以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本実施形態は、信号機や一時停止線や料金所や前方車両との車間距離等の前方障害に関する走行環境情報を検出可能な装置を備え、運転者の操作量及び車両の状態量をニューラルネットワークの入力情報として、運転者の運転指向推定値を算出するシステムを備えた運転指向推定装置であって、信号機や一時停止線や前方車両などの前方障害の影響で、ブレーキが踏まれた場合(減速操作が行われた場合)には、その前方障害の影響に対応する分がニューラルネットワークに反映することが抑制されるように制御するものである。そのブレーキ操作は、運転指向を反映させたものではないためである。
より具体的には、前方障害の影響でブレーキが踏まれた場合(後述する図30のステップS002−Y、ステップS003−Y)には、「前後加速度」が保持され(同ステップS004)、ニューラルネットワークの入力情報である「制動操作時の最大減速度」及び「前後加速度(負)の所定区間内の最大値」の上昇が抑制され(ステップS006、ステップS007)、前方障害の影響がニューラルネットワークに反映ることが抑制される。
図1には、車両の自動変速機および変速制御装置が示されている。図1において、車両のエンジン10から出力された動力は、トルクコンバータ12、自動変速機14、および図示しない差動歯車装置および車軸を経て図示しない駆動輪へ伝達されるようになっている。
上記トルクコンバータ12は、クランク軸16に連結されたポンプ翼車18と、自動変速機14の入力軸20に連結され且つ流体を介してポンプ翼車18から動力が伝達されるタービン翼車22と、一方向クラッチ24を介して位置固定のハウジング26に固定された固定翼車28と、ポンプ翼車18およびタービン翼車22をダンパ30を介して直結するロックアップクラッチ32とを備えている。このロックアップクラッチ32は、解放側油室33と係合側油室35との圧力差により係合制御される。
上記自動変速機14は、たとえば前進4速或いは5速のギヤ段が達成される遊星歯車式の多段変速機である。前進4速である場合の自動変速機14は、同軸上に配設された3組のシングルピニオン型遊星歯車装置34,36,38と、前記入力軸20と、遊星歯車装置38のリングギヤとともに回転する出力歯車39と前記差動歯車装置との間で動力を伝達するカウンタ軸(出力軸)40とを備えている。それら遊星歯車装置34,36,38の構成要素の一部は互いに一体的に連結されるだけでなく、3つのクラッチC0 ,C1 ,C2 によって互いに選択的に連結されている。また、上記遊星歯車装置34,36,38の構成要素の一部は、4つのブレーキB0 ,B1 ,B2 ,B3 によってハウジング26に選択的に連結されるとともに、さらに、構成要素の一部は3つの一方向クラッチF0 ,F1 ,F2 によってその回転方向により相互に若しくはハウジング26と係合させられるようになっている。
上記クラッチC0 ,C1 ,C2 、ブレーキB0 ,B1 ,B2 ,B3 は、例えば多板式のクラッチや1本または巻付け方向が反対の2本のバンドを備えたバンドブレーキ等にて構成され、それぞれ図示しない油圧アクチュエータによって作動させられるようになっている。後述の電子制御装置42からの指令に従って作動する油圧制御回路44によりそれ等の油圧アクチュエータの作動がそれぞれ制御されることにより、図2に示されているように変速比γ(=入力軸20の回転速度/カウンタ軸40の回転速度)がそれぞれ異なる前進4段・後進1段の変速段が得られる。
図2において、「1st」,「2nd」,「3rd」,「O/D(オーバドライブ)」は、それぞれ前進側の第1速ギヤ段,第2速ギヤ段,第3速ギヤ段,第4速ギヤ段を表しており、上記変速比は第1速ギヤ段から第4速ギヤ段に向かうに従って順次小さくなる。なお、上記トルクコンバータ12および自動変速機14は、軸心に対して対称的に構成されているため、図1においては入力軸20の回転軸線の下側およびカウンタ軸40の回転軸線の上側を省略して示してある。
上記油圧制御回路44には、自動変速機14のギヤ段を制御するための変速制御用油圧制御回路と、ロックアップクラッチ32の係合を制御するための係合制御用油圧制御回路とが設けられている。変速制御用油圧制御回路は、ソレノイドNo.1およびソレノイドNo.2によってそれぞれオンオフ駆動される第1電磁弁46および第2電磁弁48を備えており、それら第1電磁弁46および第2電磁弁48の作動の組み合わせによって図1に示すようにクラッチおよびブレーキが選択的に作動させられて前記第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段のうちのいずれかが成立させられるようになっている。
また、上記係合制御用油圧制御回路は、ロックアップクラッチ32を解放状態とする解放側位置とロックアップクラッチ32を係合状態とする係合側位置とに切り換える図示しないクラッチ切換弁をオンオフ作動させる切換用信号圧を発生する第3電磁弁50と、係合側油室35および解放側油室33の圧力差ΔPを調節してロックアップクラッチ32のスリップ量を制御する図示しないスリップ制御弁を作動させるスリップ制御用信号圧を電子制御装置42からの駆動電流に従って発生させるリニアソレノイド弁54とを備えている。
前記電子制御装置42は、CPU60、RAM62、ROM64、図示しない入出力インターフェースなどを含む所謂マイクロコンピュータであって、それには、エンジン10の吸気配管66に設けられたスロットル弁68の開度TAを検出するスロットルセンサ70、エンジン10の回転速度を検出するエンジン回転速度センサ72、自動変速機14の入力軸20の回転速度を検出する入力軸回転速度センサ74、車速Vを検出するために自動変速機14のカウンタ軸40の回転速度を検出する車速センサ76、シフトレバー78の操作位置、すなわちL、S、D、N、R、Pレンジのいずれかを検出する操作位置センサ80、ブレーキペダル82の操作を検出するブレーキスイッチ84から、スロットル弁開度TAを表す信号、エンジン回転速度NE を表す信号、入力軸回転速度NINを表す信号、出力軸(カウンタ軸40)の回転速度NOUT を表す信号、シフトレバー78の操作位置PS を表す信号、ブレーキペダル82の操作を表す信号SBKがそれぞれ供給されるようになっている。
上記スロットル弁68は出力操作部に相当するアクセルペダル58と機械的に連結されてその踏込操作に伴ってスロットル弁開度TAが増加させられるものであるから、上記スロットルセンサ70はアクセルペダル58の操作量(すなわち出力操作量)AACC も実質的に検出している。
電子制御装置42には、レーダー87、カメラ88及びナビゲーションシステム装置89のそれぞれから出力される情報が供給されるようになっている。
レーダー87は、車両前部に搭載されたレーザーレーダーセンサ又はミリ波レーダーセンサなどのセンサであり、前方の車両との車間距離を計測する。カメラ88は、車両の前方道路、道路種類、道路場面、周辺車両、前方道路の標識、信号機、踏み切り、料金所等の車両の前方障害の状況を示す情報を取得するために用いられる。
ナビゲーションシステム装置89は、自車両を所定の目的地に誘導することを基本的な機能としており、演算処理装置と、車両の走行に必要な情報(地図、直線路、カーブ、登降坂、高速道路など)が記憶された情報記憶媒体と、自立航法により自車両の現在位置や道路状況を検出し、地磁気センサやジャイロコンパス、ステアリングセンサを含む第1情報検出装置と、電波航法により自車両の現在位置、道路状況などを検出するためのもので、GPSアンテナやGPS受信機などを含む第2情報検出装置等を備えている。
電子制御装置42のCPU60は、予めROM64に記憶されたプログラムに従って上記入力信号を処理し、たとえば運転指向推定制御、変速制御、ロックアップクラッチ制御などを実行する。したがって、本実施形態では、電子制御装置42が運転指向推定装置、変速制御装置として機能している。
上記電子制御装置42の運転指向推定制御では、入力信号から所定の運転操作関連変数を算出し、その運転操作関連変数が入力されるニューラルネットワークNNの出力に基づいて運転指向が推定される。また、電子制御装置42の変速制御やロックアップクラッチ制御では、予めROM64に記憶された複数種類の変速線図すなわち図3の加速指向の変速線図、図4の中間指向(通常)の変速線図、図5の燃費指向の変速線図から運転指向に対応する変速線図が選択され、その選択された変速線図から実際の車速Vおよびスロットル弁開度TAに基づいて所定のギヤ段へのシフト判定或いはロックアップオンオフ判定が行われる。
たとえば、図4の通常の変速線図において実際の車速Vおよびスロットル弁開度TAを示す点がアップシフト線或いはダウンシフト線と交差するとアップシフト判定或いはダウンシフト判定が行われる。そして、そのシフト判定が行われたギヤ段を成立させるように、図1に示す第1電磁弁46および第2電磁弁48が駆動され、或いはロックアップクラッチ32の係合制御のために第3電磁弁50およびリニアソレノイド弁54が駆動される。
なお、図3、図4、図5において、実線はシフトアップ線を示し、破線はシフトダウン線を示し、1点鎖線はロックアップクラッチの係合線を示し、2点鎖線はロックアップクラッチの開放線を示している。図3の加速指向の変速線図では、図4と比較して、高車速(高エンジン回転速度)で変速が実行されるように変速線が設定されている。また、図5の燃費指向の変速線図では、図4と比較して、低エンジン回転速度で変速が実行されるように変速線が設定されている。
図6は、上記電子制御装置42の制御機能を説明する機能ブロック線図である。図において、変速制御手段90は、ROM64に予め記憶された複数種類の変速線図から変速線図切換手段92により選択された変速線図から、車速センサ76により検出された実際の車速Vおよびスロットルセンサ70により検出された実際のスロットル弁開度TAに基づいて所定のギヤ段への変速判断を実行し、その変速判断により判断されたギヤ段を達成するための電磁弁46、48、50に対して変速出力を行って自動変速機14のギヤ段を切換制御する。
最高速ギヤ段禁止手段93は、Dレンジが選択されているとき、登坂制御中或いは降坂制御中だけでなく、運転指向推定部94のニューラルネットワークNNの出力信号NNOUT が所定値以上であるときすなわち加速指向を示すフラグXSPORT の内容が「1」にセットされているときにも、十分な駆動力を得るために最高速ギヤ段を禁止する。しかし、車速が一定である車両の定常走行であって上記ニューラルネットワークNNの出力信号NNOUT が所定値Kより小さい場合には、上記最高速ギヤ段禁止手段93による最高速ギヤ段が解除される。
上記変速線図切換手段92は、ROM64に予め記憶された図3、図4、図5に示す複数種類の変速線図から、運転指向推定部94により推定された運転指向に対応した変速線図を選択する。たとえば、変速線図切換手段92では、運転指向推定部94によりたとえば加速指向を示すフラグXSPORT がセットされた場合には、図3の加速指向の変速線図が選択されるが、燃費指向を示すフラグXECOがセットされた場合には、図5の燃費指向の変速線図が選択され、中間指向を示すフラグXNORMがセットされた場合には、それら加速指向の変速線図および燃費指向の変速線図の中間的な特性を備えた図4の中間指向の変速線図が選択されるのである。
上記運転指向推定部94は、複数種類の運転操作関連変数のいずれかの算出毎にその運転操作関連変数が入力されて推定演算が起動されるニューラルネットワークNNを備え、そのニューラルネットワークNNの出力に基づいて車両の運転指向を推定する。
たとえば図7に示すように、運転指向推定部94は、前記各センサ70、72、74、76、84などからの検出信号を比較的短い所定の周期で読み込む信号読込手段96と、この信号読込手段96により逐次読み込まれた信号から、運転指向を反映する運転操作に密接に関連する複数種類の運転操作関連変数、すなわち車両発進時の出力操作量(アクセルペダル操作量)すなわち車両発進時のスロットル弁開度TAST、加速操作時の出力操作量の最大変化率すなわちスロットル弁開度の最大変化率ACCMAX 、車両の制動操作時の最大減速度GNMAX、車両の惰行走行時間TCOAST 、車速一定走行時間TVCONST、所定区間内において各センサから入力された信号の区間最大値、運転開始以後における最大車速Vmax などをそれぞれ算出する運転操作関連変数算出手段すなわち前処理手段98と、この前処理手段98により運転操作関連変数が算出される毎にその運転操作関連変数が許可されて運転指向推定演算を行うニューラルネットワークNNを備え、そのニューラルネットワークNNの出力である運転指向推定値を出力する運転指向推定手段100とを備え、ニューラルネットワークNNの出力信号NNOUT を直接に、或いはその出力信号NNOUT が大きくなるほどたとえばフラグXSPORT 、XNORM、XECO により示される運転指向を表す信号に3段階に変換してから前記変速線図切換手段92へ供給するとともに、車両に搭載され且つ運転指向に関連して制御を変更することが必要な他の制御装置へ供給する。
