JP4961630B2 - 液晶組成物および液晶表示素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電気光学的液晶表示材料として有用なネマチック液晶組成物及び、これを用いた液晶表示素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置(LCD)は、電卓のディスプレイとして登場して以来、コンピューターの開発と歩みを同じくして、TN-LCD(捻れネマチック液晶表示装置)から、STN-LCDへと表示容量の拡大に対応してきた。STN-LCDは、シェファー(Scheffer)等[SID '85 Digest, 120頁(1985年)]、あるいは衣川等[SID '86 Digest, 122頁(1986年)]によって開発され、ワードプロセッサ、パーソナルコンピュータなどの高情報処理用の表示に広く普及しはじめている。最近、STN-LCDでの応答特性を改善する目的でアクティブアドレッシング駆動方式が提案されている。(Proc.12th International Display Research Conference p.503 1992年)また、携帯用端末表示(Personal Digital Assistance)ではより広い温度域で良好な表示特性が要求されている。この様な液晶材料として粘性が低く、駆動電圧が低くなおかつ広い温度範囲に対して一定値を保持することや、あるいは種々の時分割に対応した周波数範囲で駆動電圧が変動しないことが要求されている。しかし、表示素子に組み込んだときの応答速度やコントラストなどはまだ十分とは言えず、現在も新しい液晶化合物あるいは液晶組成物の提案がなされている。
【0003】
上述のようにTN-LCDやSTN-LCDの重要な特性改善課題の一つにコントラストの向上がある。LCDの急速な用途拡大に伴い、室内で使用されるだけでなく、コンピューターの携帯端末ディスプレイ、車載用計器、屋外使用計測機のディスプレイのように、温度条件の過酷な屋外で使用されることが増加してきた。そのため、LCDが置かれる環境の温度変化による表示コントラストの低下、低温における応答速度の低下による表示品位の悪化が問題になってきている。また、屋外での使用では高い信頼性も求められるようになってきた。
【0004】
周囲の温度変化によるLCD表示品位の低下の原因は、様々な要因が上げられるが、ネマチック液晶の弾性定数・誘電率などの温度変化と添加したカイラル物質の固有ピッチの温度変化に起因する閾値電圧Vthの温度変化を押されるため、カイラル物質の固有ピッチの温度変化を制御することにより、閾値電圧の温度依存性を改善する提案(特開昭55-38869)はすでに知られており、母体液晶とカイラル物質の組み合わせにより、その効果が変化する事や、カイラル量を増やすことにより、レスポンス等の表示特性に悪影響を及ぼすことが問題になっていた。
【0005】
しかし、液晶中に含まれるイオン性物質の易動度の温度変化により電流値が増加するため、液晶にかかる実効値電圧がイオンにより消費され、コントラスト及び信頼性を低下させることに起因する改善策は知られていない。この観点から、従来から広く用いられているエステル結合を有する化合物の使用量を減らす必要があるが、それによって生じる閾値電圧の増加が問題になっていた。
【0006】
本発明の必須成分である一般式(I)に関わる技術として特公平4-501270、特開平5-3111724、特開平6-340877があるが、閾値電圧の低減化、温度依存性や周波数依存性の改善、低温温度域での応答性の改善、より広い温度範囲での高いコントラスト比(より1に近い急峻性)等の要望を達成した特性は得られていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、所望の閾値電圧に対して液晶諸特性を悪化させることなく、電流値を抑制した信頼性の高い液晶組成物を提供することにあり、更に閾値電圧の温度依存性や周波数依存性を良好にし、より広い温度範囲で安定した高いコントラスト(急峻性)を有した表示特性を達成することに有る。液晶表示素子にこのような液晶組成物を使用した場合、例えば1/32〜1/400デューティー(duty)、より好適には1/80〜1/250デューティーの表示において特性改善に効果があり、情報量の増加やカラー表示に対して、より改善した高コントラストの液晶表示素子(STN-LCD)を提供することができる。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、種々の液晶化合物を用いた液晶組成物を検討した結果、以下の液晶組成物を見いだした。
【0009】
発明1、第一成分として、一般式(I)
【0010】
【化7】
【0011】
(式中、nおよびrはそれぞれ独立して0〜10を表す。)から選ばれる化合物を1種又は2種以上を含有し、第二成分として、一般式(II)、(III)
【0012】
【化8】
【0013】
(式中、R1、R2、R3は、それぞれ独立的にフッ素置換されていても良い炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基又は炭素原子数3〜16のアルケニルオキシ基を表し、環A、環B、環C、環D及び環Eは、それぞれ独立的に1,4-フェニレン基、2又は3-フルオロ-1,4-フェニレン、2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレン、3,5-ジフルオロ-1,4-フェニレン、2又は3-クロロ-1,4-フェニレン、2,3-ジクロロ-1,4-フェニレン、3,5-ジクロロ-1,4-フェニレン、2-メチル-1,4-フェニレン基、3-メチル-1,4-フェニレン基、ナフタレン-2,6-ジイル基、フェナントレン-2,7-ジイル基、フルオレン-2,7-ジイル基、トランス-1,4-シクロヘキシレン基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、トランス-1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピリミジン-2,5-ジイル基、ピラジン-2,5-ジイル基またはピリダジン-2,5-ジイル基を表し、これらの環は更に1〜3のフッ素原子により置換されていてもよく、l、mはそれぞれ独立的に0、1又は2を表し、Z1、Z2、Z3、Z4はそれぞれ独立的に単結合、-CH2CH2-、-(CH2)4-、-OCH2-、-CH2O-、-COO-、-CH=CH-、-CF=CF-、-CH=N-N=CH-または-C≡C-を表し、X2はシアノ基、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメトキシ基、トリフルオロメチル基、ジフルオロメトキシ基、水素原子、3,3,3-トリフルオロエトキシ基、X1、X3は水素原子、フッ素原子または塩素原子を表す。但し、第一成分を除く。)から選ばれる化合物を1種又は2種以上を含有し、なおかつネマチック相−等方性液体相転移温度が60℃以上180℃以下であり、屈折率の異方性(Δn)が0.06〜0.30の範囲であることを特徴とする液晶組成物。
