JP4978128B2 - 光硬化性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
このように光重合開始剤の種類の選択により、高さ(膜厚)の異なるパターンの一括形成に適した光硬化性樹脂組成物とすることは困難であった。
まず、本発明の光硬化性樹脂組成物について説明する。本発明の光硬化性樹脂組成物は、高さの異なる異種部材を一括形成する際に用いられる光硬化性樹脂組成物であって、少なくともバインダー樹脂と、多官能モノマーと、光重合開始剤と、チオール基を含む連鎖移動剤とを含有することを特徴とするものである。
すなわち、本発明によれば、チオール基を含む連鎖移動剤を含有させることから、光硬化性樹脂組成物の低露光量に対する感度を向上させることができる。これは、チオール基を含む連鎖移動剤は、光重合開始剤と組み合わせて用いることによりその機能が発揮されるものであるが、特に低い露光量が照射された場合に、連鎖移動剤としての機能が選択的に強く発揮されるため、光重合開始剤によって発生した少量のラジカルをより有効に利用することができるからである。したがって、本発明の光硬化性樹脂組成物を用いて感光性樹脂層を形成し、この感光性樹脂層を多階調マスクを介して露光し、現像して、高さの異なる異種部材を形成する場合、従来、多階調マスクを用いた露光において低露光領域が硬化不足となるといった問題を解消することが可能となり、低露光領域における残膜率を高くすることが可能となるため、それぞれの異種部材を所望の高さに容易に形成することができる。
以下、光硬化性樹脂組成物の各構成成分について説明する。
まず、本発明の光硬化性樹脂組成物に含有される連鎖移動剤について説明する。本発明に用いられる連鎖移動剤は、チオール基を含む化合物である。このようなチオール基を含む化合物としては、例えば多官能チオール化合物を用いることができる。多官能チオール化合物は、分子内にメルカプト基(−SH)を少なくとも2つ、好ましくは3つ以上、さらに好ましくは4つ以上有する化合物である。メルカプト基が多いほど、低露光量に対する感度が向上するため、パターン形成の際、現像後の残膜率を制御しやすいからである。
なお、チオール基を含む連鎖移動剤と後述する光重合開始剤との質量比は、形成する異種部材の膜厚に応じて適宜選択される。
次に、本発明の光硬化性樹脂組成物に含有される光重合開始剤について説明する。
本発明に用いられる光重合開始剤としては、例えば紫外線のエネルギーによりフリーラジカルを発生する化合物であって、ベンゾイン、ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン誘導体またはそれらのエステルなどの誘導体;キサントンおよびチオキサントン誘導体;クロロスルフォニル、クロロメチル多核芳香族化合物、クロロメチル複素環式化合物、クロロメチルベンゾフェノン類などの含ハロゲン化合物;トリアジン類;フルオレノン類;ハロアルカン類;光還元性色素と還元剤とのレドックスカップル類;有機硫黄化合物;過酸化物などが挙げられる。中でも、光重合開始剤としては、イルガキュア184、イルガキュア651、イルガキュア2959、ダロキュアー1173(いずれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、アデカ1717(旭電化工業株式会社製)などのケトン系およびビイミダゾール系化合物等が好ましく、特にイルガキュア184、イルガキュア2959が好ましい。
次に、本発明の光硬化性樹脂組成物に含有されるバインダー樹脂について説明する。
本発明に用いられるバインダー樹脂としては、特に限定されるものではなく、一般にカラーフィルタの部材の形成に用いられるバインダー樹脂を用いることができる。具体的には、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ゼラチンなどの感光性または非感光性の樹脂を挙げることができ、これらは一種または二種以上混合して用いてもよい。
次に、本発明の光硬化性樹脂組成物に含有される多官能モノマーについて説明する。本発明に用いられる多官能モノマーは、複数の重合性の官能基を有するものであり、上記バインダー樹脂と重合可能なものであれば特に限定されるものではない。
また、本発明の光硬化性樹脂組成物が酸性官能基含有多官能モノマーと酸性官能基を含有しない多官能モノマーとを含有する場合、硬化性および製版性の調整のし易さから、酸性官能基含有多官能モノマーおよび多官能モノマーの和に対する酸性官能基含有多官能モノマーの質量比が0.1〜1の範囲内であることが好ましい。
本発明の光硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、上記の成分以外にも、界面活性剤、シランカップリング剤等の各種の添加剤を含有することができる。
