本発明の型内発泡成形用ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造方法は、ポリ乳酸系樹脂と、エポキシ基を有するアクリル・スチレン系化合物と、イソシアネート基を二個以上有する多価イソシアネート化合物とを押出機に供給して発泡剤の存在下にて溶融混練し押出発泡して押出発泡体を製造し、この押出発泡体を粒子状に切断して発泡粒子を製造する型内発泡成形用ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造方法であって、上記ポリ乳酸系樹脂が、その構成モノマー成分としてD体及びL体の双方の光学異性体を含有し且つD体又はL体のうちの少ない方の光学異性体の含有量が5モル%未満であるか、或いは、構成モノマー成分としてD体又はL体のうちの何れか一方の光学異性体のみを含有していると共に、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の結晶化度が30%未満となるように調整することを特徴とする。以下の説明において、「型内発泡成形用ポリ乳酸系樹脂発泡粒子」を単に「ポリ乳酸系樹脂発泡粒子」と表現する。
本発明で用いられるポリ乳酸系樹脂は、一般に市販されているポリ乳酸系樹脂を用いることができ、具体的には、D−乳酸及びL−乳酸をモノマーとして共重合させるか、D−乳酸又はL−乳酸の何れか一方をモノマーとして重合させるか、或いは、D−ラクチド、L−ラクチド及びDL−ラクチドからなる群より選ばれた一又は二以上のラクチドを開環重合させることによって得ることができ、何れのポリ乳酸系樹脂であってもよい。
そして、ポリ乳酸系樹脂を製造するに際して、モノマーとしてD体とL体とを併用した場合においてD体若しくはL体のうちの少ない方の光学異性体の割合が5モル%未満である場合、又は、モノマーとしてD体若しくはL体のうちの何れか一方の光学異性体のみを用いた場合、即ち、上記ポリ乳酸系樹脂が、その構成モノマー成分としてD体及びL体の双方の光学異性体を含有し且つD体又はL体のうちの少ない方の光学異性体の含有量が5モル%未満であるか、或いは、構成モノマー成分としてD体又はL体のうちの何れか一方の光学異性体のみを含有している場合は、得られるポリ乳酸系樹脂は、その結晶性が高くなる一方、モノマーとしてD体とL体とを併用した場合においてD体又はL体のうちの少ない方の割合が5モル%以上である時は、少ない方の光学異性体が増加するにしたがって、得られるポリ乳酸系樹脂は、その結晶性が低くなり、やがて非結晶となる。
従って、本発明では、構成モノマー成分としてD体及びL体の双方の光学異性体を含有し且つD体又はL体のうちの少ない方の光学異性体の含有量が5モル%未満であるポリ乳酸系樹脂か、或いは、構成モノマー成分としてD体又はL体のうちの何れか一方の光学異性体のみを含有しているポリ乳酸系樹脂を用いることによって、得られるポリ乳酸系樹脂発泡粒子の耐熱性を高いものとしている。
更に、D体とL体をモノマーとして併用して重合させて得られたポリ乳酸系樹脂としては、D体又はL体のうちの何れか少ない方の光学異性体の割合が4モル%未満であるモノマーを重合させて得られたポリ乳酸系樹脂が好ましく、D体又はL体のうちの何れか少ない方の光学異性体の割合が3モル%未満であるモノマーを重合させて得られたポリ乳酸系樹脂がより好ましく、D体又はL体のうちの何れか少ない方の光学異性体の割合が2モル%未満であるモノマーを重合させて得られたポリ乳酸系樹脂が特に好ましい。
即ち、構成モノマー成分としてD体及びL体の双方の光学異性体を含有し且つD体又はL体のうちの少ない方の光学異性体の含有量が4モル%未満であるポリ乳酸系樹脂が好ましく、構成モノマー成分としてD体及びL体の双方の光学異性体を含有し且つD体又はL体のうちの少ない方の光学異性体の含有量が3モル%未満であるポリ乳酸系樹脂がより好ましく、構成モノマー成分としてD体及びL体の双方の光学異性体を含有し且つD体又はL体のうちの少ない方の光学異性体の含有量が2モル%未満であるポリ乳酸系樹脂が更に好ましい。
そして、構成モノマー成分としてD体及びL体を含有するポリ乳酸系樹脂は、D体又はL体のうちの何れか少ない方の光学異性体の割合が少なくなればなる程、ポリ乳酸系樹脂は、その結晶性のみならず融点も上昇する。よって、発泡粒子を金型内に充填して発泡させて得られる発泡成形体の耐熱性も向上し、発泡成形体は高い温度であってもその形態を維持することができ、発泡成形体を金型から高い温度のまま取り出すことが可能となって発泡成形体の金型内における冷却時間が短縮され、発泡成形体の生産効率を向上させることもできる。
ここで、ポリ乳酸系樹脂中におけるD体又はL体の含有量は以下の方法によって測定することができる。先ず、ポリ乳酸系樹脂をクロロホルムに溶解させて、ポリ乳酸系樹脂の濃度が10mg/ミリリットルのクロロホルム溶液を作製する。次に、旋光計を用いて25℃にて波長589nmの偏光をクロロホルム溶液に照射して、クロロホルム溶液の比旋光度を測定する。
一方、モノマーとしてD体のみを用いて重合して得られたポリ乳酸系樹脂、或いは、モノマーとしてL体のみを用いて重合して得られたポリ乳酸系樹脂について、上述と同様の要領で比旋光度を測定してもよいが、この比旋光度は、通常、既に測定されており、D体のみを用いて重合して得られたポリ乳酸系樹脂は+156°、モノマーとしてL体のみを用いて重合して得られたポリ乳酸系樹脂は−156°とされている。
そして、下記式に基づいてポリ乳酸系樹脂中におけるD体成分又はL体成分の量を算出することができる。
D体成分量(モル%)=100×{クロロホルム溶液の比旋光度−(−156)}
/{156−(−156)}
L体成分量(モル%)=100−(D体成分量)
そして、本発明の型内発泡成形用ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造方法では、上述のように、一般に市販されているポリ乳酸系樹脂を用いることができるが、このポリ乳酸系樹脂は、動的粘弾性のバランスが悪く、型内発泡成形に適したポリ乳酸系樹脂発泡粒子を得ることが困難である。
