JP2014136833A - 軟質希薄銅合金絶縁撚線 - Google Patents

軟質希薄銅合金絶縁撚線 Download PDF

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Abstract

【課題】高い導電性を備え、かつ軟質材においても高い引張り強さ、伸びを有し、かつ硬さが小さい軟質希薄銅合金線より形成される軟質希薄銅合金絶縁撚線を提供する。
【解決手段】導体に絶縁被覆層が形成された絶縁線を、複数本撚り合わせた絶縁撚線であって、前記導体が、Ti、Mg、Zr、Nb、Ca、V、Ni、Mn及びCrからなる群から選択された添加元素を含み、残部が銅である軟質希薄銅合金材料からなる軟質希薄銅合金線で形成され、その軟質希薄銅合金線の表面から内部に向けて少なくとも線径の20%の深さまでの平均結晶粒サイズが20μm以下である軟質希薄銅合金絶縁撚線である。
【選択図】図3

Description

本発明は、高周波伝送用の軟質希薄銅合金絶縁撚線に係り、特にリッツ線として用いる軟質希薄銅合金絶縁撚線に関するものである。
近年の科学技術の発展に伴い、電気の需要はますます高まっている。これまで動力源に化石燃料を用いてきた動力分野においても、電動化が進められてきており、特に自動車についてもモータを使用したハイブリッド車や電気自動車に対する期待が高まっている。自動車を電動化するに当たり、そのエネルギー源となる電気を蓄える電池と、その電池に電気を供給する給電方法については、現在も技術的進化が進められているところであり、ケーブルとコネクタを接続しての充電が現在主流であるが、将来的には非接触給電による電力供給が進むものと考えられる。
非接触給電の原理としては、電磁誘導の原理や、無線電波によるエネルギー送受信を利用したものや、電磁誘導、電磁界共鳴を利用した方式があるが、現在は電磁誘導を利用した方式が主流となっている。
電磁誘導や電磁界共鳴による非接触給電にはコイルが必要であり、そのコイルに高周波を流すことで効率を高めている。出力を高めるためにはコイルに大電流を流す必要があるが、導体径を太くしただけでは、高周波にした際、表皮効果により導体表面近傍のみ電流が流れるため、効率は低下してしまう。そのため、径を細くした線を並列にして表面積を増すことによって高周波の電流を効率よく流すという方法がとられている。
そのため、コイルに用いられる材質としては、導電率が高く、取り回しやすい金属である銅やアルミニウムで構成した細線に、薄い絶縁被覆をし、さらにそれを撚り合わせたリッツ線を用いたコイルにすることで、効率の良い給電体が作られてきている。
よって、高効率な非接触給電向けのコイルを製造するためには、高い導電率を有し、細径化が容易で、かつ軟らかく、強度の高い材料が望まれている。
その対策として、たとえば特許文献1には、中空の導体を用いたコイル用導体について記載されている。また、特許文献2にはアルミニウム合金線を用いたコイル用導体について記載がされている。
特開2011−124129号公報 特開2011−162826号公報
しかしながら、リッツ線については、以下の問題点が考えられる。
リッツ線は同じ断面積の単一の導体と比べて、細線に絶縁被覆をし、さらにそれらを撚り合わせた構造となっているため、加工硬化が進みやすく、それを解消するための熱処理も絶縁皮膜の耐熱温度以下で行う必要があるために高温化できず時間を要するなど、工程がより複雑化、長時間化しやすい。さらにコイルを形成することからその際の曲げによってさらに加工硬化することが考えられる。
特許文献1では、中空線を用いることが記載されているが、そもそもその中空線を作製するのが困難である。
また、特許文献2にあるような、導体にアルミニウムを用いることで、確かに、軽量化、曲げやすさは得られる。しかし、同じ抵抗とするためには体積を大きくする必要があり、さらに高周波になると表皮効果の影響を受けやすくなるため、表面積を増やす、つまり並列に接続する本数を増やすなどの対策をする必要があり、その結果、装置も巨大化してしまうということが考えられる。
以上の点を踏まえ、本発明の目的は、高い導電性を備え、かつ軟質材においても高い引張り強さ、伸びを有し、かつ硬さが小さい軟質希薄銅合金線より形成される軟質希薄銅合金絶縁撚線を提供することにある。
上記目的を達成するために本発明は、導体に絶縁被覆層が形成された絶縁線を、複数本撚り合わせた絶縁撚線であって、前記導体が、Ti、Mg、Zr、Nb、Ca、V、Ni、Mn及びCrからなる群から選択された添加元素を含み、残部が銅である軟質希薄銅合金材料からなる軟質希薄銅合金線で形成され、その軟質希薄銅合金線の表面から内部に向けて少なくとも線径の20%の深さまでの平均結晶粒サイズが20μm以下である軟質希薄銅合金絶縁撚線である。
前記軟質希薄銅合金材料が、酸素を2mass ppmを超える量含有し、硫黄を2mass ppm以上12mass ppm以下含有していることが好ましい。
