JP4918734B2 - 液晶組成物及び液晶表示素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電気光学的液晶表示材料として有用なネマチック液晶組成物及び、これを用いた液晶表示素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置(LCD)は、電卓のディスプレイとして登場して以来、コンピューターの開発と歩みを同じくして、TN-LCD(捻れネマチック液晶表示装置)から、STN-LCDへと表示容量の拡大に対応してきた。STN-LCDは、シェファー(Scheffer)等[SID '85 Digest, 120頁(1985年)]、あるいは衣川等[SID '86 Digest, 122頁(1986年)]によって開発され、ワードプロセッサ、パーソナルコンピュータなどの高情報処理用の表示に広く普及しはじめている。最近、STN-LCDでの応答特性を改善する目的でアクティブ・アドレッシング駆動方式が提案されている。(Proc.12th International Display Research Conference p.503 1992年)また、携帯用端末表示(Personal Digital Assistance)ではより広い温度域で良好な表示特性が要求されている。この様な液晶材料として粘性が低く、駆動電圧が低くなおかつ広い温度範囲に対して一定値を保持することや、あるいは種々の時分割に対応した周波数範囲で駆動電圧が変動しないことが要求されている。しかし、表示素子に組み込んだときの応答速度やコントラストなどはまだ十分とは言えず、現在も新しい液晶化合物あるいは液晶組成物の提案がなされている。
【0003】
LCDの急速な用途拡大に伴い、室内で使用されるだけでなく、コンピューターの携帯端末ディスプレイ、車載用計器、屋外使用計測機のディスプレイのように、温度条件の過酷な屋外で使用されることが増加してきた。そのため、LCDが置かれる環境の温度変化による表示コントラストの低下、低温における応答速度の低下による表示品位の悪化が問題になってきている。また、屋外での使用では高い信頼性も求められるようになってきた。
【0004】
周囲の温度変化によるLCD表示品位の低下の原因は、様々な要因が上げられるが、ネマチック液晶の弾性定数や誘電率などの温度変化と添加したカイラル物質の固有ピッチの温度変化に起因する閾値電圧Vthの温度変化を抑えるため、カイラル物質の固有ピッチの温度変化を制御することにより閾値電圧の温度依存性を改善する提案(特開昭55-38869公報)はすでに知られており、母体液晶とカイラル物質の組み合わせによりその効果が変化する事や、カイラル量を増やすことによりレスポンス等の表示特性に悪影響を及ぼすことが問題になっていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、閾値電圧を上昇させることなく、急峻性γ及び閾値電圧の温度依存性を改善し、室温及び低温における応答速度の速い液晶組成物を提供することにあり、また、この組成物を使用した応答速度の速い液晶表示素子を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、種々の液晶化合物を用いた液晶組成物を検討した結果下記の液晶組成物を見いだした。
第一成分として一般式(I)
【0007】
【化16】
【0008】
(式中、R1、R2はそれぞれ独立的にフッ素置換されていても良い炭素原子数3〜16のアルケニル基を表す。但し、そのR1、R2中に存在する二重結合はベンゼン環から必ず1つ以上の炭素原子を隔てている。)から選ばれる化合物を1種もしくは2種以上を含有し、第二成分として一般式(II)
【0009】
【化17】
【0010】
(式中、R3、R4はそれぞれ独立的にフッ素置換されていても良い炭素原子数3〜16のアルケニル基を表す。但し、そのR3、R4中に存在する二重結合はベンゼン環から必ず1つ以上の炭素原子を隔てている。)から選ばれる化合物を1種もしくは2種以上を含有し、第三成分として一般式(III)
【0011】
【化18】
【0012】
