JP4952540B2 - グラビア印刷用塗被紙 - Google Patents

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Description

本発明は、グラビア印刷時のミッシングドットが少なく、網点再現性に優れたグラビア印刷用塗被紙に関する。
グラビア印刷は、ハイライト部から中間調にかけての再現性に優れており、美麗な写真印刷ができるために広く利用されている。そして、グラビア印刷は金属ロールの凹版から直接紙面にインキを転移させる印刷方式であり、網点抜け(以下、ミッシングドットと称す)を起こすと印刷効果が阻害されるので、その点を改善する目的で通常グラビア印刷用紙には高度な平滑性と高いクッション性が要求される。また、グラビア印刷は、オフセット印刷よりもインキ濃度が高いために紙表面の印刷が裏面から透けてみえる、所謂ショースルーの問題が発生し易く、紙の不透明度も重要な品質の一つである。
ミッシングドットの発生を良くする方法として、原紙に機械パルプを配合し、クッション性を持たせる方法が一般に良く知られている。しかしながら、機械パルプの配合比率を増やせば原紙の表面性を悪化させるので、ミッシングドットの発生増加を促すことが付随的に伴うものである。従って、原紙の特性のみでミッシングドットを完全に消去することは難しく、塗被層の物性も含めて適正化を図ることが不可欠である。また、機械パルプを配合することで白色度が得られ難くなるといった問題もある。
従来から、グラビア印刷用紙の塗被組成物として使用される顔料としては、一般的に、カオリン、炭酸カルシウム等の無機顔料が主体であるが、特にアスペクト比の高いデラミネートカオリンを使用することで、被紙表面の平滑性が向上する(特許文献1、2)。しかし、塗被層中にデラミネートカオリンを多量に配合しても、ミッシングドットが発生し、その実用性において十分なレベルにあるとは言えない。塗被層中のクッション性を付与する目的で、立方形軽質炭酸カルシウム粒子を配合する方法(特許文献3)やアラゴナイト型軽質炭酸カルシウムなどの針状顔料を配合する方法(特許文献4)が提案されている。しかしながら、高速印刷機による印刷に供したとき、ミッシングドット発生率が高いといった問題がある。
また、ミッシングドットの発生防止と不透明度の増加を目的として、焼成カオリンと粒度分布が狭いカオリンを組み合わせる方法が提案されている(特許文献5)。しかしながら、比較的大きな粒径に多く分布するカオリンと組み合わせているため、平滑性が劣るといった欠点がある。
一方、塗被層にプラスチックピグメントなどの有機顔料を配合し、高白紙光沢度、ミッシングドットの発生防止、不透明性などを付与する方法が提案されている(特許文献6、7)。しかしながら、有機顔料は無機顔料と比較して高価であるためコスト高になり、大量に使用できないという欠点がある。さらに有機顔料を添加した塗被液は、高せん断力下のおける粘度が上昇しやすく、ブレード塗工時のストリーク、スクラッチ等の塗工不良の原因になりやすいといった問題がある。
グラビア印刷用塗被紙の塗被層表面を機械的に平滑にする方法として、通常、スーパーカレンダを使用した加圧処理が行われている。スーパーカレンダによる表面処理は、平滑度や白紙光沢度を高める効果は得られるが、同時に塗被紙の密度が高まり、クッション性が損なわれる。また、不透明度も低下し、印刷絵柄が透過して裏面の印刷絵柄に影響を及ぼしたり、裏面の白紙面感を損なったりすることにより、品質の低下となる。一方、クッション性、不透明度を重視して仕上げ処理の程度を軽減すれば、逆に表面の平滑性が損なわれるという結果となり、塗被紙の平滑性とクッション性の両方を満足させることは非常に難しい。
このような理由で、一般的には表面の平滑性を最重視し、クッション性を犠牲にして表面の仕上げ処理を強化する手段がとられている。この場合、不透明度の低下とともに剛度の低下も発生する。そこで剛度を上げるために澱粉を多く使用すると紙が硬くなってしまいクッション性がなくなり、しかも平滑性も悪化するため、ミッシングドットがさらに増加してしまう。
近年、産業界全体で環境保全の観点から従来の廃棄対象物を資源として有効活用する動きが強まり、製紙業界においても製紙原料に回収古紙を利用する比率が高まっているが、この古紙利用の増加に伴って製紙工場廃水に含まれるスラッジの処理が大きな課題になっている。製紙スラッジとは、製紙材料であるパルプなどの繊維分、澱粉や合成接着剤を主とする有機物や白色顔料を主とする無機物で利用されずに廃水中に混ざって処理される固形原料、さらにはパルプ化工程で洗い出されたリグニン、微細繊維、あるいは古紙由来の製紙用填料、それに付着した印刷インキ、および生物廃水処理工程から生じる余剰汚泥からなる。その生物廃水処理工程で生じる余剰汚泥以外の主な製紙スラッジの発生源は、抄紙時にワイヤーを通過して流出したもの、古紙処理工程での混入異物除去、脱墨処理や洗浄過程で発生したもの、およびパルプ化工程での洗浄過程で発生したものであり、これらの固形物を含む廃水は、沈殿あるいは浮上などを利用した固形分分離装置によりその固形分が分離、回収され、その後、必要に応じて活性スラッジ処理等の生物処理が施された後、放流される。このような処理によって分離、回収された固形分や廃水の最終生物処理によって発生する余剰汚泥が製紙スラッジとなる。
製紙工場から発生した製紙スラッジは、従来は、産業廃棄物として、そのまま埋め立て処分されることが多かったのに対し、最近は流動床炉やストーカ炉等の焼却炉でスラッジ中の有機物を燃焼させてエネルギーとして回収すると同時に、製紙スラッジの減容化が図られている。しかし、製紙スラッジ中には無機物も含まれるため、燃焼後には多量の残渣(焼却灰)が残るという問題がある。現在、焼却灰の一部はセメントに混合されたり、製鉄の酸化防止剤、土壌改良剤等にも使用されているが、大半は産業廃棄物として埋め立て処分されている。一方、回収される古紙は、無機成分含量が少ない新聞や上質紙などの非塗工紙系古紙と、無機成分含量が多い雑誌などの塗工紙系古紙との2種に大別され、現状では再生処理が容易な非塗工紙系古紙が主流をなすが、今後の古紙利用率を高める上で必然的に塗工紙系古紙の比率が増すことになり、これに伴ってスラッジ発生量も急増することが予想される。従って、今後は製紙スラッジやその焼却灰を廃棄物として処理することがますます困難になり、また年々高騰している処理費用が紙パルプ工業の収益を圧迫することが予想される。このため、古紙を再生している製紙業界においては、製紙スラッジの問題は極めて深刻で、その対策の一環としてその有効活用が強く求められている。 製紙スラッジの有望な再生用途として、その焼却処理後の無機成分主体のスラッジ焼却灰を製紙用填料や塗工用顔料などの製紙用材料に再利用することが挙げられる。この再利用が実現すれば、大量のスラッジ焼却灰を製紙用材料として消費できるから、産業廃棄物の削減のみならず、古紙利用率の向上にも結び付き、環境対策上の問題が一挙に解消することにもなる。
特開平10−237795号公報 特開2000−199198号公報 特開平06−065896号公報 特開2004−270105号公報 特開2003−221797号公報 特開平05−125695号公報 特開平11−279990号公報
本発明は、原紙の少なくとも片面に、顔料と接着剤を主成分とする塗被層を1層以上設けたグラビア印刷用塗被紙の製造方法であって、前記塗被層中に製紙スラッジから得た再生顔料を含有し、優れたグラビア印刷適性を有するグラビア印刷用塗被紙の製造方法を提供することにある。
本発明は、原紙の少なくとも片面に、顔料と接着剤を主成分とする塗被層を1層以上設けたグラビア印刷用塗被紙において、前記塗被層中に製紙スラッジを燃焼処理して得られる再生顔料を5質量%以上含有している。前記再生顔料が、製紙スラッジを原料とし、筒型熱処理炉内を移送しつつ燃焼処理を施して製造されたものであって、燃焼処理が、過剰空気雰囲気下、スラッジ温度650℃以下でスラッジ中の易燃焼性有機成分を燃焼除去する一次燃焼工程と、スラッジ温度700〜850℃でスラッジ中の難燃焼性有機成分を燃焼除去する二次燃焼工程との、少なくとも2段階の燃焼工程を経ることによって行われる。
前記再生顔料は、レーザー回折散乱法により測定した平均粒子径(D50)が2.5μm以下であることが好ましい。
前記グラビア印刷用塗被紙の不透明度がJIS P 8149:2000に基づいて87%以上であることが好ましい。
本発明の再生顔料の製造方法としては、筒型熱処理炉の筒方向の端部に設置されるスラッジ供給口から供給し、該スラッジ供給口に対して筒軸方向について反対側の端部に設置されるスラッジ排出口から取り出す間に空気雰囲気下で間接的加熱方法により製造されることが好ましい。
前記燃焼処理が、筒型熱処理炉の一端のスラッジ供給口側から炉内空気を強制的に排出することにより、同他端の焼成物排出口側から空気を炉内へ吸入することによって処理されることが好ましい。
さらに、前記燃焼処理が、筒型熱処理炉の内部が分割されたものによって処理されることが好ましい。
記再生顔料が、原料の製紙スラッジを造粒または塊状に成形した後に燃焼処理されて製造されることが好ましい。
さらに、前記再生顔料が、燃焼処理後の焼成物を水に混合、攪拌して懸濁液とする懸濁液化工程と、この懸濁液に二酸化炭素を接触させて炭酸化処理物を得る炭酸化処理工程と、該炭酸化処理物を粉砕する粉砕工程によって製造されることが好ましい。
前記再生顔料が、前記燃焼処理工程中で、製紙スラッジ中の炭酸カルシウムが50%を越えて分解している焼成物から得た再生顔料であることが好ましい。
本発明により、その大半が産業廃棄物として処分されている製紙スラッジが有効に活用され、グラビア印刷用塗被紙に要求される平滑性、クッション性、不透明度に優れているため、これにグラビア印刷を施せば、外観良好なグラビア印刷紙を得ることができる。
本発明のグラビア印刷用塗被紙は、原紙の少なくとも片面に、顔料と接着剤を主成分とする塗被層を1層以上形成させることで製造することができる。
本発明のグラビア印刷用塗被紙において、塗被層を構成する顔料として、製紙スラッジから得た再生顔料を5質量%以上含有させる。塗被層中に再生顔料を含有させることにより、塗被層が嵩高になり、原紙の被覆性が良好になり、平滑性、クッション性が向上するため、ミッシングドットが減少する。ミッシングドットを減少させるための平滑性としては、PPS平滑で1.0μm以下が好ましく、0.8μm以下がより好ましい範囲である。また、再生顔料を塗被層中に含有させることで不透明度が向上するため、印刷が裏面から透けてみえる、ショースルーの問題も解決することができる。このショースルーの問題を解決するためには、白紙不透明度は87%以上にするのが好ましく、より好ましいのは90%以上である。なお、再生顔料が5質量%未満の場合は、塗被層自体の平滑性、クッション性、不透明度を付与することが難しい。60質量%を越える場合は、平滑性、クッション性、不透明度は向上するものの、塗被層の形成に比較的多量の接着剤を必要とするため、経済性で不利がある。好ましくは7〜50質量%、より好ましくは10〜40質量%である。
本発明で使用する再生顔料のレーザー回折散乱法で測定した平均粒子径(D50)は2.5μm以下であることが好ましく、より好ましいのは2.0μm以下である。平均粒子径が2.5μmを超えるものは平滑性を付与することが難しく、ミッシングドットが増加しやすくなる。
なお、本発明では、レーザー回折散乱法による平均粒子径の測定方法としてマイクロトラック(日機装社製)を使用した。
