以下、添付図面を参照して、本発明に係る液体吐出ヘッド及びその製造方法について詳細に説明する。
図1は、本発明に係る液体吐出ヘッドを有するインクジェット記録装置の概略を示す全体構成図である。
同図に示すように、このインクジェット記録装置10は、インクの色毎に設けられた複数の印字ヘッド(液体吐出ヘッド)12K、12C、12M、12Yを有する印字部12と、各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部14と、記録紙16を供給する給紙部18と、記録紙16のカールを除去するデカール処理部20と、前記印字部12のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙16の平面性を保持しながら記録紙16を搬送する吸着ベルト搬送部22と、印字部12による印字結果を読み取る印字検出部24と、印画済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部26とを備えている。
図1では、給紙部18の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
ロール紙を使用する装置構成の場合は、図1のように、裁断用のカッター28が設けられ、このカッター28によってロール紙は、所望のサイズにカットされる。カッター28は、記録紙16の搬送路幅以上の長さを有する固定刃28Aと、その固定刃28Aに沿って移動する丸刃28Bとで構成され、搬送路を挟んで印字裏面側に固定刃28A、印字面側に丸刃28Bが配置される。なお、カット紙を使用する場合には、カッター28は不要である。
複数種類の記録紙を利用可能な構成にした場合、紙の種類情報を記録したバーコードあるいは無線タグ等の情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される用紙の種類を自動的に判別し、用紙の種類に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
給紙部18から送り出される記録紙16はマガジンに装填されていたことによる巻き癖が残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部20においてマガジンの巻き癖方向と逆方向に加熱ドラム30で記録紙16に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
デカール処理後、カットされた記録紙16は、吸着ベルト搬送部22へと送られる。吸着ベルト搬送部22は、ローラー31、32間に無端状のベルト33が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する部分が平面(フラット面)をなすように構成されている。
ベルト33は、記録紙16幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引孔(図示省略)が形成されている。図1に示したとおり、ローラー31とローラー32の間に掛け渡されたベルト33の内側には、印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する位置に吸着チャンバー34が設けられており、この吸着チャンバー34をファン35で吸引して負圧にすることにより、ベルト33の上の記録紙16がベルト33に吸着保持される。
ベルト33が巻かれているローラー31、32の少なくとも一方にモータ(図示省略)の動力が伝達されることにより、ベルト33は、図1において、時計回り方向に駆動され、ベルト33上に保持された記録紙16は、図1の左から右へと搬送される。
縁無しプリント等を印字すると、ベルト33上にもインクが付着するので、ベルト33の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)には、ベルト33を清掃するベルト清掃部36が設けられている。ベルト清掃部36の構成については、詳細を図示しないが、たとえば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、あるいはこれらの組み合わせた方式などがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラー線速度を変えると、高い清掃効果を得られる。
なお、吸着ベルト搬送部22に代えて、ローラー・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラー・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面にローラーが接触するので、画像が滲みやすいという問題がある。したがって、本例のように、印字領域では画像面と接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
吸着ベルト搬送部22により形成される用紙搬送路上において、印字部12の上流側には加熱ファン40が設けられている。加熱ファン40は、印字前の記録紙16に加熱空気を吹きつけ、記録紙16を加熱する。印字直前に記録紙16を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾きやすくなる。
印字部12は、最大紙幅に対応する長さを有するライン型ヘッドを紙搬送方向(副走査
方向)と直交する方向(主走査方向)に配置した、いわゆるフルライン型のヘッドとなっている(図2参照)。
図2に示すように、各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yは、本インクジェット記録装置10が対象とする最大サイズの記録紙16の少なくとも一辺を超える長さにわたってノズル(インク吐出口)が複数配列されたライン型ヘッドで構成されている。
