JP4956487B2 - 電解コンデンサ - Google Patents

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この発明は電解コンデンサに関するものである。
一般にアルミニウム電解コンデンサは、図1、図2に示すような構造からなるエッチング処理および酸化皮膜形成処理をした陽極箔1と、エッチング処理した陰極箔2とをセパレータ3を介して巻回したコンデンサ素子4を形成し、このコンデンサ素子4を駆動用電解液(以下、電解液と称す)に含浸した後、有底筒状の外装金属ケース5に収納する。外装金属ケースについては、一般的にインパクト方式、トランスファー方式と呼ばれるアルミニウム板を押し出し成型する方式で生産されており、インパクト方式については主として大形品の用途に適用され、冷間状態で成型されている。
外装金属ケース5の開口部には、封口体6を装着し、絞り加工により密閉した構造をしている。封口体6の外端面には陽極端子7および陰極端子8が各々構成され、これらの端子7、8の下端部は、陽極内部端子9および陰極内部端子10として、コンデンサ素子4から引き出された陽極タブ端子11および陰極タブ端子12が電気的に接続されている。
ここで、陽極タブ端子11については、化成処理が施されたものが使用され、陰極タブ端子12については、化成処理が施されていないものが使用されている。さらに、いずれのタブ端子11、12についても、表面加工の施されていないアルミニウム箔が用いられている。
近年、電子部品の小形化、薄形化、高密度面実装技術の進歩、さらに大形ディスプレイや車載用関連における使用環境の変化に伴い、電解コンデンサには、弁膨張を低減させると共に長期的な電気特性の安定性が求められている。
従来、電解コンデンサに使用される外装金属ケースには、金属板を熱処理した後、金属板上に樹脂フィルムを形成したものが知られている(例えば、特許文献1)。
また、アルミニウム電解コンデンサのオーディオ機器の用途においては、主に電源回路フィルタ、各回路ブロックのカップリング、デカップリングに使用されている。この場合、アルミニウム電解コンデンサの材料や製造方法によって、再生音質が変化する現象が知られており、例えば、電解液の他に封口体、外装金属ケース等の影響が大きい。特に、オーディオ用コンデンサでは、音質改善効果が高いものとして電解液、封口体、素子止めテープ、セパレータ等が知られている(例えば、特許文献2〜6参照)。
特開2000−36443号公報 特開2007−5349号公報 特開2007−184339号公報 特開平5−62865号公報 特開2001−6981号公報 特開2005−252096号公報
しかしながら、近年の電子部品の小形化、薄形化により電解コンデンサの内部空間率の低減、さらに使用環境の変化に伴い、電解コンデンサには、弁膨張の低減と長期的に安定な電気特性が求められており、その中で、電解液の改善だけでは、弁膨張を低減させ、長期的に安定な電気特性を有する電解コンデンサを提供するに至っていない。
さらに、上述した金属板を熱処理した後に、樹脂フィルムを形成した電解コンデンサや、従来の電解液、封口体、素子止めテープ、セパレータ等を使用しただけの電解コンデンサをオーディオ機器に使用した場合には、まだ満足できるだけの優れた再生音質が得られないという問題があり、音響用電解コンデンサとしての改善の余地が残されていた。
本発明は、前記の現状を鑑みてなされたものであり、弁膨張を低減させ、長期的に電気特性が安定で、かつオーディオ機器に使用した際に、優れた音質を得ることができる電解コンデンサを提供することを目的とする。
本発明は、陽極箔と陰極箔とをセパレータを介して巻回したコンデンサ素子を駆動用電解液とともに有底筒状の外装金属ケースに収納した電解コンデンサにおいて、外装金属ケースが熱処理を施されていることを特徴とする電解コンデンサである。
また、前記熱処理後の外装金属ケースの引張強度が、20〜80N/mmであることを特徴とする電解コンデンサである。
本発明に用いる外装金属ケースの材料としては、アルミニウム、銅、銀、金、白金およびこれらの合金を挙げることができる。
本発明に用いる電解液は、エチレングリコールまたはγ-ブチロラクトンを主溶媒とすることが望ましいが、その他の溶媒を用いることも可能である。また、電解液には少なくとも1種類以上の有機カルボン酸またはその塩を含有させている。
本発明に用いられる溶媒種には、アルコール類、エーテル類、アミド類、オキサゾリジノン類、ラクトン類、ニトリル類、カーボネート類、スルホン類からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。溶媒の具体例は以下のとおりであり、2種以上併用することもできる。
アルコール類としては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ジアセトンアルコール、ベンジルアルコール、アミルアルコール、フルフリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、ヘキシトール等が挙げられる。
エーテル類としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。
また、高分子量体としては、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールおよびその共重合体(以下、ポリアルキレングリコール)等が挙げられる。
