JP6729218B2 - 平角絶縁電線の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、平角絶縁電線およびその製造方法に関する。
回転電機(モータ)や変圧器などの電気機器にはコイルが組み込まれている。コイルは、導体の外周上に絶縁被覆が形成された絶縁電線を巻回されて形成されている。
近年、自動車などに使用されるモータには高容量化や小型化が求められており、そのモータに組み込まれるコイルには占積率(コイルの断面積に占める導体の断面積の比率)の向上が求められている。そのため、コイルを形成する絶縁電線としては断面が矩形状の平角導体を用いた平角絶縁電線が用いられるようになっている(例えば、特許文献1を参照)。平角絶縁電線は、例えば樹脂成分を有機溶媒に溶解させた絶縁塗料を平角導体の外周上に塗布・焼付する方法により平角導体の外周上に絶縁被覆を形成して作製される。
また、断面が円形状の円形導体の外周上に絶縁被覆を形成して円形絶縁電線を作製した後、円形絶縁電線を圧延して平角状に加工して平角絶縁電線を作製する方法が提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
特開平10−31921号公報 特開平11−16428号公報 特開2016−137513号公報
一方、コイルにはモータの高出力化にともなってより高い絶縁性が求められるようになっている。そのため、平角絶縁電線においては絶縁被覆の厚さを50μmよりも厚くかつ絶縁被覆の外周方向において均一な厚さにすることが検討されている。
平角導体の表面に絶縁塗料を塗布し、焼付けすることによって平角導体の表面上に絶縁被覆を形成する方法では、絶縁被覆を均一な厚さとなるように形成しにくく、所望の絶縁性を確保できないことがある。すなわち、上記方法では、平角導体の外周上に絶縁塗料を均一な厚さで塗布した後に焼付けて絶縁被覆を形成することになるが、塗布後から焼付けるまでの間に平角導体の角部上における絶縁塗料が表面張力で流れ出し、角部での絶縁被覆の厚さが他の箇所よりも薄くなることがある。これにより、絶縁被覆では厚さを厚くするほど絶縁被覆の外周方向での厚さが不均一となり、所望の絶縁性を確保しにくくなる。
また、特許文献2、3に記載の方法では、絶縁被覆の厚さを厚くした場合の厚さの均一性について更なる検討の余地があった。すなわち、特許文献2、3に記載の方法では、厚さを厚くするほど、外周方向での厚さが不均一となり、絶縁被覆の付き回りが不十分となることが考えられる。この理由としては、円形絶縁電線に使用する円形導体が加工しにくく、圧延によって円形絶縁電線を平角絶縁電線に加工するときの圧力(応力)を高くする必要があるためである。圧延の圧力を高くすると、例えば圧延ローラなどから絶縁被覆に加わる圧力が高くなり、絶縁被覆に永久歪を生じさせ、外周方向での絶縁被覆の厚さが不均一となる。また、絶縁被覆の表面は圧延ローラなどによって損傷しやすくなる。
本発明は、上記課題に鑑みて成されたものであり、平角絶縁電線において圧延による絶縁被覆表面の傷を抑制しながらも、絶縁被覆の厚さを外周方向で均一にかつ厚く形成する技術を提供することを目的とする。
本発明の態様によれば、
円形絶縁電線が圧延加工されてなり、絶縁被覆の厚さが50μmよりも厚い平角絶縁電線の製造方法であって、
銅材料からなる断面が円形状の円形導体を準備する準備工程と、
前記円形導体の外周を熱硬化性樹脂から形成される前記絶縁被覆で被覆し円形絶縁電線を形成する被覆工程と、
前記円形絶縁電線を圧延して断面が平角状となるように加工することで、前記銅材料からなる断面が矩形状の平角導体の外周上に前記絶縁被覆が設けられた平角絶縁電線を形成する圧延工程と、
前記圧延工程の後、前記平角絶縁電線を加熱する焼鈍工程と、を有し、