上記他の制御装置としては、たとえば上記運転指向推定部94により推定された運転指向に基づいて車両のパワーステアリングの操舵力が制御される操舵力制御装置102、上記運転指向推定部94により推定された運転指向に基づいて車両懸架装置のショックアブソーバの減衰力或いはばね特性が制御されるサスペンション制御装置104である。
上記運転指向推定手段100により、車両発進時のスロットル弁開度TAST、加速操作時のスロットル弁開度の最大変化率ACCMAX 、車両の制動操作時の最大減速度GNMAX、車両の惰行走行時間TCOAST 、車速一定走行時間TVCONSTが入力されるニューラルネットワークの出力に基づいて、車両の運転指向が推定されることから、従来では用いられていない上記の運転操作関連変数に基づいて運転指向が推定されるので、より正確に運転指向を推定でき、複数回の推定を要することなく、運転者の操作に対する運転指向結果の応答性が十分に得られる。
上記図7の前処理手段98には、車両発進時の出力操作量すなわち車両発進時のスロットル弁開度TASTを算出する発進時出力操作量算出手段98a、加速操作時における出力操作量の最大変化率すなわちスロットル弁開度の最大変化率ACCMAX を算出する加速操作時出力操作量最大変化率算出手段98b、車両の制動操作時の最大減速度GNMAXを算出する制動時最大減速度算出手段98c、車両の惰行走行時間TCOAST を算出する惰行走行時間算出手段98d、車速一定走行時間TVCONSTを算出する車速一定走行時間算出手段98e、たとえば3秒程度の所定区間内における各センサからの入力信号のうちの最大値を周期的に算出する入力信号区間最大値算出手段98f、運転開始以後における最大車速Vmax を算出する最大車速算出手段98gなどがそれぞれ備えられている。
上記入力信号区間最大値算出手段98fにおいて算出される所定区間内の入力信号のうちの最大値としては、スロットル弁開度TAmaxt、車速Vmaxt、エンジン回転速度NEmaxt 、前後加速度NOGBW maxt (減速のときは負の値)或いは減速度GNMAXt (絶対値)が用いられる。前後加速度NOGBW maxt 或いは減速度GNMAXt は、たとえば車速V(NOUT )の変化率から求められる。
図7の運転指向推定手段100に備えられたニューラルネットワークNNは、コンピュータプログラムによるソフトウエアにより、或いは電子的素子の結合から成るハードウエアにより生体の神経細胞群をモデル化して構成され得るものであり、たとえば図7の運転指向推定手段100のブロック内に例示されるように構成される。
図7において、ニューラルネットワークNNは、r個の神経細胞要素(ニューロン)Xi (X1 〜Xr )から構成された入力層と、s個の神経細胞要素Yj (Y1 〜Ys )から構成された中間層と、t個の神経細胞要素Zk (Z1 〜Zt )から構成された出力層とから構成された3層構造の階層型である。そして、上記入力層から出力層へ向かって神経細胞要素の状態を伝達するために、結合係数(重み)WXij を有して上記r個の神経細胞要素Xi とs個の神経細胞要素Yj とをそれぞれ結合する伝達要素DXij と、結合係数(重み)WYjk を有してs個の神経細胞要素Yj とt個の神経細胞要素Zk とをそれぞれ結合する伝達要素DYjk が設けられている。
上記ニューラルネットワークNNは、その結合係数(重み)WXij 、結合係数(重み)WYjk を所謂誤差逆伝搬学習アルゴリズムによって学習させられたパターン連想型のシステムである。その学習は、前記運転操作関連変数の値と運転指向とを対応させる走行実験によって予め完了させられているので、車両組み立て時では、上記結合係数(重み)WXij 、結合係数(重み)WYjk は固定値が与えられている。
上記の学習に際しては、複数の運転者についてそれぞれ燃費指向、加速指向、それらの中間的な中間(ノーマル)指向の運転がたとえば高速道路、郊外道路、山岳道路、市街道路などの種々の道路において実施され、そのときの運転指向を教師信号とし、教師信号とセンサ信号を前処理したn個の指標(入力信号)とがニューラルネットワークNNに入力させられる。なお、上記教師信号は運転指向を0から1までの値に数値化し、たとえば燃費指向を0、中間指向を0.5、加速指向を1とする。また、上記入力信号は−1から+1までの間あるいは0から1までの間の値に正規化して用いられる。
図7の前処理手段98において、発進時出力操作量算出手段98aは、スロットルセンサ(出力操作量検出手段)70により検出されたスロットル弁開度(出力操作量)TAと車速センサ(車速検出手段)76により検出された車速Vとから車両発進時のスロットル弁開度(出力操作量)TASTを算出する。ニューラルネットワークNNへ入力させるために、運転指向と密接に関連した車両発進時のスロットル弁開度(出力操作量)TASTが算出されるので、運転指向の推定結果の信頼性が高められるのである。
上記発進時出力操作量算出手段98aは、たとえば、図8に示すように、車両が停止している状態が所定時間TVO1 以上継続したことを車速Vなどに基づいて判定する停車判定手段110と、車速Vが予め設定された設定車速V1 に到達したことを判定する設定車速到達判定手段111と、車両の停車状態に続いて車速Vがたとえば10km/h程度の設定車速V1 に到達したときのスロットル弁開度TAを発進時のスロットル弁開度(出力操作量)TASTとして決定する発進時出力操作量決定手段112とから構成される。
また、図7の前処理手段98において、加速操作時の出力操作量最大変化率算出手段98bは、スロットルセンサ(出力操作量検出手段)70により検出されたスロットル弁開度(出力操作量)TAの最大変化率から急開閉操作時を除く出力操作量の最大変化率ACCMAX を算出する。ニューラルネットワークNNへ入力させるために、運転指向と密接に関連した出力操作量の最大変化率ACCMAX が算出され、しかも一時的な急開閉操作(所謂チップイン操作)時の最大変化率ACCMAX が除かれているので、運転指向の推定結果の信頼性が高められるのである。
上記加速操作時の出力操作量最大変化率算出手段98bは、たとえば図9に示すように、スロットル弁開度の変化率ACCTAすなわちアクセル踏込速度が増加中のスロットル弁開度変化率最大値を逐次記憶して更新するスロットル弁開度変化率最大値更新手段114と、アクセルペダルが短時間内に急開閉操作されるチップイン操作を判定するチップイン操作判定手段115と、そのチップイン操作判定手段115によりチップイン操作が判定されないときに上記スロットル弁開度変化率最大値更新手段114により更新されたスロットル弁開度変化率最大値を最大スロットル弁開度変化率ACCMAX として決定する最大スロットル弁開度変化率決定手段116と、この最大スロットル弁開度変化率決定手段116によって最大スロットル弁開度変化率ACCMAX が決定されるまでの最大スロットル弁開度ACCMXTAを決定する最大スロットル弁開度決定手段117とから構成される。
上記チップイン操作判定手段115は、最大スロットル弁開度ACCMXTAが求められてから所定時間(KSHRT+TMAXTA )経過後のスロットル弁開度TAが判断基準値KTACHIP以下であってスロットル開度変化率ACCTAが零または負である場合、或いは、そのスロットル開度変化率ACCTAが正であってもスロットル弁開度TAが再判断基準値KTHRSより小であるときに、アクルペダル58の急開閉操作すなわちチップイン操作であると判定する。
また、図7の前処理手段98において、車速一定走行時間TVCONSTを算出する車速一定走行時間算出手段98eは、たとえば図10に示すように、車速Vが所定幅ΔV以上に変化しないことを判定し、その車速Vが変化しない状態が予め設定された設定時間KVCONAV持続したことが第1計時手段119により判定されたことに基づいて車速一定走行を判定する車速一定走行判定手段120と、その車速一定走行判定手段120によって車速一定走行が判定された状態で第2計時手段121により計時される経過時間に基づいて車速一定走行時間TVCONSTを決定するとともに、その車速一定走行中では予め設定された起動周期KVCONの経過毎に車速一定走行時間TVCONSTを繰り返し決定する車速一定走行時間決定手段122とから構成される。
また、図7の前処理手段98において、車両の惰行走行時間TCOAST を算出する惰行走行時間算出手段98dは、たとえば図11に示すように、走行中のスロットル弁開度TAが零などに基づいて車両の惰行走行を判定する惰行走行判定手段124と、その惰行走行判定手段124によって惰行走行が判定された状態で第3計時手段125により計時される経過時間に基づいて惰行走行時間TCOASTを決定するとともに、その惰行走行中では予め設定された起動周期KILONの経過毎に惰行走行時間TCOAST を繰り返し決定する惰行走行時間決定手段126とから構成される。
また、図7の前処理手段98において、車両の制動時の最大減速度GNMAXを算出する制動時最大減速度算出手段98cは、たとえば図12に示すように、車両の制動中において負側へ増加する前後加速度NOGBW を逐次記憶して更新する制動時最大減速度更新手段130と、その前後加速度NOGBW が予め設定された判断基準値KSPBKG よりも小さい場合には上記制動時最大減速度更新手段130により記憶された値NOGBW を制動時最大減速度MAXBKGすなわちGNMAXとして決定し、その後の前後加速度NOGBW (負)がその制動時最大減速度MAXBKGと等しい場合或いはその制動時最大減速度MAXBKGよりも大きく(零側)てもその制動時最大減速度MAXBKGより所定値KBKGHYS 以上離れない場合は、第4計時手段131により計時された所定時間KBKCON 毎に、前述の如く決定された値(判断基準値SPBKG より小さい値として最初に決定された値)を制動時最大減速度MAXBKGとして周期的に決定する制動時最大減速度決定手段132とを含む。
また、図7の前処理手段98において、たとえば3秒程度の所定区間毎にその区間内において各センサから逐次入力される入力信号の最大値を周期的に算出する入力信号区間最大値算出手段98fは、たとえば図13に示すように、所定区間内に入力されるスロットル弁開度TAを所定の記憶場所に記憶するとともにその記憶場所に記憶された値と新たに入力されたスロットル弁開度TAとを逐次比較して大きい方の値を記憶値として更新させることにより所定区間内のスロットル弁開度TAの最大値TAmaxtを求めるスロットル弁開度区間最大値更新手段134と、所定区間内に入力されるエンジン回転速度NE を所定の記憶場所に記憶するとともにその記憶場所に記憶された値と新たに入力されたエンジン回転速度NE とを逐次比較して大きい方の値を記憶値として更新させることにより所定区間内のエンジン回転速度NE の最大値NEmaxt を求めるエンジン回転速度区間最大値更新手段135と、所定区間内に入力される前後加速度NOGBW を所定の記憶場所に記憶するとともにその記憶場所に記憶された値と新たに入力された前後加速度NOGBW とを逐次比較して大きい方の値を記憶値として更新させることにより所定区間内の前後加速度NOGBW の最大値NOGBW maxt(所定区間内最大減速度GNMAXt )を求める前後加速度区間最大値更新手段136とが備えられており、所定区間内の最大スロットル弁開度TAmaxt、最大エンジン回転速度NEmaxt 、最大前後加速度NOGBW maxtが、ニューラルネットワークNNに所定区間毎に繰り返し入力させられるようになっている。
前後加速度入力禁止手段137は、車両がアップシフト変速や降坂制御の4→3ダウン変速のような運転指向に関連しない所定の変速期間である場合には、その変速期間内に発生する上記前後加速度NOGBW の入力を禁止する。これにより、アップシフト変速や降坂制御の4→3ダウン変速のような運転指向に関連しない所定の変速における変速期間では、その変速期間に発生する前後加速度NOGBW の入力が禁止されてその情報がニューラルネットワークへ送られることがないので、運転指向の推定結果の信頼性が一層高められるようになっている。
車両旋回判定手段138は、たとえば、加速指向中においてチップイン操作を除くアクセル戻し速度が所定値KDTAMX 以上であるとき、或いは制動時の減速度GN が所定値KSPBKG 以上であるときに車両の旋回を判定する。これにより、舵角センサなどの検出装置を設けることなく、車両のコーナー前走行およびコーナー中走行が判定される。
