JP2012241304A - 印刷用塗工紙およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】コストを抑制しつつ、印刷平滑や印刷光沢に優れた高品質な印刷用塗工紙およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 原紙の少なくとも片面に、顔料と接着剤を主成分とする塗工層を2層以上設ける際に、原紙に接する塗工層をフィルムトランスファー方式で塗工し、片面の塗工量を1〜10g/m2とし、塗工層中には、製紙スラッジを含む原料を乾燥後、焼成する熱処理工程と、二酸化炭素を含有するガスを接触させる炭酸化工程と、炭酸化した懸濁液を濃縮脱水する脱水工程と、得られた脱水濃縮物を分散させる分散工程を経て得られた沈降嵩が0.6〜0.8cc/gの無機粒子を顔料100質量部に対して、10質量部以上含有させ、接着剤としてラテックスと澱粉の質量比が、1:0.5〜1:10として製造する印刷用塗工紙。
【選択図】 なし

Description

本発明は、顔料と接着剤を主成分とする塗工層を2層以上有する印刷用塗工紙に係わり、より詳しくは、原紙と接する塗工層をフィルムトランスファー方式で塗工し、不透明度、平滑性、印刷適性に優れる印刷用塗工紙の製造方法およびその塗工紙に関するものである。
一般に印刷用塗工紙は、原紙上に顔料と接着剤を主成分とする塗工紙を塗工乾燥して製造され、塗工液の塗工量や塗工紙の仕上げ方法によって、キャストコート紙、アート紙、コート紙、微塗工紙に分類される。これら塗工紙は、これに多色印刷又は単色印刷を施して、チラシ、パンフレット、ポスター等の商業用印刷物として、あるいは書籍、雑誌等の出版物として広く利用されている。近年は、印刷物のビジュアル化、カラー化が進み、印刷用塗工紙の高品質化の要求が高まっており、白紙光沢度、平滑度、白色度等の白紙品質、および印刷平滑性等の印刷仕上がりにおける外観等の品質が重要視されている。
塗工紙の製造方法としては、抄紙と塗工を別々に行うオフマシン方式と、一台のマシンで抄紙と塗工を連続して行うオンマシン方式があり、オンマシン方式の方がオフマシン方式より低コストで効率的な生産が可能である。オンマシン方式による塗工方式としては、主にフィルムトランスファー方式とブレード方式とがある。フィルムトランスファー方式は、計量されたアプリケーターロール上の塗工液を原紙に転写する方式であり、塗工時に原紙にかかる負荷がブレード方式と比較して相対的に小さいため、操業時の
断紙トラブル等が少ないという利点がある。フィルムトランスファー方式は、ゲートロールコーターやロッドメタリングコーター等があり、種々の製品要求品質に対応が容易であることから、オンマシンでのサイズ剤塗工設備や顔料塗工設備として多用されている。
しかし、フィルムトランスファー方式は、アプリケーターロール上の塗工液が原紙へ転写する際の転写性に限界があるため、ブレード塗工と比較して高塗工量を得ることが困難であるといった問題があり、十分な平滑性を得ることができず、印刷仕上がりが劣るといった問題がある。
そこで、フィルムトランスファー方式での印刷適性を向上させる方法が多数検討されている。たとえば、特許文献1には、低粘度の澱粉系接着剤を使用し、顔料塗工液の濃度を58%以上にすることで高塗工量を得られることが開示されている。
また、フィルムトランスファー方式で塗布される塗工層に使用される顔料を特定することで印刷適性、不透明度を向上させる方法として、特許文献2には米粒状の軽質炭酸カルシウム、また、特許文献3には針状または柱状軽質炭酸カルシウムが開示されている。
さらに、特許文献4には特定粒子径の無機顔料、例えば、エンジニアードカオリンや大粒子径カオリンを含有した塗工紙、特許文献5には特定のデラミネーテッドカオリンを含有した塗工紙、特許文献6にはトリスルホアルミン酸カルシウムを含有した塗工紙が開示されている。
近年、製紙工場から製紙スラッジ、即ち、パルプ化工程、紙製造工程、古紙再生工程などの製紙工場の各種工程から排出される廃水に、凝集・沈殿・濃縮・脱水等の工程を適宜組合せて行って、各廃水が含有する固形分を回収したものが大量に発生しており、特に、古紙利用率の高まりとともに、古紙の脱墨工程由来の製紙スラッジが多くなってきている。これら製紙スラッジの処理費用は年々高騰し、紙パルプ工業の収益を圧迫しており、その有効活用が強く求められている。このため、製紙スラッジ焼却灰(無機物)を塗工用顔料として、再利用することが出来れば、産業廃棄物の削減のみならず、古紙利用率の向上にも結びつけることができ、環境対策上の問題も解消することができる。
これら製紙スラッジ焼成灰をフィルムトランスファー方式で塗工した塗工紙として、特許文献7には焼成灰を軽質炭酸カルシウムで被覆した粒子を含有した塗工紙、特許文献8〜9には炭化・焼成処理した焼成灰を含有した塗工紙、特許文献10には接着剤として澱粉とPVAを用い、再生粒子凝集体を含有した塗工紙が開示されている。
特許第2737897号公報 特開2000−110092号公報 特開2000−199197号公報 特開2005−89868号公報 特開2007−46218号公報 特開2007−63737号公報 特開2002−233851号公報 特開2003−119695号公報 特開2004−176209号公報 特許第3969596号公報
引用文献1記載の方法によれば、塗工量を多くすることができ、平滑性は向上するが、使用している澱粉系接着剤が低粘度のため、フィルムトランスファー方式で塗布後、塗工層中で澱粉系接着剤がマイグレーションを起こし、印刷ムラを発生させる恐れがある。
引用文献2、3に記載の方法のように、軽質炭酸カルシウムを使用したのでは、十分な平滑性を得ることができず、引用文献4〜6に記載の方法で使用されている顔料を用いることで、印刷適性は向上するが、価格高いといった欠点がある。
引用文献7記載の方法では、軽質炭酸カルシウムと同等な効果しか得ることができないため、十分な平滑性を得ることができない。引用文献8〜10に記載の方法では、製紙スラッジの焼成灰をそのまま使用するため、焼成工程で炭酸カルシウムが分解で生じた遊離カルシウムの影響により塗工液が固化するため、塗工液濃度を低濃度で調製せざるを得なくなり、操業性が低下したり、塗工紙の品質が低下するといった問題がある。
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、フィルムトランスファー方式で塗工し、印刷適性に優れ、なおかつ安価な塗工紙を製造するべく、製紙スラッジを塗工用顔料として含有した塗工紙の製造方法を提供することを目的としている。
本発明は「原紙の少なくとも片面に、顔料と接着剤を主成分とする塗工層を2層以上設けた印刷用塗工紙であって、原紙に接する塗工層がフィルムトランスファー方式で塗工され、片面の塗工量が1〜10g/mで、前記フィルムトランスファー方式で塗工された塗工層中に、製紙スラッジを含む原料を乾燥後、焼成する熱処理工程と、二酸化炭素を含有するガスを接触させる炭酸化工程と、炭酸化した懸濁液を濃縮脱水する脱水工程と、得られた脱水濃縮物を分散させる分散工程と、分散物を粉砕する粉砕工程を経て得られた沈降嵩が0.6〜0.8cc/gの無機粒子を顔料100質量部に対して、10質量部以上含有し、接着剤としてラテックスと澱粉を含み、ラテックスと澱粉の質量比が、1:0.5〜1:10であることを特徴とする印刷用塗工紙。」を要旨とする。
本発明の接着剤量は、塗工層中の顔料100質量部に対して、20質量部以上含有することが好ましい。
本発明で係わる無機粒子の分散工程で用いる分散機は、混合容器を自転させ、攪拌工具を別駆動で回転させる構造を有することが好ましく、攪拌周速10m/s以上であることが好ましい。
本発明において、熱処理工程で得られた焼成物と水と混合する懸濁工程から炭酸化工程開始までの時間が、6時間以下であり、懸濁工程開始から炭酸化工程終了までの間の懸濁液の温度を70℃以下に制御することが好ましい。
本発明の燃焼工程は、下記の条件の一次燃焼工程および二次燃焼工程を含むことが好ましい。
一次燃焼工程:加熱炉内に強制的に空気を導入しつつ、650℃以下の温度で原料を加熱する工程
二次燃焼工程:加熱炉内に強制的に空気を導入しつつ、700〜850℃の温度で原料を加熱する工程
本発明の原紙の古紙配合率は、60〜100%であることが好ましい。
本発明において、製紙スラッジを含む原料を乾燥後、焼成する前に、スラッジの大きさ(造粒径)をφ1〜25mmにする工程を含むことが好ましい。