前記軟質希薄銅合金材料が、引張り強さが210MPa以上、伸び率が15%以上及びビッカース硬さが65Hv以下であることが好ましい。
前記軟質希薄銅合金材料の導電率が98%IACS以上であることが好ましい。 前記軟質希薄銅合金材料が、4mass ppm〜55mass ppmのTiである前記添加元素と、2mass ppmを超え30mass ppm以下の酸素とを含むことが好ましい。
絶縁被覆層が形成された前記軟質希薄銅合金線を複数本撚り合わせ、その外周部にさらに絶縁被覆層が形成されることが好ましい。
また、本発明は、上記の軟質希薄銅合金絶縁撚線を用いてコイル状に形成されたコイルである。
本発明によれば、Ti等の特定の添加元素を含み残部が銅からなる軟質希薄銅合金材料において、結晶組織が表面から線径の20%の深さまでの平均結晶粒サイズが20μm以下であることから、表層の結晶粒の微細化により高い引張り強さと伸び率を有し、更には、導電率を両立できる軟質希薄銅合金線で形成される軟質希薄銅合金絶縁撚線を提供でき、高周波向け導体、電力伝送用導体など多種多様な製品分野に提供することができるという優れた効果を発揮する。
本発明における軟質銅合金絶縁撚線の一例を示す断面図である。 本発明における直径0.26mmの実施材1の幅方向の断面写真を示す図である。 直径0.26mmの比較材1の幅方向の断面写真を示す図である。 本発明において、直径0.26mm試料表層における平均結晶粒サイズの測定方法について説明するための図である。 本発明の直径0.26mmの実施材2の幅方向の断面写真を示す図である。 直径0.26mmの比較材2の幅方向の断面写真を示す図である。 本発明の実施材3と比較材3の伸び率と硬さとの関係を示す図である。 本発明の実施材3と比較材3の引張強さと硬さとの関係を示す図である。 本発明の直径0.05mmの実施材3の幅方向の断面写真を示す図である。 直径0.05mmの比較材3の幅方向の断面写真を示す図である。 本発明において、表層における平均結晶粒サイズの測定方法の概要図である。
以下、本発明の実施の形態を説明するが、以下に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、以下の実施の形態の中で説明した特徴の組み合わせの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
本発明における軟質希薄銅合金絶縁撚線は、図1に示すように軟質希薄銅合金材料を伸線した軟質希薄銅合金線からなる導体1に対し、エナメルなどに代表される絶縁被覆層2を施して軟質希薄銅合金絶縁線3としたのち、軟質希薄銅合金絶縁線3を、複数本を束ねて撚り合わせることにより軟質希薄銅合金絶縁撚線10が構成される。
また、この軟質希薄銅合金絶縁撚線10の外周に、図には示していないが、さらに絶縁被覆層を形成するようにしてもよい。
本発明の軟質希薄銅合金絶縁撚線10は、高周波による表皮効果等の低減に有効なリッツ線として用いることができ、これをコイル状にして非接触給電向けのコイルとすることができる。
本発明は、Ti、Mg、Zr、Nb、Ca、V、Ni、Mn及びCrからなる群から選択された添加元素とを含み、残部が銅である軟質希薄銅合金材料からなる軟質希薄銅合金線で形成され、その軟質希薄銅合金線の表面から内部に向けて線径の20%の深さまでの平均結晶粒サイズが20μm以下である軟質希薄銅合金線にあり、その軟質希薄銅合金線に絶縁被覆層を形成し、これを複数本撚り合わせた軟質希薄銅合金絶縁撚線にある。
好ましくは、結晶組織がその表面から内部に向けて線径の5〜20%の深さまでの表層の平均結晶粒サイズが5〜15μmであり、その内部の平均結晶粒サイズが50〜100μmである。
本発明において、軟質希薄銅合金線から形成される軟質希薄銅合金絶縁撚線は、酸素を2mass ppmを超える量含有していること、引張り強さが210MPa以上、伸び率が15%以上及びビッカース硬さが65Hv以下であること、導電率が98%IACS以上であること、特に、4mass ppm〜55mass ppmのTiである添加元素と、2mass ppm以上12mass ppm以下の硫黄と、2mass ppmを超え30mass ppm以下の酸素とを含み、残部が銅である軟質希薄銅合金材料からなることが好ましい。
(軟質希薄銅合金材料の構成)
(1)添加元素について
本発明に係る軟質希薄銅合金材料は、Ti、Mg、Zr、Nb、Ca、V、Ni、Mn、及びCrからなる群から選択された添加元素を含み、残部が銅および不可避的不純物からなる。
添加元素として、Ti、Mg、Zr、Nb、Ca、V、Ni、Mn及びCrからなる群から選択される元素は他の元素と結合しやすい活性元素であり、特にS(硫黄)と結合しやすいためSをトラップすることで、銅母材のマトリクスを高純度化することができ、1種類又は2種類以上含有させることができる。また、合金の性質に悪影響を及ぼすことのないその他の元素及び不可避不純物を合金に含有させることもできる。
