JP4974182B2 - グロメット - Google Patents

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本発明は、自動車用のワイヤハーネス等を取付パネルに貫通状態で保持するために用いられるグロメットに関する。
例えば自動車用のワイヤハーネスを取付パネルに設けた嵌合孔に貫通させる際には、ワイヤハーネスの損傷防止及び嵌合孔の防水、防音等を目的として、嵌合孔にグロメットが設けられる。このグロメットは、例えば特許文献1に開示の如く、樹脂製である硬質のグロメットインナと、ゴム製である軟質のグロメットアウタとからなり、グロメットインナは、嵌合孔を遊挿する筒状を呈し、一端側の外側面には、嵌合孔の内縁に係止可能な複数のロック爪(ロック部)が突設され、他端側には、フランジ部が周設されている。一方、グロメットアウタは、グロメットインナのフランジ部に嵌合可能な鍔部と、その鍔部に連設され、グロメットインナよりも小径となる筒状の基部とが一体形成された構造となっている。
よって、グロメットアウタを結合させたグロメットインナを嵌合孔に嵌入させ、ロック爪を嵌合孔の内縁に係止させると、グロメットインナが嵌合孔に嵌合すると共に、グロメットアウタの鍔部が取付パネルに押圧され、グロメットインナのフランジ部との間をシールすることになる。なお、同文献1では、バーリングが形成される嵌合孔へのグロメットインナの嵌合を容易とするために、バーリングに、ロック爪が入り込む傾斜部を有する凹部を設け、凹部にロック爪を入れ込んだ状態でグロメットを回転させることで、傾斜部によるロック爪の案内でグロメットインナを適正な嵌合位置に移動可能としている。
実開平5−57574号公報
このようなグロメットにおいては、角度付きのバーリング等のように嵌合孔の最大径と最小径との差が大きい場合や、バーリングがなくても嵌合孔の寸法精度が低い場合等には、取付パネルの面方向でグロメットインナと嵌合孔との間にがたつきが生じ、ロック爪の係止状態でもグロメットが嵌合孔内で偏ったり回転したりして、車体の振動等によってロック爪の係止が外れたり、防水、防音効果の低下を招いたりするおそれがある。ロック爪の数を増やして面方向で位置決め(センタリング)を図る対策も考えられるが、嵌合時にロック爪の反力が大きくなり、嵌合に大きな力が必要となって着脱に伴う作業性が悪くなってしまう。
そこで、本発明は、嵌合孔の寸法精度が低いような場合でも、着脱に伴う作業性を低下させることなく、嵌合孔内でがたつきなく位置決めして適正位置で確実に取付できるグロメットを提供することを目的としたものである。
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、グロメットインナの外側面に、嵌合孔への挿入時にロック部より先にバーリングの内縁へ弾性的に係止してグロメットインナを嵌合孔内で仮固定する仮固定爪と、仮固定からのさらなる挿入時にバーリングの内縁へ弾性的に当接してグロメットインナを嵌合孔の中心に位置決めし、且つロック部がバーリングの内縁に係止した状態で当該内縁への弾性的な当接を維持する複数のセンタリング部とを設ける一方、センタリング部を、グロメットインナの外側面から外方へ突設され、主として取付パネルの面方向へ弾性を有する弾性片としたことを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成において、センタリング部を、外面に、バーリングの内縁に当接する押圧面を嵌合孔への挿入方向に形成したセンタリング爪とする一方、ロック部を、バーリングの内縁に係止する係止段部を備えたロック爪として、仮固定爪に、バーリングの内縁へ弾性的に係止する仮係止段部を設けて、ロック爪と仮固定爪とセンタリング爪とを嵌合孔の中心との同心円上に配置すると共に、押圧面を、ロック爪において係止段部の内側に形成される外面及び、仮固定爪において仮係止段部の内側に形成される外面よりも外側の円周上に位置させたことを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2の構成において、グロメットインナによるワイヤハーネスの固定を楽に行うために、グロメットインナが、軸方向の分割面で二分割される一対の半割体を組み付けて形成され、各半割体の外側面にロック部とセンタリング部とが夫々設けられることを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れかの構成において、嵌合孔が長円形となるものにあって、グロメットの回転をより効果的に防止するために、グロメットインナの外形を長円形としたことを特徴とするものである。