アミド類としては、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックアミド等が挙げられる。
オキサゾリジノン類としては、N−メチル−2−オキサゾリジノン、3,5−ジメチル−2−オキサゾリジノン等が挙げられる。
ラクトン類としては、γ-ブチロラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン等が挙げられる。
ニトリル類としては、アセトニトリル、アクリロニトリル、アジポニトリル、3−メトキシプロピオニトリル等が挙げられる。
カーボネート類としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等が挙げられる。
スルホン類としては、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、スルホラン、3−メチルスルホラン、2,4−ジメチルスルホラン等が挙げられる。
その他の溶媒としては、水、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホオキシド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、トルエン、キシレン、パラフィン類等が挙げられる。
上記に示した溶媒のうちで、特に好適なものは、エチレングリコールとγ−ブチロラクトンである。
本発明に用いられる電解液は必要により、種々の添加剤を含有してもよい。添加剤を加える目的は多岐にわたるが、例えば、熱安定性の向上、水和などの電極劣化の抑制、耐電圧の向上、ガス発生の抑制、ハロゲン化物に対する耐性の付与等が挙げられる。
添加剤の含有量は特に制限はないが、0.01〜20.0wt%の範囲であることが好ましく、さらに、好ましくは0.01〜10.0wt%の範囲である。
そのような添加剤の例としては、p−ニトロフェノール、m−ニトロアセトフェノン、p−ニトロ安息香酸、p−ニトロベンジルアルコール、p−ニトロクレゾール、p−ニトロトルエン等のニトロ化合物、オルトリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、リン酸メチル、リン酸エチル、リン酸ブチル、リン酸イソプロピル、リン酸ジブチル、リン酸ジオクチル等のリン酸化合物、ホウ酸およびその錯化合物等のホウ酸化合物、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、ペンタエリスリトール、ポリビニルアルコール等の多価アルコール類、コロイダルシリカ、アルミノシリケート、シリコーン化合物(例えば、反応性シリコーンであるヒドロキシ変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、カルボキシル変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン等)やシランカップリング剤(例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等)等のケイ素化合物が挙げられる。
本発明に用いられる電解液の有機カルボン酸の例としては、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン酸、安息香酸、2−メチルアゼライン酸、1,6−デカンジカルボン酸、5,6−デカンジカルボン酸、2-ブチルオクタン二酸、7−ビニルヘキサデン−1、16−ジカルボン酸等を例示することができる。また、より顕著な効果を得るために、2種またはそれ以上の有機カルボン酸を使用しても良い。
また、前述有機カルボン酸の塩としては、アンモニウム塩、メチルアミン、エチルアミン、t−ブチルアミン等の一級アミン塩、ジメチルアミン、エチルメチルアミン、ジエチルアミン等の二級アミン塩、トリメチルアミン、ジエチルメチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエチルアミン等の三級アミン塩、テトラメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム等の四級アンモニウム塩、炭素数1〜11のアルキル基またはアリールアルキル基で四級化されたイミダゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、脂環式アミジン化合物(ピリミジン化合物、イミダゾリン化合物)を用いることができる。
本発明の実施の形態による電解コンデンサは、図2に示すような構造をしており、エッチング処理および酸化皮膜形成処理をした陽極箔1と、エッチング処理した陰極箔2とをセパレータ3を介して巻回したコンデンサ素子4を形成し、このコンデンサ素子は電解液に含浸した後、熱処理した外装金属ケース5に収納されている。陽極箔、陰極箔は、エッチング処理に替えて蒸着処理にて表面の粗面化を行ってもよい。
なお、外装金属ケース5は、材料としてアルミニウムを用い、押し出し成型して有底筒状のアルミニウムケースとする。必要によりナイロンまたはポリエチレンテレフタレートを用いて、ラミネート加工後押し出し成型して、ラミネート被覆アルミニウムケースとする。次に、熱処理を施し、引張強度を20〜80N/mmに調整している。