本発明の光硬化性樹脂組成物には、塗料化および塗工適性を考慮して、通常、溶剤が含有される。溶剤は、チオール基を含む連鎖移動剤、光重合開始剤、バインダー樹脂、多官能モノマー等が溶解もしくは分散するものであれば、特に限定されるものではない。溶剤としては、例えば、特開2004−287227公報に記載のものを用いることができる。
本発明の光硬化性樹脂組成物を製造するには、チオール基を含む連鎖移動剤、光重合開始剤、バインダー樹脂、多官能モノマー、および、その他の成分を適切な溶剤に投入し、ペイントシェーカー、ビーズミル、サンドグラインドミル、ボールミル、アトライターミル、2本ロールミル、3本ロールミルなどの一般的な方法で溶解、分散させればよい。
本発明の光硬化性樹脂組成物は、多階調マスクを用いて、例えばカラー液晶表示装置、モノクロ液晶表示装置、および有機EL表示装置等の種々の表示装置における高さの異なる2種以上の異種部材を一括形成する場合に用いることができ、中でも、カラー液晶表示装置に用いられるカラーフィルタにおける高さの異なる2種以上の異種部材の一括形成に好適に用いられる。
なお、本発明において高さの異なる異種部材とは、基板からその部材表面までの高さが異なるパターンにより構成される部材のことをいい、機能は同一であっても異なっていてもよい。
特に、本発明の光硬化性樹脂組成物は、カラーフィルタにおけるオーバーコート層および柱状スペーサを形成するために用いられることが好ましい。
本発明の光硬化性樹脂組成物を用いて、カラーフィルタにおけるオーバーコート層および柱状スペーサを一括形成する場合、オーバーコート層の膜厚を0.1μm〜10μmの範囲内、好ましくは0.1μm〜5μmの範囲内に、また、柱状スペーサの膜厚を0.1μm〜10μmの範囲内、好ましくは0.1μm〜8μmの範囲内に形成することが可能である。このようなオーバーコート層および柱状スペーサの膜厚は、現在汎用されているものであり、従来では一括形成が困難な膜厚とされていたが、本発明の光硬化性樹脂組成物を用いることにより、これらの一括形成を実現可能となるのである。
また、これらの光重合開始剤の中でも、イルガキュア184およびイルガキュア2959が好ましい。これは、図3(a)に示すように、PETPの組成比率が少なくなるに従って、オーバーコート層(OC)の膜厚も薄くなることから、PETPの組成比率と形成されるオーバーコート層の膜厚とはほぼ比例関係にあるといえるため、オーバーコート層の膜厚制御が容易となるからである。さらに、図3(b)に示すように、柱状スペーサ(CS)の膜厚を広範囲で形成することが可能であるからである。
また、本発明において、イルガキュア184およびイルガキュア2959の中では、イルガキュア184がより好ましい。これは、図3(a)に示すように、イルガキュア184の方が緩やかに上昇した直線を描いていることから、PETPの添加量の誤差による膜厚の変動が生じにくいため、オーバーコート層の膜厚制御の容易さが特に優れているといえるからである。また、図3(b)に示すように、柱状スペーサの膜厚との関係においても、イルガキュア184の方が緩やかな曲線を描いているため、PETPの添加量によって膜厚に大幅なずれが生じることが少なく、柱状スペーサの膜厚制御も容易となるからである。
例えば、光重合開始剤としてイルガキュア184を用いた場合、イルガキュア184を100重量部とした際、PETPを10重量部〜1000重量部の範囲内とすることが好ましく、特に10重量部〜500重量部の範囲内とすることが好ましい。
次に、本発明のカラーフィルタの製造方法について説明する。本発明のカラーフィルタの製造方法は、基板上に上記記載の光硬化性樹脂組成物を塗布して感光性樹脂層を形成する感光性樹脂層形成工程と、透明基板、遮光膜、およびI線透過率が5%〜50%の範囲内である半透過膜が順不同に積層され、上記透明基板上に上記遮光膜が設けられた遮光領域、上記透明基板上に上記半透過膜のみが設けられた半透過領域、および上記透明基板のみからなる透過領域を有する多階調マスクを用いて上記感光性樹脂層を露光し、現像して、光硬化性樹脂組成物を硬化させてなるオーバーコート層および柱状スペーサを同時に形成するオーバーコート層・柱状スペーサ形成工程とを有することを特徴とするものである。
図1は、カラーフィルタにおけるオーバーコート層および柱状スペーサを形成する例である。
まず、図1(a)に示すように、基板2上に遮光部3と、赤色パターン4R、緑色パターン4Gおよび青色パターン4Bから構成される着色層4を形成し、この着色層4上に上述の光硬化性樹脂組成物を塗布し、感光性樹脂層11を形成する。次いで、図1(b)に示すように、感光性樹脂層11を多階調マスク21を介して露光光Lにより露光する。
