JP4839524B2 - 液晶組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電気光学的液晶表示材料として有用なネマチック液晶組成物及び、これを用いた液晶表示素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置(LCD)は、電卓のディスプレイとして登場して以来、コンピューターの開発と歩みを同じくして、TN-LCD(捻れネマチック液晶表示装置)から、STN-LCDへと表示容量の拡大に対応してきた。STN-LCDは、シェファー(Scheffer)等[SID '85 Digest, 120頁(1985年)]、あるいは衣川等[SID '86 Digest, 122頁(1986年)]によって開発され、ワードプロセッサ、パーソナルコンピュータなどの高度情報処理用の表示に広く普及しはじめている。最近、STN-LCDでの応答特性を改善する目的でアクティブ・アドレッシング駆動方式が提案されている。(Proc.12th International Display Research Conference p.503 1992年)また、携帯用端末表示(Personal Digital Assistance)ではより広い温度域で良好な表示特性が要求されている。この様な液晶材料として粘性が低く、駆動電圧が低くなおかつ広い温度範囲に対して一定値を保持することや、あるいは種々の時分割に対応した周波数範囲で駆動電圧が変動しないことが要求されている。しかし、表示素子に組み込んだときの駆動電圧や応答速度、コントラストなどはまだ十分とは言えず、現在も新しい液晶化合物あるいは液晶組成物の提案がなされている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上述のようにTN-LCDやSTN-LCDの重要な特性改善課題の一つに駆動電圧の低減がある。LCDの急速な用途拡大に伴い、室内で使用されるだけでなく、コンピューターの携帯端末ディスプレイ、車載用計器、屋外使用計測機のディスプレイのように、動作のための電源が限られた屋外で使用されることが増加してきた。そのため、電池等の屋外で使用できる電源では十分に駆動できない問題が起こっている。また、電池寿命を長くするために、駆動電圧を3V以下にすることが有用であるが、この駆動電圧を達成するためには、閾値電圧が1V以下である必要がある。この際には、低電圧で動作させるために、従来から知られている誘電率の大きな材料を多量に使用することは液晶温度範囲を狭くし、粘度を上昇させ、応答速度が遅くなるという問題も起こっている。
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、誘電率の異方性が大きく、閾値電圧を低下させるため低電圧駆動が可能でありながら、動作温度範囲が広く、動作温度範囲で高いコントラストを維持し、同時に粘度の低い液晶組成物を提供することにあり、またこの液晶組成物を使用した駆動電圧が低く、広い温度範囲においてコントラストや応答速度などの液晶表示特性が優れた液晶表示素子を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、種々の液晶化合物を用いた液晶組成物を検討した結果以下の液晶組成物を見いだした。
【0006】
第一成分として一般式(I−a)
【0007】
【化15】
【0008】
(式中、R 15 はフッ素置換されていても良い炭素原子数1〜16のアルキル基またはアルコキシル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数3〜16のアルケニルオキシ基、または炭素原子数1〜10のアルコキシル基で置換された炭素原子数1〜12のアルキル基を表す。) から選ばれる化合物を1種もしくは2種以上を含有し、さらに一般式(I−c)
【化16】
(式中、R 26 はフッ素置換されていても良い炭素原子数1〜16のアルキル基またはアルコキシル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数3〜16のアルケニルオキシ基、または炭素原子数1〜10のアルコキシル基で置換された炭素原子数1〜12のアルキル基を表す。)から選ばれる化合物を1種もしくは2種以上を含有し、
第二成分として一般式(II)
【0009】
【化16】
【0010】
