JP2014137950A - 配線材、絶縁ケーブル及び絶縁ケーブルの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】銅と、Ti、Mg、Zr、Nb、Ca、V、Ni、Mn、Crの少なくともいずれかの添加元素とを含む軟質希薄銅合金により形成され、周囲に樹脂を塗布して形成される被覆層に90℃以上130℃以下の温度で架橋処理を行うことで軟銅線に変質される硬銅線を備える。
【選択図】図1
Description
本発明の第1の態様によれば、銅と、Ti、Mg、Zr、Nb、Ca、V、Ni、Mn、Crの少なくともいずれかの添加元素とを含む軟質希薄銅合金により形成され、周囲に樹脂を塗布して形成される被覆層に90℃以上130℃以下の温度で架橋処理を行うことで軟銅線に変質される硬銅線を備える配線材が提供される。
まず、本実施形態にかかる配線材について、主に図1を用いて説明する。図1は、本実施形態にかかる配線材を用いた絶縁ケーブルの概略図であり、(a)は部分破断斜視図を示し、(b)は断面図を示す。
図1に示すように、本実施形態にかかる配線材1は、軟質希薄銅合金を伸線加工することで形成される硬銅線を備えている。硬銅線は断面形状で円形を有している。軟質希薄銅合金は、銅(Cu)を母材とし、その母材中に、チタン(Ti)、マグネシウム(Mg)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、カルシウム(Ca)、バナジウム(V)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)の少なくともいずれかの元素が添加された軟質希薄銅合金を用いて形成されている。
次に、上述の配線材1を用いた絶縁ケーブル2の構成について説明する。
次に、本発明にかかる配線材1を用いた絶縁ケーブル2の製造方法の一実施形態について説明する。
本実施形態にかかる配線材1の製造方法では、まず、所定の組成を有する軟質希薄銅合金を鋳造する。すなわち、まず、例えば高周波溶解炉等を用い、母材である銅を溶解して形成した軟質希薄銅合金の溶湯に、Ti、Mg、Zr、Nb、Ca、V、Ni、Mn又はCrの少なくともいずれかの元素を添加して、軟質希薄銅合金の溶湯を形成する。このとき、軟質希薄銅合金の溶湯中に、4mass ppm以上55mass ppm以下のTi元素を添加するとよい。また、軟質希薄銅合金の溶湯中には、2mass ppm以上30mass ppm以下の酸素と、2mass ppm以上12mass ppm以下の硫黄とが含まれているとよい。そして、この軟質希薄銅合金の溶湯を鋳型に流し込んで所定形状の鋳塊(インゴット)を形成する。
次に、鋳造したインゴットを、例えばSCR連続鋳造圧延方式(South Continuous Rod System)によって、鋳造体が所定の線径になるまで、熱間圧延処理と、冷間圧延処理と、熱処理とを行い、硬銅線を形成する。そして、硬銅線を備える配線材1を形成する。
まず、鋳造したインゴットを加熱して熱間圧延処理を行い、軟質希薄銅合金を所定の線径(例えば直径8mm)の線材とする。熱間圧延処理は、軟質希薄銅合金の線材が所定の線径となるように、複数段の圧延ロールを用いて行うとよい。このとき、最初の圧延ロールでの加熱温度が880℃以下で、最終の圧延ロールでの加熱温度が550℃以上であるとよい。また、熱間圧延処理は、90%の加工度で行うとよい。これにより、軟質希薄銅合金の溶湯中に添加した例えばTi等の元素の固溶限をより小さくできる。従って、銅中に転位を導入することにより軟質希薄銅合金の溶湯中に含まれる例えば硫黄等の不純物を容易に析出させることができる。すなわち、例えば、軟質希薄銅合金の溶湯中に添加したチタン(Ti)の酸化物(例えばTiO2)を核として、硫黄を転位上に容易に析出させることができる。熱間圧延終了後は、なるべく速やかに軟質希薄銅合金の線材を冷却するとよい。
上述の熱間圧延処理が終了した後、軟質希薄銅合金の線材に、冷間圧延処理と、熱処理(焼鈍処理)とを行って、所定の線径(例えば直径0.26mm)の硬銅線を形成する。冷間圧延処理と熱処理とは、それぞれ所定回数繰り返して行うとよい。なお、冷間圧延処理と熱処理とは1回ずつ行ってもよい。熱処理はバッチ処理であっても、連続処理であってもよい。