記録紙16の搬送方向(紙搬送方向)に沿って上流側(図1の左側)から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の順に各色インクに対応した印字ヘッド12K、12C、12M、12Yが配置されている。記録紙16を搬送しつつ各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yからそれぞれ色インクを吐出することにより記録紙16上にカラー画像を形成し得る。
このように、紙幅の全域をカバーするフルラインヘッドがインク色毎に設けられてなる印字部12によれば、紙搬送方向(副走査方向)について記録紙16と印字部12を相対的に移動させる動作を一回行うだけで(すなわち、一回の副走査で)、記録紙16の全面に画像を記録することができる。これにより、印字ヘッドが紙搬送方向と直交する方向(主走査方向)に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
なお、ここで主走査方向及び副走査方向とは、次のような意味で用いている。すなわち、記録紙の全幅に対応したノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時、(1)全ノズルを同時に駆動するか、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動するか、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動するか等のいずれかのノズルの駆動が行われ、用紙の幅方向(記録紙の搬送方向と直交する方向)に1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)の印字をするようなノズルの駆動を主走査と定義する。そして、この主走査によって記録される1ライン(帯状領域の長手方向)の示す方向を主走査方向という。
一方、上述したフルラインヘッドと記録紙とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)の印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。そして、副走査を行う方向を副走査方向という。結局、記録紙の搬送方向が副走査方向であり、それに直交する方向が主走査方向ということになる。
また、本例ではKCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては、本実施の形態のものに限定されず、必要に応じて淡インク、濃インクを追加してもよい。たとえば、ライトシアン、ライトマゼンタ等のライト系インクを吐出する印字ヘッドを追加する構成も可能である。
図1に示したように、インク貯蔵/装填部14は、各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yに対応する色のインクを貯蔵するタンクを有し、各タンクは図示を省略した管路を介して各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yと連通されている。また、インク貯蔵/装填部14は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段等)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
印字検出部24は、印字部12の打滴結果を撮像するためのイメージセンサ(ラインセンサ等)を含み、このイメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まり、その他の吐出不良をチェックする手段として機能する。
本例の印字検出部24は、少なくとも各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yによるインク吐出幅(画像記録幅)よりも幅の広い受光素子列を有するラインセンサで構成される。このラインセンサは、赤(R)の色フィルタが設けられた光電変換素子(画素)がライン状に配列されたRセンサ列と、緑(G)の色フィルタが設けられたGセンサ列と、青(B)の色フィルタが設けられたBセンサ列とからなる色分解ラインCCDセンサで構成されている。なお、ラインセンサに代えて、受光素子が二次元配列されて成るエリアセンサを用いることも可能である。
印字検出部24は、各色の印字ヘッド12K、12C、12M、12Yにより印字されたテストパターンを読み取り、各ヘッドの吐出検出を行う。吐出判定は、吐出の有無、ドットサイズの測定、ドット着弾位置の測定等で構成される。
印字検出部24の後段には、後乾燥部42が設けられている。後乾燥部42は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、たとえば、加熱ファンが用いられる。印字後、インクが乾燥するまでは、印字面に物が接触することは避けた方が好ましいので、熱風を吹きつける方式が好ましい。
多孔質のペーパに染料系インクを用いて印字した場合などには、加圧によりペーパの孔を塞ぐことで、オゾンなどの染料分子を壊す原因となるものとの接触を防止でき、画像の耐候性をアップさせることができる。
後乾燥部42の後段には、加熱・加圧部44が設けられている。加熱・加圧部44は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラー45で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
このようにして生成されたプリント物は、排紙部26から排出される。本来プリントすべき本画像を印字したものと、テスト印字したものとは、分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置10では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別して、それぞれの排出部26A、26Bへと送るために、排紙経路を切り換える選別手段(図示省略)が設けられている。
なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に形成する場合は、カッター(第2のカッター)48によってテスト印字の部分を切り離す構成とする。カッター48は、排紙部26の直前に設けられ、画像余白部にテスト印字を行って、本画像とテスト印字部を切断する。カッター48の構造は、前述した第1のカッター28と同様であり、固定刃48Aと丸刃48Bとで構成される。
また、図示を省略したが、本画像の排出部26Aには、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられている。
次に、印字ヘッド(液体吐出ヘッド)のノズル(液体吐出口)の配置について説明する。なお、各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号50によって印字ヘッドを表すものとし、図3に印字ヘッド50の平面透視図を示す。
図3に示すように、本実施形態の印字ヘッド50は、インクを液滴として吐出するノズル51、インクに圧力を付与してノズル51から吐出させる圧力室52、図3では図示を省略した共通流路から圧力室52にインクを供給するインク供給口53を含んで構成される圧力室ユニット54が、千鳥状の2次元マトリクス状に配列され、ノズル51の高密度
化が図られている。
このような印字ヘッド50上のノズル配置のサイズは、特に限定されるものではないが、一例としてノズル51を横48行(21mm)、縦600列(305mm)に配列することにより2400npiを達成する。
なお、図3に示す例では、圧力室52の平面形状が略正方形状をしているが、圧力室52の平面形状は、このような正方形に限定されるものではない。
圧力室52には、図3に示すように、その対角線の一方の端にノズル51が形成され、他方の端にインク供給口53が設けられている。
また、図4は他の印字ヘッドの構造例を示す平面透視図である。図4に示すように、複数の短尺ヘッド50’を2次元の千鳥状に配列して繋ぎ合わせて、これらの複数の短尺ヘッド50’全体で印字媒体の全幅に対応する長さとなるようにして1つの長尺のフルラインヘッドを構成するようにしてもよい。
図5はインクジェット記録装置10におけるインク供給系の構成を示した概要図である。
インクタンク60は、印字ヘッド50にインクを供給するための基タンクであり、図1で説明したインク貯蔵/装填部14に設置される。インクタンク60の形態には、インク残量が少なくなった場合に補充口(図示省略)からインクを補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。使用用途に応じてインク種類を替える場合にはカートリッジ方式が適している。この場合、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じて吐出制御を行うことが好ましい。なお、図5のインクタンク60は、先に記載した図1のインク貯蔵/装填部14と等価のものである。
図5に示したように、インクタンク60と印字ヘッド50を繋ぐ管路の中間には、異物や気泡を除去するために、フィルタ62が設けられている。フィルタ・メッシュサイズは、印字ヘッド50のノズル径と同等若しくはノズル径以下(一般的には、20μm程度)とすることが好ましい。
なお、図5には示さないが、印字ヘッド50の近傍又は印字ヘッド50と一体にサブタンクを設ける構成も好ましい。サブタンクは、ヘッドの内圧変動を防止するダンパー効果及びリフィルを改善する機能を有する。
また、インクジェット記録装置10には、ノズルの乾燥を防止する手段又はノズル近傍のインク粘度上昇を防止する手段としてのキャップ64と、ノズル面50Aを清掃する手段としてのクリーニングブレード66とが設けられている。
これらキャップ64及びクリーニングブレード66を含むメンテナンスユニットは、図示を省略した移動機構によって印字ヘッド50に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置から印字ヘッド50下方のメンテナンス位置に移動される。
キャップ64は、図示しない昇降機構によって印字ヘッド50に対して相対的に昇降変位される。昇降機構は、電源OFF時や印刷待機時にキャップ64を所定の上昇位置まで上昇させ、印字ヘッド50に密着させることにより、ノズル面50Aのノズル領域をキャップ64で覆うようになっている。
クリーニングブレード66は、ゴムなどの弾性部材で構成されており、図示を省略したブレード移動機構により、印字ヘッド50のインク吐出面(ノズル面50A)を摺動可能に設けられている。ノズル面50Aにインク液滴や異物が付着した場合は、このクリーニングブレード66をノズル面50Aに沿って摺動させることで付着物を拭き取り、ノズル面50Aを清掃する。
印字中又は待機中において、特定のノズル51の使用頻度が低くなり、そのノズル51の近傍のインク粘度が上昇した場合は、粘度が上昇して劣化したインクを排出すべく、キャップ64に向かって予備吐出が行われる。
また、印字ヘッド50内のインク(圧力室52内のインク)に気泡が混入した場合は、印字ヘッド50にキャップ64を当てて、吸引ポンプ67で圧力室52内のインク(気泡が混入したインク)を吸引除去し、回収タンク68へ送液する。この吸引動作は、初期のインクのヘッドへの装填時、あるいは長時間停止した後の使用開始時にも行われ、これにより、粘度が上昇して固化した劣化インクを除去することができる。なお、この場合において、キャップ64は、内側を仕切り壁によって複数のエリアに分割し、吸引するエリアを選択できるようにすることが好ましい。
図6はインクジェット記録装置10のシステム構成を示すブロック図である。
同図に示すように、インクジェット記録装置10は、通信インターフェース70、システムコントローラ72、画像メモリ74、モータドライバ76、ヒータードライバ78、プリント制御部80、画像バッファメモリ82、ヘッドドライバ84等を備えている。