【0014】
発明2、第一成分として、一般式(I)の化合物を1種又は2種以上を含有し該含有率が5〜60質量%の範囲で有り、第二成分として、一般式(II)及び又は一般式(III)から選らばれる化合物を1種又は2種以上を含有し該化合物の含有率が5〜95質量%の範囲であることを特徴とする発明1記載の液晶組成物。
発明3、一般式(I)が、式(I-a)〜(I-d)
【0015】
【化9】
【0016】
であることを特徴とする発明1又は2記載の液晶組成物。
【0017】
発明4、第一成分として、式(I-a)〜(I-d)から選ばれる1種又は2種から4種の化合物を含有し、該含有率が5〜60質量%の範囲であることを特徴とする発明3記載の液晶組成物。
【0018】
発明5、一般式(II)の化合物として、下記の一般式(II-a)〜(II-v)
【0019】
【化10】
【0020】
(式中、R4、R5はそれぞれ独立的に炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基又は炭素原子数3〜16のアルケニルオキシ基を表す。)から選ばれる1種又は2種以上の化合物を含有することを特徴とする発明1〜4記載の液晶組成物。
発明6、第一成分として、式(I-a)〜(I-d)から選ばれる少なくとも1種又は2種から4種の化合物を含有し該含有率が5〜60質量%の範囲であり、第二成分として、一般式(II-a)〜(II-v)の化合物群から選ばれる少なくとも1種又は2種から30種の化合物を含有し該含有率が5〜95質量%の範囲であることを特徴とする発明1〜5記載の液晶組成物。
【0021】
発明7、下記の条件の少なくとも一つを満たすことを特徴とする発明6記載の液晶組成物。
(2-i) 第一成分として、式(I-a)〜(I-d)から選ばれる少なくとも1種又は2種から4種の化合物を5〜60質量%含有し、第二成分として、一般式(II-a)、(II-h)、(II-j)、(II-n)、(II-q)、(II-r)、(II-s)の化合物群から選ばれる少なくとも1種又は2種から30種の化合物を5〜95質量%含有すること。
【0022】
(2-ii) 第一成分として、式(I-a)〜(I-d)から選ばれる少なくとも1種又は2種から4種の化合物を5〜60質量%含有し、第二成分として、一般式(II-a)、(II-h)、(II-j)、(II-n)、(II-q)、(II-r)、(II-s)の化合物群から選ばれる少なくとも1種又は2種から30種の化合物を含有し、更に一般式(II-c)、(II-e)、(II-f)、(II-i)、(II-p)の化合物群から選ばれる少なくとも1種又は2種から30種の化合物を含有し、該選ばれる化合物を5〜95質量%含有すること。
【0023】
(2-iii) 第一成分として、式(I-a)〜(I-d)から選ばれる少なくとも1種又は2種から4種の化合物を5〜60質量%含有し、第二成分として、一般式(II-a)、(II-h)、(II-j)、(II-n)、(II-q)、(II-r)、(II-s)の化合物群から選ばれる少なくとも1種又は2種から30種の化合物を含有し、更に一般式(II-b)、(II-d)、(II-g)、(II-k)〜(II-m)、(II-o)、(II-t)〜(II-v)の化合物群から選ばれる少なくとも1種又は2種から30種の化合物を含有し、該選ばれる化合物を5〜95質量%含有すること。
【0024】
(2-iv) 第一成分として、式(I-a)〜(I-d)から選ばれる少なくとも1種又は2種から4種の化合物を5〜60質量%含有し、第二成分として、一般式(II-a)、(II-h)、(II-j)、(II-n)、(II-q)、(II-r)、(II-s)の化合物群から選ばれる少なくとも1種又は2種から30種の化合物を含有し、更に一般式(II-b)、(II-d)、(II-g)、(II-k)〜(II-m)、(II-o)、(II-t)〜(II-v)の化合物群から選ばれる少なくとも1種又は2種から30種の化合物を含有し、更にまた一般式(II-c)、(II-e)、(II-f)、(II-i)、(II-p)の化合物群から選ばれる少なくとも1種又は2種から30種の化合物を含有し、該選ばれる化合物を5〜95質量%含有すること。
【0025】
(2-v) 第一成分として、式(I-a)〜(I-d)から選ばれる少なくとも1種又は2種から4種の化合物を5〜60質量%含有し、第二成分として、一般式(II-a)〜(II-v)のR4がCH2=CH-、CH3-CH=CH-、CH2=CH-(CH2)2-、CH3-CH=CH-(CH2)2-で表される化合物を少なくとも1種又は2種から30種の化合物を含有し、該選ばれる化合物を5〜95質量%含有すること。
【0026】
(2-vi) 第一成分として、式(I-a)〜(I-d)から選ばれる少なくとも1種又は2種から4種の化合物を5〜60質量%含有し、第二成分として、一般式(II-a)〜(II-v)のR5がCH2=CH-、CH3-CH=CH-、CH2=CH-(CH2)2-、CH3-CH=CH-(CH2)2-で表される化合物を少なくとも1種又は2種から30種の化合物を含有し、該選ばれる化合物を5〜95質量%含有すること。
【0027】
発明8、一般式(III)の化合物として、下記の一般式(III-a)〜(III-D)
【0028】
【化11】
【0029】
【化12】
【0030】
(式中、R6はそれぞれ独立的に炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基又は炭素原子数3〜16のアルケニルオキシ基を表す。)から選ばれる1種又は2種以上の化合物を含有することを特徴とする発明1〜7記載の液晶組成物。
【0031】
発明9、第一成分として、式(I-a)〜(I-d)から選ばれる少なくとも1種又は2種から1種の化合物を含有し該含有率が5〜60質量%の範囲であり、第二成分として、一般式(III-a)〜(III-D)の化合物群から選ばれる少なくとも1種又は2種から30種の化合物を含有し該含有率が5〜95質量%の範囲であることを特徴とする発明8記載の液晶組成物。
【0032】