(式中、R2はフッ素置換されていても良い炭素原子数1〜16のアルキル基またはアルコキシル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数3〜16のアルケニルオキシ基、または炭素原子数1〜10のアルコキシル基で置換された炭素原子数1〜12のアルキル基を表し、環Aはフッ素原子により置換されていてもよいトランス−1,4−シクロヘキシレン基を表し、Z1は単結合を表し、X4、X5、X6は水素原子、フッ素原子または塩素原子を表す。) から選ばれる化合物を1種もしくは2種以上を含有し、第三成分として一般式(III−b)
【化18】
(式中、R 9 、R 10 はそれぞれ独立的にフッ素置換されていても良い炭素原子数1〜8のアルキル基または炭素原子数2〜8のアルケニル基を表す。)から選ばれる化合物を1種もしくは2種以上を含有し、さらに一般式(III−c)
【化19】
(式中、R 11 、R 12 はそれぞれ独立的フッ素置換されていても良い炭素原子数1〜8のアルキル基または炭素原子数2〜8のアルケニル基を表す。)から選ばれる化合物を1種もしくは2種以上を含有し、さらに一般式(IV−c)
【化20】
(式中、R 14 は炭素原子数1〜16のアルキル基または炭素原子数2〜8のアルケニル基を表す。)から選ばれる化合物を1種もしくは2種以上を含有することを特徴とする液晶組成物。この組成物を用いた液晶表示素子は閾値電圧を低減でき、広い温度範囲で使用でき、高速応答を可能とする。
【0011】
一般式(I)の化合物は誘電率異方性が大きく、閾値電圧を低下させる効果は大きいが、この化合物を多用するとネマチック相上限温度が低下してしまう。一方、一般式(II)の化合物はネマチック相上限温度が高く、誘電率の異方性も大きいが、誘電率の異方性の大きさが一般式(I)程大きくはないため、閾値電圧を極端に低くすることはできない。本発明では、一般式(I)と一般式(II)を同時に使用することにより、閾値電圧が低く、ネマチック相上限温度を高くすることが可能となった。特に誘電率の異方性(Δε)が25以上であり、閾値電圧が1V以下でありながら、ネマチック相上限温度が80℃以上、ネマチック下限温度が-10℃以下であるような超低電圧かつ広動作温度範囲の要求特性は、本発明の組み合わせによって達成することができる。しかし、ネマチック相上限温度が120℃を越える系では粘性が増大し、実際の使用に耐えなくなってしまうため、ネマチック相上限温度は120℃以下にする必要がある。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の例について説明する。
第一成分として一般式(I)から選ばれる化合物を1種もしくは2種以上を含有するが、1種もしくは2種が好ましい。また、式中、R1はフッ素置換されていても良い炭素原子数1〜16のアルキル基またはアルコキシル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数3〜16のアルケニルオキシ基、または炭素原子数1〜10のアルコキシル基で置換された炭素原子数1〜12のアルキル基を表すが、炭素原子数1〜8のアルキル基または炭素原子数2〜8のアルケニル基であることが好ましく、炭素原子数1〜5のアルキル基もしくはアルケニル基として式(a)〜(e)が特に好ましい。
【0013】
【化17】
(構造式は右端で環に連結しているものとする。)
【0014】
第二成分として一般式(II)から選ばれる化合物を1種もしくは2種以上を含有するが、1種もしくは2種が好ましい。また、式中、R2はフッ素置換されていても良い炭素原子数1〜16のアルキル基またはアルコキシル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数3〜16のアルケニルオキシ基、または炭素原子数1〜10のアルコキシル基で置換された炭素原子数1〜12のアルキル基を表すが、炭素原子数1〜8のアルキル基または炭素原子数2〜8のアルケニル基であることが好ましく、炭素原子数1〜5のアルキル基もしくはアルケニル基として式(a)〜(e)が特に好ましい。環Aはフッ素原子により置換されていてもよい1,4-フェニレン基、2-メチル-1,4-フェニレン基、3-メチル-1,4-フェニレン基、ナフタレン-2,6-ジイル基、フェナントレン-2,7-ジイル基、フルオレン-2,7-ジイル基、トランス-1,4-シクロヘキシレン基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、トランス-1,3ジオキサン-2,5-ジイル基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピリミジン-2,5-ジイル基、ピラジン-2,5-ジイル基またはピリダジン-2,5-ジイル基を表すが、1,4-フェニレン基、トランス-1,4-シクロヘキシレン基が好ましく、トランス-1,4-シクロヘキシレン基がより好ましい。Z1は単結合、-CH2CH2-、-(CH2)4-、-OCH2-、-CH2O-、-COO-、-CH=CH-または-C≡C-表すが、単結合、-C≡C-、-CH2CH2-が好ましく、単結合がより好ましい。X4、X5、X6は水素原子、フッ素原子または塩素原子を表すが、水素原子、フッ素原子が好ましく、フッ素原子が特に好ましい。