更に、後述する好適な実施の形態においては、酸素含有量が、2mass ppmを超え30mass ppm以下が良好であること、添加元素の添加量及びSの含有量によっては合金の性質を備える範囲において、2mass ppmを超え400mass ppm以下を含むことができる。
(2)組成比率について
添加元素として、Ti、Ca、V、Ni、Mn及びCrの1種又は2種以上の合計の含有量は、4〜55mass ppm、特に10〜20mass ppmが好ましく、Mgの含有量は、2〜30mass ppm、特に5〜10mass ppmが好ましく、Zr、Nbの含有量は、8〜100mass ppm、特に20〜40mass ppmが好ましい。
また、後述する好適な実施の形態においては、酸素含有量が、2mass ppmを超え30mass ppm以下が良好であり、特に5〜15mass ppmが好ましく、添加元素の添加量及びSの含有量によっては、合金の性質を備える範囲において、2mass ppmを超え400mass ppm以下を含むことができる。
Sの含有量は、2〜12mass ppm、特に3〜8mass ppmが好ましい。
本発明に係る軟質希薄銅合金材料は、導電率98%IACS(万国標準軟銅(International Anneld Copper Standard)以上、抵抗率1.7241×10-8Ωmを100%とした場合の導電率)、好ましくは100%IACS以上、より好ましくは102%IACS以上を満足する軟質型銅材として構成されるのが好ましい。
本発明は、導電率が98%IACS以上の軟質銅材を得る場合、ベース素材として不可避的不純物を含む純銅には、3〜12mass ppmの硫黄と、2mass ppmを超え30mass ppm以下の酸素と、4〜55mass ppmのチタンとを含む組み合わせを有する軟質希薄銅合金材料を用い、この軟質希薄銅合金材料からワイヤロッド(荒引き線)を製造する。
ここで、導電率が100%IACS以上の軟質銅材を得る場合には、ベース素材として不可避的不純物を含む純銅には、2〜12mass ppmの硫黄と、2mass ppmを超え30mass ppm以下の酸素と、4〜37mass ppmのチタンとを含む軟質希薄銅合金材料が好ましい。
また、導電率が102%IACS以上の軟質希薄銅合金材料は、ベース素材として不可避的不純物を含む純銅には、3〜12mass ppmの硫黄と、2mass ppmを超え30mass ppm以下の酸素と、4〜25mass ppmのチタンとを含む組み合わせが好ましい。
通常、純銅の工業的製造において、電気銅を製造する際に硫黄が銅の中に取り込まれるので、硫黄を3mass ppm以下にすることは困難である。汎用電気銅の硫黄濃度の上限は、12mass ppmである。
2mass ppmを超え30mass ppm以下の酸素を含有していることから、この実施の形態では、いわゆる低酸素銅(LOC)を対象としている。
酸素濃度が2mass ppmより低い場合、銅導体の硬さが低下しにくいので、酸素濃度は2mass ppmを超える量に制御する。また、酸素濃度が高い場合、熱間圧延工程で銅導体の表面に傷が生じやすくなるので、30mass ppm以下に制御する。
(3)結晶組織について
本発明に係る軟質希薄銅合金線より形成される軟質希薄銅合金絶縁撚線は、結晶組織が線表面から銅導体の内部に向けて線径の20%の深さまでの平均結晶粒サイズが20μm以下である。好ましくは、その表面から内部に向けて線径に対して5〜20%表層の平均結晶粒サイズが5〜15μmであり、その内部の平均結晶粒サイズが50〜100μmである。
結晶が微細、特に表層に微細な結晶が存在することで、材料の引張り強さや伸び率の向上が期待できるためである。この理由として、引張り変形により粒界近傍に導入される局所ひずみが、結晶粒径が微細なほど小さくなり、粒界応力集中の緩和に寄与し、これに伴い、粒界応力集中が低減して粒界破壊が抑制されると考えられるからである。
また、本発明において、結晶組織が軟質希薄銅合金線の表面からその内部に向けて線径の20%の深さまでの平均結晶粒サイズが20μm以下とは、本発明の効果を備える限りにおいては、線径の20%深さを越えてより線材の中心部に近い領域に微細結晶層が存在する態様を排除するものではない。
(4)分散している物質について
軟質希薄銅合金材料内に分散している分散粒子のサイズは小さいことが好ましく、また、軟質希薄銅合金材料内に分散粒子が多く分散していることが好ましい。その理由は、分散粒子は、硫黄の析出サイトとしての機能を有するからであり、析出サイトとしてはサイズが小さく、数が多いことが要求されるからである。
具体的には、軟質希薄銅合金線から形成される軟質希薄銅合金絶縁撚線に含まれる硫黄は、特に添加元素のチタンは、TiO、TiO2、TiS、若しくはTi−O−S結合を有する化合物又はTiO、TiO2、TiS、若しくはTi−O−S結合を有する化合物の凝集物として含まれ、残部のTi及びSが固溶体として含まれる。尚、他の添加元素についてもチタンと同様である。