発明10、下記の条件の少なくとも一つを満たすことを特徴とする発明9記載の液晶組成物。
(3-i) 第一成分として、式(I-a)〜(I-d)から選ばれる少なくとも1種又は2種から4種の化合物を5〜60質量%含有し、第二成分として、一般式(III-a)、(III-i)、(III-k)、(III-l)、(III-q)、(III-r)、(III-u)の化合物群から選ばれる少なくとも1種又は2種から30種の化合物を5〜95質量%含有すること。
【0033】
(3-ii) 第一成分として、式(I-a)〜(I-d)から選ばれる少なくとも1種又は2種から4種の化合物を5〜60質量%含有し、第二成分として、一般式(III-v)、(III-w)の化合物群から選ばれる少なくとも1種又は2種から30種の化合物を5〜95質量%含有すること。
【0034】
(3-iii) 第一成分として、式(I-a)〜(I-d)から選ばれる少なくとも1種又は2種から4種の化合物を5〜60質量%含有し、第二成分として、一般式(III-a)、(III-i)、(III-k)、 (III-l)、(III-q)、(III-r)、(III-u)の化合物群から選ばれる少なくとも1種又は2種から30種の化合物を含有し、更に一般式(III-v)、(III-w)の化合物群から選ばれる少なくとも1種又は2種から30種の化合物を含有し、該選ばれる化合物を5〜95質量%含有すること。
【0035】
(3-iv) 第一成分として、式(I-a)〜(I-d)から選ばれる少なくとも1種又は2種から4種の化合物を5〜60質量%含有し、第二成分として、一般式(III-a)、(III-i)、(III-k)、(III-l)、(III-q)、(III-r)、(III-u)の化合物群から選ばれる少なくとも1種又は2種から30種の化合物を含有し、更に一般式(III-b)〜(III-d)、(III-n)、(III-o)、(III-s)、(III-x)、(III-z)、(III-A)の化合物群から選ばれる少なくとも1種又は2種から30種の化合物を含有し、該選ばれる化合物を5〜95質量%含有すること。
【0036】
(3-v) 第一成分として、式(I-a)〜(I-d)から選ばれる少なくとも1種又は2種から4種の化合物を5〜60質量%含有し、第二成分として、一般式(III-a)、(III-i)、(III-k)、(III-l)、(III-q)、(III-r)、(III-u)の化合物群から選ばれる少なくとも1種又は2種から30種の化合物を含有し、更に一般式(III-B)〜(III-D)の化合物群から選ばれる少なくとも1種又は2種から30種の化合物を含有し、該選ばれる化合物を5〜95質量%含有すること。
【0037】
(3-vi) 第一成分として、式(I-a)〜(I-d)から選ばれる少なくとも1種又は2種から4種の化合物を5〜60質量%含有し、第二成分として、一般式(III-a)、(III-i)、(III-k)、(III-l)、(III-q)、(III-r)、(III-u)の化合物群から選ばれる少なくとも1種又は2種から30種の化合物を含有し、更に一般式(III-e)〜(III-h)、(III-j)、(III-m)、(III-p)、(III-t)、(III-y)の化合物群から選ばれる少なくとも1種又は2種から30種の化合物を含有し、該選ばれる化合物を5〜95質量%含有すること。
【0038】
(3-vii) 第一成分として、式(I-a)〜(I-d)から選ばれる少なくとも1種又は2種から4種の化合物を5〜60質量%含有し、第二成分として、一般式(III-v)、(III-w)の化合物群から選ばれる少なくとも1種又は2種から30種の化合物を含有し、更に一般式(III-b)〜(III-d)、(III-n)、(III-o)、(III-s)、(III-x)、(III-z)、(III-A)の化合物群から選ばれる少なくとも1種又は2種から30種の化合物を含有し、該選ばれる化合物を5〜95質量%含有すること。
【0039】
(3-viii) 第一成分として、式(I-a)〜(I-d)から選ばれる少なくとも1種又は2種から4種の化合物を5〜60質量%含有し、第二成分として、一般式(III-v)、(III-w)の化合物群から選ばれる少なくとも1種又は2種から30種の化合物を含有し、更に一般式(III-B)〜(III-D)の化合物群から選ばれる少なくとも1種又は2種から30種の化合物を含有し、該選ばれる化合物を5〜95質量%含有すること。
【0040】
(3-ix) 第一成分として、式(I-a)〜(I-d)から選ばれる少なくとも1種又は2種から4種の化合物を5〜60質量%含有し、第二成分として、一般式(III-v)、(III-w)の化合物群から選ばれる少なくとも1種又は2種から30種の化合物を含有し、更に一般式(III-e)〜(III-h)、(III-j)、(III-m)、(III-p)、(III-t)、(III-y)の化合物群から選ばれる少なくとも1種又は2種から30種の化合物を含有し、該選ばれる化合物を5〜95質量%含有すること。
【0041】
(3-x) 第一成分として、式(I-a)〜(I-d)から選ばれる少なくとも1種又は2種から4種の化合物を5〜60質量%含有し、第二成分として、一般式(III-a)、(III-l)、(III-v)、(III-w)から選ばれる化合物を少なくとも1種又は2種から30種の化合物を含有し、該選ばれる化合物を5〜95質量%含有すること。
【0042】
(3-xi) 第一成分として、式(I-a)〜(I-d)から選ばれる少なくとも1種又は2種から4種の化合物を5〜60質量%含有し、第二成分として、一般式(III-a)、(III-l)、(III-n)、(III-o)、(III-v)、(III-w)から選ばれる化合物を少なくとも1種又は2種から30種の化合物を含有し、該選ばれる化合物を5〜95質量%含有すること。
【0043】
(3-xii) 第一成分として、式(I-a)〜(I-d)から選ばれる少なくとも1種又は2種から4種の化合物を5〜60質量%含有し、第二成分として、一般式(III-a)、(III-u)、(III-v)、(III-w)から選ばれる化合物を少なくとも1種又は2種から30種の化合物を含有し、該選ばれる化合物を5〜95質量%含有すること。
【0044】
(3-xiii) 第一成分として、式(I-a)〜(I-d)から選ばれる少なくとも1種又は2種から4種の化合物を5〜60質量%含有し、第二成分として、一般式(III-a)、(III-l)、(III-v)、(III-w)、(III-i)から選ばれる化合物を少なくとも1種又は2種から30種の化合物を含有し、該選ばれる化合物を5〜95質量%含有すること。
【0045】
