JP4988992B2 - エナメル線の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、巻線加工性に優れたエナメル線を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、エナメル線からモーター用コイル等を作成する際に作業性を上げるために高速自動巻線機を使用することが多くなっている。また、コイルの軽量化、省スペースのために高密度に、即ち整列巻きして巻線することも多い。
【0003】
高速自動巻線機を使用して巻線作業を行う場合には、エナメル線の導体には張力がかかるため、導体はある程度の強度を有していなければならない。一方、高密度にエナメル線を巻く場合にはエナメル線同士が狭い領域に密に整列するような柔軟性も併せ持っていなければならない。従来、エナメル線用の導体は、最終線径に至るまで伸線加工を行い、エナメルコーティングを行う前に加熱焼鈍をしていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のような従来の技術には、次のような解決すべき課題があった。
即ち、高速自動巻線機により巻線作業を行う場合、エナメル線導体は前記したように強度と柔軟性を併せ持っていなければならないが、張力が付加されながら巻線作業が行われた場合、強度が弱いと導体が伸び、線径が減少して精密に巻線作業を行えないという問題があった。また、線径が減少すると導体の抵抗値が上がり、電気特性が劣化するという問題もあった。
【0005】
このような現象を緩和するために導体の強度、即ち0.2%耐力を上げ、導体の伸びを抑えて線径の減少を防止することも考えられている。従来用いられてきたエナメル線は、例えば最終線径が0.6mmの場合、最終線径に至る直前に90%以上の加工率で伸線し、次いで約400℃で加熱焼鈍して使用していたが、このままでは強度が不足しているために焼鈍した後ロール加工を施して0.2%耐力を上げるようにした。しかし、このようにすると柔軟性を表す指標であるスプリングエロンゲーション値が低下し、導体が硬くなり過ぎて巻線作業時にエナメル線が反発して膨らみが生じてしまうという問題が出てきた。
【0006】
本発明は、上記のような問題点を解決し、強度(0.2%耐力)を有しながらなおかつ充分な柔軟性(スプリングエロンゲーション値)も有し、高速自動巻線機による巻線作業時においても線径の減少が少なく、かつエナメル線が反発して膨らむような現象のないエナメル線の製造方法を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は以上の点を解決するため次の構成を採用する。
【0008】
〈構成1〉
導体の周囲にエナメル絶縁層を設けたエナメル線を加工する方法であって、前記導体を最終線径に至る直前に75%以上86%以下の加工率で伸線し、400℃で加熱焼鈍した後の0.2%耐力が120MPaの導体を、複数のロール間を通しながらロール加工を施して、前記導体の0.2%耐力を150MPa以上でかつ柔軟性がスプリングエロンゲーション値で200mmよりも柔軟になるように加工することを特徴とするエナメル線の製造方法。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明においては最終線径に至る直前の加工率を75%以上86%以下で伸線する。加工率が70%未満では充分な強度が得られず、その後にロール加工を施したとしても高速自動巻線機による巻線作業に耐えられない虞があるためで、逆に加工率が90%を超えると導体にロール加工を施した後のスプリングエロンゲーション値が充分に高くならないからである。
【0014】
スプリングエロンゲーション値は高速自動巻線機による巻線作業時には200以上が好ましく、さらには230以上あれば柔軟性も充分であり、巻線作業時の導体の反発も見らず、整列巻性に優れた導体を得ることができる。スプリングエロンゲーション値が200未満では柔軟性に欠け、巻線作業時に導体が反発してコイルが膨らむ現象が生じる虞が大きくなるからである。
【0015】
ここで、スプリングエロンゲーション値を求める方法について説明すると、スプリングエロンゲーション法はJISC3003に規定されている導体の柔軟性を測定する方法であり、線径が0.1mmから1.6mmまでの導体の柔軟性の測定に適用される。
【0016】
