JP4956702B2 - Cu−Ni−有機電着薄膜積層構造体及びその形成方法 - Google Patents

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Description

本発明は、Cu上に密着性に優れた有機電着薄膜、特に電着ポリイミド薄膜を成膜したCu−Ni−有機電着薄膜積層構造体及びその形成方法に関する。
電着塗装法(電着法)は、電圧の印加により電荷をもった材料化合物を溶液中で泳動させると共に、電極(被着物)での水の電気分解により材料化合物を析出させて、被着物上に材料化合物を凝集させて膜を形成するものであり、従来、電着液(電着用組成物)に用いられる樹脂材料として知られているポリイミド樹脂は、耐熱性、電気絶縁性、耐摩耗性、耐薬品性に優れ、更に機械的特性も優れているため、宇宙、航空材料から電気・電子部品に至るまで、広く利用されている。
この電着法は、例えば、導電部と非導電部とが混在する複雑な形状の基板に対して、Cuなどの導電部の露出部分のみに膜を形成できることから、導電体金属等の被覆に好適であり、特に、ポリイミド樹脂は各種導電体上にピンホールのない均一な膜を形成できることから、導電体の絶縁膜として有用である。
なお、本発明に関連する先行技術文献情報としては、以下のものが挙げられる。
特開昭49−52252号公報 特開昭52−32943号公報 特開昭63−111199号公報 特開平9−104839号公報 特開2002−299836号公報 特開2003−327905号公報 特開2003−327907号公報 特開2004−266199号公報 特開2005−336559号公報 特開2000−8196号公報 特開2000−68627号公報 特開平8−120496号公報 特開2002−167694号公報 特開平11−269696号公報 特開2005−162954号公報 上村貴之、他4名,「電着塗装法によるポリイミド膜の形成」,エレクトロニクス実装学会誌,2002年,第5巻,第3号,p.233−240
しかしながら、導電体金属上に絶縁膜として電着法にて成膜したポリイミド薄膜について検討したところ、導電性材料として最も有用なCuを被着物として用いた場合、成膜したポリイミド薄膜と被着物との密着性が十分でない場合があることが確認された。
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、Cu上に密着性に優れた電着ポリイミド薄膜である有機電着薄膜を成膜したCu−Ni−有機電着薄膜積層構造体及びその形成方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、最も汎用の導電体であるCuに対して電着によりポリイミド薄膜を成膜する場合、導電性を低下させないため(例えば、集積回路における微細Cu配線パターンなどにおいては、配線の導電性能を劣化させないために、配線パターンのCu表面を清浄に保つ必要がある。)、絶縁膜としてのポリイミド薄膜との界面(被着面)の酸化等を避け、清浄な状態を保ってポリイミド薄膜を成膜する必要があるが、Cu表面の清浄性を保ってポリイミド薄膜を電着法により成膜した場合、密着性の低下が確認された。
そこで、更に検討したところ、電着において電極となる被着物としてのCuが、電着の通電時において電極反応によりイオンとなって電着液中に溶解し、この溶解したCuが成膜されるポリイミド薄膜に取り込まれ、その結果、ポリイミド薄膜の密着性を劣化させていることがわかった。
そして、Cu基材上に電着にてポリイミド薄膜である有機電着薄膜を成膜する場合、有機電着薄膜を、厚さ5nm以上100nm以下のNi層を介して成膜すれば、Cu基材表面の清浄性を保ちつつ、Cuの電着液への溶解を避け、有機電着薄膜の密着性の低下を避けることができることを知見し、本発明をなすに至った。
即ち、本発明は下記Cu−Ni−有機電着薄膜積層構造体及びCu−Ni−有機電着薄膜積層構造体の形成方法を提供する。
[1]Cu基材上に厚さ5nm以上100nm以下のNi層を介して、カルボキシル基を分子構造内に有するアニオン性ポリイミドの水と有機溶媒との混合溶媒溶液であるポリイミド電着液から電着にて成膜されたポリイミド薄膜を成膜してなることを特徴とするCu−Ni−有機電着薄膜積層構造体。
]上記アニオン性ポリイミドがブロック共重合アニオン性ポリイミドであることを特徴とする[]記載のCu−Ni−有機電着薄膜積層構造体。
]上記Ni層の有機電着薄膜が成膜された最表面部が不動態化していることを特徴とする[1]又は[2]記載のCu−Ni−有機電着薄膜積層構造体。