(3-xiv) 第一成分として、式(I-a)〜(I-d)から選ばれる少なくとも1種又は2種から4種の化合物を5〜60質量%含有し、第二成分として、一般式(III-a)、(III-i)、(III-q)、(III-v)、(III-w)から選ばれる化合物を少なくとも1種又は2種から30種の化合物を含有し、該選ばれる化合物を5〜95質量%含有すること。
【0046】
(3-xv) 第一成分として、式(I-a)〜(I-d)から選ばれる少なくとも1種又は2種から4種の化合物を5〜60質量%含有し、第二成分として、一般式(III-a)、(III-i)、(III-r)、(III-v)、(III-w)から選ばれる化合物を少なくとも1種又は2種から30種の化合物を含有し、該選ばれる化合物を5〜95質量%含有すること。
【0047】
(3-xvi) 第一成分として、式(I-a)〜(I-d)から選ばれる少なくとも1種又は2種から4種の化合物を5〜60質量%含有し、第二成分として、一般式(III-a)、(III-h)、(III-l)、(III-m)、(III-v)〜(III-D)のR6がCH2=CH-、CH3-CH=CH-、CH2=CH-(CH2)2-、CH3-CH=CH-(CH2)2-で表される化合物を少なくとも1種又は2種から30種の化合物を含有し、該選ばれる化合物を5〜95質量%含有すること。
【0048】
(3-xvii) 第一成分として、式(I-a)〜(I-d)から選ばれる少なくとも1種又は2種から4種の化合物を5〜60質量%含有し、第二成分として、一般式(III-b)〜(III-g)、(III-i)〜(III-k)、(III-n)〜(III-u)のR6がCH2=CH-(CH2)2-、CH3-CH=CH-(CH2)2-で表される化合物を少なくとも1種又は2種から30種の化合物を含有し、該選ばれる化合物を5〜95質量%含有すること。
【0049】
発明11、発明7記載の条件(2-i)〜(2-ix)の少なくとも一つ又は二つ以上を満たし、発明10記載の条件(3-i)〜(3-xvii)の少なくとも一つ又は二つ以上を満たすことを特徴とするネマチック液晶組成物。
【0050】
発明12、下記の条件(i)〜(v)の少なくとも一つ又は二つ以上を満たすことを特徴とする発明1〜11記載のネマチック液晶組成物。但し、(i)〜(iv)は20℃での測定値を表す。
(i) 0.11≦Δn≦0.195
(ii) 4≦Δε≦60
(iii) 1.1<k33/k11<3.0
(iv) 10mPa・s<粘度<80mPa・s
(v) 75℃≦ネマチック相−等方性液体相転移温度≦130℃
【0051】
発明13、発明1〜12に記載の液晶組成物を用いた、ねじれ角が220〜270の範囲であり、-20℃〜60℃の駆動温度範囲において下記条件(vi)〜(viii)の少なくとも一つ又は二つ以上を満たすことを特徴とする超ねじれネマチック(STN)液晶表示素子。
(vi) ΔV/ΔT(Vthの温度依存性)≦7mV/℃(温度範囲-20℃〜60℃)
(vii) 急峻性γ≦1.15
(viii) ΔV/Δf = (V5000Hz-V64Hz)/V64Hz×100%≦5%
(但し、V5000Hzは周波数5000HzにおけるVthを表し、V64Hzは周波数64HzにおけるVthを表す。)
【0052】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の一例について説明する。
発明1において、第一成分として一般式(I)から選ばれる化合物を1種又は2種以上を含有する。一般式(I)のより好ましい形態は式(I-a)〜(I-d)である。1種のみ含有する場合、応答速度を重視するときは式(I-a)が好ましく、コントラストを重視するときは式(I-b)、(I-c)又は(I-d)が好ましい。2種〜4種の該化合物を含有する場合、所望の屈折率異方性、誘電率異方性、ネマチック相‐等方性液体相転移温度又はコントラストなどを調整するときに特に効果的であり、式(I-a)〜(I-d)の任意の組み合わせはすべて好ましい。特に、(I-a)と(I-b)又は(I-c)又は(I-d)との組み合わせ、(I-b)と(I-c)又は(I-d)との組み合わせが好ましい。
【0053】
第二成分として一般式(II)、(III)から選ばれる化合物を1種又は2種以上を含有するが、3種以上が好ましく、3種〜20種がさらに好ましく、5種〜15種が特に好ましく、その中に一般式(II)の化合物を少なくとも2種以上含むことがより好ましい。特に、閾値電圧が2.0V以上であり応答速度を重視する場合、一般式(II)から選ばれる化合物を5種〜15種、一般式(III)から選ばれる化合物を少なくとも2種以上含有することが好ましく、また、閾値電圧が0.8以上2.0V未満の場合、一般式(III)から選ばれる化合物を5種〜15種、一般式(II)から選ばれる化合物を少なくとも2種以上含有することが好ましく、更に、特徴のある諸特性を得る又は固体相/スメクチック相-ネマチック相転移温度を特段に低下させる場合には、一般式(II)から選ばれる化合物を5種〜15種、一般式(III)から選ばれる化合物を5種〜15種を含有することが好ましい。この液晶組成物はネマチック相-等方性液体相転移温度が60℃以上であることを特徴とするが、75℃以上が好ましく、85℃以上が特に好ましい。また、Δnは0.06〜0.30の範囲であることを特徴とするが、0.08〜0.22が好ましい。
【0054】
一般式(II)及び(III)において、R1、R2、R3はそれぞれ独立的にフッ素置換されていても良い炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基又は炭素原子数3〜16のアルケニルオキシ基を表すが、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基が好ましく、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基がより好ましく、1〜5のアルキル基又はアルケニル基として式(a)〜(e)が特に好ましい。
【0055】
【化13】
【0056】
