JP4726646B2 - 津波による漂流物を捕捉する構造物 - Google Patents

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Description

本発明は、津波そのものの来襲を阻止するのではなく、津波による漂流物を捕捉する構造物に関するものである。
津波が発生すると、住宅や都市の機能に甚大な被害を及ぼすことは知られている。
そのような被害の発生を防止するために従来は津波そのものの来襲を阻止することを目的に、防波堤の構造、消波ブロックの改良、防波堤のかさ上げ、膨大な延長の防波堤の設置、といった技術が提案されている。
特開2004−100231号公報 特開2002−61151号公報
津波は陸上に上がると内陸に数キロまで遡上する場合がある。
その際に、津波によって漁船、木材、いかだ、自動車、コンテナ、クレンのような港湾施設などの巨大な漂流物が押し流される。
津波の漂流物による被害は、人家などの多い平野部においては内陸に数キロにわたって遡上して被害を拡大する。
その結果、波の力だけではなく、巨大な漂流物群によって家屋や倉庫、各種の施設が破壊されていることが分かっている。
しかし上記したような従来の技術は津波自体を剛体で阻止する発想であって、津波による漂流物に対する対策は技術は開発されていない。
さらに、津波の漂流物による被害は、海水が海上から陸上へ上陸する方向と、陸上から海上へ海水が引く場合の双方向に働くために、双方向へ向けた対策が要求されるが、そのような対策も考えられていない。
上記のような課題を解決するために、本発明はを特徴とするものである。
さらに本発明は、上記の発明において、スクリーンの一部、または全部は、支柱の上部の位置に格納してあり、津波の際にはスクリーンを展張しうるように構成し、スクリーンの海側には、衝撃吸収体を位置させて構成した、津波による漂流物を捕捉する構造物を特徴とするものである。
さらに本発明は、上記の発明において、スクリーンの一部、または全部は、地中に格納してあり、津波の際にはスクリーンを展張しうるように構成し、スクリーンの海側には、衝撃吸収体を位置させて構成した、津波による漂流物を捕捉する構造物を特徴とするものである。
さらに本発明は、上記の発明において、スクリーンの一部、または全部は、地表に寝かせて格納してあり、津波の際にはスクリーンを展張しうるように構成し、スクリーンの海側には、衝撃吸収体を位置させて構成した、津波による漂流物を捕捉する構造物を特徴とするものである。
本発明の津波による漂流物を捕捉する構造物は以上のような構成であるから次のような効果を得ることができる。
<1> 津波のエネルギーを城壁のような強固な構造物によって跳ね返すのではなく、海水は透過させてしまい、漂流物の移動だけを緩衝機能を具えて阻止する構造であり、さらに海側に向けて衝撃吸収体を突設してある。そのために比較的簡易な支柱や基礎の構造によって目的を達成することができる。
<2> 津波が上陸してきた場合の漂流物の移動だけを阻止する構造であるから、津波自体のエネルギーによる破壊は阻止できない。しかし実際の破壊を増大している原因は漂流物の衝突であり、この漂流物の移動を阻止することによって家屋などの破壊を大幅に低減することができる。
<3> 津波による被害は、上陸してきた津波によるだけではなく、海水が引き上げる際の被害も大きい。その際に、本発明では陸上側から引き波によって移動する漂流物も阻止する装置も設けてあるから、海水が往復することによる被害を大幅に低減することができる。
<4> コンクリートブロックのような強固な構造物で津波のエネルギーを跳ね返す構造ではないから、津波によって漂流してくる漁船などを穏やかに補足することができ、漂流物自体の破損、損害を低減することができる。
<5> 津波を岸壁の前面で阻止する構造物を設置するには、津波のエネルギーが巨大であることから膨大な費用を要する。しかし津波は上陸した後にはエネルギーが減少して高さが2〜3メートルで人が走る程度の速度になるため、経済的な費用で対応することが可能である。