本発明によれば、その大半が産業廃棄物として処分されている製紙スラッジを燃焼して得た焼成物を処理することで、高品質な塗工用顔料に再生できるため、フィルムトランスファー塗工方式で、高品質な印刷用塗工紙を製造することが可能である。
筒型熱処理炉(回転キルン炉)の一例 排ガスの再利用方法の例を示す図
本発明に係わる印刷用塗工紙は、原紙に接する塗工層(以下、下塗り層)がフィルムトランスファー方式で塗工され、該下塗り層上に塗工層が設けられている。該下塗り層中に、製紙スラッジで構成される原料を熱処理して焼成物を得る熱処理工程と、二酸化炭素を含有するガスを接触させる炭酸化工程と、炭酸化した懸濁液を濃縮脱水する脱水工程と、得られた脱水濃縮物を分散させる分散工程と、分散物を粉砕する粉砕工程を経て得られた無機粒子を顔料として含有するものである。これにより、原紙表面が十分に被覆され、平滑性が向上し、優れた印刷適性を有する塗工紙となる。
(原紙)
本発明の塗工紙に用いられる原紙については、特に限定されるものではなく、下記の材料が本発明の所望の効果を妨げない範囲において適宜選択して使用される。
パルプとしては、例えば、一般に使用されているLBKPやNBKP等の漂白化学パルプ、砕木パルプ(GP)、加圧式砕木パルプ(PGW)、リファイナ砕木パルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の機械パルプ、脱墨古紙パルプ(DIP)、損紙などが適宜混合使用される。また、ケナフ等の非木材繊維原料から得られるパルプ繊維、合成パルプ、無機繊維等の1種又は2種以上を原紙に配合することもできる。機械パルプやDIPは、必要に応じて漂白して使用することもでき、漂白の程度も任意に行うことができる。なお、パルプの漂白には、塩素ガスのような分子状塩素や二酸化塩素のような塩素化合物を使用しない漂白工程を採用することが、環境保全の観点から好ましく、このような漂白工程を経たパルプとしては、ECFパルプやTCFパルプを挙げることができる。また、古紙パルプを多く用いた紙基材の使用は環境面から好ましく、更に言えば、60質量%以上古紙パルプを配合すると、環境面への効果が大きい。
原紙に内添される填料としては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、石膏、タルク、カオリン、クレー、焼成カオリン、ホワイトカーボン、非晶質シリカ、デラミネートカオリン、ケイソウ土、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛等の無機顔料や尿素ホルマリン樹脂微粒子、微小中空粒子等の有機顔料等が例示でき、古紙や損紙等に含まれる填料も再使用できる。製紙スラッジを原料とした無機粒子も使用することが可能である。填料は2種以上の混合使用も可能である。填料の配合量は、紙(原紙)灰分が3〜20質量%の範囲となるように添加される。
なお、原紙中にはパルプや填料の他に、内添サイズ剤、アニオン性、ノニオン性、カチオン性あるいは両性の歩留り向上剤、濾水性向上剤、紙力増強剤等で例示される各種の抄紙用内添助剤を、必要に応じて添加することができる。内添サイズ剤の具体例としては、例えば、アルキルケテンダイマー系、アルケニル無水コハク酸系、スチレン−アクリル系、高級脂肪酸系、石油樹脂系サイズ剤、ロジン系サイズ剤等が挙げられる。また、歩留り向上剤、濾水性向上剤、紙力増強剤の具体例としては、例えば、アルミニウム等の多価金属化合物(具体的には、硫酸バンド、塩化アルミニウム、アルミン酸ソーダ、塩基性アルミニウム化合物等)、各種澱粉類、ポリアクリルアミド、尿素樹脂、ポリアミド・ポリアミン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアミン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド等が例示できる。
本発明の塗工紙に使用する原紙の坪量は、一般的には、30〜400g/m程度の範囲に適宜調整する。また、原紙の抄造条件は特に限定はない。抄紙機としては、例えば、長網式抄紙機、ギャップフォーマー型抄紙機、円網式抄紙機、短網式抄紙機等の商業規模の抄紙機が、目的に応じて適宜選択して使用できる。抄紙方式としては、酸性抄紙、中性抄紙、弱アルカリ性抄紙等のいずれの方式を用いてもよい。
本発明のフィルムトランスファー方式で塗工される下塗り層は、塗工量が少なすぎると、十分な印刷光沢や平滑が得られず、多すぎると乾燥不良になりマシンの汚れが発生したり、操業負荷が大きくなったりするため、片面の塗工量は1〜10g/mであり、更に好ましい塗工量は、2〜7g/mである。
本発明の下塗り層は、顔料として製紙スラッジを原料とした沈降嵩が0.6〜0.8cc/gの無機粒子を顔料100質量部に対し10質量部以上含有し、接着剤としてラテックスと澱粉を含み、ラテックスと澱粉の質量比が1:0.5〜1:10である。
下塗り層の顔料は、製紙スラッジを原料とした沈降嵩0.6〜0.8cc/gの無機粒子を顔料100質量部に対し10質量部以上含有する。
含有量が10質量部未満になると十分な印刷平滑や光沢が得られず、高品質な印刷用塗工紙とならない。また、含有量が多すぎると印刷強度が低下するリスクがあるため、400質量部以下にとどめるのが好ましい。
また、製紙スラッジを原料とした無機粒子の沈降嵩が0.6cc/g未満になると不透明性、白色度および平滑性等の改善に対しては有効ではあるが、反面、塗工層強度を発現させるために、著しく多量の接着剤が必要となる難点があるので好ましくない。一方、0.8cc/gより大きくなると、塗工紙製品の平滑性や不透明性・光沢が低下し、結果的に印刷適性も低下することになり好ましくない。よって、沈降嵩は0.6〜0.8cc/gとする。
下塗りに使用されるラテックスの例としては、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス、スチレン−メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス等の共役ジエン系共重合体ラテックス、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルの重合体または共重合体ラテックス等のアクリル系重合体ラテックス、エチレン−酢酸ビニル重合体ラテックス等のビニル系重合体ラテックス、あるいはこれらの各種重合体ラテックスをカルボキシル基等の官能基含有単量体で変性した重合体または共重合体ラテックスなどが例示される。
また、澱粉の例としては、酸化澱粉、燐酸エステル化澱粉、エーテル化澱粉、酵素変性澱粉、冷水可溶性澱粉、カルボキシメチルセルロースなどの水溶性天然高分子が例示される。
接着剤のラテックスと澱粉の質量比が少なすぎると、塗料の濃度を高くしても粘度が上がらず、フィルムトランスファー塗工で所望の塗工量を得られなかったり、原紙に塗料が過剰にしみこんでしまうなどの不具合が生じる。逆に質量比が大きすぎると、塗料濃度を低くしても粘度が高くなりすぎて、塗工ムラが生じたり、塗工量が多くなりすぎて乾燥不良などの操業不具合が生じるため、ラテックスと澱粉の質量比は1:0.5〜1:10であり、更に好ましい質量比率は、1:1〜1:5程度である。
下塗り層の接着剤は、塗工層中の顔料100質量部に対し、20質量部以上にするのが好ましい。20質量部以上にすると塗工紙にした際の印刷時の表面強度が容易に得られるため、上塗り層の設計の自由度が上がり、結果的にコスト等で有利となる。ただし、接着剤が多すぎるとマシンが汚れやすくなるため、上限として接着剤を200質量部以下程度に抑えるのが好ましい。
原紙上に設ける塗工層は片面にするか両面にするかは特に限定はなく、また、2層にするか多層にするかも特に限定されない。要求される品質レベルに応じて適宜調整することが可能である。
また、下塗りの上に塗工される塗工量も特に限定されるものでなく、塗工紙の白紙品質、印刷品質などに応じて調整することが可能であるが、片面あたり5〜40g/m程度であり、更に好ましい範囲としては、6〜20g/m程度である。
下塗りの上に設けられる塗工層の塗工方法についても、特に限定されないが、通常の塗工紙製造分野で使用されている各種の塗工装置、例えばエアーナイフコーター、各種ブレードコーター、ゲートロールコーター、ロールコーター、ダイコーター、カーテンコーターなどを適宜使用することが出来る。特に好ましいものをあげるとすれば、生産性・操業効率の観点から各種ブレードコーターが好ましいが、他の方式の方が印刷表面性に有利となる場合もあるため、品質やコスト(生産性や操業性も加味)のバランスを考えて選択するのが良い。