そこで、本発明では、ポリ乳酸系樹脂の動的粘弾性を調整して押出発泡に適したものとし型内発泡成形に適したポリ乳酸系樹脂発泡粒子を得るべく、押出機にポリ乳酸系樹脂と共に改質剤として、エポキシ基を有するアクリル・スチレン系化合物と、イソシアネート基を二個以上有する多価イソシアネート化合物を供給する。
そして、上記エポキシ基を有するアクリル・スチレン系化合物のエポキシ基がポリ乳酸系樹脂の末端基と結合すると共に、上記イソシアネート基を二個以上有する多価イソシアネート化合物のイソシアネート基がポリ乳酸系樹脂の末端基と結合することによって、ポリ乳酸系樹脂の動的粘弾性、特に伸長粘度が改質され、上記アクリル・スチレン系化合物及び多価イソシアネート化合物によって改質されたポリ乳酸系樹脂は、歪み硬化性が付与されて押出発泡性が大きく改善される。
更に、上記エポキシ基を有するアクリル・スチレン系化合物及び上記イソシアネート基を二個以上有する多価イソシアネート化合物で改質されたポリ乳酸系樹脂発泡粒子は、発泡剤を更に含浸させて加熱、発泡させて高発泡化させるのに適している。
そして、上記高発泡化されたポリ乳酸系樹脂発泡粒子は、発泡剤を更に含浸させることによって、型内発泡成形において優れた発泡性を発揮し、高発泡倍率に発泡した型内発泡成形体を得ることができる。
更に、ポリ乳酸系樹脂は、その構成モノマー成分としてD体又はL体のうちの何れか少ない方の光学異性体の割合が0モル%に近づくにしたがって結晶性が高くなり耐熱性が向上する一方、脆性が大きくなる。そこで、上記エポキシ基を有するアクリル・スチレン系化合物及びイソシアネート基を二個以上有する多価イソシアネート化合物は、ポリ乳酸系樹脂の動的粘弾性を改質することによって押出発泡特性の向上のみならず、ポリ乳酸系樹脂の脆性を改善することができ、この改質されたポリ乳酸系樹脂からなるポリ乳酸系樹脂発泡粒子を用いて型内発泡成形により得られるポリ乳酸系樹脂発泡成形体は優れた耐衝撃性を有する。
上記エポキシ基を有するアクリル・スチレン系化合物としては、構成モノマー成分として、エポキシ基を有するアクリル系単量体と、スチレン系単量体とを含有してなるビニル重合体が好ましい。
そして、上記エポキシ基を有するアクリル系単量体としては、例えば、グリシジルメタアクリレート、グリシジルアクリレート、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルメタアクリレート、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルアクリレートなどが挙げられる。又、スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレンなどが挙げられる。
更に、エポキシ基を有するアクリル・スチレン系化合物は、エポキシ基を有するアクリル系単量体及びスチレン系単量体以外の単量体を構成モノマー成分として含有していてもよく、このような単量体としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、メチルメタアクリレート、エチルメタアクリレート、プロピルメタアクリレート、ブチルメタアクリレート、2−エチルヘキシルメタアクリレート、シクロヘキシルメタアクリレートなどが挙げられる。
なお、エポキシ基を有するアクリル・スチレン系化合物は、例えば、東亜合成社から商品名「ARUFON UG−4000」「ARUFON UG−4010」「「ARUFON UG−4030」「ARUFON UG−4040」「ARUFON UG−4070」で市販されている。
そして、押出機に供給するエポキシ基を有するアクリル・スチレン系化合物の量としては、少ないと、ポリ乳酸系樹脂の動的粘弾性の改質効果が低く、得られるポリ乳酸系樹脂発泡粒子の発泡性が低下し且つ連続気泡率が高くなり、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を用いて型内発泡成形を行う際に、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子同士の融着性が低下することがある一方、多いと、得られるポリ乳酸系樹脂発泡粒子の結晶性が高くなって、型内発泡成形時のポリ乳酸系樹脂発泡粒子同士の融着性が低下することがあるので、ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して0.1〜2重量部が好ましく、0.2〜1.5重量部がより好ましく、0.3〜1.0重量部が特に好ましい。
又、上記多価イソシアネート化合物としては、イソシアネート基が二個以上有しておればよいが、ポリ乳酸系樹脂が多価イソシアネート化合物を中心とした分岐構造をとり、ポリ乳酸系樹脂の動的粘弾性が大きく向上することから、イソシアネート基を三個以上有する多価イソシアネート化合物が好ましい。
上記イソシアネート基を二個以上有する多価イソシアネート化合物としては、多官能芳香族イソシアネート、多官能脂肪族イソシアネート、芳香族ポリイソシアネート又は脂肪族ポリイソシアネートの何れであってもよく、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどのジイソシアネート化合物;トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(p−イソシアナトフェニル)チオフォスファイト、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートなどが挙げられる。
そして、押出機に供給するイソシアネート基を二個以上有する多価イソシアネート化合物の量としては、少ないと、ポリ乳酸系樹脂の動的粘弾性の改質効果が低く、得られるポリ乳酸系樹脂発泡粒子の発泡性が低下し且つ連続気泡率が高くなり、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を用いて型内発泡成形を行う際に、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子同士の融着性が低下することがある一方、多いと、得られるポリ乳酸系樹脂発泡粒子の樹脂粘度が高くなり過ぎて、型内発泡成形時のポリ乳酸系樹脂発泡粒子の発泡性が低下することがあるので、ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して0.05〜5重量部が好ましく、0.1〜4重量部がより好ましく、0.15〜3重量部が特に好ましい。
