以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、第1実施形態に使用される車両Vのフードパネル16は、図1,2に示すように、エンジンルームERの上方を覆う略長方形板状として、後端19側に配設されたヒンジ部24を回転中心として、前端20側を上方側へ開き可能な前開きタイプとし、閉じる際に、フードパネル16の下面18側における左右方向の中央の前端20付近に配設されているフードロック機構50を使用して、ロックされる構成としている。なお、フードパネル16は、板金製として、上面17側のアウタパネル16aと下面18側のインナパネル16bとを備えて構成され(図3,5参照)、歩行者を受け止める際に塑性変形して衝撃エネルギーを吸収できるように、アウタパネル16aは、インナパネル16bに比べて、塑性変形し易く構成されている。
なお、本明細書での上下、前後、左右の方向は、直進時における車両Vの上下、前後、左右の方向に対応するものである。
ヒンジ部24は、フードパネル16の後端19側における左縁21と右縁22とに配設され、それぞれ、ボディ1側の取付フランジ3に固定されるヒンジベース25、フードパネル16側に固定される取付ブラケット28、及び、ヒンジベース25と取付ブラケット28とに連結されるヒンジアーム27、を備えて構成されている(図3参照)。各ヒンジアーム27は、図3に示すように、板金製のアングル材を下向きに突出させるように略半円弧状に湾曲させた形状として構成され、ヒンジベース25側の元部端27aが、支持軸26を利用してヒンジベース25に対して回動可能に連結され、元部端27aから離れる先端27bが、取付ブラケット28に溶接等を利用して結合されている。各支持軸26は、それらの軸方向を車両Vの左右方向に沿って配設させている。そのため、フードパネル16を開く際には、図3のAの実線から二点鎖線に示すように、左右の支持軸26を回転中心として、各ヒンジアーム27の先端27b側とともに、フードパネル16の前端20側を前開きで上昇させることとなる(図2参照)。
また、フードパネル16には、車両Vの歩行者との衝突時に、図3のA,Bに示すように、フードパネル16の後端19側を斜め上後方向へ跳ね上げる跳ね上げ装置30が組み付けられている。第1実施形態の場合、跳ね上げ装置30は、フードパネル16の後端19を上昇させて、フードパネル16の後端19とカウル10との間に隙間Yを設け、車両Vの左右の前ピラー6をそれぞれ覆うエアバッグ34を、隙間Yから突出させるために、配設されている。そして、跳ね上げ装置30は、フードパネル16の左右のヒンジ部24付近に配置されるアクチュエータ31から構成されている。各アクチュエータ31は、軸方向を上下方向に沿わせた押上ロッド31aを備えて構成され、内部に、マイクロガスジェネレータを内蔵させて、作動時、マイクロガスジェネレータによって発生する燃焼ガスにより、瞬時に、押上ロッド31aを上昇移動させるように構成されている。そして、各アクチュエータ31は、それぞれ、近傍のヒンジアーム27の先端27bを結合させた取付ブラケット28の下方付近に配設され、押上ロッド31aを、取付ブラケット28の前端側下面に設けた受け座32に当接させている。なお、押上ロッド31aは、受け座32に対して当接するだけで結合されておらず、ヒンジ部24の支持軸26を回転中心としてフードパネル16の前端20側を前開きで開く際、上昇する受け座32から離脱することとなる(図3のAの二点鎖線参照)。
そして、各アクチュエータ31が、押上ロッド31aを押し上げるように作動されれば、フードパネル16の後端19は、ヒンジアーム27の元部端27a側の支持軸26を中心として、ヒンジアーム27における元部端27aから先端27bまでの前後方向の長さ分の回転半径で、ヒンジアーム27の先端27b側を上昇させつつ、後上方向に回転する。その際、ヒンジアーム27の先端27bにおけるフードパネル16の取付ブラケット28への連結部位付近は、塑性変形部27cとして、曲げ塑性変形される。そのため、フードパネル16は、跳ね上げ装置30の作動時、後端19が斜め上後方向に跳ね上げられる状態となる。
なお、この跳ね上げ装置30は、後述する第2〜9実施形態においても、同一のものが使用されている。
エアバッグ34は、フードパネル16の後端19における左縁21と右縁22との下方付近にそれぞれ配置されたケース41内に、折り畳まれて収納されている(図3参照)。各エアバッグ34は、内部に配設させたインフレーター36の本体37から、膨張用ガスを供給されることにより、ケース41の扉部42を押し開いて、跳ね上げられたフードパネル16の後端19とカウル10との間の隙間Yから、前ピラー6の前方側を覆うように、突出することとなる。
左右のケース41は、カウル10のカウルパネル10bの前端側に設けられた取付ブラケット44に、インフレーター36から延びる取付ボルト38を挿通させ、取付ボルト38にナット39を締結することにより、カウルパネル10bに固定されている。なお、カウル10は、上部側のカウルルーバ10aと下部側のカウルパネル10bとから構成され、カウルパネル10bのケース41の取付部位には、剛性を高めるために、補強プレート45が固着されている。
また、ヒンジ部24、跳ね上げ装置30のアクチュエータ31、受け座32、エアバッグ34、インフレーター36、ケース41、取付ブラケット44、及び、補強プレート45は、フードパネル16の後端19側の左縁21付近と右縁22付近とにおいて、車両Vの左右方向の中央を基準として、左右対称形に配設されている。
そして、車両Vにおけるフロントバンパ7には、図1に示すように、歩行者との衝突を検知可能なセンサ8が、配設されており、センサ8からの信号を入力させている図示しない作動回路が、センサ8からの信号に基いて車両Vの歩行者との衝突を検知した際、各インフレーター36とフードパネル16の後端19側を跳ね上げる跳ね上げ装置30の各アクチュエータ31とを作動させるように構成されている。
フードパネル16の前開きを規制するフードロック機構50は、図2,4,5に示すように、フードパネル16の左右方向の中央における前端20の下面18側のストライカ配設部位51に設けられたロックストライカ53と、車両Vのボディ1側におけるフロントグリルFGの上端側のラッチ配設部位63に設けられて、ロックストライカ53を係止するラッチ67と、を備えて構成され、そして、第1実施形態の場合、係止補助機構61は、ロックストライカ53に設けられている。