製紙スラッジから再生顔料を得る方法として、製紙スラッジを焼却炉で焼却した焼却灰を再燃焼させることにより、未燃焼カーボンを燃焼させ白色度を向上させる方法(特許文献8)、スラッジ中の有機材料の燃焼を生じさせ、有機物質を含まない無機材料を製造する方法(特許文献9)、流動床炉を使用して燃焼させ未燃カーボンが少ないスラッジ焼却灰を分取し、使用する方法(特許文献10)、製紙スラッジを成形し、内燃式ロータリーキルンなどで焼却し、粉砕する方法(特許文献11、12)、製紙スラッジを造粒、成形し、ロータリーキルン内で乾燥、炭化、焼成段階で有機分を効率良く燃焼させ焼却灰を得、粉砕と同時に炭酸ガスで中和する方法(特許文献13)が利用できる。
また、有機物中の黒色の炭化物を効率よく燃焼させるために、製紙スラッジを一次燃焼後、粗粉砕し、二次燃焼において残留した有機分を燃焼させ、さらに粉砕する方法(特許文献14)、一次燃焼を着火機能とし、二次燃焼においては酸素との接触を促進させながら燃焼する方法(特許文献15)、製紙スラッジの有機化合物を焼却する第一段階と、過剰の酸素供給下で残留炭質物質を焼却する第二段階の熱処理後、熱処理生成物を水性懸濁液にし、二酸化炭素を吹き込む方法(特許文献16)、製紙スラッジを乾燥後、燃焼炉で有機分を完全に燃焼させ粗粉砕あるいは微粉砕後に水分散液とし、二酸化炭素ガスを吹き込む方法(特許文献17)といった多段燃焼、燃焼の間に粉砕処理するといった方法があげられる。また、炭酸カルシウムの分解の抑制と白色度を両立させるために、炭素成分を燃焼させる際に二酸化炭素を吹き込む方法(特許文献18)も適用できる。
製紙スラッジからの再生無機粒子の硬度を低減させるために、スラッジ中の炭化水素物質が酸化される高い温度で焼却した灰粒子と水酸化カルシウムとのスラリーを作製し、スラリーを炭酸塩化して、灰粒子の表面に炭酸カルシウムを沈降させた複合粒状物質を製造する方法、その他の方法としては、焼却灰をアルカリ金属化合物と混合焼成することで高硬度化合物の生成を防止でき、混合焼成物を酸処理し、非晶質シリカ微粒子を製造する方法が適用できる。焼却灰を、ケイ酸を含むアルカリ溶液中に浸漬し、これを酸により中和することで、焼却灰をケイ酸などに包含させた多孔性粒体を製造する方法により得られた再生顔料も使用できる。
特開平11−310732号公報 特表平10−505055号公報 特開2001−11337号公報 特開2002−167523号公報 特許3611830号公報 特開2004−176208号公報 特開2001−262002号公報 特開2005−53984号公報 特開平10−29818号公報 特開2002−356629号公報 特開2004−262701号公報
製紙スラッジより再生顔料とする無機粒子を得るためのより好ましい方法の一例の基本フローシートを図1に示した。図1は本発明で好適に用いられる再生顔料となる無機粒子の製造方法の基本フローシートを示す図である。以下本基本フローシートに従って説明する。
[スラッジ]
スラッジは本発明に係る再生顔料の原料となる。原料の製紙スラッジは、パルプ化工程、紙製造工程、古紙再生工程などの製紙工場の各種工程から排出される廃水に対してスラッジ回収処理として、凝集・沈殿・濃縮・脱水等の工程を適宜組合せて行って、各廃水が含有する固形分を回収したもの(製紙スラッジ各種)を、単独、または混合して適宜原料スラッジとして用いることができる。このうち古紙再生工程からのスラッジについては、古紙脱墨工程の加圧浮上(フローテーション、または浮選)および/または洗浄によって古紙パルプから分離排出される脱墨廃液に対して凝集および脱水処理を行い、脱墨排水中の固形分を脱墨スラッジとして回収することが推奨される。また、白色度の低い古紙原料からスラッジを回収する場合には、古紙再生工程における脱墨処理及び浮選処理を充分に行い、カーボンブラックなどを含むインク粒子をできるだけ除去しておくのがよく、必要に応じて複数回のスラッジの加圧浮上工程および/または洗浄工程を追加することもできる。また、古紙脱墨工程から回収する脱墨スラッジについては、上質古紙、新聞古紙、雑誌(塗工紙系)古紙などに分別して古紙種類毎の脱墨スラッジを調製し、必要に応じてこれらの古紙種類別脱墨古紙を単独、または混合して適宜原料スラッジとして用いることができる。
なお、製紙スラッジ中の無機成分(灰分)は、製紙用填料や塗工紙用顔料に由来するカオリン(クレー)および炭酸カルシウムが無機成分全体の約80〜95重量%を占める主成分であり、タルク、二酸化チタンなどが少量混在している。前記無機成分の主成分であるカオリン、および炭酸カルシウムの比率は処理する古紙の種類等によって多少のばらつきはあるが、概ねカオリン/炭酸カルシウムの重量比で20/80〜80/20の範囲である。また、上記無機成分(灰分)中のカルシウム(CaO換算)、アルミニウム(Al換算)およびケイ素(SiO換算)のそれぞれの含有比率(カルシウム/アルミニウム/ケイ素)は、13〜73/12〜40/15〜47である。
また、製紙スラッジ中の有機成分、および無機成分の比率は、処理する古紙の種類や脱墨工程程度によって多少は変動するが、概ね無機成分/有機成分の重量比で30/70〜80/20の範囲である。
スラッジとは別に、製紙用材料として再利用が困難な低級な古紙やそれに付随するプラスチックを主としたRPF(Refused Paper & Plastic Fuel)を原料として使用することもできる。
[脱水工程]
各種工程の廃水から原料スラッジを固形分として回収する方法としては、濾過、遠心分離、加圧脱水、圧搾等の方法が挙げられ、前記各種方法を組合せて所要の含水率の製紙スラッジを得る。好適な濾過装置としては、ロータリースクリーンと称される濾過装置があり、また脱水装置としては、スクリュープレスと称される加圧・圧搾脱水装置があり、これらの濾過装置、圧搾装置を単独、または適宜組合せて用いることができる。また、遠心脱水装置としては、デカンタ型遠心脱水装置がある。
スラッジ中の固形分濃度は、脱水機の能力の違いで異なるため、通常5〜60質量%であるが、固形分濃度60質量%を超えるものは現状の脱水機あるいは濃縮機の能力では達成が難しい。
[乾燥工程]
本発明では、熱処理工程で用いられるに用いるスラッジの固形分濃度は特に限定はないが、熱処理工程中のエネルギーコストを低減する観点から、また熱処理装置を小さくする観点から、スラッジの固形分濃度はなるべく高くした方が好ましいので、70%以上にするのがよい。しかるに、前記の脱水工程のみでは、脱水装置機の能力によって異なるものの、固形分濃度は概ね5〜60質量%程度であるため、更に乾燥処理して固形分濃度を高めることが推奨される。
スラッジの固形分濃度を高くするために、図1に示すように、熱処理工程前にスラッジを乾燥する乾燥工程を設けることが好ましい。乾燥工程で用いる乾燥機としては、特に限定はなく、直接加熱型ロータリーキルン、間接加熱型ロータリーキルン、気流乾燥機、流動層乾燥機、振動流動乾燥機、回転・通気回転乾燥機(サイクロン)などを用いることができる。また、これら乾燥機の熱源としては、後述する焼成処理工程の排熱を使用することにより、エネルギーコストを低減することが可能である。
乾燥処理の温度は、気流乾燥機や回転・通気回転乾燥機のような熱風を利用して乾燥させる装置においては、スラッジの燃焼や炭化を防止するために熱風温度を600℃以下とすることが好ましく、250℃以下とすることが特に好ましい。この熱風温度が高過ぎては、スラッジが発火し、その際の焼成条件が適切でなければ、易燃焼性の有機成分が炭化して難燃焼性に変化する懸念がある。また、乾燥工程においては乾燥効率を向上させるために、スラッジを細かく解すことが好ましく、撹拌機や機械式ロール等により強制的にスラッジを解し、必要に応じてスラッジを300〜2000μm程度に分級して乾燥させることが好ましい。
また本発明の熱処理工程に用いるスラッジは、熱処理装置内にスラッジが積層された時に酸素と接触できる大きさ、形状であれば特に限定はない。しかし、スラッジを細かく、かつ大きさを均一にすると、スラッジが細密充填のように積層され、積層内に酸素が入り込まないため、有機物、特にカーボンの燃焼が不十分になり白色度が向上しない可能性がある。また、スラッジを大きくし過ぎると、カーボンを完全に燃焼することができず、スラッジ塊状の中心部に未燃カーボンが残存する可能性がある。以上のことから、本発明で用いられるスラッジは、長さまたは直径が2mm以上30mm以下の範囲の大きさのものを用いるのが好ましい。形状は、円柱状、球状、楕円、三角形、その他の多角形や、凹凸を有するものなどを用いることができる。
前記した所望の大きさ、形状にスラッジを成形するために、造粒成形することも可能である。スラッジを造粒する方法は、ブリケットマシンやローラーコンパクター等の圧縮成形機を用いる方法、ディスクペレッターのような半乾式造粒機を用いる方法、転動造粒法や攪拌造粒法、押出成形法等がある。
また前記のように造粒成形機を用いてスラッジを造粒させなくても、含水スラッジを乾燥機に投入あるいは乾燥スラッジを熱処理装置に投入する時のスクリューフィーダーなどで大きさを調整することも可能である。また、スラッジ乾燥機で大きさ、形状を調整することも可能である。
[熱処理工程]
本発明の熱処理工程は、過剰空気(酸素)雰囲気で行うことで、燃焼効率が向上するため、熱処理装置を小規模化、省力化することができる。その熱処理温度は、スラッジ中のカーボンブラック等のインク顔料や繊維およびポリマー等の有機物を安定して燃焼させる温度になるように後述の方法により制御される。
このような熱処理工程に使用される熱処理装置の一例を図2に示した。図2は本発明の熱処理工程に使用される、間接的加熱型ロータリンキルンを使用した熱処理装置の構成図である。
熱処理工程の主要部となる焼成炉としては、特に限定はなく、トンネルキルン、ローラーハースキルン、プッシャーキルン、シャトルキルンのような箱型炉、縦型円筒炉、回転式横型円筒炉、スクリュー式横型円筒炉などを用いることができる。スラッジを供給する方式としてはバッチ式、連続式があるが、多量に処理できる連続式の方が好ましい。スラッジへの伝熱が良好で、加熱炉内のスラッジがより均一に表面に出ることができる回転式横型円筒炉あるいは流動させることが可能なスクリュー式横型円筒炉を用いることが好ましい。設備の維持の面から極力単純なもので駆動エネルギーが少ない、回転式横型円筒炉であるロータリーキルンが好ましい。ロータリーキルンの焼成室の形としては円筒型、六角型などを使用することができる。ロータリーキルンとしては、高砂工業(株)の外熱式連続ロータリーキルン、(株)栗本鉄工所の連続外熱式ロータリーキルンIRK型、(株)ノリタケエンジニアリングの間接加熱連続式ロータリーキルンRKC−SG型、岩佐機械工業(株)の外熱型ロータリーキルンなどを用いることができる。また、キルン炉内にリフターや回転駆動できる攪拌部材を設けることで、スラッジと酸素がより多くかつ均一に接触するので、有機分の燃焼が効率的に行われ、スラッジ焼成物の白色度が向上し品質も均一になるのでより好ましい。さらに、多筒型キルンやキルンの焼成室内を多分割隔壁構造にすることで、伝熱面積が増大、かつ、スラッジへのキルン炉内のスラッジ積層・堆積が低減され、スラッジと酸素との接触、およびスラッジへの伝熱が良くなるので、スラッジ焼成物の白色度が向上し、均一な品質を得ることができるので好ましい。また、焼成室内を多分割隔壁構造にすることで、従来のキルンよりも前述のようにスラッジ積層・堆積を低減させることができるため、多くのスラッジを処理することが可能で、熱処理装置を小規模化することができる。焼成室内の分割数については、特に限定はないが、好ましくは6分割以上、さらに好ましくは10分割以上である。
そこで本発明の熱処理工程に使用される熱処理装置に好適に使用可能なこれらの焼成炉を使用した熱処理装置を、横型または縦型の筒を使用しているので筒型熱処理装置と称する。