分散粒子の形成及び分散粒子への硫黄の析出は、銅母材のマトリックスの純度を向上させ、導電率の向上や材料硬さの低減に寄与する。
(5)軟質希薄銅合金材料の硬さ、伸び及び引張強さについて
本発明に係る軟質希薄銅合金材料には、引張り強さと伸び率のバランスに優れることが求められる。この理由として、例えば、伸び率の値が同じ導体である場合、引張強さが高いことにより、撚線を形成する際の屈曲やねじりなどの応力付加による断線の発生を低く抑えることができるからである。
また、本発明に係る軟質希薄銅合金材料は、焼鈍処理を施した無酸素銅線と同じ或いはそれ以上の伸び率を有し、かつ、引張強さの値が無酸素銅線に比べて2MPa以上高い値を有することが望ましい。
(軟質希薄銅合金材料の製造方法)
本発明に係る軟質希薄銅合金線から形成される軟質希薄銅合金絶縁撚線の製造方法は以下のとおりである。
例として、Tiを添加元素に選択した場合を説明する。
先ず、軟質希薄銅合金線から形成される軟質希薄銅合金絶縁撚線の原料としてのTiを含む軟質希薄銅合金材料を準備する(原料準備工程)。次に、この軟質希薄銅合金材料を1100℃以上1320℃以下の溶銅温度で溶湯を形成する(溶湯製造工程)。次に、溶湯からワイヤロッドを作製する(ワイヤロッド作製工程)。続いて、ワイヤロッドに880℃以下550℃以上の温度で熱間圧延を施す(熱間圧延工程)。更に、熱間圧延工程を経たワイヤロッドに伸線加工及び熱処理を施す(伸線加工、熱処理工程)。熱処理方法としては、管状炉を用いた走行焼鈍や、抵抗発熱を利用した通電焼鈍などが適用できる。その他、バッチ式の焼鈍も可能である。これにより、本発明に係る軟質希薄銅合金材料が製造される。
また、軟質希薄銅合金線から形成される軟質希薄銅合金絶縁撚線の製造には、2mass ppm以上12mass ppm以下の硫黄と、2mass ppmを超え30mass ppm以下の酸素と、4mass ppm以上55mass ppm以下のチタンとを含む軟質希薄銅合金材料を用いる。
本発明者は、銅導体の硬度の低下と、銅導体の導電率の向上とを実現すべく、以下の二つの方策を検討した。そして、以下の二つの方策を銅ワイヤロッドの製造に併せ用いることで、本発明に係る軟質希薄銅合金線から形成される軟質希薄銅合金絶縁撚線を得ることができる。
まず、第1の方策は、酸素濃度が2mass ppmを超える量の純銅に、チタン(Ti)を添加した状態で、銅の溶湯を作製することである。この銅溶湯中においては、TiSとチタンの酸化物(例えば、TiO2)とTi−O−S粒子とが形成されると考えられる。
次に、第2の方策は、銅中に転位を導入することにより硫黄(S)の析出を容易にすることを目的として、熱間圧延工程における温度を通常の銅の製造条件における温度(つまり、950℃〜600℃)より低い温度(880℃〜550℃)に設定することである。このような温度設定により、転位上へのSの析出、又はチタンの酸化物(例えば、TiO2)を核としてSを析出させることができる。
以上の第1の方策及び第2の方策により、銅に含まれる硫黄が晶出すると共に析出するので、所望の軟質特性と所望の導電率とを有する銅ワイヤロッドを冷間伸線加工後に得ることができる。
本発明に係る軟質希薄銅合金線から形成される軟質希薄飼合金絶縁撚線は、SCR連続鋳造設備を用い、表面の傷が少なく、製造範囲が広く、安定生産が可能である。
SCR連続鋳造圧延により、鋳塊ロッドの加工度が90%(30mm)〜99.8%(5mm)でワイヤロッドを作製する。一例として、加工度99.3%でφ8mmのワイヤロッドを製造する条件を採用する。
溶解炉内での溶銅温度は1100℃以上1320℃以下に制御することが好ましい。溶銅の温度は、高いとブローホールが多くなり、傷が発生すると共に粒子サイズが大きくなる傾向にあるので、1320℃以下に制御する。また、溶銅の温度を1100℃以上に制御する理由は、銅が固まりやすく、製造が安定しないことが理由であるものの、溶銅温度は可能な限り低い温度が望ましい。
熱間圧延加工の温度は、最初の圧延ロールにおける温度を880℃以下に制御すると共に、最終圧延ロールでの温度を550℃以上に制御することが好ましい。
これらの鋳造条件は、通常の純銅の製造条件と異なり、溶銅中での硫黄の晶出及び熱間圧延中における硫黄の析出の駆動力である固溶限をより小さくすることを目的としているものである。
また、通常の熱間圧延加工における温度は、最初の圧延ロールにおいて950℃以下、最終圧延ロールにおいて600℃以上であるが、固溶限をより小さくすることを目的として、本発明では、最初の圧延ロールにおいて880℃以下、最終圧延ロールにおいて550℃以上に設定することが望ましい。