ロックストライカ53は、図4,5に示すように、車両Vの前後方向に沿って延びてラッチ67によるロック時に上下移動を規制されるように係止される係止軸部54と、係止軸部54の前後両側から上方に延びてストライカ配設部位51に接続させた前軸部57及び後軸部59と、を備えた略U字状に形成されている。実施形態の場合、ロックストライカ53は、鋼等からなる金属丸棒を、略U字形状に曲げ加工して形成されている。
ラッチ67は、図2に示すように、車両Vの左右方向の中央付近におけるフロントグリルFGの上端付近において、閉じたフードパネル16の前端20で隠れる位置に配置されている。ラッチ67は、図4に示すように、ラジエータ等を支持するサポートメンバ12に固着されるラッチベース65に保持され、ラッチベース65をラッチ配設部位63側の部材としている。そして、ラッチ67は、図4,5に示すように、前後方向に貫通する凹部からなってロックストライカ53の係止軸部54を収納させる収納凹部70と、係止軸部54の上面側に当接して、係止軸部54の上昇移動を規制する上規制片68と、係止軸部54の下面側に当接する下規制片69と、を備えた略U字板状(二又状)として構成されている。ラッチ67は、図4に示すように、ラッチベース65に固定される支持ピン71により、車両Vの左右方向に沿う鉛直面に沿って、上下に回動可能に支持され、支持ピン71を間にして、上規制片68側から離れる端部側に、係止片72を配設させている。係止片72には、ラッチベース65に接続された引張りばね(コイルばね)73が連結されている。そのため、このラッチ67は、引張りばね73の付勢力により、支持ピン71を中心として、上規制片68と下規制片69とを上方に回転させるように(図4では時計回りに回転させるように)、ラッチベース65に保持されている。また、このラッチ67は、図4のBに示すように、引張りばね73の付勢力によって上方回転して、収納凹部70から係止軸部54を上方へ離脱可能な位置、すなわち、ロック解除位置FPで、停止可能なように、ラッチベース65に設けられた図示しないストッパピンにより、回転角度が規制されている。そしてまた、ラッチ67が、係止軸部54の上面側に上規制片68を当接させて、係止軸部54を収納凹部70に配置させている位置、すなわち、フードパネル16の前開きを規制しているフードロック位置RPに配置されている際には、図4のAに示すように、引張りばね73の付勢力に抗して、下規制片69の上面69a側の先端の係止面69bに、解除レバー75のストッパ片76の先端76aが当接して、ラッチ67は、そのフードロック位置RPに停止されることとなる。
そして、解除レバー75は、ストッパ片76の他に、車両Vの運転席の周囲に配置される図示しない操作レバーに接続された操作ワイヤ80を連結させる連結片78を備えている。この解除レバー75は、ストッパ片76と連結片78との間の上部側に配置されてラッチベース65に固着された支持ピン77により、車両Vの左右方向に沿う鉛直面に沿って回動可能に保持されている。そして、解除レバー75は、図示しないばねにより、支持ピン77を中心として、図4の反時計回りに回転するように、付勢され、かつ、図示しないストッパにより、ストッパ片76の先端76aがラッチ67の下規制片69の係止面69bを係止可能な位置に停止されるように配設されている。そして、解除レバー75は、操作ワイヤ80の牽引時、ストッパ片76を支持ピン77回りで時計回りに回転させて、、ストッパ片76の先端76aを係止面69bから離脱させることから、ラッチ67が、引張りばね73の付勢力により、フードロック位置RPからロック解除位置FPに回転することとなる。なお、解除レバー75は、操作ワイヤ80の牽引が解除されれば、図示しないばねにより、ストッパ片76の先端76aがラッチ67の下規制片69の係止面69bを係止する元の位置に、復帰する。また、ラッチ67が、引張りばね73の付勢力により、フードロック位置RP(図4のAの実線に示す位置)からロック解除位置FP(図4のBの実線に示す位置)に回転する際には、ロックストライカ53の係止軸部54を、下規制片69が押し上げることから、フードロック位置RPからロック解除位置FPまで回転する際の係止軸部54を上昇させる分、フードパネル16の前端20が、上昇する。この時、ラッチ67は、フードパネル16のフードロック機構50として、プライマリラッチとして配設されており、セカンダリラッチとしてのフック状のラッチ82(図2参照)が、フロントグリルFGの上端部位に配設された図示しないロックプレートを係止することから、フードパネル16が、不用意に前開きで開くことは防止される。そして、フードパネル16を前開きで大きく開ける際には、ラッチ82を操作して、図示しないロックプレートとの係止を解除させれば、行なうことができる。また、フードパネル16を閉じてロックする際には、フードパネル16を大きく開けていた状態から、ロック解除位置FPにあるラッチ67の下規制片69の上面69a上に、係止軸部54を載せ、さらに、フードパネル16の前端20を押し下げれば、下規制片69に当たっている係止軸部54がラッチ67を押し下げ、下規制片69がストッパ片76に係止されるフードロック位置RPにラッチ67を配置させ、係止軸部54の上面側に上規制片68を当接させて、フードパネル16の開きを防止するロック状態となる。
この係止軸部54に対するラッチ67の上規制片68と下規制片69との配置は、図5に示すように、フードパネル16を前開きで開けないようにロックする第1ロック位置P1となる。
そして、第1実施形態の場合、第1ロック位置P1で、ロックストライカ53の係止軸部54が、上下をラッチ67の上規制片68と下規制片69とに位置規制されて、係止され、その状態で、跳ね上げ装置30の各アクチュエータ31が作動され、フードパネル16の後端19において、斜め上後方向に跳ね上げられれば、フードパネル16の前端20側のストライカ配設部位51は、後方移動しつつ後部51b側を上昇させる軌跡でずれ移動しようとする(図6のA〜C参照)。