請求項1に記載の発明によれば、ロック部とは別のセンタリング部の採用により、嵌合孔が角度付きのバーリングを備えたり、嵌合孔の寸法精度が低いような場合でも、着脱に伴う作業性を低下させることなく、グロメットを嵌合孔内でがたつきなく位置決めして適正位置で確実に取付可能となる。
また、センタリング部を、主として取付パネルの面方向へ弾性を有する弾性片としたことで、センタリング部を設けても嵌合時の反力が小さくて済み、着脱に伴う作業性を低下させない。
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加えて、グロメットの嵌合孔への挿入時にセンタリング爪をバーリングの内縁へ確実に当接させることができる。
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2の効果に加えて、グロメットインナを二分割したことで、硬質のグロメットインナであってもワイヤハーネスを挟み込んで楽に固定可能となると共に、各半割体で軸方向、面方向共に均等な固定力を確保できる。
請求項4に記載の発明によれば、請求項1乃至3の何れかの効果に加えて、長円形同士の嵌合によってグロメットの回転をより効果的に防止可能となる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、グロメットの一例を示す側面図、図2は平面図で、グロメット1は、合成樹脂製で硬質のグロメットインナ2と、ゴム製で軟質のグロメットアウタ3とからなっている。まずグロメットインナ2は、後述する取付パネルの嵌合孔に合わせた平面視長円形状の筒状体で、ここでは短軸方向の面(図2の位置A)で2つの半割体4,4に二分割されており、一方の半割体4の分割面に突設した図示しない係止片を、他方の半割体4の分割面に凹設した図示しない凹部に挿入係止させることで、一体に結合される構造となっている。5は、各半割体4の下端に周設されたフランジ部である(図3,4に図示)。
また、各半割体4の外側面には、ロック部となる2つのロック爪6,6と、1つの仮固定爪7と、センタリング部となる4つのセンタリング爪8,8・・とが形成されている。まずロック爪6は、グロメットインナ2の長軸を挟んだ線対称位置で下方へ向けて突設される弾性片で、下端には、取付パネルの嵌合孔に形成されたバーリングの内縁に係止してグロメットインナ2を位置決めする係止段部9が形成されている。
次に、仮固定爪7は、グロメットインナ2の長軸上に位置して下方へ向けて突設される弾性片で、ここでもバーリングの内縁に係止する仮係止段部10が係止されるが、この仮係止段部10は、ロック爪6の係止段部9よりも上方(グロメットインナ2の挿入方向の前方)に位置し、仮係止段部10よりも上側の面は、上方へ行くに従って中心側へ近づくテーパ面11となっている。
そして、センタリング爪8は、ロック爪6よりもさらに半割体4の端部側と、仮固定爪7を挟んで周方向の前後とに配置され、外側斜め下方へ向けて傾斜状に突設される弾性片で、外面には、上下方向の押圧面12と、その押圧面12の上端から上方へ行くに従って中心側へ近づくテーパ面13とが夫々形成されている。
これらのロック爪6、仮固定爪7、センタリング爪8は、夫々半割体4の半円部の中心と同心円上に配置されているが、ここではセンタリング爪8の押圧面12が最も外側の円周上に位置し、その内側にロック爪6の係止段部9の下方側の面が、さらに内側に仮固定爪7の仮係止段部10の下方側の面が夫々位置する設定となっている。
一方、グロメットアウタ3は、グロメットインナ2内に遊挿可能な断面長円状の第1筒部14と、蛇腹を備えた断面円形状の第2筒部15と、両筒部の間に位置する大径長円状のカバー部16とを備え、カバー部16における第1筒部14側には、グロメットインナ2のフランジ部5を外側から覆う折り返し部17が形成され、その折り返し部17の外面に、上方へ行くに従って拡開状となる長円状の内側リップ18と、内側リップ18よりも高く、上方へ行くに従って内側リップ18よりも大きな傾斜で拡開状となる長円状の外側リップ19とが形成されている。