【0015】
この液晶組成物はネマチック相上限温度が80℃以上、120℃以下であることを特徴とするが、80℃以上、110℃以下が好ましく、90℃以上、105℃以下がさらに好ましい。また、誘電率の異方性(Δε)は25〜80の範囲であることを特徴とするが、30〜60が好ましく、30〜50がさらに好ましい。
第三成分として一般式(III)、(IV)
【0016】
【化18】
【0017】
(式中、R3、R4及びR5はそれぞれ独立的にフッ素置換されていても良い炭素原子数1〜16のアルキル基またはアルコキシル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数3〜16のアルケニルオキシ基、または炭素原子数1〜10のアルコキシル基で置換された炭素原子数1〜12のアルキル基を表し、環B、環C、環D、環E及び環Fはそれぞれ独立的にフッ素原子により置換されていてもよい1,4-フェニレン基、2-メチル-1,4-フェニレン基、3-メチル-1,4-フェニレン基、ナフタレン-2,6-ジイル基、フェナントレン-2,7-ジイル基、フルオレン-2,7-ジイル基、トランス-1,4-シクロヘキシレン基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、トランス-1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピリミジン-2,5-ジイル基、ピラジン-2,5-ジイル基またはピリダジン-2,5-ジイル基を表し、l及びmはそれぞれ独立的に0、1もしくは2を表し、Z2、Z3、Z4及びZ5はそれぞれ独立的に単結合、-CH2CH2-、-(CH2)4-、-OCH2-、-CH2O-、-CH=CH-、-COO-または-C≡C-を表し、X8はシアノ基、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメトキシ基、トリフルオロメチル基、ジフルオロメトキシ基、水素原子、3,3,3-トリフルオロエトキシ基、R'または-OR'を表し、R'は炭素原子数1〜12の直鎖状アルキル基または、2〜12の直鎖状アルケニル基を表し、X7、X9は水素原子、フッ素原子または塩素原子を表す。但し、l、mが2の場合、繰り返される単位は同一であっても、異なっていても良い。)からなる群より選ばれる化合物を1種もしくは2種以上を含有することが好ましい。
【0018】
一般式(III)、(IV)からなる群より選ばれる化合物を1種もしくは2種以上を含有するが、3種以上が好ましく、3種〜20種が更に好ましく、5種〜15種が特に好ましく、その中に一般式(IV)の化合物を少なくとも2種以上含むことがより好ましい。R3、R4、R5はそれぞれ独立的にフッ素置換されていても良い炭素原子数1〜16のアルキル基またはアルコキシル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数3〜16のアルケニルオキシ基、または炭素原子数1〜10のアルコキシル基で置換された炭素原子数1〜12のアルキル基を表すが、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基が好ましく、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基がより好ましく、炭素原子数1〜5のアルキル基もしくはアルケニル基として式(a)〜(e)が特に好ましい。環B、環C、環D、環E及び環Fはそれぞれ独立的にフッ素原子により置換されていてもよい1,4-フェニレン基、2-メチル-1,4-フェニレン基、3-メチル-1,4-フェニレン基、ナフタレン-2,6-ジイル基、フェナントレン-2,7-ジイル基、フルオレン-2,7-ジイル基、トランス-1,4-シクロヘキシレン基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、トランス-1,3ジオキサン-2,5-ジイル基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピリミジン-2,5-ジイル基、ピラジン-2,5-ジイル基またはピリダジン-2,5-ジイル基を表すが、1,4-フェニレン基、トランス-1,4-シクロヘキシレン基が好ましく、環B、環C、環E、環Fにおいてはトランス-1,4-シクロヘキシレン基がより好ましく、環Cにおいては1,4-フェニレン基がより好ましい。