JP4971639B2 - 防潮施設 - Google Patents
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Description
海面が異常に上昇する原因は、強い風が海水を海岸に吹き寄せて海面を上昇させ、低気圧によって海水を吸い上げることから生じる。
そのような現象が満潮時に重なるとさらに海面が上昇して、海や川に接近している民家などはきわめて危険な状態となる。
そのような危険を避けるために、従来から多数の防潮堤が開発されているが、実施には費用や技術上の制約から刑務所の壁のような擁壁を作ってエネルギーを跳ね返すような構想が一般的である。
<1> 刑務所の壁のような防潮堤を構築すると、長い延長にわたって目隠しを設置したことになるから、水域と住民との生活が完全に切断されてしまい、水辺と人々がなじむことによって形成される水辺の文化が育たない。
<2> あるいは巨大なエアバッグを膨らませて止水する防潮堤の提案もあるが、特殊な高価な繊維を使用するものであるため、長い延長にわたって設置することは経済的に困難である。
<3> また膨張させたエアバッグは、その両端を支柱で支持する必要があるが、その支柱にすべての力がかかるために、大きな構造物を設置しなければならない。
<4> その他の防潮施設でも、すべて高潮のエネルギーを全面的に受け止める構造であるから、きわめて大きな支持力が必要となり、不経済なものであった。
さらに本発明の防潮施設は、潮位や水位の上昇による災害を防止するための施設であって、潮位や水位が上昇して来る方向に向けて設置したエネルギー吸収面体と、エネルギー吸収面体よりも内陸側に、潮位や水位が上昇して来る方向に向けて設置した止水面体と、エネルギー吸収面体よりも海側に、潮位や水位が上昇して来る方向に向けて設置した漂流物捕捉面体とより構成し、エネルギー吸収面体は、分散した貫通孔を開設した有孔体で構成し、止水面体は、貫通孔の存在しない無孔体で構成し、漂流物捕捉面体は、エネルギー吸収面体よりも開口総面積の広い貫通孔を開設した有孔体で構成し、エネルギー吸収面体と止水面体の両方、あるいはいずれかが、通常は空中や地中に設置してあり、これを下降、上昇、スライドあるいは引き起こして地表面に位置させる防潮施設を特徴としたものである。
<1>潮位や水位の上昇のエネルギーをすべて受け止めるのではなく、エネルギーを吸収して止める構造であるから、巨大な支持部材を必要とせず、経済的に設置することができる。
<2>長い延長にわたって設置する場合に、通常は中空や地中に設置してあるから、目隠しとはならず、人々が水辺へおりて水と親しむ環境を作り出すことができる。
本件発明の対象は「高潮など」により発生する災害を防止するための施設である。
すなわち、台風による高潮に限らず、小規模な地震にともなう小規模な津波、豪雨による水位の上昇による浸水、あるいは地球規模の異常気象に伴う潮位の上昇などを対象とすることができる。
本発明の防潮施設は、基本的にはエネルギー吸収面体1と止水面体2によって構成する。
すなわち海側にはエネルギー吸収面体1を、それよりも内陸側には止水面体2を設置する。(図1)
このエネルギー吸収面体1は1面ではなく、複数の段に設置することができる。(図2)
さらにエネルギー吸収面体1よりも海側には漂流物捕捉面体3を設けて構成することもできる。(図4)
漂流物捕捉面体3も同様に1面ではなく、複数の面に分割して設置することができる。
その場合に、1面と他の面とは平行に設置してもよいが、平行ではない角度で設置することができる。
あるいはエネルギー吸収面体1も、漂流物捕捉面体3も、長い同一の面体ではなく、中間が途切れた分割状とし、かつ海側に向けて位置が前後した千鳥状に設置することもできる。(図3)ただし止水面体2は分割することはできない。
なお、この明細書で「面体」とは、柔軟性のある膜体や、柔軟性に乏しい壁体をも含む意味で使用している。
また図面には各面体1、2、3だけを記載してあるが、これは説明の便宜上であって、実際には当然、後述するような支柱などの支持体を中間の複数の位置に配置して設置してある。
エネルギー吸収面体1とは、高潮の来る方向に向けて地上、あるいは浅い海底に設置した面体である。
このエネルギー吸収面体1は、エネルギー吸収材料と、その周囲に取付けた枠体によって構成する。
枠体は窓枠のような剛直な鋼材で構成するだけでなく、ガレージや商店の巻き取り式のシャッターのように折り曲げて巻き取ったり、曲面を通過させ得る構成を採用できる。
エネルギー吸収材料は、多数の孔を貫通して開設した有孔体の面状体によって構成する。
エネルギー吸収材料は、合成樹脂製の網や打ち抜き鋼板、合成樹脂の板、コンクリートの板に穴を開けた有孔体、あるいはそれらの複合体などを利用できる。