以上の如く構成されたグロメット1を、図3,4に示すように、取付パネル20において内側へ向かって傾斜するバーリング22を有する嵌合孔21に取り付ける場合を説明する。
まず、図示しないワイヤハーネスを挟むようにして、グロメットインナ2の半割体4,4同士を結合させてグロメットインナ2を形成する。そして、グロメットインナ2のフランジ部5に、ワイヤハーネスを貫通させたグロメットアウタ3のカバー部16を被着して両者を一体化させる。このグロメット1を、第1筒部14を先にして嵌合孔21におけるバーリング22の非突設側から差し込み、続いてグロメットインナ2を差し込む。すると、最も上端に位置する仮固定爪7のテーパ面11が最初にバーリング22に当接し、テーパ面11を乗り越えると、図3,4に示すように、グロメット1は、取付パネル20に対して直交姿勢を保ったまま、仮係止段部10がバーリング22の内縁に係止する仮固定状態となる。このとき、グロメットアウタ3の内側リップ18及び外側リップ19は取付パネル20には当接しない。また、図4(B)に示すように、ロック爪6の係止段部9は取付パネル20の下面位置S1及びバーリング22の内縁位置S2の間にあるため、バーリング22の内縁には係止しない。この仮固定状態では、グロメット1の固定力は低いので、ここで取付角度や嵌合孔21内での位置等が容易に確認、調整可能となる。
次に、仮固定状態からさらにグロメット1を嵌合孔21に押し込むと、図5に示すように、センタリング爪8のテーパ面13にバーリング22が当接し、各センタリング爪8がその弾性によって内側へ変形する。このセンタリング爪8の変形により、グロメットインナ2は嵌合孔21内で中心位置に位置決めされることになる。
そして、ここからさらにグロメット1を押し込むと、図6(A)に示すように、バーリング22の先端がセンタリング爪8のテーパ面13を乗り越えて今度は押圧面12がバーリング22の内縁を押圧する。この状態で、同図(B)及び図7のようにロック爪6の係止段部9をバーリング22の内縁に係止させることができる。ここでは、仮固定によってグロメット1は適正な姿勢で位置決めされているので、グロメット1を大きく傾ける必要はなく、小さい角度でロック爪6を順に係止させることができる。また、この係止作業はグロメット1を保持する片手で簡単に行える。
こうして全てのロック爪6がバーリング22の内縁に係止されると、グロメットアウタ3の内側リップ18及び外側リップ19は取付パネル20の下面に当接してカバー部16と取付パネル20との間をシールする。このロック爪6の係止は、センタリング爪8によって位置決めされた状態で行われるため、グロメット1が傾いたり偏心したりすることがなく、適正位置へスムーズに嵌合可能となる。
このように、上記形態のグロメット1によれば、グロメットインナ2の外側面に、嵌合孔21の内縁へ弾性的に当接してグロメットインナ2を嵌合孔21の中心に位置決めする複数のセンタリング爪8,8・・を設けたことで、嵌合孔21が角度付きのバーリング22を備えたり、嵌合孔の寸法精度が低いような場合でも、着脱に伴う作業性を低下させることなく、グロメット1を嵌合孔21内でがたつきなく位置決めして適正位置で確実に取付可能となる。
特にここでは、センタリング爪8は、グロメットインナ2の外側面から外方へ突設され、主として取付パネル20の面方向へ弾性を有する弾性片となっているため、センタリング爪8を設けても嵌合時の反力が小さくて済み、着脱に伴う作業性を低下させない。
また、グロメットインナ2が、軸方向の分割面で二分割される一対の半割体4,4を組み付けて形成され、各半割体4の外側面にロック爪6とセンタリング爪8とが夫々設けられることで、硬質のグロメットインナであってもワイヤハーネスを挟み込んで楽に固定可能となると共に、各半割体4で軸方向、面方向共に均等な固定力を確保できる。
さらに、嵌合孔21が長円形となるものにあっては、グロメットインナ2の外形を長円形としたことで、グロメット1の回転をより効果的に防止可能となる。