さらに、外装金属ケース5の開口部には封口体6が装着され、絞り加工により密閉した構造をしている。封口体6の外端面には陽極端子7および陰極端子8が構成され、これらの端子7、8の下端部は、陽極内部端子9および陰極内部端子10として、コンデンサ素子4から引き出された陽極タブ端子11および陰極タブ端子12が電気的に接続されている。
本発明は、高温印加・無負荷試験においても弁膨張が抑制されて長期的に電気特性が良好で、かつオーディオ機器に搭載された際に良好な音質を与える電解コンデンサを実現するものである。
[実施例1]
まず、本発明に係る電解コンデンサについて示す。図1に示すように、陽極箔1と陰極箔2とをセパレータ3を介して巻回したコンデンサ素子4を形成し、このコンデンサ素子を電解液に含浸した後、有底筒状の外装金属ケース5に収納した。
この際、使用する電解液の組成を1,6−デカンジカルボン酸アンモニウム8.0wt%、エチレングリコール90.0wt%、硼酸1.0wt%、マンニット1.0wt%とし、外装金属ケース5については、ケース形成後熱処理を100℃、30分間行い、引張強度を80N/mmとしたものを用いた。
その後、外装金属ケース5の開口部に封口体6を装着し、絞り加工により密閉した構造にして電解コンデンサを作製した。
[実施例2〜9]
外装金属ケースの引張強度を表1に示す条件に設定した以外は、各々実施例1と同様の方法で、電解コンデンサを作製した。
[比較例1〜3]
外装金属ケースの引張強度を表1に示す条件に設定した以外は、各々実施例1と同様の方法で、電解コンデンサを作製した。
[従来例1]
外装金属ケースに熱処理を施さなかった以外は、実施例1と同様の方法で、電解コンデンサを作製した。
[実施例10]
使用する電解液の組成をアジピン酸二アンモニウム5.0wt%、エチレングリコール68.5wt%、水20.0wt%、アゼライン酸二アンモニウム4.0wt%、p−ニトロ安息香酸1.5wt%、亜リン酸1.0wt%とし、外装金属ケース5については、予め160℃、30分間で熱処理を行い、引張強度を60N/mmとした外装金属ケースを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、電解コンデンサを作製した。
[実施例11〜14]
外装金属ケースの引張強度を表4に示す条件に設定した以外は、各々実施例10と同様の方法で、電解コンデンサを作製した。
[従来例2]
電解コンデンサを組み立てる際に、外装金属ケースに熱処理を施さなかった以外は、実施例10と同様の方法で電解コンデンサを作製した。
なお、実施例1〜9の高温信頼性試験の負荷条件は、105℃の恒温槽中で定格電圧の400Vを3000時間印加した。無負荷試験は105℃の恒温槽中で3000時間放置した。そして、安全性能試験として、DC600V、電流制限7Aの条件で、防爆試験を行った。負荷試験の結果を表1に、無負荷試験の結果を表2に、防爆試験の結果を表3に示す。
Figure 0004956487
Figure 0004956487
Figure 0004956487
表1、2から分かるように、本発明の実施例1〜9は、従来例1と比較して、静電容量変化、tanδ変化も同等でありながら、特に、弁膨張が抑制されており、効果が明らかである。ここで、引張強度は20〜80N/mmが好ましく(実施例1〜9)、さらには、20〜60N/mmが好ましい(実施例4〜9)。
さらに、表3から分かるように、防爆試験において本発明の実施例は、異常電圧がかかった場合でも圧力弁が正常に作動し、従来例と同等であり、安全性能を有している。
次に、電解コンデンサの音響評価を行った。評価方法は、CDプレーヤーの出力とプリメインアンプの入力間において各コンデンサをカップリングさせて試聴し、その再生音質について試聴者3名で評価を行なった。各項目の評価結果については、10点満点で評価して3名の評価点の平均値とした。また、総合評価点は10項目の評価点の合計値で100点満点とした。再生音質の評価結果を表4に示す。
Figure 0004956487
表4から分かるように、本発明の実施例10〜14は、従来例2と比較して、再生音質の向上が図られており、本発明の効果は明らかである。ここで、引張強度としては、20〜80N/mmの範囲が好ましく(実施例10〜14)、特に35〜60N/mmの範囲がより好ましい(実施例10〜12)。
なお、本発明は実施例に限定されるものではなく、先に記載した各種材料を単独または合金とした外装金属ケースを用いても同様の効果があった。
本発明の電解コンデンサ素子の分解斜視図である。 本発明の電解コンデンサの要部切断正面図である。
符号の説明
1 陽極箔
2 陰極箔
3 セパレータ
4 コンデンサ素子
5 外装金属ケース
6 封口体
7 陽極端子
8 陰極端子
9 陽極内部端子
10 陰極内部端子
11 陽極タブ端子
12 陰極タブ端子

Claims (1)

  1. 陽極箔と陰極箔とをセパレータを介して巻回したコンデンサ素子を駆動用電解液とともに有底筒状の外装金属ケース内に収納した電解コンデンサにおいて、
    前記外装金属ケースが熱処理を施され、熱処理後の外装金属ケースの引張強度が、20〜80N/mmであることを特徴とする電解コンデンサ。
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