最大値保留手段139は、前記運転指向推定手段100によって加速指向であると推定され、且つ上記車両旋回判定手段138により車両の旋回と判定された場合には、スロットル弁開度区間最大値更新手段134、エンジン回転速度区間最大値更新手段135、前後加速度区間最大値更新手段136における最大値の更新を保留し、保留した最大値すなわち車両旋回の判定前の区間に更新された最大値(スロットル弁開度TAmaxt、エンジン回転速度NEmaxt 、前後加速度NOGBW maxt)を前記ニューラルネットワークNNへ入力させる。これにより、加速指向の走行中であっても運転操作に関しては燃費指向と差がないコーナー前およびコーナー旋回中においては、上記区間内の最大値が更新されることがなく、旋回前の最大値が保留されてその保留値により運転指向の推定が行われるので、運転指向の推定結果の信頼性が高められる。
保留中更新手段140は、上記最大値保留手段139による保留中において、保留していた最大値よりも大きい入力信号が新たに入力された場合には、その最大値保留手段139による保留中にも拘わらず、スロットル弁開度区間最大値更新手段134、エンジン回転速度区間最大値更新手段135、前後加速度区間最大値更新手段136においてその新たに入力されたスロットル弁開度TA、エンジン回転速度NE 、前後加速度NOGBW を最大値(TAmaxt、NEmaxt 、NOGBW maxt)として更新させる。このようにすれば、運転指向に関連する情報が可及的にニューラルネットワークNNへ入力されるので、一層運転指向の信頼性が高められる。
また、保留解除手段141は、上記最大値保留手段139による保留中において、アクセルペダル58の再踏み込みが行われたときにはその最大値保留手段139によりスロットル弁開度区間最大値更新手段134、エンジン回転速度区間最大値更新手段135、前後加速度区間最大値更新手段136へ指令された保留を解除する。
また、チップイン判定手段142は、アクセルペダル58の短時間の急開閉操作であるチップイン操作を判定したときには、スロットル弁開度区間最大値更新手段134、エンジン回転速度区間最大値更新手段135、前後加速度区間最大値更新手段136の少なくとも1つにおける最大値の更新を阻止する。これにより、運転指向というよりは路面上の障害物などの路面状態に関連する情報が除去されるので、運転指向の推定精度が高められる。
図14は、電子制御装置42の制御作動の要部、すなわち運転指向推定作動を説明するフローチャートである。図14のステップ(以下、ステップを省略する)SM1では、初期処理が実行されることにより、RAM62内に設けられた種々の記憶領域或いはレジスタ、計数或いは計時などのためのカウンタやタイマ等がクリアされるとともに、推定許可フラグXNNCAL の内容が「0」にクリアされ且つ停車フラグXSTOPの内容が「1」にセットされる。次いで、前記信号読込手段96に対応するSM2では、各センサからの入力信号が読み込まれる。
次に、前記前処理手段(運転操作関連変数算出手段)98に対応するSM3では、各運転操作に関連するイベントの発生時期とイベントの量、すなわち運転操作関連変数が算出される。すなわち、車両発進時のスロットル弁開度TAST、運転開始以後におけるスロットル弁開度の最大変化率ACCMAX 、車両の制動操作時の最大減速度GNMAX、車両の惰行走行時間TCOAST 、車速一定走行時間TVCONST、所定区間内における各センサからの入力信号のうちの区間最大値たとえばスロットル開度TAmaxt、車速Vmaxt、エンジン回転速度NEmaxt 、前後加速度NOGBW(GNMAXt ) などの複数種類の運転操作関連変数が算出される。なお、P、Rレンジ時には運転指向の推定は実行されない。
次いで、SM4において、推定許可フラグXNNCAL の内容が「1」にセットされているか否かが判断される。推定許可フラグXNNCAL の内容が「1」にセットされていない場合には、このSM4の判断が否定されて上記SM2以下が繰り返し実行されるが、推定許可フラグXNNCAL の内容が「1」にセットされている場合には、SM4の判断が肯定されて、前記運転指向推定手段100に対応するSM5において、運転指向の推定演算が実行される。
上記推定許可フラグXNNCALは、前記運転操作関連変数の算出毎に、または惰行走行時間TCOAST の計測中、車速一定走行時間TVCONSTの計測中、或いは制動時の最大減速度GNMAXの計測中の場合は所定時間毎にその内容が「1」にセットされるものであり、SM5はその推定許可フラグXNNCAL のセット毎に上記SM4の運転指向推定演算を許可するのである。
上記SM5では、前記運転指向推定手段100において説明したように、車両発進時のスロットル弁開度TAST、運転開始以後におけるスロットル弁開度の最大変化率ACCMAX 、車両の制動操作時の最大減速度GNMAX、車両の惰行走行時間TCOAST 、車速一定走行時間TVCONST、所定区間内における各センサからの入力信号のうちの区間最大値すなわちスロットル開度TAmaxt、車速Vmaxt、エンジン回転速度NEmaxt 、前後加速度NOGBW maxt( GNMAXt ) などの複数種類の運転操作関連変数が入力されるニューラルネットワークNNが用いられ、そのニューラルネットワークNNの出力信号に基づいてたとえばフラグXSPORT 、XNORM、XECO により示される3段階の運転指向を表す信号に変換され、運転指向が推定される。
そして、上記のように運転指向が一旦推定された後においては、SM6において推定許可フラグXNNCAL の内容が「0」にクリアされ、その後、前記SM2以下が繰り返し実行される。
図15以下の各図のフローチャートは、上記SM3の内容の構成例を示すルーチンを示している。図15は、前記発進時出力操作量算出手段98aに対応するものであって、車両発進時のスロットル弁開度TASTを算出するルーチンを示している。
図16は、前記加速操作時の出力操作量最大変化率算出手段98bに対応するものであって、アクセルペダル踏み込み時の最大スロットル開度変化率ACCMAX を算出するルーチンを示している。図17は、前記車速一定走行時間算出手段98eに対応するものであって、車速一定走行時間TVCONSTを算出するルーチンを示している。
図18は、前記惰行走行時間算出手段98dに対応するものであって、惰行走行時間TCOAST を算出するルーチンを示している。図19は、前記制動時最大減速度算出手段98cに対応するものであって、車両の制動操作時の最大減速度GNMAXを算出するルーチンを示している。図20乃至図23は、前記入力信号区間最大値算出手段98fに対応するものであって、所定区間内における各センサからの入力信号のうちの区間内最大値(スロットル開度TAmaxt、車速Vmaxt、エンジン回転速度NEmaxt 、前後加速度NOGBW maxt( GNMAXt )などの複数種類の運転操作関連変数を算出するルーチンを示している。
車両発進時のスロットル弁開度TASTを算出する図15のルーチンにおいて、SA1では、車両が走行中であるか否かが判断される。車両が停止中であればこのSA1の判断が否定されるので、SA2において停車時間タイマTV0の内容に「1」が加算された後、図8の停車判定手段110に対応するSA3において停車時間タイマTV0の内容が予め設定された判断基準値TV01 以上となったか否かが判断される。この判断基準値TV01 は、車両が確実に停車したか否かを判断するためのものであり、0.2秒程度の値に設定される。上記SA3の判断が否定された場合は本ルーチンが終了させられるが、肯定された場合にはSA4において停車フラグXV0の内容が「1」に設定される。この停車フラグXV0はその内容が「1」であるときに車両が一旦停車したことを示す。
車両が走行した場合には、上記SA1の判断が肯定されるので、SA5において停車フラグXV0の内容が「1」であるか否かが判断される。発進当初はその停車フラグXV0の内容が「1」であることから上記SA5の判断が肯定されるので、図8の設定車速到達判定手段111に対応するSA6において車速Vが予め設定された設定車速V1 以上となったか否かが判断される。この設定車速V1 は車両発進時を判定するためのものであり、たとえば10km/h程度の値に設定される。
発進時の車速Vが設定車速V1 に到達しないうちはSA6の判断が否定されて本ルーチンが終了させられるが、発進時の車速Vが設定車速V1 以上となると、SA6の判断が肯定されるので、図8の発進時出力操作量決定手段112に対応するSA7において、そのときのスロットル弁開度TAが発進時のスロットル弁開度TASTとして記憶されるとともに、停車時間タイマTV0および停車フラグXV0の内容が「0」にクリアされ、且つ推定許可フラグXNNCAL の内容が「1」にセットされる。
次に、アクセルペダル踏み込み時の最大スロットル開度変化率ACCMAX を算出する図16のルーチンにおいては、SB1では、アクセルペダル58の踏込速度が一定か或いは減速していることを示すアクセル踏込減速フラグXACCTA の内容が「1」であるか否かが判断される。当初はこのSB1の判断が否定されるので、SB2において、正スロットル開度変化率(たとえば数十ms程度の所定周期で読みこまれるスロットル開度TAの差分)ACCTA(%)が予め設定された判断基準値KACTAMXを越えたか否かが判断される。この判断基準値KACTAMXは、緩やかな踏み込みを除去するために予め設定された値であり、たとえば6%程度に設定される。
上記SB2の判断が否定された場合はSB20にすすむ。しかし、上記SB2の判断が肯定された場合には、SB3において正スロットル開度変化率ACCTAがそれまでに記憶された最大値ACCMAX を下回ったか否かが判断される。このSB3の判断が否定された場合すなわち踏込操作量ACCTAが前回の値以上であれば、図9のスロットル弁開度変化率最大値更新手段114に対応するSB4において今回のサイクルで入力された踏込操作量ACCTAが最大操作量ACCMAX として更新された後、SB5においてアクセル踏込減速フラグXACCTA の内容が「0」にクリアされた後、本ルーチンが終了させられる。
以上のようにして、アクセル踏込による正スロットル開度変化率ACCTAの最大値ACCMAX が記憶された後、アクセル踏込速度が減少すると、SB6以下において、短時間のアクセル開閉操作(踏み戻し)によるものを除去して、加速意思を反映する継続的加速操作による最大スロットル開度変化率ACCMAX とそのときのスロットル弁開度ACCMXTAとが決定されるとともに、推定許可フラグXNNCAL がセットされるようになっている。
すなわち、所定の周期で逐次読み込まれる正スロットル開度変化率ACCTAがそれまでに記憶された最大値ACCMAX を下まわった場合には前記SB3の判断が肯定されるので、SB6においてアクセル踏込減速フラグXACCTA の内容が「1」であるか否かが判断される。当初はSB6の判断が否定されるので、SB7において、このときのスロットル弁開度TAがアクセル踏込減速時のスロットル弁開度すなわち最大スロットル弁開度ACCMXTAとして記憶される。続くSB8において、タイマCSHRTがスタートさせられると共に、アクセル踏込減速フラグXACCTA の内容が「1」にセットされる。
次いで、SB9において、上記タイマCSHRTの計時作動が停止しているか否かが判断される。当初はSB9の判断が否定されるので、SB10において、タイマCSHRTの計時内容が予め設定された判断基準値KSHRT以上となったか否かが判断される。この判断基準値KSHRTは、アクセル踏込減速直後の期間を判断するためのものであり、たとえば0.1秒程度の値が用いられる。
当初はアクセル踏込減速直後であって上記SB10の判断が否定されるので、SB11において、スロットル弁開度TAが上記SB7において記憶されたアクセル踏込減速時のスロットル弁開度ACCMXTAより大きいか否かが判断される。このSB11の判断が否定された場合は、スロットル弁開度TAが減少している状態であるので本ルーチンが終了させられるが、肯定された場合は、SB12において、そのときのスロットル弁開度TAがアクセル踏込減速時のスロットル弁開度ACCMXTAとして更新された後、本ルーチンが終了させられて、上記ステップが繰り返される。
タイマCSHRTの計時内容が判断基準値KSHRT以上となって上記SB10の判断が肯定されると、SB13において、タイマCSHRTの計時内容が予め設定された判断基準値KSHRTと判断基準値TMAXTA との加算値(KSHRT+TMAXTA =0.2秒程度)よりも大きいか否かが判断される。この判断基準値TMAXTA は、アクセルペダル58の所謂チップイン操作(アクセルペダルの短期間内の急開閉操作すなわちばたつき操作)を判断するタイミングを決定するための値であり、たとえば0.1秒程度の値に設定される。
このSB13の判断が否定された場合は本ルーチンが終了させられるが、肯定された場合は、SB14においてタイマCSHRTの計時作動が停止された後、SB15において、スロットル弁開度TAが予め設定された判断基準値KTACHIPよりも大きいか否かが判断される。この判断基準値KTACHIPは、上記チップイン操作を判断するための値であり、たとえば33%程度の値が用いられる。