[4]上記ポリイミド薄膜の厚さが1〜10μmであることを特徴とする[1]乃至[3]のいずれかに記載のCu−Ni−有機電着薄膜積層構造体。
]Cu基材上に厚さ5nm以上100nm以下のNi層を形成し、次いで、カルボキシル基を分子構造内に有するアニオン性ポリイミドの水と有機溶媒との混合溶媒溶液である電着液に上記Ni層を接触させ、該Ni層上に上記アニオン性ポリイミドを上記Ni層が形成されたCu基材を陽極として電着してポリイミド薄膜を成膜することを特徴とするCu−Ni−有機電着薄膜積層構造体の形成方法。
]上記アニオン性ポリイミドがブロック共重合アニオン性ポリイミドであることを特徴とする[]記載のCu−Ni−有機電着薄膜積層構造体の形成方法。
]上記Ni層の有機電着薄膜が成膜された最表面部不動態化させることを特徴とする[5]又は[6]記載のCu−Ni−有機電着薄膜積層構造体の形成方法。
[8]上記ポリイミド薄膜の厚さが1〜10μmであることを特徴とする[5]乃至[7]のいずれかに記載のCu−Ni−有機電着薄膜積層構造体の形成方法。
本発明によれば、Cu基材上に密着性に優れた電着ポリイミド薄膜である有機電着薄膜を成膜したCu−Ni−有機電着薄膜積層構造体を提供することができる。
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明のCu−Ni−有機電着薄膜積層構造体は、Cu基材上に厚さ5nm以上1μm未満のNi層を介して有機電着薄膜を積層した構造のものであり、Cu基材上に厚さ5nm以上1μm未満のNi層を形成し、次いで、アニオン性材料電着液にNi層を接触させ、Ni層上にアニオン性材料をNi層が形成されたCu基材を陽極として電着して有機電着薄膜を成膜することにより形成することができる。
このCu−Ni−有機電着薄膜積層構造体としては、例えば、図1に示されるようなCu基材3の上面にNi層2を介して有機電着薄膜1が成膜された構造のもの、例えばフレキシブルプリント基板などの銅板や銅箔等の銅層上や回路銅配線上に有機電着薄膜を成膜したものなどが該当する。
本発明では、電着において電極となるCu基材が、Cuのような電着の通電時において電極反応によりイオン化して電着液中に溶解する金属である場合であっても、Cu基材上に形成した5nm以上1μm未満の厚さを有するNi層によって、基材を構成するCuは電着液に溶解せず、Cuは有機電着薄膜に取り込まれることがほとんどない。そのため、この有機電着薄膜は、密着性が劣化しておらず、Cuで構成された基材上に成膜する有機電着薄膜として、特に、電気・電子材料の絶縁膜として優れた有機電着薄膜であり、このような有機電着薄膜を備えるCu−Ni−有機電着薄膜積層構造体は、導通を確保するCu基材とその絶縁体としての有機電着薄膜とを備える積層構造体として有用である。
本発明において、有機電着薄膜は、電着塗装法として知られているアノード電着法により成膜した薄膜であり、有機電着薄膜としてポリイミド薄膜が好適である。この電着ポリイミド薄膜は、カルボキシル基を分子構造内に有するアニオン性ポリイミドの水と有機溶媒との混合溶媒溶液を電着液(電着用組成物)とした電着により成膜することができる。また、有機電着薄膜としてアクリル系電着薄膜を挙げることもできる。
有機電着薄膜がポリイミド薄膜であるCu−Ni−電着ポリイミド薄膜積層構造体は、例えば、Cu基材上に厚さ5nm以上1μm未満のNi層を形成し、次いで、カルボキシル基を分子構造内に有するアニオン性ポリイミドの水と有機溶媒との混合溶媒溶液である電着液にNi層を接触させ、Ni層上に上記アニオン性ポリイミドを、Ni層が形成されたCu基材を陽極として電着してポリイミド薄膜を成膜することにより形成することができる。
本発明において、ポリイミド薄膜は、カルボキシル基を分子構造内に有するアニオン性ポリイミドの水と有機溶媒との混合溶媒溶液を電着液(電着用組成物)として成膜することができるが、このような電着液としては、電着によるポリイミド薄膜の成膜に用いられる公知の電着液を用いることができる。
ポリイミド電着液としては、アニオン性ポリイミド、例えば、特開平9−104839号公報(特許文献4)等に記載されているランダム共重合アニオン性ポリイミドを用いるもの、特開2003−327905号公報(特許文献6)、特開2003−327907号公報(特許文献7)等に記載されているブロック共重合ポリイミドを用いる電着液を挙げることができるが、得られる電着ポリイミド膜の密着性が良好となる観点から、ブロック共重合アニオン性ポリイミドを用いるものが特に好ましい。