更に、エポキシ基を有するアクリル・スチレン系化合物及びイソシアネート基を二個以上有する多価イソシアネート化合物によって改質されたポリ乳酸系樹脂(以下、単に「改質されたポリ乳酸系樹脂」ということがある)、即ち、得られたポリ乳酸系樹脂発泡粒子を構成しているポリ乳酸系樹脂において、ポリ乳酸系樹脂の融点(mp)と、動的粘弾性測定にて得られた、貯蔵弾性率曲線と損失弾性率曲線との交点における温度Tとが後述する式1を満たすように、エポキシ基を有するアクリル・スチレン系化合物及びイソシアネート基を二個以上有する多価イソシアネート化合物の押出機への供給量を調整することが好ましい。
そして、押出機に供給する、エポキシ基を有するアクリル・スチレン系化合物とイソシアネート基を二個以上有する多価イソシアネート化合物との重量比率(イソシアネート基を二個以上有する多価イソシアネート化合物/エポキシ基を有するアクリル・スチレン系化合物)は、小さいと、改質されたポリ乳酸系樹脂の動的粘弾性が低く、型内発泡成形時にポリ乳酸系樹脂発泡粒子に破泡が発生し易くなって発泡性が低下することがある一方、大きいと、改質されたポリ乳酸系樹脂の動的粘弾性が高くなり過ぎて、型内発泡成形時にポリ乳酸系樹脂発泡粒子の発泡性が低下し易くなるので、0.1〜20が好ましく、0.15〜10がより好ましく、0.2〜3.5が特に好ましい。
ここで、動的粘弾性測定にて得られた貯蔵弾性率は、粘弾性において弾性的な性質を示す指標であって、発泡過程における気泡膜の弾性の大小を示す指標であり、発泡過程において、気泡膜の収縮力に抗して気泡を膨張させるのに必要な発泡圧の大小を示す指標である。
即ち、改質されたポリ乳酸系樹脂の動的粘弾性測定にて得られた貯蔵弾性率が低いと、気泡膜が伸長された場合、気泡膜が伸長力に抗して収縮しようとする力が小さく、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造に必要とする発泡圧によって発泡膜が容易に伸長してしまう結果、気泡膜が過度に伸長してしまい破泡を生じる一方、改質されたポリ乳酸系樹脂の動的粘弾性測定にて得られた貯蔵弾性率が高いと、気泡膜に伸長力が加わった場合、伸長に抗する気泡膜の収縮力が大きく、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造に必要とする発泡圧で一旦、気泡が膨張したとしても、温度低下などに起因する経時的な発泡圧の低下に伴って気泡が収縮してしまう。
又、動的粘弾性測定にて得られた損失弾性率は、粘弾性において粘性的な性質を示す指標であって、発泡過程における気泡膜の粘性を示す指標であり、発泡過程において、気泡膜をどの程度まで破れることなく伸長させることができるかの許容範囲を示す指標であると同時に、発泡圧によって所望大きさに気泡を膨張させた後、この膨張した気泡をその大きさに維持する能力を示す指標でもある。
即ち、改質されたポリ乳酸系樹脂の動的粘弾性測定にて得られた損失弾性率が低いと、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造に必要とする発泡圧によって気泡膜が伸長された場合、気泡膜が容易に破れてしまう一方、改質されたポリ乳酸系樹脂の動的粘弾性測定にて得られた損失弾性率が高いと、発泡力が気泡膜によって熱エネルギーに変換されてしまい、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造時に気泡膜を円滑に伸長させることが難しくなり、気泡を膨張させることが困難になる。
このように、ポリ乳酸系樹脂を発泡させてポリ乳酸系樹脂発泡粒子を製造するにあたっては、発泡過程において、ポリ乳酸系樹脂は、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を得るために必要とされる発泡圧によって気泡膜が破れることなく適度に伸長するための弾性力、即ち、貯蔵弾性率を有している必要があると共に、上記発泡圧によって気泡膜が破れることなく円滑に伸長し、所望大きさに膨張した気泡をその大きさに発泡圧の経時的な減少にかかわらず維持しておくための粘性力、即ち、損失弾性率を有していることが好ましい。
つまり、押出発泡工程において、エポキシ基を有するアクリル・スチレン系化合物及びイソシアネート基を二個以上有する多価イソシアネート化合物によって改質されたポリ乳酸系樹脂の貯蔵弾性率及び損失弾性率の双方が押出発泡に適した値を有していることが好ましく、このような押出発泡に適した貯蔵弾性率及び損失弾性率を押出発泡工程においてポリ乳酸系樹脂に付与するために、改質されたポリ乳酸系樹脂における動的粘弾性測定にて得られた、貯蔵弾性率曲線と損失弾性率曲線との交点における温度T(以下「貯蔵弾性率曲線と損失弾性率曲線との交点における温度T」ということがある)と、改質されたポリ乳酸系樹脂の融点(mp)とが、好ましくは下記式1を満たすように、より好ましくは式2を満たすように調整することによって、改質されたポリ乳酸系樹脂の貯蔵弾性率及び損失弾性率をそれらのバランスをとりながら押出発泡に適したものとしてポリ乳酸系樹脂の押出発泡性を良好なものとし、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を安定的に製造することができる。
〔改質されたポリ乳酸系樹脂の融点(mp)−40℃〕
≦交点における温度T≦改質されたポリ乳酸系樹脂の融点(mp)・・・式1
〔改質されたポリ乳酸系樹脂の融点(mp)−38℃〕
≦交点における温度T≦〔改質されたポリ乳酸系樹脂の融点(mp)−10℃〕
・・・式2
更に、改質されたポリ乳酸系樹脂の動的粘弾性測定にて得られた、貯蔵弾性率曲線と損失弾性率曲線との交点における温度Tと、改質されたポリ乳酸系樹脂の融点(mp)とが上記式1を満たすように調整するのが好ましい理由を下記に詳述する。