通信インターフェース70は、ホストコンピュータ86から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース70にはUSB、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(図示省略)を搭載してもよい。ホストコンピュータ86から送出された画像データは通信インターフェース70を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦画像メモリ74に記憶される。画像メモリ74は、通信インターフェース70を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ72を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ74は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなどの磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ72は、通信インターフェース70、画像メモリ74、モータドライバ76、ヒータードライバ78等の各部を制御する制御部である。システムコントローラ72は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ86との間の通信制御、画像メモリ74の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ88やヒーター89を制御する制御信号を生成する。
モータドライバ76は、システムコントローラ72からの指示に従ってモータ88を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータードライバ78は、システムコントローラ72からの指示にしたがって後乾燥部42等のヒーター89を駆動するドライバである。
プリント制御部80は、システムコントローラ72の制御に従い、画像メモリ74内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字制御信号(印字データ)をヘッドドライバ84に供給する制御部である。プリント制御部80において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいてヘッドドライバ84を介して印字ヘッド50のインク液滴の吐出量や吐出タイミン
グの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
プリント制御部80には、画像バッファメモリ82が備えられており、プリント制御部80における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ82に一時的に格納される。なお、図6において画像バッファメモリ82はプリント制御部80に付随する態様で示されているが、画像メモリ74と兼用することも可能である。また、プリント制御部80とシステムコントローラ72とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
ヘッドドライバ84はプリント制御部80から与えられる印字データに基づいて各色の印字ヘッド50の圧力発生手段を駆動する。ヘッドドライバ84にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
印字検出部24は、図1で説明したように、ラインセンサー(図示省略)を含むブロックであり、記録紙16に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつきなど)を検出し、その検出結果をプリント制御部80に提供するものである。
プリント制御部80は、必要に応じて印字検出部24から得られる情報に基づいて印字ヘッド50に対する各種補正を行うようになっている。
次に、本発明の特徴である印字ヘッド50の構成について詳しく説明する。
図7は印字ヘッド50の第1の実施の形態の概略構成を示す斜視透視図である。
同図に示すように、ノズル51とインク供給口53を備えた各圧力室52の上には、各圧力室52の上面を形成する振動板56が配置されている。振動板56は、一枚のプレートで形成されており、その上に各圧力室52を個別に変形させる圧電素子58が個別に設置されている。
圧電素子58は、ピエゾ等の圧電体59で構成されており、その上面に個別電極57が形成されている。振動板56は、この圧電素子58の共通電極として機能し、この振動板56と個別電極57との間に圧電体59が挟まれて、圧電素子58が構成されている。
この圧電素子58は、主として圧力室52を変形させるための可動部58aと、電気配線90を接続するための電気接続部58bとで構成されている。可動部58aは、略矩形状に形成されており、圧力室52の形成領域に配置されている。一方、電気接続部58bは、可動部58aの一角から引出部58cを介して横方向に引き出して形成されており、圧力室52の形成領域以外の領域に配置されている。この電気接続部58bは、円形状に形成されており、その上には柱状の電気配線90が、ほぼ垂直に立ち上がって形成されている。
柱状の電気配線90(その形状から「エレキ柱」とも呼ぶこととする。)の上には、配線プレート92が配置されており、この配線プレート92に形成された配線を介して前述したヘッドドライバ84から各圧電素子58の個別電極57に駆動信号が供給される。
また、この柱状の電気配線90が林立した空間は、各圧力室52にインクを供給するための共通液室55として機能し、この共通液室55から各圧力室52のインク供給口53を介して各圧力室52にインクが供給される。これにより、十分な容量をもった共通液室55と各圧力室52をつなぐ液路長が短くなり、リフィル改善、高粘度液吐出に有利になる。