この電着液としては、ジアミンと酸二無水物との反応生成物からなるランダム共重合アニオン性ポリイミド又はブロック共重合アニオン性ポリイミドを含むものが挙げられる。
上記ジアミンとしては、芳香族ジアミンを含むことが好ましく、芳香族ジアミンとしては、o−,m−,p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノキシレン、ジアミノジュレン、1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、ベンジジン、4,4’−ジアミノターフェニル、4,4’−ジアミノクォーターフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,2−ビス(アニリノ)エタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルホン、2,2−ビス(p−アミノフェニル)プロパン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ジアミノトルエン、1,4−ビス(p−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス−(p−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス{4−(p−アミノフェノキシ)フェニル}プロパン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシフェニル)ジフェニルスルホン、2,2−ビス{4−(p−アミノフェノキシ)フェニル}ヘキサフルオロプロパンなどが挙げられる。また、2,6−ジアミノピリジンなどの芳香族ジアミン以外のジアミンを含んでいてもよい。2,6−ジアミノピリジンを含むポリイミドは、分子内に酸基と塩基とを持ち、ポリマー相互作用によって、良好なポリイミド薄膜を成膜する。更には、水に対する親和性を増し、水溶性電着液として安定となり、得られた電着膜が平滑で緻密になる利点がある。
また、酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、4,4’−{2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチリデン}ビス(1,2−ベンゼンジカルボン酸無水物)、9,9−ビス{4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル}フルオレン二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物を挙げることができる。
ジアミンと酸二無水物との反応生成物からなるランダム共重合アニオン性ポリイミド又はブロック共重合アニオン性ポリイミドでアニオンになる基は、テトラカルボン酸二無水物成分が有していてもよいが、アニオン性基を有するジアミンをジアミン成分の1つとして用いることも好ましい。ポリイミドの耐熱性、被電着物との密着性、重合度向上のため、このようなアニオン性基含有ジアミンは、芳香族ジアミンであることが好ましい。アニオン基はカルボキシル基が望ましく、ジアミノカルボン酸が好ましい。このようなアニオン性基含有芳香族ジアミンの例として、3,5−ジアミノ安息香酸、2,4−ジアミノフェニル酢酸、2,5−ジアミノテレフタル酸、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,5−ジアミノパラトルイル酸、3,5−ジアミノ−2−ナフタレンカルボン酸、1,4−ジアミノ−2−ナフタレンカルボン酸等の芳香族ジアミノカルボン酸を挙げることができ、3,5−ジアミノ安息香酸が特に好ましい。このようなアニオン性基含有芳香族ジアミンは、単独で用いることもできるし、複数種類を組み合わせて用いることもできる。また、アニオン基を有さないジアミンと組み合わせてもよい。
ランダム共重合アニオン性ポリイミド及びブロック共重合アニオン性ポリイミドは、これらのジアミンと酸二無水物とをほぼ等量用いて、加熱、脱水することにより得られる。ブロック共重合アニオン性ポリイミドの場合は、逐次添加反応によって製造され、第一段階で、酸二無水物とジアミンからポリイミドオリゴマーとし、第二段階で、更に酸二無水物及び/又はジアミンを添加して、重縮合してブロック共重合アニオン性ポリイミドとする。本発明において、ランダム共重合アニオン性ポリイミド及びブロック共重合アニオン性ポリイミドの分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算値)は50,000〜100,000、特に60,000〜80,000が好適である。