ここで上記SB13において用いられる判断基準時間(KSHRT+TMAXTA )は、それが短い程、運転指向の応答性を高めるためには有利であるが、チップイン操作の判定の信頼性が得られなくなることから、チップイン操作の判定の信頼性が得られる範囲で可及的に短い値に設定されているので、アクセル踏み込み時の最大スロットル開度変化率ACCMAX が速やかに求められ、運転指向の応答性が高められている。
上記SB15の判断が肯定された場合は、アクセルペダル58の踏込速度が減速してから判断基準値(KSHRT+TMAXTA =0.2秒程度)だけ経過後においてもスロットル弁開度TAが判断基準値KTACHIP(33%程度)よりも大きい連続的踏込操作、たとえば図25に示すような連続的踏込操作であって、チップイン操作ではないので、図9の最大スロットル弁開度変化率決定手段116および最大スロットル弁開度決定手段117に対応するSB16において、推定許可フラグXNNCAL がセットされるとともに、正スロットル開度変化率ACCTAの最大値ACCMAX およびそのときのスロットル弁開度ACCMXTAがニューラルネットワークNNへの入力信号を記憶する所定の記憶場所EVENT6、EVENT7へそれぞれ記憶される。
しかし、上記SB15の判断が否定された場合は、アクセルペダル58の踏込速度が減速してから判断基準値(KSHRT+TMAXTA =0.2秒程度)だけ経過後においてもスロットル弁開度TAが判断基準値KTACHIP(33%程度)以下の踏込操作であるので、SB17においてスロットル開度変化率ACCTAが正であるか否かが判断される。このSB17の判断が肯定された場合には、SB18においてスロットル弁開度TAが再判断基準値KTHRS以上であるか否かが判断される。この再判断基準値KTHRSは、前記判断基準値KTACHIP(33%程度)よりも小さい値に設定されたものであり、たとえば20%程度の値が用いられる。
上記SB18の判断が肯定された場合は、チップイン操作ではないと考えられるので前記SB16が実行されるが、否定された場合は、たとえば図26に示すようなアクセルペダル58のチップイン操作であると考えられるので、SB19においてチップイン操作を表すチップインフラグXCHIPINの内容が「1」にセットされてから、SB20以下が実行される。また、スロットル開度変化率ACCTAが正ではない場合は、前記SB17の判断が否定されるので、上記SB19が実行された後、SB20以下が実行される。さらに、踏み込み操作以後においてタイマCSHRTが停止している状態では、前記SB9の判断が肯定されるので、SB20以下が実行される。
本実施形態では、アクセルペダル58の踏込速度が減速してから判断基準値(KSHRT+TMAXTA =0.2秒程度)だけ経過後においてもスロットル弁開度TAが判断基準値KTACHIP(33%程度)以下であってスロットル開度変化率ACCTAが零乃至負である場合、或いは、そのスロットル開度変化率ACCTAが正であってもスロットル弁開度TAが再判断基準値KTHRSより小さい場合には、アクセルペダル58のチップイン操作が判定されるので、本実施形態では、SB15、SB17、SB18、SB19が、アクセルペダル58のチップイン操作を判定する図9のチップイン操作判定手段115に対応している。
SB20においては、負スロットル開度変化率DECTAが正であるか否か、すなわちスロットル開度TAの減少速度が正であるか否かが判断される。このSB20の判断が肯定された場合は、アクセルペダルが戻されつつある状態であるので、SB23において、正スロットル開度変化率ACCTAの最大値ACCMAX 、アクセル踏込減速フラグXACCTA の内容がクリアされた後、本ルーチンが終了させられ、上記のステップが繰り返される。
しかし、上記SB20の判断が否定された場合には、アクセルペダル58が戻されつつある状態ではないので、SB21において、短時間のアクセルペダル急開閉操作すなわちばたつき(チップイン)操作を表すチップインフラグXCHIPINの内容が「0」にクリアされた後、SB22において、アクセル踏込減速フラグXACCTA の内容が「0」であるか否かが判断される。このSB22の判断が否定された場合は本ルーチンが直ちに終了させられるが、肯定された場合には、上記SB23を経て本ルーチンが終了させられる。
車速一定走行時間を算出するための図17のルーチンにおいて、SC1では、最大スロットル開度変化率ACCMAX が前記SB16により既に記憶されて零でないか否かが判断される。このSC1の判断が肯定された場合は、最大スロットル開度変化率ACCMAX が未だ記憶されていないので、SC2において車速一定時間計時タイマCVCONおよび起動タイマCVCON2 の計時作動が開始されるとともに、そのときの実際の車速Vが車速一定走行開始時の車速VCONTとして記憶されてから本ルーチンが終了させられる。すなわち、上記SC1の判断が否定されるまで、上記SC2が繰り返し実行されて、車速一定時間計時タイマCVCONおよび起動タイマCVCON2 のリセットおよび再起動と、車速一定走行開始時の車速VCONTの再セットとが繰り返される。
上記SC1の判断が否定されると、SC3において起動タイマCVCON2 の計時作動が停止しているか否かが判断される。このSC3の判断が肯定されると上記SC2以下が再び実行されるが、否定されると、車速一定走行状態を判定するために前記図10の車速一定走行判定手段120に対応するSC4、SC5、SC6が実行される。先ず、SC4では、スロットル弁開度TAが予め設定された判断基準値KTHRMよりも大きいか否かが判断される。この判断基準値KTHRMは、比較的高負荷走行であるか否かを判断するための値であり、たとえば30%程度の値に設定される。次いで、SC5では、車速Vに予め設定された判断基準幅ΔVを差し引いた値が上記車速一定走行開始時の車速VCONTを越えたか否かが判断され、SC6では、車速Vに予め設定された判断基準幅ΔVを加算した値が上記車速一定走行開始時の車速VCONTを下回ったか否かが判断される。上記判断基準幅ΔVは、車速の変動幅を判定するための値であり、たとえば1km/h程度の値が用いられる。
上記SC4、SC5、SC6のいずれかの判断が肯定された場合は、高負荷走行であるか或いは車速Vが変動する走行状態であって、車速一定走行状態ではないので、先ずSC7において、車速一定時間計時タイマCVCONの内容が1秒程度の設定された判断基準値KVCON以上であるか否かが判断される。このSC7の判断が否定された場合は、高負荷走行或いは車速変動走行状態となった直後であるから本ルーチンが終了させられる。
また、このSC7の判断が肯定された場合は、SC8において起動タイマCVCON2 の計時作動が停止させられるとともに、続いて、図10の第1計時手段119に対応するSC9において、車速一定時間計時タイマCVCONの内容が予め設定された判断基準値KVCONAV以上となったか否かが判断される。この判断基準値KVCONAVは、車速一定走行を判断するための一定走行持続時間であって、たとえば3乃至4秒程度の値に設定される。
上記のように、高負荷走行であるか或いは車速Vが変動する走行状態では、このSC9の判断も否定されるので、本ルーチンが終了させられる。このような高負荷走行であるか或いは車速Vが変動する走行状態が持続するうちは、次回のサイクル以降においてSC3の判断が肯定されて、SC2が繰り返し実行されることになる。
しかし、比較的低負荷の車速一定走行状態が開始されると、上記SC4、SC5、SC6の判断が共に否定されるので、SC10において起動タイマCVCON2の計時内容が予め設定された判断基準値KVCONよりも未だ小さいか否かが判断される。この判断基準値KVCONは、上記SC4、SC5、SC6の判断が共に否定されたことが起動周期だけ持続したことを判断するための値であり、たとえば1秒程度の値が用いられる。
上記SC10の判断が肯定された場合は、SC4、SC5、SC6の判断が共に否定された状態が1秒も持続しない状態であるので、本ルーチンが終了させられるが、否定された場合は、確実に比較的低負荷の車速一定走行状態と考えられるので、SC11において、起動タイマCVCON2 の計時作動が再開され且つそのときの車速Vが次の比較的低負荷の車速一定走行状態の判断のための車速一定走行開始時の車速VCONTとして記憶される。
次いで、SC9において、車速一定時間計時タイマCVCONの内容が予め設定された判断基準値KVCONAV以上となったか否かが判断される。このSC9の判断が否定された場合は、比較的低負荷の車速一定走行状態が判断されてからの経過時間が3乃至4秒程度に設定された判断基準値KVCONAVを越えていない状態であるので、本ルーチンが終了させられて、上記のステップが繰り返される。
しかし、上記SC9の判断が肯定された場合には、SC12において、車速一定時間計時タイマCVCONの内容が予め設定された判断基準値KVCON2 を越えたか否かが判断される。この判断基準値KVCON2 は車速一定時間計時タイマCVCONの上限ガード値であり、たとえば16秒程度の値に設定される。このSC12の判断が否定された場合は、SC13において、車速一定走行時間TVCONSTを示す車速一定時間計時タイマCVCONの内容がニューラルネットワークNNへの入力信号を記憶する所定の記憶場所EVENT8に記憶されるが、肯定された場合は、SC14において、車速一定走行時間TVCONSTの最大制限値である上記上限ガード値KVCON2 が上記の記憶場所EVENT8に記憶される。そして、SC15において、推定許可フラグXNNCAL の内容が「1」にセットされた後、本ルーチンが終了させられる。
上述のように、前記車速一定走行時間算出手段98eが図17のルーチンで構成される場合においては、SC4乃至SC6が、車速一定走行を当初に判定するための持続時間KVCONAVを経過したことが第1計時手段119に対応するSC9により計時されたことを条件に車速一定走行を判定する図10の車速一定走行判定手段120に相当し、SC11およびSC12が、当初の車速一定走行判定時において車速一定走行時間TVCONSTを決定するとともに、第2計時手段121に対応するSC10によって計時される計時時間KVCON毎の所定の起動周期毎にも車速一定走行時間TVCONSTを決定する図10の車速一定走行時間決定手段122に対応している。これにより、車速一定走行完了時において運転指向の推定演算の指令を出す場合に比較して、推定の遅れが大幅に改善される。
また、上記の車速一定走行が終了したときでも、その車速一定走行が終了してから上記所定の周期に相当する時間が経過すると、SC7の判断が肯定され且つSC8に続くSC9の判断が肯定されるので、車速一定走行時間TVCONSTが決定されるとともに推定許可フラグXNNCAL の内容が「1」にセットされる利点がある。このため、SC4による車速一定走行後にも上記周期的な運転指向推定演算の許可が1回だけ出力されることを可能としている。
惰行走行時間TCOAST を算出する図18のルーチンは、たとえばスロットルセンサ70内のアイドルスイッチがオン状態であり且つブレーキスイッチ84がオフ状態である惰行状態が検出されている間であって惰行走行時間計時タイマCILONの計時作動中に開始させられる。図18のSD1では、たとえばスロットル弁開度TAが零であるときに車速Vが正の値を示すことなどに基づいて車両の惰行走行であるか否かが判断される。このSD1の判断が否定された場合は、加速走行あるいは減速走行など惰行走行の終了した状態であるので、SD2において起動タイマCILON2 が停止させられた後、SD5以下が実行される。加速走行では惰行走行時間計時タイマCILONが停止させられていてそのSD5の判断が否定されて本ルーチンが終了させられる。
上記SD1の判断が肯定された場合は、SD3において、起動タイマCILON2の内容が予め設定された判断基準値KILONよりも小さいか否かが判断される。この判断基準値KILONは、惰行走行中における運転指向推定演算の起動周期に相当する値であり、たとえば1秒程度の値が用いられる。このSD3の判断が肯定された場合は本ルーチンが終了させられるが、否定された場合は、SD4において起動タイマCILON2 が再スタートさせられた後、SD5において、スロットルセンサ70内のアイドルスイッチがオンおよびブレーキスイッチ84がオフ状態である惰行状態が検出されている間は計時作動させられる惰行走行時間計時タイマCILONの内容が予め設定された判断基準値KAVEILON 以上となったか否かが判断される。この判断基準値KAVEILON は、当初惰行走行を判定するための惰行状態の持続時間であり、たとえば1.3秒程度の値が用いられる。