<6> 海側スクリーンに直接、船舶などの海側漂流物が衝突すると、海側スクリーンを支持する支柱とその基礎には大きな外力が作用するために想定するエネルギー次第では巨大な基礎が必要となる。そのために本件請求項記載の発明では、海側スクリーンの海側に衝撃吸収体を設けてある。津波の際には海側漂流物はまず衝撃吸収体に衝突してエネルギーを減少し、その後に海側スクリーンにより捕捉するから、支柱の断面や基礎を大幅に小さくすることができる。
以下図面を参照にしながら本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。
<1>全体の構成。
本発明の構造物は、津波の影響を受ける可能性のある陸上に設置する構造物であり、スクリーン1と支柱2と衝撃吸収体によって構成する。
スクリーン1は海側スクリーン11と陸側スクリーン12とによって構成する。
各スクリーン1は、緩衝機能と捕捉機能と水の透過機能を備えた膜、ネット、ワイヤ、穴あきの板またはこれらの複合構造のもので構成する。
スクリーン1を支持する支柱2は、単柱、ラーメン構造、合掌タイプなど公知の構造を採用することができる。
支柱2の材料は鋼管、コンクリート、木材、それらの複合体など公知の材料を採用することができる。
<2>海側スクリーン11。
前記したようにスクリーン1は海側スクリーン11と陸側スクリーン12とによって構成する。
海側スクリーン11は、津波が陸上へ上陸してきた際に、漁船などの海側からの漂流物Aの上陸を阻止するための装置である。
この海側スクリーン11は、緩衝機能と捕捉機能と水の透過機能を備えた膜、ネット、ワイヤ、穴あき板またはこれらの複合構造のものを支柱2間に設置して構成する。
<3>陸側スクリーン12。
陸側スクリーン12は、津波の海水が陸上から引き上げる際に、家財道具などの陸側からの漂流物Bの海上への流出を阻止するための装置である。
この陸側スクリーン12も、緩衝機能と捕捉機能と水の透過機能とを備えた膜、ネット、ワイヤ、穴あき板またはこれらの複合構造のものを支柱2間に設置して構成する。
図の実施例では、海側スクリーン11も陸側スクリーン12もワイヤを使用した場合について説明しているがワイヤに限定されるものではない。
また図の実施例では、海側スクリーン11と陸側スクリーン12との位置を前後ニ段に分けて設置しているが、図のような設置状態に限定されるものではない。
<4>透過空間の相違。
陸側スクリーン12と海側スクリーン11との相違は、海水を透過するための透過空間の相違である。
すなわち、陸側スクリーン12の透過空間を小さく、海側スクリーン11の透過空間を大きく形成する。
各スクリーン1をワイヤで構成する場合には、その間隔を陸側スクリーン12では狭く、海側スクリーン11では広く配置する。
各スクリーンをネットで構成する場合には、その網目を陸側スクリーン12では小さく、海側スクリーン11では大きく構成する。
各スクリーン1を穴あきの板体で構成する場合には、その穴の寸法や数を陸側スクリーン12では小さく、海側スクリーン11では大きく構成する。
なぜなら、一般に陸側からの漂流物Bは引き波によって押し流される家財道具のようなサイズの小さいものが多く、一方、海側からの漂流物Aは漁船のように大きいサイズのものが多いからである。
<5>配置高さの相違。
スクリーン1の設置高さは、収納状態は別にして、津波が来る直前には、海側スクリーン11を高い位置に、陸側スクリーン12を海側スクリーン11よりも低い位置に配置する。
両者の配置高さを異ならせる理由は、津波が海側から来襲してきた際には海水面は高く、引き上げる際にはエネルギーが減衰しているから海水面は低くなっているからである。
<6>緩衝機能。
スクリーン1に緩衝機能および捕捉機能を付与する。
そのために、膜、ネット、ワイヤなどの弾力性のある材料で形成し、さらにアラミド繊維などの強い繊維で補強する。
