JPH0832846B2 - 水溶性固形描画材 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は、水溶性固形描画材に関するものであり、よ
り詳細には水に溶けやすいにもかかわらず、ベトつきの
ない、書き味の優れた水溶性固形描画材に関する。

（従来の技術） 従来水溶性固形描画材は、着色顔料や体質顔料などの
顔料類と高級脂肪酸のグリセリンエステルや高級一価ア
ルコールと高級脂肪酸とのエステルであるロウも含む一
般のワックス類と界面活性剤を混合した後、所望の形に
成形する方法で製造されていた。

（発明が解決しようとする問題点） しかしこの様な水溶性固形描画材においては、使用す
る界面活性剤のHLB価が10以下の場合、親水性が低下し
て水に溶けにくくなり、また10以上の場合はワックスと
の相溶性が低下する為、成形後長期間放置した場合など
界面活性剤の発汗現象によりベタついたり、ガラス、プ
ラスチック、金属、陶器などの非吸収面に描画後、水分
を含んだ布などで消去しても色残りが生じるなどの欠点
がある。

その他、この種の固形描画材としては、ポリエチレン
グリコールと非イオン系界面活性剤を使用したもの（特
開昭59-176369号公報）、石ケンを着色したもの（特開
昭59-96179号公報）、常温固形のワックスを乳化したも
の（特開昭57-92069号公報）等が知られているが、いず
れも筆記強度、書き味の点で満足のいくものではなかっ
た。

（問題点を解決するための手段） 本発明によれば、常温で固形のワックス類、HLB価10
以上の非イオン系界面活性剤及びヒドロキシル価80以上
のワックス類から成る基剤に着色料を配合して成ること
を特徴とする水溶性固形描画材が提供される。

（作用） 本発明で使用するヒドロキシル価80以上のワックス類
は、極性物質と無極性物質との混和を助ける結合剤とな
るため、HLB価10以上の非イオン系界面活性剤と常温固
形のワックス類の混合物にヒドロキシル価80以上のワッ
クス類を添加することにより、相溶性が向上し、長期間
の放置による界面活性剤の発汗現象であるベタつきが防
止されるのである。

また、ヒドロキシル価80以上のワックス類を使用する
ことにより、HLB価が10以上という親水性の高い非イオ
ン系界面活性剤が有効に使用でき、これにより固形描画
材に水溶性を安定に且つ持続して賦与することができ
る。

（発明の好適実施態様） 本発明において使用する、常温固形のワックス類は、
パラフィンワックス、マイクロワックス、ケトンワック
ス、木ろう、みつろう、ライスワックス、カルナバワッ
クス、キャンデリラワックス、モンタンワックスが挙げ
られ、単独または混合物として用いることも可能であ
る。

本発明においては、常温固形のワックス類を10乃至60
重量％、特に20乃至40重量％の量で用いることも重量で
あり、この量が上記範囲よりも少ないと水溶性描画材に
必要な固着力やソフトな書き味が失われることになり、
一方上記範囲よりも多いと水溶性が低下してしまう。

また本発明に用いるHLB価10以上の非イオン系界面活
性剤としては、ポリエチレングリコールモノステアレー
ト（花王（株）製、商品名エマノーン3199、HLB価19.
1）、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル（花
王（株）製、商品名エマルゲン930、HLB価15.1）、ポリ
オキシエチレンソルビタントリステアレート（花王
（株）製、商品名レオドールTW-S320、HLB価10.5）、ポ
リエチレングリコールステアリルエーテル（花王（株）
製、商品名レベノールPW、HLB価18.2）等が挙げられ、
これらは単独又は混合物として用いることがでる。

本発明においては、HLB価10以上の非イオン系界面活
性剤を５乃至50重量％、特に好ましくは10乃至25重量％
の量で用いることも重要であり、この量が上記範囲より
も少ないと水溶性に劣るようになり、一方上記範囲より
も多いとベトつきの原因となる。

更にまた、本発明で用いるヒドロキシル価80以上のワ
ックス類としては、硬化ひまし油、酸化マイクロクリス
タリンワックス、部分水添ひまし油等が挙げられ、これ
らは単独又は混合物として用いることができる。

本発明においては、ヒドロキシル価80以上のワックス
類を５乃至60重量％、特に好ましくは10乃至40重量％の
量で用いることも重量であり、この量が上記範囲より少
ないと、十分な相溶性が期待できず、ベトつきの原因と
なり、一方上記範囲よりも多いと、製品が脆くなりすぎ
て折損しやすくなってしまう。

本発明において、顔料及び体質顔料としては、従来固
形描画材に使用されているものが全て制限なしに使用す
ることができる。顔料及び体質顔料の適当な例は、これ
に限定されないが、次の通りである。