環A、環B、環C、環D及び環Eはそれぞれ独立的にフッ素原子により置換されていてもよい1,4-フェニレン基、2又は3-フルオロ-1,4-フェニレン、2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレン、3,5-ジフルオロ-1,4-フェニレン、2又は3-クロロ-1,4-フェニレン、2,3-ジクロロ-1,4-フェニレン、3,5-ジクロロ-1,4-フェニレン、2-メチル-1,4-フェニレン基、3-メチル-1,4-フェニレン基、ナフタレン-2,6-ジイル基、フェナントレン-2,7-ジイル基、フルオレン-2,7-ジイル基、トランス-1,4-シクロヘキシレン基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、トランス-1,3ジオキサン-2,5-ジイル基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピリミジン-2,5-ジイル基、ピラジン-2,5-ジイル基またはピリダジン-2,5-ジイル基を表すが、1,4-フェニレン基、トランス-1,4-シクロヘキシレン基が好ましい。
【0057】
一般式(II)において、環Aはトランス-1,4-シクロヘキシレン基、1,4-フェニレン基、2又は3-フルオロ-1,4-フェニレン、2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレン、3,5-ジフルオロ-1,4-フェニレンがより好ましく、環B及び環Cはトランス-1,4-シクロヘキシレン基、1,4-フェニレン基がより好ましく、Z1、Z2はそれぞれ独立的に単結合、-CH2CH2-、-CH=CH-、-COO-又は-C≡C-が好ましく、単結合又は-CH=CH-または-C≡C-がより好ましい。lはそれぞれ独立的に0、1又は2を表すが、0又は1が好ましい。
【0058】
一般式(III)においては、環D及び環Eはトランス-1,4-シクロヘキシレン基、1,4-フェニレン基、2又は3-フルオロ-1,4-フェニレン、2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレン、3,5-ジフルオロ-1,4-フェニレンがより好ましく、Z3、Z4はそれぞれ独立的に単結合、-CH2CH2-、-COO-又は-C≡C-が好ましいが、Z3においては単結合が特に好ましく、Z4においては単結合又は-COO-が特に好ましい。X2はシアノ基、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメトキシ基、トリフルオロメチル基、ジフルオロメトキシ基、水素原子又は3,3,3-トリフルオロエトキシ基を表すが、シアノ基、フッ素原子、トリフルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基が好ましく、シアノ基、フッ素原子が特に好ましい。X1、X3は水素原子、フッ素原子または塩素原子を表すが、水素原子、フッ素原子が好ましく、フッ素原子が特に好ましい。
【0059】
発明2において、一般式(I)の含有率は5〜60質量%であるが、5〜40質量%が好ましく、5〜30質量%が特に好ましく、一般式(II)又は一般式(III)の含有率は5〜95質量%であるが、15〜85質量%が好ましく、25〜85質量%が特に好ましい。更に別の好ましい形態として、一般式(III)のX2がシアノ基の場合にはTN-LCD、STN-LCDなどの駆動電圧の低減、コントラスト又はそれらの温度特性に優れた電気光学特性が得られ、X2がフッ素原子、トリフルオロメトキシ基の場合は高信頼性のSTN-LCDに好ましく、駆動電圧の低減に優れている。
【0060】
発明5及び6において、一般式(II)の化合物のより好ましい形態は、一般式(II-a)〜(II-v)であるが、更に好ましくは一般式(II-a)、(II-c)、(II-h)、(II-j)、(II-n)、(II-q)、(II-r)、(II-s)、(II-c)、(II-e)、(II-f)、(II-i)、(II-p)であり、特に好ましくは一般式(II-a)、(II-c)、(II-h)、(II-j)、(II-n)、(II-q)、(II-r)、(II-s)である。粘度や弾性定数の低減により応答速度を高速化するには、一般式(II-a)、(II-h)、(II-j)、(II-r)及び(II-s)が有用であり、弾性定数を大きくして高コントラストを得るには(II-a)、(II-c)、(II-n)、(II-q)が有用である。このとき、一般式(II)の含有率は5〜95質量%であるが、35〜85質量%が特に好ましい。また、所望の閾値電圧が0.8V〜1.3Vのときは一般式(II)の含有率は15〜60質量%が好ましく、1.3V〜1.8Vのときは一般式(II)の含有率は35〜80質量%が好ましく、1.8V〜3.0Vのときは一般式(II)の含有率は40〜90質量%が好ましい。本発明において、上記一般式(II-a)〜(II-v)以外にも、液晶組成物の特性を改善させるために液晶化合物として認識される通常のネマチック液晶、スメクチック液晶、コレステリック液晶などを含有してもよい。例えば、4個の6員環を有したコア構造の化合物であって、該化合物の液晶相-等方性液体相転移温度が100℃以上を有する化合物を1種又は2種以上含有させることができる。しかしながら、該化合物を多量に用いることは液晶組成物の特性が低減することになるので、その添加量は得られる液晶組成物の要求特性に応じて制限されるものである。
【0061】
発明7において、一般式(II-a)〜(II-v)の化合物の組み合わせとして、条件(2-i)〜(2-ix)の少なくとも1つを満たすことは、本発明の効果を得るのにより好ましい。条件(2-i)は粘度の低減による応答速度の高速化、弾性定数の増大による高コントラストが実現できる。条件(2-ii)は固体相/スメクチック相-ネマチック相転移温度を特段に低下させる効果がある。(2-iii)では、ネマチック相-等方性液体相転移温度の上昇に効果がある。条件(2-i)〜(2-iii)を組み合わせた条件(2-iv)は、ネマチック相温度範囲の拡大と優れた諸特性とを併せ持つ液晶組成物であり、それらの諸特性の調整も容易に達成される。条件(2-v)及び(2-vi)では、側鎖のアルケニル基を特定することにより、弾性定数の増大による高コントラスト化が容易に達成できる。条件(2-v)と(2-vi)を同時に満たす化合物は特段の効果を有する。以上の条件(2-i)〜(2-vi)を2つ又は3つ以上組み合わせることにより、粘度の低減による応答速度の高速化、弾性定数の増大による高コントラスト化、ネマチック温度範囲の拡大などの諸特性を両立させた優れた液晶組成物が得られ、STN-LCD、特に携帯電話やPDAといったカラー表示のSTN-LCDに最適である。
【0062】