図2に本発明の熱処理工程に好適に用いられる熱処理装置の一例の構成図を示した。図2に示すように、脱水、乾燥、造粒の各処理を単独または組み合わせて処理したスラッジSが図示を省略した乾燥装置から送られ、筒型熱処理装置の一例である連続式間接的加熱型ロータリーキルン1の筒軸方向の一端部に設置されたスラッジ供給口となる供給ホッパ2に投入され、スクリューフィーダー10を介してロータリーキルン1内の焼成室9へと供給される。スラッジSはロータリーキルン1の焼成室9内を通過しながら、その内部の有機成分が燃焼される。燃焼した後のスラッジSはスラッジ供給口に対して筒軸方向の反対側の端部に設置されたスラッジ排出口8を通して炉外に取り出され次の工程に送られる。
供給ホッパ2の近傍に排気手段としての排気ファン4が設置されており、この排気ファンがロータリーキルン1内の空気を強制排気することによってロータリーキルン1内へ、スラッジ排出口8の近傍に設置された空気供給口3からロータリーキルン1内に空気が破線矢印Aで示すように吸入される。このように空気供給口3から排気ファン4方向へ破線矢印Aで示す空気流が常に発生することになる。この空気流が後に説明する未燃焼物搬送用空気流Aとなる。この空気量の制御は排気ファン4の排気量を制御することで行われる。この空気量は炉内が過剰(富)酸素雰囲気下になるように過剰に吸入されるよう制御されることが好ましい。この詳細は後に説明する。
ロータリーキルン1の炉内を加熱する熱は主として間接的加熱手段5から供給される。この熱によって焼成室9内を間接的に加熱している。ロータリーキルン1の焼成室9内でスラッジ中の可燃成分が燃焼することによっても熱が発生するが、この熱に比べて間接的加熱手段5から供給される熱の方がはるかに大きい。この間接的加熱手段5を制御することにより、ロータリーキルン1内の温度を均一に維持する。この間接的加熱手段5としては、電気的な加熱も可能であるが、灯油や重油の燃焼ガスによる加熱、ガスバーナーによる加熱が経済的に好ましい。既存の焼却設備から排出される燃焼排ガスを使用することもできるし、水蒸気などを使用することもできる。本図2に示した例では循環ブロアー7によって燃焼排ガスが間接的加熱手段5として供給されている。
スラッジ中の有機成分は基本的にはロータリーキルン1の焼成室9内で燃焼させるが、一部の未燃焼物は空気流Aに載せて、ロータリーキルン1内から取り出される。排気ファン4を通して強制排気される空気流は熱風であるので、熱風循環ファン6を用いて図示を省略したスラッジ乾燥機などに送風されて熱エネルギーとして再利用することが好ましい。
以上説明したように本発明の熱処理工程は、過剰空気(酸素)雰囲気下で均一な温度コントロールが可能な間接的加熱方法により行われる。間接的加熱方法とは、焼成室(炉内)9を加熱するひとつの方法であり、間接的加熱型の燃成炉は、燃焼ガスあるいは燃焼ガスにより生じた熱風とスラッジが直接接触しないように隔壁が設けてあるのでこう呼ばれる。他の加熱方法としては、火炎、あるいは燃焼ガス、熱風を筒の一端から吹き込む直接的加熱方法がある。直接的加熱型の焼成炉は、焼成室(炉内)の一端から加熱する方法であるため、加熱側とその反対側では、温度が大きく異なり、焼成室( 炉内) 全体の温度を正確にコントロールすることができない。それに対して、間接型加熱方法は、直接的加熱方法のように燃焼ガスあるいは熱風を筒の一端から吹き込む方式ではなく、焼成室(炉内)全体を加熱する方式であるため、熱処理装置全体の均一な温度コントロールが容易となる。均一な温度コントロールは以下のような理由により重要である。
スラッジ中には、カーボンブラック等のインク成分や繊維およびポリマー等の有機物と炭酸カルシウム、カオリン、タルクなどの無機粒子などが存在している。スラッジ焼成物の白色度を向上させるには黒インキ成分であるカーボンブラックを除去することが必要である。単体のカーボンブラックを完全に燃焼させるには少なくとも過剰空気雰囲気下で600℃にて60分、850℃にて20分の燃焼処理時間が少なくとも必要であることから、なるべく熱処理温度を高くした方がよい。しかし、あまり温度を高くし過ぎると、スラッジ中の無機粒子が焼結変化し、スラッジ焼成物が硬くなってしまい、製紙用材料としては好ましくない性質を呈しやすい。
前記高温の熱処理による無機粒子の硬質化は、以下のスラッジが主として含有する無機物の炭酸カルシウムとカオリン(クレー)の熱的変質現象に起因する。すなわち、炭酸カルシウムは600℃を越えた付近から脱炭酸を始め、少なくとも一部が酸化カルシウムに分解され始め、900℃で完全に酸化カルシウムに分解する。タルクは900℃まで結晶構造は変化しない。二酸化チタンは1000℃でも安定であり、全く変化しない。カオリンは、400℃を超えた付近から結晶水が脱離し、500〜850℃までは非晶質のメタカオリンとして存在する。この非晶質のメタカオリンは、焼成カオリンと呼ばれるもので、嵩高く、不透明度が良好で、平滑性に優れる無機粒子である。900℃を超えると、γアルミナ、ムライトを生成する。これらのγアルミナ、ムライトは、非常に硬いため、ワイヤー摩耗、塗工ブレード摩耗が悪くなるため、製紙用材料としては好ましくない。また、850℃をやや超えた領域で、非晶質のメタカオリンと先出の炭酸カルシウムから分解された酸化カルシウムが存在すると、化学反応により、硬い、再利用に適さないゲーレナイトが生成する。
よって、本発明の熱処理工程のスラッジ温度は、硬い焼成物が生成しない850℃を超えないことが好ましい。また、最高温度が600℃未満では白色度を向上させるには非常に長い処理時間がかかり、エネルギーコストが高くなるだけでなく、熱処理装置も大きくなるため、実用上あまり好ましくない。従って、好ましいスラッジ温度としては、600℃以上850℃以下が好ましく、600℃以上800℃以下がより好ましい。
また、本発明の熱処理工程においては、850℃を超えない温度までスラッジ温度を段階的に上げていってもよい。
結局、このようにスラッジ焼成物が硬くなることを未然に防ごうとすると焼成時のスラッジ温度を低めに設定することになり、スラッジS中の有機分を完全に燃焼させることは困難であり、カーボンブラックに代表される未燃焼物が若干残存するおそれがある。なお、ここに示した温度は焼成室9内で焼成処理される際のスラッジ温度であり、熱処理装置内雰囲気温度とは厳密には異なる。熱処理装置内雰囲気温度は供給される空気の温度にもよるが、通常、スラッジ温度よりも低くなる。
本発明の熱処理工程において、熱処理装置内を過剰空気雰囲気下、つまり富酸素雰囲気下で熱処理する理由は、スラッジが含有する有機物の燃焼を効率的に行うためである。ここでいう過剰(富)酸素雰囲気下とは、燃焼排ガス中の残留酸素濃度が5%以上の状態となるように、燃焼対象の有機物に対して燃焼に必要な充分な空気(酸素)を供給し、有機物が完全燃焼できる状態のことである。また、排気する空気量、吸入する空気温度によりスラッジ温度を調整することも可能である。
熱処理装置内に吸入される空気量は、有機分を燃焼させるのに必要な理論酸素量以上にすることが好ましい。しかし、有機分を燃焼させることで発生する燃焼ガスは理論酸素量に相当する空気量よりも多くなるため、過剰(富)酸素化にするには、少なくとも発生した燃焼ガスを排気する必要がある。従って、吸入する空気量は、排気ファンの排気量を調節することで制御される。この排気量は、理論空気量の1.1倍以上が好ましく、より好ましくは1.5倍以上、さらに好ましいのは2倍以上である。しかし、吸入空気量が多過ぎるとスラッジ温度を下げてしまい、エネルギーコスト的にもあまり好ましくないので理論空気量の5倍以下にすることが好ましい。また、吸入する空気中には二酸化炭素を通常よりも多く含んでいてもよい。なお、熱処理装置内の酸素量が理論酸素量よりも少なく不足した場合、貧酸素状態になり、スラッジが炭化することで、スラッジ中に未燃カーボンが残存してしまう。この未燃カーボンを取り除くためには熱処理温度をより高くすることや、長時間の処理を必要とする。結局、所望のスラッジ焼成物を得ることは難しい。したがって炉内を貧酸素状態にすることは絶対に避けなければならない。
本発明においては、過剰(富)酸素雰囲気下でスラッジSをより完全に燃焼させるために高温処理することによりスラッジ焼成物の白色度は高くなるが、先に述べたように硬い焼成物が発生し易くなる。
本発明では、図2に示したように空気供給口3をスラッジ排出口8の近傍に設置し、未燃焼物搬送用空気流Aを排出する排気ファン4をスラッジ供給口2の近傍に設置した場合は、熱処理装置内にスラッジSの進行する方向Bと対向する方向に未燃焼物搬送用空気流Aを発生させることができる。
このようにスラッジSの進行方向Bと逆方向に未燃焼物搬送用空気流Aを生じさせる方式を本発明では向流方式と呼ぶ。この向流方式は、未燃焼物搬送用空気流がスラッジ焼成物のスラッジ排出口8側に送られるのと逆方向に流れていくので、スラッジ焼成物から未燃焼物を効率よく除去でき、スラッジ焼成物の白色度を向上させることができより好ましい。特に熱処理工程の最初の段階の燃焼の際に生じるような未燃焼物は後々まで完全燃焼されにくいので、この向流の未燃焼物搬送用空気流によって効果的に取り除くことができる。
したがって、白色度をより高くするためにスラッジの未燃焼物の100%の完全燃焼の保障を図り、スラッジ温度をより高めに設定したりするより、100%の燃焼の保障は断念して微量の未燃焼物の発生を看過し、寧ろその未燃焼物をスラッジ焼成物から取り除くことによって高白色度でかつ高硬度合成物を含有しない無機粒子を得ようとすることに本発明の特徴がある。前記した未燃焼物とは、未燃有機物のことで大半は未燃カーボン粒子、換言すれば炭化物粒子である。つまりカーボンブラック状物質であり、カーボンブラックの性状は大きさが10〜500nmで、比重1.8〜1.9の微粉末状である。この微粉末状の未燃焼物を取り除くために、炉内の空気を排気ファン4により排出することにより、未燃焼物搬送用空気流Aを熱処理装置内に発生させ、搬送用空気流Aに載せて未燃焼物を取り出しているのである。このように排気ファンなどを用いて未燃焼物搬送用空気流を強制排気させることが非常に好ましい。このような強制排気に加えて空気を強制導入させると更に好ましい。
強制排気等による未燃焼物空気流の流速は、微粉末状の未燃焼物を取り除くことができる流速であれば特に限定はないが、流速が遅い場合は、空気流が供給ホッパ2側に流れず、未燃焼物を上手く取り除くことができずにスラッジ焼成物中に混入してしまい、白色度が低下してしまう懸念がある。上記のような性状のカーボンブラックを含む未燃焼物を搬送する未燃焼物搬送用空気流の流速は0.4m/分以上が好ましく、より好ましくは0.8〜1.5m/分以上、特に好ましくは1.5m/分以上である。しかし、空気流の流速があまり速すぎるとスラッジ焼成物もいっしょに排気ファン4側に混入する恐れが大きくなり熱効率も低下する。尚、この空気流の流速は排気ファンの排気量、空気温度等を測定し、それらの値と熱処理装置内の温度等から理論的に求めた。
一方、他の方式前記向流方式とは逆の空気流入方式の例を図3に示した。図3は本発明の熱処理工程に使用される、間接的加熱型ロータリンキルンを使用した熱処理装置の他の一例の構成図である。図3中、図2と同一の符号を付した部材は図2において説明したものと同様であるので説明を省略する。図3の熱処理装置においては排気ファン4がスラッジ排出口8の近傍に設置されているしたがって、未燃焼物搬送用空気流A' とスラッジの進行方向B'が同一方向となる。このような方式を本発明では並流方式と呼ぶ。この並流方式はスラッジ焼成物と未燃焼物を分別して取り出す排出口が同方向であるため、多少、未燃焼物がスラッジ焼成物に混入しやすい懸念がある。また、並流方式では前記に記載したように未燃焼物搬送用空気流の流速を調整してもスラッジ焼成物に未燃焼物が混入しやすいので向流方式の方がより好ましい。