先ず、改質されたポリ乳酸系樹脂の動的粘弾性測定にて得られた、貯蔵弾性率曲線と損失弾性率曲線との交点における温度Tが、改質されたポリ乳酸系樹脂の融点(mp)よりも40℃を越えて低い場合には、押出発泡時におけるポリ乳酸系樹脂の損失弾性率が貯蔵弾性率に比して大き過ぎるために、損失弾性率と貯蔵弾性率とのバランスが崩れてしまう。
そこで、ポリ乳酸系樹脂の損失弾性率に適した発泡力、即ち、ポリ乳酸系樹脂の粘性に合わせた発泡力とすると、ポリ乳酸系樹脂の弾性力にとっては発泡力が大き過ぎてしまい、気泡膜が破れて破泡を生じて良好なポリ乳酸系樹脂発泡粒子を得ることができず、逆に、ポリ乳酸系樹脂の貯蔵弾性率に適した発泡力、即ち、ポリ乳酸系樹脂の弾性に合わせた発泡力とすると、ポリ乳酸系樹脂の粘性力にとっては発泡力が小さく、ポリ乳酸系樹脂が発泡しにくくなり、やはり良好なポリ乳酸系樹脂発泡粒子を得ることが困難となる。
又、改質されたポリ乳酸系樹脂の動的粘弾性測定にて得られた、貯蔵弾性率曲線と損失弾性率曲線との交点における温度Tが、改質されたポリ乳酸系樹脂の融点(mp)よりも高いと、押出発泡時におけるポリ乳酸系樹脂の貯蔵弾性率が損失弾性率に比して大き過ぎるために、上述と同様に損失弾性率と貯蔵弾性率とのバランスが崩れてしまう。
そこで、ポリ乳酸系樹脂の貯蔵弾性率に適した発泡力、即ち、ポリ乳酸系樹脂の弾性に合わせた発泡力とすると、ポリ乳酸系樹脂の粘性力にとっては発泡力が大き過ぎてしまい、気泡膜が破れて破泡を生じ良好なポリ乳酸系樹脂発泡粒子を得ることができず、逆に、ポリ乳酸系樹脂の損失弾性率に適した発泡力、即ち、ポリ乳酸系樹脂の粘性に合わせた発泡力とすると、ポリ乳酸系樹脂の弾性力にとっては発泡力が小さく、ポリ乳酸系樹脂が発泡力で一旦、発泡したとしても、経時的な発泡力の低下に伴って気泡が収縮してしまって、やはり良好なポリ乳酸系樹脂発泡粒子を得ることが困難となる。
そして、エポキシ基を有するアクリル・スチレン系化合物及びイソシアネート基を二個以上有する多価イソシアネート化合物によって改質されたポリ乳酸系樹脂の動的粘弾性測定にて得られた、貯蔵弾性率曲線と損失弾性率曲線との交点における温度Tと、改質されたポリ乳酸系樹脂の融点(mp)とが上記式1を満たすように調整する方法としては、前述したように、エポキシ基を有するアクリル・スチレン系化合物及びイソシアネート基を二個以上有する多価イソシアネート化合物の押出機への供給量を調整する方法の他に、エポキシ基を有するアクリル・スチレン系化合物及びイソシアネート基を二個以上有する多価イソシアネート化合物と、ポリ乳酸系樹脂とが反応する押出機部分、即ち、押出機の圧縮部の温度を調整する方法が挙げられる。
押出機の圧縮部の温度は、低いと、エポキシ基を有するアクリル・スチレン系化合物及びイソシアネート基を二個以上有する多価イソシアネート化合物と、ポリ乳酸系樹脂との反応が不充分となり、ポリ乳酸系樹脂の粘弾性の改質効果が低下することがある一方、高いと、ポリ乳酸系樹脂が分解して分子量が低下し、ポリ乳酸系樹脂の発泡性が低下することがあるので、200〜250℃が好ましく、210〜240℃がより好ましく、215〜235℃が特に好ましい。
ここで、ポリ乳酸系樹脂の融点(mp)は下記の要領で測定されたものをいう。即ち、JIS K7121:1987に準拠してポリ乳酸系樹脂の示差走査熱量分析を行い、得られたDSC曲線における融解ピークの温度をポリ乳酸系樹脂の融点(mp)とする。なお、融解ピークの温度が複数個ある場合には、最も高い温度とする。
又、改質されたポリ乳酸系樹脂の動的粘弾性測定にて得られた、貯蔵弾性率曲線と損失弾性率曲線との交点における温度Tは下記の要領で測定されたものをいう。先ず、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を製造する要領において、発泡剤を添加しないこと以外は同様の要領にて、改質されたポリ乳酸系樹脂粒子を得る。
この改質されたポリ乳酸系樹脂粒子を9.33×104Paの減圧下にて80℃で3時間に亘って乾燥する。この改質されたポリ乳酸系樹脂粒子を該ポリ乳酸系樹脂粒子を構成しているポリ乳酸系樹脂の融点よりも40〜50℃だけ高い温度に加熱した測定プレート上に載置して窒素雰囲気下にて5分間に亘って放置し溶融させる。
次に、直径が25mmの平面円形状の押圧板を用意し、この押圧板を用いて測定プレート上のポリ乳酸系樹脂を押圧板と測定プレートとの対向面間の間隔が1mmとなるまで上下方向に押圧する。そして、押圧板の外周縁からはみ出したポリ乳酸系樹脂を除去した後、5分間に亘って放置する。
しかる後、歪み5%、周波数1rad/秒、降温速度2℃/分、測定間隔30秒の条件下にて、ポリ乳酸系樹脂の動的粘弾性測定を行って貯蔵弾性率及び損失弾性率を測定する。次に、横軸を温度とし、縦軸を貯蔵弾性率及び損失弾性率として、貯蔵弾性率曲線及び損失弾性率曲線を描く。なお、貯蔵弾性率曲線及び損失弾性率曲線を描くにあたっては、測定温度を基準として互いに隣接する測定値同士を直線で結ぶ。
そして、得られた貯蔵弾性率曲線と損失弾性率曲線との交点における温度Tを上記グラフから読み取ることによって得ることができる。なお、貯蔵弾性率曲線と損失弾性率曲線とが複数箇所において互いに交差する場合は、貯蔵弾性率曲線と損失弾性率曲線との複数の交点における温度のうち最も高い温度を、貯蔵弾性率曲線と損失弾性率曲線との交点における温度Tとする。
又、動的粘弾性測定にて得られた、貯蔵弾性率曲線と損失弾性率曲線との交点における温度Tは、Reologica Instruments A.B 社から商品名「DynAlyser DAR-100」にて市販さ
れている動的粘弾性測定装置を用いて測定することができる。
上記ポリ乳酸系樹脂を押出機に供給して発泡剤の存在下にて溶融混練した後、押出機の先端に取り付けた金型から押出発泡させる。この押出発泡させて得られた押出発泡体の形態は、特に限定されず、ストランド状、シート状などが挙げられるが、ストランド状が好ましい。
なお、上記押出機としては、従来から汎用されている押出機であれば、特に限定されず、例えば、単軸押出機、二軸押出機、複数の押出機を連結させたタンデム型の押出機が挙げられ、タンデム型の押出機が好ましい。
