JP4956810B2 - ランフラットタイヤ - Google Patents

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Description

本発明はランフラットタイヤのサイド部補強層に用いられるタイヤ用ゴム組成物およびそれを用いたランフラットタイヤに関する。
従来のランフラットタイヤは、サイドウォール部の内側に配置されている高硬度のサイド部補強層のゴムを有する構造であり、パンクにより内圧が減少した状態においてもサービスステーションまで所定距離の走行が可能となる。このランフラットタイヤの装着により、スペアタイヤを常備する必要性がなくなり、車輌全体における質量の軽量化が期待できる。しかし、ランフラットタイヤのパンク時におけるランフラットタイヤの速度および走行距離は十分とはいえずランフラットタイヤの耐久性の向上が望まれている。
ランフラットタイヤの耐久性を向上させる有効な手段として、補強用ゴムを厚くすることにより変形を抑え、変形による破壊を防ぐ方法があげられる。しかし、タイヤの質量が大きくなるため、ランフラットタイヤの当初の目的である軽量化が達成できない。
また、ランフラットタイヤの耐久性を向上させる有効な手段として、カーボンブラックなどの補強用充填剤を増量し、それらを配合することによって補強用ゴムの硬度を上げ、変形を抑える方法がある。しかし、混練り、押出しなどの工程への負荷が大きく、また、加硫後物性において発熱性が高くなることから、ランフラット耐久性の向上はあまり期待できない。
またランフラットタイヤの耐久性を向上させるため、カーボンブラックを増量することなく加硫剤および加硫促進剤を多量に用いること試みられている。この技術で加硫密度を上げ、変形、発熱を抑えることはできるが、ゴムの伸びが小さくなり破壊強度が低下する傾向が生じる。一方、タイヤのサイドウォール用ゴムに、雲母類などの薄板状天然鉱石を配合する技術も提案されている。しかしゴム組成物は耐屈曲性能が必要とされるため、硬度が低いためサイド補強用ゴムとして用いても荷重を支持するには不充分である。
特許文献1(特開2006−124473号)には、低発熱性および高硬度を両立し、ランフラットタイヤの耐久性を改善しうるランフラットタイヤ用ゴム組成物として、ゴム成分100重量部に対して、カーボンブラックを10〜100重量部、および一般式
−(R−Sxn
(式中、Rは(CH2−CH2−O)m−CH2−CH2、xは3〜6の整数、nは10〜400の整数であり、mは2〜5の整数を表わす。)を満足する化合物を3重量部以上含有するタイヤ用ゴム組成物が開示されている。
また、特許文献2(特開2005−53977号公報)には、氷上摩擦性能を向上させたタイヤ用ゴム組成物として、ジエン系ゴム100重量部に対して、2個以上の突起を有するフィラー1〜30重量部を含有するタイヤ用ゴム組成物が開示されている。
特開2006−124473号公報 特開2005−53977号公報
本発明は、2個以上の突起を有する酸化亜鉛ウイスカを、所定のゴム配合系に配合することで、ランフラット走行時の繰り返し屈曲変形においてサイド部補強層のゴム組成物の発熱性が抑制でき、高い強度が得られることを発見した。本発明はサイド部補強層のゴム組成物および該ゴム組成物をランフラットタイヤのサイド部に使用し、パンク時の耐久性を改善した、走行距離および速度を向上したランフラットタイヤを提供する。
本発明は、ジエン系ゴム成分100質量部に対して、窒素吸着比表面積が30〜100m2/gでジブチルフタレート吸油量が50ml/100g以上であるカーボンブラックを10〜100質量部と、2個以上の突起を有する酸化亜鉛ウイスカを1〜30質量部と、硫黄および硫黄化合物の少なくともいずれかを2質量部以上を含み、損失弾性率E”、複素弾性率弾性率E*、破断時強度TBが、以下の関係式を満たすタイヤ用ゴム組成物である。前記ジエン系ゴム成分にはポリブタジエンゴムを10質量%以上含むことが望ましい。
(E")/(E*2 ≦9.0×10-9Pa-1
B≧10MPa
さらに前記硫黄化合物は、次の一般式(1)で示される。
−(R−Sxn− (1)