これらの膜やネット、ワイヤは、漂流物が衝突した場合に衝撃のエネルギーを吸収でき(緩衝機能)、かつ、漂流物をできるかぎり損傷させることなく捕捉する(捕捉機能)ことができる。
複数本のワイヤーを張る場合に、各ワイヤーごとにその支柱2間の長さを異ならせて構成することもできる。
支柱2間の距離は一定であり、ワイヤーの長さが異なると直線状に張ったワイヤーと、緩くたるんだものが並存することになるので、例えば各ワイヤーを筒の中に挿入し、筒の中においてたるませておけば複数段に平行させて配置することができる。
なお、筒は漂流物の衝突によって簡単に破壊される程度の材料によって構成する。
複数本のワイヤーの長さが異なれば、漂流物の進入に応じて短いワイヤーから次々に切断しつつエネルギーを吸収させることができる。
複数本のアラミド繊維やPC鋼線をならべてその周囲をFRPのような圧縮、引張強度の低い材料で包囲して板状に形成することもできる。
そのような穴あきの板状体は、漂流物の衝突でまず破損するが、内部の鋼線などが漂流物を包み込む状態で捕捉するから、やはり漂流物をあまり損傷させずに捕捉することができる。
<7>透過構造。
スクリーン1が受ける衝撃を減少させるために、スクリーン1は透過空間が開口している。
図の実施例では各スクリーンはワイヤの間隔があるから、その間隔が水の透過空間となる。
ワイヤ以外にも、例えば、金網、格子、紐を組み合わせたスクリーン1、すだれ状にパイプを並べたスクリーン1などで構成できる。
あるいはエキスパンドメタル、打ち抜き鋼板などを使用できる。
膜や板のような面状体の場合には円形、楕円形、矩形などを穴を開口して透過空間とする。
<8>スクリーン1の収納。
スクリーン1は支柱2間に張設するが、常時、展開しておくだけでなく、支柱2間の上端を水平の梁で連結し、その梁にスクリーン1を折りたたんで取り付けておくこともできる。
あるいは室内に使用するロールカーテンのように、ロール状に巻き取って収納しておくこともできる。
あるいは図6の実施例のように、陸側スクリーン12の周囲に枠を取り付けておき、その枠を支柱の高い位置に収納し、津波の際に窓枠を下げるような状態で引き下ろすこともできる。
あるいは、海側スクリーン11、陸側スクリーン12ともに地中を掘削して設けた溝の内部に収納しておき、津波の際には地上に引き上げて展開することもできる。
あるいはスクリーンを取り付けた枠体を地表に寝かしておき、津波の際には適当な角度まで引き起こして展開することもできる。
以上のように構成すると常時は支柱2が立っているだけ、あるいは支柱も不要となるから、視界の妨げにならず、美観を損ねることもない。
この展開作業は、津波の襲来を検知したセンサーの動作を受けて自動的に展開させ、あるいは人為的に展開させることができる。
センサーとしては、津波の衝撃によって安全装置が外れてスプリング、空気圧、錘などによってスクリーン1が広がるシステムが考えられるが、その他の公知のシステムを採用することができる。
<9>衝撃吸収体。
スクリーンの海側には、衝撃吸収体3を設置する。
衝撃吸収体3の例としては例えば鋼製の中空容器をひさし状に形成して支柱に取り付ける構造を採用することができる。
鋼製の中空容器が支柱2からひさし状に海側へ突出していれば、海側漂流物Aはまずこの衝撃吸収体3に衝突して変形させることにより、エネルギーを低下させることになる。
衝撃吸収体3を中空の容器ではなく、1枚の鋼製の板をひさし状に突設させて取り付けることもできる。
1枚の鋼板であっても、その剛性が大きければ、海側漂流物の衝突のエネルギーを吸収することができる。
一箇所の衝撃吸収体3と、隣接する衝撃吸収体3との距離は近いほど衝撃吸収の効率がよい。
したがって、その設置位置において想定される大型の海側漂流物Aが通過できない程度の間隔、例えば漁船の幅より狭い距離を介在させて設置する。
衝撃吸収体3を、鋼製の中空容器の内部に発泡スチロールやゴムタイヤのような変形が容易な材料のブロックを収納して構成することもできる。
衝撃吸収体3を、鋼製の中空容器の内部に、変形する方向と平行にコイルバネを配置して構成することもできる。