下塗りの上に塗工される塗工液については、要求品質によって自由に設計できるが、カオリン/炭カル/澱粉/ラテックスの組み合わせで設計することが出来る。例えば、平滑や光沢・インキセット品質を得ることを目的に微粒カオリンを選択できる。また、白色・光沢付与を目的として2μ以下の粒子が97%以上ある細かい粒子の重炭を選択し、所望の品質を得ることが出来る。また、炭カルとして重炭よりも光沢・平滑の良い軽炭を配合したり、重炭と軽炭を併用しても良い。
澱粉は、タピオカやコーンスターチが知られている。いずれも変性度合いをコントロールし、塗工方式に最適な粘度が得られる程度に配合すれば大抵問題ないが、印刷強度(Dry強度)にはタピオカが有利である。
ラテックスについては、印刷強度(Dry強度)重視タイプ・耐ブリスター重視タイプなど要求品質によって適宜選択することが出来、グロス系の用途の場合、耐ブリスタータイプを選択すると良い。
このようにして得られた塗工紙は、各種公知公用の仕上げ装置、例えばスーパーカレンダ、グロスカレンダ、ソフトカレンダ、マットカレンダなどに通紙し、要求される品質レベルに応じて適宜製品仕上げを施してもよい。
無機粒子の原料となる製紙スラッジとしては、パルプ化工程、紙製造工程、古紙再生工程などの製紙工場の各種工程から排出される廃水に、凝集・沈殿・濃縮・脱水等の工程を適宜組合せて行って、各廃水が含有する固形分を回収したもの(製紙スラッジ各種)を、単独、または混合したものを用いることができる。このうち、古紙再生工程からのスラッジについては、古紙脱墨工程の加圧浮上(フローテーション、または浮選)および/または洗浄によって古紙パルプから分離排出される脱墨廃液に対して凝集および脱水処理を行い、脱墨排水中の固形分を脱墨スラッジとして回収することが推奨される。
白色度の低い古紙原料からスラッジを回収する場合には、古紙再生工程における脱墨処理及び浮選処理を充分に行い、カーボンブラックなどを含むインク粒子をできるだけ除去しておくのがよく、必要に応じて複数回のスラッジの加圧浮上工程および/または洗浄工程を追加するのがよい。また、古紙脱墨工程から回収する脱墨スラッジについては、上質古紙、新聞古紙、雑誌(塗工紙系)古紙などに分別して古紙種類毎の脱墨スラッジを調製し、必要に応じてこれらの古紙種類別脱墨古紙を単独、または混合して原料することができる。
なお、製紙スラッジ中の無機成分(灰分)は、製紙用填料または塗工紙用顔料に由来するカオリン(クレー)および炭酸カルシウムが無機成分全体の約80〜95質量%を占め、タルク、二酸化チタンなどが少量混在している。前記無機成分の主成分であるカオリン、および炭酸カルシウムの比率は処理する古紙の種類等によって多少のばらつきはあるが、概ねカオリン/炭酸カルシウムの質量比で20/80〜80/20の範囲である。また、上記無機成分(灰分)中のカルシウム(CaO換算)、アルミニウム(Al換算)およびケイ素(SiO換算)のそれぞれの含有比率(カルシウム/アルミニウム/ケイ素)は、13〜73/12〜40/15〜47である。
製紙スラッジ中の有機成分および無機成分の比率は、処理する古紙の種類や脱墨工程程度によって多少は変動するが、概ね無機成分/有機成分の質量比で30/70〜80/20の範囲である。
スラッジとは別に、製紙用材料として再利用が困難な低級な古紙やそれに付随するプラスチックを主としたRPF(Refused Paper&Plastic Fuel)を原料として使用することもできる。
原料を燃焼する前に脱水→乾燥→焼成前処理といった各工程を追加してもよい。
[脱水工程]
各種工程の廃水から原料を固形分として回収する方法としては、濾過、遠心分離、加圧脱水、圧搾等の方法が挙げられ、前記各種方法を組合せて所要の含水率の製紙スラッジを含有する原料を得る。好適な濾過装置としては、ロータリースクリーンと称される濾過装置があって、また脱水装置としては、スクリュープレスと称される加圧・圧搾脱水装置があり、これらの濾過装置、圧搾装置を単独、または適宜組合せて用いることができる。また、遠心脱水装置としては、デカンタ型遠心脱水装置がある。
原料中の固形分濃度は、脱水機の能力の違いで異なるため、通常5〜60質量%であるが、固形分濃度60質量%を超えるものは現状の脱水機あるいは濃縮機の能力では達成が難しい。
[乾燥工程]
燃焼工程前の原料の固形分濃度は特に限定はない。しかし、燃焼工程中のエネルギーコストを低減する観点から、また燃焼処理装置を小さくする観点から、原料の固形分濃度はなるべく高くした方が好ましく、70%以上にするのがよい。このような固形分濃度は、前記の脱水工程のみで達成するのは困難であるため、脱水処理後に、更に乾燥工程を設け、固形分濃度を高めることが推奨される。
乾燥工程で用いる乾燥機としては、特に限定はなく、直接加熱型ロータリーキルン、間接加熱型ロータリーキルン、気流乾燥機、流動層乾燥機、振動流動乾燥機、回転・通気回転乾燥機(サイクロン)などを用いることができる。また、これら乾燥機の熱源としては、後述する焼成処理工程の排熱を使用することにより、エネルギーコストを低減することが可能である。
乾燥処理の温度は、気流乾燥機や回転・通気回転乾燥機のような熱風を利用して乾燥させる装置においては、原料の燃焼や炭化を防止するために熱風温度を600℃以下とすることが好ましい。この熱風温度が高過ぎては、原料が発火し、その際の焼成条件が適切でなければ、易燃焼性の有機成分が炭化して難燃焼性に変化する懸念がある。熱風温度は、250℃以下とすることがより好ましい。また、乾燥工程においては乾燥効率を向上させるために、原料を細かく解すことが好ましく、撹拌機や機械式ロール等により強制的に原料を解して300〜2000μm程度に分級して乾燥させることが好ましい。
[焼成前処理工程]
脱水工程、または更に乾燥工程を経た原料は、燃焼処理装置内に積層された時に酸素と接触できる大きさ、形状であれば特に限定はない。しかし、原料を細かく、かつ大きさを均一にすると、原料が細密充填のように積層されて、積層内に酸素が入り込まないため、有機物、特にカーボンの燃焼が不十分になり白色度が向上しない可能性がある。
逆に、原料を大きくし過ぎると、カーボンを完全に燃焼することができず、塊状原料の中心部に未燃カーボンが残存する可能性がある上、乾燥不良の柔らかい原料が団子状に大きくなり、破砕機や造粒機排出口にたまって閉塞させたり、造粒機内でブリッジ状態となって入り口側シュートまで詰まってしまうなど、工程中に詰まりを発生させ、操業性を著しく悪化させる。以上のことから、本発明で用いられる原料としては、長さまたは直径が1mm以上25mm以下の大きさのものを用いるのが好ましい。原料をこの大きさの範囲にすれば、未燃カーボンが残存したり、工程中のつまりを発生させることなく、白色度の優れた焼成物が得られる。白色度のみに着眼すれば、より好ましい上限は20mmである。形状については、円柱状、球状、楕円、三角形、その他の多角形や、凹凸を有するものなどを用いることができる。
焼成前に前記した所望の大きさであれば形状を同一にする必要もないので、原料を破砕して所望の大きさの範囲にすることも出来るし、造粒成形することも可能である。原料を造粒する方法は、ブリケットマシンやローラーコンパクター等の圧縮成形機を用いる方法、ディスクペレッターのような半乾式造粒機を用いる方法、転動造粒法や攪拌造粒法、押出成形法等がある。
造粒成形機を用いて原料を造粒させなくても、水を含む状態の原料を乾燥機に投入あるいは乾燥原料を燃焼処理装置に投入する時のスクリューフィーダーなどで大きさを調整することも可能である。また、乾燥機で大きさ、形状を調整することも可能である。
原料を焼成する燃焼処理装置や焼成条件としては、沈降嵩が0.6〜0.8cc/gになるように熱処理工程と炭酸化工程・脱水工程・分散工程・粉砕工程を経て得られれば特に限定されないが、図1に好適な燃焼処理装置の一例を挙げ、好ましい焼成条件を説明する。
(a)装置概要
焼成設備としては、特に制限はないが、筒型熱処理炉を用いるのが好ましい。筒型熱処理炉には、被処理物の移送方式により、ロータリーキルン炉(以下、「回転キルン炉」という。)とスクリュー式キルン炉とがあるが、焼成効率の観点からは回転キルン炉を用いるのが望ましい。