上記SD5の判断が否定された場合は、惰行走行とは判断できない程度の状態であるので本ルーチンが終了させられるが、肯定された場合は、SD6において惰行走行時間計時タイマCILONの内容が予め設定された判断基準値KILON2 より小さいか否かが判断される。この判断基準値KILON2 は、惰行走行時間計時タイマCILONの上限ガード値であり、たとえば16秒程度の値に設定される。このSD6の判断が肯定された場合は、SD7において、惰行走行時間TC0AST を示す惰行走行時間計時タイマCILONの内容がニューラルネットワークNNへの入力信号を記憶させるための所定の記憶場所EVENT9に記憶されるが、否定された場合は、SD8において、惰行走行時間TC0AST の最大制限値を示す上記上限ガード値KILON2 が上記所定の記憶場所EVENT9に記憶される。
次いで、SD9において、推定許可フラグXNNCAL の内容が「1」にセットされる。そして、SD10では、起動タイマCILON2 が停止させられているか否かが判断される。このSD10の判断が否定された場合は本ルーチンが終了させられるが、肯定された場合は、SD11において惰行走行時間計時タイマCILONの計時作動も停止させられる。
上述のように、前記惰行走行時間算出手段98dが図18のルーチンで構成される場合においては、SD1およびSD5が、走行中のスロットル弁開度TAが零となるなどの状態が所定時間KAVEILON 持続したことなどに基づいて車両の惰行走行を判定する図11の惰行走行判定手段124に対応し、SD7およびSD8が、その惰行走行判定手段124によって惰行走行が判定された状態で第3計時手段125に対応するSD3により計時される起動周期の経過毎に惰行走行時間TCOAST を繰り返し決定する惰行走行時間決定手段126に対応している。これにより、車両の惰行走行中でも、1秒程度の判断基準値KILONで定められる所定の起動周期毎に惰行走行時間TC0AST が決定されるとともに推定許可フラグXNNCAL の内容が「1」にセットされるので、運転指向の推定演算がその所定の周期毎に実行されて高い応答性が得られる。
車両の制動操作時の最大減速度GNMAXを算出する図19のルーチンにおいて、SE1では、ブレーキ操作開始時の車速VBKが予め設定された車速下限値KBKST1 よりも大きいか否かが判断される。また、このSE1の判断が肯定された場合には、SE2においてブレーキ操作開始時の車速VBKが予め設定された車速上限値KBKST2 よりも低いか否かが判断される。上記車速下限値KBKST1 および車速上限値KBKST2 は、制動時の最大減速度GNMAXを算出する車速範囲を設定するための下限値および上限値であって、たとえば25km/h程度の値および185km/h程度の値がそれぞれ用いられる。
上記SE1およびSE2の判断のいずれかが否定された場合は本ルーチンが終了させられるが、双方の判断が肯定された場合には、SE3において、車速センサ76から検出されるパルス間隔の変化から演算された車両の前後加速度NOGBWが零値以上であるか否かが判断される。このSE3の判断が肯定された場合は、制動による減速が発生していない状態であるので本ルーチンが終了させられるが、否定された場合は、前後加速度NOGBW が負の値であって制動による減速作用が発生している状態であるので、制動操作時の最大減速度GNMAXを算出するSE4以下が実行される。
SE4では、上記車両の前後加速度NOGBW が制動期間の最大値を記憶させる記憶場所MAXBKG内の値よりも小さいか否かが判断される。この記憶場所MAXBKG内の値は制動操作開始した瞬間に零値にセットされている。通常は、前後加速度NOGBW は負の側へ大きくなっているので、上記SE4の判断が肯定されてSE5において記憶場所MAXBKG内の値が新たな前後加速度NOGBW に更新される。これにより、記憶場所MAXBKG内の値は最も大きな負の値が記憶されることになる。そして、SE6において起動タイマCBKがスタートさせられた後、SE7において比較的強い制動操作を示すフラグXBKGSM の内容が「1」であるか否かが判断される。
当初は上記SE7の判断が否定されるので、SE8において車両の前後加速度NOGBW が予め設定された判断基準値KSPBKG よりも大きいか否かが判断される。この判断基準値KSPBKG は、運転(加速)指向の推定に影響する比較的強いブレーキ操作を判定するための負の値であり、予め実験的に求められる。比較的弱い制動操作の場合は、上記SE8の判断が肯定されるが、比較的強い制動操作の場合は上記SE8の判断が否定されるので、SE9において強いブレーキ操作を示すフラグXBKGSM の内容が「1」にセットされる。そして、SE10において、記憶場所MAXBKG内の値が予め設定された判断基準値KBKGAVE以下であるか否かが判断される。
この判断基準値KBKGAVEは、運転指向を判断するのに必要な比較的強い制動を判定するために上記判断基準値KSPBKG よりも小さい値すなわち正側の値に設定された値であり、予め実験的に求められる。そして、上記SE10の判断が否定された場合は本ルーチンが終了させられるが、肯定された場合は、SE11において、制動時最大減速度GNMAXを示す記憶場所MAXBKG内の値がニューラルネットワークNNへの入力信号を記憶させるための所定の記憶場所EVENT10に記憶されるとともに、推定許可フラグXNNCAL の内容が「1」にセットされる。
上記のようにしてフラグXBKGSM の内容が「1」に一旦セットされると、次回のサイクルにおけるSE7の判断が肯定されるので、前後加速度NOGBW が記憶場所MAXBKG内の値以上(減速度が同等以下)とならない限り、SE8やSE11が実行されることがない。このため、上記のステップが繰り返し実行されるうち、前後加速度NOGBW が記憶場所MAXBKG内の値以上となると、前記SE4の判断が否定されるので、SE12において、前後加速度NOGBW が記憶場所MAXBKG内の値すなわちそれまでの最大減速度と同じであるか否かが判断される。
上記前後加速度NOGBW が記憶場所MAXBKG内の値と同じである場合には上記SE12の判断が肯定されるので、SE13において起動タイマCBKの内容が予め設定された設定値KBKCON 以上となったか否かが判断される。この設定値KBKCONは、前後加速度NOGBW が一旦判断基準値KSPBKG を越えた場合にはそれよりも小さい判断基準値KBKGAVEより小さくならない範囲であって今回の前後加速度NOGBW が前回の減速度の最大値MAXBKGより予め設定されたヒステリシス値KBKGHYS(正の値)以内である間は、運転指向の応答性を高めるために繰り返し運転指向推定許可を出す周期であり、たとえば0.2秒程度の値が用いられる。
上記SE13の判断が否定された場合は、未だ周期に到達しない状態であるので、SE14においてブレーキがオフ状態とされたか否かが判断される。このSE14の判断が否定された場合はブレーキ中であるので、本ルーチンが終了させられた後、以上のステップが繰り返される。このようにステップが繰り返されるうち、上記SE13の判断が肯定されると、SE15において起動タイマCBKがスタートさせられるとともに、前記SE10以下が実行される。すなわち、記憶場所MAXBKG内の値が予め設定された判断基準値KBKGAVE以下である場合は、記憶場所MAXBKG内の値が制動時最大減速度GNMAXとして記憶されるとともに、推定許可フラグXNNCAL の内容が「1」にセットされる。
前後加速度NOGBW が記憶場所MAXBKG内の値と同じでない場合すなわち前後加速度NOGBW が小さくなった場合には上記SE12の判断が否定されるので、SE16において、前後加速度NOGBW から予め設定されたヒステリシス値KBKGHYS(正の値)を差し引いた値がそれまでに記憶された減速度の最大値MAXBKG以下であるか否か、すなわち前後加速度NOGBW が最大値MAXBKGよりもヒステリシス値KBKGHYS以上小さくなったか否かが判断される。このSE16の判断が否定されると、未だ前後加速度NOGBW が最大値MAXBKGからそれほど小さくなっていない状態であるので、SE18においてタイマCBKが停止しているか否かが判断される。そのSE18の判断が否定された場合は、SE19においてタイマCBKが停止させられ且つ強いブレーキ操作を示すフラグXBKGSM の内容が「0」にリセットされた後、前記SE10以下が実行されて最大減速度MAXBKGが記憶されるとともに、推定許可フラグXNNCAL が「1」にセットされる。
しかし、上記SE18の判断が肯定された場合は本ルーチンが終了させられる。そして、上記のステップが繰り返し実行されるうち、SE16の判断が肯定されると、SE17においてタイマCBKが停止しているか否かが判断される。このSE17の判断が否定された場合は、前記SE13以下が実行され、起動タイマCBKによって起動周期KBKCON の到来が決定される毎に、前記SE10以下が実行されて最大減速度MAXBKGが記憶されるとともに、推定許可フラグXNNCAL が「1」にセットされる。しかし、上記SE17の判断が肯定された場合は本ルーチンが終了させられる。
図27に示す点は、上記図19の作動により最大減速度MAXBKGが記憶され且つ推定許可フラグXNNCAL が「1」にセットされる時点を示している。本実施形態によれば、上記前後加速度NOGBW の大きさが一旦判断基準値KSPBKG を越えた場合には、それよりも小さい値に設定された判断基準KBKGAVEより小さくならない範囲であって今回サイクルの前後加速度NOGBW が前回の減速度の最大値MAXBKGより予め設定されたヒステリシス値KBKGHYS(正の値)以内である間は、0.2秒程度に設定された起動周期KBKCON 毎に最大減速度MAXBKGが記憶され且つ推定許可フラグXNNCAL が「1」にセットされて、運転指向の推定が許可されるので、運転指向の推定結果を得るための応答性が好適に得られる利点がある。
車両の制動時の最大減速度GNMAXを算出する制動時最大減速度算出手段98cに対応する上記図19のルーチンでは、車両の制動中において負側へ増加する前後加速度NOGBW を逐次記憶して更新するSE5が図12の制動時最大減速度更新手段130に対応し、SE11が、その前後加速度NOGBW が予め設定された判断基準値KSPBKG よりも小さい場合には上記制動時最大減速度更新手段130により記憶された値NOGBW を制動時最大減速度MAXBKGすなわちGNMAXとして決定し、その後の前後加速度NOGBW (負)がその制動時最大減速度MAXBKGと等しい場合或いはその制動時最大減速度MAXBKGよりも大きく(零側)てもその制動時最大減速度MAXBKGより所定値KBKGHYS以上離れない場合は、第4計時手段131により計時された所定時間KBKCON 毎に前述の如く決定された値(判断基準値KSPBKG より小さい値として最初に決定された値)を制動時最大減速度MAXBKGとして周期的に決定する最大減速度決定手段132に対応している。
前記入力信号区間最大値算出手段98fに対応する図20乃至図23では、たとえば3秒程度の所定区間毎にその区間内における各センサからの入力信号のうちの区間最大値すなわちスロットル開度TAmaxt、車速Vmaxt、エンジン回転速度NEmaxt 、前後加速度NOGBW maxt( GNMAXt )などの複数種類の運転操作関連変数が算出される。先ず、図20のSF1では、スロットル弁開度TAおよびエンジン回転速度NE が読み込まれて所定の記憶場所INPVAL1 、INPVAL2 にそれぞれ記憶される。次いで、SF2では、自動変速機14の実際の変速段SHIFT1が変速判断によって要求されているSHIFT 以下であるか否かが判断される。
上記SF2の判断が肯定された場合は、アップシフト変速或いは変速なしの状態であるので、SF3において、そのときの実際の変速段SHIFT1と変速判断によって要求されているSHIFT とが同じであるか否かが判断される。このSF3の判断が肯定された場合は変速なしの状態であるので、SF4においてアップシフトフラグXPTUPの内容が「0」にクリアされた後、SF5において、アップシフト判断時から所定期間計時作動させるタイマCGMCAN が停止しているか否かが判断される。このSF5の判断が肯定された場合は、ダウンシフト変速の直後ではないので、SE7においてタイマCGMCAN が停止させられ且つ上記アップシフトフラグXPTUPの内容が「0」にクリアされた後、SF8において所定区間内の最大減速度GNMAXt を示す前後加速度NOGBW (絶対値)が算出されるとともに所定の記憶場所INPVAL3 にそれぞれ記憶され、SF13以下が実行される。
しかし、上記SF5の判断が否定された場合は、アップシフト時或いは降坂制御の4→3ダウンシフト時の期間だけ計時作動させるタイマCGMCAN が停止していない状態すなわちアップシフト変速直後の状態あるので、SF6においてタイマCGMCAN の計時内容が予め設定された判断基準値KGMCAN 以下であるか否かが判断される。この判断基準値KGMCAN は、変速期間内を判断するためにその期間よりも大きく設定された値であり、たとえば1.5秒程度の値が用いられる。このSF6の判断が否定された場合は、変速期間中ではないため、上記SF7およびSF8が実行されて前後加速度NOGBW が記憶されるが、SF6の判断が肯定された場合は、変速期間中であるため運転者の指向に関係なく変速に関連して発生する前後加速度NOGBW を記憶させないように、SF8を実行させないで、SF13以下が実行される。