また本発明においては、本熱処理装置におけるスラッジ燃焼温度が高くなった場合に対して、一定以上の空気流入量を増大させることにより、空気流によって過剰なスラッジ燃焼熱を熱処理装置外に排出する、すなわちロータリンキルン1の焼成室9内の高温の燃焼排ガスをスラッジ供給側の排気ファン4によってロータリーキルン1外部に排出することにより、焼成室9内のスラッジSの燃焼温度を下げることができる。そこで、本熱処理装置では一般の燃焼制御とは逆に温度が高い場合であっても一定量以上の空気流入量を増大させることによりスラッジ燃焼熱を熱処理装置外に排出する、すなわちロータリンキルンの本体筒部からスラッジ供給側の外部に熱を空気流と共に排出することにより温度を下げることができる。すなわち設定した熱処理温度以上に上昇することを避けるという制御をおこなうことができる。従って、先ほど述べた未燃焼物搬送用空気流Aは、スラッジ燃焼熱排出用空気流の役割もある。この点においても、向流方式は、空気流を排出する排気口がスラッジ供給口近傍にあるため、並流方式に比べてスラッジ燃焼熱が熱処理装置内を通過することなく、スラッジ燃焼熱を熱処理装置外に排出することができ、スラッジ温度の制御を容易にすることができるのでより好ましい。
前記以外にもスラッジ燃焼温度を制御する方法があるが、燃焼用の原料スラッジが充分に存在するなかでスラッジ燃焼温度が低い場合は、空気を多く流入させ燃焼を行うことで温度を高くすることができるが、多大な燃焼熱が発生して温度制御をすることが難しくなるため、必要以上の空気流入量を増大させることは好ましくない。他方、スラッジ燃焼温度が高い場合は、空気流入量を絞ることで燃焼を抑制(炭化)し、温度制御することができるが、本発明においては、スラッジの白色度を高く焼成するという目的のため熱処理装置内を富酸素状態にさせ、スラッジの燃焼を十分行わせることが必要であるため、空気流入量を必要以上に絞ることは好ましくない。
このようなまた、前記向流方式、並流方式の各空気流入方式の特徴の差異は回転式横型円筒炉やスクリュー式横型円筒炉において顕著に出やすい。これに対して縦型円筒炉では空気とスラッジの接触を良くするためには空気を流動させる必要があるため差異は出にくいが、並流方式の方が若干向流方式よりも若干効果的である。
未燃焼物搬送用空気流Aに載せて分別して取り出された未燃焼物は熱風循環ファン6に後続して設けられるバグフィルターで取り除くかおよび/または排ガスとともに燃焼装置(共に図示省略)により、捕集除去または燃焼させることがより好ましい。
熱処理装置から排出された熱風は熱循環ファン6により、熱処理装置または乾燥機などの熱源として再利用することで、エネルギーコストを低減できることができ好ましい。
スラッジが一定温度に加熱される時間(熱処理時間)は特に限定はされないが、空気流未燃焼物搬送用空気流Aにより吹き飛ばされないで焼成室9内に残留する有機物が完全に燃焼する時間を有保持する必要があることから、1時間以上が好ましい。しかし、必要以上に長い熱処理時間はエネルギーコストが高くなるだけでなく、熱処理装置も大きくなるため、実用上あまり好ましくない。従って、本発明の熱処理工程中の熱処理時間は1〜5時間とするのがより好ましい。この熱処理時間、スラッジ温度、空気流量、流速等の条件を適宜制御することによりスラッジ中の炭酸カルシウム成分の分解率を好ましくは50%以上とし、より好ましくは60%以上とし、更に好ましくは70%以上にさせている。
[焼成物懸濁液化工程]
本発明においては、図1に例示するように、熱処理工程後の焼成物を水と混合、攪拌し、焼成物懸濁液とする懸濁液化工程を熱処理工程後に備えてもよい。懸濁液化工程の目的は、スラッジ焼成物が含有するカルシウムを水中にカルシウムイオンとして溶解させることであり、焼成物懸濁液化温度は特に制限はないが、処理温度が高いと温度を維持する必要があるため経済的に好ましくないので、通常は20〜80℃で行われるのがよい、より好ましくは40〜60℃で行われるのがよい。
焼成物懸濁液の固形分濃度は5〜20質量%の範囲に調整することが後続の炭酸化処理を効率的に行い、また懸濁液の粘度を低く維持して流動攪拌性および送液性を良好に維持するために好ましい。焼成物懸濁液の固形分濃度が5%質量未満である場合は、生産性が劣るため好ましくなく、また、20%質量より高い場合は、該焼成物懸濁液の粘度が高くなるため、攪拌動力の増加となるとともに、操業性に劣ることから好ましくない。
また焼成物懸濁液に対しては、本発明のスラッジ焼成物の他に、必要に応じて別途、酸化カルシウム(CaO:生石灰)または水酸化カルシウム〔Ca(OH):消石灰〕を添加してスラッジ焼成物と水酸化カルシウムの所定固形分濃度の混合懸濁液とすることもでき、この場合、酸化カルシウムおよび水酸化カルシウムは、消和後の形態である水酸化カルシウム〔Ca(OH):消石灰〕として、スラッジ焼成物100重量部に対して最大100重量部(スラッジ:水酸化カルシウム=50:50)まで添加することができる。100重量部を超えて水酸化カルシウムを添加することもできるが、消和懸濁液中のスラッジ焼成物の配合率が少なくなり、スラッジ利用が進まなくなるため好ましくない。
[炭酸化工程]
炭酸カルシウムを含んだスラッジは600℃以上の熱処理工程において、炭酸カルシウム(CaCO)は分解される。分解された炭酸カルシウムが存在した焼成灰を水性懸濁液にすると、高アルカリになり、スラリー粘度の上昇、分散不良などといった問題があるため、そのまま、製紙用填料、塗工用顔料として利用するのは難しい。本発明の熱処理工程のようにスラッジの燃焼効率を向上させると、炭酸カルシウムの分解は促進される。つまり、本発明の熱処理工程後の焼成灰の白色度と炭酸カルシウムの分解率は比例関係にあり、所望の白色の焼成灰を得るには、スラッジ中の炭酸カルシウムを50%を超えて分解させている。高白色の焼成灰を得るために60%以上、さらに高白色度の焼成灰を得るには70%以上を分解させている。そのため、熱処理したスラッジ焼成灰を炭酸化処理、硫酸アルミニウム混合処理などの何らかの方法で前記アルカリ成分を中和処理するのが好ましい。
本発明においては、焼成物懸濁液化工程後に炭酸化工程を行うことにより、焼成物懸濁液化中のカルシウムイオンが炭酸カルシウム(CaCO)に再生転化され、再生無機粒子スラリーのpHを下げることができる。なお、再生無機粒子スラリーのpHを11以下、好ましくは10以下にすることで、スラリー粘度の上昇を抑制し、顔料の分散不良を生じることを抑制することができる。なお、再生無機粒子としては、炭酸化処理により新たに析出した炭酸カルシウム粒子とカオリンが熱処理により変性した非晶質成分粒子が主に存在している。なお、この非晶質成分は焼成カオリンによく似た性質を示す。従ってこの非晶質成分は焼成カオリン類似成分と呼ぶことができる。
なお、スラッジ中に炭酸カルシウムを含有しない場合は、炭酸カルシウムが分解されカルシウムイオンが遊離してこないため、焼成灰を高濃度で分散することができ、熱処理工程後の焼成物懸濁液化工程および炭酸化工程を用いなくても製紙用材料としてそのまま再利用することができる。
炭酸化工程は通常の軽質炭酸カルシウム製造工程と同様の方法で行うことができる。すなわち、焼成物懸濁液に、二酸化炭素ガスあるいは二酸化炭素含有ガスを吹き込む。炭酸化に用いるガスは、工業的には二酸化炭素含有ガスが好ましく、この場合の二酸化炭素濃度は特に限定されるものではないが、好ましくは5〜40容量%、より好ましくは10〜35容量%の二酸化炭素含有ガスを用いる。また二酸化炭素含有ガスとしては、例えば、スラッジ焼成排ガス、石灰石焼成排ガス、石灰焼成排ガス、ゴミ焼却排ガス、発電ボイラー排ガス、或いはパルプ製造工程で用いられる苛性化炭酸カルシウム焼成キルンなどから排出される排ガスなどを適当な手段で除塵後、用いてもよい。
二酸化炭素ガスあるいは二酸化炭素含有ガスを吹き込む割合は、二酸化炭素ガスとして焼成物1kg当たり、0.5〜15L/分の割合となるように焼成物懸濁液中に吹き込む。二酸化炭素導入量が0.5L/分未満では生産性が劣るし、15L/分を超えるような量を採用することはできるが、そのように使用量を増加させるために必要な動力負荷に見合った効果は期待できない。炭酸化の反応開始温度は好ましくは30〜80℃、より好ましいのは40〜70℃である。再生無機粒子に含まれる再生炭酸カルシウム成分の形状としては、米粒状、紡錘状、膠質状、針状、立方状、板状などにすることができ、特に形状に限定はなく、また、炭酸化工程中において所望の形状の結晶を得るために種晶を添加してもよい。
なお、本発明の炭酸化処理後の無機粒子は、炭酸化処理によって生じた微細な炭酸カルシウム1次粒子が凝集して2次粒子(凝集粒子)を形成し、製紙用填料に適した粒子径となる場合がある。このような場合には、この懸濁液をそのまま製紙用填料としてパルプなどの製紙用原材料に配合して用いることもできる。
[脱水、分散工程]
本発明の再生無機粒子スラリー(炭酸化後のスラリー)を塗工用顔料として利用する場合は、炭酸化工程後の組成物再生無機粒子スラリーを脱水して脱水組成物とする脱水工程と、該脱水工程により得られる該脱水組成物に水分を加えてスラリー状の分散組成物とする分散工程とを備えることが好ましい。脱水工程は、濾過、遠心分離、加圧脱水、圧搾などの操作により行うことができる。好適な脱水装置としては、フィルタープレスと称される圧搾濾過装置があり、炭酸化処理物の脱水ケーキを得ることができる。分散工程は、脱水工程により得られる脱水組成物に水分を加えてスラリー状の分散組成物とするものであればよい。分散工程時に水分以外に、分散剤を添加することで、スラッジを原料とした再生無機粒子を良好に分散することができ、製紙用材料としての品質が向上すると共に、取り扱いやすくなるので好ましい。分散剤としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム等の合成高分子系の分散剤など、製紙用材料の製造の際に用いられる一般的な分散剤を使用できる。
[粉砕工程]
本発明において、粉砕処理工程を、分散工程後に備えていてもよい。粉砕処理を行うことにより、再生された無機粒子の粒径を微細化することができ、平滑性が向上するので好ましい。粉砕工程において用いる粉砕機としては、サンドミル、湿式ボールミル、振動ミル、攪拌槽型ミル、流通管型ミル、コボールミルなどの湿式粉砕機を使用することができる。また、二酸化炭素を吹き込みながら、粉砕を行っても良い。このように無機粒子を炭酸化処理後、必要に応じて粉砕して得られた粒子を再生顔料と呼ぶ。
本発明の再生顔料の大きさ(粒子径)は、レーザー回折散乱法で測定した平均粒子径として、最終的に0.1〜20μmとすることが好ましく、更には先に説明した範囲にすることがより好ましい。
この平均粒子径は、塗工用顔料として、紙製品に仕上げた際の不透明性、白色度、平滑性、および印刷適性に優れる品質が得られるように、操業および品質上バランスされた粒子径を選んだものである。したがって、再生顔料の平均粒子径を前記粒子径の範囲とすることにより、操業において、従来の塗工用顔料と同様に取り扱うことができ、また再生顔料を塗工した塗被紙の品質についても、従来の塗工用顔料と概ね同等の品質を発現させることができる。
因みに、再生顔料の平均粒子径が0.1μm未満のような微細な粒子になると、不透明性、白色度および平滑性等の改善に対しては有効ではあるが、反面、塗工層強度を発現させるために、著しく多量の接着剤が必要となる難点があるので好ましくない。他方、再生顔料の平均粒子径が20μmを越えるような大きい粒子になると、塗工紙製品の平滑性や光沢が低下し、結果的に印刷適性も低下することになり好ましくない。
再生顔料を前記した所望の粒子径とするために脱水工程後に分散工程、および粉砕工程を設けることが好ましいが、分散処理後の再生顔料の平均粒子径が前記した粒子径の範囲になる場合は、粉砕工程を行わないで、分散処理後の無機粒子の分散液をそのまま塗工用顔料として当然ながら使用しても良い。
