JP4972462B2 - 灰溶融炉の燃焼室 - Google Patents

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Description

本発明は、都市ごみ焼却残渣(焼却灰、飛灰等)を溶融処理する際に用いられる灰溶融炉の燃焼室の改良に関する。
従来、都市ごみ等の焼却処理に伴い発生する焼却残渣を、灰溶融炉を用いて溶融固化する処理方法が多く利用されている。この溶融処理方法を用いる事に依り焼却残渣の減容化が可能となり、最終処分場の延命化が図れる事に加えて、焼却残渣に含まれるダイオキシン類の分解、重金属類の溶出防止等の無害化が達成されている。
ところで、灰溶融炉は、灰を溶融させる為に1300〜1600℃の高温状態となって居り、溶融処理に伴い発生する排ガスには、多量の可燃性ガス(未燃ガス)(CO、H2 等)と、塩化物(NaCl、KCl等)やリン酸塩(Na3PO4 、Zn3(PO4)2等)や低沸点重金属類(Zn、Pb等)を主成分とする高濃度の気化したダストが含まれている。この様な可燃性ガスとダストを含んだ排ガスは、灰溶融炉の後段に設けられた燃焼室に導入される。
燃焼室には、バーナが設けられて居り、可燃性ガスを燃焼させる為に850〜1000℃になる様に温度調整されていると共に、可燃ガスの燃焼を効率良く行わせる為に10m/sec以上の高速で吹き込まれている。この為、排ガス中のダストに含まれる塩化物やリン酸塩や低沸点重金属類は、これらの融点である約800℃以上の温度に依って液体状となる為に燃焼室の壁面に付着する。付着した液体状のダストは、燃焼室の壁面を伝って下部へ流れ落ち、バーナの位置から遠ざかるに連れて温度が低下して壁面に付着したまま固体状のダストとなり、灰溶融炉の運転継続に伴って固体状のダストが成長し、遂には燃焼室の下部が閉塞状態となる。更に、ダストが排ガスの導入口やバーナ部まで成長すると、運転を継続できなくなってしまう。
この様な問題を解決するものとして、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。
これは、燃焼室の排ガス導入口より下方位置に、導入された排ガスを冷却する為の冷媒噴霧手段を設けると共に、燃焼室の下部壁面を輻射冷却する為の輻射冷却手段を設ける事に依り排ガス中のダストを融点以下とする事で、ダストが壁面に付着・成長するのを防止する様にしたものである。
特開2006−23000号公報
ところが、この様なものは、燃焼室に導入された高温の排ガス中のダストが一瞬にして冷却される訳ではなく、所定温度までに冷却される前のダストが壁面に付着・成長する惧れがあった。又、壁面に付着する前に冷却されて固化したダストは、重力沈降に依って燃焼室の下部から排出されるが、その一部は、排ガスの流れに随伴して燃焼室の上部へ上昇され、ここに設置されたバーナの燃焼ガスに依って再び昇温され、この燃焼ガスの吹き込み部近傍の壁面に付着する事があった。
本発明は、叙上の問題点に鑑み、これを解消する為に創案されたもので、その課題とする処は、灰溶融炉から排出される排ガス中に含まれたダストが燃焼室の壁面に付着・成長するのを抑制する事ができる灰溶融炉の燃焼室を提供するにある。
本発明の灰溶融炉の燃焼室は、灰溶融炉から排出されてガス導入口を通って内部に導入される排ガスを輻射冷却手段に依り冷却する下部冷却部と、下部冷却部の上方に設けられて下部冷却部で冷却された排ガスをバーナからの燃焼ガスの吹き込みに依り燃焼処理を行う上部燃焼部とを備えた塔状の燃焼室であって、前記下部冷却部の内径をガス導入口から導入される排ガスが対向壁面に衝突しない寸法に設定していると共に、バーナからの燃焼ガスの吹き込み速度を5m/sec以下に設定していることに特徴が存する。