(式中、R5はそれぞれ独立的にフッ素置換されていても良い炭素原子数1〜16のアルキル基またはアルコキシル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基を表す。)から選ばれる化合物を1種もしくは2種以上を含有し、なお且つネマチック相−等方性液体相転移温度が75〜130℃であり、スメクチック相または固体相-ネマチック相転移温度が-60〜-10℃であり、屈折率の異方性(Δn)が0.07〜0.30の範囲であることを特徴とする液晶組成物。この組成物を用いた液晶表示素子は、閾値電圧を過度に上昇させることなく、その温度依存性を改善することができる。また応答速度、特に0℃以下の低温での応答速度を改善することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の例について説明する。
第一成分として一般式(I)から選ばれる化合物を1種もしくは2種以上を含有するが、1種もしくは2種が好ましい。また、式中、R1、R2は炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数3〜16のアルケニル基を表すが、少なくとも一方はアルケニル基が好ましく、式(a)、(b)の構造がより好ましく、
【0014】
【化19】
(構造式は右端で環に連結しているものとする。)
【0015】
式(b)が特に好ましい。また、R1、R2は共にアルケニル基であることが更に好ましく、特に式(b)であることが好ましい。第二成分として一般式(II)から選ばれる化合物を1種もしくは2種以上を含有するが、1種もしくは2種が好ましい。また、式中、R3、R4は炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数3〜16のアルケニル基を表すが、アルケニル基がより好ましく、式(a)、(b)の構造が更に好ましく、
【0016】
【化20】
(構造式は右端で環に連結しているものとする。)
【0017】
式(b)が特に好ましい。また、R3、R4は共にアルケニル基であることが更に好ましく、特に式(b)であることが好ましい。第三成分として一般式(III)から選ばれる化合物を1種もしくは2種以上を含有するが、1種もしくは2種が好ましい。また、式中、R5はそれぞれ独立的にフッ素置換されていても良い炭素原子数1〜16のアルキル基またはアルコキシル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基を表すが、炭素原子数1〜8のアルキル基または炭素原子数2〜8のアルケニル基であることが好ましく、1〜5のアルキル基もしくはアルケニル基として式(a)〜(e)が特に好ましい。
【0018】
【化21】
(構造式は右端で環に連結しているものとする。)
【0019】
この液晶組成物はネマチック相上限温度が75℃〜130℃であることを特徴とするが、80℃〜110℃が好ましく、85℃〜105℃が特に好ましい。また、スメクチック相または固体相-ネマチック相転移温度は-60℃〜-10℃であるが、-60℃〜-25℃が好ましく、-55℃〜-30℃がさらに好ましい。Δnは0.07〜0.30であることを特徴とするが、0.08〜0.22が好ましい。
第四成分として一般式(IV)、(V)
【0020】
【化22】
【0021】
(式中、R6、R7及びR8はそれぞれ独立的にフッ素置換されていても良い炭素原子数1〜16のアルキル基またはアルコキシル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数3〜16のアルケニルオキシ基、または炭素原子数1〜10のアルコキシル基で置換された炭素原子数1〜12のアルキル基を表し、環A、環B、環C、環D及び環Eはそれぞれ独立的にフッ素原子により置換されていてもよい1,4-フェニレン基、2-メチル-1,4-フェニレン基、3-メチル-1,4-フェニレン基、ナフタレン-2,6-ジイル基、フェナントレン-2,7-ジイル基、フルオレン-2,7-ジイル基、トランス-1,4-シクロヘキシレン基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、トランス-1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピリミジン-2,5-ジイル基、ピラジン-2,5-ジイル基またはピリダジン-2,5-ジイル基を表し、l及びmはそれぞれ独立的に0、1もしくは2を表し、Z1、Z2、Z3及びZ4はそれぞれ独立的に単結合、-CH2CH2-、-(CH2)4-、-OCH2-、-CH2O-、-CH=CH-、-COO-または-C≡C-を表し、X2はシアノ基、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメトキシ基、トリフルオロメチル基、ジフルオロメトキシ基、水素原子、3,3,3-トリフルオロエトキシ基、R'または-OR'を表し、R'は炭素原子数1〜12の直鎖状アルキル基または、2〜12の直鎖状アルケニル基を表し、X1、X3は水素原子、フッ素原子または塩素原子を表す。)からなる群より選ばれる化合物を1種もしくは2種以上を含有することが好ましい。