又、上記発泡剤としては、従来から汎用されているものが用いられ、例えば、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、ヒドラゾイルジカルボンアミド、重炭酸ナトリウムなどの化学発泡剤;プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ヘキサンなどの飽和脂肪族炭化水素、ジメチルエーテルなどのエーテル類、塩化メチル、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1−ジフルオロエタン、モノクロロジフルオロメタンなどのフロン、二酸化炭素、窒素などの物理発泡剤などが挙げられ、ジメチルエーテル、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、二酸化炭素が好ましく、プロパン、ノルマルブタン、イソブタンがより好ましく、ノルマルブタン、イソブタンが特に好ましい。
そして、押出機に供給される発泡剤量としては、少ないと、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を所望発泡倍率まで発泡させることができないことがある一方、多いと、発泡剤が可塑剤として作用することから溶融状態のポリ乳酸系樹脂の粘弾性が低下し過ぎて発泡性が低下し良好なポリ乳酸系樹脂発泡粒子を得ることができなかったり或いはポリ乳酸系樹脂発泡粒子の発泡倍率が高過ぎる場合があるので、ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して0.1〜5重量部が好ましく、0.2〜4重量部がより好ましく、0.3〜3重量部が特に好ましい。
なお、押出機には気泡調整剤が添加されることが好ましいが、気泡調整剤の多くは、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の結晶核剤として作用するため、ポリ乳酸系樹脂の結晶化を促進しない気泡調整剤を用いることが好ましく、このような気泡調整剤としては、ポリテトラフルオロエチレン粉末、アクリル樹脂で変性されたポリテトラフルオロエチレン粉末が好ましい。
更に、ポリテトラフルオロエチレン粉末、アクリル樹脂で変性されたポリテトラフルオロエチレン粉末は、エポキシ基を有するアクリル・スチレン系化合物及びイソシアネート基を二個以上有する多価イソシアネート化合物と併用することによって、エポキシ基を有するアクリル・スチレン系化合物及びイソシアネート基を二個以上有する多価イソシアネート化合物のポリ乳酸系樹脂に対する動的粘弾性の改質効果を促進することができる。
これは、ポリテトラフルオロエチレン粉末や、アクリル樹脂で変性されたポリテトラフルオロエチレン粉末は、押出機内において加えられる剪断応力によって繊維状となり、この繊維状のポリテトラフルオロエチレンは、エポキシ基を有するアクリル・スチレン系化合物及びイソシアネート基を二個以上有する多価イソシアネート化合物により改質されたポリ乳酸系樹脂の分子鎖に絡みつき、ポリ乳酸系樹脂の溶融張力を高めることによってポリ乳酸系樹脂の動的粘弾性の改質を促進するからである。
又、押出機に供給される気泡調整剤の量としては、少ないと、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の気泡が粗大となり、得られるポリ乳酸系樹脂発泡成形体の外観が低下することがある一方、多いと、ポリ乳酸系樹脂を押出発泡させる際に破泡を生じてポリ乳酸系樹脂発泡粒子の独立気泡率が低下することがあるので、ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して0.01〜3重量部が好ましく、0.05〜2重量部がより好ましく、0.1〜1重量部が特に好ましい。
押出機に取り付ける金型としては、特に限定されないが、ポリ乳酸系樹脂を押出発泡させて均一微細な気泡を形成できる金型が好ましく、このような金型としては、ノズル金型が好ましく、ノズルを複数有するマルチノズル金型がより好ましい。
マルチノズル金型のノズルの出口直径は、小さいと、押出圧力が高くなりすぎて押出発泡が困難となることがある一方、大きいと、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の径が大きくなって金型への充填性が低下するので、0.2〜2mmが好ましく、0.3〜1.6mmがより好ましく、0.4〜1.2mmが特に好ましい。
そして、ノズル金型のノズルの口金出口部分におけるポリ乳酸系樹脂の剪断速度は、小さいと、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の発泡倍率が低下し或いはポリ乳酸系樹脂発泡粒子の気泡が粗大となることがある一方、大きいと、フラクチャーが発生して安定的に押出発泡することができないことがあるので、1000〜30000sec-1が好ましく、2000〜25000sec-1がより好ましく、3000〜20000sec-1が特に好ましい。
なお、ノズル金型のノズルの口金出口部分における剪断速度は、下記式に基づいて算出されたものをいう。
剪断速度(sec-1)=4×Q/(πr3)
但し、Qは、ポリ乳酸系樹脂の体積押出量(cm3/sec)であり(Qを質量押出量(g/sec)から算出する場合は、ポリ乳酸系樹脂の密度は1.0g/cm3とする)、rは、ノズルの半径(cm)である。
又、フラクチャーを低減させるために、ノズル金型のランド部の長さは、ノズル金型のノズルの出口直径の4〜30倍が好ましく、ノズル金型のノズルの出口直径の5〜20倍がより好ましい。これは、ノズル金型のランド部の長さがノズル金型のノズルの出口直径に比較して小さいと、フラクチャーが発生して安定的に押出発泡することができないことがある一方、ノズル金型のランド部の長さがノズル金型のノズルの出口直径に比較して大きいと、ノズル金型に大きな圧力が加わり過ぎて押出発泡ができない場合があるからである。