なお、図7に示した共通液室55は、一つの空間として形成されているが、いくつかの
領域に分けて形成するようにしてもよい。
また、図7に示した電気配線90は、各圧電素子58に対して1つずつ形成されているが、配線数を削減するために、いくつかの圧電素子58に対する配線を一つにまとめて、一つの電気配線90として形成するようにしてもよい。さらに、個別電極57ばかりでなく、共通電極(振動板56)に対する配線もこの電気配線90として形成するようにしてもよい。
図8は、圧力室52の一部を拡大した平面透視図である。同図に示すように、各圧力室52は、ほぼ正方形状に形成されており、その対角線上の両隅にノズル51とインク供給口53とが形成されている。
図9は、図8の9−9断面図である。同図に示すように、ノズル51と圧力室52は、流路プレート96に形成されており、その流路プレート96の上に振動板56が接合されている。上記のように、振動板56は一枚のプレートで形成されており、この振動板56によって圧力室52の天井面が形成されている。また、この振動板56には、各圧力室52に連通するインク供給口53が形成されている。
振動板56の上には、各圧力室52に対応する位置に圧電素子58が設置されており、この圧電素子58の周囲を覆うようにレジスト層98が形成されている。
ここで、このレジスト層98は、圧電素子58の厚さよりも若干厚く形成されており、圧電素子58の可動部58aの上部のレジストと、電気接続部58bの上部のレジストとが除去して形成されている。この圧電素子58の可動部58aの上部に形成された空間は、可動空間100として、圧電素子58の変位を確保するための空間として機能し、電気接続部58bの上部に形成された空間は、接続空間102として、電気配線90と電気接続部58bとの接続を確保するための空間として機能する。そして、この可動空間100と接続空間102とは、図10に示すように、レジスト層98により互いに分離して形成されている。
レジスト層98の上には、圧電素子58の上部を覆うカバープレート104が接合されている。このカバープレート104は、一枚のプレートで形成されており、レジスト層98に形成された各接続空間102に対応する位置に貫通穴106が形成されている。貫通穴106は、接続空間102とほぼ同じ径で形成されており、接続空間102に連通されている。この貫通穴106と接続空間102とには、導電性接着剤108が充填されており、この導電性接着剤108を介して電気接続部58bとの接続が確保されている。
カバープレート104の上には、共通液室55を構成する共通液室部110が接合されている。この共通液室部110は、絶縁プレート112と電気配線90と配線プレート92とで構成されている。
絶縁プレート112は、共通液室55を形成する一枚の絶縁プレートで形成されており、カバープレート104に形成された貫通穴106に対応する位置に貫通穴114が形成されている。
電気配線90は、絶縁プレート112に形成された貫通穴114から垂直に延びるように形成されており、その外周は絶縁部116で覆われている。この電気配線90の先端部は、バンプとして半球状の突起90aが絶縁プレート112に形成された貫通穴114から突出して形成されている。
配線プレート92は、共通液室55を形成する面に絶縁膜が形成された一枚のプレートで形成されており、電気配線90の頂部に配置されている。この配線プレート92には、図示を省略した配線が形成されており、各電気配線90に接続されている。
共通液室55は、絶縁プレート112と配線プレート92との間の電気配線90が林立した空間に形成され、この共通液室55にプールされたインクが、各圧力室52に供給される。このため、共通液室55と圧力室52との間に配設された絶縁プレート112、レジスト層98、振動板56には、共通液室55と圧力室52とを連通するための貫通穴118、120、122が形成されている。この貫通穴118、120、122は、流路プレート96に形成されたインク供給口53に対応する位置に形成されており、この貫通穴118、120、122を介してインク供給口53から共通液室55内のインクが圧力室52に供給される。
また、この共通液室55を形成する共通液室部110が、カバープレート104の上に接合されると、電気配線90の先端の突起部90aが、カバープレート104に形成された貫通穴106に嵌入し、その貫通穴106に充填された導電性接着剤108に接合される。これにより、電気配線90と導電性接着剤108とが電気的に接続され、この導電性接着剤108を介して電気配線90と圧電素子58とが電気的に接続される。この結果、配線プレート92から各圧電素子58に駆動信号を印加できるようになる。したがって、導電性接着剤108は、共通液室部110を接合する時に同時に硬化させることが望ましい。
以上のように構成された本実施の形態の印字ヘッド50によれば、圧電素子58の周囲がレジストで満たされた状態で封止される。これにより、リーク電流を効果的に防止でき、接続の信頼性を確保することができる。この場合において、レジストは軟性部材なので、圧電素子58の変位への悪影響は非常に小さく、安定した動作を行うことができる。
また、レジスト層98に形成した可動空間100と接続空間102とによって圧電素子58の可動部エリアと電気接続部58bとを完全に分離することができるので、導電性接着材108がはみ出すことなく、簡単に圧電素子58の接続部を設けることができ、製造工程を簡略化することができる。以下、この印字ヘッド50の製造方法について説明する。
図11は、第1の実施の形態の印字ヘッド50の製造工程の説明図である。
まず、図11(a)に示すように、振動板56の上の所定の位置に圧電素子58を設置する。
次に、図11(b)に示すように、圧電素子58が設置された振動板56の上に液状のレジストを塗布する。そして、塗布したレジストをベークして硬化させ、振動板56の上にレジスト層98を形成する。