図1は、本発明において用いられる筒型熱処理炉(回転キルン炉)の一例を模式的に示す縦断側面図である。図1に示すように、この筒型熱処理炉K1においては、横円筒型の回転胴1が加熱ジャケット(燃焼室)2で包囲されており、回転胴1の原料供給口1aには、排気口3と、排気口3からやや離れて設置された原料投入口4とを有し、この原料投入口4と回転胴1の原料供給口1aとの間には、例えば、スクリューフィーダーなどの原料供給手段5が配設されている。回転胴1の焼成物排出口1bには、給気口6Aと焼成物取出口7とが設けられている。
そして、間接的加熱手段8A、8Bの複数の熱風放出口82から加熱ジャケット2内に熱風が導入されている。熱風放出口82にはバルブが付けられており、ブロア81からの熱風量を調整できるので、回転胴1内の焼成温度を精度よく制御しながら、製紙スラッジSを間接的に加熱できる構成となっている。また、図に示す例では、加熱ジャケット2内に熱風を送り込む構成の筒型熱処理炉が示されているが、加熱方法はこのような構成に限られず、加熱ジャケット2内に設置したバーナーを使い加熱ジャケット2内の温度を上昇させる構成のものでも良い。
(b)望ましい空気の供給・排気方法
排気口3には、例えば、排気ファンのような排気手段9が介装されており、その稼働によって破線矢印aで示すように回転胴1内の空気が排気されるとともに、排気に伴う減圧作用で給気口6より外部の空気が回転胴1内へ吸入される。排気は、排気口3の下流側に設けた排気循環ブロア10により行われる。このように、本発明の無機粒子の製造方法においては、回転胴内の製紙スラッジの進行方向と逆方向の流れとなるように空気を導入するのが望ましい。
回転胴内での空気の流れ方向は、被処理物(製紙スラッジとその焼成物)の移送方向に対して逆向き(向流)になるのがよい。こうすれば、仮に、燃焼に伴って不完全燃焼状態にある煤などの浮遊性有機成分が炉内に飛散しても、浮遊性有機成分は空気の流れに乗って原料供給口1aへ戻されて燃焼するか、または、更に排気に付随して筒型熱処理炉外へ排出される。このため、焼成物に不完全燃焼の黒色有機成分が混入するのを防止でき、もって白色度の高い焼成物が得られる。このような浮遊性有機成分は、バグフィルターなどで捕集して除去するか、排気と共に適当な加熱手段によって焼成処理して消失させるのがよい。
排気口3からの高温の排気ガスは、排気循環ブロア10によって熱風循環系へ送られ、前処理の乾燥工程における熱源、間接的加熱手段8A、8Bの熱源または熱風の一部として循環利用できる。なお、間接的加熱手段8A、8Bの熱源または熱風には、前処理の乾燥工程などからの排熱を利用してもよい。
図2は、乾燥炉および二段階の焼成炉を有する製造装置における排ガスの再利用方法の例を示す図である。図2に示すように、複数(図に示す例では2段階)の焼成炉を用いる焼成設備の場合、任意の焼成炉(例えば、一次焼成炉)からの排気ガスを他の焼成炉(例えば、二次焼成炉)における加熱ジャケット(燃焼室)に送り込み、間接的加熱手段(図1の符号8A、8B参照)の熱源または熱風として用いることも可能である。また、各焼成炉からの排気ガスを乾燥設備の熱源または熱風として利用することもできるし、逆に、乾燥設備からの排気ガスを各焼成炉の熱源または熱風として利用することもできる。
特に、焼成設備が複数の焼成炉を有する場合には、焼成温度が低い焼成炉からの排気ガスを焼成温度が高い焼成炉の加熱ジャケット(燃焼室)へ送り、熱源として用いるのが好ましい。これは、焼成温度が低い焼成炉からの排気ガスには多くの未燃焼有機物が含まれるため、高温側の焼成炉の加熱ジャケット(燃焼室)内で過剰空気と接触させるだけで、発火、燃焼するからである。条件を整えれば、高温側の焼成炉の加熱ジャケット(燃焼室)に供給される全ての熱源を低温側焼成炉からの排気ガスで賄うことが可能となる。
例えば、通常の焼成施設または焼却施設においては、ダイオキシン対策のために再燃室を設けて排ガスを800℃以上に燃焼させることが行われているが、800℃以上での焼成が行われる焼成炉であれば、その加熱ジャケットを焼成のための燃焼室と共に、再燃室としても利用することができる。
以上、主として、間接加熱方式、即ち、熱風または火炎を外部に設けられた燃焼室に供給し、その熱により間接的に製紙スラッジを加熱する方式を採用する焼成炉または乾燥炉における排気ガスの再利用方法について述べたが、直接加熱方式、即ち、熱風または火炎を炉内に吹き込み、直接的に製紙スラッジを加熱する方式を採用する焼成炉または乾燥炉の場合には、排気ガスを燃焼室ではなく、炉内に直接吹き込むことにより、熱源として利用することができる。
なお、回転胴内への空気の供給は、給気口6から空気を吹き込む、吹き込み方式により行ってもよい。但し、上記のように、排気に伴う減圧作用で給気口6より外部の空気が回転胴1内に吸入する方式を採用すれば、排気量によって空気供給量を容易に制御できると共に、安定した空気流によって長い回転胴の全長にわたって空気を確実に行き渡らせることができるので望ましい。また、吹き込み方式および吸入方式を併用することも好ましい。
(c)望ましい空気中の酸素量:製紙スラッジに含まれる有機成分の完全燃焼に要する理論酸素量の1.1〜5倍
空気供給量が少ない場合には、回転胴内を過剰空気雰囲気にすることが困難になり、有機成分の一部の燃焼が不十分となり、その炭化物が残存して焼成物の白色度が低下するおそれがある。一方、空気供給量が過剰な場合には、供給空気によって回転胴内が過度に冷やされ、燃焼温度を維持するためのエネルギーコストが嵩むことになる。従って、供給する空気中の酸素量は、製紙スラッジに含まれる有機成分の完全燃焼に要する理論酸素量の1.1〜5倍とするのが望ましい。特に望ましい下限は2倍程度である。なお、この燃焼用の空気は、有機成分を充分に燃焼させる酸素を含んでおればよいから、通常の外気よりも二酸化炭素の含有量が多いものでも支障はない。
(d)製紙スラッジの移送
なお、回転胴1は、実際には、原料供給口1aから焼成物排出口1bに向かって非常に緩やかな下り勾配を有し、この回転胴1の下り勾配と回転により、内部の被処理物が重力作用で原料供給口1aから焼成物排出口1bへ徐々に移送されるようになっている。
原料投入口4から投入された製紙スラッジSは、実線矢印bで示すように、原料供給手段5によって回転胴1の原料供給口1aに送り込まれ、回転胴1の回転によって焼成物排出口1bへ移送する過程で焼成される。このとき、製紙スラッジS中の有機成分が燃焼される。
(e)望ましい加熱方式
本発明における筒型熱処理炉の加熱方式としては、直接的加熱方式(内熱式)よりも、図1に示すような間接的加熱方式(外熱式)の方が好ましい。すなわち、直接的加熱方式では、処理炉内で熱源ガスを燃焼させるのに大量の空気(酸素)を消費するため、製紙スラッジSに含まれる有機成分の燃焼が空気不足で不完全になる懸念がある上、熱源ガスの燃焼によって炉内温度(スラッジ温度)の制御が非常に困難になる。これに対し、間接的加熱方式では、熱源のために炉内空気を消費することがないから、炉内を過剰空気雰囲気に確実に設定できることに加え、外部からの加熱度合を自在に変化できるので、炉内温度の制御が極めて容易になる。
上記の間接的加熱方式における加熱手段としては、電気的ヒータや誘導電流による加熱も可能ではある。より好ましいのは、エネルギーコスト低減のため、灯油、重油などの燃焼ガス、既存の焼却設備から排出される燃焼排ガス、高温空気、過熱水蒸気などを加熱ジャケット2内に導入する方法、処理炉の周壁にガスバーナーからの燃焼ガスを吹き付けて加熱する方法などである。例えば、炉本体内での焼成処理を経た高温の排気、前処理の乾燥工程からの燃焼排ガスなども、間接的加熱方式の熱媒、熱源の一部として利用できる。
本発明における筒型熱処理炉においては、回転胴1が数〜数十メートルの長さに及ぶ場合もある。そのような場合には、回転胴全体を所望の焼成温度に安定して維持するため、図1に示すように、複数の間接的加熱手段を設けるのがよい。
(f)回転胴の形状
より多くの製紙スラッジを焼成処理するためには、回転胴への製紙スラッジの充填率を増やすことが重要であるが、あまりに多くの製紙スラッジを回転胴内に供給すると、回転胴内における製紙スラッジの積層、堆積の度合いが大きくなり過ぎて有機成分の燃焼が不十分となり、高品質の無機粒子を高効率で得ることが難しくなる。
このため、筒型熱処理炉K1の回転胴1内が横長の回転胴の長手方向に対して直交する方向の断面(径方向断面)において複数の区分室に分割し、この複数の区分室に製紙スラッジSを分散配置した状態で焼成すると、より多くの製紙スラッジから高品質の無機粒子を高効率で得られるため、より好ましい。