そして、押出機から押出発泡されたポリ乳酸系樹脂押出発泡体を冷却して、ポリ乳酸系樹脂押出発泡体の結晶化が進行するのを抑制し、このポリ乳酸系樹脂押出発泡体を粒子状に切断して得られるポリ乳酸系樹脂発泡粒子の結晶化度が30%未満となるように、好ましくは3〜28%となるように、より好ましくは5〜26%となるように調整する。
ここで、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の結晶化度は、示差走査熱量計(DSC)を用いてJIS K7121に記載の測定方法に準拠して10℃/分の昇温速度にて昇温しながら測定された1mg当たりの冷結晶化熱量及び1mg当たりの融解熱量に基づいて下記式により算出することができる。
このように、得られるポリ乳酸系樹脂発泡粒子の結晶化度を30%未満に調整することによって、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の融着性を確保し、型内発泡成形時、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を発泡させて得られる発泡粒子同士の融着性を良好なものとすることができる。又、型内発泡成形途上において、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の結晶化度を上昇させて、ポリ乳酸系樹脂の耐熱性を向上させることができ、得られるポリ乳酸系樹脂発泡成形体は、優れた融着性及び耐熱性を有している。
そして、ポリ乳酸系樹脂押出発泡体の冷却方法としては、押出発泡されたポリ乳酸系樹脂押出発泡体の結晶化度の上昇を速やかに停止できる方法が好ましく、具体的には、押出機から押出発泡されたポリ乳酸系樹脂押出発泡体を水面に浮かせて冷却する方法、押出機から押出発泡されたポリ乳酸系樹脂押出発泡体に水などを霧状に吹き付ける方法、低温に温度調節された冷却板上に、押出機から押出発泡されたポリ乳酸系樹脂押出発泡体を接触させることによって冷却させる方法、押出機から押出発泡されたポリ乳酸系樹脂押出発泡体に冷風などの冷却された気体を吹き付ける方法などが挙げられ、水を用いる冷却方法が好ましい。
なお、ポリ乳酸系樹脂押出発泡体を水面に浮かせて冷却する場合は、水温は0〜45℃に調整することが好ましく、又、ノズル金型のノズル先端と、ポリ乳酸系樹脂押出発泡体を冷却させる水面との距離は、短いと、ポリ乳酸系樹脂押出発泡体が充分に発泡しないことがある一方、長いと、ポリ乳酸系樹脂押出発泡体の冷却前に結晶化度が上がってしまい、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の成形性が低下することがあるので、1〜120cmが好ましく、3〜100cmがより好ましく、5〜80cmが特に好ましい。なお、ノズル金型のノズル先端と、ポリ乳酸系樹脂押出発泡体との距離とは、ノズル金型のノズル先端と、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子が水面に最初に接触する部分との最短距離をいう。
次に、上述のようにして冷却されたポリ乳酸系樹脂押出発泡体を粒子状に切断することによってポリ乳酸系樹脂発泡粒子を得ることができる。ポリ乳酸系樹脂押出発泡体を粒子状に切断する切断機としては、ペレタイザーやホットカット機などが挙げられ、又、切断機の切断方法としては、ドラムカッタ式やファンカッタ式があるが、ポリ乳酸系樹脂押出発泡体の切断時にポリ乳酸系樹脂押出発泡体に割れや欠けが発生しにくいことから、ファンカッタ式の切断方法を用いることが好ましい。なお、上記では、ポリ乳酸系樹脂押出発泡体の冷却後に、ポリ乳酸系樹脂押出発泡体を切断する場合を説明したが、押出機から押出発泡させると同時にポリ乳酸系樹脂押出発泡体を切断して粒子状とした後に、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を冷却するようにしてもよい。
又、得られたポリ乳酸系樹脂発泡粒子の保管温度は、低いと、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を発泡させるのに必要な熱量が大きくなり、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を構成しているポリ乳酸系樹脂の結晶化度が上昇し易くなる一方、高いと、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の保管中にポリ乳酸系樹脂発泡粒子を構成しているポリ乳酸系樹脂の結晶化度が上昇してしまう虞れがあるので、0〜40℃が好ましく、5〜35℃がより好ましく、10〜30℃が特に好ましい。
このようにして得られたポリ乳酸系樹脂発泡粒子の嵩密度は、小さいと、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の連続気泡率が上昇して、型内発泡成形における発泡時にポリ乳酸系樹脂発泡粒子に必要な発泡力を付与することができない虞れがある一方、大きいと、得られるポリ乳酸系樹脂発泡粒子の気泡が不均一となって、型内発泡成形時におけるポリ乳酸系樹脂発泡粒子の発泡性が不充分となることがあるので、0.03〜0.5g/cm3が好ましく、0.05〜0.4g/cm3がより好ましく、0.07〜0.3g/cm3が特に好ましい。
そして、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の連続気泡率は、高いと、型内発泡成形時にポリ乳酸系樹脂発泡粒子が殆ど発泡せず、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子同士の融着性が低くなって、得られるポリ乳酸系樹脂発泡成形体の機械的強度が低下することがあるので、30%未満が好ましく、28%以下がより好ましく、26%以下が特に好ましい。なお、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の連続気泡率の調整は、エポキシ基を有するアクリル・スチレン系化合物及びイソシアネート基を二個以上有する多価イソシアネート化合物の押出機への供給量を調整する他に、押出機からのポリ乳酸系樹脂の押出発泡温度、金型の形状、押出機への発泡剤の供給量などを調整することによって行われる。