塗布は、圧電素子58の厚み+αの厚みでレベリングし、振動板56の上に設置された圧電素子58が、レジストで覆われるように塗布する。塗布方法については、特に限定されず、たとえば、スピンコート、スプレーコート、バーコート等の塗布方法を用いることができる。
次に、図11(c)に示すように、圧電素子58の可動部58aの上部、電気接続部58bの上部、及び、インク供給口53の形成個所を覆うレジストを露光、現像して除去し、レジスト層98に可動空間100、接続空間102及び貫通穴122を形成する。
次に、図11(d)に示すように、接続空間102及び貫通穴122の形成位置に貫通穴106、120が形成されたカバープレート104をレジスト層98の上に接合する。
カバープレート104の接合方法は、特に限定されず、たとえば、接着剤を用いてレジスト層98に接合する。この他、拡散接合などを用いて接合してもよい。
また、カバープレート104に形成する貫通穴106、120の形成方法についても、特に限定されず、たとえば、レーザー加工で所定位置に貫通穴106、120を形成する。この他、エッチング加工などによって貫通穴106、120を形成してもよい。
次に、図11(e)に示すように、振動板56にインク供給口53を穴加工する。この加工方法は、特に限定されず、たとえば、レーザー加工でインク供給口53を形成する。この他、ドライエッチング加工によって形成してもよい。
次に、図11(f)に示すように、レジスト層98に形成された接続空間102、及び、その接続空間102に連通するカバープレート104の貫通穴106に導電性接着剤108を充填する。この導電性接着剤108の充填方法については、特に限定されないが、スクリーン印刷(真空印刷を含む)により充填することが好ましい。これにより、圧電素子58に圧力をかけずに多数の充填をボイドの巻き込みなく、確実に行うことができる。
なお、導電性接着剤108に代えて導電性ペーストや導電性インク等を貫通穴106及び接続空間102に充填するようにしてもよい。ここで、この導電性接着剤、導電性ペースト、導電性インクとは、バインダー樹脂中に導電性の粒子が分散されており、バインダー樹脂の硬化収縮により分散された粒子が互いに接続し、導電性を示すものをいう。
次に、図11(g)に示すように、別途製作した共通液室部110をカバープレート104の上に接合するとともに、流路プレート96を振動板56の下に接合する。
ここで、共通液室部110は、貫通穴106及び接続空間102に充填された導電性接着剤108が固化する前にカバープレート104に接合する。この共通液室部110の接合方法は、特に限定されず、たとえば、接着剤を用いてカバープレート104に接合する。この他、溶着などによってカバープレート104に接合してもよい。また、流路プレート96の接合方法も特に限定されず、たとえば、接着剤を用いて振動板56に接合する。この他、拡散接合などによって振動板56に接合してもよい。
以上一連の工程で第1の実施の形態の印字ヘッド50が製造される。このように製造された印字ヘッド50は、圧電素子58の電気接続部58bと可動部58aとが、完全に分離された状態で、かつ、圧電素子58の周囲までレジストで封止されるため、リーク電流を効果的に防止でき、接続の信頼性を確保することができる。この場合において、レジストは軟性部材なので、圧電素子58の変位への悪影響は非常に小さく、安定した動作を行うことができる。
また、導電性接着剤108をスクリーン印刷により貫通穴106及び接続空間102に充填することにより、圧電素子58に無理な力をかけることなく、多数の充填作業を確実に行うことができる。さらに、この場合において、電気接続部58bと可動部58aとが完全に分離されているため、簡単に導電性接着剤108を貫通穴106及び接続空間102に充填することができ、製造工程を簡略化することができる。
なお、電気接続部58bの構成については、図12に示すように、圧電体59から個別電極57のみを横方向に引き出して形成するようにしてもよい。
次に、本発明に係る印字ヘッドの第2の実施の形態について説明する。
図13は、第2の実施の形態の印字ヘッドの要部の構成を示す断面図である。
同図に示すように、第2の実施の形態の印字ヘッド200は、各圧電素子58に駆動電圧を印加するための電気配線が、共通液室55とレジスト層98との間に形成されている。この電気配線は、共通液室55とレジスト層98の間に配置された配線プレート202に形成されている。
なお、上記以外の構成は、第1の実施の形態の印字ヘッド50と基本的に同じなので、第1の実施の形態の印字ヘッド50と同じ構成部材には、同じ符号を付して、その説明は省略する。
図13に示すように、可動空間100、接続空間102及び貫通穴122が形成されたレジスト層98の上には、配線プレート202が接合されている。
配線プレート202は、一枚のプレートで形成されており、レジスト層98に形成された貫通穴122に対応する位置と、接続空間102に対応する位置に貫通穴204、206が形成されている。
貫通穴204は、レジスト層98に形成された貫通穴122とほぼ同じ径で形成されており、その貫通穴122に連通されている。
一方、貫通穴206は、レジスト層98に形成された接続空間102とほぼ同じ径で形成されており、その接続空間102に連通されている。この貫通穴206の上端部には、配線プレート202の上面に敷設された図示しない電気配線のランド部208が形成されている。
配線プレート202に形成された貫通穴206と、レジスト層98に形成された接続空間102とには、導電性接着剤(又は導電性ペースト)210が充填されており、この導電性接着剤210によってランド部208と電気接続部58bとが電気的に接続されている。
配線プレート202の上には、共通液室部212が接合されている。この共通液室部212は、箱状に形成されており、その内部に共通液室55を形成する。この共通液室部212の下面を構成する下面プレート214には、配線プレート202に形成された貫通穴204に対応する位置に貫通穴216が形成されており、貫通穴204に連通されている。共通液室55は、この下面プレート214に形成された貫通穴216、配線プレート202に形成された貫通穴204、レジスト層98に形成された貫通穴122、及び、振動板56に形成されたインク供給口53を介して圧力室52に連通されている。