特に、造粒した製紙スラッジを焼成する場合には、パンチングメタルのような穴明きの金属板で多分割構造部の隔壁を構成することが好ましい。穴明き金属板であれば、多分割構造部の各区分室内に導入された製紙スラッジSに空気(酸素)を行き渡らせやすいからである。金属板の穴の形状、大きさには特に限定はなく、造粒成形された製紙スラッジS粒子が穴明き金属板に設けられた穴から別の区分室にこぼれ落ちないような大きさであればよく、また、丸形、三角形、四角形、スリット形などの各種穴形状の穴明き金属板を使用することができる。
(l)焼成炉
ここでは、筒型熱処理炉により製紙スラッジの焼成を行うこととしているが、特に限定されるものではない。従って、焼成工程に用いる焼成炉として、本発明で用いる筒型熱処理炉と、筒型熱処理炉以外の各種焼成処理炉とを組合せて用いることができる。組み合わせて用いることができる焼成処理炉としては、例えば、回転キルン炉、スクリューキルン炉、流動床炉、ストーカ炉、縦型円筒路(タワーキルン)、サイクロン炉、半乾留・負圧式燃焼式炉、炭化炉(低酸素雰囲気下焼成炉)などが挙げられる。これらの焼成処理炉は、前焼成工程または後焼成工程としても用いることができる。
熱処理工程は、少なくとも2段階に設定することで、製紙スラッジに含まれる有機成分を効率的に燃焼させやすく、製紙材料に適した無機粒子を得やすくなる。すなわち、下記の条件の一次燃焼工程および二次燃焼工程を含むことが望ましい。
一次燃焼工程:加熱炉内から燃焼ガスを強制的に排出しつつ、650℃以下の温度で原料を加熱する工程
二次燃焼工程:加熱炉内から燃焼ガスを強制的に排出しつつ、700〜850℃の温度で原料を加熱する工程
まず、一次燃焼工程では、加熱炉から燃焼ガスを強制的に排出することにより、炉内を過剰空気雰囲気、即ち、有機成分の燃焼に対して充分な酸素量を与えて不完全燃焼を生じさせない空気雰囲気とするとともに、650℃以下という比較的低温の燃焼条件とすることが重要である。このような条件であれば、製紙スラッジ中の易燃焼性有機成分が、分子中の官能基を起点として熱分解・発火し、炭化することなく燃焼して消失しやすいからである。
ここで、一次燃焼工程の原料温度が650℃を超えると、易燃焼性有機成分が炭化して難燃焼性有機成分に変化し、燃焼効率が悪化させる場合がある。従って、一次燃焼工程における原料の加熱温度の上限は650℃とすることが望ましく。更に好ましくは、630℃である。一方、この一次燃焼工程の原料の加熱温度が低過ぎると、易燃焼性有機成分の熱分解・発火も困難となり、燃焼効率が悪化する。従って、一次燃焼工程における原料の加熱温度の下限を250℃であり、より好ましい下限は、350℃である。
一次燃焼工程の燃焼時間は、10分以上5時間以下とすることが好ましい。一次燃焼工程の燃焼時間が10分未満では、製紙スラッジ中の易燃焼性有機成分の燃焼除去が不充分になる恐れがある。全ての易燃焼性有機成分が燃焼除去されるのに充分な時間をかけることが重要である。しかし、製紙スラッジ中の易燃焼性有機成分の燃焼は5時間でほぼ完了するため、5時間を超える燃焼はエネルギーの無駄になる。一次燃焼工程の燃焼時間は好ましくは、15分以上2時間以内とするのが好ましい。
次に、二次燃焼工程では、加熱炉内から燃焼ガスを強制的に排出することにより、炉内を過剰空気雰囲気とした状態で、700〜850℃という高温の燃焼を実施するのがよい。このような条件で原料を燃焼させれば、一次燃焼工程では燃焼しきらずに残っていた難燃焼性有機成分をも確実に燃焼して消失させやすいからである。
ここで、二次燃焼工程における原料温度が700℃未満になると、難燃焼性有機成分の燃焼に長時間を要し、燃焼効率が悪化しやすくなる。逆に、原料温度が850℃を超える高温燃焼になった場合は、ゲーレナイトが生成しやすくなる。従って、二次燃焼工程における原料の加熱温度は、700〜850℃とするのが望ましい。
二次燃焼工程の燃焼時間は、10分以上5時間以下とすることが好ましい。二次燃焼工程の燃焼時間が10分未満では、製紙スラッジ中の易燃焼性有機成分の燃焼除去が不充分になる恐れがある。全ての易燃焼性有機成分が燃焼除去されるのに充分な時間をかけることが重要である。しかし、製紙スラッジ中の易燃焼性有機成分の燃焼は5時間でほぼ完了するため、5時間を超える燃焼はエネルギーの無駄になる。二次燃焼工程の燃焼時間は好ましくは20分以上2時間以内とするのが好ましい。そして、一次燃焼工程と二次燃焼工程の燃焼時間の比率は、一次燃焼工程/二次燃焼工程で1/10〜10/1の範囲とすることが好ましい。
このような2段階の燃焼工程は、易燃焼性有機成分を燃焼しにくい炭化物に変化させずに燃焼除去できるとともに、製紙スラッジ中の有機成分全体の燃焼除去も短時間で効率よく行えるという利点がある。そして、このような燃焼工程により得られる焼成物は、煤、炭などの未燃焼の有機成分を含まず、白色度が高く、製紙用材料に好適に利用できるものとなる。
熱処理工程は、上記の一次燃焼工程および二次燃焼工程からなる2段階で行う以外に、これら一次燃焼工程から二次燃焼工程への移行区間としての燃焼工程を挟んだり、一次燃焼工程および二次燃焼工程の一方または両方を更に燃焼温度の異なる複数の燃焼工程に分けたりして、3段階以上とすることも可能である。
上記の方法で得られた焼成物は、原料中の炭酸カルシウムが分解されているので、そのまま水性懸濁液として、塗工用顔料あるいは製紙用填料に利用した場合、水溶液中に遊離カルシウムイオンが溶出し、スラリー粘度の上昇、分散不良といった問題がある。従って、水溶液中への遊離カルシウムの溶出を抑制するのが好ましい。従って、焼成物を水に懸濁して懸濁液を得る懸濁工程と、この懸濁液に二酸化炭素含有ガス(100%二酸化炭素ガスを含む。)を吹き込む炭酸化工程を備える。以下、これらの工程の好ましい条件を説明する。
[懸濁工程]
懸濁工程終了から炭酸化工程開始までの時間は6時間以下とするのが好ましい。6時間を超えると、遊離カルシウムが溶出し難くなり、炭酸化反応の時間を長くしなければならない。また、炭酸化反応を行っても遊離カルシウムの影響を抑えることができないおそれがある。特に、4時間以下とするのがより好ましく、さらに好ましいのは2時間以下である。一方、0.1時間未満の場合、遊離カルシウムの溶出が少ないため、炭酸化反応時間が長くなったり、炭酸化反応を行っても遊離カルシウムの影響を抑えることができなくなったりする可能性がある。
懸濁液の温度は、70℃以下にするのが好ましい。懸濁液温度が高すぎると、遊離カルシウムが溶出し難くなり、後続の炭酸化反応を行っても、遊離カルシウムの影響を抑えることができず、スラリーの分散性が悪くなる。より好ましいのは60℃以下、更に好ましいのは50℃以下である。懸濁液温度は、より低温の方が好ましいが、15℃未満の場合、燃焼させた焼成灰を冷却したり、水を冷却するといった冷却装置が必要となったりして、コストが嵩み、生産性が劣るので好ましくない。従って、15℃以上とするのが好ましい。より好ましいのは20℃以上である。
なお、懸濁液温度とは、懸濁工程終了から炭酸化工程開始までの間の懸濁液の温度を意味し、反応開始温度とは異なる。生石灰を水で消化させると消和熱が発生するが、本発明の懸濁液化工程においては、工程の開始から終了まで温度上昇は殆どないので、懸濁液化温度を70℃以下にすることができる。
懸濁液に対しては、焼成物の他に、必要に応じて別途、酸化カルシウム(CaO:生石灰)または水酸化カルシウム〔Ca(OH):消石灰〕を添加して焼成物と水酸化カルシウムの所定固形分濃度の混合懸濁液とすることもできる。
懸濁工程後に炭酸化工程を行うことにより、炭酸カルシウム(CaCO)に再生転化されて、無機粒子スラリーの粘度上昇を抑制し、顔料の分散不良を抑制することができる。
[炭酸化工程]
炭酸化工程は、懸濁液に、二酸化炭素を含有するガスを吹き込み、炭酸化反応、即ち、水中の遊離カルシウムと炭酸ガスが反応することにより炭酸カルシウムを生成する反応を行う工程である。炭酸化に用いるガスは、工業的には二酸化炭素含有ガスが好ましく、例えば、スラッジ焼成排ガス、石灰石焼成排ガス、石灰焼成排ガス、ゴミ焼却排ガス、発電ボイラー排ガス、或いはパルプ製造工程で用いられる苛性化炭酸カルシウム焼成キルンなどから排出される排ガスなどを適当な手段で除塵した後、用いることができる。