さらに支柱の海側に直接、ゴムタイヤのような柔軟な材料を巻きつけたり、立てておくこともできる。
<10>津波の来襲時の機能。
上記において、スクリーン1の機能を個別に説明したが、ここで津波が来襲した場合のメカニズムを再度説明する。
津波がその波に乗せて漁船や港湾施設や漁船、木材、いかだ、駐車場の自動車、港湾施設のコンテナ、クレンなどの海側漂流物Aを巻き込んで内陸に向けて遡上してくる。
これらの海側漂流物はまず支柱から海側へ突出している衝撃吸収体3に衝突する。
衝撃吸収体3は海側漂流物の衝突のエネルギーによって容易に変形する。
この衝撃吸収体3の変形によって、海側漂流物の移動のエネルギーは大きく減少することになる。
こうしてエネルギーの減少した津波に乗った海側漂流物がスクリーンに衝突する。
スクリーン1は住宅などの重要な構造物の海側に設置してあるから、膜、ネット、ワイヤなどのスクリーン1の捕捉作用によって海側からの漂流物Aを、少ない損傷によって捕捉する。
そのために漁船のような大型の漂流物による家屋の破壊を阻止することができ、漁船なども損傷を与えずに捕捉することができる。
<11>津波の引き上げ時の機能。
本発明の構造物は、津波の海水のエネルギーを同等のエネルギーで跳ね返すものではない。
したがって海水の陸上への遡上は阻止することはできないため、遡上してきた海水が引き上げる際には、商店の商品、家財道具、自転車など、陸上の膨大な材料が海側に流出してしまう。
しかし本発明の構造であれば、スクリーン1が少なくとも引き波の水面高さまで設置されているから、陸側の材料を確実に捕捉することができる。
さらにスクリーン1を海側スクリーン11と陸側スクリーン12の二種類で構成した場合には、その透過空間13を相違させることによって、来襲時と引き波の時との漂流物のエネルギーの相違を反映させてより効率的に被害を低減させることができる。
本発明の捕獲構造の一実施例の説明図 捕獲構造の実施例の側面図。 海側漂流物が衝撃吸収体を変形する状態の説明図。 海側スクリーンで海側漂流物を捕捉する状態の説明図。 陸側スクリーンで陸側漂流物を捕捉する状態の説明図。 他の実施例の説明図。
符号の説明
1:スクリーン
11:海側スクリーン11
12:陸側スクリーン12
13:透過空間
2:支柱
3:衝撃吸収体

Claims (4)

  1. 津波の影響を受ける可能性のある陸上に設置する構造物であって、
    支柱と、支柱間に配置したスクリーンとよりなり、
    スクリーンは、海側からの漂流物を捕捉する海側スクリーンと、
    陸側からの漂流物を捕捉する陸側スクリーンとより構成し、
    陸側スクリーンの透過空間を海側スクリーンの透過空間より小さく、海側スクリーンの透過空間を陸側スクリーンの透過空間より大きく形成し、
    海側スクリーンの海側には、衝撃吸収体を位置させて構成した、
    津波による漂流物を捕捉する構造物。
  2. 請求項1記載の発明において、
    スクリーンの一部、または全部は、支柱の上部の位置に格納してあり、
    津波の際にはスクリーンを展張しうるように構成し、
    スクリーンの海側には、衝撃吸収体を位置させて構成した、
    津波による漂流物を捕捉する構造物。
  3. 請求項1記載の発明において、
    スクリーンの一部、または全部は、地中に格納してあり、
    津波の際にはスクリーンを展張しうるように構成し、
    スクリーンの海側には、衝撃吸収体を位置させて構成した、
    津波による漂流物を捕捉する構造物。
  4. 請求項1記載の発明において、
    スクリーンの一部、または全部は、地表に寝かせて格納してあり、
    津波の際にはスクリーンを展張しうるように構成し、
    スクリーンの海側には、衝撃吸収体を位置させて構成した、
    津波による漂流物を捕捉する構造物。
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