【0022】
一般式(IV)、(V)からなる群より選ばれる化合物を1種もしくは2種以上を含有するが、3種以上が好ましく、3種〜20種が更に好ましく、5種〜15種が特に好ましく、その中に一般式(IV)の化合物を少なくとも2種以上含むことがより好ましい。R6、R7、R8はそれぞれ独立的にフッ素置換されていても良い炭素原子数1〜16のアルキル基またはアルコキシル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数3〜16のアルケニルオキシ基、または炭素原子数1〜10のアルコキシル基で置換された炭素原子数1〜12のアルキル基を表すが、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基が好ましく、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基がより好ましく、1〜5のアルキル基もしくはアルケニル基として式(a)〜(e)が特に好ましい。
【0023】
【化23】
(構造式は右端で環に連結しているものとする。)
【0024】
環A、環B、環C、環D及び環Eはそれぞれ独立的にフッ素原子により置換されていてもよい1,4-フェニレン基、2-メチル-1,4-フェニレン基、3-メチル-1,4-フェニレン基、ナフタレン-2,6-ジイル基、フェナントレン-2,7-ジイル基、フルオレン-2,7-ジイル基、トランス-1,4-シクロヘキシレン基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、トランス-1,3ジオキサン-2,5-ジイル基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピリミジン-2,5-ジイル基、ピラジン-2,5-ジイル基またはピリダジン-2,5-ジイル基を表すが、1,4-フェニレン基、トランス-1,4-シクロヘキシレン基が好ましく、環A、環B、環D、環Eにおいてはトランス-1,4-シクロヘキシレン基がより好ましく、環Cにおいては1,4-フェニレン基がより好ましい。l、mはそれぞれ独立的に0、1もしくは2を表すが、0もしくは1が好ましい。Z1、Z2、Z3、Z4はそれぞれ独立的に単結合、-CH2CH2-、-(CH2)4-、-OCH2-、-CH2O-、-COO-、-CH=CH-または-C≡C-表すが、Z1、Z2においては単結合、-C≡C-、-CH2CH2-が好ましく、単結合がより好ましい。Z3、Z4においては単結合、-COO-、-C≡C-が好ましく、単結合がより好ましい。X2はシアノ基、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメトキシ基、トリフルオロメチル基、ジフルオロメトキシ基、水素原子、3,3,3-トリフルオロエトキシ基、R'または-OR'を表し、R'は炭素原子数1〜12の直鎖状アルキル基または、2〜12の直鎖状アルケニル基を表すが、シアノ基、フッ素原子、トリフルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基が好ましく、フッ素原子、トリフルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基がより好ましく、フッ素原子が特に好ましい。X1、X3は水素原子、フッ素原子または塩素原子を表すが、水素原子、フッ素原子が好ましく、フッ素原子が特に好ましい。
【0025】
本発明の組成物を構成するにあたっては、一般式(I)、(II)から選ばれる化合物をそれぞれ1種もしくは2種以上を含有し、その含有率がそれぞれ5〜60質量%で、なお且つ一般式(III)から選ばれる化合物を1種もしくは2種以上を含有し、その含有率が5〜40質量%で、更に第四成分として一般式(IV)、(V)からなる群より選ばれる化合物を1種もしくは2種以上を含有し、その含有率が5〜85質量%であることが好ましい。この際、一般式(I)、(II)から選ばれる化合物の含有率はそれぞれ5〜60質量%であるが、5〜30質量%が好ましく、5〜20質量%が特に好ましい。一般式(III)から選ばれる化合物の含有率は5〜40質量%であるが、5〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。一般式(IV)、(V)からなる群より選ばれる化合物の含有率は5〜85質量%であるが、5〜75質量%が好ましく、5〜65質量%が特に好ましい。