具体的には、図3に示すように(1)試験片31の導体径の10倍の径を持つ巻き付け用マンドレル32を固定した横軸チャック33に試験片の一端を止め、他端に導体断面積(mm2)当たり700gの質量のおもり34をつるす。(2)マンドレル32を約50回/minの回転速度で回転させ、線と線が接触するように標線間を巻き付ける。(3)マンドレル32に巻いた試験片を押さえ、おもり34を取り外し、ゆっくり戻してマンドレル32から抜き取る。この抜き取ったコイルの長さl1(mm)を測定する。(4)試験コイル35の一端を縦軸チャック36に固定し、他の一端に(1)と同様に700gのおもり37を試験コイル35が伸びない状態で取り付け、支持台38に載せる。(5)支持台38を約50mm/sの速度で下降させ、おもり37が支持台38から離れてから1分間保持した後、おもり37を試験コイル35から静かに取り外し、1分間放置した後コイルの長さl2(mm)を測定する。(6)スプリングエロンゲーション値ΔL(mm)はΔL=l2―l1の式から求めるものである。このスプリングエロンゲーション値が大きいほど柔軟性が高いことになる。
【0017】
【実施例】
図1は本発明の実施例及び比較例について加工率、0.2%耐力、スプリングエロンゲーション値等を示す。いずれも導体の線径は0.6mmである。
【0018】
実施例1は、導体の最終線径である0.6mmに至る直前の加工率を86%としたもので、400℃で焼鈍した後の0.2%耐力は120MPaであった。この値は従来の製造方法による導体の値と同等であったが、このままでは0.2%耐力が低く充分な強度を有していないため、図2に示すように導体1を複数のロール2、2、・・・間を通しながらロール加工を施し強度を上げた。その結果0.2%耐力は160MPaとなり充分な強度を有するようになった。本実施例の場合、加熱焼鈍後のスプリングエロンゲーション値は400と高い値が得られ、ロール加工を施した後でも240と高い値に止まり、充分な柔軟性を有していることが明らかとなった。この導体に6kgfの張力をかけて導体径の減少を測定してみたところ線径の減少は約15μmであった。
【0019】
次に実施例2は、導体の最終線径である0.6mmに至る直前の加工率を実施例1より低い75%としたもので、400℃で焼鈍した後の0.2%耐力はやはり120MPaであったが、スプリングエロンゲーション値は実施例1より高く410であった。このままでは実施例1と同様に0.2%耐力が低く充分な強度を有していないため、導体の強度を上げるためにロール加工を施し、0.2%耐力を150MPaとしたが、スプリングエロンゲーション値は実施例1よりさらに高い値である280が得られた。この時の線径の減少は実施例1より同様約15μmであった。
【0020】
それに対して比較例1は従来の方法で製造した導体の特性を示したものであり、最終線径である0.6mmに至る直前の加工率が91%であり、その後400℃で加熱焼鈍すると、0.2%耐力は120MPaであった。またこの導体のスプリングエロンゲーション値は310であった。本比較例では柔軟性は充分であったが強度が弱く、線径の減少は約30μmであった。
【0021】
一方比較例2では、比較例1と同様に最終線径である0.6mmに至る直前の加工率が91%であり、その後400℃で加熱焼鈍して製造した導体について、0.2%耐力を上げるためにロール加工を施した。本比較例では0.2%耐力は150MPaまで高くなり、充分な強度が得られ、線径の減少は約15μmと比較例1に比べても大きく改善されたがスプリングエロンゲーション値が180となり、柔軟性が大きく損なわれる結果となった。
【0022】
このように最終線径に至る直前の伸線加工率を75%以上86%以下と設定したことにより、強度も柔軟性もともに兼ね備えたエナメル線用導体を得ることができた。また、伸線加工率を上記の範囲内でより低くした方が柔軟性の指標であるスプリングエロンゲーション値をより高くできるようになった。
【0023】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、最終線径に至る直前の伸線加工率を75%以上86%以下に設定したことにより、その後の加熱焼鈍処理及びロール加工を施して0.2%耐力が150MPa以上と充分な強度を有するようになりしかも柔軟性の指標であるスプリングエロンゲーション値も200以上有するエナメル線用導体を製造することができるため、高速自動巻線機による巻線作業時においても線径の減少が少なく、導体の反発によるコイルの膨らみのないエナメル線を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を説明する図である。
【図2】導体に施すロール加工を説明する図である。
【図3】スプリングエロンゲーション法を説明する図である。
【符号の説明】
1 導体
2 ロール
Claims (1)
- 導体の周囲にエナメル絶縁層を設けたエナメル線を加工する方法であって、
前記導体を最終線径に至る直前に75%以上86%以下の加工率で伸線し、400℃で加熱焼鈍した後の0.2%耐力が120MPaの導体を、複数のロール間を通しながらロール加工を施して、前記導体の0.2%耐力を150MPa以上でかつ柔軟性がスプリングエロンゲーション値で200mmよりも柔軟になるように加工することを特徴とするエナメル線の製造方法。
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