しかしエネルギー吸収材料としては、できたら水が貫通する際に一定の時間を要し、抵抗を受けるような材料が好ましい。
例えば合成樹脂製の繊維を絡ませてブロック状に固化させた多孔質繊維の面体をエネルギー吸収材として使用することができる。
このようにエネルギー吸収材は、多数の貫通孔は連続孔を開設した有孔体であるから、貫通孔の存在しない穴の周囲や繊維が水の通過の抵抗となりエネルギーを吸収することになる。
とくに繊維を絡ませて形成した面体を使用すれば、繊維の隙間を透過する際に、高潮などの衝撃のエネルギーは大きく吸収されて位置のエネルギーに変換する。
同時にエネルギー吸収面体1の全体がたわむことによっても衝撃のエネルギーの吸収に貢献する。
ここでエネルギーの吸収とは、衝撃力の吸収、波力の減衰などのことを意味する。
このエネルギー吸収材の周囲に枠体を取付けたエネルギー吸収面体1を、後述するように支柱に沿って地上からスライドさせて地表面に下ろしたり、地中から地上に押し上げて利用する。
あるいは上昇、下降させずに地表面に立てた支柱に両側を支持させて常時設置したままにしておくこともできる。特に図3に示すような千鳥状に配置する場合には、常時立てたままにしておいても通行や風景の障害になりにくい。
図1の実施例ではエネルギー吸収面体1は1枚だけの場合を示しているが、図2に示すようにエネルギー吸収面体1を複数枚、すなわち複数の段階に設置することもできる。
なお、図2の実施例ではエネルギー吸収面体1は平行に設置してあるが、必ずしも平行である必要はなく、地形に応じて変化させることができる。
複数の面体を使用する場合にはエネルギー吸収面体1の貫通孔の数や寸法を調整して海側の開口部は大きく、陸側のエネルギー吸収面体1は開口部を小さくして、波、高潮の大きなエネルギーを徐々に吸収することができるように構成する。
多孔質繊維などの場合は空隙率などを異なるものを採用して透水率を海側から陸側に行くにしたがって徐々に小さくしてゆき、エネルギーを効率よく吸収できるような組み合わせとする。
すなわち最も海側に設置したエネルギー吸収面体1は透過率の高いものを、陸側に設置するものにしたがって透過率の低いものを使用する。
このように組み合わせると、複数枚のエネルギー吸収面体1によって、高潮などのエネルギーを段階的に低減させて位置のエネルギーに変えることができる。
エネルギー吸収面体1よりも内陸側に、高潮の来る方向に向けて止水面体2を設置する。
この止水面体2は、貫通孔の存在しない無孔体で構成したものであり、通常の止水シートの1面を鋼製の板や帯で補強したもの、その他公知の面状の止水材料を使用することができる。
この止水面体2も、止水シートなど止水材の周囲を枠体で囲み、枠体ごと地上の空間から地表に下降させるなどの構成を採用できる。
その場合の枠体も、窓枠のような剛直な鋼材で構成するだけでなく、ガレージや商店の巻き取り式のシャッターのように折り曲げて巻き取ったり、曲面を通過させ得る構成を採用できる
すなわち、柔軟なシートに限らず、鋼板、プラスチック製の板、コンクリート板、それらの複合体など、一般に柔軟性があるとは認識できないような素材の面体を採用することもできる。
エネルギー吸収面体1よりも海側に、高潮の来る方向に向けて漂流物捕捉面体3を設置することもできる。
この漂流物捕捉面体3は、高潮などの波に乗って陸上に向かってくる漂流物、例えばヨットや漁船などを補足するための面状体である。
船舶のような漂流物が波によって上陸して家屋や人体に大きな被害を与えていることは各地の津波などで広く知られている。
漂流物捕捉面体3は、分散した貫通孔を開設した有孔体で構成する。
例えばアラミド繊維、炭素繊維を織り込んだベルトを格子状に交差させて面体を構成する。
あるいは強靭な面状体に多数の貫通孔を開口した材料を使用することもできる。
ただし、この漂流物捕捉面体3は、エネルギー吸収面体1よりも開口総面積の広い貫通孔群を開設して構成する。
漂流物捕捉面体3も有孔体であるから、漂流物を補足する機能だけではなく、それ自体にも当然、エネルギーを吸収する機能を備えており、漂流物捕捉面体3という名称は、主な目的が漂流物の補足であるという意味である。
上記したエネルギー吸収面体1、止水面体2、あるいは漂流物捕捉面体3の内、少なくとも、エネルギー吸収面体1と止水面体2が地表面よりも上方から、地表面に向けて下降しうるように構成する。
地表面より上方から下降させるためには、例えば面状体であるエネルギー吸収面体1や止水面体2を海岸線にそった長い遊歩道の屋根として構成する。
通常は遊歩道の日よけや雨よけとして機能させ、高潮などが来襲する可能性がある場合には担当者が屋根から支柱に設けた縦溝に沿ってスライドさせて地上まで引き下ろす。
海側にはエネルギー吸収面体1を鉛直の壁面として位置させ、その内陸側には止水面体2を鉛直の壁面として位置させる。