特に、スラッジ焼成設備からの排ガスを利用すれば、大気中に放出する二酸化炭素量を抑制することができ、製造コストを低減できるため、好ましい。また、使用する二酸化炭素ガスの二酸化炭素濃度は特に限定されるものではないが、好ましくは5〜40容量%、より好ましくは7〜35容量%の二酸化炭素含有ガスを用いる。二酸化炭素ガス濃度が低い場合は、懸濁液の固形分濃度を低くすることで、スラリー分散性を向上させ、また、反応時間を短くできる。例えば、二酸化炭素ガス濃度8%の場合は、焼成物懸濁液固形分は8%程度にするのがよい。
炭酸化の反応温度は70℃以下とするのが望ましい。反応温度が70℃を超えると二酸化炭素が水に溶け難くなって、反応に供される炭酸ガスが不足することで、反応時間が長くなるとともに、無機粒子の性状にも影響を及ぼし、スラリーを高濃度で分散できないといった問題を引き起こす可能性がある。好ましい上限は60℃、より好ましい上限は50℃である。炭酸化の反応温度を低くすると、反応に供される炭酸ガスが多くなるが、反応温度をあまりに低減するには、排ガス等を冷却する必要から、冷却装置等のエネルギーコストが嵩み、現実的ではない。従って、炭酸化の反応温度の下限は15℃とするのが好ましい。より好ましい下限は、20℃である。
懸濁液温度と炭酸化温度は同じとするのが好ましい。つまり、懸濁液化温度が、炭酸化温度よりも高い場合と懸濁液を冷却する必要があり、また、低い場合は加温することが必要になって、不要なエネルギーコストがかかるためである。
無機粒子に含まれる再生炭酸カルシウム成分の形状には、特に制限はない。炭酸化工程中において所望の形状の結晶を得るために種晶を添加し、米粒状、紡錘状、膠質状、針状、立方状、板状などにすることができる。
焼成物と二酸化炭素含有ガスとの接触をよくするために、反応槽に攪拌機を備えて、攪拌しながら炭酸化を行うのが好ましい。このように撹拌しながら炭酸化を行うと、炭酸ガスが微細になり、焼成物懸濁液との接触が良くなって、反応が均一かつ効率的に行われる。
[脱水工程]
上記の炭酸化後の無機粒子スラリーを、塗工用顔料として利用する場合、脱水し、高濃度化する必要がある。炭酸化工程後の無機粒子スラリーを脱水させるための装置としては、濾過、遠心分離、加圧脱水、圧搾といった脱水装置などを用いることができ、なかでも、フィルタープレスと称される圧搾濾過装置を用いることで、高濃度の脱水ケーキを得ることができる。得られる脱水ケーキ濃度は、炭酸化反応条件により異なるが、好ましくは45%以上、より好ましいのは50%以上である。
[分散工程]
高濃度で、低粘度の無機粒子のスラリーを得るための分散工程において使用する分散機および分散剤の種類を選ぶことが最も重要である。分散工程とは、脱水工程により得られる脱水組成物あるいは燃焼した焼成物に水分と分散剤を加えてスラリー状の分散組成物とする工程である。無機粒子の品質は濃度が高いほどよく、低粘度であれば、取り扱いが容易になる。
分散工程では、低粘度で、良好なスラリー物性を有する分散スラリーを調製するために、高せん断分散機を用いる必要がある。高せん断分散機としては、攪拌周速10m/s以上のものを用いるのが望ましい。特に、攪拌周速が15m/s以上のものを用いることが好ましい。攪拌周速が10m/s未満であると、脱水濃縮物をほぐすことが困難となり、分散スラリーの粘度が高く、チキソトロピー性も強くなり、大きな粒子が残存しやすくなる。高粘度、あるいはチキソトロピー性を有する分散スラリーは、常に強い攪拌を続ける必要があって、動力負荷が大きくなり、さらに配管内での詰まりが発生することもある。また、大きな粒子が多く存在すると、後続の粉砕工程で動力負荷が掛かり、生産性が悪くなり、所望の粒度を得ることができない可能性もある。なお、分散前の無機粒子は、D50粒子径が150μm程度であり、D95粒子径が400μm程度である。
高せん断分散機としては、特に限定はなく、コーレスミキサ、攪拌式ディスパーザーなどを用いることができるが、より高分散可能な装置として、混合容器を自転させ、アジテータのような攪拌工具を別駆動で回転させる構成の分散機、例えば、日本アイリッヒ株式会社製のインテンシブミキサを用いるのが好ましい。この分散機は、攪拌工具が駆動するだけでなく、混合容器も回転することで、死角のない分散が可能になり、さらに容器内の無機粒子が複雑に動くことにより、激しい内部せん断力が発生して、分散スラリーの粘度が低く、粒子径が細かくなる。
この構造の高せん断分散機においては、攪拌工具の周速は10m/s以上、容器回転周速は0.5m/s以上とするのが好ましい。特に、攪拌工具の周速は15m/s以上、容器回転周速は0.7m/s以上とするのがより好ましい。容器回転周速が0.5m/s未満だと、高せん断力を発生させることができない可能性がある。また、容器回転収束の上限は5m/sとするのが好ましい。分散機内で無機粒子により高いせん断力を与えるために、攪拌工具と回転容器の周速比(攪拌周速/容器回転周速)を、50以下とするのが好ましい。より好ましい周速比は40以下、さらに好ましのは20以下である。攪拌周速・容器回転周速の上限値は特に限定されず、分散機の能力により前述の周速比を満たすよう、適宜決定すればよい。周速比を満たせば、高いせんだん力下で分散できる。
なお、混合容器の自転方向は、攪拌工具と同じ方向、逆方向のどちらを採用してもよく、容器内部の原料固着を防ぐためにスクレーパーを配置しておくのがよい。インテンシブミキサを用いた好ましい分散方法としては、脱水濃縮物をペースト状にした後、分散剤を添加して、分散剤を均一に行き渡らせた後に、希釈水を添加し、スラリー化することで粘度が低い分散スラリーを得ることができる。脱水ケーキそのまま、あるいは少量の分散剤を添加して分散するのがよい。インテンシブミキサに投入する脱水濃縮物の大きさは、ミキサに投入することができる大きさであれば問題はなく、特に解砕機等で細かく解砕する必要はない。このような分散方法を用いると、無機粒子を微細化することができるため、粉砕工程を経ることなく、塗工用顔料として使用することもできる。
添加する分散剤としては、例えば、ポリカルボン酸ナトリウム等の合成高分子系の分散剤など、製紙用材料の製造の際に用いられる一般的な分散剤を使用できる。
分散工程後には、粉砕処理工程を行う。粉砕処理を行うことにより、再生された無機粒子を微細化することができ、平滑性が向上する。粉砕工程において用いる粉砕機としては、ビーズミル、サンドミル、湿式ボールミル、振動ミル、攪拌槽型ミル、流通管型ミル、コボールミルなどの湿式粉砕機を使用することができる。また、二酸化炭素を吹き込みながら、粉砕を行っても良い。
得られた無機粒子の組成は、無機粒子を配合した紙の不透明性や被覆性を向上させるべく、焼成カオリン(メタカオリン)と炭酸カルシウムの2成分で80%以上とすることが好ましい。無機粒子を好適な組成とするためには、各種スラッジを必要に応じて混合し、前記組成となるように各種スラッジ配合率を調整することが好ましい。
本発明に使用される無機粒子の大きさ(粒子径)は、レーザー回折粒度分布測定による平均粒子径として、最終的に0.1〜20μmとすることが好ましい。無機粒子の平均粒子径が0.1μm未満のような微細な粒子になると、不透明性、白色度および平滑性等の改善に対しては有効ではあるが、反面、塗工層強度を発現させるために、著しく多量の接着剤が必要となる難点があるので好ましくない。他方、無機粒子の平均粒子径が20μmを越えるような大きい粒子になると、塗工紙製品の平滑性や光沢が低下し、結果的に印刷適性も低下することになり好ましくない。
この平均粒子径は、塗工用顔料として、紙製品に仕上げた際の不透明性、白色度、平滑性、および印刷適性に優れる品質が得られるように、操業および品質上バランスされた粒子径を選んだものである。したがって、無機粒子の平均粒子径を前記粒子径の範囲とすることにより、操業において、従来の塗工用顔料と同様に取り扱うことができ、また無機粒子を塗工した塗工紙の品質についても、従来の塗工用顔料と概ね同等の品質を発現させることができる。
なお、分散処理後の無機粒子の平均粒子径が前記した粒子径の範囲になる場合は、粉砕工程を省略し、分散処理後の無機粒子の分散液をそのまま塗工用顔料として使用しても良い。
分散工程において、無機粒子の脱水組成物を炭酸カルシウムスラリーに混合して混合スラリーを調製し、湿式粉砕機を用いて粉砕することで、炭酸カルシウムよりも品質が良好で、なおかつ炭酸カルシウムスラリーよりも粉砕時間を短くすること、および高濃度なスラリーを調整することが可能である。なお、無機粒子と炭酸カルシウムの比率は、塗工紙の白紙品質などに応じて、調整することが可能であり、特に制限はない。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されないことを付言する。なお、特に断らない限り、例中の部および%はそれぞれ質量部、および質量%を示す。製紙スラッジから製造した無機粒子の各種性能については、以下の方法で測定した。