l、mはそれぞれ独立的に0、1もしくは2を表すが、0もしくは1が好ましい。Z2、Z3、Z4、Z5はそれぞれ独立的に単結合、-CH2CH2-、-(CH2)4-、-OCH2-、-CH2O-、-COO-、-CH=CH-または-C≡C-表すが、Z2、Z3においては単結合、-COO-、-C≡C-、-CH2CH2-が好ましく、単結合がより好ましい。Z4、Z5においては単結合、-COO-、-C≡C-が好ましく、単結合がより好ましい。X8はシアノ基、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメトキシ基、トリフルオロメチル基、ジフルオロメトキシ基、水素原子、3,3,3-トリフルオロエトキシ基、R'または-OR'を表し、R'は炭素原子数1〜12の直鎖状アルキル基または、炭素原子数2〜12の直鎖状アルケニル基を表すが、シアノ基、フッ素原子、トリフルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基が好ましく、フッ素原子、トリフルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基がより好ましく、フッ素原子が特に好ましい。X7、X9は水素原子、フッ素原子または塩素原子を表すが、水素原子、フッ素原子が好ましく、フッ素原子が特に好ましい。
【0019】
本発明の組成物を構成するにあたっては、一般式(I)、(II)から選ばれる化合物をそれぞれ1種もしくは2種以上を含有し、その含有率がそれぞれ2〜60質量%で、なお且つ一般式(III)、(IV)からなる群より選ばれる化合物を1種もしくは2種以上を含有し、その含有率が5〜60質量%であることが好ましい。この際、一般式(I)、(II)から選ばれる化合物の含有率はそれぞれ2〜60質量%であるが、5〜40質量%が好ましく、5〜30質量%が特に好ましい。
【0020】
一般式(III)の化合物として、環Bがトランス-1,4-シクロヘキシレン基である一般式(III-a)
【0021】
【化19】
【0022】
(式中、R6、R7はR3、R4と同じ意味を表し、環G、環Hは1,4-フェニレン基またはトランス-1,4-シクロヘキシレン基を表し、Z6、Z7はそれぞれ独立的に単結合、-COO-を表し、nは0、1もしくは2を表す。ただし、nが2の場合、環Hは独立的に1,4-フェニレン基、トランス-1,4-シクロヘキシレン基を表し、Z7は独立的に単結合、-CH2CH2-、-COO-を表す。)から選ばれる化合物を1種もしくは2種以上を含有することが応答速度の改善効果の観点からは好ましい。更にR6、R7が同時にまたは一方がアルケニルであることが急峻性及び応答速度の観点から好ましい。
【0023】
一般式(IV)の化合物として、環Eがトランス-1,4-シクロヘキシレン基である一般式(IV-a)
【0024】
【化20】
【0025】
(式中、R8は炭素原子数1〜8のアルキル基または、炭素原子数2〜8のアルケニル基を表し、環Iは1,4-フェニレン基またはトランス-1,4-シクロヘキシレン基を表し、oは0、1もしくは2を表し、Z8、Z9はそれぞれ独立的に単結合、-CH2CH2-または-COO-を表し、X11はフッ素原子、トリフルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基を表し、X10、X12はそれぞれ独立的に水素原子またはフッ素原子を表す。ただし、oが2の場合、環Iは独立的に1,4-フェニレン基、トランス-1,4-シクロヘキシレン基を表し、Z8は独立的に単結合、-CH2CH2-、-COO-を表す。)から選ばれる化合物を1種もしくは2種以上を含有することが、閾値電圧の温度依存性を更に改善する観点から好ましい。
【0026】
一般式(III-a)、(IV-a)の含有率はその効果を最も享受するためには、5〜40質量%が好ましいが、5〜35質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。
一般式(III)の化合物として一般式(III-b)
【0027】
【化21】
【0028】
(式中、R9、R10はそれぞれ独立的にフッ素置換されていても良い炭素原子数1〜8のアルキル基または炭素原子数2〜8のアルケニル基を表す。)が、応答速度を改善するには有効であり、その含有率は5〜60質量%が好ましい。
一般式(III)の化合物として、一般式(III-c)
【0029】
【化22】
【0030】