(式中、Rは(CH2−CH2−O)m−CH2−CH2、xは3〜6の整数、nは10〜400の整数であり、mは2〜5の整数を表わす。)
本発明は前記ゴム組成物をサイド補強層に備えたランフラットタイヤに関する。
本発明は、ゴム組成物に特定のカーボンブラック、2個以上の突起を有する酸化亜鉛ウイスカ、硫黄および/または硫黄化合物配合し、損失弾性率(E”)と複素弾性率弾性率(E*)の関係、(E")/(E*2 を所定の値以下とすることで、低発熱性で高強度のゴム組成物が得られ、該ゴム組成物をランフラットタイヤのサイド部補強用層および/またはビードエーペックスに用いることで、パンク時の走行耐久性、即ち、ランフラット性に優れたランフラットタイヤを得ることができる。
本発明は、ジエン系ゴム成分100質量部に対して、窒素吸着比表面積が30〜100m2/gでジブチルフタレート吸油量が50ml/100g以上であるカーボンブラックを10〜100質量部と、2個以上の突起を有する酸化亜鉛ウイスカを1〜30質量部と、硫黄および硫黄化合物の少なくともいずれかを2質量部以上を含むゴム組成物である。以下、ゴム組成物の配合成分について詳細に説明する。
<ジエン系ゴム成分>
本発明のゴム組成物をサイド部補強層に使用する場合、ジエン系ゴム成分中におけるポリブタジエンゴム(BR)の含有率が10質量%〜90質量%が望ましい。ポリブタジエンゴムが10質量%未満の場合、ゴム組成物の発熱性が悪くなる傾向にある。一方、90質量%を超えるとゴム組成物の破壊強度が低下する傾向にあり、より好ましくはポリブタジエンゴム(BR)の含有率は20質量%〜80質量%である。
本発明ではジエン系ゴム成分として天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン(1,2BR)、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合ゴム(SIBR)、スチレン−イソプレン共重合ゴム、イソプレン−ブタジエン共重合ゴム、1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶(SPBd結晶)を含有するスチレンブタジエンゴム(以下、「PBd結晶SBR」という。)などが使用できる。これらのゴム成分は1種類または2種類を混合することができる。
前記SPBd結晶SBRを使用する場合は、SPBd結晶を5〜60質量%含んでいることが好ましい。SPBd結晶が5質量%以上のものは、ゴム組成物の強度を高めることができ、SPBd結晶が60質量%以下とすることで、加工性を維持する。SPBd結晶SBRを使用する場合は、ゴム組成物の剛性を高めランフラット性を改善するためジエン系ゴム成分中に20〜80質量%が好ましい。
本発明において、ジエン系ゴムとして、天然ゴム(NR)および/またはポリイソプレンゴム(IR)の含有率が10質量%〜90質量%であることが好ましい。 天然ゴム(NR)および/またはポリイソプレンゴム(IR)の含有率が、10質量%未満では、ゴム組成物の伸び率が低く、生産性が低下する傾向がある。また、該含有率はゴム成分中に90質量%を超えるとランフラット走行時の発熱により、ゴムが劣化しランフラット性能が低下する傾向がある。
<カーボンブラック>
本発明のゴム組成物に用いられるカーボンブラックは、低発熱性を維持するため、FEF、FPFなどのソフトカーボンが好ましい。例えば、窒素吸着比表面積(N2SA)は、30m2/g以上であり、好ましくは35m2/g以上である。N2SAが30m2/g未満では補強性が不足し、充分な耐久性が得られない。また、該カーボンブラックのN2SAは、100m2/g以下であり、好ましくは90m2/g以下、より好ましくは80m2/g以下である。N2SAが100m2/gを超えると、発熱性が高くなる。
前記カーボンブラックのジブチルフタレート吸油量(DBP吸油量)は、50ml/100g以上、好ましくは80ml/100g以上である。DBP吸油量が50ml/100g未満では、充分な補強性を得ることが困難になる。