前記準備工程では、前記銅材料として、チタン濃度が5mass ppm以上55mass ppm以下、硫黄濃度が3mass ppm以上12mass ppm以下、酸素濃度が2mass ppm以上30mass ppm以下、残部が銅と不可避不純物からなり、前記酸素濃度に対する前記チタン濃度の比率が2.0以上4.0以下である銅材料からなる円形導体を準備し、
前記圧延工程では、前記平角絶縁電線の前記絶縁被覆の外周方向における最大厚さと最小厚さとの差が10μm以下とする、平角絶縁電線の製造方法が提供される。
本発明によれば、絶縁被覆表面の傷が少なく、厚さが外周方向で均一で厚い平角絶縁電線を得ることができる。
本発明の一実施形態に係る平角絶縁電線の長さ方向に垂直な断面図である。 平角絶縁電線を製造するために用いる円形絶縁電線の長さ方向に垂直な断面図である。
以下、本発明の一実施形態に係る平角絶縁電線について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る平角絶縁電線の長さ方向に垂直な断面図である。図2は、平角絶縁電線を製造するために用いる円形絶縁電線の長さ方向に垂直な断面図である。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本実施形態の平角絶縁電線1は、後述するように、図2に示す断面が円形状である円形導体21の外周上に絶縁被覆12が設けられた円形絶縁電線2を圧延により平角状に形成されたものであり、図1に示すように、平角導体11と絶縁被覆12とを備えて構成される。この平角絶縁電線1は、例えば幅方向に曲げてエッジワイズ加工されることでコイルに形成される。
平角導体11は、圧延により円形絶縁電線2を平角絶縁電線1に加工する際、円形導体21が圧延され厚さに対して幅が大きな矩形状に形成された導体である。
上述したように、円形導体21が硬く加工しにくい場合、円形絶縁電線2を平角絶縁電線1に圧延加工するときの圧力(応力)を高くする必要があるため、平角絶縁電線1の絶縁被覆12では傷が生じたり、付き回りが悪くなったりすることがある。この課題を解決する方法について本発明者らが検討したところ、円形導体21を形成する銅材料について、不純物である硫黄(S)や酸素(O)の濃度を小さくするとともに、チタン(Ti)を微量配合して酸素濃度に対するチタン濃度の比率を所定範囲とするとよいことが見出された。具体的には、銅材料は、チタン濃度が5mass ppm以上55mass ppm以下、硫黄濃度が3mass ppm以上12mass ppm以下、酸素濃度が2mass ppm以上30mass ppm以下、残部が銅と不可避不純物からなり、酸素濃度に対するチタン濃度の比率が2.0以上4.0以下である。
このような銅材料は、一般的なタフピッチ銅(TPC)や無酸素銅(OFC)と比べて、半軟化温度以上の温度で加熱焼鈍したときに耐力を低くできる。そのため、本実施形態の銅材料はより小さな応力で塑性変形させることができ、加工性に優れることになる。つまり、円形導体21を上記銅材料で形成することで円形導体21を矩形状に加工しやすくなり、円形絶縁電線2を圧延により平角絶縁電線1に加工するときの圧力を低減することができる。これにより、過度な圧力によって絶縁被覆12の表面が傷つくことを抑制するとともに、絶縁被覆12の外周方向での厚さのバラつきを抑制することができる。また、このような銅材料で円形導体21を形成することで、最終的に得られる平角絶縁電線1における平角導体11の耐力を低く維持することが可能となる。これにより、平角絶縁電線1をエッジワイズ加工によりコイルに形成するときの割れを抑制することができる。
具体的には、円形導体21を形成する銅材料の耐力は0.2%耐力で80MPa以下であることが好ましく、70MPa以下であることがより好ましい。このような銅材料を円形導体21に用いることで、平角導体11を構成する銅材料の0.2%耐力を上記範囲に調整することができ、平角絶縁電線1をエッジワイズ加工させやすくできる。なお、0.2%耐力とは、応力−ひずみ曲線において、荷重を除荷したとき0.2%の塑性ひずみを生じさせる応力のことであり、応力−ひずみ曲線において、ひずみ軸の0.2%、応力0(ゼロ)の点から、弾性係数に平行に線を引いて応力−ひずみ曲線との交点の応力を0.2%耐力として求めたものである。