その際、第1実施形態では、ロックストライカ53に配設されている係止補助機構61が、跳ね上げ装置30の作動前にロックしているラッチ67における係止軸部54を係止した第1ロック位置P1から、ストライカ配設部位51のずれ移動を許容可能に、ラッチ67における係止軸部54の前端の前軸部57と交差する屈曲部55付近を係止する第2ロック位置P2まで、ロックストライカ53とラッチ67との相対的な変位を可能とするように、構成されている。そして、第1実施形態の場合、係止補助機構61は、図5、図6のCに示すように、跳ね上げ装置30の作動時におけるストライカ配設部位51のずれ移動に対応して、ラッチ67における係止軸部54を係止する第1ロック位置P1から第2ロック位置P2までの変位分の長さ寸法Lを、係止軸部54に設けることにより、構成されている。
すなわち、第1実施形態では、フードパネル16の前開きを防止したロック状態において、図5と図6のAに示すように、係止軸部54が、その軸方向を、車両Vの前後方向に沿わせ、かつ、略水平方向に沿わせて、配置され、その係止軸部54の前後方向の中間部位を第1ロック位置P1として、まず、ラッチ67が、係止軸部54の前後方向の中間部位の上面に上規制片68を当接させ、かつ、その係止軸部54の前後方向の中間部位の下面側に下規制片69を配置させている。そして、跳ね上げ装置30の作動によって、ストライカ配設部位51が後方移動しつつ後部51b側を上昇させる軌跡でずれ移動する際、図6のB,Cに示すように、後部51b側の上昇分の変位を、屈曲部55の内側面55aの略円弧面(略1/4円の円弧面)を利用して、その内側面55aを上規制片68の下面68a側(詳しくは縁の角付近)に摺接させて、屈曲部55付近(詳しくは、屈曲部55を係止しているラッチ67の係止部位である上規制片68の下面68a付近)を回転中心Cとするようなロックストライカ53の回転で対応させ、かつ、屈曲部55の第1ロック位置P1から屈曲部55の内側面55aに上規制片68を当接させる第2ロック位置P2までの前後方向のロックストライカ53の移動距離に対応して、第1ロック位置P1から第2ロック位置P2までの変位分の長さ寸法Lを確保して、係止軸部54の前後方向の長さが設定されている。
そのため、図6のA〜Cに示すように、第1実施形態のフードロック機構50では、ロックストライカ53をラッチ67が係止しているロック状態で跳ね上げ装置30が作動しても、所定の長さ寸法Lを設けて形成した係止補助機構61を構成する係止軸部54自体が、跳ね上げ装置30の作動前にロックしているラッチ67における係止軸部54を係止した第1ロック位置P1から、ラッチ67における係止軸部54の前端の前軸部57と交差する屈曲部55付近を係止する第2ロック位置P2まで、ラッチ67に対するロックストライカ53の後方移動を許容する。そして、第2ロック位置P2では、上規制片68が屈曲部55の内側面55aに当接して、ラッチ67の上規制片68が屈曲部55付近を係止し、その状態では、ラッチ67より前方側に突出する係止軸部54自体が殆ど存在せず、屈曲部55の内側面55aを上規制片68の下面68a側に摺接させつつ、屈曲部55を係止している上規制片68の下面68a付近を回転中心Cとして、係止軸部54の後部54b側を上昇させる回転が可能となる。すなわち、係止軸部54の屈曲部55より後方側の位置を回転中心として、係止軸部54の後部54b側を上昇させるように回転させる際には、その回転中心より前方側の係止軸部54の部位が、下方へ移動することとなって、ラッチ67の下規制片69やその周囲のラッチを保持するラッチベース65の前縁65a(図5参照)等と干渉(接触)して、係止軸部54の回転が停止されてしまう。これに対し、第1実施形態では、係止軸部54の前端の屈曲部55付近を係止している上規制片68の下面68a付近が回転中心Cとなるだけで、係止軸部54の前部54a側では、ラッチ67等と干渉するような下方回転を行なわず、屈曲部55付近を回転中心Cとして、係止軸部54の後部54b側を上昇させる回転が可能となる。
そして、第1実施形態のフードロック機構50では、第1ロック位置P1から第2ロック位置P2への変位により、ストライカ配設部位51の後方移動が可能となり、第2ロック位置P2での変位により、後部51b側を上昇させる移動が可能となり、その結果、ストライカ配設部位51は、円滑に、後方移動しつつ後部側を上昇させる軌跡で、ずれ移動できる。勿論、第1ロック位置P1から第2ロック位置P2に移動しても、ラッチ67の上規制片68が、係止軸部54の前端の屈曲部55を係止して、フードパネル16の前端20側の上昇を規制しており、フードパネル16のロックが解除される虞れは無い。
したがって、第1実施形態のフードロック機構50では、跳ね上げ装置30の作動時、フードパネル16のロックを解除することなく、ストライカ配設部位51が、円滑に、後方移動しつつ後部側を上昇させる軌跡でずれ移動することができる。
なお、第1実施形態では、跳ね上げ装置30の作動時、フードパネル16の後端19の上昇する高さ寸法HL(図3のB参照)は、約80mmとし、フードパネル16の前端20の後方移動距離BL(図6のC参照)は、約15mmとしている。
また、跳ね上げ装置30の作動時におけるストライカ配設部位51のずれ移動に対応して、ラッチ67における係止軸部54を係止する第1ロック位置P1から第2ロック位置P2までの変位分の長さ寸法Lを、係止軸部54自体に設けて、係止補助機構が構成されている場合には、図7,8に示す第2実施形態のフードロック機構50Aのように構成してもよい。この第2実施形態のフードロック機構50Aの係止補助機構61Aは、第2ロック位置P2(図8のC参照)に、第1ロック位置P1(図7,8のA参照)から第2ロック位置P2への係止軸部54Aに対するラッチ67の前方側への相対移動を可能として、第2ロック位置P2への配置後におけるラッチ67に対する係止軸部54Aの前方移動を規制する前方移動防止機構62が、配設されている。