(式中、R11、R12はそれぞれ独立的フッ素置換されていても良い炭素原子数1〜8のアルキル基または炭素原子数2〜8のアルケニル基を表す。)が幅広い液晶温度範囲の拡大の点から好ましい。この際に、一般式(III-b)から選ばれる化合物を1種もしくは2種以上を含有し、その含有率が5〜60質量%であるが、5〜40質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。一般式(III-c)から選ばれる化合物を1種もしくは2種以上を含有し、その含有率が5〜60質量%であるが、5〜50質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましい。式中、R9、R10、R11、R12はそれぞれ独立的フッ素置換されていても良い炭素原子数1〜8のアルキル基または炭素原子数2〜8のアルケニル基を表すが、炭素原子数1〜5のアルキル基もしくはアルケニル基として式(a)〜(e)が応答速度改善、急峻性改善の観点から特に好ましい。
【0031】
一般式(IV)もしくは(IV-a)として一般式(IV-b)
【0032】
【化23】
【0033】
(式中、R13は炭素原子数1〜16のアルキル基または炭素原子数2〜8のアルケニル基を表す。)から選ばれる化合物を1種もしくは2種以上を含有し、その含有率が5〜40質量%であることが好ましく、より効果的にするには、5〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。
また、一般式(V)もしくは(IV-a)として一般式(IV-c)
【0034】
【化24】
【0035】
(式中、R14は炭素原子数1〜16のアルキル基または炭素原子数2〜8のアルケニル基を表す。)から選ばれる化合物を1種もしくは2種以上を含有し、その含有率が5〜40質量%であるが、閾値電圧の温度依存性改善の観点から5〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。
【0036】
また、最も発明の効果を得ることができる液晶組成物の一つとしては、一般式(I)として式(I-a)
【0037】
【化25】
【0038】
(式中、R15はフッ素置換されていても良い炭素原子数1〜16のアルキル基またはアルコキシル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数3〜16のアルケニルオキシ基、または炭素原子数1〜10のアルコキシル基で置換された炭素原子数1〜12のアルキル基を表す。)または式(I-b)
【0039】
【化26】
【0040】
(式中、R16はフッ素置換されていても良い炭素原子数1〜16のアルキル基またはアルコキシル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数3〜16のアルケニルオキシ基、または炭素原子数1〜10のアルコキシル基で置換された炭素原子数1〜12のアルキル基を表す。)を含有し、その含有率が2〜30質量%であり、なお且つ一般式(II)として式(II-a)
【0041】
【化27】
【0042】
(式中、R17はフッ素置換されていても良い炭素原子数1〜16のアルキル基またはアルコキシル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数3〜16のアルケニルオキシ基、または炭素原子数1〜10のアルコキシル基で置換された炭素原子数1〜12のアルキル基を表す。)を含有し、その含有率が2〜20質量%であり、更に一般式(III)の化合物として、一般式(III-b)
【0043】
【化28】
【0044】
(式中、R9、R10はそれぞれ独立的にフッ素置換されていても良い炭素原子数1〜8のアルキル基または炭素原子数2〜8のアルケニル基を表す。)から選ばれる化合物を1種もしくは2種以上を含有し、その含有率が5〜60質量%で、さらに一般式(III-c)
【0045】
【化29】
【0046】
(式中、R11、R12はそれぞれ独立的フッ素置換されていても良い炭素原子数1〜8のアルキル基または炭素原子数2〜8のアルケニル基を表す。)から選ばれる化合物を1種もしくは2種以上を含有し、その含有率が5〜60質量%で、さらに一般式(IV-c)から選ばれる化合物を1種もしくは2種以上を含有し、その含有率が5〜40質量%であることが最も好ましい。この際、式(I-a)、(I-b)の含有率はそれぞれ2〜30質量%であるが、2〜25質量%が好ましく、5〜20質量%が特に好ましい。式(II-a)の含有率は2〜30質量%であるが、2〜25質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。
【0047】
上記の液晶組成物を用いた液晶表示素子は、閾値電圧が低く、動作温度範囲も広く有用である。
上記の液晶組成物を用いた捩れ角が180°〜270°であることを特徴とする超捩れネマチック(STN)液晶表示素子は、閾値電圧が低く、動作温度範囲も広く有用である。