(式1)
加工度(%)=[(最終冷間圧延処理直前の線材の断面積―最終冷間圧延処理後の線材の断面積)/最終冷間圧延処理直前の線材の断面積]×100
所定の線径(例えば直径0.26mm)の硬銅線を備える配線材1を形成して硬銅線形成工程が終了したら、例えば撚線機等を用いて複数本(例えば7本)の配線材1を撚り合わせて撚線3を形成する。
撚線形成工程が終了した後、樹脂を例えば押出被覆により撚線3の周囲に被覆して被覆層を形成する。樹脂として、例えばポリエチレン、ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリイミド、PAF樹脂、FEP樹脂、ETFE樹脂等を用いるとよい。樹脂としてシラングラフト化したポリエチレンを用いるとより良い。
被覆層形成工程が終了したら、例えば紫外線照射等により被覆層を所定温度で所定時間加熱して架橋処理を行い、被覆層を硬化させて絶縁層4を形成する。架橋処理は、90℃以上130℃以下の温度で行う。例えば、架橋処理は90℃の温度で蒸気を用いて行うとよい。
架橋工程が終了した後、例えばポリ塩化ビニル等の樹脂を押出被覆により絶縁層4の周囲に被覆してシース5を形成して絶縁ケーブル2を形成する。そして、本実施形態にかかる絶縁ケーブル2の製造工程を終了する。
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果を奏する。
以上、本発明の一実施形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
まず、実施例1〜3及び比較例1〜3の各試料である配線材を作製し、各試料の軟化温度を測定して評価した。
実施例1では、母材である銅として、酸素が7mass ppm〜8mass ppm、硫黄が5mass ppm含まれている低酸素銅を用いた。シャフト炉で母材である銅を溶解して溶湯を形成し、この銅溶湯を還元ガス雰囲気下で樋を介して鋳造ポット(るつぼ)内に導入し、鋳造ポット内の銅溶湯中に、チタン(Ti)元素を25mass ppm添加した。Ti元素を添加した銅溶湯を、シャフト炉が備える注湯ノズルを介して、外周面に形成された溝を備える鋳造輪と、この鋳造輪の外周の一部に接触するように周回移動される無端ベルトとの間に形成される空間に導入する。この空間が鋳型として機能することで、所定形状の軟質希薄銅合金の鋳塊(インゴット)を作製した。この軟質希薄銅合金のインゴットをSCR連続鋳造圧延方式によって、インゴットを所定の線径(直径が8mm)になるまで、99.3%の加工度で熱間圧延処理を行い、直径が8mmの線材を作製した。
実施例2〜3、比較例1及び従来例1〜2では、中間処理線径及び最終の冷間圧延処理の加工度を表1に示す値とした。この他は、上述の実施例1と同様にして、直径が0.26mmの硬銅線を作製し、配線材を作製した。これらをそれぞれ実施例2〜3及び比較例1の試料とした。
比較例2では、母材である銅として、タフピッチ銅(TPC)を用いた。そして、シャフト炉で母材である銅を溶解して溶湯を形成し、この銅溶湯を還元ガス雰囲気下で樋を介して鋳造ポット(るつぼ)内に導入した。銅溶湯を、シャフト炉が備える注湯ノズルを介して、外周面に形成された溝を備える鋳造輪と、この鋳造輪の外周の一部に接触するように周回移動される無端ベルトとの間に形成される空間に導入する。この空間が鋳型として機能し、所定形状の軟質希薄銅合金の鋳塊(インゴット)を作製した。この他は、上述の実施例1と同様にして、直径が0.26mmの硬銅線を作製し、配線材を作製した。これを比較例2の試料とした。
比較例3では、中間処理線径を0.37mmとし、最終の冷間圧延処理の加工度を50%とした。その他は、比較例2と同様にして、直径が0.26mmの硬銅線を作製し、配線材を作製した。これを比較例3の試料とした。
次に、実施例4及び比較例4の各試料である絶縁ケーブルを作製し、各試料の可撓性について評価した。