また、前記SF2の判断が否定された場合は、ダウンシフト判断の状態であって降坂制御の4→3変速時の前後加速度NOGBW が記憶されないようにSF9においてブレーキ操作中であるか否かが判断される。このSF9の判断が否定された場合は、降坂制御の4→3変速状態が発生する状態ではないので、上記SF7以下が実行される。しかし、上記SF9の判断が肯定された場合は、SF10においてタイマCGMCAN が停止しているか否かが判断される。
このSF10の判断が否定された場合は、SF11においてアップシフトフラグXPTUPの内容が「1」であるか否かが判断されるが、肯定された場合は、SF12においてタイマCGMCAN がスタートさせられ且つアップシフトフラグXPTUPの内容が「1」にセットされる。ブレーキ中のダウンシフトすなわち降坂制御のダウンシフトでは上記SF11の判断が否定されるので、SF12においてタイマCGMCAN がスタートさせられ且つアップシフトフラグXPTUPの内容が「1」にセットされるが、アップシフトでは上記SF11の判断が肯定されてSF6以下が実行される。また、アップシフト要求状態では、前記SF3の判断が否定されるので、上記SF10以下が実行される。
これにより、アップシフト変速と降坂制御で行われるブレーキ操作中のダウンシフト変速に際しては、運転指向とは無関係に生じるものであるため、前後加速度NOGBW が記憶されない。すなわち、本実施形態では、SF3、SF6、およびSF9が、アップシフト変速時および降坂制御で行われるブレーキ操作中のダウンシフト変速時においては前後加速度NOGBW を記憶させないために入力を禁止する図13の前後加速度入力禁止手段137に対応している。
以上のようにして前後加速度NOGBW を記憶させるためのステップが実行されると、SF13において、シフトレバーがNレンジへ操作されているか否かが判断される。このSF13の判断が肯定された場合は、図21のSF17において、前記記憶場所INPVAL1 、INPVAL2 、INPVAL3 に記憶されたスロットル弁開度TA、エンジン回転速度NE 、前後加速度NOGBW や、アクセル戻し速度DECTA、実際の変速段SHIFT1 、が所定の記憶場所EVENT1、EVENT2、EVENT3、EVENT4、EVENT5にそれぞれ記憶されるとともに、発進フラグXPTSTが「0」にクリアされ、区間タイマCMAX3がスタートさせられる。
しかし、上記SF13の判断が否定された場合は、シフトレバーが車両の前進走行のためのD、2、Lレンジのいずれかへ操作されている状態であるので、図21のSF14において発進のための発進フラグXPTSTの内容が「1」であるか否かが判断される。このSF14の判断が肯定された場合は、SF15において車速Vが予め設定された判断基準値KSTART 以上であるか否かが判断される。この判断基準値KSTART は、車両の発進時であるか否かを判断するための値であり、たとえば10km/h程度の値が用いられる。このSF15の判断が否定された場合は低速状態であるので本ルーチンが終了させられるが、肯定された場合は、発進時において10km/hを越えた状態であるのでSF16において推定許可フラグXNNCAL の内容が「1」にセットされた後、上記SF17が実行されることにより各入力信号が初期的に記憶される。
しかし、上記SF14の判断が否定された場合は、発進状態ではないので、SF18において、前記アクセルペダル踏み込み時の最大スロットル開度変化率ACCMAX が前記SB16により既に記憶されて零ではないか否かが判断される。このSF18の判断が否定された場合は、アクセルペダル58の踏み込みのない状態であるので、SF19において区間タイマCMAX3が停止中であるか否かが判断され、この判断が肯定されると、SF20において区間タイマCMAX3がスタートさせられる。この区間タイマCMAX3は、入力信号の最大値を求める区間を計時するためのものである。
次いで、SF20において区間タイマCMAX3がスタートさせられた後、SF21において、アクセル戻し速度抽出ルーチンによりアクセル戻し速度DECTAが求められる。しかし、アクセルペダル58の踏み込みのある状態では上記SF18の判断が肯定されるので、上記SF20が直接的に実行される。また、区間タイマCMAX3が計時作動中であるため上記SF19の判断が否定される場合は、上記SF21が直接的に実行される。
続くSF22では、アクセルペダル58を所定速度で戻したり或いは減速度が所定以上のような過渡的操作状態では所定区間内の入力信号の最大値を求める作動を保留させるための保留フラグXMODFの内容が「1」であるか否かが判断される。当初はSF22の判断が否定されるので、SF23において加速(スポーツ)指向を示すフラグXSPORT の内容が「1」であるか否かが判断される。このSF23の判断が否定された場合は運転が中間指向側であって過渡的操作状態が行われないので、図22のSF30以下が実行されるが、肯定された場合は、運転が加速指向側であるので、過渡操作状態であるか否かを判断するためのSF24、SF25、SF26が実行される。
すなわち、SF24では、アクセル戻し速度DECTAが予め設定された判断基準値KDTAMX よりも小さいか否かが判断される。この判断基準値KDTAMX は、アクセル戻しが速やかに行われたか否かを判断するための値であり、たとえば13%程度の値が用いられる。このSF24の判断が肯定された場合は、SF25において、前記記憶場所MAXBKG内の値すなわちブレーキ操作時の前後加速度の最大値(極値)MAXBKGが予め設定された判断基準値KSPBKG 以下であるか否かが判断される。
この判断基準値KSPBKG は前記SE8において用いられたものであり、比較的大きな前後加速度であることを判断するための値である。上記SF25の判断が否定された場合は、アクセル戻しが比較的緩やかに行われ、且つ前後加速度が比較的小さい状態であるので、図22のSF30以下が実行されるが、肯定された場合は、戻し速度が比較的緩やかであっても前後加速度が比較的大きい状態であるので、SF27において上記保留フラグXMODFの内容が「1」にセットされる。
また、上記SF24の判断が否定された場合は、SF26において、チップインフラグXCHIPINの内容が「1」にセットされているか否かが判断される。このSF26の判断が肯定された場合は、アクセルペダル58のチップイン操作によってアクセル戻し速度が比較的速やかとなった状態であるので、図22のSF30以下が実行されるが、肯定された場合は、チップイン操作のない状態でアクセル戻し速度が比較的速やかとなった場合であるので、SF27において上記フラグXMODFの内容が「1」にセットされる。
上記のようにして保留フラグXMODFの内容が「1」にセットされると、次のサイクルのSF22の判断が肯定されるので、SF28において、アクセル踏込速度に対応するACCTAが予め設定された判断基準値KACCTASより大きいか否かが判断される。この判断基準値KACCTASは、アクセルペダル58の再踏込操作を判断するためのものであり、たとえば3%程度の値が用いられる。このSF28の判断が肯定された場合は、SF29において、上記保留フラグXMODFと保留させる回数を示す値NMODFの内容が「0」にクリアされた後、SF30以下が実行されるが、SF28の判断が否定された場合は、直接的にSF30以下が実行される。すなわち、保留フラグXMODFが「1」にセットされている状態では、アクセルペダル58の再踏込操作が行われる毎に、保留フラグXMODFと保留させる回数を示す値NMODFの内容が「0」にクリアされて、保留が解除されるのである。
上記のように、アクセルペダル58の急開閉(チップイン)操作ではないときのアクセル戻し速度DECTAが所定値KDTAMX 以上であるとき(SF24、SF26)、および、アクセル戻し速度DECTAが所定値KDTAMX より小であるがブレーキ操作時の減速度(前後加速度NOGBW の最大値MAXBKG)が所定値KSPBKG 以下であって、コーナー前と考えられるとき(SF25)には、前回の3秒間の最大値を保留させるために保留フラグXMODFがセットされるので、一時的に低下する所定区間内入力信号の最大値により運転指向の推定値の減少することが好適に抑制される。加速(スポーツ)指向走行時のコーナー前やコーナー中では、運転操作を見る限りでは燃費指向と殆ど差はなく、コーナー判定を行うための情報(車輪速度、舵角、横方向加速度、ヨーレートなど)が得られない本制御では、燃費指向と推定されるおそれがあるからである。
本実施形態では、上記SF24、SF25、SF26が、車両の旋回を判定する図13の車両旋回判定手段138に対応し、車両の旋回が判定されたときに保留フラグXMODFをセットする上記SF27、および保留フラグXMODFがセットされているときに記憶場所EVENT i への区間最大値の記憶を阻止するSF48が、車両旋回判定中は入力信号の区間最大値のニューラルネットワークNNへの出力を保留させる図13の最大値保留手段139に対応している。
また、本実施形態では、上記保留フラグXMODFがセットされたとき、アクセルペダル58が再操作されたことが判断される(SF28)と、その保留フラグXMODFがクリアされる(SF29)ことにより、上記前回の3秒間区間の最大値の出力を保留させることが解除される。アクセルペダル58の再操作時の入力信号の最大値は大きいほど加速指向を意味するから、このような情報をニューラルネットワークNNに入力させることにより、運転指向推定値の信頼性が高められる。本実施形態では、上記SF28、SF29が、アクセルペダル58の再操作時においては区間(3秒間)最大値の出力を解除する図13の保留解除手段141に対応している。
図22のSF30では制動操作中であるか否かが判断される。このSF30の判断が否定された場合は、SF31においてブレーキ操作中における減速度の最大値MAXBKGが零とされた後にSF32以下が実行されるが、肯定された場合は、直接的にSF32以下が実行される。SF32乃至SF39は、たとえば記憶場所INPVAL1 、INPVAL2 、INPVAL3 にそれぞれ記憶されたスロットル弁開度TA、エンジン回転速度NE 、前後加速度NOGBW について、所定区間(3分間)内における最大値を決定するなどのために、所定回数(KMAXNUM−1)すなわち本実施形態では3回だけ繰り返されるループ状ルーチンである。
このSF32乃至SF39のループ状ルーチンでは、SF32において繰返し回数iとして「1」が設定されると、SF38においてその繰返し回数iに「1」が加算され、SF39において繰返し回数iが所定回数(KMAXNUM−1)と判断されるまで、すなわちKMAXNUM=4と設定されているから「3」と判断されるまでSF33乃至SF39が繰り返し実行される。先ず、SF33においてチップインフラグXCHIPINの内容が「1」であるか否かが判断され、この判断が肯定された場合は、アクセルペダル58が短時間内に急開閉操作された状態であるので、このようなときの最大値を記憶させないためにSF34の実行が回避される。
上記SF33の判断が否定された場合は、アクセルペダル58の短時間内の急開閉操作が行われていない状態であるので、SF34において、記憶場所INPVALi に記憶された入力信号値が所定区間内の最大値を記憶させるための記憶場所MAXVALi 内に記憶された信号値以下であるか否かが判断される。これにより、新たに読み込まれてINPVAL1 、INPVAL2 、INPVAL3 にそれぞれ記憶されたスロットル弁開度TA、エンジン回転速度NE 、前後加速度NOGBW が記憶場所MAXVAL1 、MAXVAL2 、MAXVAL3 にそれまでに記憶された値より大であるか否かが判断される。
このSF34の判断が肯定された場合には、SF35において、そのときの入力信号値がそれに該当する記憶場所MAXVALi 内に記憶される。そして、所定区間内においてルーチンが繰り返されることにより、各記憶場所MAXVAL1 、MAXVAL2 、MAXVAL3 には、所定区間内の最大値すなわちスロットル弁開度TAmaxt、エンジン回転速度NEmaxt 、前後加速度NOGBW の最大値(最大減速度GNMAXt )が記憶される。本実施形態では、上記SF34およびSF35が、図13のスロットル弁開度区間最大値更新手段134、エンジン回転速度区間最大値更新手段136、前後加速度区間最大値更新手段136にそれぞれ対応している。
上記SF32乃至SF39のループ状ルーチンにおいて、SF36は、繰返し回数iが2であるときすなわちエンジン回転速度NE が最大となるときに、SF37において変速段SHIFT1を記憶場所MAXVAL5 に記憶させるためのものである。