【0048】
上記ネマチック液晶組成物はTN-LCDやSTN-LCDに有用であるが、STN-LCDに特に有用であり、例えば1/16Duty〜1/64Dutyの低電圧STN-LCDへの応用に適している。また、透過型あるいは反射型の液晶表示素子に用いることができる。本発明の液晶組成物は、上記の化合物以外に、通常のネマチック液晶、スメクチック液晶、コレステリック液晶などを含有していてもよい。
【0049】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例及び比較例の組成物における「%」は『質量%』を意味する。
【0050】
実施例中、測定した特性は以下の通りである。
(急峻性)
STN-LCD表示素子の作成は以下のように行った。ネマチック液晶組成物にカイラル物質「S-811」(メルク社製)を添加して混合液晶を調製し、対向する平面透明電極上に「サンエバー610」(日産化学社製)の有機膜をラビングして配向膜を形成したツイスト角240°のSTN-LCD表示用セルに注入した。なお、カイラル物質はカイラル物質の添加による混合液晶の固有らせんピッチPと表示用セルのセル厚dが、Δn・d=0.85、d/P=0.50となるように添加した。
【0051】
化合物の記載に下記の略号を使用する。
【0052】
【化30】
【0053】
例えば、以下に示すように略号を用いる。
【0054】
【化31】
【0055】
(実施例1、実施例2、比較例1、比較例2)
ネマチック液晶組成物No.1、No.2を調製し、この組成物の諸特性を測定した結果を比較例1、比較例2と共に表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
比較例1、2は、誘電率が大きい一般式(I)の化合物を使用しないため、閾値電圧(Vth)を0.7Vにするためには、誘電率が正の化合物の成分比を多くせざるを得ない。このため液晶温度範囲が確保出来ず、更に応答速度(τ)も遅くなってしまう。この系にネマチック相−等方性液体相転移温度(TN-I)の高い化合物を添加することにより、液晶組成物のネマチック相−等方性液体相転移温度(TN-I)を高くすることは可能ではある。しかし、その際には閾値電圧(Vth)が著しく増大してしまう。これに対して、実施例1、2では、誘電率が大きい一般式(I)の化合物である5-Ph-VO-Ph3-CN,4-Ph1-VO-Ph1-CN,5-Ph1-VO-Ph1-CNを一般式(II)の化合物3-Cy-Ph-VO-P3-CN,2-Cy-Ph-VO-Ph1-CN,3-Cy-Ph-VO-Ph1-CNと同時に使用することにより、実施例1と比較例1では同程度の誘電率の異方性及び低電圧を達成しているが、実施例1ではネマチック相−等方性液体相転移温度(TN-I)、固体相又はスメクチック相−ネマチック相転移温度(T→N)ともに比較例1よりも広がっている。また、20℃での粘度(η)も113 mPa・sから52 mPa・sへ改善されており、応答速度(τ)も700msecから320msecに改善されていることがわかる。同時に急峻性(γ)も1.13より、1.09と急峻となっている。実施例2と比較例2では同程度のネマチック相−等方性液体相転移温度(TN-I)を達成しているが、固体相又はスメクチック相−ネマチック相転移温度(T→N)は-5℃から-42℃へ広がっている。また、20℃での粘度(η)も145 mPa・sから55.6 mPa・sへ改善されており、応答速度(τ)も890msecから340msecに改善されていることがわかる。同時に急峻性(γ)も1.15より、1.08と急峻となっている。
【0058】
【発明の効果】
本発明の液晶材料の組み合わせによって、閾値電圧が低く、動作温度範囲が広く、粘度の低い液晶組成物が得られた。また、この組成物を液晶表示素子として用いた場合、駆動電圧が低く、広い温度範囲において使用可能で、液晶組成物の急峻性がすぐれているためコントラストが高く、しかも応答速度の速い優れたものであった。この液晶ディスプレイはSTNおよびTN-LCDとして非常に有用である。
Claims (4)
- 第一成分として一般式(I−a)
第二成分として一般式(II)
- 第一成分として式(I−a)及び式(I−c)を含有し、その含有率が2〜30質量%であり、なお且つ第二成分として一般式(II−a)
- 請求項1又は2に記載の液晶組成物を用いた液晶表示素子。
- ねじれ角が180°〜270°の超捩れネマチック(STN)液晶表示素子であることを特徴とする請求項3記載の液晶表示素子。
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