以下、本発明のカラーフィルタの製造方法における各工程について説明する。
本発明における感光性樹脂層形成工程は、基板上に上述の光硬化性樹脂組成物を塗布して感光性樹脂層を形成する工程である。
なお、光硬化性樹脂組成物については、上記「A.光硬化性樹脂組成物」の項に詳しく記載したので、ここでの説明は省略する。
本発明におけるオーバーコート層・柱状スペーサ形成工程は、透明基板、遮光膜、およびI線透過率が5%〜50%の範囲内である半透過膜が順不同に積層され、上記透明基板上に上記遮光膜が設けられた遮光領域、上記透明基板上に上記半透過膜のみが設けられた半透過領域、および上記透明基板のみからなる透過領域を有する多階調マスクを用いて上記感光性樹脂層を露光し、現像して、光硬化性樹脂組成物を硬化させてなるオーバーコート層および柱状スペーサを一括形成する工程である。
本発明において、オーバーコート層の膜厚は、0.1μm〜10μmの範囲内に形成されることが好ましく、中でも0.1μm〜5μmの範囲内に形成されることが好ましい。
本発明において、柱状スペーサの膜厚としては、0.1μm〜10μmの範囲内に形成されることが好ましく、中でも0.1μm〜8μmの範囲内に形成されることが好ましい。
本発明においては、感光性樹脂層形成工程前またはオーバーコート層・柱状スペーサ形成工程後に、カラーフィルタにおける各種部材を形成する工程を必要に応じて行うことができる。例えば、基板上に遮光部を形成する遮光部形成工程や、基板上に着色層を形成する着色層形成工程、オーバーコート層および柱状スペーサを覆うように配向膜を形成する配向膜形成工程を行うことができる。
本発明のカラーフィルタの製造方法は、オーバーコート層と柱状スペーサとを一括形成するものである。したがって、横電界方式の液晶表示装置に使用されるカラーフィルタの製造に好適に用いられる。横電界方式の液晶表示装置に使用されるカラーフィルタは、表面の平滑性が特に求められていることから、オーバーコート層を必須とする構成であるからである。
重合槽内にベンジルメタクリレート(BzMA)を40重量部、スチレン(St)20重量部、アクリル酸(AA)を20重量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)を20重量部、およびジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)を180重量部、仕込み、攪拌し溶解させた後、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)を4重量部、添加し、均一に溶解させた。その後、窒素気流下で、85℃で2時間攪拌し、さらに100℃で1時間反応させた。さらに得られた溶液にグリシジルメタクリレート(GMA)を10重量部、2-メタクロイルエチルイソシアネート(MOI)を10重量部、トリエチルアミンを0.5重量部、および、ハイドロキノンを0.1重量部、添加し、100℃で5時間攪拌し、目的とするバインダー樹脂溶液A(固形分25%、重量平均分子量35000)を得た。
重合槽内にジエチレングリコールメチルエチルエーテル(DMDG)を180重量部、仕込み、攪拌した後、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)を4重量部、添加し、均一に溶解させた。引き続き、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)を20重量部、グリシジルメタクリレート(GMA)を10重量部、および、メタクリル酸メチル(MMA)を70重量部を仕込み、窒素置換した後に緩やかに攪拌を始めた。溶液温度を85℃に上昇させ、この温度を5時間保持しバインダー樹脂溶液B(固形分40%、重量平均分子量8000)を得た。
光硬化性樹脂組成物を、下記表1に示す割合で、各成分を混合して調製した。
このとき、多官能モノマー(酸性官能基含有多官能モノマー)としては、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートの二塩基酸無水物とジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとからなり、それらを質量比3:7の割合で含む混合物(TO1382 東亞合成(株)製)を用いた。
