的な移動を、屈曲状移動という。列状領域R1に対する屈曲状切断が終了した状態においては、各領域Pが有する4辺のうち残る1辺(切断されていない1辺)が1本の直線の上に延びて残っている。この工程では、樹脂封止体17の下方に設けられた空間23によって、金属線24は左側ステージ21と右側ステージ22とに接触することなく移動することができる。なお、図4(1)においては、屈曲状切断が終了した状態における金属線24の相対的な位置が示されている。
次に、右側ステージ22における吸着を解除して、右側ステージ22を左方向に適当に移動させることによって、樹脂封止体17の下方に所定の空間23を設ける。図5(2)に示すように、空間23は、列状領域R1が有する各領域Pにおいてこれから切断される辺、すなわち1本の直線の上に延びて残っている各辺を、平面視して全て含んでいる。言い換えれば、図5(2)に示された空間23は、列状領域R1における切断線12Sを、平面視して全て含んでいる。
次に、図5(2)に示すように、左側ステージ21と右側ステージ22との上面において、吸着によって樹脂封止体17を固定する(本固定)。そして、上述した3辺に沿って樹脂封止体17を切断し終わった金属線24を、図5(1)における下から上に向かって相対的に移動させる。図5(1)において矢印を付した太い破線で示すように、この工程では、各領域Pが有する4辺のうち残る1辺(切断されていない1辺)に沿って、金属線24を相対的に移動させる。これにより、金属線24は切断線12Sに沿って相対的に移動して、その切断されていない1辺を直線状に順次切断して樹脂封止体17を切断する。以下、この切断を直線状切断という。また、直線状切断が行われる場合における金属線24の垂直部WVと樹脂封止体17との相対的な移動を、直線状移動という。そして、この工程においても、樹脂封止体17の下方に設けられた空間23によって、金属線24は左側ステージ21と右側ステージ22とに接触することなく移動することができる。なお、図5(1)においては、直線状切断が終了した状態における金属線24の相対的な位置が示されている。
ここまでの工程によって、列状領域R1において樹脂封止体17を切断して、各領域Pをそれぞれメモリーカードに個片化することができる。本実施例では、図5(1)に示すように、列状領域R1から3個のメモリーカードを製造する。また、図5(1)において太い破線によって囲まれた領域Pの部分が、メモリーカードに相当する(図2(2)のメモリーカードのパッケージ19を参照)。
次に、右側ステージ22における吸着を解除して、個片化されたメモリーカードを搬出する。この工程では、例えば、右側ステージ22の上方から下降させた搬出機構(図示なし)を使用して、各メモリーカードを吸着して一括して搬出する。
次に、左側ステージ21における吸着を解除する。そして、突出しピン等の突出し機構(図示なし)を使用して、樹脂封止体17を図5の右方向に突き出して移動させる。その後に、樹脂封止体17が突出し機構によって支持された状態で、左側ステージ21を図の左方向に適宜移動させる。この移動によって、これから切断しようとする列状領域R2における切断線12Sの左側に、左側ステージ21の右端が位置するようにする。また、樹脂封止体17が突出し機構によって支持された状態で、右側ステージ22を必要に応じて適宜移動させる。この移動によって、列状領域R2における切断線12Cの右側に、右側ステージ22の左端が位置するようにする。
次に、左側ステージ21と右側ステージ22との上面に、吸着によって樹脂封止体17を固定する(本固定)。ここで、図4,図5における凹部13はそれぞれ誇張して示されているが、実際には、列状領域R2の不要部B,Cにおいて、右側ステージ22の上面に樹脂封止体17を吸着することができる。これにより、樹脂封止体17の下方に所定の空間を設けることができる。この空間は、図4(2)に示された空間23と同様に、列状領域R2における切断線12S,12Cを、平面視して全て含んでいる。なお、この工程において、テーブル(図示なし)を使用して、樹脂封止体17を再度位置決めすることもできる。また、列状領域R1を切断し終わった金属線24は、樹脂封止体17に対して図の左方向に相対的に移動する(図5(1)の左向きの太い矢印を参照)。
次に、列状領域R2に対して、金属線24を使用して、図5(1)における上から下に向かって屈曲状切断を行い(矢印を付した細い破線を参照)、その後に、図5(1)における下から上に向かって直線状切断を行う。そして、右側ステージ22における吸着を解除して、個片化された各メモリーカードを搬出する。