上記ループ状ルーチンに続いて、SF40では、区間タイマCMAX3の内容が予め設定された設定区間KMAX3よりも小さいか否かが判断される。この設定区間KMAX3は、ニューラルネットワークNNに運転指向の推定を十分な応答性を以て実行させるために入力信号の最大値を繰り返し求めるための区間であり、たとえば3秒程度の値に設定される。上記SF40の判断が肯定された場合には、設定区間が未だ満了していないので、本ルーチンが終了させられる。しかし、上記SF40の判定が否定された場合は、SF41以下が実行される。
SF41では、加速(スポーツ)指向を示すフラグXSPORT の内容が「1」であるか否かが判断される。このSF41の判断が否定された場合は通常指向であって通常指向変速線図が選択される走行状態であるので、SF42においてブレーキ操作中であるか否かが判断される。このSF42の判断が肯定された場合は、SF43において前後加速度NOGBW が予め設定された判断基準値KAVEBKG(負の値)より低い値であるか否かが判断される。このSF43の判断が肯定された場合は、比較的強いブレーキ操作があった状態であるので、後述のSF46以下が実行されるが、否定された場合は、比較的弱いブレーキ操作であるので、SF45において区間内の最大値を記憶する記憶場所MAXVAL1 乃至 MAXVAL5の内容がクリアされた後、SF60において区間タイマCMAX3が再起動させられる。
また、前記SF42の判断が否定された場合は、SF44においてアクセル戻し操作が行われているか否かが判断される。このSF44の判断が否定された場合は、非制動操作での走行中であるので、後述のSF46以下が実行されるが、肯定された場合は、アクセルの戻し操作が行われた状態であるので、SF45において区間内の最大値を記憶する記憶場所MAXVAL1 乃至 MAXVAL5の内容がクリアされた後、SF60において区間タイマCMAX3が再起動させられる。すなわち、設定区間の経過が満了したときに、中間指向であって比較的弱い制動操作が行われたとき或いはアクセル戻し操作が行われたときには、ニューラルネットワークNNによる指向推定動作を演算させないようにされているのである。
前記SF41の判断が肯定された場合は、設定区間の経過が満了したときに加速指向である状態であるので、SF46において、保留させる回数を示す値NMODFの内容に「1」が加算される。そして、記憶場所MAXVALi に記憶された入力信号の最大値を、ニューラルネットワークNNに入力させる信号を記憶させるための記憶場所EVENT i に記憶させるように、SF47乃至SF56のループ状ルーチンが実行される。このSF47乃至SF56のループ状ルーチンでは、SF47において繰返し回数iとして「1」が設定されると、SF55においてその繰返し回数iに「1」が加算され、SF56において繰返し回数iが所定回数KMAXNUMに到達したと判断されるまでSF48乃至SF56が繰り返し実行される。
先ず、SF48において保留フラグXMODFの内容が「1」であるか否かが判断される。この判断が否定された場合は、SF49において、アクセル踏込速度(スロットル開度変化率)ACCTAが予め設定された判断基準値KACCTA よりも大きいか否かが判断される。この判断基準値KCCTAは、アクセルペダル58の比較的緩やかな踏み込みでも判断するための前記KACCTASよりも小さい値であり、たとえば1.3%程度の値が用いられる。上記SF49の判断が肯定された場合は、アクセルペダル58の再踏み込みがあった状態であるので、上記SF48において保留フラグXMODFの内容が「1」であると判定された場合と同様に、それまでにEVENT i に記憶された記憶値よりも現在の入力信号が大きいときだけ入力信号の区間最大値の書換えをしてEVENT i 内に記憶されることを許可するためのSF50が実行される。
しかし、SF49の判断が否定された場合は、アクセルペダル58の操作量がそれほど変化しない走行であって未だコーナー走行と同様の状態であると考えられることから、上記SF50の実行が回避され、SF51以下が実行される。
上記SF50においては、最大値記憶場所内の値MAXVALi がニューラル入力用記憶場所EVENT i 以上であるか否かが判断され、この判断が肯定された場合は、SF53においてMAXVALi の内容がEVENT i 内に記憶されるともに、SF54においてMAXVALi の内容がクリアされる。これにより、記憶場所MAXVAL1 乃至 MAXVAL4に記憶されたスロットル弁開度TA、エンジン回転速度NE 、前後加速度NOGBW 、アクセル戻し速度DECTA が、記憶場所EVENT1乃至EVENT4に記憶された値よりも大きいときだけその記憶場所EVENT1乃至EVENT4に記憶され、ニューラルネットワークNNへ出力される。なお、SF51において繰返し回数iが2であると判断されると、SF52において、エンジン回転速度NE の最大値の記憶と同期してMAXVAL5 に記憶された変速段SHIFT1がEVENT5内に記憶される。
そして、SF57において、保留回数NMODFが予め設定された判断基準値KMODFよりも小さいか否かが判断される。この判断基準値KMODFは、運転指向を誤って推定し易い入力信号を保留するための保留回数であり、たとえば「1」に設定される。上記SF57の判断が肯定された場合は未だ保留回数が満たない状態であるので、SF59において推定許可フラグXNNCAL の内容が「1」にセットされた後、SF60において区間タイマCMAX3が再起動させられる。
ここで、前記ループ状ルーチンではSF48において保留フラグXMODF の内容が「1」であると判断された場合、すなわち前記SF25の判断が肯定され、或いは前記SF26の判断が否定されたような場合には、SF48の判断が肯定されてSF50が実行されることから、入力信号の所定区間内の最大値がそれまでに記憶されたEVENT i 内の値よりも大きい場合のみそのEVENT i 内の値が更新され、入力信号の所定区間内の最大値がそれまでに記憶されたEVENT i 内の値よりも小さい場合には更新されない本実施形態では、そのSF50が図13の保留中更新手段140に対応している。
また、本実施形態では、アクセルペダル58の急開閉(チップイン)操作が発生していないときだけ(SF33)、SF35において入力信号の区間最大値の更新が行われるので、チップイン操作時の入力信号に基づく運転指向の推定が防止され、運転指向の推定精度が高められる。本実施形態では、SF33が図13のチップイン判定手段142に対応している。
図24は、最大車速算出手段98gに対応するルーチンを示している。図24のSG1では、所定のサンプリング周期で入力される車速Vが所定の記憶場所に記憶された最大車速Vmax (当初は「0」)以上であるか否かが判断される。このSG1の判断が否定された場合は本ルーチンが終了させられるが、肯定された場合はSG2において新たな車速Vが最大車速Vmax として記憶される。これにより、走行の開始以後における車速の最大値Vmax が決定される。
図28は、前記図6の変速線図切換手段92に対応する変速線図切換ルーチンを示している。図28において、SH1では、加速指向フラグXSPORT の内容が「1」であるか否かが判断される。このSH1の判断が肯定された場合は、SH2において、たとえば図3に示す加速指向の変速線図が選択されるが、否定された場合は、SH3において、中間指向フラグXNORMの内容が「1」であるか否かが判断される。このSH3の判断が肯定された場合は、SH4において、たとえば図4の中間指向の変速線図が選択されるが、否定された場合は、SH5において燃費指向フラグXECO の内容が「1」であるか否かが判断される。このSH5の判断が肯定された場合は、SH6においてたとえば図5の燃費指向の変速線図が選択されるが、否定された場合は本ルーチンが終了させられる。
図29は、前記図6の最高速ギヤ段禁止手段93に対応する最高速ギヤ段禁止ルーチンを示している。図29において、SI1ではシフトレバー78がDレンジへ操作されているか否かが判断される。このSI1の判断が否定された場合には、SI2において、シフトレバー78がDレンジよりも1段下のエンジンブレーキレンジへ操作されているか否かが判断される。このDレンジよりも1段下のエンジンブレーキレンジは、自動変速機14が4速ギヤ段を備えたものである場合は、3レンジであり、自動変速機14が5速ギヤ段を備えたものである場合は、4レンジである。
上記SI2の判断が肯定された場合は、シフトレバー78がDレンジよりも1段下のエンジンブレーキレンジからDレンジへ操作されたときの最高速ギヤ段へのシフトが可能となるように、SI9において最高速ギヤ段が許可される。しかし、上記SI2の判断が否定された場合は、シフトレバー78が自動変速機14が5速ギヤ段を備えたものである場合には3、2、Lレンジ、自動変速機14が4速ギヤ段を備えたものである場合には2、Lレンジの状態であるので、最高速ギヤ段が許可されることなく、本ルーチンが終了させられる。
前記SI1の判断が肯定された場合には、SI3において登坂制御中であるか否かが判断され、そのSI3の判断が否定された場合にはSI4において降坂制御中であるか否かが判断され、そのSI4の判断が否定された場合にはSI5において加速指向であるか否かすなわちニューラルネットワークNNの出力信号NNOUT が大であるときにセットされる加速指向を示すフラグXSPORT の内容が「1」であるか否かが判断される。上記登坂制御および降坂制御は、実際のスロットル弁開度TAおよび車速Vから求められる平坦路面での基準加速力に対して実際の車両加速力が大きいか或いは小さいかに従ってよく知られたルーチンによって判断される。
車両の駆動力或いはエンジンブレーキ力を得るために登坂制御中或いは降坂制御中である場合は、上記SI3或いはSI4の判断が肯定されるので、SI6において最高速ギヤ段が禁止される。また、ニューラルネットワークNNの出力信号NNOUT が大であって加速指向を示すフラグXSPORT の内容が「1」である場合は、上記SI5の判断が肯定されるので、SI6において最高速ギヤ段が禁止される。この最高速ギヤ段の禁止は、たとえば、自動変速機14が前進4段である場合には変速制御に用いられる変速線図に含まれる3→4シフトアップ線が除去され、自動変速機14が前進5段である場合には変速制御に用いられる変速線図に含まれる4→5シフトアップ線が除去されることにより行われる。
しかし、上記SI3、SI4、SI5の判断がいずれも否定された場合は、車両の定常(一定車速)走行であるか否かを判定するSI7の判断、およびニューラルネットワークNNの出力信号NNOUT がたとえば中間指向に対応する所定値K以下であるか否かを判定するSI8の判断がそれぞれ肯定されることを条件として、SI9において最高速ギヤ段が許可されることによりSI6の最高速ギヤ段の禁止が解除される。
次に、図30及び図31を参照して、本実施形態の特徴部分について説明する。
本実施形態では、以下に詳細に説明するように、信号機や一時停止線や前方車両などの前方障害の影響で、ブレーキが踏まれた場合(減速操作が行われた場合)には、その前方障害の影響によるブレーキ操作に対応する分がニューラルネットワークに反映することが抑制されるように制御する。前方障害の影響によるブレーキ操作は、運転指向を反映させたものではなく、前方障害の影響によるブレーキ操作に対応する分をそのままニューラルネットワークに入力すると、運転指向推定値が上昇してしまい、実際の運転指向との間に大きな乖離が生じてしまうためである。
ここで、上記前方障害とは、仮にそこで減速操作が行われたとしても、その減速操作は運転者の運転指向を反映したものではないとして予め設定された状況であり、例えば、信号機や一時停止線や前方車両などである。
図31を参照して、まず、従来技術(上記特許文献1の技術)の問題点について説明する。
t0の時点で、信号機や前方車両や一時停止線などの前方障害の影響で運転者がブレーキを踏んで制動を掛けても(ブレーキ302がON)、運転指向301は変化しない。
しかしながら、この場合、上記従来技術では、符号303に示すように、車両の前後加速度NOGBWが負側に増加して、t1の時点で判断基準値KSPBKGを超えて、図19のステップSE8の判定が否定されることにより、制動操作時の最大減速度GNMAXの算出条件が成立する。これにより、符号304に示すように、車両の前後加速度NOGBWに基づいて算出される制動操作時の最大減速度GNMAXの値が上昇してしまう。