このランダム共重合アニオン性ポリイミド及びブロック共重合アニオン性ポリイミドは、通常、塩基性化合物で中和したものとして電着液に用いられる。この塩基性化合物としては、N−ジメチルエタノール、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、N−ジメチルベンジルアミン、N−メチルモルホリンが用いられるが、N−ジメチルエタノールやN−メチルモルホリンが好適である。中和剤(塩基性化合物)の使用量はポリイミドが溶液中で溶解または安定に分散する程度であって、通常は化学量論中和量の30モル%以上、特に30〜200モル%であることが好ましい。また、電着液中の中和されたポリイミドの固形分濃度は5〜15質量%であることが好ましい。
一方、電着液の溶媒としては、水と有機溶媒とが用いられ、有機溶媒としては、このランダム共重合アニオン性ポリイミド及びブロック共重合アニオン性ポリイミドを溶解する水溶性極性有機溶媒、例えば、N−メチルピロリドン、N,N’−ジメチルアセトアミド、N,N’−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、テトラヒドロチオフェン−1,1−オキシド等が用いられる。好ましくは毒性の少ないN−メチルピロリドン、テトラヒドロチオフェン−1,1−オキシドが好ましい。これら水溶性極性有機溶媒は、上述したブロック共重合アニオン性ポリイミドを製造する際の反応溶媒として用いたものでもよい。
また、電着液に含まれる有機溶媒としては、ランダム共重合アニオン性ポリイミド及びブロック共重合アニオン性ポリイミドを溶解する油溶性溶媒を用いてもよい。油溶性溶媒は、電着後の被着物に析出したポリイミド樹脂のフロー性を高め、塗膜の平滑性を向上させる点で効果がある。またその結果として、電着液の貯蔵安定性を高めることができる。ここで油溶性溶媒とは、実質的に水に不溶性か又は難溶性の有機溶媒を意味する。ランダム共重合アニオン性ポリイミド及びブロック共重合アニオン性ポリイミドを溶解する油溶性溶媒としては、1−アセトナフトン、アセトフェノン、ベンジルアセトン、メチルアセトフェノン、ジメチルアセトフェノン、プロピオフェノン、バレロフェノン、アニソール、安息香酸メチル、安息香酸ベンジルなどが挙げられる。
更に、電着液に含まれる有機溶媒としては、フェニル基、フルフリル基又はナフチル基を有するアルコール等のポリイミドに対する貧溶媒を併用することが好ましく、このようなものとしては、例えばベンジルアルコール、置換ベンジルアルコール、フルフリルアルコールなどを挙げることができる。
電着液中の溶媒の濃度は85〜95質量%であるが、有機溶媒の濃度は15〜85質量%、特に20〜70質量%であり、溶媒として水を併用する場合、これと上述した中和されたポリイミドの固形分濃度との残部が水の濃度となる。なお、上記油溶性溶媒を用いる場合、電着液中の油溶性溶媒の濃度は10〜30質量%であることが好ましく、また、上記ポリイミドに対する貧溶媒を用いる場合、電着液中の貧溶媒の濃度は5〜15質量%であることが好ましい。電着液のpHは、ほぼ中性乃至弱塩基性(例えばpH=7〜9、好ましくは7.5〜8)であることが好ましい。
上述した電着液としては、株式会社ピーアイ技術研究所製の可溶型ブロック共重合ポリイミド電着液Q−EDシリーズ(例えば、Q−ED−21−129、Q−ED−x−069等)などの市販品を用いることができる。
電着条件は、従来公知の条件をそのまま採用することができる。例えば、ランダム共重合アニオン性ポリイミド又はブロック共重合アニオン性ポリイミドを用いる場合、導電性被着物を温度15〜35℃にて電着液に浸漬し、陰極としてCu、Pt等の電極を用い、電圧20〜400V、好ましくは50〜200Vで、通電時間30秒〜10分間、好ましくは1〜5分間通電することにより導電性被着物の表面に溶媒を含むポリイミド薄膜が成膜される。
更に、洗浄、風乾後、120〜220℃で30分〜1時間加熱して溶媒を揮発させることにより乾燥され、固化したポリイミド薄膜が得られる。なお、電着された薄膜は、既にポリイミドであるため、加熱は溶媒を飛散させるに足る温度で十分であり、溶媒の種類にもよるが、赤外線加熱で80〜150℃程度の温度で、30分〜1時間でよいこともある。電着ポリイミド薄膜の膜厚は、特に限定されないが、通常1〜100μmである。