なお、最終圧延ロールにおける温度を550℃以上に設定する理由は、550℃未満の温度では得られるワイヤロッドの傷が多くなり、製造される銅導体を製品として扱うことができないからである。熱間圧延加工における温度は、最初の圧延ロールにおいて880℃以下の温度、最終圧延ロールにおいて550℃以上の温度に制御すると共に、可能な限り低い温度であることが好ましい。このような温度設定にすることで、軟質希薄銅合金線から形成される軟質希薄銅合金絶縁撚線のマトリックスの純度が向上し、導電率の向上や硬さの低減を図ることができる。
ベース材の純銅は、シャフト炉で溶解された後、還元状態で樋に流すことが好ましい。すなわち、還元ガス(例えば、COガス)雰囲気下において、希薄合金の硫黄濃度、チタン濃度及び酸素濃度を制御しつつ鋳造すると共に、材料に圧延加工を施すことにより、ワイヤロッドを安定的に製造することが好ましい。なお、銅酸化物が混入すること、及び/又は粒子サイズが所定サイズより大きいことは、製造される銅導体の品質を低下させる。
以上より、伸び特性、引張強さ、ビッカース硬さのバランスの良い軟質希薄銅合金材料を、木発明に係る軟質希薄銅合金線から形成される軟質希薄銅合金絶縁撚線の原料として得ることができる。
また、本発明では、SCR連続鋳造圧延法によりワイヤロッドを作製すると共に、熱間圧延にて軟質材を作製することができるが、双ロール式連続鋳造圧延法又はプロペルチ式連続鋳造圧延法を採用することもできる。
(絶縁被覆層について)
前述した構成、製造方法により軟質希薄銅合金線を形成したのち、伸線作業により細線を形成する。線径は流す電流、周波数、撚り合わせ性などにより決定されるが、おおよそ50μmから1mmの範囲となる。これより細くなると、断面積に占める絶縁被覆層の割合が増加することから流せる電流が少なくなってしまう。また製造上、品質管理上の難易度が増すため、コストアップとなるため、工業的には有用でない。また、太くなると撚り合わせ時にねじれによる大きな負荷がかかり、製品となった時の取り回しが難しくなると考えられる。さらに、高周波の電流を流す際、周波数が高くなるほど表皮効果により表面にしか電流が流れなくなるため、導体の使用効率が悪くなるという問題が発生する。
絶縁被覆層の材料としては、既に公知の材料を目的、所望する絶縁性能に応じて使用することが可能であり、限定されるものではない。たとえばホルマールエナメル線、ポリウレタンエナメル線、ポリエステルエナメル線、ポリエステルイミドエナメル線、ポリアミドイミドエナメル線、ポリイミドエナメル線などがある、また、2種以上の構造からなる複合コートエナメル線でもよい。さらに、絶縁被覆層のさらに外周部に自己融着性の塗料や、自己潤滑性を有する塗料を塗布することも可能である。
絶縁被覆層の製造方法としては、既に公知である方法を適用することができ、塗料中に線を浸漬させ、線径に対して適切なギャップを有するダイスを通過させることで所定の厚さの塗料を付着させ、乾燥や焼付を行うことで結着させる方法を取ることができる。また、塗料と導体を同時に押し出すことで絶縁被覆層を施す方法を適用することも可能である。
(撚線の製造方法について)
前述した軟質希薄銅合金絶縁線を複数本撚り合わせることにより、本発明の軟質希薄銅合金絶縁撚線が形成される。撚り合わせ本数は制限されるものではないが、製造の容易さから、たとえば図1に示した7本撚りや19本撚りといった形状をとることが多い。
撚り合わせの手法も公知の方法で行うことができ、市販の撚線機を用いることができる。また、撚線同士をさらに撚り合わせることにより軟質希薄銅合金絶縁撚線を形成することも可能である。
さらに撚り合わせるときに導体が加工硬化することから、撚線形成後に、絶縁被覆層に影響を及ぼさない範囲で熱処理をすることも可能である。本発明における軟質希薄銅合金絶縁撚線に用いている軟質希薄銅合金材料は従来の導体に比べ低温で軟化させることが可能であるため、極度に高耐熱の塗料を用いなくとも軟質化させることが可能である。
[実施例1]
(0.26mm径の軟質希薄銅合金線について)
実験材として、低酸素銅(酸素濃度7mass ppm〜8mass ppm、硫黄濃度5mass ppm)に、チタン濃度13mass ppmを含有するφ8mmの銅線(ワイヤロッド、加工度99.3%)を作製した。φ8mmの銅線は、SCR連続鋳造圧延法(South Continuous Rod System)により、熱間圧延加工が施され作製されたものである。Tiは、シャフト炉で溶解された銅溶湯を還元ガス雰囲気で樋に流し、樋に流した銅溶湯を同じ還元ガス雰囲気の鋳造ポットに導き、この鋳造ポットにて、Tiを添加した後、ノズルを通して鋳造輪と無端ベルトとの間に形成される鋳型にて鋳塊ロッドを作製した。この鋳塊ロッドを熱間圧延加工してφ8mmの銅線を作製した。
次に、実施材1として、上記実験材に冷間伸線加工を施し、φ2.6mmまで伸線後、一旦通電アニールを実施した。その後さらにφ0.9mmまで伸線後、通電アニールにて再度焼鈍を施し、φ0.26mmの銅線を作製した。この線に焼鈍温度600℃で1時間の焼鈍を行ったもので実施材1を得た。