前記カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して10質量部以上であり、好ましくは20質量部以上、より好ましくは30質量部以上である。カーボンブラックが10質量部より少ないと、充分なゴム強度が得られない。また、カーボンブラックの含有量は100質量部以下であり、好ましくは70質量部以下、より好ましくは60質量部以下である。カーボンブラックが100質量部をこえると、ゴム組成物の粘度が上昇し、ゴムの混練り、押出しが困難になり、ランフラットタイヤのサイド部補強層に使用した場合ランフラット走行時の発熱が大きくなる。
<酸化亜鉛ウイスカ>
2個以上の突起を有する酸化亜鉛ウイスカとして、たとえば、松下アムテック(株)製のパナテトラ(テトラポット形状酸化亜鉛)が挙げられる。2個以上の突起を有する酸化亜鉛ウイスカを配合することにより、その2個以上の突起がアンカー効果を示しゴム組成物の補強効果を高めることができる。
ここで、突起数が2個以上であるとは、図2に示すような酸化亜鉛ウイスカの突起の先端と変曲点を結ぶ垂直線の長さ(L)と、変曲点の間隔(D)の比、L/Dが、2以上であると定義される。
例えば、図2(a)に示す2個の突起を有する酸化亜鉛ウイスカにおいて、変曲点の間隔(D)と、突起から変曲点を結ぶ線の方向に下ろした垂直線長さ(L)で、L/Dが定義される。また図2(b)に示す3個の突起を有する酸化亜鉛ウイスカにおいては、1つの突起における変曲点の間隔(D)と、突起から変曲点を結ぶ線の方向に下ろした垂直線長さ(L)で、L/Dが定義される。D、Lの値が突起ごとに異なる場合は、その平均値とする。前記酸化亜鉛ウイスカの突起数は2個以上、好ましくは3個以上である。突起がないか、あるいは突起を1個のみ有するものは補強効果が十分でない。
酸化亜鉛ウイスカのLは、1〜2000μmの範囲、Dは0.5〜1000μmの範囲、L/Dは2〜200の範囲で設定されることが好ましい。
2個以上の突起を有する酸化亜鉛ウイスカの配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対して1質量部以上であることが好ましく、2質量部以上であることがより好ましく、4質量部以上であることがさらに好ましい。前記酸化亜鉛ウイスカの配合量が1質量部未満では、ゴム組成物の補強が十分でなくランフラット耐久性が改善できない。また、前記酸化亜鉛ウイスカの配合量は、30質量部以下であることが好ましく、25質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましい。前記酸化亜鉛ウイスカの配合が30質量部を超えると、ランフラット性が低下する傾向がある。
なお、2個以上の突起を有する酸化亜鉛ウイスカとジエン系ゴムとの接着力を向上させるために、酸化亜鉛ウイスカの表面をポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリウレタン(PU)、ポリビニルアルコール(PVA)およびシランカップリング剤やシリル化剤などで処理してもよい。
2個以上の突起を有する酸化亜鉛ウイスカを用いる場合、前記非金属繊維と組み合わせて用いることで、補強効果を高めることができる。
<硫黄、硫黄化合物>
本発明のゴム組成物に用いられる硫黄または硫黄化合物としては、硫黄の表面析出を抑えるという観点から不溶性硫黄が好ましい。不溶性硫黄は、平均分子量が10,000以上、特には100,000以上で、500,000以下、特には300,000以下が好ましい。平均分子量が10,000未満では、低温での分解が起こりやすく表面析出しやすい傾向があり、500,000をこえるとゴム中での分散性が低下する傾向がある。
本発明における硫黄化合物1は、一般式(1)を満たす。
−(R−Sxn− (1)
(式中、Rは(CH2−CH2−O)m−CH2−CH2、xは3〜6の整数、nは10〜400の整数であり、mは2〜5の整数を表わす。)
前記硫黄化合物は加硫剤として用いられ、その他の加硫剤として硫黄、好ましくは不溶性硫黄と併用することが可能である。