以下、同様にして、残りの各列状領域において、樹脂封止体17を右方向に突き出す工程から個片化された各メモリーカードを搬出する工程までを、順次繰り返す。このことにより、樹脂封止体17から全てのメモリーカード(図4,図5ではそれぞれ9個)を個片化することができる。
ここまで説明したように、本実施例によれば、金属線24の一部である垂直部WVを使用して、曲線又は折れ線を含む切断線12S,12Cに沿って樹脂封止体17を切断することができる。したがって、平面視した外形に曲線又は折れ線を含むパッケージを製造することができる。
また、レーザによって樹脂封止体を溶断する切断技術に比べて、加工熱を抑制することができる。したがって、被切断部における良好な仕上がりの品位を確保することができるとともに、パッケージの表面(上面及び側面)とチップとの間の距離が小さい場合においても加工熱による悪影響を排除することができる。
また、本発明によれば、固定砥粒を有する金属線24からなる切断手段を使用する。これにより、適切な砥粒や切断条件等を設定すれば、異種材料である基板1と封止樹脂9とからなる樹脂封止体1を切断する場合であっても、異種材料の境目で切断品位が変わるという問題は発生しない。更に、図2(2)に示された肉厚部Tを有するパッケージ19を切断する場合であっても、肉厚部Tと他の部分とを同じ切断時間で切断することができるとともに、肉厚部Tの切断部において側面がテーパ状になるおそれはない。
また、金属線24を張設し駆動する機構と、それぞれ固定手段である左側ステージ21及び右側ステージ22と、それらのステージに付随する移動手段であるテーブル(図示なし)とによって、切断装置が基本的に構成される。したがって、装置コストの低減と装置の小型化とを図ることができる。
また、左側ステージ21及び右側ステージ22等の部材においては、摩耗する部分がない。加えて、摩耗するのは切断手段である金属線24における砥粒だけであり、砥粒が摩耗し又は脱落すればその金属線24を交換するだけでよい。したがって、切断装置において、メンテナンスコストを抑制することができ、また、装置稼働率を向上させることができる。
また、金属線24の一部である垂直部WVが樹脂封止体17の主面(上面)Sに対して実質的に垂直になるようにして、金属線24が張設されている。したがって、完成したメモリーカードにおいて、4つの側面はいずれも主面Sに対して実質的に垂直になるので、それらの側面が斜面になるという不具合は発生しない。
なお、屈曲状切断を行う際に、図4に示された状態において、左側ステージ21が各領域Pの直下において樹脂封止体17を吸着するようにしてもよい。この場合には、左側ステージ21に平面視して各領域Pの中心部に重なるような突出部を設けて、その突出部を使用して樹脂封止体17を吸着すればよい。これにより、屈曲状切断を行う際に、樹脂封止体17が安定して固定されるので、びびり等の発生を防止して樹脂封止体17を切断することができる。
本発明に係る切断装置及び切断方法の実施例2について、図3〜図5を参照して説明する。本実施例は、直線状切断によって樹脂封止体17を切断する際の切断線が実際に直線(線分)だけによって構成される場合において、切断を行う際の効率を大幅に向上させることを目的とする。図4,図5においては、実際に直線(線分)だけによって構成される切断線として、切断線12Sが示されている。
切断線12Sにおいて樹脂封止体17を切断するには、樹脂封止体17と金属線24における水平部WHとをZ方向に相対的に移動させて、水平部WHを使用して樹脂封止体17をその厚さ方向に完全に切削してこれを切断する(図3参照)。具体的には、図3において、テーブル(図示なし)を上昇させて水平部WHを樹脂封止体17の切断線(図4,図5における切断線12Sを参照)に向かって相対的かつ直線的に移動させ、金属線24における上側の水平部WHを樹脂封止体17に接触させて、樹脂封止体17を切削する。そして、引き続いてテーブルを上昇させて樹脂封止体17をその厚さ方向に完全に切削することにより、切断線12Sの全体において樹脂封止体17を同時に切断する。また、金属線24の一部である水平部WHが樹脂封止体17の主面(上面)Sに対して実質的に平行になるようにして、金属線24が張設されている。したがって、テーブル(図示なし)と金属線24との相対的な移動距離は樹脂封止体17の厚さよりもわずかに大きい程度でよいので、短いストロークで樹脂封止体17を実質的に同時に切断することができる。これらのことによって、直線状切断を行う際の効率が大幅に向上する。