また、分散工程において、再生無機粒子の脱水組成物を炭酸カルシウムスラリーに混合し、混合スラリーとし、湿式粉砕機を用いて粉砕することで、炭酸カルシウムよりも品質が良好で、なおかつ炭酸カルシウムスラリーよりも粉砕時間を短くすることができ、高濃度なスラリーを調整することが可能である。なお、再生無機粒子と炭酸カルシウムの比率は、塗被紙の白紙品質などに応じて、調整することが可能であり、特に制限はない。
本方法における工程は、熱処理工程は必要必須であるが、乾燥工程、造粒工程、懸濁液化工程、炭酸化工程、脱水・分散工程、粉砕工程は適宜選択して組み合わせることができる。これらの工程を行う装置が組み合わされてひとつのプラントが構成されることになる。
本方法で得られた再生顔料は、後に説明するように炭酸カルシウム、タルク、カオリン、焼成カオリン、二酸化チタン、サチンホワイト、シリカ等の無機顔料を必要に応じて混合し、最外層の塗被層の中の下塗り塗被層や上塗り塗被層の無機顔料として用いることができる。
以上のようにして得られた無機粒子が再生顔料としてより好ましく使用できる。
製紙スラッジより無機粒子を得るためのより好ましい熱処理方法として、一次燃焼工程と二次燃焼工程とからなる少なくも2段階の燃焼工程を有する熱処理を用いることが好ましい。以下にその熱処理工程を詳述する。
[熱処理工程]
本発明では、前記の少なくとも2段階の燃焼処理により、製紙スラッジに含まれる全ての有機成分を確実に燃焼除去する。すなわち、本発明における燃焼処理は、原料の製紙スラッジを筒型熱処理炉内で移送しつつ行うが、その一次燃焼工程を過剰空気雰囲気下でスラッジ温度650℃以下の燃焼条件に、二次燃焼工程を過剰空気雰囲気下でスラッジ温度700〜850℃の燃焼条件に、それぞれ設定するものである。なお、過剰空気雰囲気とは、有機成分の燃焼に対して充分な酸素量を与えて不完全燃焼を生じさせない空気雰囲気を意味する。
まず、一次燃焼工程では、過剰空気雰囲気下で比較的低温の燃焼条件になるから、製紙スラッジ中の易燃焼性有機成分が、分子中の官能基を起点として容易に熱分解・発火し、炭化することなく燃焼して消失する。次の二次燃焼工程では、過剰空気雰囲気下で高温の燃焼条件になるから、一次燃焼工程で燃焼しきらずに残っていた難燃焼性有機成分も確実に燃焼して消失する。このような2段階の燃焼処理では、易燃焼性有機成分を燃焼しにくい炭化物に変化させずに燃焼除去できて合理的であり、製紙スラッジ中の有機成分全体の燃焼除去も短時間で効率よく行える。そして、得られる焼成物は、煤や炭などの未燃焼の有機成分を含まないために白色度が高く、塗工用顔料に好適に利用できるものとなる。
なお、一次燃焼工程のスラッジ温度が650℃を越えると、前述したように、易燃焼性有機成分が炭化して難燃焼性有機成分に変化し、燃焼効率が悪化することになる。また、この一次燃焼工程の燃焼温度があまりに低過ぎては易燃焼性有機成分でも熱分解・発火しにくくなって燃焼効率が悪化するため、スラッジ温度の下限を250℃とすることが望ましい。更に、一次燃焼工程の最も好適な焼成条件は、スラッジ温度350〜630℃となる範囲である。
一方、二次燃焼工程のスラッジ温度が700℃未満になると、難燃焼性有機成分の燃焼に時間がかかり、燃焼効率が悪化することになる。逆に該スラッジ温度が850℃を超える高温燃焼になった場合は、一般的にゲーレナイトと呼ばれる硬質の焼結物の生成によって製紙用材料としての適性が損なわれる。すなわち、このような硬質の焼結物が混入した焼成物から調製した製紙用填料や塗工用顔料に用いた場合、抄紙用ワイヤーや塗工用のブレードなどの製造設備を傷つけて製造操業性を悪化させ、製品品質にも悪影響を与えることになる。しかして、二次燃焼工程の最も好適な焼成条件は、スラッジ温度750〜800℃となる範囲である。
また、燃焼処理は、上記の一次及び二次燃焼工程からなる2段階で行う以外に、これら一次燃焼工程から二次燃焼工程への移行区間としての燃焼工程を挟んだり、一次及び二次燃焼工程の一方又は両方を更に燃焼温度(スラッジ温度)の異なる複数の燃焼工程に分けたりして、3段階以上とすることも可能である。
一次燃焼工程の燃焼処理時間は、少なくとも10分以上で5時間以内とすることが好ましく、15分以上で2時間以内とすることが特に好ましく、短過ぎては製紙スラッジ中の易燃焼性有機成分の燃焼除去が不充分になる恐れがあり、長過ぎては熱エネルギーの無駄になる。ともかく全ての易燃焼性有機成分が燃焼除去されるのに充分な時間をかけることが重要である。また、二次燃焼工程の燃焼処理時間は、少なくとも10分以上で5時間以内とすることが好ましく、20分以上で2時間以内とすることが特に好ましく、短過ぎては製紙スラッジ中の難燃焼性有機成分の燃焼除去が不充分になる恐れがあり、長過ぎては熱エネルギーの無駄になる。そして、一次燃焼工程と二次燃焼工程の燃焼処理時間の比率は、一次燃焼工程/二次燃焼工程で1/10〜10/1の範囲とすることが好ましい。
燃焼処理に用いる筒型熱処理炉は、被処理物の移送方式により、ロータリーキルンと称される回転式キルン炉と、スクリュー式キルン炉とがあるが、燃焼効率面から回転式キルン炉が好適である。また、前記の少なくとも2段階の燃焼処理は、1基の筒型熱処理炉内で行う他、段階ごとに異なる複数基の筒型熱処理炉を用いて行うことも可能であるが、当然に1基で行う方が設備効率及び設備コスト面で有利である。
なお、燃焼処理を前記1基の筒形熱処理炉を用いて行う場合の一次燃焼工程と二次燃焼工程との間に生じる昇温領域、具体的には燃焼温度が650℃から700℃へ上昇する領域については、できるだけ短くすることが好ましく、10分以内とすることが特に好ましい。このように一次燃焼工程と二次燃焼工程との間の昇温領域を短くすることは、筒型熱処理炉の全長短縮によるコンパクト化に繋がり、設備効率及び設備コスト面で有利である。
筒型熱処理炉の加熱方式としては、直接的加熱方式(内熱式)よりも間接的加熱方式(外熱式)の方が好ましい。すなわち、直接的加熱方式では、処理炉内で熱源ガスを燃焼させるのに大量の空気(酸素)を消費するため、製紙スラッジに含まれる有機成分の燃焼が空気不足で不完全になる懸念がある上、熱源ガスの燃焼によって炉内温度(スラッジ温度)の制御が非常に困難になる。これに対し、間接的加熱方式では、熱源のために炉内空気を消費することがないから、炉内を過剰空気雰囲気に確実に設定できることに加え、外部からの加熱度合を自在に変化できるので、炉内温度の制御が極めて容易になる。
上記の間接的加熱方式における加熱手段としては、電気的ヒータや誘導電流による加熱も可能ではあるが、エネルギーコスト面より、筒型の炉本体を包囲する加熱ジャケット内に、灯油や重油などの燃焼ガス、既存の焼却設備から排出される燃焼排ガス、高温空気、過熱水蒸気などを導入したり、該処理炉の周壁にガスバーナーからの燃焼ガスを吹き付けて加熱する方法が推奨される。また、炉本体内での燃焼処理を経た高温の排気や前処理の乾燥工程からの燃焼排ガスも、当該加熱手段の熱媒や熱源の一部として利用できる。
筒型熱処理炉の炉本体内への燃焼用空気の供給は、高品質の焼成物を製出する上で、焼成物排出口側から行うことが推奨される。すなわち、焼成物排出口側からの空気供給により、炉本体内での空気の流れ方向が被処理物(製紙スラッジとその焼成物)の移送方向に対して逆向きになり、燃焼に伴って未燃焼の難燃焼性有機成分が煤の如き状態となってたまたま炉内に飛散しても、煤の如き浮遊性物質は空気の流れに乗って原料供給口側へ戻されて燃焼するか、あるいは更に排気に付随して筒型熱処理炉外へ排出されるため、焼成物に黒色の未燃焼の難燃焼性有機成分が混入するのを防止でき、もって白色度の高い焼成物が得られる。しかして、排気に付随して筒型熱処理炉外へ排出される未燃焼の難燃焼性有機成分は、バグフィルターなどで捕集して除去するか、排気と共に適当な加熱手段によって燃焼処理して消失させるのがよい。
上述のように炉本体内への燃焼用空気を焼成物排出口側から供給するには、該焼成物排出口側から空気を吹き込んでもよいが、原料供給口側の排気によって空気を吸入する方法が好適である。すなわち、原料供給口側から強制的に排気することによって炉内が負圧になるから、焼成物排出口の近傍に給気口を設けておけば、該負圧によって空気が給気口から自動的に炉内へ吸入される。しかして、このような原料供給口側の排気による空気供給では、排気量によって空気供給量を容易に制御できると共に、安定した空気流によって長い炉本体の全長にわたって空気を確実に行き渡らせることができる。
上記の空気供給量は、炉本体内を過剰空気雰囲気とする上で、製紙スラッジに含まれる有機成分の完全燃焼に要する理論酸素量に対し、1.1〜5倍の酸素量を与える量に設定することが好ましく、1.5〜5倍の酸素量を与える量がより好ましく、特に2〜5倍の酸素量を与える量が望ましい。この空気供給量が少な過ぎては、炉本体内を過剰空気雰囲気にすることが困難になり、有機成分の不完全燃焼で残留した炭化物によって焼成物の白色度が低下する恐れがある。また、逆に空気供給量が多過ぎては、供給空気によって炉内が過度に冷やされるため、燃焼温度を維持する上で加熱手段による加熱度合を強める必要があり、それだけエネルギーコストが嵩むことになる。しかして、この燃焼用の空気は、有機成分を充分に燃焼させる酸素を含んでおればよいから、通常の外気よりも二酸化炭素の含有量が多いものでも支障はない。
本発明方法による製紙スラッジの好適な燃焼処理状態が現出すれば、一次燃焼工程では、スラッジ中の有機成分の大部分を占める多量の易燃焼性有機成分が充分な酸素の存在下で炎を上げて燃焼し、この燃焼が当該一次燃焼工程の1/2〜2/3まで連続する状態となる。同じく二次燃焼工程では、残留した難燃性有機成分が燃焼するが、その含有量が少ないために炎を上げることはなくとも、700〜850℃の高温であるためにスラッジが灼熱しながら持続的に燃焼する状態となる。
図4は本発明に用いる筒型熱処理炉のひとつの構成例である間接的加熱方式の回転式キルン炉K1を模式的に示す縦断側面図である。図示のように、この回転式キルン炉(ロータリーキルン)K1は、炉本体である横円筒型の回転胴9の外周が加熱ジャケット20で包囲されており、該回転胴9の一端の原料供給口9a側に、排気口30とやや離間して原料投入口2とが設けられると共に、この原料投入口2と回転胴9の原料供給口9aとの間に、スクリューフィーダーの如き原料供給手段10が配設され、また回転胴9の他端の焼成物排出口9bに臨んで、給気口3と焼成物取出口8とが設けられている。
そして、加熱ジャケット20内には、一次燃焼用及び二次燃焼用の2系統の間接的加熱手段5A,5Bにより、それぞれの熱風ブロアー71を介して送出される熱風が各々複数本のバルブ付き放出口72…から、原料供給口9a側の前部加熱空間20aと焼成物排出口9b側の後部加熱空間20bとに分けて導入される。また、排気口30には排気ファンの如き排気手段4が介装されており、その稼働によって破線矢印Aで示すように回転胴9内の空気が排気されると共に、この排気に伴う減圧作用で給気口3より外部の空気が回転胴9内へ吸入される。6は排気口30の下流側に設けた排気循環ブロアーである。
なお、回転胴9は、厳密な図示を省略しているが、原料供給口9a側から焼成物排出口9b側に向かって非常に緩やかな下り勾配に傾斜しており、この回転胴9の傾斜と回転により、内部の被処理物が重力作用で原料供給口9a側から焼成物排出口9b側へ徐々に移動するようになっている。
上記構成の回転式キルン炉K1によって製紙スラッジSの焼成処理を行うには、実線矢印Bで示すように、原料投入口2に投入された原料の製紙スラッジSを、原料供給手段10によって回転胴9の原料供給口9aへ送り込み、該回転胴9の回転によって焼成物排出口9b側へ移送する過程で、加熱ジャケット20内へ導入される熱風による間接加熱により、当該スラッジS中の有機成分を既述焼成条件の一次燃焼工程と二次燃焼工程の2段階で燃焼させる。