また比較材1として、無酸素銅のφ8mmの銅線に対し、上述した冷間伸線加工を施し、φ2.6mmまで伸線後、一旦通電アニールを実施した。その後さらにφ0.9mmまで伸線後、通電アニールにて再度焼鈍を施し、φ0.26mmの銅線を作製した。この線に焼鈍温度600℃で1時間の焼鈍を行ったもので比較材1を得た。
まずはこれらの線に対して結晶構造の評価を行った。
図2は、実施材1の幅方向の断面組織の断面写真を表したものであり、図3は、比較材1の幅方向の断面組織の断面写真を表したものである。
図2及び図3に示すように、比較材1の結晶構造は、表面部から中央部にかけて全体的に大きさの等しい結晶粒が均一に並んでいるのに対し、実施材1の結晶構造は、全体的に結晶粒の大きさがまばらであり、特筆すべきは、線の断面方向の表面付近に薄く形成されている層における結晶粒サイズが内部の結晶粒サイズに比べて極めて小さくなっている。
発明者らは、比較材1には形成されていない表層に現れた微細結晶粒層が、実施材1の引張強さ及び伸び特性の向上に寄与しているものと考えている。
このことは、通常であれば、焼鈍温度600℃で1時間の焼鈍処理を行えば、比較材1のように再結晶により均一に粗大化した結晶粒が形成されるものであると理解されるが、実施材1の場合には、焼鈍温度600℃で1時間の焼鈍処理を行ってもなお、その表層には微細結晶粒層が残存していることから、軟質銅材でありながら、後述する銅導体の良好な引張強さ、伸び特性を実現するに至る軟質希薄銅合金材料が得られたものであると考えられる。
そして、図2及び図3に示す結晶構造の断面写真をもとに、実施材1及び比較材1の表層における平均結晶粒サイズを測定した。
ここに、表層における平均結晶粒サイズの測定方法は、図4に示すように、0.26mm径の径方向断面の表面から深さ方向に10μm間隔で50μm(線径の約20%)の深さまでのところの長さ1mmの線上の範囲での結晶粒サイズを測定した夫々の実測値を平均した値を表層における平均結晶粒サイズとした。
測定の結果、比較材1の表層における平均結晶粒サイズは、50μmであったのに対し、実施材1の表層における平均結晶粒サイズは、10μmである点で大きく異なっていた。表層の平均結晶粒サイズが細かくなることによって、後述する銅導体の良好な引張強さ、伸び特性を実現するに至ったものと考えられる。
[実施例2]
(0.26mm径の軟質希薄銅合金線の焼鈍温度400℃での結晶構造について)
図5は、実施材2の試料の幅方向の断面組織の写真を示したものであり、図6は、比較材2の幅方向の断面組織の写真を示したものである。
実施材2として、実施材1の最後の焼鈍温度を600℃から400℃に変えたものである。比較材2は比較材1における最後の焼鈍温度を600℃から400℃に変えたものである。
図5及び図6に示すように、比較材2の結晶構造は、表面部から中央部にかけて全体的に大きさの等しい結晶粒が均一に並んでいることがわかる。これに対し、実施材2の結晶構造は、表層と内部とで結晶粒の大きさに差があり、表層における結晶粒サイズに比べて内部の結晶粒サイズが極めて大きくなっている。
銅を焼鈍して結晶組織を再結晶させたときには、実施材2は、再結晶化が進み易く内部の結晶粒が大きく成長する。
次に、実施材2及び比較材2の導電率を表1に示す。
表1に示すように、実施材2の導電率(102.4%IACS)は、比較材2の導電率(101.8%IACS)と比べて大きく、リッツ線として適用した場合でも充分満足できるものである。
[実施例3]
(0.05mm径の軟質希薄銅合金線について)
φ0.9mmサイズの銅線を作製するところまでは、上述した軟質希薄銅合金材料の実施材1と同様である。これをφ0.05mmまで伸線することで実施材3を得た。
φ0.9mmからφ0.05mmまで伸線した軟質希薄銅合金材料を、管状炉にて400℃〜600℃×0.8〜4.8秒の走行焼鈍を施し実施材3の材料とした。比較として、φ0.05mmの無酸素銅(99.99%以上、OFC)も同様の加工熱処理条件で作製し比較材3の材料とした。
これらの材料の機械的特性(引張強さ、伸び)、硬さ、結晶粒サイズを測定した。表層における平均結晶粒サイズは、0.05mm径の幅方向断面の表面から深さ方向に10μmの深さのところの長さ0.025mmの範囲での結晶粒サイズを測定した。
(銅導体の軟質特性及び伸び、引張強さ)
図7及び図8は、無酸素銅線を用いた比較材3と、低酸素銅に13mass ppmのTiを含有させた軟質希薄銅合金線から作製した実施材3について、φ0.9mm(なまし材)からφ0.05mmまで伸線加工をし、管状炉による走行焼鈍(温度300℃〜600℃、時間0.8〜4.8秒)をしたあとの断面硬さ(Hv)及び機械的特性(引張強さ、伸び)を測定した結果である。
断面硬さは、樹脂中に埋め込んだφ0.05mm銅導体の横断面を研磨し、銅導体中央部のビッカース硬さを測定することで評価した。測定数はn=5であり、その平均値とした。
引張り強さと伸びの測定は、φ0.05mm銅導体を標点距離100mm、引張り速度20mm/minの条件で引張り試験を行うことにより評価した。材料が破断するときの最大の引張応力が引張強さであり、材料が破断するときの最大の変形量(ひずみ)を伸びとした。