第2実施形態の場合、ロックストライカ53Aの係止軸部54Aの前部54a側における屈曲部55Aの後方側に、上方に突出する規制突起85が配設され、前方移動防止機構62は、この規制突起85により、構成されている。規制突起85は、前面85a側が、図8のCに示すように、第2ロック位置P2に配置された上規制片68の後面68bに当接して、上規制片68に対して、ロックストライカ53Aの斜め前下方向の移動を規制するように、形成されている。また、跳ね上げ装置の作動時におけるストライカ配設部位51のずれ移動時、ラッチ67が、図8のA〜Cに示すように、ロックストライカ53Aに対して、第1ロック位置P1から第2ロック位置P2の前方側へ相対移動する際に、上規制片68が円滑に規制突起85を乗り越えて屈曲部55Aの内側面55aの位置(第2ロック位置P2)に配置されるように、規制突起85の後面85bが、係止軸部54から緩やかに前上がりとする傾斜状態に設定されている。
なお、第2実施形態では、ラッチ67が、ロックストライカ53Aに対して、第1ロック位置P1から第2ロック位置P2に前方側へ相対移動する際に、係止軸部54Aの前部54aが、ラッチ67の上規制片68と下規制片69との間の収納凹部70の部位を、円滑に通過できるように、規制突起85の後面85bの傾斜の構成の他に、強度低下を招かない範囲で、係止軸部54Aの規制突起85の直下の下面付近から屈曲部55Aの外側面55b側にかけて、上下方向や前後方向の厚さ寸法を小さくするように、肉盗み部86(図7参照)を設けており、一層容易に、上規制片68が第1ロック位置P1から円滑に規制突起85を乗り越えて屈曲部55Aの内側面55aの位置(第2ロック位置P2)に配置されるように、構成されている。
この第2実施形態のフードロック機構50Aでは、ロックストライカ53Aの係止軸部54Aに規制突起85と肉盗み部86を設けた点が、第1実施形態と相違するだけであり、他の構成は、ラッチ67、ラッチ配設部位63、跳ね上げ装置等を含めて、第1実施形態と同様であり、第1実施形態の同一の部位や部材には、第1実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
そして、この第2実施形態のフードロック機構50Aでは、第1実施形態と同様に、跳ね上げ装置の作動時、図8のA〜Cに示すように、係止軸部54Aを所定の長さ寸法Lとすることにより構成した係止補助機構61Aにより、ロックストライカ53Aが、後方移動できるとともに、屈曲部55Aの内側面55aを上規制片68に摺接させつつ、上規制片68の下面68a付近を回転中心Cとして後ろ上がりに回転できて、フードパネル16のロックを解除することなく、ストライカ配設部位51が、円滑に、後方移動しつつ後部側を上昇させる軌跡でずれ移動することができる。さらに、第2実施形態では、ラッチ67が第2ロック位置P2に配置されれば、図8のCに示すように、前方移動防止機構62を構成する規制突起85の前面85aが上規制片68の後面68bに当接して、ラッチ67に対する係止軸部54Aの前方側への移動が規制され、換言すれば、ラッチベース65に固定されているラッチ67に対し、ロックストライカ53Aを配設させているストライカ配設部位51の前方移動が規制されて、すなわち、フードパネル16の斜め前下方向への移動が規制されて、フードパネル16が、後端側の跳ね上げ姿勢を安定させて、停止されることとなる。そのため、フードパネル16の後端側に、フードパネル16の下方へ塑性変形可能な変形スペースを安定して確保でき、歩行者がエンジン等の硬物に間接的に干渉することを、極力防止することができる。
第2実施形態では、前方移動防止機構62として、係止軸部54Aの上面側に突出する規制突起85から構成したが、図9,10に示す第3実施形態のフードロック機構50Bのように、係止軸部54Bの上面側を凹ませて形成した段差凹部88から前方移動防止機構62Bを構成してもよい。
この第3実施形態のフードロック機構50Bでも、跳ね上げ装置の作動時におけるストライカ配設部位51のずれ移動に対応して、ラッチ67における係止軸部54Bを係止する第1ロック位置P1から第2ロック位置P2までの変位分の長さ寸法Lを、係止軸部54B自体に設けて、係止補助機構61Bが構成されている(図10のC参照)。
そして、第3実施形態では、ロックストライカ53Bの係止軸部54Bの前部54a側における屈曲部55Bの後方側を、係止軸部54Bの後部54bより下方へ凹ませるように湾曲させて、係止軸部54Bの前端側に段差凹部88を形成し、前方移動防止機構62Bは、この段差凹部88により、構成されている。段差凹部88は、内周面における後縁側の略上下方向に沿った後壁面88a側が、図10のCに示すように、第2ロック位置P2に配置された上規制片68の後面68bに当接して、上規制片68に対して、ロックストライカ53Aの斜め前下方向の移動を規制するように、形成されている。
また、跳ね上げ装置の作動時におけるストライカ配設部位51のずれ移動時、ラッチ67が、図10のA〜Cに示すように、ロックストライカ53Bに対して、第1ロック位置P1から第2ロック位置P2に前方側へ相対移動する際に、すなわち、係止軸部54Bの前部54aが、ラッチ67の上規制片68と下規制片69との間の収納凹部70の部位を、円滑に通過できるように、強度低下を招かない範囲で、係止軸部54Bの段差凹部88の後縁付近と、段差凹部88の外周面側から屈曲部55の外側面55b側にかけて、上下方向や前後方向の厚さ寸法を小さくするように、肉盗み部89,90(図9参照)を設けており、一層容易に、上規制片68や下規制片69が第1ロック位置P1から円滑に第2ロック位置P2に配置されるように、構成されている。
この第3実施形態のフードロック機構50Bでも、ロックストライカ53Bの係止軸部54Bに段差凹部88と肉盗み部89,90を設けた点が、第1実施形態と相違するだけであり、他の構成は、ラッチ67、ラッチ配設部位、跳ね上げ装置等を含めて、第1実施形態と同様であり、第1実施形態の同一の部位や部材には、第1実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