すると、来襲してきた高潮のエネルギーは、エネルギー吸収面体1の貫通孔を透過する際にエネルギーを吸収されて位置のエネルギーに変換され水位の上昇となる。
エネルギー吸収面体1を複数段に平行して設置し、その貫通孔の開口率を内陸側に行くにしたがって徐々に減少させてゆけば、より効率よくエネルギーを吸収することができる。
エネルギーが吸収されて上昇した海水は、その内陸側に鉛直に設置した止水面体2によって堰きとめられてそれ以上、内陸側に侵入することがなく、民家などに被害を及ぼさない。
さらに漂流物捕捉面体3も地上に引き下ろしてエネルギー吸収面体1の海側に鉛直に設置すれば、湾内に漂流する丸太や小型の船舶などの漂流物をその位置で補足して、エネルギー吸収面体1などへに損害を与えることを防止することができる。
少なくとも、エネルギー吸収面体1と止水面体2が、地表面よりも下方から地表面に向けて上昇しうるように構成する。
そのために海岸線に沿って延長の長い溝を構築する。
そしてエネルギー吸収面体1や止水面体2を溝内に設置し、人力あるいは電気、油圧などによって地表面に上昇しうるように構成する。
このような構成の場合には、平常は地表には障害物が存在せず、緊急時にのみ、鉛直の壁面として各面体が地上に競り上がって来るから、平常時には視覚的には一切障害とはならない。
少なくとも、エネルギー吸収面体1と止水面体2が、地表面を水平方向にスライド可能であるように構成する。
そのために海岸線に沿ってレールを敷設する。そして学校の校門の引き出し型の門扉のように、水平方向に引き出して鉛直の壁面を構成する。
このような構成の場合には、平常時も二重に重なったエネルギー吸収面体1や止水面体2が構造物として地上に露出していることになる。
しかし引き出し作業が簡単で、高潮などが来襲する緊急時に迅速に設置できるという利点がある。
少なくとも、エネルギー吸収面体1と止水面体2が、水平に寝た状態から鉛直に起き上がることが可能であるように構成する。
このような構成の場合には、平常時にはエネルギー吸収面体1や止水面体2は地表面に水平に寝かせてあるので、その上には保護板を敷設しておき遊歩道などとして利用する。
そして緊急時には人力やジャッキなどによって鉛直に引き起こして壁面を構成する。
以上のような面体の下降、上昇、水平移動、引き起こしの動作はすべての面体に一律に採用する必要はない。
例えば一部の面体は下降させ、他の面体は上昇させる、といった異なった作動を組み合わせて使用することができる。
面体自体が軽量なら下降させ、重量物である場合には引き起こす、といった組み合わせである。
2:止水面体
3:漂流物捕捉面体
4:支柱
Claims (5)
- 潮位や水位の上昇による災害を防止するための施設であって、
潮位や水位が上昇して来る方向に向けて設置したエネルギー吸収面体と、
エネルギー吸収面体よりも内陸側に、潮位や水位が上昇して来る方向に向けて設置した止水面体とより構成し、
エネルギー吸収面体は、分散した貫通孔を開設した有孔体で構成し、
止水面体は、貫通孔の存在しない無孔体で構成し、
エネルギー吸収面体と止水面体の両方、あるいはいずれかが、通常は空中や地中に設置してあり、
これを下降、上昇、スライドあるいは引き起こして地表面に位置させる、防潮施設。 - 潮位や水位の上昇による災害を防止するための施設であって、
潮位や水位が上昇して来る方向に向けて設置したエネルギー吸収面体と、
エネルギー吸収面体よりも内陸側に、潮位や水位が上昇して来る方向に向けて設置した止水面体と、
エネルギー吸収面体よりも海側に、潮位や水位が上昇して来る方向に向けて設置した漂流物捕捉面体とより構成し、
エネルギー吸収面体は、分散した貫通孔を開設した有孔体で構成し、
止水面体は、貫通孔の存在しない無孔体で構成し、
漂流物捕捉面体は、エネルギー吸収面体よりも開口総面積の広い貫通孔を開設した有孔体で構成し、
エネルギー吸収面体と止水面体の両方、あるいはいずれかが、通常は空中や地中に設置してあり、
これを下降、上昇、スライドあるいは引き起こして地表面に位置させる、防潮施設。 - エネルギー吸収面体と止水面体の両方、あるいはいずれかが、
地表面よりも上方から、地表面に向けて下降しうるように構成した
請求項1又は2記載の防潮施設。 - エネルギー吸収面体と止水面体の両方、あるいはいずれかが、
地表面よりも下方から、地表面に向けて上昇しうるように構成した、
請求項1又は2記載の防潮施設。 - エネルギー吸収面体と止水面体の両方、あるいはいずれかが、
水平に寝た状態から鉛直に起き上がることが可能であるように構成した、
請求項1又は2記載の防潮施設。
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