ここで、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の連続気泡率は下記の要領で測定される。先ず、体積測定空気比較式比重計の試料カップを用意し、この試料カップの80%程度を満たす量のポリ乳酸系樹脂発泡粒子の全重量A(g)を測定する。次に、上記ポリ乳酸系樹脂発泡粒子全体の体積B(cm3)を比重計を用いて1−1/2−1気圧法により測定する。なお、体積測定空気比較式比重計は、例えば、東京サイエンス社から商品名「1000型」にて市販されている。
続いて、金網製の容器を用意し、この金網製の容器を水中に浸漬し、この水中に浸漬した状態における金網製の容器の重量C(g)を測定する。次に、この金網製の容器内に上記ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を全量入れた上で、この金網製の容器を水中に浸漬し、水中に浸漬した状態における金網製の容器とこの金網製容器に入れたポリ乳酸系樹脂発泡粒子の全量とを併せた重量D(g)を測定する。
そして、下記式に基づいてポリ乳酸系樹脂発泡粒子の見掛け体積E(cm3)を算出し、この見掛け体積Eと上記ポリ乳酸系樹脂発泡粒子全体の体積B(cm3)に基づいて下記式によりポリ乳酸系樹脂発泡粒子の連続気泡率を算出することができる。なお、水1gの体積を1cm3 とした。
E=A+(C−D)
連続気泡率(%)=100×(E−B)/E
又、上記ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の粒径は、小さいと、型内発泡成形時にポリ乳酸系樹脂発泡粒子の発泡性が低下することがある一方、大きいと、型内発泡成形時に金型内へのポリ乳酸系樹脂発泡粒子の充填性が低下することがあるので、1.0〜5.0mmが好ましい。そして、押出発泡体がストランド状であり、このストランド状の押出発泡体をその長さ方向に所定間隔毎に切断してポリ乳酸系樹脂発泡粒子を製造した場合、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子における切断面に直交する方向の長さは、5mm以下が好ましい。
ここで、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の粒径は、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の直径を直接、ノギスを用いて測定することができる。なお、押出発泡体がストランド状であり、このストランド状の押出発泡体をその長さ方向に所定間隔毎に切断してポリ乳酸系樹脂発泡粒子を製造した場合には、各ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の切断面における最も長い直径(長径)及び最も短い直径(短径)を測定すると共に、各ポリ乳酸系樹脂発泡粒子における切断面に直交する方向の長さを測定し、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の長径、短径及び長さの相加平均値をポリ乳酸系樹脂発泡粒子の粒径とする。
又、得られたポリ乳酸系樹脂発泡粒子は、これを構成するポリ乳酸系樹脂が、エポキシ基を有するアクリル・スチレン系化合物及びイソシアネート基を二個以上有する多価イソシアネート化合物によって改質されており、高発泡倍率に発泡させ易いことから、得られたポリ乳酸系樹脂発泡粒子に更に発泡剤を含浸させた上で加熱、発泡させて高発泡化されたポリ乳酸系樹脂発泡粒子とすることができる。このように、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を高発泡倍率に発泡させておくことによって、高発泡倍率のポリ乳酸系樹脂発泡成形体を得ることができる。
ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を高発泡化させる要領として具体的には、先ず、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を圧力容器内に供給し、この圧力容器内に発泡剤を圧入してポリ乳酸系樹脂発泡粒子に発泡剤を含浸させて、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子に高い発泡性を付与し、この高い発泡性が付与されたポリ乳酸系樹脂発泡粒子を攪拌しながら60〜80℃の熱風で加熱することによって、高発泡化されたポリ乳酸系樹脂発泡粒子を得ることができる。なお、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子に含浸させる発泡剤としては、特に限定されず、例えば、二酸化炭素、窒素、空気、ヘリウムなどが挙げられ、二酸化炭素が好ましい。
ポリ乳酸系樹脂発泡粒子に発泡剤を含浸させる際の発泡剤の圧力は、低いと、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子に充分な発泡性を付与することができない一方、高いと、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の発泡性が向上し過ぎて、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を加熱、発泡させた際に破泡する虞れがあり、更に、発泡剤の可塑化効果によって、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を構成しているポリ乳酸系樹脂の結晶化度が上昇し易くなるので、ゲージ圧において0.5〜2MPaが好ましく、ゲージ圧において0.7〜1.2MPaがより好ましい。