また、本実施形態の銅材料は、耐力が低くて加工性に優れるだけでなく、OFCなどと比べて伸び率が高い。OFCなどでは、高温度の焼鈍により銅の結晶粒が粗大化し粗大な結晶組織が形成されてしまい、これによって伸び率が損なわれてしまう。これに対して、本実施形態の銅材料では、Tiを含むことによって、高温度で焼鈍したとしても銅の結晶粒の粗大化が抑制され、微細結晶組織を維持できるので、伸び率を高く維持することが可能となる。つまり、平角導体11は、円形導体21を圧延した後に焼鈍させることで高い伸び率を有することになる。このような平角導体11によれば、平角絶縁電線1をエッジワイズ加工させやすく、曲げ加工性を向上できる。
具体的には、円形導体21を形成する銅材料は伸び率が25%以上であることが好ましい。このような銅材料を円形導体21に用いることで、平角導体11を構成する銅材料の伸び率を上記範囲に調整することができ、平角絶縁電線1をエッジワイズ加工させやすくできる。なお、伸び率は、引張り試験片の初期の標点距離をL0、破断後の同距離をLとするとき、次の式で表せるものである。伸び率={(L−L0)/L0}×100[%])である。
さらに、本実施形態の銅材料は、OFCと同程度の純度であるが、Tiを所定量含むことで、より純度の高い6N銅(6N:99.9999%)と同程度の半軟化温度を有する。具体的には、この銅材料は、半軟化温度が150℃以下(例えば130℃程度)であり、OFCの半軟化温度(220℃程度)よりも低い半軟化温度を有し、高純度銅の半軟化温度(130℃程度)と同程度の半軟化温度を有する。そのため、平角導体11を上記銅材料で形成することで、後述するように平角絶縁電線1を焼鈍して伸び率を回復させるときに、絶縁被覆12の熱劣化を抑制することができる。なお、半軟化温度とは、鋳造圧延材を冷間加工した2.6mm硬銅線を100〜500℃のソルトバス中で1時間の加熱を行った後、常温で引張強さを測定し、加熱前の引張強さの値と加熱1時間後の引張強さの値との中間の値まで引張強さが低下するときの加熱温度である。
絶縁被覆12は平角導体11の外周上に設けられている。絶縁被覆12は熱硬化性樹脂から形成され、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミドおよびポリエステルイミドの少なくとも1つから形成されることが好ましい。絶縁被覆12は、例えば、樹脂成分を有機溶媒に溶解させた樹脂塗料を平角導体11の外周上に塗布し焼付けることによって形成することができる。
絶縁被覆12は、円形絶縁電線2を矩形状に加工する際の圧延によって所定の圧力が加えられるが、本実施形態では、平角導体11を低い圧力で塑性変形する加工しやすい銅材料で形成し、圧延の圧力を低減しているため、絶縁被覆12に加わる圧力を低くすることができる。そのため、絶縁被覆12は、高圧力で圧延したときに生じやすい偏肉が抑制され、外周方向での厚さのバラつきが小さく、外周方向での最大厚さと最小厚さとの差が10μm以下となる。また、高圧力で圧延したときに生じやすい傷が抑制され、表面外観に優れることになる。
絶縁被覆12の厚さは、特に限定されず、絶縁電線1に求められる電気特性に応じて適宜変更するとよい。本実施形態では、円形絶縁電線2から平角絶縁電線1を加工するときの圧力を軽減できるので、絶縁被覆12を厚く形成してもその損傷を抑制することができる。絶縁被覆12の厚さとしては、好ましくは50μm超、より好ましくは80μm以上とすることができる。その上限値としては形成のしやすさから180μm以下が好ましく、150μm以下がより好ましい。