式中、xは3〜6の整数、好ましくは3〜5の整数である。xが3未満では、加硫が遅延される傾向があり、xが6をこえると、ゴム組成物の製造が困難となる。式中、nは10〜400の整数、好ましくは10〜300の整数である。nが10未満では、化合物1が揮発しやすく取り扱いが困難になり、nが400をこえると、ゴムとの相溶性が悪化する。式中、mは2〜5の整数、好ましくは2〜4の整数、さらに好ましくは2〜3の整数である。mが2未満では、屈曲性能が低下する傾向があり、mが5をこえると、ゴム組成物の硬度が不充分となる傾向がある。
硫黄化合物の含有量は、ゴム成分100質量部に対して0.5質量部以上、好ましくは1質量部以上で10質量部以下ある。配合量が0.5質量部未満では、充分なランフラット性能が得られない。配合量が10質量部を超えると所定のゴム硬度が得られにくい傾向がある。
前記硫黄化合物を配合することで、(−S−CH2−CH2−O−)および(−S−O−)結合を含む架橋ユニットをゴムに導入することができ、加硫速度およびスコーチに影響を与えることなく、リバージョンを大幅に抑制することができる。また、一般の硫黄架橋では充分に得られないゴム組成物の耐熱性や、動的なストレスに対する耐性を得ることが可能である。さらに、ブルームしにくいため、外見上においても良好なゴム組成物を得ることができる。
硫黄と硫黄化合物を併用する場合の合計配合量は、2質量部以上、さらには3質量部以上であることが好ましく、10質量部以下、さらには8質量部以下であることが好ましい。硫黄および硫黄化合物が2質量部未満では、充分な硬さが得られない傾向があり、10質量部をこえると、未加硫ゴムの貯蔵安定性が損なわれる傾向がある。
<配合剤>
さらに、本発明のサイド補強用ゴム組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、通常のゴム配合に用いられる酸化亜鉛、ワックス、ステアリン酸、オイル、老化防止剤、加硫促進剤などを含んでもよい。
前記加硫促進剤は、例えばスルフェンアミド系促進剤は、遅延系加硫促進剤として、製造過程において焼けが起こりにくく、加硫特性に優れているので、最も良く使用される。また、スルフェンアミド系促進剤を用いたゴム配合は、加硫後ゴム物性においても外力による変形に対して発熱性が低いため、ランフラットタイヤの耐久性が向上する。
スルフェンアミド系促進剤としては、たとえば、TBBS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)、CBS(N-シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)、DZ(N,N’−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)などが挙げられる。その他の加硫促進剤としては、たとえば、MBT(メルカプトベンゾチアゾール)、MBTS(ジベンゾチアジルジスルフィド)、DPG(ジフェニルグアニジン)などを用いることができる。
<補強剤>
本発明のゴム組成物は、汎用ゴム一般に用いられているシリカを使用することができる。たとえば補強材として使用される乾式法ホワイトカーボン、湿式法ホワイトカーボン、コロイダルシリカ等が挙げられる。中でも含水ケイ酸を主成分とする湿式法ホワイトカーボンが好ましい。
さらに本発明は、薄板状天然鉱石、例えばカオリナイト、セリナイト、フロゴバイトおよびマスコバイト等の雲母類を配合することもできる。ここで薄板状天然鉱石のアスペクト比(厚さに対する最大径の比)は、3以上のものがゴム硬度を高める点で好ましい。前記薄板状天然鉱石の平均粒子径は、2μm以上であり30μm以下のものが好適に使用される。その配合量は、ゴム成分100質量部に対して5質量部〜120質量部の範囲で混合できる。
本発明は、前記シリカまたは前記薄板状天然鉱石と併用して、シランカップリング剤を添加することができる。前記シランカップリング剤としては、たとえば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシランなどが挙げられる。前記シランカップリング剤の配合量は、シリカおよび/または薄板状天然鉱石100質量部に対して2質量部〜20質量部の範囲で配合される。
<ゴム組成物の粘弾性特性>
ゴム組成物の損失弾性率(E")および複素弾性率(E*)は、下記式を満たすことが好ましい。
