JP4972850B2 - 金属粉含有水溶性固形描画材 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、画用紙などの画面に描画後、水を含む筆で加筆する事により、水彩絵の具のような金属光沢色の描画面が得られる金属粉含有水溶性固形描画材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、水溶性固形描画材としては、水溶性結合材、滑剤、顔料、界面活性剤を主剤として使用し、該滑剤の少なくとも一部としてポリエチレングリコールを含有することを特徴とする水彩色鉛筆芯を要旨とする特開平3−153778号公報、常温で固形のワックス類、HLB価10以上の非イオン系界面活性剤及びヒドロキシル価80以上のワックス類からなる基剤に着色料を配合して成ることを特徴とする水溶性固形描画材を要旨とする特開昭63−199775号公報などが提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平3−153778号公報に開示されたの水彩色鉛筆芯に着色材として金属粉を入れた場合は、経時的に水溶けが悪くなるという不具合が発生する。また、特開昭63−199775号公報に開示された水溶性固形描画材に着色剤として金属粉を入れた場合も、経時的に水溶けが悪くなり、更に中には配合時の加熱溶融でワックス類の分離が発生するため、水溶性描画材として使用できないという問題があった。
本発明は、着色材として金属粉を含み、経時的な水溶け性の低下が生ぜず、言うまでもなく水溶性固形描画材として良好に使用可能な金属粉含有水溶性固形描画材を提供することを課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、金属粉と、合成ワックスと、石油系ワックスと、炭化水素油と、ポリオキシエチレンのモル数が16から18のポリオキシエチレンアルキルエーテルと、ポリオキシエチレンのモル数が38から40のポリオキシエチレンアルキルエーテルとを少なくとも含む金属粉含有水溶性固形描画材を要旨とするものである。
【0005】
以下、本発明を詳述する。
本発明に使用する金属粉は、着色材として使用するものであって、従来公知の金属粉が使用可能である。具体的には、金粉、銀粉、アルミニウム粉、ブロンズ粉、銅粉、ニッケル粉、錫粉、亜鉛粉などが挙げられる。これらの金属粉は単独又は2種以上混合して用いても良い。その使用量は、金属粉の種類によっても大きく異なるが、発色並びに描画性を考慮すれば水溶性固形描画材全量に対して10〜40重量%が好ましい。
【0006】
合成ワックスは、描画材を形作るために使用するものであって、フィッシャートロプシュワックス、低分子量ポリエチレン、フィッシャートロプシュワックスの誘導体、低分子量ポリエチレンの誘導体、モンタンワックスの誘導体、パラフィンワックスの誘導体、マイクロクリスタリンワックスの誘導体、セチルアルコール、ポリエチレングリコールステアレート、カスターワックス、ジアルキルケトンなどが挙げられる。これらのワックスは単独又は2種以上混合して用いても良い。その使用量は、水溶性固形描画材全量に対して20〜60重量%が好ましい。
【0007】
石油系ワックスは、石油精製により得られる常温固体のパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスであり、紙への定着性を向上するために使用するものである。これらのワックスは単独又は2種混合して用いても良い。その使用量は、金属粉含有水溶性固形描画材全量に対して5〜20重量%が好ましい。
【0008】
炭化水素油は、石油精製により得られる常温半固体又は、液体のものであり、筆記タッチを向上するために使用するものであって、具体的には、半固体のものとして、黄色ワセリン、白色ワセリンなどが挙げられ、液体のものとして、マシン油、スピンドル油、流動パラフィンなどが挙げられる。これらは単独又は2種以上混合して用いても良い。その使用量は、金属粉含有水溶性固形描画材全量に対して0.5〜10重量%が好ましい。
【0009】
ポリオキシエチレンのモル数が16から18のポリオキシエチレンアルキルエーテルとポリオキシエチレンのモル数が38から40のポリオキシエチレンアルキルエーテルは、
本金属粉含有水溶性固形描画材を水溶化するために使用するものであって、具体的には、
ポリオキシエチレン(16)セチルエーテル(括弧内の数値は、ポリオキシエチレンのモル数を示す)、ポリオキシエチレン(18)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(16)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(18)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(38)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(40)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(38)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(40)ステアリルエーテルであり、その使用量は、合わせて金属粉含有水溶性固形描画材全量対して10〜30重量%が好ましく、その割合は、ポリオキシエチレンのモル数が16から18のポリオキシエチレンアルキルエーテルとポリオキシエチレンのモル数が38から40のポリオキシエチレンアルキルエーテルの重量比率が1〜3対1で用いるのが好ましい。これは、ポリオキシエチレンのモル数が16から18のポリオキシエチレンアルキルエーテルの割合が少なすぎると、熱溶融時にワックス類の分離が発生し水溶性固形描画材として使用できなくなることが発生したり、又 ポリオキシエチレンのモル数が16から18のポリオキシエチレンアルキルエーテルの割合が多すぎると十分な水溶け性が得られない場合が発生したりすることがあるためである。
【0010】