次に、上述した平角絶縁電線1を製造する方法について説明する。本実施形態の製造方法は、準備工程、被覆工程、圧延工程および焼鈍工程を有する。
まず、準備工程において、上記銅材料からなる断面が円形状の円形導体21を準備する。円形導体21としては、例えば、チタン濃度が5mass ppm以上55mass ppm以下、硫黄濃度が3mass ppm以上12mass ppm以下、酸素濃度が2mass ppm以上30mass ppm以下、残部が銅と不可避不純物からなり、酸素濃度に対するチタン濃度の比率が2.0以上4.0以下である銅材料からなる荒引線を伸線により細径化して形成される銅合金線などを用いることができる。この円形導体21は、後述の圧延工程での圧延の応力を軽減する観点からは、所定の組成を有するとともに、伸び率が25%以上、0.2%耐力が80MPa以下である銅材料から形成されることが好ましい。なお、円形導体21は、耐力や伸び率を上記範囲内とするために適宜加熱焼鈍されていてもよい。また、円形導体21の外径は特に限定されず、最終的に得られる平角導体11の断面積に応じて適宜変更するとよい。
続いて、被覆工程において、円形導体21の外周上に熱硬化性樹脂から形成される絶縁被覆12を形成する。例えば、円形導体21の外周に、樹脂成分を有機溶媒に溶解させた樹脂塗料を塗布し焼付けることにより、円形の絶縁被覆12を形成する。これにより、図2に示すような断面が円形の円形絶縁電線2を得る。
樹脂塗料としてはポリイミド塗料、ポリアミドイミド塗料およびポリエステルイミド塗料を用いるとよく、絶縁被覆12をポリイミド、ポリアミドイミドおよびポリエステルイミドの少なくとも1つで形成することが好ましい。
続いて、圧延工程において、円形絶縁電線2を圧延して断面が矩形状となるように加工する。これにより、円形導体21を平角状の平角導体11に変形させ、平角導体11の外周に絶縁被覆12が設けられた平角絶縁電線1を得る。
本実施形態では、円形導体21は、所定の組成を有し耐力が低くかつ伸び率が高い銅材料から形成され、比較的低い圧力で塑性変形させることができるので、圧延のときの圧力を低く設定することができる。そのため、円形絶縁電線2を圧延するときに絶縁被覆12に加わる圧力を低くすることができる。これにより、平角絶縁電線1の絶縁被覆12において、高圧力で圧延したときに生じやすい偏肉を抑制し、それによる厚さのバラつきを小さくすることができる。具体的には、絶縁被覆12の外周方向における最大厚さと最小厚さとの差を10μm以下に抑制し、絶縁被覆12の厚さを均一にすることができる。しかも、圧力を低くすることで、絶縁被覆12表面の損傷を抑制することができる。すなわち、圧延の圧力を低くすることで、絶縁被覆12の厚さを均一に維持しつつ、その表面での傷を少なくすることができる。
なお、圧延工程では、例えば圧延ロールを用いて圧延するとよい。
続いて、焼鈍工程において、圧延工程で得られた平角絶縁電線1を加熱する。これにより平角導体11を焼鈍して圧延工程で平角導体11に生じた加工歪を緩和し、耐力を低くするとともに、圧延により低下した伸び率を回復させることができる。具体的には、平角導体11は、0.2%耐力が80MPa以下、伸び率が25%以上となることが好ましい。耐力および伸び率を上記範囲とすることにより、平角導体11の曲げ加工性を向上させ、平角絶縁電線1をコイル加工しやすくすることができる。
焼鈍工程での加熱条件は、特に限定されないが、平角導体11を構成する銅材料は所定の組成を有し半軟化温度が低いので、加熱温度を低くすることができ、例えば、150℃以上400℃以下の範囲とすることができる。そのため、焼鈍工程において絶縁被覆12の熱による劣化を抑制することができる。また、加熱時間は、特に限定されず、絶縁被覆材に影響を及ぼさない条件に設定とするとよい。
以上により、本実施形態の平角絶縁電線1を製造する。