そして、この第3実施形態のフードロック機構50Bでは、第1,2実施形態と同様に、跳ね上げ装置の作動時、図10のA〜Cに示すように、係止軸部54Bを所定の長さ寸法Lとすることにより構成した係止補助機構61Bにより、ロックストライカ53Bが、後方移動できるとともに、屈曲部55Bの内側面55aを上規制片68に摺接させつつ、上規制片68の下面68a付近を回転中心Cとして後ろ上がりに回転できて、フードパネル16のロックを解除することなく、ストライカ配設部位51が、円滑に、後方移動しつつ後部側を上昇させる軌跡でずれ移動することができる。さらに、第3実施形態では、ラッチ67が第2ロック位置P2に配置されれば、図10のCに示すように、前方移動防止機構62Bを構成する段差凹部88の後壁面88aが上規制片68の後面68bに当接して、ラッチ67に対する係止軸部54Bの前方側への移動が規制され、第2実施形態と同様に、ラッチベース65に固定されているラッチ67に対し、ロックストライカ53Bを配設させているストライカ配設部位51の前方移動が規制されて、すなわち、フードパネル16の斜め前下方向への移動が規制されて、フードパネル16が、後端側の跳ね上げ姿勢を安定させて、停止されることとなる。そのため、フードパネル16の後端側に、フードパネル16の下方へ塑性変形する際の変形スペースを安定して確保でき、歩行者がエンジン等の硬物に間接的に干渉することを、極力防止することができる。
さらに、前方移動防止機構62Cを設ける場合、図11〜13に示す第4実施形態のフードロック機構50Cのように構成してもよい。この第4実施形態では、第1実施形態と同じロックストライカ53とラッチ67を使用しており、前方移動防止機構62Cを構成する規制材92をストライカ配設部位51に配設させた点だけが、第1実施形態と相違している。
この規制材92は、図11,12に示すように、下端92bを前後方向に沿って回動可能に、上端92aをストライカ配設部位51に設けた軸支部93に支持させて構成されている。この規制材92は、剛性を有した金属棒から形成され、上端92aから下端92bにかけて、斜め下前方向に延ばして、第1ロック位置P1に配置されるラッチ67より前方側で、かつ、屈曲部55より後方側の係止軸部54の上面に、下端92bを当接させて配設されている。この規制材92の下端92bの係止軸部54に当接する位置は、第2ロック位置P2にラッチ67が配置された際に、図13のDに示すように、後縁92bbを係止軸部54に当接させた状態で、上規制片68の後面68bに、規制材92の下端92bの前縁92bfが当接可能な位置としている。さらに、この規制材92の上端92aから下端92bまでの長さ寸法RLと、ストライカ配設部位51に対する上端92aの軸支部93の前後方向の配置位置と、に関し、跳ね上げ装置の作動における第1ロック位置P1から第2ロック位置P2への係止軸部54に対するラッチ67の前方側への相対移動を可能とするように、下端92bが、図13のB,Cに示すように、前軸部57と当接することなく、上規制片68に押されて、軸支部93を回転中心として、上方へ回転し、そして、上規制片68が第2ロック位置P2に配置される際に、係止軸部54の上面に当たるように、設定されている。
この第4実施形態でも、第1実施形態と同様に、跳ね上げ装置の作動時、図13のA〜Dに示すように、係止軸部54を所定の長さ寸法Lとすることにより構成した係止補助機構61により、ロックストライカ53が、後方移動できるとともに、屈曲部55の内側面55aを上規制片68に摺接させつつ、上規制片68の下面68a付近を回転中心Cとして後ろ上がりに回転できて、フードパネル16のロックを解除することなく、ストライカ配設部位51が、円滑に、後方移動しつつ後部51b側を上昇させる軌跡でずれ移動することができる。さらに、第4実施形態では、ラッチ67が第2ロック位置P2に配置されれば、前方移動防止機構62Cを構成する規制材92が、上規制片68の後面68bに下端92bの前縁92bfを当接させ、かつ、係止軸部54に下端92bの後縁92bbを当接させ、上規制片68と軸支部93との間でつっかい棒の役目を果たして、ラッチ67に対する係止軸部54の前方側への移動が規制され、ラッチベース65に固定されているラッチ67に対し、ロックストライカ53を配設させているストライカ配設部位51の前方移動が規制されて、第2,3実施形態と同様な作用・効果を得ることができる。
また、係止補助機構としては、図14,15に示す第5実施形態のフードロック機構50Dの係止補助機構61Dのように構成してもよい。この係止補助機構61Dは、ストライカ配設部位51Dに配設されて、第1ロック位置P1から第2ロック位置P2までラッチ67に対するロックストライカ53Dの変位に対応させて、ロックストライカ53Dを移動可能に保持する構成としている。すなわち、この第5実施形態のフードロック機構50Dでは、ストライカ配設部位51Dに、ロックストライカ53の前軸部57Dと後軸部59Dとの上端57a,59aをストライカ配設部位51Dに対して前方側へ相対移動可能に支持するガイド部95,95を設けて、係止補助機構61Dが、構成されている。各ガイド部95は、前軸部57Dと後軸部59Dとの上端57a,59aの左右方向に沿って棒状に延びたスライド部57b,59bを、前方側に相対移動可能に摺動させるガイド溝95aを設けて、構成されている。なお、ガイド溝95aの後部側には、跳ね上げ装置の作動時以外のスライド部57bの前方側への移動を規制し、跳ね上げ装置の作動時におけるストライカ配設部位51Dのずれ移動時には、スライド部57bを乗り越えさせて前方へ相対移動させるストッパ突起95bが、配設されている。
なお、この第5実施形態のフードロック機構50Dでは、ストライカ配設部位51Dの部位に、ガイド部95,95が配設され、また、ロックストライカ53Dの係止軸部54Dが、第1実施形態のロックストライカ53の係止軸部54より、前後方向の長さ寸法を短くし、かつ、前軸部57Dと後軸部59との上端57a,59aに、ガイド部95,95での前方側への相対移動を案内されるスライド部57b,59bを設けた点が、第1実施形態と相違しているだけで、他のラッチ67等は、第1実施形態と同じ構成としている。ちなみに、第2ロック位置P2でのストライカ配設部位51Dの後部51b側の上昇移動時において、ロックストライカ53が、屈曲部55の内側面55a付近を上規制片68の下面68a側を摺動させて、屈曲部55付近を回転中心Cとして回転する際(図15のC,D参照)、前軸部57Dが前方回転し、スライド部57b,59bがそれぞれガイド部95のガイド溝95aを相対的に前進する態様となるため、第1実施形態の第1ロック位置P1からの第2ロック位置P2までの移動距離に対応する係止軸部54の長さ寸法Lに比べて、第5実施形態の係止軸部54D自体の第1ロック位置P1から第2ロック位置P2までの長さ寸法DLとガイド溝95aを移動するスライド部57b,59bの移動距離GLとの合計の寸法(DL+GL)は、大きくなる。