以上のように構成された第2の実施の形態の印字ヘッド200においても、第1の実施の形態の印字ヘッド50と同様に、圧電素子58の周囲がレジストで満たされた状態で封止されるので、リーク電流を効果的に防止でき、圧電素子の駆動の信頼性を確保することができる。
また、レジスト層98に形成した可動空間100と接続空間102とによって圧電素子58の可動部と電気接続部とを完全に分離することができるので、簡単に圧電素子58の接続部を設けることができ、製造工程を簡略化することができる。
以下、この第2の印字ヘッド200の製造方法について説明する。
図14は、第2の実施の形態の印字ヘッド200の製造工程の説明図である。
まず、図14(a)に示すように、振動板56の上の所定の位置に圧電素子58を設置する。
次に、図14(b)に示すように、圧電素子58が設置された振動板56の上に液状のレジストを塗布する。そして、塗布したレジストをベークして硬化させ、振動板56の上にレジスト層98を形成する。
塗布は、圧電素子58の厚み+αの厚みでレベリングし、振動板56の上に設置された圧電素子58が、レジストで覆われるように塗布する。塗布方法については、特に限定されず、たとえば、スピンコート、スプレーコート、バーコート等の塗布方法を用いることができる。
次に、図14(c)に示すように、圧電素子58の可動部58aの上部、電気接続部58bの上部、及び、インク供給口53の形成個所を覆うレジストを露光、現像して除去し、レジスト層98に可動空間100、接続空間102及び貫通穴122を形成する。
次に、図14(d)に示すように、接続空間102及び貫通穴122の形成位置に貫通穴204、206が形成された配線プレート202をレジスト層98の上に接合する。
配線プレート202の接合方法は、特に限定されず、たとえば、接着剤を用いてレジスト層98に接合する。この他、拡散接合などを用いて接合してもよい。
また、配線プレート202に形成する貫通穴204、206の形成方法についても、特に限定されず、たとえば、レーザー加工で所定位置に貫通穴204、206を形成する。この他、エッチング加工などによって貫通穴204、206を形成してもよい。
次に、図14(e)に示すように、レジスト層98に形成された接続空間102と配線プレート202に形成された貫通穴206に導電性接着剤210を充填し、ランド部208と電気接続部58bとを電気的に接続する。
なお、この導電性接着剤210の充填方法については、特に限定されないが、第1の実施の形態の印字ヘッド50と同様にスクリーン印刷(真空印刷を含む)により充填することが好ましい。これにより、圧電素子58に圧力をかけずに多数の充填を確実に行うことができる。
また、導電性接着剤210に代えて導電性ペーストを貫通穴206及び接続空間102に充填するようにしてもよい。
次に、図14(f)に示すように、振動板56にインク供給口53を穴加工する。この加工方法は、特に限定されず、たとえば、レーザー加工でインク供給口53を形成する。この他、ドライエッチング加工によって形成してもよい。
次に、図14(g)に示すように、別途製作した共通液室部212を配線プレート202の上に接合するとともに、流路プレート96を振動板56の下に接合する。共通液室部210の接合方法は、特に限定されず、たとえば、接着剤を用いて配線プレート202に接合する。この他、溶着などによって配線プレート202に接合してもよい。また、流路プレート96の接合方法も特に限定されず、たとえば、接着剤を用いて振動板56に接合
する。この他、拡散接合などによって振動板56に接合してもよい。
以上一連の工程で第2の実施の形態の印字ヘッド200が製造される。このように製造された印字ヘッド200は、第1の実施の形態の印字ヘッド50と同様に、圧電素子58の電気接続部58bと可動部58aとが、完全に分離された状態で封止されるため、リーク電流を効果的に防止でき、接続の信頼性を確保することができる。この場合において、レジストは軟性部材なので、圧電素子58の変位への悪影響は非常に小さく、安定した動作を行うことができる。
また、導電性接着剤210をスクリーン印刷により貫通穴206及び接続空間102に充填することにより、圧電素子58に無理な力をかけることなく、多数の充填作業を確実に行うことができる。さらに、この場合において、電気接続部と可動部とが完全に分離されているため、簡単に導電性接着剤210を貫通穴206及び接続空間102に充填することができ、製造工程を簡略化することができる。
また、本実施の形態では、配線プレート202の接合と接続を分離して行うことができるので、より信頼性が高い。さらに、構造が簡単で気泡が残りにくい。
次に、本発明に係る印字ヘッドの第3の実施の形態について説明する。
図15は、第3の実施の形態の印字ヘッドの要部の構成を示す断面図である。
同図に示すように、第3の実施の形態の印字ヘッド300は、圧電素子58の下方に共通液室55が形成されている。
なお、圧電素子58の設置部の構成は、第1の実施の形態の印字ヘッド50と同じなので、第1の実施の形態の印字ヘッド50と同じ構成部材には、同じ符号を付して、その説明は省略する。
図15に示すように、振動板56の下面に接合された流路プレート96には、ノズル51と、圧力室52と、インク供給口53と、共通液室55とが形成されている。圧力室52と共通液室55は、インク供給口53を介して互いに連通されており、インク供給口53を介して共通液室55から圧力室52にインクが供給される。
振動板56の上には、各圧力室52に対応する位置に圧電素子58が設置されており、その周囲を囲うようにレジスト層98が形成されている。このレジスト層98には、圧電素子58の可動部58aの上方、及び、電気接続部58bの上方のレジストが除去されて、可動空間100と接続空間102とが形成されている。そして、接続空間102には、導電性接着剤302が充填されている。