下部冷却部には、輻射冷却手段が設けられているので、排ガスが冷却されて排ガス中のダストが固体となり、下部冷却部の壁面に付着し難くなる。下部冷却部の壁面にダストが付着しても、壁面温度が低いので、容易に剥離されて成長する事がない。
下部冷却部の内径をガス導入口から導入される排ガスが対向壁面に衝突しない寸法に設定しているので、ガス導入口の対向壁面でのダストの付着が軽減される。
バーナからの燃焼ガスの吹き込み速度を5m/sec以下に設定しているので、吹き込み速度が従来の半分以下となり、バーナの吹き込み口付近でのダストの付着が軽減される。
本発明に依れば、次の様な優れた効果を奏する事ができる。
(1) 下部冷却部の内径をガス導入口から導入される排ガスが対向壁面に衝突しない寸法に設定していると共に、バーナからの燃焼ガスの吹き込み速度を5m/sec以下に設定しているので、排ガス中のダストが燃焼室の壁面に付着・成長する事なく排出される。その結果、灰溶融炉の連続運転が可能となる。
(2) 下部冷却部の内径をガス導入口から導入される排ガスが対向壁面に衝突しない寸法に設定していると共に、バーナからの燃焼ガスの吹き込み速度を5m/sec以下に設定しているので、燃焼室の壁面に付着したダストが固化する事なく排出される。その結果、付着ダストの除去作業をする必要がない。
(3) 従来の如く、冷媒噴霧手段を設ける必要がないので、これが邪魔にならないばかりでなく、それだけ構造の簡素化を図る事ができる。
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る灰溶融炉の燃焼室を示す概要図である。
燃焼室1は、焼却残渣Aを溶融処理する電気式溶融炉等の灰溶融炉50に適用され、これの下流側に設置されている。
灰溶融炉50は、炉体51と、これの上部に設けられて電源装置(図示せず)からの電力供給を受けて印加される黒鉛電極52と、炉体51の一側部に設けられた灰供給装置53と、炉体51の他側部に設けられたオーバーフロー部54とを備えて居り、灰供給装置53に依り供給された焼却残渣Aは、黒鉛電極52から供給される電気エネルギーに依り連続的に溶融処理されて順次溶融スラグ化されると共に、溶融されたスラグBは、オーバーフロー部54から溢流され、図略しているが、灰溶融炉50に付設されるスラグ水砕装置の水砕水に依り水砕され、水砕スラグとなって系外に排出される様になっている。
燃焼室1は、鉛直向きの塔状を呈し、灰溶融炉50から排出されてガス導入口2を通って内部に導入される排ガスCを輻射冷却手段3に依り冷却する下部冷却部4と、下部冷却部4の上方に設けられて下部冷却部4で冷却された排ガスCをバーナ5からの燃焼ガスDの吹き込みに依り燃焼処理を行う上部燃焼部6とを備えている。
下部冷却部4は、ガス導入口2と輻射冷却手段3を備えて居り、その内径Eは、ガス導入口2から導入される排ガスCが対向壁面7に衝突しない寸法に設定されている。
ガス導入口2は、下部冷却部4の上方側部に形成されて居り、灰溶融炉50の炉体51の上部とはダクト8に依り接続されて連通されている。
輻射冷却手段3は、ガス導入口2から下部冷却部4内に導入された排ガスCを冷却する冷却ジャケット9と、これの内側に内張りされる高熱伝導性耐火物10とを備えている。
冷却ジャケット9は、図略しているが、その内部に所要ピッチ幅に形成された冷却水用の流路が形成されており、ポンプによって汲み上げられた冷却水を、流路内で下から上に向けて流通させて循環させる様に構成されている。つまり、この様な冷却水の循環に依って下部冷却部4内の排ガスCを輻射冷却する様にされている。
高熱伝導性耐火物10は、この例では、高熱伝導率のSiC系キャスタブルを用いている。
上部燃焼部6は、主として断熱性耐火物11に依って塔体に形成されて居り、その内面と下部冷却部4の内面との境界には、段差12が形成されている。
上部燃焼部6の下方側部には、バーナ5が設けられている。そして、バーナ5に依る燃焼ガスDを上部燃焼部6内に吹き込んで排ガスCの燃焼処理を行う様にされている。