すなわち、この2段階の燃焼処理は、排気手段4の稼働による排気口30からの排気に伴う給気口3からの空気の吸入により、回転胴9内全体を過剰空気雰囲気に維持しつつ、2系統の間接的加熱手段5A,5Bから加熱ジャケット20内の前部加熱空間20aと後部加熱空間20bに各々導入される熱風の温度と導入速度によって加熱度合を調整し、図中の仮想線cで分かつように、その前部加熱空間20aに対応した回転胴9内の前側領域を一次燃焼区間Z1としてスラッジ温度650℃以下(好適には650℃以下で250℃以上、最適には350〜630℃)に制御すると共に、後部加熱空間20bに対応した回転胴9内の後側領域を二次燃焼区間Z2としてスラッジ温度700〜850℃(好適には750〜800℃)に制御する。
これにより、製紙スラッジSは、一次燃焼区間Z1を通過する過程で含有する易燃焼性有機成分が炭化することなく燃焼除去され、次いで二次燃焼区間Z2を通過する過程で含有する難燃焼性有機成分が燃焼除去され、もって未燃焼の有機成分ならびに硬質の焼結物を含まない高白色度の焼成物として、回転胴9の焼成物排出口9bから排出され、焼成物取出口8を通して炉外に取り出される。
なお、両燃焼区間Z1,Z2における処理時間(通過時間)は、回転胴9の回転速度と傾斜度合によって設定すればよい。また、回転胴9内における両燃焼区間Z1,Z2の長さ比率は、前述の如く一次燃焼工程/二次燃焼工程で1/10〜10/1の範囲とすることが好ましいが、2系統の間接的加熱手段5A,5Bから加熱ジャケット20内へそれぞれ熱風を導入する領域の大きさの相対比率によって任意に調整できる。しかして、両燃焼区間Z1,Z2の燃焼温度(スラッジ温度)を制御するための温度計測には、熱電対や赤外線温度センサーを始めとする様々な計測手段を利用できるが、作動の信頼性とコスト面より熱電対が好適である。
本発明に用いる筒型熱処理炉の炉本体としては、既述の構成例のロータリーキルン1における回転胴9のような横円筒型に限らず、内部に仕切りや隔壁を設けることにより、内部を複数の区分室に区画した多分割構造や多胴(管部束体)多室構造とした回転胴も採用可能である。これら多分割構造や多胴(管部束体)多室構造とした回転胴の例を図5〜図7に示す。なお、これら図5〜図7はいずれも、横長の回転胴の長手方向に対して直交する方向の断面図(径方向断面図)であり、図の上下方向が実際の上下方向に一致している。
図5(a)に示す回転胴9は、略6角形外殻12aを有する6分割隔壁構造であり、その内部が断面六方放射状をなす隔壁12bによって断面正三角形の6個の区分室13…に分割されている。図5(b)は、製紙スラッジSの造粒物を供給した同回転胴9が矢印C方向に回転している場合の、各区分室13における該製紙スラッジSの積層・堆積状態を示している。
図6(a)に示す回転胴9は、6本の管部14…をドーナツ板状の管部固定部材15によって略円環状に束ねた6胴型多胴(管部束体)構造であり、6本の管部14…に囲まれた中央の空洞部16が管部固定部材15の中心孔15aを通して軸心方向に連通している。図6(b)は、製紙スラッジSの造粒物を供給した同回転胴9が矢印C方向に回転している場合の、各管部14における該製紙スラッジSの積層・堆積状態を示している。
図7(a)に示す回転胴9は、12分割隔壁構造であり、二重管をなす内筒部17aと外筒部17bとの間の環状空間を12枚の隔壁17c…で放射状に仕切ることにより、12個の区分室18…を形成しており、内筒部17aの内側は空洞部16をなしている。図7(b)は、製紙スラッジSの造粒物を供給した同回転胴9が矢印C方向に回転している場合の、各区分室18における該製紙スラッジSの積層・堆積状態を示している。
これら図5〜図7に例示したように、横長の回転胴9を多分割構造や多胴(管部束体)多室構造とすれば、供給される製紙スラッジSが複数の区分室や胴部に少量ずつ分配されることになるから、全体が単一の炉内空間をなす単なる横円筒型の回転胴に比較して、当該回転胴9内の移送過程における被処理物(製紙スラッジS,焼成物)の堆積厚さが格段に小さくなると共に、回転胴9の回転に伴う被処理物の攪拌作用が強くなり、有機成分を燃焼させるための空気(酸素)と被処理物との接触効率が著しく向上し、もって有機成分の燃焼効率が飛躍的に高まり、高品質の焼成物ひいては無機粒子が得られる。
なお、このような多分割構造や管部束体(多胴)多室構造における移送経路の分割数は、上記の作用効果を充分に発揮させる上で、少なくとも6以上とすることが推奨される。また、回転胴の分割構造は、図5〜図7に例示した構造に限らず、例えば18分割型、24分割型、36分割型などの断面が三角形状の区分室に分割した多分割隔壁構造や、多胴型構造の各管状部材に対して隔壁あるいは仕切りを設けて、総分割数として6〜126分割した多胴・多分割構造とした回転胴構造など、種々の構造が可能である。更に、これらのような回転胴、および管状部材の内部を隔壁で複数の区分室に区画する構造の他に、隔壁に類似した形状の従動型攪拌翼を回転胴内、および管状部材内に非固定状態に挿入することにより、回転胴内を複数の区分室に分割し、該回転胴内に供給される製紙スラッジSを複数の区分室に分配させるようにしてもよい。
また、図6及び図7に示すように、軸心方向に沿う空洞部16を設けた多分割構造や多胴(管部束体)構造の回転胴9を採用する場合、外側からの間接的加熱に加えて、空洞部16を利用して内側(中心側)からも間接的加熱を行うようにすれば、より精度よく燃焼温度を制御できる上、より高い熱処理効率を達成できる。この内側からの間接的加熱手段としては、既述した外側からの間接的加熱手段と同様の種々の熱媒及び熱源を採用できる。
このように2段階の燃焼工程を有する熱処理を経て得られる無機粒子は、白色度が高く、且つ硬質の焼結物を含まないため、後に説明するように炭酸カルシウム、タルク、カオリン、焼成カオリン、二酸化チタン、サチンホワイト、シリカ等の無機顔料を必要に応じて混合し、最外層の塗被層の中の下塗り塗被層や上塗り塗被層の無機顔料として用いることができる。
本発明において、塗被層に含有する特定の再生顔料以外の顔料としては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、パルプ製造プロセスの苛性化工程から生成する炭酸カルシウム、タルク、カオリン、焼成カオリン、トリスルホアルミン酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、アルミナ珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、ベントナイト、ゼオライト、セリサイト、スクメタイト等の無機顔料や、密実型、中空型、貫通孔型のプラスチックピグメント、バインダーピグメント等の有機顔料等、通常の塗被紙分野に使用される顔料を使用することが可能であり、これらの中から1種あるいは2種以上を適宜選択して使用できる。
塗被層の接着剤成分には、通常は分散型接着剤を使用する。分散型接着剤としては、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体などの共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのビニル系重合体ラテックスなどを例示することができる。上記した分散型接着剤は、1種又は2種以上が使用可能であるが、何れの分散型接着剤を使用する場合でも、分散した接着剤粒子の粒子径は、50〜120nm、特に50〜100nmの範囲であることが好ましい。
塗被層の形成に使用する上記分散型接着剤は、重合時のモノマーとしてアクリロニトリルを10〜35質量%、特に20〜30質量%含有していることが好ましい。分散型接着剤のアクリロニトリル含有量が10質量%未満であると、形成された塗被層のインク溶剤吸収性を満足できるほど低下させることができず、これに原因して印刷光沢が損なわれる心配がある。一方、分散型接着剤のアクリロニトリル含有量が35質量%を超える場合は、乳化重合が難しくなり、このものに満足できる結合力(binding power)を期待することができない。
上記した分散型接着剤と共に少量の水溶性接着剤を併用することができる。水溶性接着剤としては、酸化澱粉、エステル化澱粉、冷水可溶性澱粉などの各種澱粉類、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白などの蛋白質類、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリビニルアルコールやその変性品などが例示できる。
塗被層が含有する接着剤成分の量は、水溶性接着剤を併用するか否かに拘わらず、塗被層に含まれる顔料成分100質量%当たり、5〜20質量%、特に8〜15質量%の範囲で選ばれる。接着剤成分の含有量が5質量%未満である場合は、結合力(binding power)が不足し、20質量%を超えた場合は、塗被層の平滑性を損なう心配がある。
水溶性接着剤を併用する場合は、その含有量を顔料成分100質量%当たり、特に8質量%以下とすることが好ましい。8質量%を超えると塗被層の平滑性が劣るため好ましくない。少量の水溶性接着剤を分散型接着剤と併用することは、塗被層を形成する塗被液(coating mixture)の増粘、保水に有効である。
本発明の塗被層には、必要に応じて、青系統あるいは紫系統の染料や有色顔料、蛍光増白染料、増粘剤、保水剤、酸化防止剤、老化防止剤、導電誘導剤、消泡剤、紫外線吸収剤、分散剤、pH調整剤、離型剤、耐水化剤、撥水剤等の各種助剤を適宜配合することができる。
原紙上に設ける塗被層は、一層とするか、或いは2層以上の多層にするかは特に限定はなく、多層の場合、全てが同一である必要はなく、要求される品質レベルに応じて適宜調整することが可能である。
また、塗被層の塗被量も、特に限定されるものではなく、塗被紙の白紙品質、印刷品質などに応じて調整することが可能であるが、一般には、片面あたり5〜40g/m程度である。
本発明における塗被層を設ける際の塗工方法については、通常の塗被紙製造分野で使用されている各種の塗工装置、例えばエアーナイフコーター、各種のブレードコーター、ゲートロールコーター、ロールコーター、ダイコーター、カーテンコーター等が適宜使用することができる。
本発明における原紙については、特に限定されるものではなく、下記の材料が本発明の所望の効果を妨げない範囲において適宜選択して使用される。
パルプとしては、例えば、一般に使用されているLBKPやNBKP等の漂白化学パルプ、砕木パルプ(GP)、加圧式砕木パルプ(PGW)、リファイナ砕木パルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の機械パルプ、脱墨古紙パルプ(DIP)、損紙などが適宜混合使用される。また、ケナフ等の非木材繊維原料から得られるパルプ繊維、合成パルプ、無機繊維等の1種又は2種以上を原紙に配合することもできる。機械パルプやDIPは、必要に応じて漂白して使用することもでき、漂白の程度も任意に行うことができる。なお、パルプの漂白には、塩素ガスのような分子状塩素や二酸化塩素のような塩素化合物を使用しない漂白工程を採用することが、環境保全の観点から好ましく、このような漂白工程を経たパルプとしては、ECFパルプやTCFパルプを挙げることができる。
原紙に内添される填料としては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、石膏、タルク、カオリン、クレー、焼成カオリン、ホワイトカーボン、非晶質シリカ、デラミネートカオリン、ケイソウ土、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛等の無機顔料や尿素ホルマリン樹脂微粒子、微小中空粒子等の有機顔料等が例示でき、古紙や損紙等に含まれる填料も再使用できる。なお、前述の再生無機粒子も使用することが可能である。填料は2種以上の混合使用も可能である。填料の配合量は、一般に、紙(原紙)灰分が3〜20質量%の範囲となるように添加される。