(レーザー回折散乱法による無機粒子の粒子径測定)
日機装社製のマイクロトラックHRAを使用して、無機粒子の粒度分布を測定し、平均粒子径は粗粒子分からの累積質量が50%に相当する点での粒子径で求めた。
(無機粒子の白色度の測定)
サンプル(乾燥物)を約10g、乳鉢で粗い粒子がなくなるまですりつぶしたのち、粉体試料成形機(理学電機工業株式会社製:Cat9302/30)を用いて、圧力100kNで30秒加圧して粉体試料成形した。成形したサンプルの白色度を、スガ試験機社製、分光白色度測色計(スガ試験機社製:SC−10WT型)を使用して、JIS P8148(2001年)に準拠し測定した。
(粘度測定)
調製したスラリーを攪拌機で攪拌し、60秒静置させ、B型粘度計を用いて、60回転の粘度を測定した。
(無機粒子の沈降嵩の測定)
無機粒子の分散スラリーの濃度を50%に調整し、スラリー50gを遠心分離機(株式会社コクサン製:H−26F)を用いて、5000rpm×20分処理し、分離した沈降容積・質量から無機粒子の沈降嵩を求めた。
沈高嵩=沈降容積/沈降質量
実施例1
<無機粒子の製造>
[製紙スラッジの回収、脱水]
洋紙、板紙の抄紙機および塗工機、さらに脱墨パルプ化設備を有する製紙工場の廃水を廃水処理クラリファイヤーで分離して得られた固形分および活性汚泥処理などの余剰汚泥からなる製紙スラッジを原料とし、脱水機を用いて固形分約50%まで脱水を行った。この製紙スラッジの無機分は65%で、その組成は炭酸カルシウム55%、カオリン40%、タルク5%であった。
[製紙スラッジの乾燥、造粒]
脱水した製紙スラッジを、回転乾燥機を用いて、固形分約75%になるように乾燥し、次いで破砕機を使用してφ8mmに造粒した。
[製紙スラッジの燃焼]
この処理後の製紙スラッジ造粒物を、図1に示すような間接加熱式の回転式キルン炉(回転胴の内径500mm、長さ3000mm)を用いて一次焼成した。
この一次焼成では、ホッパを用いて原料の製紙スラッジ造粒物を200Kg/hの供給速度で原料投入口4から供給し、原料供給手段5であるスクリューフィーダーによって回転胴1の原料供給口1aに送り込み、回転胴1内を移送しつつ、焼成を行った。この焼成は、加熱バーナーからの燃焼ガスを熱源として加熱ジャケット2への燃焼ガスの導入量で熱処理温度を制御し、スラッジ温度600℃で処理時間(スラッジ滞留時間)を約30分に設定した。一方、排気手段9の排気ファンによって回転胴1内から燃焼排ガスを5600L/分(空気温度20℃換算)で排出し、これに伴う減圧作用で排気口3から排出される排ガスと同量の外気を給気口6Aから吸入し、もって回転胴1内全体を常に過剰空気雰囲気に維持した。
次いで、一次焼成によって得られた焼成処理物を、一次焼成と同様の回転式キルン炉を用いた二次焼成に供した。
この2次焼成では、ホッパを用いてスラッジの1次焼成処理物を100Kg/hの供給速度で原料投入口4から供給し、原料供給手段5であるスクリューフィーダーによって回転胴1の原料供給口1aに送り込み、回転胴1内を移送しつつ、焼成を行った。この焼成は、加熱バーナーからの燃焼ガスを熱源として加熱ジャケット2への燃焼ガスの導入量で熱処理温度を制御し、スラッジ温度800℃で処理時間(スラッジ滞留時間)を約60分に設定した。一方、排気手段9の排気ファンによって回転胴1内から燃焼排ガスを500L/分(空気温度20℃換算)で排出し、これに伴う減圧作用で排気口3から排出される排ガスと同量の外気を給気口6Aから吸入し、もって回転胴1内全体を常に過剰空気雰囲気に維持した条件で焼成し、無機粒子を得た。
[焼成物の懸濁化、炭酸化]
焼成物を懸濁液化槽(消和槽)を用いて30℃の水と混合し、この懸濁液化槽の温度を30℃に保持しながら30分間攪拌して、固形分濃度が約10%の焼成物懸濁液を調製した。そして、この焼成物懸濁液10kgを炭酸化反応槽に仕込み、この炭酸化反応槽の温度を30℃に保持しつつ、懸濁液中に10容量%の二酸化炭素含有ガスを20リットル/分で吹き込みながら60分間攪拌を行って炭酸化処理した。懸濁工程終了から炭酸化工程開始までの時間は60(分)であった。
[脱水・分散・粉砕]
炭酸化処理で得られた炭酸化処理物の懸濁液をフィルタープレスで脱水し、固形分濃度52%の脱水濃縮物を得た。得られた脱水濃縮物をインテンシブミキサ(日本アイリッヒ株式会社製)で、攪拌周速18m/s、回転容器周速1m/sで、6分間素練りした後、分散剤としてアクリル酸/マレイン酸共重合体ナトリウム(商品名:ポイズ520、花王株式会社製)を脱水濃縮物の固形分100質量%に対して1.0質量%添加し、2分間攪拌後、水を添加し、2分間攪拌し、固形分濃度が48%の無機粒子スラリーを調製した。そして、最後にダイノミル(株式会社シンマルエンタープライゼス製)を用いて上記の無機粒子スラリーを平均粒子径約2μm以下になるように湿式粉砕し、塗工用顔料に適した微粒子状の白色度81%の無機粒子を得た。この無機粒子スラリーの粘度は50mPa・s、沈降嵩は0.68cc/gであった。
<2層塗工紙の製造>
[下塗り塗工液の調製]
顔料100部のうち、実施例1で得た無機粒子を70部、重質炭酸カルシウム(商品名:FMT90、ファイマテック社製)30部からなる顔料スラリーに、顔料100部に対してタピオカ澱粉(商品名:P−4、ピラースターチ社製)13部、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:T2628G、JSR社製)10.5部(いずれも固形分換算)を添加し、最終的に固形分濃度60%の塗工液を調整した。
[上塗り塗工液の調製]
顔料100部のうち、微粒カオリン(商品名:カオファイン、白石カルシウム社製)を50部、重質炭酸カルシウム(商品名:FMT97、ファイマテック社製)50部からなるスラリーに、顔料100部に対してタピオカ澱粉(商品名:P−4、前出)5部、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:PA5002、日本A&L社製)10部(いずれも固形分換算)、更に助剤として消泡剤、防腐剤、染料を添加し、最終的に固形分濃度50%の塗工液を調製した。
[塗工液の塗工(2層)]
古紙100%配合の未塗工原紙(米坪70.0g/m)に、下塗り塗工液を片面あたりの乾燥質量(塗工量)が7g/mとなるようにロールコーターを使用して両面に塗工・乾燥を行い、下塗り塗工層を設けた。次いで上塗り塗工液を片面あたりの塗工量が8g/mとなるようにブレードコーターを使用して両面に塗工・乾燥を行い、上塗り塗工層を設けた。このようにして得られた塗工紙を温度70℃、線圧200kN/mでスーパーカレンダに通紙して塗工紙を得た。
実施例2
製紙スラッジを原料とする無機粒子は、実施例1と同様にして得た。塗工紙の製造は、[下塗り塗工液の調製]を次の通り変更した点を除き、実施例1と同様の方法で塗工紙を得た。
[下塗り塗工液の調製]
顔料100部のうち、実施例1で得た無機粒子を35部、高アスペクトカオリン(商品名:コンツアー1500、イメリスミネラル・ジャパン社製)35部、重質炭酸カルシウム(商品名:FMT90、ファイマテック社製)30部からなる顔料スラリーに、顔料100部に対してタピオカ澱粉(商品名:P−4、前出)10部、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:T2628G、JSR社製)10.5部(いずれも固形分換算)を添加し、最終的に固形分濃度60%の塗工液を調整した。
実施例3
製紙スラッジを原料とする無機粒子の[脱水・分散・粉砕]における分散条件と [下塗り塗工液の調製]を次の通り変更した点を除き、実施例1と同様の方法で塗工紙を得た。
[脱水・分散・粉砕]
炭酸化処理で得られた炭酸化処理物の懸濁液をフィルタープレスで脱水し、固形分濃度52%の脱水濃縮物を得た。得られた脱水濃縮物をコーレスミキサで水に分散させ、周速25m/sで10分間攪拌するにより、固形分濃度が45%の無機粒子スラリーを調製した。なお、この分散させる水には、分散剤としアクリル酸/マレイン酸共重合体ナトリウム(商品名:ポイズ520、花王株式会社製)を脱水濃縮物の固形分100質量%に対して1.0質量%添加した。そして、最後にダイノミル(株式会社シンマルエンタープライゼス製)を用いて上記の無機粒子スラリーを平均粒子径約2μm以下になるように湿式粉砕し、塗工用顔料に適した微粒子状の白色度81%の無機粒子を得た。この無機粒子スラリーの粘度は500mPa・s、沈降嵩は0.73cc/gであった。