バーナ5からの燃焼ガスDの吹き込み速度は、5m/sec以下に設定されて居り、望ましくは3m/secとなる様に吹込み口の寸法が設定されている。
次に、この様な構成に基づいてその作用を述解する。
灰溶融炉50で発生した排ガスCは、多量の可燃性ガスと、塩化物やリン酸塩や低沸点重金属類を主成分とする高濃度のガス状態のダストとが含有されて居り、ダクト8及びガス導入口2を通って燃焼室1の下部冷却部4内に導入される。
この時、下部冷却部4の内径Eは、ガス導入口2から導入される排ガスCが対向壁面7に衝突しない寸法に設定されているので、ガス導入口2の対向壁面7での排ガスC中のダストの付着が軽減される。
下部冷却部4内に排ガスCが導入されると、輻射冷却手段3の冷却ジャケット9に依り輻射冷却されてダストの融点(350〜1000℃)よりも低温にまで冷却される。この為、排ガスC中のダストFは、固化されて燃焼室1の下方に落下されて除去される。又、壁面温度が低いので、付着したダストは容易に剥離する為に、付着ダストが成長する事がない。
下部冷却部4内での冷却処理が行われた排ガスCは、上昇して上部燃焼部6内に流入し、バーナ5による燃焼ガスDに依って燃焼処理が為される。これに依り排ガスC中の可燃性ガスが燃焼される。
この時、バーナ5からの燃焼ガスDの吹き込み速度を5m/sec以下に設定しているので、燃焼ガスDの吹き込み速度が従来の半分以下になり、これに依って排ガスC中のダストが燃焼室の壁面に押し当てられる事がなく、バーナ5の吹込み口付近でのダストの付着が軽減される。
冷却処理及び燃焼処理されて、大部分のダスト及び可燃性ガスが除去された排ガスCは、図略しているが、上部燃焼部6の上端部に設けられたガス導出口からダクトを介して導出され、下流側設備である減温塔に依る減温処理が行われて減温された後、更に下流側のバグフィルター装置に依って集塵処理される。こうして残りのダストが集塵・除去されて清浄化された排ガスは、清浄ガスとなって系外に排出される。
上部燃焼部6と下部冷却部4との境界には、段差12が形成されているので、仮に排ガスC中のダストが、上部燃焼部6内で溶融状態に移行してその壁面に付着したとしても、その溶融ダストは、自重に依り壁面を伝って下方に滑り落ち、段差12から滴の状態で下方に滴下し、それ以降、溶融ダストが下部冷却部4の壁面に接する事がなくなるので、溶融ダストが下部冷却部4の壁面で成長するのを確実に防止する事ができる。
尚、輻射冷却手段3の冷却ジャケット9は、先の例では、冷却水を流通させる様にしたが、これに限らず、例えば冷却水の代わりに冷却空気を流通させる様にしても良い。
図1は、本発明に係る灰溶融炉の燃焼室を示す概要図。
符号の説明
1…燃焼室、2…ガス導入口、3…輻射冷却手段、4…下部冷却部、5…バーナ、6…上部燃焼部、7…対向壁面、8…ダクト、9…冷却ジャケット、10…高伝導性耐火物、11…断熱性耐火物、12…段差、50…灰溶融炉、51…炉体、52…黒鉛電極、53…灰供給装置、54…オーバーフロー部、A…焼却残渣、B…スラグ、C…排ガス、D…燃焼ガス、E…内径、F…ダスト。

Claims (1)

  1. 灰溶融炉から排出されてガス導入口を通って内部に導入される排ガスを輻射冷却手段に依り冷却する下部冷却部と、下部冷却部の上方に設けられて下部冷却部で冷却された排ガスをバーナからの燃焼ガスの吹き込みに依り燃焼処理を行う上部燃焼部とを備えた塔状の燃焼室であって、前記下部冷却部の内径をガス導入口から導入される排ガスが対向壁面に衝突しない寸法に設定していると共に、バーナからの燃焼ガスの吹き込み速度を5m/sec以下に設定していることを特徴とする灰溶融炉の燃焼室。


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