更に、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子に発泡剤を含浸させる時間は、1時間以上が好ましく、2時間以上がより好ましい。ポリ乳酸系樹脂発泡粒子に発泡剤を含浸させる時間が長くなるにしたがってポリ乳酸系樹脂発泡粒子を構成しているポリ乳酸系樹脂の結晶化度も徐々に上昇していくので、100時間以内が好ましく、72時間以内がより好ましい。又、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子に発泡剤を含浸させる温度は、0〜40℃が好ましく、10〜30℃がより好ましい。
又、発泡剤を含浸させたポリ乳酸系樹脂発泡粒子の加熱に際して、水蒸気や水分を多く含んだ熱風を用いると、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を構成しているポリ乳酸系樹脂の結晶化度が上昇し易く、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の型内発泡成形時に、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子同士の融着性が低下する虞れがあるので好ましくない。
そして、高発泡化させたポリ乳酸系樹脂発泡粒子の嵩密度は、低いほど好ましいが、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の嵩密度が低くなるにしたがって型内発泡成形性も低下するため、0.02〜0.1g/cm3が好ましく、0.022〜0.083g/cm3がより好ましく、0.028〜0.066g/cm3が特に好ましい。
このようにして得られたポリ乳酸系樹脂発泡粒子を金型のキャビティ内に充填して加熱し、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を発泡させることによって、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を発泡させて得られる発泡粒子同士をそれらの発泡圧によって互いに融着一体化させると共にポリ乳酸系樹脂の結晶化度を上昇させて、融着性及び耐熱性に優れた所望形状を有するポリ乳酸系樹脂発泡成形体を得ることができる。
なお、金型内に充填したポリ乳酸系樹脂発泡粒子の加熱媒体としては、特に限定されず、水蒸気の他に、熱風などが挙げられる。水蒸気の圧力は、低いと、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の結晶化度を充分に上昇させることができず、得られるポリ乳酸系樹脂発泡成形体の耐熱性が低下することがある一方、高いと、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の温度上昇が急激なものとなり、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の結晶化度の上昇がポリ乳酸系樹脂発泡粒子の溶融速度に追いつかず、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子が溶けてしまい、発泡圧が不足して、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を発泡させて得られる発泡粒子同士の融着性が低下し或いは得られるポリ乳酸系樹脂発泡成形体に収縮が生じることがあるので、適宜調整される。
又、得られたポリ乳酸系樹脂発泡成形体の融着率は、40%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、60%以上が特に好ましい。なお、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の融着率は、下記の要領で測定されたものをいう。先ず、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体を折り曲げて所定箇所から切断する。そして、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の切断面に露出している発泡粒子の全粒子数N1を目視により数えると共に、材料破壊した発泡粒子、即ち、分割された発泡粒子の粒子数N2を目視により数え、下記式に基づいて融着率を算出することができる。
融着率(%)=100×材料破壊した発泡粒子の粒子数N2/発泡粒子の全粒子数N1
更に、上述のようにして得られたポリ乳酸系樹脂発泡粒子、及び、高発泡化されたポリ乳酸系樹脂発泡粒子に更に発泡剤を含浸させて発泡性を向上させた上で上述の要領で金型のキャビティ内に充填して加熱、発泡させてポリ乳酸系樹脂発泡成形体を得てもよい。なお、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子に発泡剤を含浸させる要領としては、発泡剤を含浸させる際の圧力及び時間以外は、上述と同様の要領で行われる。
ポリ乳酸系樹脂発泡粒子に発泡剤を含浸させる際の圧力は、低いと、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子に発泡剤を充分に含浸させることができず、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の発泡力を充分に向上させることができない一方、高いと、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を用いて型内発泡成形を行う際に冷却時間が延びる虞れがあるので、ゲージ圧において0.05〜2.0MPaが好ましく、0.2〜1.0MPaがより好ましい。
更に、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子に発泡剤を含浸させる時間は、30分以上が好ましく、2時間以上がより好ましい。ポリ乳酸系樹脂発泡粒子に発泡剤を含浸させる時間が長くなるにしたがってポリ乳酸系樹脂発泡粒子を構成しているポリ乳酸系樹脂の結晶化度も徐々に上昇していくので、100時間以内が好ましく、72時間以内がより好ましい。又、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子に発泡剤を含浸させる温度は、0〜40℃が好ましく、10〜30℃がより好ましい。