本発明においては、有機電着薄膜が成膜されるCu基材は、電着時には陽極となる。また、上記Cu基材上に形成されるNi層は、例えば、電解めっき、無電解めっきの他、スパッタリング等のドライメッキなどにより形成することが可能であり、その厚さは5nm以上100nm以下である。Cu基材が配線として用いられるものであるならば、抵抗の高いNi層の厚さは薄いほど有利である。更に、このNi層上には、後述する有機電着薄膜が積層されるが、Ni層の有機電着薄膜が成膜された最表面部が不動態化しているものが耐食性を向上させる点で好ましい。なお、上記Cu基材上のNi層は有機電着薄膜を成膜する所望の部分に形成されていればよいが、Cu基材の有機電着薄膜を成膜する部分以外の部分であって電着液に浸漬される部分は、Cu基材が露出せず、電気的に絶縁された状態とすることが必要である。
めっき膜を薄膜化すると、ピンホールやめっきムラが生じやすいが、この様な表面状態では、ポリイミド薄膜の電着において、Cuの溶出を止めることができない。ピンホール等を抑制するためには、特に、適度な攪拌や、めっき液中への界面活性剤の添加などが望ましい。適度な攪拌を行うためには、基板の揺動や溶液の攪拌、パドルめっき装置等の攪拌機構を有するめっき装置を使うことができる。界面活性剤としては、例えばポリエチレングリコール、ドデシル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
また、めっき膜を薄膜化すると生じやすいピンホールやめっきムラは、前処理を行い、めっき面を清浄に保つことによっても、改善することができる。そのためには、慣用の脱脂処理、酸活性処理などを適宜組み合わせて用いることが望ましい。
めっきしたNi層はその耐食性を向上させるために、表面が実質酸化して不動態化していることが望ましい。表面のみを安定に酸化させる方法としては、空気中にしばらく放置すればよい。放置時間は空気中のNi膜の組成や湿度等により適宜設定すればよいが、通常10分〜1日でよい。また、乾燥炉等温度を上げれば時間を短くすることができる。
めっきしたNi層を化学的若しくは電気化学的に不動態化してもよい。化学的方法としては、酸化性の酸に浸漬させる方法が挙げられ、酸化性の酸としては、例えば濃硝酸などが挙げられる。電気化学的方法としては、導電性の塩や酸化性の酸を含む溶液中にて不動態を形成する電位にて通電すればよく、不動態を形成する電位は、Niの組成などにより適宜設定すればよい。
酸化などにより表面に不動態を形成したNi層は、めっきの前処理等により酸化膜などの不動態膜が除去される可能性があるため、どのような前処理を行うか注意する必要がある。特に酸処理等の酸化膜などの不導態膜の除去を目的とした前処理は行わない方がよい。
なお、本発明は、例えば、フレキシブルプリント基板の銅板や銅箔等の銅層上の絶縁膜として有機電着薄膜を積層した構造体及びその形成方法として好適である。特に、フレキシブルプリント基板においては、小型化、軽量化のために、また、圧延銅箔の屈曲性を維持するために、有機電着薄膜の薄膜化の要望があるが、本発明によれば、銅箔上に例えば1〜20μm、特に5〜10μmという従来の25〜75μmに比べて格段に薄膜化された有機電着薄膜を備えるCu−Ni−有機電着薄膜積層構造体を、有機電着薄膜の密着性を低下させることなく得ることができる。
また、上述したランダム共重合アニオン性ポリイミド又はブロック共重合アニオン性ポリイミドを用いた電着液を用いた場合、イミド化を目的とした電着後の高温熱処理が不要であるので、熱処理による銅の再結晶化が抑制され、高い耐折特性を維持することができる。更に、本発明は、凹凸のある基板上のCu配線パターン、Cu三次元構造体など上に有機電着薄膜を形成した構造体及びその形成方法としても好適である。
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
16mmφ×16.3μmtのCu箔に以下の前処理1(酸洗浄1、酸洗浄2)を施した。
前処理1
酸洗浄1:10%リン酸水溶液中で揺動させながら60秒間浸漬。
酸洗浄2:10%硫酸水溶液中で揺動させながら60秒間浸漬。
次に、上記前処理1を施したCu箔を水洗し、触媒化処理1を行った。
触媒化処理
100ppm塩化パラジウム活性化溶液に揺動させながら5秒間浸漬。
次に、上記触媒化処理を施したCu箔を水洗し、無電解NiPめっき浴(ニムデンHDX(上村工業株式会社製))を用い、表1に示される条件でCu箔上にNi層を形成し、水洗後、大気中、室温で1日乾燥した。
Figure 0004956702
次に、Ni層を形成したCu箔に以下の前処理2(プレディップ1及びプレディップ2)を施した。
前処理2