発明8及び9において、一般式(III)の化合物のより好ましい形態は、一般式(III-a)〜(III-D)である。特に好ましいのは、一般式(III-a)、(III-i)、(III-k)、(III-l)、(III-q)、(III-r)、(III-u)、(III-v)、(III-w)である。特に、粘度や弾性定数の低減により応答速度を高速化するには一般式(III-i)、(III-k)、(III-q)、(III-r)及び(III-u)が有用であり、弾性定数を大きくして高コントラストを得るには(III-a)、(III-l)、(III-v)及び(III-w)が有用である。このとき、一般式(III)の含有率は5〜95質量%であるが、15〜85質量%が好ましく、25〜70質量%が特に好ましい。また、所望の閾値電圧が0.8V〜1.3Vのときは一般式(III)の含有率は30〜70質量%が好ましく、1.3V〜1.8Vのときは一般式(III)の含有率は15〜50質量%が好ましく、1.8V〜3.0Vのときは一般式(III)の含有率は10〜30質量%が好ましい。
【0063】
発明10において、一般式(III-a)〜(III-D)の化合物の組み合わせとして、条件(3-i)〜(3-xvii)の少なくとも1つを満たすことは、本発明の効果を得るのにより好ましい。条件(3-i)はTN-LCD、STN-LCDなどの駆動電圧の低減、コントラスト、応答速度又はそれらの温度特性に優れた電気光学特性が得られる。
【0064】
条件(3-ii)は高信頼性のSTN-LCD、例えば、プラスチックSTN-LCDにも好ましく、駆動電圧の低減に優れている。
【0065】
条件(3-iii)は高信頼性のTN-LCD、STN-LCDなどの駆動電圧の低減、コントラスト、応答速度又はそれらの温度特性に優れた電気光学特性の両立が可能である。
【0066】
条件(3-iv)〜(3-vi)は条件(3-i)で得られた諸特性を維持したまま、固体相/スメクチック相-ネマチック相転移温度を低下させることができ、ネマチック相-等方性液体相転移温度の上昇及び諸特性の調整が容易にできる。
【0067】
条件(3-vii)〜(3-ix)は条件(3-ii)で得られた諸特性を維持したまま、固体相又はスメクチック相-ネマチック相転移温度を低下させることができ、ネマチック相-等方性液体相転移温度の上昇及び諸特性の調整が容易にできる。
【0068】
条件(3-x)は高信頼性であり、非常に大きな弾性定数を得ることができるため、高Duty、高コントラストのSTN-LCDに好ましく、特にプラスチックSTN-LCDには有用である。
【0069】
条件(3-xi)では、条件(3-x)の諸特性を維持したまま、閾値電圧を低下させることができるため、高信頼性、高Duty、高コントラストのSTN-LCDに好ましく、例えば、プラスチックSTN-LCDにも有用である。
【0070】
条件(3-xii)はコントラスト、応答速度又はそれらの温度特性に優れた電気光学特性の両立が可能である。
【0071】
条件(3-xiii)は高Duty、高コントラストといった条件(3-x)の特性を維持したまま、閾値電圧を低下させることができる。
【0072】
条件(3-xiv)は、閾値電圧を低下させる効果が非常に大きく、応答速度も高速であり、低温度域での応答速度も非常に速い。
【0073】
条件(3-xv)では、条件(3-xiv)と同様に閾値電圧を低下させる効果が非常に大きく、応答速度も高速であり、低温度域での応答速度も非常に速く、更に閾値電圧の温度依存性及び周波数依存性が非常に小さいため、広い駆動温度範囲を必要とするSTN-LCDに有用である。
【0074】
条件(3-xvi)及び(3-xvii)は側鎖のアルケニル基を特定することにより、非常に大きな弾性定数が得られ、高Duty、高コントラストのSTN-LCDに有用である。条件(3-xvi)及び(3-xvii)を同時に満たす化合物は特段の効果を有する。
【0075】
また、条件(3-i)〜(3-xvii)を2つ又は3つ以上組み合わせることにより、閾値電圧を低下及び温度依存性や周波数依存性の改善、応答速度の高速化、弾性定数の増大による高コントラスト化、ネマチック温度範囲の拡大などの諸特性を両立させた優れた液晶組成物が得られ、STN-LCD、特に携帯電話やPDAといったカラー表示のSTN-LCDに最適である。
【0076】
発明11において、条件(2-i)〜(2-vi)と条件(3-i)〜(3-xvii)とを組み合わせることにより、更に優れた液晶組成物が得られ、高Duty、高コントラストかつ高速応答のSTN-LCD、特に携帯電話やPDAといったカラー表示のSTN-LCDに最適である。より好ましい形態として、条件(2-i)と(3-i)又は(3-ii)又は(3-iii)との組み合わせ、条件(2-i)と(3-x)又は(3-xi)又は(3-xii)又は(3-xiii)又は(3-xiv)又は(3-xv)との組み合わせがあり、特に好ましくは条件(2-i)と(3-iii)との組み合わせ、条件(2-i)と(3-x)との組み合わせ、条件(2-i)と(3-xii)との組み合わせ、条件(2-i)と(3-xv)との組み合わせ、条件(2-i)と(3-xiv)との組み合わせがある。
【0077】
以上で述べてきた液晶組成物は、発明12の条件(i)〜(v)の少なくとも1つ又は2つ以上を満たすことが更に好ましい形態である。
【0078】
(i) 複屈折率Δnは0.11〜0.195の範囲が好ましく、更に好ましくは0.11〜0.180の範囲であり、0.13〜0.180の範囲がSTN-LCDのセル厚の設計に特に好ましい。
【0079】
(ii) 誘電率異方性は1以上でもよいが、4≦△ε≦60の範囲が好ましく、閾値電圧が1.8V〜2.9Vの場合は4≦△ε≦7の範囲がより好ましく、閾値電圧が1.5V〜1.9Vの場合は5≦△ε≦12の範囲がより好ましく、閾値電圧が1.2V〜1.6Vの場合は8≦△ε≦16の範囲がより好ましく、閾値電圧が0.8V〜1.3Vの場合は12≦△ε≦30の範囲がより好ましい。また、高速応答を重視する場合には2〜8の範囲が好ましい。
【0080】
(iii) 弾性定数比k33/k11は1.1〜3.0の範囲が好ましく、更に好ましくは1.2〜2.8の範囲であり、特に好ましくは1.3〜2.7の範囲である。
【0081】
(iv) 粘度は10mPa・s〜80mPa・sの範囲が好ましく、更に好ましくは10mPa・s〜60mPa・sの範囲であり、特に好ましくは10mPa・s〜40mPa・sの範囲である。但し、高速応答を重視する場合には10mPa・s〜20mPa・sの範囲が特に好ましい。本発明の液晶組成物は、特に25mPa・s〜30mPa・s以上の粘度を有していても、必須成分一般式(I)の化合物、特に式(I-a)〜(I-d)の化合物により、応答性を損なわない特徴を有している。
【0082】