E"/(E*2 ≦9.0×10-9Pa-1 、特に、
E"/(E*2 ≦8.0×10-9Pa-1 であることが好ましい。
E"/(E*2 が、9.0×10-9Pa-1より大きいと、ランフラット時の変形による発熱が大きくなり、ゴムの熱劣化を促進し、破壊に至る傾向がある。
また、破断時強度(TB)を、10MPa以上、更に12MPa以上に調整することが必要である。破断時強度(TB)が10MPa未満の場合は、該ゴム組成物をサイド部補強層に用いたランフラットタイヤの走行時に車両の荷重による繰り返し屈曲により、前記サイド部補強層が破壊され、ランフラット性能が低下する。
<ランフラットタイヤ>
以下、本発明の実施の一形態を、図示例とともに説明する。図1は、本発明のランフラットタイヤ1示す正規内圧状態におけるタイヤ断面図である。
図1において、本実施形態のランフラットタイヤ1は、トレッド部2からサイドウォール部3をへてビード部4のビードコア5に至るカーカス6と、トレッド部2の内方かつ前記カーカス6の半径方向外側に配されるベルト層9を具えている。
前記カーカス6は、タイヤ周方向に対して45〜90°の角度で配列されるカーカスコードをトッピングゴムにより被覆した1枚以上のカーカスプライから形成される。図1では、カーカスコードを80〜90°の角度で配列した1枚のカーカスプライからなる場合が示されている。前記カーカスプライ6は、前記ビードコア5、5間に跨るプライ本体部6aの両側に、前記ビードコア5の周りをタイヤ軸方向内側から外側に折り返されるプライ折返し部6bを一連に具える。
そして前記プライ本体部6aとプライ折返し部6bとの間には、例えばゴム硬度が65〜98度の硬質のゴムからなり、前記ビードコア5から半径方向外側に先細状にのびるビード補強用のビードエーペックス8が配される。ここでゴム硬度は、温度23℃で測定したデュロメータータイプAによる硬さを意味する。このビードエーペックス8のビードベースラインBLからのタイヤ半径方向の高さHaは、低くすぎるとランフラット耐久性が不充分となり、逆に高すぎるとタイヤ質量の過度の増加や乗り心地の悪化を招く恐れがある。かかる観点より、ビードエーペックス8の前記高さHaは、タイヤ断面高さの10〜60%、好ましくは20〜50%に設定される。
前記カーカス6のプライ折返し部6bが、前記ビードエーペックス8を半径方向外側に超えて巻き上がり、その外端部6beが、プライ本体部6aと前記ベルト層9との間に挟まれて終端するハイターンアップの折り返し構造を具える。これにより、1枚のカーカスプライ6を用いて、サイドウォール部3を効果的に補強しうる。また前記プライ折返し部6bの外端部6beが、ランフラット走行時に大きく撓むサイドウォール部3から離れるため、該外端部6beを起点とした損傷を好適に抑制しうる。前記プライ折返し部6bとベルト層9との重なり部のタイヤ軸方向巾Weは、5mm以上で40mm以下に設定されることが好ましい。なお前記カーカス6が複数枚のカーカスプライから形成される場合には、少なくとも1枚のカーカスプライがこの態様をなすのが好ましい。
次に、前記ベルト層9の上側にはバンド7が積層されている。前記ベルト層9は、タイヤ周方向に対して例えば10〜45°の角度で配列したベルトコードをトッピングゴムにて被覆した2枚以上、本例では2枚のベルトプライで形成される。各ベルトコードは、プライ間相互で交差することによりベルト剛性を高め、トレッド部2の略全巾をタガ効果を有して強固に補強する。
また前記バンド7は、タイヤ周方向に対して5°以下の角度で螺旋状に巻回されるバンドコードをトッピングゴムにて被覆した1枚以上のバンドプライからなり、前記ベルト層9を拘束し、操縦安定性、高速耐久性等を向上させる。前記バンドは、図1に示す如くベルト層9の略全巾を覆うフルバンドプライのほか、ベルト層9のタイヤ軸方向外端部のみを被覆する左右一対のエッジバンドプライを採用できる。