図7に示すように、ほぼ同じ伸び率で比較した場合、実施材3の引張強さは、比較材3よりも15MPa以上大きいことがわかる。無酸素銅との比較で、伸びを低下させることなく、引張強さを高くできることで、例えば、実施材3の銅導体は、無酸素銅を使用する比較材3の導体に比して、応力付加による断線の発生を低減させることができる。
表2は、図7に示す評価結果のうち、実施材3と比較材3とで硬さがほぼ同等になる条件のデータを抜粋し比較した結果を示す。表2の上段は、実施材3を、φ0.9mm(なまし材)からφ0.05mmまで伸線加工をし、管状炉中を400℃×1.2秒間走行焼鈍したときの機械的特性及び硬さを示したものである。同じく表2の下段の比較材3を、φ0.9mm(なまし材)からφ0.05mmまで伸線加工をし、管状炉中を600℃×2.4秒間走行焼鈍したときの機械的特性及び硬さを示したものである。
表2に示すように、同じ硬さの材料であっても、実施材3の伸びは、比較材3よりも5%以上も高く、また、同じ硬さでありながら無酸素銅に比して、引張強さが高いことが明らかとなった。
次に、図8によると、ほぼ同じ引張強さで比較した場合、実施材3の硬さは、比較材3よりも10Hvほど小さいことがわかる。引張強さを低下させることなく、硬さを小さくできることからしなやかな線となっていることがわかる。
表3は、実施材3と比較材3とで引張強さがほぼ同等になる条件のデータを抜粋し比較した結果を示す。表3の上段の実施材3を、φ0.9mm(なまし材)からφ0.05mmまで伸線加工をし、管状炉中を500℃×4.8秒間走行焼鈍したときの機械的特性及び硬さを示したものである。同じく表3の下段の比較材3を、φ0.9mm(なまし材)からφ0.05mmまで伸線加工をし、管状炉中を600℃×2.4秒間走行焼鈍したときの機械的特性及び硬さを示したものである。
表3に示すように、同じ引張強さの材料であっても、実施材3の伸びは、比較材3よりも7%も高いため、信頼性やハンドリング性に優れた線となっていることがわかる。
ここでの信頼性とは、撚り合わせ時の線の破断やスプリングバックに対する耐性のことである。また、ハンドリング性とは、リッツ線としたときの配索性やさらにコイルを形成するときの巻きやすさのことである。
引張強さ、伸び、硬さのバランスは、製品により要求される仕様によって多少異なるが、一例として、本発明によると、引張強さを重視する場合、引張り強さ270MPa以上、伸び率7%以上、硬さ65Hv以下の導体が供給可能であり、更に硬さが小さいことを加えると、210MPa〜270MPa未満、伸び率15%以上、かつ硬さ63Hv以下の導体の供給が可能である。
本発明における実施材3、比較材3のφ0.05mmからの焼鈍は管状炉による走行焼鈍(温度300℃〜600℃、時間0.8〜4.8秒)により実施しているが、通電アニーラであっても同様に同じ伸びが得られるときには引張強さが高く、また、同じ引張強さの時にはビッカース硬さが小さくなることから、焼鈍の手法によらず、材料の特性として実施材が比較材に比べ、リッツ線に適用する導体として優れた特性を持つことが示された。
(0.05mm径の軟質希薄銅合金線の結晶構造について)
図9は、実施材3の幅方向の断面組織を示し、図10は、比較材3の幅方向の断面組織を示す。
比較材3の結晶構造は、表面部から中央部にかけて全体的に大きさの等しい結晶粒が均一に並んでいることが分かる。一方、実施材3の結晶構造は、全体的に結晶粒の大きさがまばらであり、試料の断面方向の表面付近に薄く形成されている層における結晶粒サイズが内部の結晶粒サイズに比べて極めて小さくなっている。
本発明者は、比較材3には形成されていない表層に現れた微細結晶粒層が実施材3の軟質特性を有し、かつ、引張強さと伸び特性を併せ持つことに寄与しているものと考えている。
通常、軟質化を目的とした熱処理を行うと、比較材3のように再結晶により均一に粗大化した結晶粒が形成されると理解される。しかし、実施材3においては、内部に粗大な結晶粒を形成する焼鈍処理を実行しても表層には微細結晶粒層が残存している。したがって、実施材3では、軟質銅材でありながら引張強さと伸びに優れた軟質希薄銅合金材料が得られたと考えられる。
また、図9及び図10に示す結晶構造の断面写真を基に、実施材3及び比較材3に係る試料の表層における平均結晶粒サイズを測定した。
図11は、表層における平均結晶粒サイズの測定方法の概要を示す。図11に示すように、0.05mm径の幅方向断面の表面から深さ方向に5μm間隔で10μmの深さまでの長さ0.25mmの線上の範囲で、結晶粒サイズを測定した。そして、各測定値(実測値)から平均値を求め、この平均値を平均結晶粒サイズにした。