尚、上記各成分以外、必要に応じて、着色剤として従来公知の無機顔料、有機顔料を金属粉含有水溶性固形描画材に全量対して0.1〜10重量%用いたり、増量剤若しくは充填剤として従来公知のマイカ、クレー、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、シリカ、硫酸バリウムなどの体質顔料を金属粉含有水溶性固形描画材全量に対して1〜20重量%用いたりしてもよい。
【0011】
本発明の金属粉含有水溶性固形描画材は、上記各成分を加熱撹拌混合し、また必要に応じてニーダー、ロールミル等の混練機で混練し、これを溶融状態で型に流し込み、または射出・圧入若しくは押出しし、冷却固化して得ることができる。
【0012】
【作用】
本発明に係る金属粉含有固形描画材に用いるポリオキシエチレンのモル数が16から18のポリオキシエチレンアルキルエーテルは、ワックス、炭化水素油などの親油成分と親和性があり、更に親水性の強いポリオキシエチレンのモル数が38から40のポリオキシエチレンアルキルエーテルとも親和性があるため熱溶融時もワックスなどの分離が発生しない。又ポリオキシエチレンのモル数が16から18のポリオキシエチレンアルキルエーテルとポリオキシエチレンのモル数が38から40のポリオキシエチレンアルキルエーテルは、金属粉との反応性が低いため、経時的に水溶け性が低下する事が少ないため、経時的に安定で水溶け性の良好な金属粉含有水溶性固形描画材が得られる。
【0013】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明する。
Figure 0004972850
上記成分を加熱撹拌混合を行ない、型に流し込んで冷却し金属粉含有水溶性固形描画材を得た。
【0014】
Figure 0004972850
上記成分を実施例1と同様になして金属粉含有水溶性固形描画材を得た。
【0015】
Figure 0004972850
上記成分を実施例1と同様になして金属粉含有水溶性固形描画材を得た。
【0016】
Figure 0004972850
上記成分を実施例1と同様になして金属粉含有水溶性固形描画材を得た。
【0017】
比較例1
実施例1のポリオキシエチレン(16)セチルエーテルを除いた他は、実施例1と同様になして金属粉含有水溶性固形描画材を得た。
【0018】
比較例2
実施例2のポリオキシエチレン(40)ステアリルエーテルを除いた他は、実施例2と同様になして金属粉含有水溶性固形描画材を得た。
【0019】
比較例3
実施例3のポリオキシエチレン(18)ステアリルエーテルの代わりにポリオキシエチレン(10)ステアリルエーテルを用いた他は、実施例3と同様になして金属粉含有水溶性固形描画材を得た。
【0020】
比較例4
実施例4のポリオキシエチレン(40)ステアリルエーテルの代わりにポリオキシエチレン(30)ステアリルエーテルを用いた他は、実施例4と同様になして金属粉含有水溶性固形描画材を得た。
【0021】
比較例5
実施例4のポリオキシエチレン(18)セチルエーテルとポリオキシエチレン(40)ステアリルエーテルの代わりにポリエチレングリコールステアリルエーテルを用いた他は、実施例4と同様になして金属粉含有水溶性固形描画材を得た。
【0022】
比較例6
実施例4のポリオキシエチレン(18)セチルエーテルとポリオキシエチレン(40)ステアリルエーテルの代わりにステアリン酸ジエタノールアミンを用いた他は、実施例4と同様になして金属粉含有水溶性固形描画材を得た。
【0023】
上記実施例1〜4及び比較例1〜6で得られた金属粉含有水溶性固形描画材を用いて、強制経時水溶け性試験、加熱溶融時の状態確認を行なった。
結果を表1に示す。比較例1、3、5は、分離が発生したため色軸に成形できず、水溶け性を測定できなかった。
【0024】
【表1】
Figure 0004972850
【0025】
初期水溶け性試験:上記例で得られた金属粉含有水溶性固形描画材を室温で1日放置した後、画用紙に金属粉含有水溶性固形描画材を用い、塗布圧300g±100gで幅2cm、長さ5cmの区間に塗布する。水を含ませた絵筆(6号画筆、ぺんてる(株)製)を用い2cm幅に対して上下に3cmずつの区間を3往復させる。画用紙が乾燥後、カラーコンピューター(Model SM−4、スガ試験機(株)製)にて、筆で溶解後の2cm幅内のY値(Aと略記する)、上部3cm内のY値(Bと略記する)、及び画用紙自体のY値(Cと略記する)を測定し、以下の式にて水溶け率(%)を計算した。
水溶け率=((C−B)/(C−A))×100 (%)
水溶け率は、値が大きい程水溶け性がよい事を示す。
【0026】
強制経時水溶け性試験:上記初期水溶け性試験で使用した金属粉含有水溶性固形描画材を50℃の恒温層に30日間放置する。放置後、室温で1日冷却し、上記方法と同じ様に水溶け性試験を実施する。
【0027】
溶融状態確認試験:実施例、比較例を溶融加熱撹拌した時の状態を目視評価する。
○:変化無し
×:分離が発生
【0028】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明に係る金属粉含有水溶性固形描画材は、経時的に水に対する溶けが悪くなることがなく、溶融撹拌混合時にも分離が発生せず成形性が良好な優れた特性を有しているものである。

Claims (3)

  1. 金属粉と、合成ワックスと、石油系ワックスと、炭化水素油と、ポリオキシエチレンのモル数が16から18のポリオキシエチレンアルキルエーテルと、ポリオキシエチレンのモル数が38から40のポリオキシエチレンアルキルエーテルとを少なくとも含む金属粉含有水溶性固形描画材。
  2. 上記石油系ワックスがパラフィンワックス又はマイクロクリスタリンワックスである請求項1記載の金属粉含有水溶性固形描画材。
  3. 上記ポリオキシエチレンのモル数が16から18のポリオキシエチレンアルキルエーテルとポリオキシエチレンのモル数が38から40のポリオキシエチレンアルキルエーテルの両者のアルキルエーテルがセチルエーテル又はステアリルエーテルである請求項1又は2記載の金属粉含有水溶性固形描画材。
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