この第5実施形態のフードロック機構50Dでは、跳ね上げ装置の作動時、ストライカ配設部位51Dが後方移動しつつ後部51b側を上昇させる軌跡でずれ移動する際、まず、図15のA,Bに示すように、ラッチ67を係止軸部54Dの前後方向の中央付近より前部54a側に配置させた第1ロック位置P1から、係止軸部54Dが後方移動して、屈曲部55Dの内側面55a側の第2ロック位置P2付近にラッチ67を配置させる。さらに、ストライカ配設部位51Dが後方移動する際には、ロックストライカ53Dの前軸部57Dがラッチ67の上規制片68に後方移動が規制され、図15のBの二点鎖線に示すように、各スライド部57b,59bが各ストッパ突起95bを乗り越えてガイド溝95a内を相対的に前進するように、停止されているロックストライカ53Dの前軸部57Dと後軸部59Dとに対して、前後のガイド部95,95が後方移動し、ストライカ配設部位51Dの後方移動を許容する。さらに、図15のB〜Dに示すように、ストライカ配設部位51Dが後上方向に上昇する際、屈曲部55Dの内側面55aが上規制片68の下面68aに摺動して、ロックストライカ53Dが、屈曲部55Dの内側面55aを係止している上規制片68の下面68a付近を回転中心Cとして、後上がりに回転しつつ、かつ、前軸部57Dと後軸部59Dとの各スライド部57b,59bが対応する各ガイド部95のガイド溝95a内を相対的に前方移動して、ストライカ配設部位51Dが後方移動しつつ後部51b側を上昇させる軌跡でずれ移動できることとなる。
したがって、この第5実施形態のフードロック機構50Dでも、跳ね上げ装置の作動時、係止補助機構61Dにより、フードパネル16のロックを解除することなく、ストライカ配設部位51Dは、円滑に、後方移動しつつ後部51b側を上昇させる軌跡でずれ移動することができる。
なお、第5実施形態では、ガイド部95を介在させてロックストライカ53Dの前軸部57Dと後軸部59Dとの各上端57a,59aがストライカ配設部位51Dに結合されているだけであって、すなわち、各上端57a,59aのスライド部57b,59bは、ガイド部95の前後方向に延びるガイド溝95aによって、上下移動を規制されるため、第1ロック位置P1や第2ロック位置P2において、フードパネル16の前端20を開かせることはない。
また、第5実施形態のフードロック機構50Dでは、係止軸部54Dに対するラッチ67の配置位置に関し、第1ロック位置P1が係止軸部54Dにおける屈曲部55より後方側の位置に配置させた場合を示したが、跳ね上げ装置の作動時におけるストライカ配設部位のずれ移動に対応できれば、ガイド溝95aの前方側へ延びる長さ寸法を長くして、第1ロック位置P1を第2ロック位置P2と同じ位置、すなわち、第1ロック位置P1において、ラッチ67の上規制片68が屈曲部55Dの内側面55aの位置に配置される構成でもよい。
さらに、ロックストライカ自体が移動して、係止軸部の第1ロック位置と第2ロック位置との配置位置に、ラッチを配置させる場合、ロックストライカの移動は、ラッチにおける係止軸部の係止状態を維持して、ストライカ配設部位のずれ移動に対応できれば、ストライカ配設部位に対して、第5実施形態のような相対的な前方移動の他、相対的に下方移動させるように構成してもよい。
さらに、図16,17に示す第6実施形態のフードロック機構50Eにおける係止補助機構61Eのように、ストライカ配設部位51Eに対して、ロックストライカ53Eの後部54b側を、相対的に下方に移動させるように回転移動させて、ずれ移動に対処させる構成としてもよい。この第6実施形態では、ロックストライカ53Eの前軸部57Eの上端57aが、ストライカ配設部位51Eに設けた軸支部97に軸支されて、軸支部97に支持された支持ピン98を回転中心として、ロックストライカ53Eが、係止軸部54Eの後部54bと後軸部59Eとを下方側に回転移動可能として、配設されている。また、この第6実施形態では、後軸部59Eの上端59a側は、ストライカ配設部位51Eの挿通孔99を挿通するとともに、下方回転時の挿通孔99からの抜け防止のストッパ片59cを設けて構成されている。
この第6実施形態のフードロック機構50Eでは、跳ね上げ装置の作動時、ストライカ配設部位51Eが後方移動しつつ後部51b側を上昇させる軌跡でずれ移動する際、まず、図17のA,Bに示すように、ラッチ67を係止軸部54Eの前後方向の中央付近に配置させた第1ロック位置P1から、係止軸部54Eが後方移動して、屈曲部55Dの内側面55a側の第2ロック位置P2にラッチ67を配置させる。さらに、ストライカ配設部位51Dが後方移動しつつ後部51b側を上昇させる際には、ロックストライカ53Eの前軸部57Eがラッチ67の上規制片68に後方移動が規制され、図17のB,Cに示すように、前軸部57Eの上端57aの軸支部97を回転中心として、ロックストライカ53Eの係止軸部54Eの後部54b側と後軸部59Eとを、ストライカ配設部位51Eの後部51bから離れるように、相対的に下方回転させ、と同時に、屈曲部55Eの内側面55aを上規制片68の下面68aに摺動させて、ロックストライカ53Eが、屈曲部55Eの内側面55aを係止している上規制片68の下面68a付近を回転中心Cとして、後上がりに回転し、ストライカ配設部位51Eが後方移動しつつ後部51b側を上昇させる軌跡でずれ移動できることとなる。
したがって、この第6実施形態のフードロック機構50Eでも、跳ね上げ装置の作動時、係止補助機構61Eにより、フードパネル16のロックを解除することなく、ストライカ配設部位51Eは、円滑に、後方移動しつつ後部51b側を上昇させる軌跡でずれ移動することができる。
なお、第6実施形態のフードロック機構50Eにおいて、第1ロック位置P1の状態では、軸支部97を回転中心として、ロックストライカ53Eが、図16に示す状態での時計回りに回転しようとしても、係止軸部54Eが、ラッチ67の上規制片68と、ラッチベース65の後縁65bあるいは下規制片69とに当接して、その回転が規制されるため、フードパネル16は、前端20を上昇させるような開きを防止できる。勿論、逆に、第1ロック位置P1の状態において、軸支部97を回転中心として、ロックストライカ53Eが図16に示す状態での反時計回りに回転しようとしても、係止軸部54Eが、ラッチ67の上規制片68と、ラッチベース65の前縁65aあるいは下規制片69とに当接して、回転が規制される。