そして、嵌合孔21の内縁に、中心側へ傾斜するバーリング22を形成したものにあって、センタリング爪8はバーリング22の内縁へ弾性的に当接する構成としているので、公差による嵌合孔21の最大、最小径の差が大きい角度付きバーリング22の場合でも、センタリング爪8による確実な位置決めが可能となる。
なお、センタリング部は上記形態のセンタリング爪に限らず、数の増減や配置の変更が可能であるのは勿論、外面を曲面としたり、幅を変えたり等の形状の変更も適宜行って差し支えない。また、ロック爪や仮固定爪も同様の設計変更が行える。
さらに、グロメットの基本構造も、嵌合孔が円形や楕円形であればグロメットインナの外形やグロメットアウタの筒部もこれに対応して円形や楕円形にすればよい。
加えて、グロメットインナの分割形態も、分割位置や半割体の結合構造等は適宜変更可能で、分割構造とせずに円形や長円形の筒体を一体に形成することもできる。
グロメットの側面図である。 グロメットの平面図である。 グロメットの仮固定状態の説明図で、(A)が斜視図、(B)が仮固定爪部分の拡大断面図である。 グロメットの仮固定状態の説明図で、(A)が側面、(B)がロック爪と仮固定爪との位置関係を夫々示す拡大断面図である。 グロメットのセンタリング爪部分の拡大断面図である。 グロメットの固定状態の説明図で、(A)がセンタリング爪部分の拡大断面、(B)がロック爪部分の拡大断面を夫々示す。 固定状態のグロメットの側面図である。
符号の説明
1・・グロメット、2・・グロメットインナ、3・・グロメットアウタ、4・・半割体、5・・フランジ部、6・・ロック爪、7・・仮固定爪、8・・センタリング爪、9・・係止段部、10・・仮係止段部、11,13・・テーパ面、12・・押圧面、14・・第1筒部、15・・第2筒部、16・・カバー部、18・・内側リップ、19・・外側リップ、20・・取付パネル、21・・嵌合孔、22・・バーリング。

Claims (4)

  1. 取付パネルに形成されて内縁に中心側へ傾斜するバーリングを形成した嵌合孔に挿入され、前記取付パネルの一方の面側から前記バーリングの内縁に係止する複数のロック部を外側面に設けた筒状のグロメットインナと、前記取付パネルの他方の面側から前記グロメットインナの端部に同軸で被着され、前記取付パネルに当接して前記グロメットインナと取付パネルとの間をシールする筒状のグロメットアウタと、からなるグロメットであって、
    前記グロメットインナの外側面に、前記嵌合孔への挿入時に前記ロック部より先に前記バーリングの内縁へ弾性的に係止して前記グロメットインナを前記嵌合孔内で仮固定する仮固定爪と、前記仮固定からのさらなる挿入時に前記バーリングの内縁へ弾性的に当接して前記グロメットインナを前記嵌合孔の中心に位置決めし、且つ前記ロック部が前記バーリングの内縁に係止した状態で当該内縁への弾性的な当接を維持する複数のセンタリング部とを設ける一方、前記センタリング部を、前記グロメットインナの外側面から外方へ突設され、主として前記取付パネルの面方向へ弾性を有する弾性片としたことを特徴とするグロメット。
  2. 前記センタリング部を、外面に、前記バーリングの内縁に当接する押圧面を前記嵌合孔への挿入方向に形成したセンタリング爪とする一方、
    前記ロック部を、前記バーリングの内縁に係止する係止段部を備えたロック爪として、前記仮固定爪に、前記バーリングの内縁へ弾性的に係止する仮係止段部を設けて、
    前記ロック爪と前記仮固定爪と前記センタリング爪とを前記嵌合孔の中心との同心円上に配置すると共に、前記押圧面を、前記ロック爪において前記係止段部の内側に形成される外面及び、前記仮固定爪において前記仮係止段部の内側に形成される外面よりも外側の円周上に位置させたことを特徴とする請求項1に記載のグロメット。
  3. 前記グロメットインナが、軸方向の分割面で二分割される一対の半割体を組み付けて形成され、前記各半割体の外側面に前記ロック部とセンタリング部とが夫々設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載のグロメット。
  4. 前記嵌合孔が長円形となるものにあっては、前記グロメットインナの外形を長円形としたことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のグロメット。
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