なお、原紙中にはパルプや填料の他に、内添サイズ剤、アニオン性、ノニオン性、カチオン性あるいは両性の歩留り向上剤、濾水性向上剤、紙力増強剤等で例示される各種の抄紙用内添助剤を、必要に応じて添加することができる。内添サイズ剤の具体例としては、例えば、アルキルケテンダイマー系、アルケニル無水コハク酸系、スチレン−アクリル系、高級脂肪酸系、石油樹脂系サイズ剤、ロジン系サイズ剤等が挙げられる。また、歩留り向上剤、濾水性向上剤、紙力増強剤の具体例としては、例えば、アルミニウム等の多価金属化合物(具体的には、硫酸バンド、塩化アルミニウム、アルミン酸ソーダ、塩基性アルミニウム化合物等)、各種澱粉類、ポリアクリルアミド、尿素樹脂、ポリアミド・ポリアミン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアミン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド等が例示できる。
本発明の塗被紙に使用する原紙の坪量は、一般的には、30〜400g/m程度の範囲に適宜調整する。また、原紙の抄造条件は特に限定はない。抄紙機としては、例えば、長網式抄紙機、ギャップフォーマー型抄紙機、円網式抄紙機、短網式抄紙機等の商業規模の抄紙機が、目的に応じて適宜選択して使用できる。抄紙方式としては、酸性抄紙、中性抄紙、弱アルカリ性抄紙等のいずれの方式を用いてもよい。原紙上に各種サイズプレス機およびロールコーターなどで澱粉等の天然接着剤やポリビニルアルコール等の合成接着剤を用いてサイズ処理を行なうことも可能であり、本発明の原紙とはサイズ処理をおこなう場合は、サイズ処理後の原紙を意味するものである。
このようにして得られた塗被紙は、各種公知公用の仕上げ装置、例えばスーパーカレンダ、グロスカレンダ、ソフトカレンダ等に通紙して製品仕上げを施してもよい。
[実施例、比較例]
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、勿論、本発明はそれらに限定されるものではない。なお、特に断らない限り、例中の部および%はそれぞれ質量部、および質量%を示す。また、実施例や比較例で使用した顔料の平均粒子径は以下の方法で測定した。
(レーザー回折散乱法による再生顔料の粒子径測定)
日機装社製のマイクロトラックHRAを使用して、再生顔料の粒度分布を測定し、平均粒子径は粗粒子分からの累積質量が50%に相当する点での粒子径で求めた。
(pH測定方法)
以下に示す実施例や比較例において、再生顔料スラリーのpHは以下の方法により測定した。
ラコムテスターpH計(pHScanWPBN型、アズワン製)を使用し、各種分散液および塗被液中に直接pH電極を浸漬させて顔料分散液のpHを測定した。なお、pH測定に使用したpH計については、NIST基準校正液(pH6.86、およびpH9.18の2種類)を用いてpH校正を行なった後にpH測定を行なった。
(スラッジ焼成物、および再生無機粒子の白色度の測定)
サンプル(乾燥物)を約10g、乳鉢で粗い粒子がなくなるまですりつぶしたのち、粉体試料成形機(理学電機工業株式会社製、Cat9302/30)を用いて、圧力100kNにて30秒加圧して粉体試料成形した。成形したサンプルの白色度を、分光白色度測色計(スガ試験機社製SC−10WP型)を使用し、JIS P8148(2001年)に準拠し、測定した。
[X線回折の測定]
試料を乳鉢で粗い粒子がなくなるまですりつぶし、株式会社マックサイエンス社製MO3XHFを用いて、測定条件40KV、20mA、測定範囲:5〜50度で測定した。
[燃焼処理後の炭酸カルシウム分解率]
各実施例について、熱処理後の炭酸カルシウム分解率を、以下i)〜vi)の手順にて熱処理処理前のペーパースラッジ中の炭酸カルシウムとスラッジ焼成物中の残存炭酸カルシウム成分の量等を求めて評価した。
i)カルサイト炭酸カルシウムの検量線の作成
結晶構造がカルサイトの炭酸カルシウム(奥多摩工業社製 タマパール222H)に対して、内部標準物質として酸化亜鉛(キシダ化学社製 試薬特級)を、重量比1:5、1:1、5:1となるようにそれぞれ混合した。次いで、各混合物について、乳鉢を用いて充分に磨り潰したのちに、X線回折装置(マックスサイエンス社製 MO3XHF)を用いて、40KV、20mA、回折角測定範囲5〜50度の条件で測定し、カルサイト炭酸カルシウムと酸化亜鉛のそれぞれのX線回折100%ピーク面積を基にして、カルサイト炭酸カルシウムの検量線を作成した。
ii)アラゴナイト炭酸カルシウムの検量線の作成
結晶構造がアラゴナイトの炭酸カルシウム(奥多摩工業社製タマパール123)を用いた以外は、前記カルサイト炭酸カルシウムの検量線作成と同様にして、アラゴナイト炭酸カルシウムの検量線を作成した。
iii)燃焼処理前のペーパースラッジ中の炭酸カルシウムの定量
秤量した絶乾のペーパースラッジに対して、秤量した酸化亜鉛(試薬特級 前出)を添加混合した。次いで、該混合物について、乳鉢を用いて充分に磨り潰したのちに、X線回折装置(MO3XHF 前出)を用いて、40KV、20mA、回折角測定範囲5〜50度の条件で測定し、酸化亜鉛に対するカルサイト炭酸カルシウム及びアラゴナイト炭酸カルシウムのX線回折100%ピーク面積を求め、前記した各炭酸カルシウムの検量線を基にして、製紙スラッジ1g中に含まれる炭酸カルシウム量(g)を算出した。
iv)ペーパースラッジの灰分の測定
秤量した絶乾のペーパースラッジを、マッフル炉にて350℃、30分で燃焼処理し、得られたスラッジ焼成物の重量を秤量し、下式によってスラッジの灰分含有量(%)を測定した。
灰分含有量(%)=(スラッジ焼成物重量/絶乾の製紙スラッジ重量)×100
v)スラッジ焼成物中の炭酸カルシウムの定量
秤量したスラッジ焼成物に対して、秤量した酸化亜鉛(試薬特級 前出)を添加混合した。次いで、該混合物について、乳鉢を用いて充分に磨り潰したのちに、X線回折装置(MO3XHF 前出)を用いて、40KV、20mA、回折角測定範囲5〜50度の条件で測定し、酸化亜鉛に対するカルサイト炭酸カルシウム及びアラゴナイト炭酸カルシウムのX線回折100%ピーク面積を求め、前記した各炭酸カルシウムの検量線を基にして、スラッジ焼成物1g中に含まれる炭酸カルシウム量(g)を算出した。
vi)燃焼処理後の炭酸カルシウムの分解率
スラッジ焼成物1g中の炭酸カルシウム量(g)をA、製紙スラッジ1g中の炭酸カルシウム量(g)をB、灰分含有量(%)をCとし、下式によって燃焼処理後の炭酸カルシウムの分解率を算出した。
炭酸カルシウム分解率(%)=100−〔A×(C/100)〕÷B×100
製造例1
[スラッジ]
洋紙、板紙の抄紙機および塗工機、さらに脱墨パルプ化設備を有する製紙工場の廃水を廃水処理クラリファイヤーで分離して得られた固形分および活性汚泥処理などの余剰汚泥からなる製紙スラッジを原料とし、脱水機を用いて固形分約50%まで脱水を行った。
この製紙スラッジの無機分は65%で、その組成は炭酸カルシウム55%、カオリン40%、タルク5%であった。
[乾燥・造粒工程]
脱水した製紙スラッジを、回転乾燥機を用いて、固形分約75%になるように乾燥し、次いでディスクペレッターを用いて直径約12mm、長さ約15mmのペレットに造粒成形した。
[燃焼工程](炉内リフター付、一次炉→二次炉)
燃焼処理は、外熱式回転キルン炉(高砂工業製の外熱式ロータリーキルン、加熱部分:回転胴の径300mm,長さ2400mm、リフター付)を用いて行った。
原料の製紙スラッジ造粒物を25Kg/hの速度で供給し、スラッジ温度を600℃、加熱部分に30分(キルン傾斜:2%、回転数:1.6rpm)滞留させ、燃焼排ガスを原料供給側から50Nm3/hで排出し、これに伴う減圧作用で排気口から排出される排ガスと同量の外気を給気口から吸入し、もって回転胴内全体を常に過剰空気雰囲気に維持し、一次燃焼物を調製した。調製した一次燃焼物を、再度、回転キルン炉に供給し、一次処理燃焼物温度を800℃、加熱部分に80分(キルン傾斜:1%、回転数:1.5rpm)滞留させ、燃焼排ガスを25Nm3/hで排出し、焼成物を得た。
この燃焼処理で得られた焼成物の組成をX線回折によって調べた結果、硬質の高温焼結物(ゲーレナイト)は含まれておらず、燃焼処理前の製紙スラッジに含有されていた炭酸カルシウムは全て分解されていた。また、炭酸カルシウム以外の成分では、カオリンが全て非晶質成分に変化していたが、タルクは全く変化していなかった。
[懸濁化・炭酸化工程]
次いで、前記燃焼処理によって得られた焼成物を懸濁液化槽(消和槽)を用いて60℃の温水と混合し、この懸濁液化槽の温度を60℃に保持しながら60分間攪拌して、固形分濃度が約10%の焼成物懸濁液を調製した。そして、この焼成物懸濁液10kgを炭酸化反応槽に仕込み、この炭酸化反応槽の温度を70℃に保持しつつ、懸濁液中に10容量%の二酸化炭素含有ガスを20リットル/分で吹き込みながら120分間攪拌を行って炭酸化処理した。この炭酸化処理後の無機粒子の組成をX線回折で調べた結果、燃焼処理によって分解された炭酸カルシウムが炭酸カルシウムに転化していた。
[脱水・分散・粉砕工程]
次に、前記炭酸化処理にて得られた炭酸化処理物の懸濁液をフィルタープレスで脱水処理し、得られた固形分濃度が約48%のケーキ状の炭酸化処理物をコーレスミキサーにて水に分散させることにより、固形分濃度が約46%の白色度82の無機粒子スラリーを調製した。なお、この分散させる水には、分散剤としてポリアクリル酸系分散剤(商品名:アロンT−50、東亜合成株式会社製)を炭酸化処理物の固形分100質量%に対して1.5質量%添加した。そして、最後にサンドグラインダーを用いて上記の無機粒子スラリーを平均粒子径1.5μmまで湿式粉砕し、塗工用顔料に適した微粒子状の白色度82%の再生顔料を得た。この再生顔料スラリーのpHは9.8であった。
製造例2
燃焼工程を変更し、粉砕後の無機粒子の平均粒子径を1.3μmとした以外は製造例1と同様にして行った。なお、粉砕工程後の無機粒子の白色度は82であった。
[燃焼工程](炉内6分割、一次炉→二次炉)
燃焼処理は、外熱式回転キルン炉(高砂工業製の外熱式ロータリーキルン、加熱部分:回転胴の径300mm,長さ2400mm、炉内6分割)を用いて行った。
原料の製紙スラッジ造粒物を60Kg/hの速度で供給し、スラッジ温度を600℃、加熱部分に30分(キルン傾斜:2%、回転数:1.6rpm)滞留させ、燃焼排ガスを原料供給側から120Nm3/hで排出し、これに伴う減圧作用で排気口から排出される排ガスと同量の外気を給気口から吸入し、もって回転胴内全体を常に過剰空気雰囲気に維持し、一次燃焼物を調製した。調製した一次燃焼物を、再度、回転キルン炉に供給し、一次処理燃焼物温度を800℃、加熱部分に80分(キルン傾斜:1%、回転数:1.5rpm)滞留させ、燃焼排ガスを60Nm3/hで排出し、焼成物を得た。
製造例3
燃焼工程を変更し、粉砕後の無機粒子の平均粒子径を2.3μmとした以外は製造例1と同様にして行った。なお、粉砕工程後の無機粒子の白色度は78であった。
[燃焼工程](炉内分割なし、一段)
燃焼処理は、外熱式回転キルン炉(高砂工業製の外熱式ロータリーキルン、加熱部分:回転胴の径300mm,長さ2400mm)を用いて行った。
原料の製紙スラッジ造粒物を10Kg/hの速度で供給した。スラッジ温度が750℃、加熱部分に150分(キルン傾斜:1%、回転数:0.9rpm)になるように滞留させ、燃焼排ガスを原料供給側から20Nm3/hで排出し、これに伴う減圧作用で排気口から排出される排ガスと同量の外気を給気口から吸入し、もって回転胴内全体を常に過剰空気雰囲気に維持し、焼成物を得た。