(v) ネマチック相−等方性液体相転移温度は60℃〜180℃の範囲が好ましく、更に好ましくは75℃〜130℃の範囲であり、特に好ましくは80℃〜110℃である。例えば、携帯電話やPDAといった広い駆動温度範囲を必要とする用途では、ネマチック相−等方性液体相転移温度は85℃〜110℃の範囲が好ましい。固体相又はスメクチック相−ネマチック相転移温度は-10℃〜-80℃の範囲が好ましく、更に好ましくは-20℃〜-60℃の範囲であり、特に好ましくは-30℃〜-55℃である。例えば、携帯電話やPDAといった広い駆動温度範囲を必要とする用途では、固体相又はスメクチック相−ネマチック相転移温度は-30℃〜-60℃が特に好ましい。
【0083】
これらの条件は、必須成分を前記で詳述したように選択的に化合物を含有することにより得られるものである。尚、以上詳述した各条件(i)〜(v)やこれらの個別の好ましい形態は、当然のことながら、一つ又は二つ以上を満たすことがより好ましい。
【0084】
上記いずれかの液晶組成物を用いた超捩れネマチック(STN)液晶表示素子は以下の形態が好ましい。ねじれ角は、0〜360度の範囲で選択できるが、220〜270度の範囲がより好ましい。本発明の液晶表示素子は、-20℃〜60℃の駆動温度範囲において、発明13の条件(vi)〜(viii)の少なくとも一つ又は二つ以上を満たすことが更に好ましい。
【0085】
(vi) Vthの温度依存性ΔV/ΔTは、7mV/℃以下が好ましく、閾値電圧が0.8V〜1.8Vの場合は5mV/℃以下がより好ましく、閾値電圧が0.8V〜1.6Vの場合は4mV/℃以下がより好ましい。
【0086】
(vii) 急峻性γ(飽和電圧Vsatとしきい値電圧Vthの比)は、1.15以下が好ましく、閾値電圧が0.8V〜1.6Vの場合は1.08以下がより好ましく、閾値電圧が1.0V〜1.8Vの場合は1.07以下がより好ましい。閾値電圧が1.2V〜2.5Vの場合は1.06以下が好ましい。-20℃〜60℃の温度範囲での急峻性γの最大値と最小値の比は、3%以下にすることができるが、2%以下にすることがより好ましい。
【0087】
(viii) ΔV/Δf、すなわち(V5000Hz-V64Hz)/V64Hz×100%は5%以下が好ましいが、より好ましくは0%〜4%の範囲であり、更に好ましくは0%〜3%の範囲である。
【0088】
尚、以上詳述した各条件(vi)〜(viii)の個別の好ましい形態は、当然のことながら、一つ又は二つ以上を満たすことがより好ましい。また、前述の各条件(i)〜(v)の一つ又は二つ以上を同時に満たすことは特に好ましい。
【0089】
このような液晶表示素子は、例えば1/60〜1/400デューティー(duty)、より好適には1/100〜1/250デューティーの表示において、電流値の増加を改善し、低温域での応答を低減し、情報量の増加やカラー表示に対しより改善した高コントラストを有したSTN-LCDである。
【0090】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例及び比較例の組成物における「%」は『質量%』を意味する。
【0091】
実施例中、測定した特性は以下の通りである。
TN-I :ネマチック相−等方性液体相転移温度(℃)
T→N :固体相又はスメクチック相−ネマチック相転移温度(℃)
Vth :セル厚8.3μmのTN-LCDを構成した時のしきい値電圧(V)
Δε :誘電異方性(20℃)
Δn :複屈折率(20℃)
η :粘度(mPa・s)(20℃)
STN-LCD表示素子の作成は以下のように行った。ネマチック液晶組成物にカイラル物質「S-811」(メルク社製)を添加して混合液晶を調製し、対向する平面透明電極上に「サンエバー150」(日産化学社製)の有機膜をラビングして配向膜を形成したツイスト角240度のSTN-LCD表示用セルに注入した。なお、カイラル物質はカイラル物質の添加による混合液晶の固有らせんピッチPと表示用セルのセル厚dが、Δn・d=0.90、d/P=0.50となるように添加した。
【0092】
Vth(STN) :しきい値電圧(V)
Vsat(STN):飽和値電圧(V)
γ :急峻性 Vsat(STN)/Vth(STN)
τ :応答時間(msec)
Ir :240°ツイストのSTN-LCDに液晶組成物を真空注入し80℃、
100時間加熱後の電流値(μA/cm2)
CR :240°ツイストのSTN-LCDに液晶組成物を真空注入し、1/200デューティー、1/16バイアスの駆動波形で駆動したときのコントラスト
【0093】
化合物記載に下記の略号を使用する。
側鎖
-n 数字 :-CnH2n+1 (アルキル側鎖は数字、代表するときはRとする。)
-On :-OCnH2n+1
-ndm :-(CnH2n+1-CH=CH-(CH2)m-1)
ndm- :CnH2n+1-CH=CH-(CH2)m-1-
-nOm :-(CH2)nOCmH2m+1
nOm- :CnH2n+1O(CH2)m-
-Od(m)n :-O(CnH2n+1-CH=CH-(CH2)m-2)
d(m)nO- :CnH2n+1-CH=CH-(CH2)m-2O-
連結基
-V- :-CO- -VO- :-COO-
-OV- :-OCO- -1N- :-C=N-
-N1- :-N=C- -T- :-C≡C-
-2- :-CH2CH2- -3- :-CH2CH2CH2-
-4- :-CH2CH2CH2 -1O- :-CH2-O-
-O1- :-O-CH2- -Z- :-CH=N-N=CH-
-G- :-CF=CF- -D- :-CH=CH-
-2D- :-CH2CH2CH=CH- -D2- :-CH=CHCH2CH2-
置換基
-CN :-C≡N -F :-F -Cl :-Cl
OCFFF :OCF3 CFFF:CF3 OCFF:OCHF2
O1CFFF:OCH2CF3
環
Ph :1,4-フェニレン基 Ph1:3-フルオロ-1,4-フェニレン基
Ph2:2-フルオロ-1,4-フェニレン基 Ph3:3,5-ジフルオロ-1,4-フェニレン基
Cy :1,4-シクロヘキシレン基 Ma :ピリミジン-2,5-ジイル基
【0094】
(実施例1、比較例1)
ネマチック液晶組成物
【0095】
【化14】
【0096】
を調製し、この組成物の諸特性を測定した結果を比較例1と共に表1に示す。
【0097】
【表1】
【0098】
表1に示すように、実施例1の液晶組成物は、比較例1の組成物に比べ電流値を大幅に抑制しているうえにコントラストも改善している。
ここで作製したSTN-LCDを用いて、優れた表示特性を示す液晶表示装置を作成することができた。
【0099】
(実施例2、比較例2)