測定の結果、比較材3の表層における平均結晶粒サイズは、22μmであったのに対し、実施材3の表層における平均結晶粒サイズは、7μm及び15μmであり、異なっていた。表層の平均結晶粒サイズが細かいことを一つの理由として、高い引張り強さと伸びが得られたと考えられる。なお、結晶粒サイズが大きいと、結晶粒界に沿って亀裂が進展する。しかし、結晶粒サイズが小さいと亀裂の進展方向が変わるので、進展が抑制される。このことから、実施材3の疲労特性は、比較材3よりも優れると考えられる。疲労特性とは、繰り返し応力を受けたとき、材料が破断にいたるまでの応力負荷サイクル数或いは、時間を示す。
本実施例の効果を奏するには、表層の平均結晶粒サイズとしては15μm以下とするのが好ましい。
以上の本実施形態に係る軟質希薄銅合金線は、Ti等を含み残部が銅からなる軟質希薄銅合金材料において、結晶組織が表面から線径に対して最大20%の深さまでの表層の平均結晶粒サイズが20μm以下であることから、高い引張り強さと伸びを両立できると共に、高い導電率が得られるため、製品の信頼性を向上させることができる。
又、添加したTiと同様に、Mg、Zr、Nb、Ca、V、Ni、Mn及びCrからなる群から選択された添加元素においても不純物である硫黄(S)をトラップするので、マトリックスとしての銅母相が高純度化し、素材の軟質特性が向上される。
さらに、本実施形態に係る軟質希薄銅合金材料は、銅の高純度化(99.999質量%以上)処理を要せず、安価な連続鋳造圧延法により高い導電率を実現することができるので、低コスト化ができる。
(絶縁撚線について)
実施材1および2を作製するのと同じ材料、工程を用いて、導体径がφ0.26mmとなる軟質希薄銅合金線を作製した。この線に対し、さらに焼鈍温度400℃の焼鈍を行った後、絶縁被覆として、ポリアミドイミド樹脂塗料を20μm塗布・焼付塗装して絶縁層を形成した。この線を7本用意し、撚線機により撚りピッチが20mmとなるように同心撚り合わせすることによりリッツ線、実施材4を得た。比較材としてはタフピッチ銅を導体として、そのほかの工程を同一のものとした比較材4を用意した。
特性評価は、リッツ線の外親観察と、各素線に分解後のビッカース硬さ評価により行った。表4に外観観察結果としての傷の有無、ビッカース硬さをまとめた。
表4に示すように、外観からは実施材4、比較材4とも変化なく、実施材であってもエナメル線としては問題がないことが示された。素線のビッカース硬さは、実施材4で61Hv、比較材4で105Hvと実施材4のほうが大幅に軟らかくなっていることがわかる。実施材1乃至3で示した素線に対し若干の上昇がみられるが、これは絶縁皮膜塗布や、撚り合わせ、また、測定時に素線を取り外した際の加工硬化によるものである。よって、比較材に対しての本質的な優位性が本発明における絶縁撚線においても保たれていることから、リッツ線として適用した際にも信頼性やハンドリング性に優れた線であると言える。
1 導体
2 絶縁被覆層
3 軟質希薄銅合金線
10 軟質希薄銅合金絶縁撚線

Claims (7)

  1. 導体に絶縁被覆層が形成された絶縁線を、複数本撚り合わせた絶縁撚線であって、前記導体が、Ti、Mg、Zr、Nb、Ca、V、Ni、Mn及びCrからなる群から選択された添加元素を含み、残部が銅である軟質希薄銅合金材料からなる軟質希薄銅合金線で形成され、その軟質希薄銅合金線の表面から内部に向けて少なくとも線径の20%の深さまでの平均結晶粒サイズが20μm以下であることを特徴とする軟質希薄銅合金絶縁撚線。
  2. 前記軟質希薄銅合金材料が、酸素を2mass ppmを超える量含有し、硫黄を2mass ppm以上12mass ppm以下含有していることを特徴とする請求項1に記載の軟質希薄銅合金絶緑撚線。
  3. 前記軟質希薄銅合金材料が、引張り強さが210MPa以上、伸び率が15%以上及びビッカース硬さが65Hv以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の軟質希薄銅合金絶縁撚線。
  4. 前記軟質希薄銅合金材料の導電率が98%IACS以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の軟質希薄銅合金絶縁撚線。
  5. 前記軟質希薄銅合金材料が、4mass ppm〜55mass ppmのTiである前記添加元素と、2mass ppmを超え30mass ppm以下の酸素とを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の軟質希薄銅合金絶縁撚線。
  6. 絶縁被覆層が形成された前記軟質希薄銅合金線を複数本撚り合わせ、その外周部にさらに絶縁被覆層が形成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の軟質希薄銅合金絶縁撚線。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項記載の軟質希薄銅合金絶縁撚線を用いてコイル状に形成されたことを特徴とするコイル。
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