また、上記従来技術の場合には、符号305a及び305bに示すように、図20のSF8において算出される所定区間Tx内の最大減速度GNMAXt を示す前後加速度NOGBW (絶対値)も上昇してしまう。符号305aで示す所定区間Tx内の最大減速度GNMAXt を示す前後加速度NOGBW (絶対値)は、第1の所定区間Tx1内の車両の前後加速度NOGBW303の最大値303aに対応した値であり、第1の所定区間Tx1の経過時であるt2の時点で入力される。符号305bで示す所定区間Tx内の最大減速度GNMAXt を示す前後加速度NOGBW (絶対値)は、第2の所定区間Tx2内の車両の前後加速度NOGBW303の最大値303bに対応した値であり、第2の所定区間Tx2の経過時であるt4の時点で入力される。
t0からt4の区間では、車両の前後加速度NOGBWに基づいて算出される所定区間Tx内の最大減速度GNMAXt を示す前後加速度NOGBW (絶対値)は、上記値305aから上記値305bまでの符号305で示す値となり、大きく上昇してしまう。
上記のように、制動操作時の最大減速度GNMAXの値304、及び所定区間Tx内の最大減速度GNMAXt を示す前後加速度NOGBW (絶対値)の値305が大きく上昇すると、ニューラルネットワークの入力値が上昇するため、運転推定指向値306も上昇し、実際の運転指向301との間に大きな乖離が生じてしまう。
そこで、本実施形態では、上記従来技術の問題点を抑制するために、図30の動作が行われる。
まず、ステップS001にて、現在の車両の前後加速度(負)の信号値mobgbw(i)が算出される。次に、ステップS002にて、ブレーキがONであるか否かが判定される。図31のt0に時点でブレーキ302がONであるので、ステップS003にて前方障害の影響の有無が判定される。前方障害の影響の有無は、レーダー87、カメラ88及びナビゲーションシステム装置89のそれぞれから出力される情報に基づいて判断される。
ステップS003にて、前方障害の影響があると判定された場合(ステップS003−Y)には、ステップS004にて、その前方障害の影響が発生した後の車両の前後加速度(負)の値は無視され、その前方障害の影響が発生する直前の車両の前後加速度(負)の値mobgbw(i-1)が車両の前後加速度NOGBWとして格納される。図31の符号403aで示す値が、その前方障害の影響が発生する直前の車両の前後加速度(負)の値mobgbw(i-1)であり、その値403aが車両の前後加速度NOGBWとして格納される。
その後の次サイクル以降の制御フローのステップS004において、ブレーキ302がONであって(ステップS002−Y)、かつ前方障害の影響がある場合(ステップS003−Y)には、その前方障害の影響が発生した後の車両の前後加速度(負)の値は無視されるため、図31の符号403aで示す値が保持されて、符号403で示す値が車両の前後加速度NOGBWとなる。
一方、その後の次サイクル以降の制御フローのステップS004において、ブレーキ302がONではないと判定された場合(ステップS002−N)には、上記ステップS001にて算出された現在の車両の前後加速度(負)の信号値mobgbw(i)が車両の前後加速度NOGBWとして格納される。t3の時点でブレーキ302がOFFになっているため、その時点の現在の車両の前後加速度(負)の信号値mobgbw(i)である符号403bで示す値が車両の前後加速度NOGBWとして格納される。t0からt4の区間では、車両の前後加速度NOGBWは、上記値403aから上記値403bまでの符号403で示す値となる。
次に、ステップS006では、制動操作時の最大減速度GNMAXが算出される。この場合、符号403で示す車両の前後加速度NOGBWは、判断基準値KSPBKGを超えないため、図19のステップSE8の判定が肯定されることにより、制動操作時の最大減速度GNMAXの算出条件が成立しない。これにより、符号404に示すように、制動操作時の最大減速度GNMAXの値は0のままである。
次に、ステップS007では、所定区間Tx内の最大減速度GNMAXt を示す前後加速度NOGBW (絶対値)が算出される。即ち、所定区間Tx内の最大減速度GNMAXt を示す前後加速度NOGBW (絶対値)が、図20のSF8において算出される。
符号405aで示す所定区間Tx内の最大減速度GNMAXt を示す前後加速度NOGBW (絶対値)は、第1の所定区間Tx1内の車両の前後加速度NOGBW403の最大値403aに対応した値である。符号405bで示す所定区間Tx内の最大減速度GNMAXt を示す前後加速度NOGBW (絶対値)は、第2の所定区間Tx2内の車両の前後加速度NOGBW403の最大値403bに対応した値である。t0からt4の区間では、車両の前後加速度NOGBWに基づいて算出される所定区間Tx内の最大減速度GNMAXt を示す前後加速度NOGBW (絶対値)は、上記値405aから上記値405bまでの符号405で示す値となり、大きな上昇が抑制される。
上記のように、本実施形態によれば、前方障害の影響でブレーキが踏まれた場合(ステップS002−Y、ステップS003−Y)には、符号403で示すように前後加速度NOGBWが保持され(ステップS004)、ニューラルネットワークに対する入力情報である制動操作時の最大減速度GNMAX及び前後加速度(負)NOGBWの所定区間Tx内の最大値GNMAXtの上昇が抑制され(ステップS006、ステップS007)、前方障害の影響がニューラルネットワークに反映されることが抑制される。これにより、運転推定指向値406の上昇が抑制され、実際の運転指向301との間に大きな乖離が生じることが抑制される。
なお、上記の変形例として以下の構成が考えられる。上記では、ブレーキ302がONからOFFに変わったとき(t3の時点)の現在の車両の前後加速度(負)の信号値mobgbw(i)である符号403bで示す値が車両の前後加速度NOGBWとして格納され、その値403bに対応して、第2所定区間Tx2内の最大減速度GNMAXt を示す前後加速度NOGBW (絶対値)405bが設定されている。この値405bがt4時点で入力されるため、t4時点以前に比べて、車両の前後加速度NOGBWに基づいて算出される所定区間Tx内の最大減速度GNMAXt を示す前後加速度NOGBW (絶対値)405が極めて僅かながら上昇している。これにより、運転指向推定値406は、実際の運転指向301に比べて若干上昇した値となっている。
これを抑制するためには、上記に代えて、ブレーキ302がONからOFFに変わったとき(t3の時点)から予め設定された所定時間経過後(例えばt5時点)の現在の車両の前後加速度(負)の信号値mobgbw(i)である値503bが車両の前後加速度NOGBWとして格納されるように構成することができる。上記所定時間は、タイマ(図示せず)により計測されることができる。
車両の前後加速度NOGBW(303)は、ブレーキ302がONからOFFに変わったとき(t3の時点)から時間の経過と共に漸次0に近づく。上記構成によれば、ブレーキ302がONからOFFに変わったとき(t3の時点)の値403bよりも0に近い値503bが車両の前後加速度NOGBWとして格納され、その値503bに対応して、第2所定区間Tx2内の最大減速度GNMAXt を示す前後加速度NOGBW (絶対値)(図示せず)が設定されることができる。これにより、運転指向推定値(図示せず)と実際の運転指向301との乖離を更に小さく抑えることができる。
上記図31の例では、運転者による減速操作としてブレーキ302の操作が行われたときの動作が説明されたが、ブレーキ302の操作に代えて、運転者によるアクセルのオフ操作が行われた場合にも本実施形態は適用可能である。即ち、図20のステップS002では、ブレーキONの判定に代えて、アクセルオフの判定が行われ、前方障害の影響によるアクセルオフが行われた場合には、その前方障害の影響によるアクセルオフが行われる直前の前後加速度(負)の値mobgbw(i-1)が車両の前後加速度NOGBWとして格納される(ステップS004)。これにより、所定区間Tx内の最大減速度GNMAXt を示す前後加速度NOGBW (絶対値)の上昇が抑制されるため、運転指向推定値と実際の運転指向の乖離が抑制される。
上記では、運転者による減速操作の例として、ブレーキ302の操作及びアクセルオフについて説明したが、それらの他に、運転者によるマニュアルダウンシフトを含めることができる。
上記では、ブレーキ302がONであって(ステップS002−Y)、かつ前方障害の影響がある場合(ステップS003−Y)には、その前方障害の影響が発生した後の車両の前後加速度(負)の値は無視されて、その前方障害の影響が発生する直前の車両の前後加速度(負)の値mobgbw(i-1)が車両の前後加速度NOGBWとして格納された(ステップS004)。これに代えて、前方障害の影響により運転者によるブレーキONが行われた場合には、前方障害の影響により運転者によるブレーキONが行われた前後における車両の前後加速度の変化が実際の値よりも小さくなるように前後加速度を補正することができる。即ち、上記のように前方障害の影響が発生した後の車両の前後加速度(負)の値は無視されるのではなく、実際の前後加速度よりも、前方障害の影響が発生する直前の前後加速度の値に近い値に補正されることができる。この場合にも、従来技術に比べて、運転指向推定値と実際の運転指向の乖離を抑制することが可能である。
以上、本発明の一実施形態を示す図面に基づいて説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
たとえば、前述の実施形態において、運転指向推定手段100のニューラルネットワークNNには、発進時のスロットル弁開度TAST、アクセル踏込時の最大スロットル弁開度変化率ACCMAX 、制動時最大減速度MAXBKG、惰行走行時間TCOAST 、車速一定走行時間TVCONSTが入力されていたが、それらのうちの何れか1つ或いはその何れか1つ以上が入力されていても一応の信頼性のある推定が可能である。
また、前述の実施形態では、運転指向が、ニューラルネットワークNNの出力から加速指向、中間指向、燃費指向の3段階に推定されていたが、加速指向と燃費指向との2段階に推定されてもよい。さらに加速指向と燃費指向の間を連続的に推定されてもよい。このような場合には、加速指向と燃費指向との間の指向は、ニューラルネットワークNNの補完機能により推定される。
また、高速道路、郊外道路、山岳道路、市街道路などの道路状況を示す信号値が、所定の道路状況検出手段により或いは手動入力手段により、前記ニューラルネットワークNNへの指標信号として入力されてもよい。前述の実施形態においてニューラルネットワークNNへ指標として入力されている信号は道路状況によっても影響を受けるので、上記のようにすれば、運転指向の推定精度が一層高められる。
また、前述の実施形態において、所定時間T2 内に算出されたニューラルネットワークNNへの指標信号値に、推定時刻までの時間差の重みを付して加算した値を、新たな指標信号としてニューラルネットワークNNへ入力してもよい。このようにすれば、過去の履歴を考慮した推定ができるので、外乱の影響を受けがたく、運転指向の推定精度が一層高められる。
また、前述の実施形態の車両旋回判定手段138は、舵角センサにより検出された舵角が所定値を越えたことを以て車両旋回と判定するものであってもよい。
また、前述の実施形態の運転指向推定手段100のニューラルネットワークNNは、入力層、中間層、出力層からなる3層構造であったが、4層以上の階層型であってもよいし、各神経細胞要素が相互に結合された相互結合型であっても差支えない。
また、前述の実施形態では、スロットルセンサ70からの信号を用いて、アクセルペダル58の操作量およびスロットル弁開度TAが求められていたが、アクセルペダル58の操作量Accを検出するアクセルペダルセンサを独立に設けることによりアクセルペダル58の操作量を直接検出するようにしてもよい。
また、前述の実施形態では、スロットル弁開度TAおよび最大スロットル弁開度変化率ACCTA が用いられていたが、ディーゼルエンジン搭載車のようにスロットル弁68が設けられていない車両などでは、それらスロットル弁開度TAおよび最大スロットル弁開度変化率ACCTA に替えて、アクセルペダル操作量およびアクセルペダル踏込速度が用いられ得る。
また、前述の実施形態の自動変速機14は所謂A/Tとして知られる遊星歯車式の多段変速機であったが、たとえば特開平2−271149号公報に記載されているベルト式無段変速機であってもよい。
さらに、上記においては、運転指向を推定する手段として、ニューラルネットワークNNが用いられたが、ニューラルネットワークに限定されず、例えば、遺伝的アルゴリズムのような人工知能システム(最適化手法、ソフトコンピューティング)を用いた情報処理機構を用いることができる。このような情報処理機構を用いた場合であっても、運転者の操作量及び車両の状態量の少なくともいずれか一方に対応する変数にフィルタ処理を施す際のフィルタ定数を道路勾配(登降坂)に応じて変更することで、登降坂路における運転推定指向値の誤判定を抑制することができる。
なお、上述したのはあくまでも本発明の一実施形態であり、本発明はその主旨を逸脱しない範囲において種々変更が加えられ得るものである。