以上説明したように、本実施例によれば、樹脂封止体17を切断する際に、屈曲状切断には金属線24の垂直部WVを、直線状切断には水平部WHを、それぞれ使用する。このことにより、樹脂封止体17を切断して各パッケージに個片化する際の効率が大幅に向上する。
次に、本実施例の変形例を説明する。この変形例においては、パッケージの平面形状が長方形(正方形を含む)であってそのパッケージに相当する領域が格子状に配置されている樹脂封止体17を、被切断物としている。この場合には、図2,図4,図5の各単位部分Uが各領域Pに等しくなるとともに各パッケージに相当し、樹脂封止体17における全ての切断線が直線(線分)だけによって構成されている。本変形例では、金属線24における上側の水平部WHを使用して、樹脂封止体17をその厚さ方向に完全に切削することによって、樹脂封止体17を切断する。
本変形例では、まず、一体的に設けられたステージに固定された樹脂封止体17を、ステージを適宜X方向・Y方向・Z方向に移動させて、1方向に沿う全ての切断線に沿って順次切断する。次に、ステージを90°だけ回動させ、ステージを適宜X方向・Y方向・Z方向に移動させて、他方向に沿う全ての切断線に順次沿って切断する。ステージには、全ての切断線の直下に、予め溝を設けておく。これによれば、樹脂封止体17を切断してパッケージに個片化する際の効率が飛躍的に向上する。
なお、本実施例及び変形例では、金属線24における上側の水平部WHを使用して樹脂封止体17を切断した。左側ステージ21と右側ステージ22との上面において、クランプ機構等を使用して樹脂封止体17を安定して固定していれば、金属線24における下側の水平部WHを使用することもできる。
また、本実施例及び変形例では、金属線24の一部であって、樹脂封止体17の主面Sに対して実質的に平行になるようにして張設されている水平部WHを、使用した。この場合には、金属線24における樹脂封止体17の主面Sに対する位置関係が実質的に平行であるような部分を、使用していることになる。これに限らず、金属線24における樹脂封止体17の主面Sに対する位置関係が一定の角度(ただし0°及び90°以外)をなすような部分を、使用することもできる。特に、この一定の角度が小さい場合においては、金属線24におけるこの一定の角度をなす部分を使用することによって、短いストロークで樹脂封止体17をほぼ一括して切断することができる。したがって、直線状切断を行う際の効率が大幅に向上する。更に、この一定の角度が適当な小さい値である場合には、直線状切断を行う際の負荷(加工抵抗)が低減される。この効果は、特に切断線が長い場合において顕著である。
本発明に係る切断装置及び切断方法の実施例3を、図6を参照して説明する。図6は、本実施例に係る切断装置を示す斜視図である。本実施例では、金属線24は2つのローラ間に張設されている。図6に示されているように、金属線24は、一方のローラ26と他方のローラ27との間に張設されている。一方のローラ26と他方のローラ27とは、モータ等の駆動手段と伝達手段とによって(いずれも図示なし)、いずれも正逆可能であって所定の方向に回転する。図6の状態においては、一方のローラ26は送り出しローラとして、他方のローラ27は巻き取りローラとして、それぞれ機能する。
図6に示されているように、金属線24における垂直部WVは上から下に向かって高速で走行する。本実施例においても、高速で走行する金属線24の垂直部WVと、左側ステージ21と右側ステージ22との上面に固定されている樹脂封止体17とを相対的に移動させる。このことにより、固定砥粒を有する金属線24の垂直部WVが樹脂封止体17を切断する。したがって、曲線又は折れ線を含む切断線に沿って樹脂封止体17を切断することができるので、平面視した外形に曲線又は折れ線を含むパッケージを製造することができる。
また、金属線24の大部分が他方のローラ27に巻き取られたら、一方のローラ26及び他方のローラ27の回転方向を逆にすればよい。これにより、一方のローラ26は巻き取りローラとして、他方のローラ27は送り出しローラとして、それぞれ機能する。そして、下から上に向かって高速で走行する金属線24によって、曲線又は折れ線を含む切断線に沿って樹脂封止体17を切断することができる。
なお、実施例1〜実施例3においては、次のような変形例も可能である。その変形例とは、金属線24を走行方向に沿って微小な距離だけ高速に往復させながら、金属線24を全体として一定の速度で一方向に送り出すことにより、樹脂封止体17を切断するという構成である。この場合には、カム機構等を利用して、金属線24の走行系を高速で往復運動させればよい。ここで、金属線24の走行系とは、4個のプーリを含む走行系(図3参照)、又は、一方のローラ26と他方のローラ27とを含む走行系(図6参照)である。この変形例によっても、曲線又は折れ線を含む切断線に沿って樹脂封止体17を切断することができるので、平面視した外形に曲線又は折れ線を含むパッケージを製造することができる。