【0026】
一般式(IV)の化合物として、環Aおよび環Bがトランス-1,4-シクロヘキシレン基であり、Z1、Z2が単結合の一般式(IV-a)
【0027】
【化24】
【0028】
(式中、R9、R10はR6、R7と同じ意味を表し、環Fは1,4-フェニレン基またはトランス-1,4-シクロヘキシレン基を表し、nは0もしくは1を表す。)から選ばれる化合物を1種もしくは2種以上を含有することが応答速度の改善効果の観点からは好ましい。更にR9、R10が同時にまたは一方がアルケニルであることが急峻性及び応答速度の観点から好ましい。
一般式(IV-a)の含有率が5〜85質量%であるが、5〜75質量%が好ましく、5〜65質量%がより好ましい。
【0029】
一般式(IV)の化合物として一般式(IV-b)
【0030】
【化25】
【0031】
(式中、R12、R13はそれぞれ独立的にフッ素置換されていても良い炭素原子数1〜8のアルキル基または炭素原子数2〜8のアルケニル基を表す。)が、応答速度を改善するには有効であり、その含有率は5〜60質量%が好ましい。
【0032】
一般式(IV)の化合物として、一般式(IV-c)
【0033】
【化26】
【0034】
(式中、R14、R15はそれぞれ独立的フッ素置換されていても良い炭素原子数1〜8のアルキル基または炭素原子数2〜8のアルケニル基を表す。)も応答速度の改善及び幅広い液晶温度範囲の拡大の点から好ましい。この際に、一般式(IV-b)から選ばれる化合物を1種もしくは2種以上を含有し、その含有率が5〜60質量%であるが、5〜40質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。一般式(IV-c)から選ばれる化合物を1種もしくは2種以上を含有し、その含有率が5〜60質量%であるが、5〜50質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましい。式中、R12、R13、R14、R15はそれぞれ独立的フッ素置換されていても良い炭素原子数1〜8のアルキル基または炭素原子数2〜8のアルケニル基を表すが、1〜5のアルキル基もしくはアルケニル基として式(a)〜(e)が応答速度改善、急峻性改善の観点から特に好ましい。
【0035】
一般式(IV)の化合物として一般式(IV-b)
【0036】
【化27】
【0037】
(式中、R12、R13はそれぞれ独立的にフッ素置換されていても良い炭素原子数1〜8のアルキル基または炭素原子数2〜8のアルケニル基を表す。)から選ばれる化合物を1種もしくは2種以上を含有し、その含有率が5〜60質量%で、さらに一般式(IV-c)
【0038】
【化28】
【0039】
(式中、R14、R15はそれぞれ独立的フッ素置換されていても良い炭素原子数1〜8のアルキル基または炭素原子数2〜8のアルケニル基を表す。)から選ばれる化合物を1種もしくは2種以上を含有し、その含有率が5〜60質量%である液晶組成物は、応答速度の改善の点から好ましい。
式中、R12、R13、R14、R15はそれぞれ独立的フッ素置換されていても良い炭素原子数1〜8のアルキル基または炭素原子数2〜8のアルケニル基を表すが、1〜5のアルキル基もしくはアルケニル基として式(a)〜(e)が応答速度改善、急峻性改善の観点から特に好ましい。
【0040】
一般式(V)の化合物として、環Dがトランス-1,4-シクロヘキシレン基であり、Z3、Z4が単結合であり、m=1の一般式(V-a)
【0041】
【化29】
【0042】
(式中、R11は炭素原子数1〜8のアルキル基または、2〜8のアルケニル基を表し、環Gは1,4-フェニレン基またはトランス-1,4-シクロヘキシレン基を表し、X5はシアノ基、フッ素原子、トリフルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基を表し、X4、X6はそれぞれ独立的に水素原子またはフッ素原子を表す。)から選ばれる化合物を1種もしくは2種以上を含有することが、閾値電圧の温度依存性を更に改善する観点から好ましい。一般式(V-a)の含有率はその効果を最も享受するためには、5〜85質量%が好ましいが、5〜75質量%が好ましく、5〜65質量%がより好ましい。