また、第2ロック位置P2の状態でも、前軸部57Eが、上端57aを軸支部97を介在させたストライカ配設部位51Eと結合され、下端側を屈曲部55Eの内側面55aに当接させているラッチ67の上規制片68によって、上方移動を規制されるため、フードパネル16が前開きで開くことは無い。
さらに、ストライカ配設部位のずれ移動時にロックストライカ自体を変位させる場合には、図18,19に示す第7実施形態のフードロック機構50Fにおける係止補助機構61Fのように構成してもよい。この第7実施形態の係止補助機構61Fは、ロックストライカ53Fの前軸部57Fをストライカ配設部位51Fに対して相対的に前方移動可能に保持させ、かつ、係止軸部54Fの前軸部57Fと交差する屈曲部55Fを後軸部59Fに対して相対的に前方移動可能として、係止軸部54Fを伸長可能に形成して構成されている。
第7実施形態の場合、ストライカ配設部位51Fには、第5実施形態と同様に、ストッパ突起95bを設けてなるガイド溝95aを備えたガイド部95Fが配設され、ロックストライカ53Fの前軸部57Fの上端57aには、ガイド溝95aに挿入されて、ガイド溝95aに案内されてガイド部95Fに対して相対的に前方移動可能なスライド部57bが配設されている。また、ロックストライカ53Fの係止軸部54Fは、前部54a側と後部54b側とに二分割されるとともに、一方側が他方側に挿入される挿入部101と挿入穴部102とを備えて構成されている。第7実施形態の場合、前部54a側が、屈曲部55側から小径となって、係止軸部54Fの軸方向に沿って棒状に延びる挿入部101を備え、後部54b側が、挿入部101を抜き可能に嵌合させるように挿入させる挿入穴部102を備えて構成されている。
なお、この第7実施形態では、第5実施形態のロックストライカ53Dの後軸部59Dの上端59aを、ガイド部95に接続させずに、ストライカ配設部位51Dに直接結合させ、ストライカ配設部位51Dのずれ移動時、その後軸部59Dのガイド部95を前進するストローク分を、挿入部101が挿入穴部102から抜けるストローク分に変位させて、対処させてものである。
すなわち、この第7実施形態のフードロック機構50Fでは、跳ね上げ装置の作動時、ストライカ配設部位51Fが後方移動しつつ後部51b側を上昇させる軌跡でずれ移動する際、まず、図19のA,Bに示すように、ラッチ67を係止軸部54Fの前後方向の中央付近より前部54a側に配置させた第1ロック位置P1から、係止軸部54Fが後方移動して、屈曲部55Fの内側面55a側の第2ロック位置P2にラッチ67を配置させる。さらに、ストライカ配設部位51Dが後方移動する際には、ロックストライカ53Dの前軸部57がラッチ67の上規制片68に後方移動が規制され、図19のB,Cに示すように、挿入部101を挿入穴部102から抜くように相対的に前進させ、かつ、スライド部57bをストッパ突起95bを乗り越えさせつつガイド溝95a内を相対的に前進させて、停止されているロックストライカ53Fの前軸部57Fに対して、ガイド部95Fとロックストライカ53Fの後軸部59Fとを後方移動させて、ストライカ配設部位51Dの後方移動を許容する。さらに、図19のC,Dに示すように、ストライカ配設部位51Fが後部51b側を上昇させる際、屈曲部55Fの内側面55aが上規制片68の下面68aに摺動して、ロックストライカ53Fが、屈曲部55Fの内側面55aを係止している上規制片68の下面68a付近を回転中心Cとして、後上がりに回転しつつ、かつ、挿入部101の挿入穴部102からの抜けと、前軸部57Fのスライド部57bがガイド部95Fのガイド溝95a内を相対的に前方する移動と、によって、ストライカ配設部位51Fが、後方移動しつつ後部51b側を上昇させる軌跡でずれ移動できることとなる。
したがって、この第7実施形態のフードロック機構50Fでも、跳ね上げ装置の作動時、係止補助機構61Fにより、フードパネル16のロックを解除することなく、ストライカ配設部位51Fは、円滑に、後方移動しつつ後部51b側を上昇させる軌跡でずれ移動することができる。
なお、この第7実施形態のフードロック機構50Fでも、ガイド部95Fを介在させてロックストライカ53Fの前軸部57Fの上端57aがストライカ配設部位51Fに結合され、かつ、前後方向に沿って配置されている係止軸部54Fが、その軸方向に沿って挿入部101を挿入穴部102に嵌入させているだけであって、すなわち、上端57a側のスライド部57bは、ガイド部95Fの前後方向に延びるガイド溝95aによって、上下移動を規制され、かつ、挿入部101も挿入穴部102で上下移動を規制されるため、第1ロック位置P1や第2ロック位置P2において、フードパネル16の前端20を開かせることはない。
また、この第7実施形態においても、係止軸部54Fに対するラッチ67の配置位置に関し、第1ロック位置P1が係止軸部54Fにおける屈曲部55Fより後方側の位置に配置させた場合を示したが、跳ね上げ装置の作動時におけるストライカ配設部位のずれ移動に対応できれば、ガイド溝95aの前方側へ延びる長さ寸法を長くし、かつ、挿入部101の挿入穴部102への挿入長さを長くして、第1ロック位置P1を第2ロック位置P2と同じ位置、すなわち、第1ロック位置P1において、ラッチ67の上規制片68が屈曲部55Fの内側面55aの位置に配置される構成でもよい。
また、フードロック機構の係止補助機構として、ラッチを車体側に保持するラッチ配設部位に配設させて、第1ロック位置から第2ロック位置までロックストライカに対するラッチの変位に対応させて、ラッチを移動可能に保持するように、構成してもよい。
例えば、図20,21に示す第8実施形態のフードロック機構50Gにおける係止補助機構61Gのように、ラッチベース65を保持するラッチ配設部位63Gとしてのサポートメンバ12Gを、跳ね上げ装置の作動時、塑性変形させるように構成して、その塑性変形部位104から係止補助機構61Gを構成してもよい。なお、この第8実施形態では、ストライカ配設部位51に配設されるロックストライカ53Gが、第1実施形態のロックストライカ53より、係止軸部54Gの長さ寸法を短くするだけで、ラッチ67や跳ね上げ装置等の構成は、第1実施形態と同様である。