光重合開始剤Aとしては、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(イルガギュア184 チバスペシャリティケミカルズ社製)、光重合開始剤Bとしては、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン(イルガギュア907 チバスペシャリティケミカルズ社製)、光重合開始剤Cとしては、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(イルガギュア2959 チバスペシャリティケミカルズ社製)、光重合開始剤Dとしては、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1(イルガギュア369 チバスペシャリティケミカルズ社製)を用いた。
チオール基を含む連鎖移動剤Aとしては、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート(PETP 淀化学(株)製)、チオール基を含む連鎖移動剤Bとしては、エチレングリコールビスチオグリコレート(EGTG 淀化学(株)製)を用いた。
シランカップリング剤としては、3−グリドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-403 信越化学(株)製)を用いた。
溶剤としては、メチルエチルアセテートを用いた。
(オーバーコート層および柱状スペーサの形成)
10cm画のガラス基板上に、実施例1〜4および比較例1〜3で得られた光硬化性樹脂組成物を、スピンコーター(MIKASA製、形式1H-DX2)により塗布し、乾燥し、乾燥膜厚6μmの塗膜を形成した。この塗膜をホットプレート上で100℃、3分間プリベークした。所定の形状、大きさ、および間隔を有する露光パターンを形成できるように設計された多階調マスクを配置して、プロキシミティアライナにより紫外線を75mJ/cm2の強度(2kW超高圧水銀ランプUSH-2004TO、405nm照度換算)で照射した。次いで、塗膜が形成された基板上に、0.05重量%KOH水溶液を溶剤型感材用現像装置(芝浦工業(株)製、VFJ0004)にて60秒間散布して、現像した。現像後、塗膜をクリーンオーブン(忍足研究所(株)製、SCOV-250 Hy-So)により、230℃で30分間ポストベークを行った。このようにして、オーバーコート層および柱状スペーサを形成した。
上記オーバーコート層および柱状スペーサについて、触針式膜厚計P−15(ケーエルエー・テンコール(株)製)を用いて膜厚測定を行った。結果を下記表2に示す。
一方、チオール基を含む連鎖移動剤を含有する実施例1〜4では、オーバーコート層および柱状スペーサを一括形成することができた。中でも光重合開始剤としてイルガキュア184、907、2959を用いた実施例1〜3は、オーバーコート層と柱状スペーサとの膜厚差がつけやすい点で優れていた。
2 … 基板
3 … 遮光部
4 … 着色層
4R … 赤色パターン
4G … 緑色パターン
4B … 青色パターン
5 … オーバーコート層
6 … 柱状スペーサ
11 … 感光性樹脂層
21 … 多階調マスク
22 … 透明基板
23 … 遮光膜
24 … 半透過膜
31 … 遮光領域
32 … 半透過領域
33 … 透過領域
Claims (4)
- カラーフィルタにおける、高さの異なるオーバーコート層および柱状スペーサを一括形成する際に用いられる光硬化性樹脂組成物であって、
少なくともバインダー樹脂と、多官能モノマーと、光重合開始剤と、4つ以上のチオール基を有する連鎖移動剤とを含有することを特徴とする光硬化性樹脂組成物。 - 基板上に請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物を塗布して感光性樹脂層を形成する感光性樹脂層形成工程と、透明基板、遮光膜、およびI線透過率が5%〜50%の範囲内である半透過膜が順不同に積層され、前記透明基板上に前記遮光膜が設けられた遮光領域、前記透明基板上に前記半透過膜のみが設けられた半透過領域、および前記透明基板のみからなる透過領域を有する多階調マスクを用いて前記感光性樹脂層を露光し、現像して、前記光硬化性樹脂組成物を硬化させてなるオーバーコート層および柱状スペーサを同時に形成するオーバーコート層・柱状スペーサ形成工程とを有することを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
- 前記オーバーコート層の膜厚が、0.1μm〜10μmの範囲内であり、前記柱状スペーサの膜厚が0.1μm〜10μmの範囲内であることを特徴とする請求項2に記載のカラーフィルタの製造方法。
- 横電界方式の液晶表示装置に使用されるカラーフィルタの製造に用いることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のカラーフィルタの製造方法。
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