一般式(V)もしくは(V-a)として一般式(V-b)
【0043】
【化30】
【0044】
(式中、R16は炭素原子数1〜16のアルキル基または炭素原子数2〜8のアルケニル基を表す。)から選ばれる化合物を1種もしくは2種以上を含有し、その含有率が5〜40質量%であることが好ましく、より効果的にするには、5〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。
また、一般式(V)もしくは(V-a)として一般式(V-c)
【0045】
【化31】
【0046】
(式中、R17は炭素原子数1〜16のアルキル基または炭素原子数2〜8のアルケニル基を表す。)から選ばれる化合物を1種もしくは2種以上を含有し、その含有率が5〜40質量%であるが、閾値電圧の温度依存性改善の観点から5〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。
【0047】
また、最も発明の効果を得ることができる液晶組成物の一つとしては、
一般式(I)として式(I-a)
【0048】
【化32】
【0049】
一般式(II)として式(II-a)
【0050】
【化33】
【0051】
をそれぞれ含有し、その含有率がそれぞれ5〜60質量%であり、なお且つ一般式(III)として式(III-a)
【0052】
【化34】
【0053】
を含有し、その含有率が5〜40質量%であり、更に一般式(IV)の化合物として、一般式(IV-b)
【0054】
【化35】
【0055】
(式中、R12、R13はそれぞれ独立的にフッ素置換されていても良い炭素原子数1〜8のアルキル基または炭素原子数2〜8のアルケニル基を表す。)から選ばれる化合物を1種もしくは2種以上を含有し、その含有率が5〜60質量%で、さらに一般式(IV-c)
【0056】
【化36】
【0057】
(式中、R13、R14はそれぞれ独立的にフッ素置換されていても良い炭素原子数1〜8のアルキル基または炭素原子数2〜8のアルケニル基を表す。)から選ばれる化合物を1種もしくは2種以上を含有し、その含有率が5〜60質量%であることが最も好ましい。この際、式(I-a)、(II-a)の含有率はそれぞれ5〜60質量%であるが、5〜30質量%が好ましく、5〜20質量%が特に好ましい。式(III-a)の含有率は5〜40質量%であるが、5〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。
【0058】
上記の液晶組成物を用いた液晶表示素子は、応答速度が改善され有用である。
上記の液晶組成物を用いた捩れ角が180°〜270°であることを特徴とする超捩れネマチック(STN)液晶表示素子は、応答及びコントラストに優れ有用である。
【0059】
上記ネマチック液晶組成物はTN-LCDやSTN-LCDに有用であるが、STN-LCDに特に有用であり、例えば1/64Duty〜1/160Dutyの動画対応カラーSTN-LCDへの応用に適している。また、透過型あるいは反射型の液晶表示素子に用いることができる。本発明の液晶組成物は、上記の化合物以外に、通常のネマチック液晶、スメクチック液晶、コレステリック液晶などを含有していてもよい。
【0060】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例及び比較例の組成物における「%」は『質量%』を意味する。
【0061】
実施例中、測定した特性は以下の通りである。
TN-I :ネマチック相−等方性液体相転移温度(℃)
T→N :固体相又はスメクチック相−ネマチック相転移温度(℃)
Vth :240°ツイストセルを構成した時の輝度90%での印加電圧(V)
Vsat :240°ツイストセルを構成した時の輝度10%での印加電圧(V)
γ :240°ツイストセルにて測定した輝度90%と10%での印加電圧の比で表される急峻性γ=Vsat/Vth
Δn :複屈折率
η :20℃での粘度(mPa・s)
τ50 ℃ :50℃におけるレスポンス(msec)
(立ち上がり時間と立ち下がり時間の平均値)
τ25 ℃ :25℃におけるレスポンス(msec)
(立ち上がり時間と立ち下がり時間の平均値)
τ-20 ℃:-20℃におけるレスポンス(msec)
(立ち上がり時間と立ち下がり時間の平均値)
dV/dT:温度範囲t1(℃)〜t2(℃)における閾値電圧の温度依存性(mV/℃)であり、次式で表される。