この第8実施形態の場合には、跳ね上げ装置が作動して、ストライカ配設部位51が、後方移動しつつ後部51b側を上昇させるように、ずれ移動する際、図21のA,Bに示すように、ラッチ67を第1ロック位置P1に配置させた状態からストライカ配設部位51が後方移動して、屈曲部55Gの内側面55aにラッチ67の上規制片68が配置されるように、すなわち、第1ロック位置P1から第2ロック位置P2にラッチ67が配置され、そしてその後には、図21のBの二点鎖線と図21のCの実線に示すように、サポートメンバ12Gの塑性変形部位104が塑性変形し、ラッチ67自体がロックストライカ53Gを係止した状態で斜め上後方向に移動するとともに、ロックストライカ53Gが、屈曲部55Gの内側面55aに上規制片68の下面68aを摺接させつつ、屈曲部55Gの内側面55aを係止する上規制片68の下面68a付近を回転中心Cとして、後ろ上がりに回転できる。
すなわち、第8実施形態のフードロック機構50Gでも、跳ね上げ装置の作動時、係止補助機構61Gにより、フードパネル16のロックを解除することなく、ストライカ配設部位51は、円滑に、後方移動しつつ後部51b側を上昇させる軌跡でずれ移動することができる。
なお、係止補助機構61Gの塑性変形部位104は、図示しない跳ね上げ装置の作動時には、塑性変形し、そして、第1ロック位置P1において、通常の引き上げ力では、フードパネル16の前端20側を前開きで開かせない程度の剛性として、構成されている。
また、第8実施形態では、係止軸部54Gに対するラッチ67の配置位置に関し、第1ロック位置P1が、屈曲部55Gより後方側に配置されているが、塑性変形部位104の塑性変形時におけるラッチベース65の移動が、ストライカ配設部位51のずれ移動に対応できれば、第2ロック位置P2と同じ位置でもよい。
さらに、ラッチ配設部位に係止補助機構を設ける場合、図22〜24に示す第9実施形態のフードロック機構50Hの係止補助機構61Hのように、塑性変形させることなく、ラッチ67を保持するラッチベース65Hを、ストライカ配設部位51のずれ移動に対応させて、移動させるように構成してもよい。第9実施形態の係止補助機構61Hは、ラッチベース65Hの左右の側面に、左右方向に突出する円柱状のガイドピン106を設け、ラッチベース65Hを支持するサポートメンバ12H側に、左右のガイドピン106をそれぞれ案内するガイド溝107を設けて、構成されている。
ガイド溝107は、初期位置からのガイドピン106の後方移動を許容するように、後方に延びる横溝部107aと、横溝部107aの後端から上方に延びる縦溝部107bと、を備えて構成されている。そして、横溝部107aは、ラッチ67がロックストライカ53Hの係止軸部54Hにおける前部54a側を係止している第1ロック位置P1に配置されている際には、フードパネル16の前端20側を上昇させないように、ガイドピン106の上昇移動を規制できるように、配設されている。
なお、この第9実施形態では、ラッチベース65Hにガイドピン106が配設され、ラッチ配設部位63Hにガイド溝107が配設され、さらに、ストライカ配設部位51に配設されるロックストライカ53Hが、第1実施形態のロックストライカ53より、係止軸部54Hの長さ寸法を短くする点が、第1実施形態と相違するだけで、他のラッチ67や跳ね上げ装置等の構成は、第1実施形態と同様である。
この第9実施形態においても、跳ね上げ装置が作動して、ストライカ配設部位51が、後方移動しつつ後部51b側を上昇させるように、ずれ移動する際、図24のA,Bに示すように、ラッチ67を第1ロック位置P1に配置させた状態からストライカ配設部位51が後方移動して、屈曲部55Hの内側面55aにラッチ67の上規制片68が配置されるように、すなわち、第1ロック位置P1から第2ロック位置P2にラッチ67が配置され、そしてその後では、図24のBの二点鎖線と図24のCの実線に示すように、ラッチベース65Gのガイドピン106が、ガイド溝107の横溝部107aを後方移動し、さらに、縦溝部107bを上昇し、かつ、ロックストライカ53Hが、屈曲部55Hの内側面55aに上規制片68の下面68aを摺接させつつ、屈曲部55Hの内側面55aを係止している上規制片68の下面68a付近を回転中心Cとして、後上がりに回転して、ストライカ配設部位51の後方移動しつつ後部51b側を上昇させるずれ移動を、許容する。
すなわち、第9実施形態のフードロック機構50Hでも、跳ね上げ装置の作動時、係止補助機構61Hにより、フードパネル16のロックを解除することなく、ストライカ配設部位51は、円滑に、後方移動しつつ後部51b側を上昇させる軌跡でずれ移動することができる。
なお、第5,7実施形態において、ガイド溝95aをストライカ配設部位51D,51F側に設けて、ロックストライカ53D、53F側にガイド溝95aに挿入されるスライド部57b、59bを設けた場合を示したが、ガイド溝側をロックストライカ側に設け、ガイド溝に挿入されるスライド部側をストライカ配設部位側に配設させてもよい。
同様に、第9実施形態においても、ガイド溝107をサポートメンバ12H側に配置させ、ガイドピン106をラッチベース65H側に設けたが、ガイド溝側をラッチベース側に設けて、ガイドピン側をラッチベースを保持するサポートメンバ側に設けてもよい。
また、各実施形態では、図2,3に示すように、跳ね上げ装置30の作動時、ヒンジ部24のヒンジアーム27が、元部端27a側の支持軸26を回転中心として、先端27b側の回転させつつ、先端27b側の塑性変形部27cを曲げるように塑性変形させて、フードパネル16の後端19を斜め上後方向に移動させた場合を示したが、跳ね上げ装置30の作動時、フードパネル16の後端19が斜め上後方向に移動するように跳ね上げられて、フードパネル16の前端のストライカ配設部位51,51D,51E,51Fが、後方移動しつつ後部51b側を上昇させるようにずれ移動させることができれば、実施形態のヒンジ部24のように、塑性変形させることなく、跳ね上げ装置は、リンク機構を利用して、フードパネル16の後端を跳ね上げるようにしてもよい。
さらに、跳ね上げ装置30は、エアバッグ34を搭載せずに、車両に搭載させてもよく、そのような構成の車両に、本発明のフードロック機構を組み付けてもよい。