レジスト層98の上には、配線プレート304が接合されている。配線プレート304は、一枚のプレートで形成されており、各圧電素子58に駆動電圧を印加するための配線306が形成されている。配線306には、各圧電素子58の電気接続部58bに対応する位置にバンプ308が形成されており、このバンプ308が接続空間102に嵌入されて、配線306と導電性接着剤302とが電気的に接続されている。そして、この配線306と導電性接着剤302とが電気的に接続されることにより、配線306と電気接続部58bとが電気的に接続されている。
以上のように構成された第3の実施の形態の印字ヘッド300においても、第1の実施の形態の印字ヘッド50と同様に、圧電素子58の周囲がレジストで満たされた状態で封止されるので、リーク電流を効果的に防止でき、接続の信頼性を確保することができる。
また、レジスト層98に形成した可動空間100と接続空間102とによって圧電素子
58の可動部58aと電気接続部58bとを完全に分離することができるので、簡単に圧電素子58の接続部を設けることができ、製造工程を簡略化することができる。
以下、この第3の印字ヘッド300の製造方法について説明する。
図16は、第3の実施の形態の印字ヘッド300の製造工程の説明図である。
まず、図16(a)に示すように、振動板56の上の所定の位置に圧電素子58を設置する。
次に、図16(b)に示すように、圧電素子58が設置された振動板56の上に液状のレジストを塗布する。そして、塗布したレジストをベークして硬化させ、振動板56の上にレジスト層98を形成する。
塗布は、圧電素子58の厚み+αの厚みでレベリングし、振動板56の上に設置された圧電素子58が、レジストで覆われるように塗布する。塗布方法については、特に限定されず、たとえば、スピンコート、スプレーコート、バーコート等の塗布方法を用いることができる。
次に、図16(c)に示すように、圧電素子58の可動部58aの上部、及び、電気接続部58bの上部を覆うレジストを露光、現像して除去し、レジスト層98に可動空間100及び接続空間102を形成する。
次に、図16(d)に示すように、レジスト層98に形成された接続空間102に導電性接着剤302を充填する。
なお、この導電性接着剤302の充填方法については、特に限定されないが、第1の実施の形態の印字ヘッド50と同様にスクリーン印刷(真空印刷を含む)により充填することが好ましい。これにより、圧電素子58に圧力をかけずに多数の充填を確実に行うことができる。
また、導電性接着剤302に代えて導電性ペーストを接続空間102に充填するようにしてもよい。
次に、図16(e)に示すように、別途製作した流路プレート96を振動板56の下に接合する。流路プレート96の接合方法は、特に限定されず、たとえば、接着剤を用いて振動板56に接合する。この他、拡散接合などによって振動板56に接合してもよい。
以上一連の工程で第3の実施の形態の印字ヘッド300が製造される。このように製造された印字ヘッド300は、第1の実施の形態の印字ヘッド50と同様に、圧電素子58の電気接続部58bと可動部58aとが、完全に分離された状態で封止されるため、リーク電流を効果的に防止でき、接続の信頼性を確保することができる。この場合において、レジストは軟性部材なので、圧電素子58の変位への悪影響は非常に小さく、安定した動作を行うことができる。
また、導電性接着剤302をスクリーン印刷により接続空間102に充填することにより、圧電素子58に無理な力をかけることなく、多数の充填作業を確実に行うことができる。さらに、この場合において、電気接続部と可動部とが完全に分離されているため、簡単に導電性接着剤302を接続空間102に充填することができ、製造工程を簡略化することができる。
また、本実施の形態の構成は、従来とほとんど同じであり、プロセスの変更を少なく、接続と圧電素子動作の信頼性を高めることができる。
なお、上記一連の実施の形態では、本発明に係る液体吐出ヘッドをインクジェット記録装置の印字ヘッドに適用した場合を例に説明したが、本発明の適用は、これに限定されるものではなく、記録媒体状に文字や画像等を印字するための液体吐出ヘッド全般に適用することができる。
10…インクジェット記録装置、12…印字部、14…インク貯蔵/装填部、16…記録紙、18…給紙部、20…デカール処理部、22…吸着ベルト搬送部、24…印字検出部、26…排紙部、28…カッター、30…加熱ドラム、31、32…ローラー、33…ベルト、34…吸着チャンバー、35…ファン、36…ベルト清掃部、40…加熱ファン、42…後乾燥部、44…加熱・加圧部、45…加圧ローラー、48…カッター、50…印字ヘッド、50A…ノズル面、51…ノズル、51a…ノズル流路、52…圧力室、53…インク供給口、54…圧力室ユニット、55…共通液室、56…振動板(共通電極)、57…個別電極、58…圧電素子、58a…可動部、58b…電気接続部、58c…引出部、59…圧電体、60…インクタンク、62…フィルタ、64…キャップ、66…ブレード、67…吸引ポンプ、68…回収タンク、70…通信インターフェース、72…システムコントローラ、74…画像メモリ、76…モータドライバ、78…ヒータードライバ、80…プリント制御部、82…画像バッファメモリ、84…ヘッドドライバ、86…ホストコンピュータ、88…モータ、89…ヒーター、90…電気配線、90a…突起、91…配線プレート、92…多層フレキシブルケーブル、94…ノズルプレート、96…流路プレート、98…絶縁・保護膜、100…可動空間、102…接続空間、104…カバープレート、106…貫通穴、108…導電性接着剤、110…共通液室部、112…絶縁プレート、114…貫通穴、116…絶縁部、118…貫通穴、120…貫通穴、122…貫通穴、200…印字ヘッド、202…配線プレート、204…貫通穴、206…貫通穴、300…印字ヘッド、302…導電性接着剤、304…配線プレート、306…配線、308…バンプ