プレディップ1:市販の電着液用希釈液(株式会社ピーアイ技術研究所製)中で揺動させながら15秒間浸漬。
プレディップ2:市販の電着液(株式会社ピーアイ技術研究所製 Q−ED−x−069)中で揺動させながら15秒間浸漬。
次に、上記前処理2を施したNi層を形成したCu箔(被電着面積8mmφ)を市販の電着液(株式会社ピーアイ技術研究所製 Q−ED−x−069)に室温で浸漬し、対極をPt線とし、回転ディスク電極製膜装置(RDE)を用い、印加電圧60V(電圧制御)、通電時間5分として、Cu箔上にNi層を介してポリイミド薄膜を電着した。
電着後、ポリイミド薄膜を成膜したCu箔を、市販の電着液用希釈液(株式会社ピーアイ技術研究所製)中で揺動させながら15秒間浸漬し、その後、90℃で30分間、大気中で加熱乾燥し、更に、1日間真空乾燥して、Cu箔上にNi層を介してポリイミド薄膜(厚さ50μm)を成膜したCu−Ni−電着ポリイミド薄膜積層構造体を得た。
得られたポリイミド薄膜の密着性を下記剥離試験により評価した。
剥離試験:カッターナイフを用いて1mm間隔のスリットを入れた後、ピンセットを用いてひっかいたときに、剥離がなかったものを良好、剥離があったものを不良とした。
その結果、剥離試験は良好であった。また、電着したポリイミド薄膜が緑色になることもなく、Cuの溶出は認められなかった。
[実施例2〜4]
Ni層を表2に示される無電解NiPめっき浴を用い、表2に示される条件で実施した以外は、実施例1と同様の方法でCu−Ni−電着ポリイミド薄膜積層構造体を得、これを評価した。
Figure 0004956702
その結果、いずれも剥離試験は良好であった。また、いずれも電着したポリイミド薄膜が緑色になることもなく、Cuの溶出は認められなかった。
[実施例5,6]
Ni層を表3に示される電気Niめっき浴を用い、触媒化処理を行わずに表3に示される条件で電気Niめっきを実施した以外は、実施例1と同様の方法でCu−Ni−電着ポリイミド薄膜積層構造体を得、これを評価した。
Figure 0004956702
その結果、いずれも剥離試験は良好であった。また、いずれも電着したポリイミド薄膜が緑色になることもなく、Cuの溶出は認められなかった。
[比較例1]
Ni層をめっきしない以外は実施例1と同様の方法でCu−電着ポリイミド薄膜積層構造体を得、これを評価した。
その結果、剥離試験は不良であった。また、電着したポリイミド薄膜が緑色になり、Cuの溶出が認められた。
本発明のCu−Ni−有機電着薄膜積層構造体の一例を示す断面図である。
符号の説明
1 有機電着薄膜
2 Ni層
3 Cu基材

Claims (8)

  1. Cu基材上に厚さ5nm以上100nm以下のNi層を介して、カルボキシル基を分子構造内に有するアニオン性ポリイミドの水と有機溶媒との混合溶媒溶液であるポリイミド電着液から電着にて成膜されたポリイミド薄膜を成膜してなることを特徴とするCu−Ni−有機電着薄膜積層構造体。
  2. 上記アニオン性ポリイミドがブロック共重合アニオン性ポリイミドであることを特徴とする請求項記載のCu−Ni−有機電着薄膜積層構造体。
  3. 上記Ni層の有機電着薄膜が成膜された最表面部が不動態化していることを特徴とする請求項1又は2記載のCu−Ni−有機電着薄膜積層構造体。
  4. 上記ポリイミド薄膜の厚さが1〜10μmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のCu−Ni−有機電着薄膜積層構造体。
  5. Cu基材上に厚さ5nm以上100nm以下のNi層を形成し、次いで、カルボキシル基を分子構造内に有するアニオン性ポリイミドの水と有機溶媒との混合溶媒溶液である電着液に上記Ni層を接触させ、該Ni層上に上記アニオン性ポリイミドを上記Ni層が形成されたCu基材を陽極として電着してポリイミド薄膜を成膜することを特徴とするCu−Ni−有機電着薄膜積層構造体の形成方法。
  6. 上記アニオン性ポリイミドがブロック共重合アニオン性ポリイミドであることを特徴とする請求項記載のCu−Ni−有機電着薄膜積層構造体の形成方法。
  7. 上記Ni層の有機電着薄膜が成膜された最表面部不動態化させることを特徴とする請求項5又は6記載のCu−Ni−有機電着薄膜積層構造体の形成方法。
  8. 上記ポリイミド薄膜の厚さが1〜10μmであることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項記載のCu−Ni−有機電着薄膜積層構造体の形成方法。
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