実施例4では、配線材として、実施例1に係る試料を用いた。実施例1の試料である複数本(7本)の配線材を撚線機にて撚り合わせて撚線を形成した。この撚線の周囲に、樹脂としてシラングラフトされたポリエチレンを押出被覆し、撚線の周囲に被覆層を形成した。そして、被覆層を形成した撚線(配線材)を蒸気架橋室に導入し、蒸気架橋室にて被覆層を90℃の温度で所定時間を加熱して架橋処理を行い、被覆層を硬化させて絶縁層を形成した。このとき、架橋処理時の熱量によって実施例1にかかる試料が備える硬銅線を加熱し、硬銅線を軟銅線に変質させる。そして、絶縁層の周囲にポリ塩化ビニルを押出被覆してシースを形成し、絶縁ケーブルを作製した。これを実施例4の試料とした。
配線材として比較例2に係る試料を用いた。この他は、上述の実施例4と同様にして絶縁ケーブルを作製した。これを比較例4の試料とした。
2 絶縁ケーブル
3 撚線
4 絶縁層
5 シース
Claims (8)
- 銅と、Ti、Mg、Zr、Nb、Ca、V、Ni、Mn、Crの少なくともいずれかの添加元素とを含む軟質希薄銅合金により形成され、周囲に樹脂を塗布して形成される被覆層に90℃以上130℃以下の温度で架橋処理を行うことで軟銅線に変質される硬銅線を備える
ことを特徴とする配線材。 - 前記軟質希薄銅合金は、前記Tiを4mass ppm以上55mass ppm以下含む
ことを特徴とする請求項1に記載の配線材。 - 前記軟質希薄銅合金は、2mass ppm以上30mass ppm以下の酸素と、2mass ppm以上12mass ppm以下の硫黄と、を含む
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の配線材。 - 銅と、Ti、Mg、Zr、Nb、Ca、V、Ni、Mn、Crの少なくともいずれかの添加元素とを含む軟質希薄銅合金により形成される硬銅線を備える複数本の配線材を撚り合わせて形成される撚線と、
前記撚線の周囲を被覆するように樹脂が塗布されて形成される被覆層を90℃以上130℃以下の温度で加熱して架橋処理を行うことで形成される絶縁層と、を備え、
前記硬銅線は、架橋処理の際の熱によって加熱されて軟銅線に変質される
ことを特徴とする絶縁ケーブル。 - 銅と、Ti、Mg、Zr、Nb、Ca、V、Ni、Mn、Crの少なくともいずれかの添加元素とを含む軟質希薄銅合金を用いて所定線径の硬銅線を形成する硬銅線形成工程と、
前記硬銅線を備える複数本の配線材を撚り合せて撚線を形成する撚線形成工程と、
前記撚線の周囲に樹脂を被覆して被覆層を形成する被覆層形成工程と、
前記被覆層を90℃以上130℃以下の温度で加熱して架橋処理を行うことで絶縁層を形成する架橋工程と、を有し、
前記架橋工程では、
前記被覆層を加熱する際の熱で前記硬銅線を加熱することで、前記硬銅線を軟銅線に変質させる
ことを特徴とする絶縁ケーブルの製造方法。 - 前記硬銅線形成工程では、
前記軟質希薄銅合金に熱間圧延処理を行った後、冷間圧延処理と熱処理とを所定回数繰り返し、最終の前記冷間圧延処理を80%以上99%以下の加工度で行う
ことを特徴とする請求項5に記載の絶縁ケーブルの製造方法。 - 前記軟質希薄銅合金は、前記Tiを4mass ppm以上55mass ppm以下含む
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の絶縁ケーブルの製造方法。 - 前記軟質希薄銅合金は、2mass ppm以上30mass ppm以下の酸素と、2mass ppm以上12mass ppm以下の硫黄と、を含む
ことを特徴とする請求項5ないし7のいずれかに記載の絶縁ケーブルの製造方法。
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WO2015129457A1 (ja) * | 2014-02-28 | 2015-09-03 | 株式会社オートネットワーク技術研究所 | 銅合金撚線およびその製造方法、自動車用電線 |
JP2020507001A (ja) * | 2017-01-13 | 2020-03-05 | ハンジョウ シングル テクノロジーズ カンパニー リミテッドHangzhou Xinglu Technologies Co.,Ltd. | ゴム組成物および加工方法、並びにそれを用いた高強度製品および製造方法 |
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