本発明に係る切断装置及び切断方法の実施例4を、図7を参照して説明する。図7は、本実施例に係る切断装置を示す斜視図である。本実施例では、高速で走行する金属線24を微小かつ高速に振動させる。図7に示されているように、金属線24の一部である垂直部WVにおいて、金属線24に接する加振用プーリ28,29が設けられている。これらの加振用プーリ28,29によって、金属線24の垂直部WVに単振動又は回転振動が付加される。
金属線24を単振動させる機構としては、ばね等の弾性体とカム機構とを組み合わせて使用してガイドプーリ28,29の回転軸のいずれかを単振動させる機構が考えられる。また、圧電素子等を使用してガイドプーリ28,29の回転軸のいずれかを単振動させる機構が考えられる。更に、金属線24を加振して回転振動させる機構としては、ガイドプーリ28,29の回転軸をそれぞれ単振動させて、それらの単振動を合成させる機構が考えられる。
本実施例によれば、垂直部WVにおいて金属線24が加振されることによって、金属線24が単振動又は回転振動する。これにより、切りくずの排出が促されるので、切断効率が向上するとともに、被切断部の品位が向上する。また、本実施例では、金属線24が樹脂封止体17を切断する部分である垂直部WVにおいて、次のような振動の態様が考えられる。
第1の態様は、金属線24における垂直部WVの軸方向(垂直部WVが張設されている方向であり、かつ走行する方向)と切断線とを含む面内であって、かつ、軸方向以外の方向に、金属線24を加振して単振動させる場合である。これによれば、樹脂封止体を切断する際に、加振しない場合に比べて同じ切断幅で切りくずの排出が促される。第2の態様は、金属線24の軸方向と切断線とを含む面内において、金属線24を加振して回転振動させる場合である。これによれば、樹脂封止体を切断する際に、加振しない場合に比べて同じ切断幅で切りくずの排出が更にいっそう促される。なお、その他の振動の態様によれば、樹脂封止体を切断する際に、加振しない場合に比べて切断幅は広くなるが切りくずの排出が促される。
なお、本実施例において金属線24を単振動又は回転振動させる振動数及び振幅は、被切断物の特性(例えば、基板の材質等)に応じて最適な値に定めればよい。また、振動数については、音波として考えた場合に人間の可聴域にある振動数と可聴域を超える振動数とのいずれを採用してもよい。また、金属線24を加振せずに、左側ステージ21と右側ステージ22とが配置されているテーブル(図示なし)を加振させてもよい。更に、金属線24とテーブルとをともに加振してもよい。
本発明に係る切断装置及び切断方法の実施例5について、図8を参照して説明する。図8(1),(2)は、本実施例においてそれぞれ使用される金属線を示す斜視図である。本実施例においては、図8(1)に示されているように、縒り線(より線)からなる金属線30を使用する。そして、金属線30の表面には砥粒(図示なし)が固着されている。金属線30においては、断面形状が円形ではなく凹部を有するので、この凹部によって切りくずの排出が促される。したがって、切断効率が向上する。
また、本実施例では、図8(2)に示されているように、金属線として、砥粒31が付着している態様に特徴を有する金属線32を使用してもよい。この金属線32には、軸方向に沿って、砥粒31が付着している付着部33が適当な間隔を空けて設けられている。すなわち、この金属線32には、軸方向に沿って、付着部33と砥粒31が付着していない非付着部34とが交互に設けられている。これにより、非付着部34によって切りくずの排出が促される。したがって、切断効率が向上する。なお、図8(1)に示された縒り線からなる金属線30において、軸方向に沿って付着部と非付着部とを交互に設けることもできる。
なお、本発明に係る切断装置及び切断方法の要点は、各列状領域に対して、曲線又は折れ線を有する辺を含む3辺に沿って樹脂封止体17を切断(屈曲状切断)し、その後に、残る1辺を切断(直線状切断)することである。この残る1辺については、曲線又は折れ線を有するか否かは問わない。言い換えれば、4辺の全てが曲線又は折れ線を有するような平面形状のパッケージについても、本発明を適用することができる。