製造例4
粉砕後の無機粒子の平均粒子径を2.8μmとした以外は製造例3と同様にして行った。なお、粉砕工程後の無機粒子の白色度は78であった。
製造例5
燃焼工程を変更し、粉砕後の無機粒子の平均粒子径を2.3μmとした以外は実施例1と同様にして行った。なお、粉砕工程後の無機粒子の白色度は72であった。
[燃焼工程](炉内分割なし、一段、並流)
燃焼処理は、外熱式回転キルン炉(高砂工業製の外熱式ロータリーキルン、加熱部分:回転胴の径300mm,長さ2400mm)を用いて行った。
原料の製紙スラッジ造粒物を10Kg/hの速度で供給した。スラッジ温度が750℃、加熱部分に150分(キルン傾斜:1%、回転数:0.9rpm)になるように滞留させ、燃焼排ガスを焼成物排出側から20Nm3/hで排出し、これに伴う減圧作用で排気口から排出される排ガスと同量の外気を給気口から吸入し、もって回転胴内全体を常に過剰空気雰囲気に維持し、焼成物を得た。
実施例1
(塗被液の調製)
製造例1で得た再生顔料20質量%、エンジニアードカオリン(商品名:パラプリント、PPSA社製)15質量%、微粒カオリン(商品名:ミラグロスJ、エンゲルハード社製)45質量%、重質炭酸カルシウム(商品名:ハイドロカーブK−9、備北粉化工業社製)18質量%、中空プラスチックピグメント(商品名:AE851、JSR社製)2質量%からなる顔料スラリーを調製した。このスラリーに、顔料100質量%に対して、酸化澱粉(商品名:エースB、王子コーンスターチ社製)0.5質量%、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:T2628G、JSR社製)8質量%(いずれも固形分換算)、さらに、助剤として消泡剤及び染料を添加し、最終的に固形分濃度60%の塗被液を調製した。
(グラビア印刷用塗被紙の作製)
緊度が0.75g/cmである上質原紙(米坪43.0g/m)の両面に、前記塗被液を片面当たりの乾燥質量が12g/mとなるようにブレードコーターを使用して塗工し、これを乾燥して塗被層を設けた。このようにして得られた塗被紙を、温度70℃、線圧200KN/mでスーパーカレンダに通紙して、塗被紙を得た。
実施例2
塗被液を変更した以外は実施例1と同様にして行った。
(塗被液の調製)
再生顔料30質量%、エンジニアードカオリン(商品名:パラプリント、前出)15質量%、微粒カオリン(商品名:ミラグロスJ、前出)40質量%、重質炭酸カルシウム(商品名:ハイドロカーブK−9、前出)13質量%、中空プラスチックピグメント(商品名:AE851、前出)2質量%からなる顔料スラリーを調製した。このスラリーに、顔料100質量%に対して、酸化澱粉(商品名:エースB、前出)0.5質量%、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:T2628G、前出)8質量%(いずれも固形分換算)、さらに、助剤として消泡剤及び染料を添加し、最終的に固形分濃度58%の塗被液を調製した。
実施例3
塗被液を変更した以外は実施例1と同様にして行った。
(塗被液の調製)
再生顔料40質量%、エンジニアードカオリン(商品名:パラプリント、前出)10質量%、微粒カオリン(商品名:ミラグロスJ、前出)35質量%、重質炭酸カルシウム(商品名:ハイドロカーブK−9、前出)13質量%、中空プラスチックピグメント(商品名:AE851、前出)2質量%からなる顔料スラリーを調製した。このスラリーに、顔料100質量%に対して、酸化澱粉(商品名:エースB、前出)0.5質量%、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:T2628G、前出)8質量%(いずれも固形分換算)、さらに、助剤として消泡剤及び染料を添加し、最終的に固形分濃度56%の塗被液を調製した。
実施例4
製造例2の再生顔料を用いた以外は実施例1と同様にして行った。
参考例1
製造例3の再生顔料を用いて、塗被液を変更した以外は実施例1と同様にして行った。
(塗被液の調製)
製造例3で得た再生顔料15質量%、エンジニアードカオリン(商品名:パラプリント、前出)20質量%、微粒カオリン(商品名:ミラグロスJ、前出)45質量%、重質炭酸カルシウム(商品名:ハイドロカーブK−9、前出)18質量%、中空プラスチックピグメント(商品名:AE851、前出)2質量%からなる顔料スラリーを調製した。このスラリーに、顔料100質量%に対して、酸化澱粉(商品名:エースB、前出)0.5質量%、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:T2628G、前出)8質量%(いずれも固形分換算)、さらに、助剤として消泡剤及び染料を添加し、最終的に固形分濃度60%の塗被液を調製した。
参考例2
製造例4の再生顔料を用いた以外は参考例1と同様にして行った。
実施例5
製造例1の再生顔料を用いて、塗被液を変更した以外は実施例1と同様にして行った。
(塗被液の調製)
製造例1で得た再生顔料60質量%、微粒カオリン(商品名:ミラグロスJ、前出)23質量%、重質炭酸カルシウム(商品名:ハイドロカーブK−9、前出)15質量%、中空プラスチックピグメント(商品名:AE851、前出)2質量%からなる顔料スラリーを調製した。このスラリーに、顔料100質量%に対して、酸化澱粉(商品名:エースB、前出)0.5質量%、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:T2628G、前出)8質量%(いずれも固形分換算)、さらに、助剤として消泡剤及び染料を添加し、最終的に固形分濃度60%の塗被液を調製した。
参考例3
製造例の再生顔料を用いた以外は実施例3と同様にして行った。
比較例1
実施例1で使用した顔料成分を、エンジニアードカオリン(商品名:パラプリント、前出)35質量%、微粒カオリン(商品名:ミラグロスJ、前出)45質量%、重質炭酸カルシウム(商品名:ハイドロカーブK−9、前出)18質量%、中空プラスチックピグメント(商品名:AE851、前出)2質量%とし、実施例1と同様にしてグラビア印刷用塗被紙を得た。
比較例2
実施例1で使用した顔料成分を、再生顔料3質量%、エンジニアードカオリン(商品名:パラプリント、前出)32質量%、微粒カオリン(商品名:ミラグロスJ、前出)45質量%、重質炭酸カルシウム(商品名:ハイドロカーブK−9、前出)18質量%、中空プラスチックピグメント(商品名:AE851、前出)2質量%とし、実施例1と同様にしてグラビア印刷用塗被紙を得た。
参考例4
実施例1で使用した顔料成分を、焼成カオリン(商品名:アンシレックス、前出)10質量%、エンジニアードカオリン(商品名:パラプリント、前出)20質量%、微粒カオリン(商品名:ミラグロスJ、前出)50質量%、重質炭酸カルシウム(商品名:ハイドロカーブK−9、前出)18質量%、中空プラスチックピグメント(商品名:AE851、前出)2質量%とし、実施例1と同様にしてグラビア印刷用塗被紙を得た。
グラビア印刷用塗被紙の品質評価
実施例及び比較例で得た各印刷用塗被紙の品質を、下記の項目で評価した。評価は、特に記載ない限り、23℃、50RH%の環境下で行った。結果を表1に示す。
(塗被紙のPPS平滑度)
パーカープリントサーフ(PPS)表面平滑度試験機(機種名:MODEL M−569型、MESSMER BUCHEL社製、英国)を用い、バッキングディスク:ソフトラバー、クランプ圧力:0.98MPaで5回平滑度測定を行ない、その平均を求めた。
(不透明度)
JIS P 8149(2000年)に準拠し、分光白色度測色計(スガ試験機社製SC−10WP型)により測定した。
(ミッシングドット評価)
大蔵省グラビア印刷試験機を用いてグラビア印刷を行い、網点の欠落(ミッシングドット)の度合いを目視評価した。
◎:網点の欠落がない
○:階調部分(低階調部)によっては、やや網点の欠落が認められる。
△:高階調部分にも若干の網点の欠落が認められる。
×:全階調部分に網点の欠落が数多く認められる。
Figure 0004952540
Figure 0004952540
本発明で好適に用いられる再生顔料となるスラッジを原料とする無機粒子の製造方法の基本フローシートを示す図。 本発明の熱処理工程に使用される間接的加熱型ロータリンキルンを使用した熱処理装置の一例の構成図。 本発明の熱処理工程に使用される間接的加熱型ロータリンキルンを使用した熱処理装置の他の一例の構成図。 本発明の実施形態に用いるひとつの構成例である間接的加熱型のキルン炉を模式的に示す縦断側面図面図。 同回転キルン炉に用いる6分割隔壁構造の回転胴を示す径方向断面図。 同回転キルン炉に用いる6胴型多胴構造の回転胴を示す径方向断面図。 同回転キルン炉に用いる12分割隔壁構造の回転胴を示す径方向断面図。
符号の説明
1 間接的加熱型ロータリーキルン
2 供給ホッパ(スラッジ供給口)
4 排気ファン
8 スラッジ排出口

Claims (9)

  1. 原紙の少なくとも片面に、顔料と接着剤を主成分とする塗被層を1層以上設けたグラビア印刷用塗被紙の製造方法において、前記塗被層中に製紙スラッジを燃焼処理して得られる再生顔料を5質量%以上含有し、前記再生顔料が、製紙スラッジを原料とし、筒型熱処理炉内を移送しつつ燃焼処理を施して製造されたものであって、燃焼処理が、過剰空気雰囲気下、スラッジ温度650℃以下でスラッジ中の易燃焼性有機成分を燃焼除去する一次燃焼工程と、スラッジ温度700〜850℃でスラッジ中の難燃焼性有機成分を燃焼除去する二次燃焼工程との、少なくとも2段階の燃焼工程を経ることによって行われるものであることを特徴とするグラビア印刷用塗被紙の製造方法
  2. 前記再生顔料のレーザー回折散乱法により測定した平均粒子径(D50)が2.5μm以下である請求項1記載のグラビア印刷用塗被紙の製造方法
  3. 前記グラビア印刷用塗被紙の不透明度がJIS P 8149:2000に基づいて87%以上である請求項1または2項に記載のグラビア印刷用塗被紙の製造方法
  4. 前記再生顔料が、筒型熱処理炉の筒方向の端部に設置されるスラッジ供給口から供給し、該スラッジ供給口に対して筒軸方向について反対側の端部に設置されるスラッジ排出口から取り出す間に空気雰囲気下で間接的加熱方法により燃焼処理して得られる再生顔料である請求項1から3のいずれか一項に記載のグラビア印刷用塗被紙の製造方法
  5. 前記燃焼処理が、筒型熱処理炉の一端のスラッジ供給口側から炉内空気を強制的に排出することにより、同他端の焼成物排出口側から空気を炉内へ吸入することによって行われるものである、請求項1から4のいずれか一項に記載のグラビア印刷用塗被紙の製造方法
  6. 前記燃焼処理が、筒型熱処理炉の内部が分割されたものによって行われるものである、請求項1から5のいずれか一項に記載のグラビア印刷用塗被紙の製造方法
  7. 前記再生顔料が、原料の製紙スラッジを造粒または塊状に成形した後に燃焼処理が行われて製造されたものである、請求項1からのいずれか一項に記載のグラビア印刷用塗被紙の製造方法
  8. 前記再生顔料が、燃焼処理後の焼成物を水に混合して懸濁液とする懸濁液化工程と、この懸濁液に二酸化炭素を接触させて炭酸化処理物を得る炭酸化処理工程と、該炭酸化処理物を粉砕する粉砕工程によって製造されたものである請求項1からのいずれか一項に記載のグラビア印刷用塗被紙の製造方法
  9. 前記再生顔料が、前記燃焼処理工程中で、製紙スラッジ中の炭酸カルシウムが50%を越えて分解している焼成物から得た再生顔料である請求項1からのいずれか一項に記載のグラビア印刷用塗被紙の製造方法
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