ネマチック液晶組成物(実施例2、比較例2)を調製し諸特性を測定した。結果を表2に示す。尚、表中の電気光学特性は△n・d=0.9の条件でのSTN-LCD特性である。両者を比較すると、0d1CPCNf を用いた実施例2は 2CPCNf を用いた比較例2に比べ、-20℃〜25℃の温度範囲において、閾値電圧の温度依存性と急峻性γに優れ、低温度での応答速度が約23%改善されている。
【0100】
【表2】
【0101】
(実施例3〜5)
ネマチック液晶組成物(実施例3〜5)を調製し諸特性を測定した。結果を表3に示す。尚、表中の電気光学特性は△n・d=0.9の条件でのSTN-LCD特性である。
【0102】
実施例3〜5は従来の液晶組成物では成し得なかった優れた諸特性を有している。実施例3はネマチック相−等方性液体相転移温度(TN-I)が98.4℃という非常に高い値になっているが、このときの急峻性γは1.042であり高コントラストが得られ、25℃での応答速度τは168msecという速い値である。実施例4では粘度ηが非常に小さく14.1mPa・sであり、25℃での応答速度τが94msecという高速応答が実現され、-20℃でのそれも903msecという非常に小さな値である。実施例5でも高コントラストと高速応答が両立され、特段に優れた特性が得られている。また、実施例3〜5のVthの温度依存性は小さく、駆動温度範囲の広いSTN-LCDに特に有用である。
【0103】
【表3】
【0104】
(実施例6〜15)
ネマチック液晶組成物(実施例6〜15)を調製した。これらの組成比を表4に示す。表4中、本発明に関わる一般式(I)から選ばれる化合物のみからなる組成物を液晶組成物Aとし、一般式(II)から選ばれる化合物のみからなる組成物を液晶組成物Bとし、それらの組成比を表5に示す。これらの液晶を用いて、△n・d=0.9の条件でSTN-LCDを作製したときの特性を図1〜3に示す。
【0105】
【表4】
【0106】
【表5】
【0107】
図1から、実施例9〜14は本発明の効果である高コントラストと高速応答を実現している優れた例であることがわかる。実施例9〜11では、急峻性γ、ΔV/ΔT、ΔV/Δfが改善されており、特に応答速度τの改善効果は非常に大きい。実施例12では、応答速度τが大幅に改善されており、ΔV/ΔT及びΔV/Δfについて特段の改善が得られている。実施例13では、急峻性γが大幅に改善されており、ΔV/ΔT及びΔV/Δfについて特段の改善効果が得られている。実施例14は応答速度τの改善に効果があり、ΔV/Δfの改善効果も大きい。これらの実施例9〜14を組み合わせることにより、本発明の課題を解決するのに更に有用な液晶組成物を得ることができる。
【0108】
特性の改善効果から論じれば、急峻性γ(図1)について改善効果が大きいのは実施例7、8、13であり、特に実施例8が特段に優れている。応答速度τ(図1)について改善効果が非常に大きいのは実施例9、10、11、12、14であり、高速応答が実現されている。Vthの温度依存性(ΔV/ΔT)(図2)について改善効果が大きいのは実施例9〜14であり、特に実施例12、13の改善効果は非常に大きい。Vthの周波数依存(ΔV/Δf)(図2)についても改善効果が大きいのは実施例9〜14であり、中でも実施例12、13、14の改善効果は非常に優れている。実施例9、10、11、12、13、14は応答速度τ、急峻性γ、Vthの温度依存性(ΔV/ΔT)、Vthの周波数依存(ΔV/Δf)のすべてに特性改善がみられる。これらの本発明の効果は、一般式(I)〜(III)の化合物を選択して組み合わせたことによって得られたものである。
【0109】
【発明の効果】
本発明のネマチック液晶組成物は、所望の閾値電圧に対して液晶諸特性を悪化させることなく、電流値を抑制した信頼性の高い液晶組成物であり、更に閾値電圧の温度依存性や周波数依存性を良好にし、より広い温度域で安定した高いコントラスト(急峻性)を有した表示特性を達成することを可能としたものである。液晶表示素子にこのような液晶組成物を使用した場合、例えば1/32〜1/400デューティー(duty)、より好適には1/80〜1/250デューティーの表示において特性改善に効果があり、情報量の増加やカラー表示に対しより改善した高コントラストの液晶表示素子(STN-LCD)を提供することができる。
【0110】
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例6〜15の-20℃における急峻性γ及び応答速度τを表すグラフ。
【図2】 実施例6〜15のVthの温度依存性ΔV/ΔTを表すグラフ。
【図3】 実施例6〜15のVthの周波数依存性ΔV/Δfを表すグラフ。
Claims (7)
- 第一成分として、一般式(I)
- 第一成分として、一般式(I)の化合物を1種又は2種以上を含有し該含有率が5〜60質量%の範囲で有り、第二成分として、一般式(II)から選ばれる化合物を1種又は2種以上を含有し、第三成分として一般式(III-i)、(III-k)、(III-l)、(III-q)、(III-r)、(III-s)及び(III-u)から選ばれる化合物を1種又は2種以上を含有し、第二成分及び第三成分から選ばれる化合物の含有率が5〜95質量%の範囲であることを特徴とする請求項1記載の液晶組成物。
- 第一成分として、式(I-a)〜(I-d)から選ばれる1種又は2種から4種の化合物を含有し、該含有率が5〜60質量%の範囲であることを特徴とする請求項3記載の液晶組成物。
- 第一成分として、式(I-a)〜(I-d)から選ばれる少なくとも1種又は2種から4種の化合物を含有し該含有率が5〜60質量%の範囲であり、第二成分として、一般式(II-a)〜(II-v)の化合物群から選ばれる少なくとも1種又は2種から30種の化合物を含有し該含有率が35〜85質量%の範囲であることを特徴とする請求項5記載の液晶組成物。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載の液晶組成物を用いた、ねじれ角が220°〜270°の範囲であり、-20℃〜60℃の駆動温度範囲において下記条件(vi)〜(viii)の少なくとも一つ又は二つ以上を満たすことを特徴とする超ねじれネマチック(STN)液晶表示素子。
(vi) ΔV/ΔT(Vthの温度依存性)≦7mV/℃(温度範囲-20℃〜60℃)
(vii) 急峻性γ≦1.15
(viii) ΔV/Δf = (V5000Hz-V64Hz)/V64Hz×100%≦5%
(但し、V5000Hzは周波数5000HzにおけるVthを表し、V64Hzは周波数64HzにおけるVthを表す。)
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