また、これまで説明した各実施例では、封止樹脂9の上面が樹脂封止体10の主面Sになるようにして、樹脂封止体10を固定した(図1参照)。これに代えて、樹脂封止体10(17)の位置決め及び固定が可能であれば、樹脂封止体10(17)の天地を逆にして樹脂封止体10(17)を固定してもよい。この場合には、図1,図4,図5における基板1の下面が樹脂封止体10(17)の主面Sになる。
また、樹脂封止体17を構成する材料の特性に応じて、金属線24が走行する速度及び金属線24と左側ステージ21及び右側ステージ22との相対的な移動速度(X,Y,Z方向)を変えることができる。例えば、金属線24の走行速度については、基板1が硬くかつ脆性を有するセラミックスベースの基板である場合には、次のようにすればよい。まず、水平部WHを使用する切断においては、基板1を切断する場合には封止樹脂9を切断する場合よりも走行速度を大きくする。次に、垂直部WVを使用する切断においては、基板1が樹脂ベースの基板である場合よりも、走行速度を大きくする。更に、金属線24と各ステージ21,22との相対的な移動速度については、基板1がセラミックスベースの基板である場合には、次のようにすればよい。まず、水平部WHを使用する切断においては、封止樹脂9を切断する際には各ステージ21,22を高速で上昇させ、基板1を切断する際には各ステージ21,22を低速で上昇させる。次に、垂直部WVを使用する切断においては、基板1が樹脂ベースの基板である場合よりも、各ステージ21,22の水平方向への移動速度を小さくする。
また、図2(2)に示されたパッケージ19のコーナーにおいて円弧状に面取り部が設けられている場合には、その円弧に応じて金属線24を相対的に移動させればよい。例えば、図4(1)において、各領域Pの左上のコーナーに円弧状の面取り部が設けられる場合には、金属線24が相対的に移動する線である移動線を、次のような線にすればよい。すなわち、各領域Pの左上のコーナーにおいて、移動線が、右方向に延びる辺との接続点を通り過ぎて所定の長さだけ下方に延び、所定の径の円弧を描いて右上に延び、引き続いて右方向に延びる辺に沿って延びるようにすればよい。
また、樹脂封止体17が固定されている左側ステージ21と右側ステージ22とを移動させることによって、樹脂封止体17と金属線24とを相対的に移動させた。これに限らず、樹脂封止体17が固定されている状態で、金属線24が含まれる走行系を移動させてもよい。更に、金属線24が含まれる走行系と左側ステージ21及び右側ステージ22との双方を移動させることもできる。
また、不要部A,Bがない配置であっても、図4,図5と同様にして切断することができる。この場合には、図4,図5において各領域PがY方向に隣接する配置になる。そして、Y方向に隣接する領域P同士の境界線を往復するようにして、金属線24が相対的に移動することになる。
また、水平部WHを使用する切断は、送り出しローラと巻き取りローラとを使用する構成(図6参照)によっても可能である。この場合には、図6に示された走行系、すなわち一方のローラ26と他方のローラ27とを含む走行系をX軸の回りに90°だけ回転させて、回転前の図6における垂直部WVを、図3における水平部WHと同様に使用すればよい。
また、水平部WHを使用する切断は、いわゆるウェーハレベルパッケージに対しても適用される。ウェーハレベルパッケージとは、シリコン基板等の半導体ウェーハ(半導体基板)において格子状に設けられた領域に各々設けられた半導体チップを一括して樹脂封止した後に、その樹脂封止体を切断して各領域に相当する各パッケージに個片化する方式である。
また、これまでは、樹脂封止体17を厚さ方向に完全に切削することによってその樹脂封止体17を切断する場合、すなわちフルカットを行う場合について説明した。これに限らず、水平部WHを使用する切断は、対象物を完全には切断せず、対象物に直線状の溝を切削して形成する場合、すなわちハーフカットを行う場合においても適用される。したがって、本発明における「切断」は、フルカットとハーフカットとの双方を意味する。ハーフカットの場合には、平面視して格子状の溝を対象物に形成し、その後に対象物の一部を適当に押圧することによって、対象物を個片化することができる。
また、金属線24にねじれが加えられた状態で、金属線24を走行させて樹脂封止体17を切断してもよい。これにより、特に水平部WHを使用する切断においては、金属線24の周面(側面)が、被切断物である樹脂封止体17にまんべんなく接触する。したがって、金属線24において偏摩耗が生じないという効果が得られる。金属線24をねじれが加えられた状態にするには、1本の金属線を予めねじっておき、その状態で金属線の両端を溶接等して接合することによって、金属線24を製造すればよい。また、金属線24の走行経路において、V溝付プーリを設けてもよい。このV溝付プーリの周面には、その周面において斜行するようにしてV溝が設けられている。そして、金属線24には、この斜行するV溝に沿って走行することによって、ねじれが加えられる。