黒色顔料 カーボンブラック、ランプブラック、ボーンブラッ
ク、鉄黒。

黄色顔料 黄色酸化鉄、ハンザイエロー、ナフトールイエロー、
チタンイエロー、ベンジジンイエロー、パーマネントイ
エロー。

橙色顔料 パーマネントオレンジ、バルカンオレンジ、ベンジジ
ンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジ。

赤色顔料 ベンガラ、リソールレッド、ブリリアントカミン、パ
ーマネントレッド。

紫色顔料 マンガン紫、ファーストバイオレット、メチルバイオ
レットレーキ、キナクリドンバイオレッド。

青色顔料 紺青、フタロシアンブルー、群青、ファーストスカイ
ブルー。

緑色顔料 マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリー
ン、ナフトールグリーン。

白色顔料 チタン白、亜鉛華。

蛍光顔料 体質顔料 炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭
酸マグネシウム、クレー、シリカ、タルク、アルミナホ
ワイト。

中でもタルクが従来のクレヨンに最も近い書き味を与
える。

顔料の全体当り含有量は１乃至30重量％、特に２乃至
20重量％が好ましく、体質顔料の全体当りの含有量は１
乃至25重量％、特に２乃至15重量％の量で存在させるこ
とが望ましい。

本発明による水溶性固形描画材には、上述した必須成
分に加えて、任意の助剤を配合できる。例えば、香料等
を微量配合することもできる。

本発明の水溶性固形描画材は、常温固形のワックス
類、HLB価が10以上の非イオン系界面活性剤、ヒドロキ
シル価80以上のワックス類及び顔料を混練し、この混練
組成物を加熱溶融して注型成形するか、或いは押出成形
に付し、冷却、固化することにより製造される。混練操
作は組成物の粘稠度に応じて、ヘンシェルミキサー、バ
ンバリーミキサー、ロール等を使用することにより容易
に行われる。

（発明の効果） 本発明によれば、描画性に優れ、且つ長期間の保存に
よるベタつきのない、また、ガラス、プラスチック、金
属、陶磁器などの非吸収面に描画後水分を含んだ布で消
去しても、色残りなど生じることなく簡単に拭き取り可
能な水溶性固形描画材を得ることができる。

（実施例） 本発明を以下の実施例で詳細に説明する。尚、以下の
実施例は一例であり、本発明がこれに限定されるもので
はない。

表１に示す組成（実施例１〜３、比較例）をそれぞれ
ミキシングロールにより混練し、加熱溶融した後注型成
形により４種の水溶性固形描画材を作製した。

それぞれ比較検討を行ったところ、実施例１〜３の水
溶性固形描画材は、画用紙に描画後、水分を含んだ筆で
溶かしたところ、顔料分散性に優れ、水彩画的な絵を作
成することができたが、比較例の水溶性固形描画材は顔
料の分散性が悪く、むらが生じてしまった。

更に、実施例１〜３、比較例の４種の水溶性固形描画
材を37℃の恒温槽に内に放置したところ、１時間後に比
較例の水溶性固形描画材には発汗現象によるベタつきが
見られたが、実施例１〜３の水溶性固形描画材は24時間
たっても発汗現象によるベタつきは見られなかった。

また、ガラスにそれぞれ描画した後、水分を含んだ布
で拭いたところ、実施例１〜３の水溶性固形描画材で描
いたガラス面は、簡単且つ完全に拭き取ることができた
が、比較例の水溶性固形描画材で描いたガラス面は、な
かなか拭き取ることができず色残りが生じてしまった。

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】常温で固形のワックス類、HLB価10以上の
   非イオン系界面活性剤及びヒドロキシル価80以上のワッ
   クス類から成る基剤に着色料を配合して成ることを特徴
   とする水溶性固形描画材。
2. 【請求項２】全体当り常温で固形のワックス類が５乃至
   60重量％、非イオン系界面活性剤が５乃至50重量％及び
   ヒドロキシル価80以上のワックス類が５乃至60重量％の
   量で存在する特許請求の範囲第１項の水溶性固形描画
   材。
3. 【請求項３】前記常温固形のワックスが、パラフィンワ
   ックス、マイクロワックス、ケトンワックス、木ろう、
   みつろう、ライスワックス、カルナバワックス、キャン
   デリラワックス、モンタンワックスの内少なくとも一つ
   である特許請求の範囲第１項記載の水溶性固形描画材。
4. 【請求項４】前記非イオン系界面活性剤が、ポリオキシ
   エチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキル
   エーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテ
   ル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポ
   リオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセ
   リン脂肪酸エステルの内少なくとも一つである特許請求
   の範囲第１項記載の水溶性固形描画材。
5. 【請求項５】前記ヒドロキシル価80以上のワックス類が
   硬化ひまし油、酸化マイクロクリスタリンワックス、部
   分水添ひまし油の内少なくとも一つである特許請求の範
   囲第１項記載の水溶性固形描画材。