また前記サイドウォール部3には、ランフラット機能を確保するためのサイド部補強層11が配される。このサイド部補強層11は、最大厚さTmを有する中央部分から、タイヤ半径方向内端11a及び外端11bに向かってそれぞれ厚さを徐々に減じてのびる断面三日月状をなす。前記内端11aは、ビードエーペックス8の外端よりもタイヤ半径方向内側に位置し、前記外端11bは、ベルト層9の外端よりもタイヤ軸方向内側に位置する。このとき、サイド部補強層11とビードエーペックス8とのタイヤ半径方向の重なり巾Waを5〜50mmとするのが好ましく、これにより前記外端11b及び内端11aでの剛性段差を緩和する。
前記サイド部補強層11は、本例では、カーカス6のプライ本体部6aの内側(タイヤ内腔側)に配される。そのため、サイドウォール部3の曲げ変形時には、サイド部補強層11には主として圧縮荷重が、またコード材を有するカーカスプライ6aには主として引張荷重が作用する。ゴムは圧縮荷重に強く、かつコード材は引張荷重に強いため、上記のようなサイド部補強層11の配設構造は、サイドウォール部3の曲げ剛性を効率良く高め、ランフラット走行時のタイヤの縦撓みを効果的に低減しうる。なおサイド部補強層11のゴム硬度(ショアA)は、60度以上、さらには65度以上であるのが好ましい。前記ゴム硬度が60度未満であると、ランフラット走行時の圧縮歪が大きくなって、ランフラット性能が不充分となる。逆にゴム硬度が高すぎても、タイヤの縦バネ定数が過度に上昇して乗り心地性を低下させる。このような観点より、前記サイド部補強層11のゴム硬度の上限は90度以下、さらには80度以下が好ましい。またサイド部補強層11の最大厚さTmは、タイヤサイズや、タイヤのカテゴリ等によって異なるが、乗用車用タイヤの場合は5〜20mmの範囲に設定される。
なお本発明のランフラットタイヤは、前記ゴム組成物をサイド部補強層11に使用した場合を説明したが、ビードエーペックス8に前記ゴム組成物を使用することもでき、さらにサイド部補強層11と共にビードエーペックス8に前記ゴム組成物を使用することもできる。
なお図1において、前記ビード部4には、リムプロテクトリブ12が凸設される場合が例示される。このリムプロテクトリブ12は、リムフランジJFを覆うようにタイヤの外側輪郭線から突出するリブ体である。ランフラット走行時には、リブ体の内側の斜面部がリムフランジJFの円弧部に寄りかかって接触するため、ビード変形量を軽減でき、ランフラット時の操縦安定性及びランフラット耐久性の向上に役立つ。
以下に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下に、実施例および比較例で用いた配合成分をまとめて示す。
実施例1〜3および比較例1〜4
表1に示す配合内容にしたがって、バンバリーミキサーを用いて、不溶性硫黄および加硫促進剤以外の成分を、160℃で5分間混練りした。得られた混練り物に不溶性硫黄と加硫促進剤を加えてバンバリーミキサーを用いて、120℃で2分間練り込んで未加硫ゴム組成物を得た。さらに未加硫ゴム組成物を幅3cm、厚さ1mmのテープ形状に押出し、ランフラットタイヤのサイド部補強層の形状に螺旋状に巻き付け、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを成形し、175℃で、20分間のプレス加硫することで図1の構造のランフラットタイヤを製造した。
実施例1〜3および比較例1〜4のランフラットタイヤの基本構造は、いずれも同じであり、タイヤサイズは215/45ZR1である。
以下の各評価を行なった。評価結果を表1に示す。
Figure 0004956810
(注1)NR:RSS#3。
(注2)SBR:JSR(株)製SL574。
(注3)BR:宇部興産社製の商品名「BR150L」。
(注4)カーボンブラック:三菱化学(株)製のダイヤブラックE(N2SA;41m2/g、DBP吸油量115ml/100g)。
(注5)ステアリン酸:日本油脂(株)製のステアリン酸「椿」。
(注6)酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種。
(注7)酸化亜鉛ウイスカ:松下産業情報機器(株)のパナテトラWZ−0501(突起の数:4個、L=2〜50μm、D=0.2〜3.0μm、L/D=2〜20)。