また、金属線を使用して対象物を切断する工程では、金属線と対象物とが接触する部分に、必要に応じて水等の加工液を供給することもできる。この場合には、加工液によって金属線と対象物とが冷却される。したがって、個片化されたパッケージの周縁における仕上がりの品位が向上するとともに、金属線の長寿命化が可能になる。また、加工液によって切りくずの排出が促されるので、切断効率が向上する。加えて、切断された不要部(図2,図4,図5の不要部A,B,Cを参照)に対して加工液を適当に噴射することによって、これらの不要部を飛ばして除去することができる。なお、高圧ガス(空気や窒素ガス等)を使用することによっても、これらの効果が得られる。
また、1本の金属線24を張設して、1個所において樹脂封止体17を切断する実施例について説明した。これに限らず、複数の金属線24を張設して、複数個所において樹脂封止体17を同時に切断することもできる。
また、金属線からなる細線を使用したが、被切断物の特性によっては、合成樹脂からなる細線を使用してもよい。例えば、ナイロン等からなる細線に無電解めっきによって各種の砥粒を付着させた切断線を、使用することができる。更に、ナイロン等を基材とし、各種の砥粒を均一に混合し溶融紡糸として作られた切断線を、使用することもできる。これらの細線は、ポリイミドフィルムやポリエステルフィルム等を基材とするフレキシブル基板・テープキャリア等の樹脂ベースのプリント基板を含む樹脂封止体17に対して適用されることが好ましい。
更に、本発明に係る切断装置及び切断方法においては、固定砥粒による切断方式だけでなく、遊離砥粒による切断方式を使用することもできるし、固定砥粒と遊離砥粒との双方を併用する切断方式を使用することもできる。ここで、遊離砥粒による切断方式とは、砥粒が固着されていない単なる金属線と、切断個所において水等の流体に混入されて供給される砥粒とを使用する切断方式である。この場合には、単なる金属線と供給される砥粒とが、切断手段を構成する。そして、遊離砥粒が摩耗すれば遊離砥粒を追加するだけでよいので、メンテナンスコストを抑制することができ、また、装置稼働率を向上させることができる。
また、本発明は、上述の各実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、必要に応じて、任意にかつ適宜に組み合わせ、変更し、又は選択して採用できるものである。
図1(1)〜(3)は、基板に装着されたチップを樹脂封止する工程から樹脂封止体を切断する工程までを説明する、それぞれ断面図である。
図2(1)は外形に曲線又は折れ線を含むメモリーカードを製造する際の中間品である樹脂封止体を、図2(2)は上述したメモリーカードを、それぞれ示す平面図である。
図3は、実施例1に係る切断装置を示す斜視図である。
図4(1)は実施例2に係る切断装置及び切断方法によって樹脂封止体を切断する際における1工程を示す平面図であり、図4(2)はその1工程を示す部分断面図である。
図5(1)は図4に示す1工程の次工程を示す平面図であり、図5(2)はその次工程を示す部分断面図である。
図6は、実施例2に係る切断装置を示す斜視図である。
図7は、実施例3に係る切断装置を示す斜視図である。
図8(1),(2)は、実施例4においてそれぞれ使用される金属線を示す斜視図である。
1 基板
2 領域
3 チップ(チップ状電子部品)
4 ワイヤ
5 下型
6 上型
7 樹脂流路
8 キャビティ
9 封止樹脂
10,17 樹脂封止体
11 ステージ
12,12C,12S,18X,18Y 切断線
13 凹部
14 管路
15 吸気
16 溝
19 パッケージ
20 凹凸
21 左側ステージ(固定手段、第1の可動部分)
22 右側ステージ(固定手段、第2の可動部分)
23 空間
24,30,32 金属線(細線、切断手段)
25 プーリ(張設手段)
26 一方のローラ(送り出し手段、巻き取り手段)
27 他方のローラ(巻き取り手段、送り出し手段)
28,29 加振用プーリ(加振手段)
31 砥粒(切断手段)
33 付着部
34 非付着部
A,B,C 不要部
P 領域
R1,R2 列状領域
S 主面
T 肉厚部
U 単位部分
WH 水平部
WV 垂直部