本実施形態では、円形絶縁電線2を圧延により矩形状に加工し平角絶縁電線1を製造するが、円形絶縁電線2における円形導体21を、所定の組成を有し低い圧力で加工しやすい銅材料で形成している。これにより、圧延の圧力を低く設定することができ、高圧力で圧延する場合に生じやすい絶縁被覆12における厚さのバラつきを抑制することができる。具体的には、絶縁被覆12の外周方向における最大厚さと最小厚さとの差を10μm以下とすることができる。また、低圧力で圧延することにより、絶縁被覆12の表面の損傷を抑制することができる。しかも、本実施形態では、絶縁被覆12を厚さ50μm超〜180μm以下の範囲で厚く形成するような場合であっても、絶縁被覆12の厚さを均一に維持しつつ、表面の損傷を抑制することができる。
次に、本発明について実施例に基づき、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
<平角絶縁電線の作製>
(実施例1)
まず、円形導体として、下記表1に示す組成を有する外径1.75mmの銅材料を準備した。この銅材料の外周にポリイミド塗料を塗布し焼付けることにより絶縁被覆を形成し、円形絶縁電線を作製した。この円形絶縁電線を圧延機を用いて断面が矩形状となるように圧延することで、円形導体を平角導体に変形し平角絶縁電線を作製した。その後、温度200℃未満で加熱して焼鈍することにより、実施例1の平角絶縁電線を得た。なお、実施例1では、平角導体の幅が2.0mm、厚さが1.2mm、絶縁被覆の厚さが100μmとなるように平角絶縁電線を作製した。
Figure 0006729218
(実施例2,3、比較例1,2)
実施例2,3および比較例1,2では、円形導体(平角導体)を形成する銅材料におけるTi濃度/O濃度の比率を表1に示すようにそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様に絶縁電線を作製した。
<評価方法>
作製した各平角絶縁電線を以下の方法により評価した。
(絶縁被覆の付き回り性)
絶縁被覆の付き回り性(厚さの均一さ)は絶縁被覆における外周方向の最大厚さと最小厚さとの差から評価した。本実施例では、この差が10μm以下であれば外周方向での厚さのバラつきが小さく均一であると判断して合格(○)とし、10μmを超えれば厚さが不均一であると判断して不合格(×)とした。
(絶縁被覆の損傷程度)
絶縁被覆の損傷程度は、絶縁被覆の表面を目視により観察し、絶縁被覆に亀裂や絶縁被覆と導体との界面に剥離がなければ、損傷の程度が低いと判断して合格(○)、亀裂もしくは剥離が確認されれば損傷の程度が高いと判断して不合格(×)とした。
<評価結果>
評価結果を表1に示す。
実施例1〜3では、円形絶縁電線の円形導体を、S濃度およびO濃度が低く、かつTi濃度/O濃度の比率が2.0〜4.0の範囲内にある銅材料で形成し、円形絶縁電線を圧延するときの圧力を、絶縁被覆に永久歪を生じさせたり絶縁被覆を損傷させたりしないような範囲まで低減できたため、平角絶縁電線の絶縁被覆において付き回り性および損傷程度を良好なものにできることが確認された。
一方、比較例1,2では、円形導体を形成する銅材料はTi濃度/O濃度の比率が2.0〜4.0の範囲外であり、加熱により焼鈍しても耐力が比較的高いため、高圧力での圧延により絶縁被覆の付き回り性や損傷程度が悪くなることが確認された。
以上のように、本発明は、円形絶縁電線における円形導体を所定の組成の銅材料で形成することで、圧延によって円形絶縁電線を平角絶縁電線に加工するときの圧力を低くでき、圧延による絶縁被覆での厚さのバラつきや表面損傷を抑制することができる。
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
[付記1]
本発明の一態様によれば、
銅材料からなる断面が矩形状の平角導体と、前記平角導体の外周上に設けられ熱硬化性樹脂から形成される絶縁被覆と、を備え、