dV/dT = (Vtht1−Vtht2) / (t1−t2)
【0062】
STN-LCD表示素子の作成は以下のように行った。ネマチック液晶組成物にカイラル物質「S-811」(メルク社製)を添加して混合液晶を調製し、対向する平面透明電極上に「サンエバー150」(日産化学社製)の有機膜をラビングして配向膜を形成したツイスト角240°のSTN-LCD表示用セルに注入した。なお、カイラル物質はカイラル物質の添加による混合液晶の固有らせんピッチPと表示用セルのセル厚dが、Δn・d=0.90、d/P=0.50となるように添加した。
【0063】
化合物の記載に下記の略号を使用する。
【0064】
【化37】
【0065】
例えば、以下に示すように略号を用いる。
【0066】
【化38】
【0067】
(実施例1、比較例1)
ネマチック液晶組成物No.1を調製し、この組成物の諸特性を測定した結果を比較例1と共に表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
比較例1中の3-Ph-T-Ph-1、3-Ph-T-Ph-O2、4-Ph-T-Ph-O2、5-Ph-T-Ph-O1を式(I-a)の化合物である0d3-Ph-T-Ph-3d0、式(II-a)に置換し、化合物5-Ph-VO-Ph3-CNを除去し、式(III-a)の化合物を使用することで実施例1を作製した。その結果、急峻性γが1.068から1.065に改善され、応答速度τ50 ℃は56msecから51msecに改善され、応答速度τ25 ℃は114msecから97msecに改善され、応答速度τ-20 ℃は1764msecから1001msecへと大幅に改善された。また、閾値電圧の温度依存性dV/dTが、低温域(-20〜25℃)において-3.3(mV/℃)から-2.6(mV/℃)へと改善された。
【0070】
【発明の効果】
本発明の液晶材料の組み合わせによって、閾値電圧を上昇させることなく、急峻性γ及び閾値電圧の温度依存性を改善し、室温及び低温における応答速度の高速化が達成された。また、この組成物を液晶表示素子として用いた場合、駆動電圧を維持したまま、コントラストが改善され、広い温度範囲での高速応答が実現された。この液晶ディスプレイはSTNおよびTN-LCDとして非常に有用である。
Claims (13)
- 第一成分として一般式(I)
- 第四成分として一般式(IV)、(V)
- 一般式(I)、(II)から選ばれる化合物をそれぞれ1種もしくは2種以上を含有し、その含有率がそれぞれ5〜60質量%で、なお且つ一般式(III)から選ばれる化合物を1種もしくは2種以上を含有し、その含有率が5〜40質量%で、更に第四成分として一般式(IV)、(V)からなる群より選ばれる化合物を1種もしくは2種以上を含有し、その含有率が5〜85質量%であることを特徴とする請求項2記載の液晶組成物。
- 一般式(I)、(II)から選ばれる化合物をそれぞれ1種もしくは2種以上を含有し、その含有率がそれぞれ5〜60質量%で、なお且つ一般式(III)から選ばれる化合物を1種もしくは2種以上を含有し、その含有率が5〜40質量%で、更に第四成分として一般式(IV-a)から選ばれる化合物を1種もしくは2種以上を含有し、その含有率が5〜85質量%であることを特徴とする請求項4記載の液晶組成物。
- 一般式(I)、(II) から選ばれる化合物をそれぞれ1種もしくは2種以上を含有し、その含有率がそれぞれ5〜60質量%で、なお且つ一般式(III)から選ばれる化合物を1種もしくは2種以上を含有し、その含有率が5〜40質量%で、更に第四成分として一般式(V-a)から選ばれる化合物を1種もしくは2種以上を含有し、その含有率が5〜85質量%であることを特徴とする請求項6記載の液晶組成物。
- 一般式(I)、(II)から選ばれる化合物をそれぞれ1種もしくは2種以上を含有し、その含有率がそれぞれ5〜60質量%で、なお且つ一般式(III)から選ばれる化合物を1種もしくは2種以上を含有し、その含有率が5〜40質量%で、更に一般式(IV)の化合物として一般式(IV−b)
- 一般式(I)として式(I−a)
- 請求項1〜11のいずれかに記載の液晶組成物を用いた液晶表示素子。
- 請求項1〜11のいずれかに記載の液晶組成物を用いた捩れ角が180°〜270°であることを特徴とする超捩れネマチック(STN)液晶表示素子。
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