(注8)老化防止剤:住友化学工業(株)製のアンチゲン6C、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン。
(注9)不溶性硫黄:四国化成工業(株)製のミュークロンOT。
(注10)硫黄化合物:川口化学工業(株)製の2OS4(式1においてm=2、x=4、n=200)。
(注11)加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)。
<引張試験>
試作タイヤのサイド部補強層から厚さ2nmのゴム試験片を切り出し、JIS−K6251に基づき破壊時強度T(MPa)を測定した。
<粘弾性特性>
ランフラットタイヤのサイド部補強層から、所定のサイズのゴム試験片を切り出し、(株)岩本製作所製の粘弾性スペクトロメータを用いて、測定温度70℃、初期歪み10%、動歪み±1%、周波数10HzにてE"(損失弾性率)、E*(複素弾性率)を測定し、E"/(E*2を算出した。
<ランフラット性能>
空気内圧を0kPaにし、ドラム上を80km/hで走行させ、各試作タイヤが破壊するまでの走行距離を測定し、比較例1の走行距離を100として、次の計算式により比較例、実施例の試験タイヤを指数表示をした。ランフラット指数が大きいほど、ランフラット性能(耐久性)が優れている。
ランフラット指数=試験タイヤの走行距離÷比較例1の走行距離×100
<発熱温度>
発熱温度は、上島製作所製のフレクソメータにより静荷重30kgf、動荷重150kgf、試験周波数25Hz、試験開始温度35℃の条件で、加硫したゴム組成物に繰り返し変形を与え、25分後の温度を測定した。温度が低いほど、発熱が小さいことを示す。なお、試験片は、直径30mm、高さ25.4mmの円柱状のものである。
<評価結果>
比較例1は酸化亜鉛ウイスカを含まない例であり、比較例2は酸化亜鉛ウイスカを0.5質量部配合した例、比較例3は酸化亜鉛ウイスカを5質量部配合しているが、不溶性硫黄を1.5しか配合していない例である。比較例4は酸化亜鉛ウイスカを5質量部配合しているが、カーボンブラックが8質量部しか配合していない例である。
実施例1は、NR/BR混合系、実施例2はNR/SBR/BR混合系、また実施例3はNR/SBR/BR混合系に硫黄化合物と不溶性硫黄の併用した例を示す。本発明の実施例1〜3は、比較例よりもランフラット性が優れていることがわかる。
本発明に基づけば、ランフラット性能に優れたサイド部補強層のゴム組成物およびそれを用いたランフラットタイヤが提供される。そして本発明は乗用車用タイヤに限定されず、軽トラック用タイヤ、トラックバス用タイヤ、自動二輪車等のランフラットタイヤにも適用することが可能である。
本発明のランフラットタイヤの断面図の右半分を示す。 酸化亜鉛ウイスカの構造の概略図を示す。
符号の説明
1 ランフラットタイヤ、2 トレッド部、3 サイドウオール部、4 ビード部、5 ビードコア、6 カーカス、7 バンド、8 ビードエーペックス、9 ベルト層、11 サイド部補強層、12 リムプロテクトリブ。

Claims (3)

  1. ジエン系ゴム成分100質量部に対して、窒素吸着比表面積が30〜100m2/gでジブチルフタレート吸油量が50ml/100g以上であるカーボンブラックを10〜100質量部と、2個以上の突起を有する酸化亜鉛ウイスカーを1〜30質量部と、硫黄および硫黄化合物の少なくともいずれかを2質量部以上を含み、損失弾性率E”、複素弾性率弾性率E*、破断時強度TBが以下の関係式を満たすタイヤ用ゴム組成物を、サイド部補強層に備えたランフラットタイヤ。
    (E")/(E*)2 ≦9.0×10-9Pa-1
    B≧10MPa
  2. ジエン系ゴム成分には、ポリブタジエンゴムが10質量%以上含まれる請求項1記載のランフラットタイヤ
  3. 硫黄化合物は、次の一般式(1)で示される請求項1に記載のランフラットタイヤ
    −(R−Sxn− (1)
    (式中、Rは(CH2−CH2−O)m−CH2−CH2、xは3〜6の整数、nは10〜400の整数であり、mは2〜5の整数を表わす。)
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