前記銅材料は、チタン濃度が5mass ppm以上55mass ppm以下、硫黄濃度が3mass ppm以上12mass ppm以下、酸素濃度が2mass ppm以上30mass ppm以下、残部が銅と不可避不純物からなり、前記酸素濃度に対する前記チタン濃度の比率が2.0以上4.0以下であり、
前記絶縁被覆は、外周方向における最大厚さと最小厚さとの差が10μm以下である、平角絶縁電線が提供される。
[付記2]
付記1の平角絶縁電線において、好ましくは、
前記銅材料は半軟化温度が150℃以下である。
[付記3]
付記1又は2の平角絶縁電線において、好ましくは、
前記銅材料は、0.2%耐力が80MPa以下であり、かつ伸び率が25%以上である。
[付記4]
付記1〜3のいずれか1つの平角絶縁電線において、好ましくは、
前記熱硬化性樹脂がポリイミド、ポリアミドイミドおよびポリエステルイミドの少なくとも1つである。
[付記5]
本発明の他の態様によれば、
銅材料からなる断面が円形状の円形導体を準備する準備工程と、
前記円形導体の外周を熱硬化性樹脂から形成される絶縁被覆で被覆し円形絶縁電線を形成する被覆工程と、
前記円形絶縁電線を圧延して断面が平角状となるように加工することで、前記銅材料からなる断面が矩形状の平角導体の外周上に前記絶縁被覆が設けられた平角絶縁電線を形成する圧延工程と、
前記圧延工程の後、前記平角絶縁電線を加熱する焼鈍工程と、を有し、
前記準備工程では、前記銅材料として、チタン濃度が5mass ppm以上55mass ppm以下、硫黄濃度が3mass ppm以上12mass ppm以下、酸素濃度が2mass ppm以上30mass ppm以下、残部が銅と不可避不純物からなり、前記酸素濃度に対する前記チタン濃度の比率が2.0以上4.0以下である銅材料からなる円形導体を準備し、
前記圧延工程では、前記平角絶縁電線の前記絶縁被覆の外周方向における最大厚さと最小厚さとの差が10μm以下とする、平角絶縁電線の製造方法が提供される。
[付記6]
付記5の平角絶縁電線において、好ましくは、
前記円形導体は0.2%耐力が80MPa以下であり、かつ伸び率が25%以上である。
[付記7]
付記5又は6の平角絶縁電線において、好ましくは、
前記焼鈍工程では、前記平角絶縁電線を150℃以上400℃以下で加熱する。
1 平角絶縁電線
2 円形絶縁電線
11 平角導体
12 絶縁被覆

Claims (3)

  1. 円形絶縁電線が圧延加工されてなり、絶縁被覆の厚さが50μmよりも厚い平角絶縁電線の製造方法であって、
    銅材料からなる断面が円形状の円形導体を準備する準備工程と、
    前記円形導体の外周を熱硬化性樹脂から形成される前記絶縁被覆で被覆し円形絶縁電線を形成する被覆工程と、
    前記円形絶縁電線を圧延して断面が平角状となるように加工することで、前記銅材料からなる断面が矩形状の平角導体の外周上に前記絶縁被覆が設けられた平角絶縁電線を形成する圧延工程と、
    前記圧延工程の後、前記平角絶縁電線を加熱する焼鈍工程と、を有し、
    前記準備工程では、前記銅材料として、チタン濃度が5mass ppm以上55mass ppm以下、硫黄濃度が3mass ppm以上12mass ppm以下、酸素濃度が2mass ppm以上30mass ppm以下、残部が銅と不可避不純物からなり、前記酸素濃度に対する前記チタン濃度の比率が2.0以上4.0以下である銅材料からなる円形導体を準備し、
    前記圧延工程では、前記平角絶縁電線の前記絶縁被覆の外周方向における最大厚さと最小厚さとの差が10μm以下とする、平角絶縁電線の製造方法。
  2. 前記円形導体は0.2%耐力が80MPa以下であり、かつ伸び率が25%以上である、請求項に記載の平角絶縁電線の製造方法。
  3. 前記焼鈍工程では、前記平角絶縁電線を150℃以上400℃以下で加熱する、請求項1又は2に記載の平角絶縁電線の製造方法。
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