[下塗り塗工液の調製]
顔料100部のうち、実施例1で得た無機粒子を35部、高アスペクトカオリン(商品名:コンツアー1500、イメリスミネラル・ジャパン社製)35部、重質炭酸カルシウム(商品名:FMT90、ファイマテック社製)30部からなる顔料スラリーに、顔料100部に対してタピオカ澱粉(商品名:P−4、前出)5部、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:T2628G、JSR社製)10部(いずれも固形分換算)を添加し、最終的に固形分濃度60%の塗工液を調整した。
実施例4
製紙スラッジを原料とする無機粒子の[焼成物の懸濁化、炭酸化]における条件と [下塗り塗工液の調製]を次の通り変更した点を除き、実施例1と同様の方法で塗工紙を得た。
[焼成物の懸濁化、炭酸化]
焼成物を懸濁液化槽(消和槽)を用いて75℃の水と混合し、この懸濁液化槽の温度を75℃に保持しながら30分間攪拌して、固形分濃度が約10%の焼成物懸濁液を調製した。そして、この焼成物懸濁液10kgを炭酸化反応槽に仕込み、この炭酸化反応槽の温度を75℃に保持しつつ、懸濁液中に10容量%の二酸化炭素含有ガスを20リットル/分で吹き込みながら10時間攪拌を行って炭酸化処理した。懸濁工程終了から炭酸化工程開始までの時間は60(分)であった。
最終的に塗工用顔料用として得られた無機粒子は、白色度81%、スラリーの粘度は1000mPa・s、沈降嵩は0.75cc/gであった。
[下塗り塗工液の調製]
顔料100部のうち、実施例1で得た無機粒子を35部、高アスペクトカオリン(商品名:コンツアー1500、イメリスミネラル・ジャパン社製)35部、重質炭酸カルシウム(商品名:FMT90、ファイマテック社製)30部からなる顔料スラリーに、顔料100部に対してタピオカ澱粉(商品名:P−4、前出)5部、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:T2628G、JSR社製)10部(いずれも固形分換算)を添加し、最終的に固形分濃度60%の塗工液を調整した。
実施例5
製紙スラッジを原料とする無機粒子の[製紙スラッジの燃焼]における条件を次の通り変更した点を除き、実施例1と同様の方法で塗工紙を得た。
[製紙スラッジの燃焼]
燃焼処理は、外熱式回転キルン炉(高砂工業製の外熱式ロータリーキルン、加熱部分:回転胴の径300mm、長さ2400mm)を用いて行った。原料の製紙スラッジ造粒物を10kg/hの速度で供給した。原料温度が750℃、加熱部分に150分(キルン傾斜:1%、回転数:1.0rpm)になるように滞留させ、燃焼排ガスを焼成物排出側から20Nm/hで排出し、これに伴う減圧作用で排気口から排出される排ガスと同量の外気を給気口から吸入することで、回転胴内全体を常に過剰空気雰囲気に維持し、焼成物を得た。
最終的に塗工用顔料用として得られた無機粒子は、白色度72%、スラリーの粘度は1000mPa・s、沈降嵩は0.69cc/gであった。
実施例6
製紙スラッジを原料とする無機粒子の[製紙スラッジの乾燥、造粒]における条件を次の通り変更した点を除き、実施例1と同様の方法で塗工紙を得た。
[製紙スラッジの乾燥、造粒]
脱水した製紙スラッジを、回転乾燥機を用いて、固形分約75%になるように乾燥し、そのまま燃焼処理工程に進んだ。スラッジの大きさはφ20〜35mmであった。
しかし、24時間程度で乾燥機と焼成炉の間でつまりトラブルが発生してしまった。
また、最終的に塗工用顔料用として得られた無機粒子は、白色度81%、スラリーの粘度は50mPa・s、沈降嵩は0.68cc/gであった。
実施例7
塗工液を塗工する未塗工原紙を古紙配合0%の上質原紙(米坪70.0g/m)に変更した点を除き、実施例1と同様の方法で塗工紙を得た。
比較例1
製紙スラッジを原料とする無機粒子の[焼成物の懸濁化、炭酸化]を行わず、[脱水・分散・粉砕]でのスラリー濃度を35%まで落として調整した以外は、実施例1と同様の方法で無機粒子を得た。
最終的に塗工用顔料用として得られた無機粒子は、白色度81%、スラリーの粘度は5000mPa・s、沈降嵩は0.82cc/gであった。
2層塗工紙の製造では、[塗工液の塗工(2層)]の条件を次の通り変更した以外は、実施例1と同様にして塗工紙を得た。
[塗工液の塗工(2層)]
古紙100%配合の未塗工原紙(米坪70.0g/m)に、下塗り塗工液を片面あたりの乾燥質量(塗工量)が7g/mとなるようにロールコーターを使用して塗工を行おうとしたが、塗工液にチキソ性が発現し、粘度が高く、塗工できなかった。そこで下塗り塗工液濃度を20%まで落とし、両面に塗工・乾燥を行い、下塗り塗工層を設けたが、塗工量は0.7g/m(片面)であった。次いで上塗り塗工液を片面あたりの塗工量が8g/mとなるようにブレードコーターを使用して両面に塗工・乾燥を行い、上塗り塗工層を設けた。このようにして得られた塗工紙を温度70℃、線圧200kN/mでスーパーカレンダに通紙して塗工紙を得た。
比較例2
[下塗り塗工液の調製]を次の通り変更した点を除き、実施例1と同様の方法で塗工紙を得た。
[下塗り塗工液の調製]
顔料は、重質炭酸カルシウム(商品名:FMT90、ファイマテック社製)100部とし、顔料100部に対してタピオカ澱粉(商品名:P−4、前出)3部、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:T2628G、JSR社製)10.5部(いずれも固形分換算)を添加し、最終的に固形分濃度60%の塗工液を調整した。
しかし、ここで調整された下塗り塗工液は、塗工する際の塗料保水性が悪く、良好な塗工面(平滑)は得られなかった。
比較例3
[下塗り塗工液の調製]を次の通り変更した点を除き、実施例1と同様の方法で塗工紙を得た。
[下塗り塗工液の調製]
顔料100部のうち、実施例1で得た無機粒子を70部、重質炭酸カルシウム(商品名:FMT90、ファイマテック社製)30部からなる顔料スラリーに、顔料100部とし、顔料100部に対してタピオカ澱粉(商品名:P−4、前出)3部、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:T2628G、JSR社製)17.5部(いずれも固形分換算)を添加し、最終的に固形分濃度60%の塗工液を調整した。
比較例4
[下塗り塗工液の調製]を次の通り変更した点を除き、実施例1と同様の方法で塗工紙を得た。
[下塗り塗工液の調製]
顔料100部のうち、実施例1で得た無機粒子を5部、重質炭酸カルシウム(商品名:FMT90、ファイマテック社製)95部からなる顔料スラリーに、顔料100部とし、顔料100部に対してタピオカ澱粉(商品名:P−4、前出)13部、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:T2628G、JSR社製)10.5部(いずれも固形分換算)を添加し、最終的に固形分濃度60%の塗工液を調整した。
比較例5
製紙スラッジを原料とする無機粒子の[脱水・分散・粉砕]における粉砕条件を次の通り変更した点を除き、実施例1と同様の方法で塗工紙を得た。
[脱水・分散・粉砕]
実施例1と同様に脱水・分散を行った後、ダイノミル(株式会社シンマルエンタープライゼス製)を用いて湿式粉砕し、塗工用顔料に適した微粒子状の白色度81%の無機粒子を得た。この無機粒子スラリーの粘度は50mPa・s、沈降嵩は0.57cc/gであった。
比較例6
製紙スラッジを原料とする無機粒子の沈降嵩が0.82cc/gとした点を除き、実施例2と同様の方法で塗工紙を得た。
実施例1〜7および比較例1〜6の無機粒子ならびに塗工紙の品質評価は、23℃、50%RHの環境下で下記の方法により行った。評価結果を表1に示す。
<塗工紙の評価>
(塗工量の測定)
塗工前と塗工後の質量測定から、塗工量を求めた。
(白色度の測定)
分光白色度測色計(スガ試験機社製:SC−10WT型)を使用して、JIS P8148に準拠し測定した。
(光沢度の測定)
光沢度計(村上色彩技術研究所製)を使用し、JIS Z8741に準拠し、測定した。その際、白紙光沢については75°、印刷光沢については60°を用いた。
(PPS平滑度の測定)
パーカープリントサーフ(PPS)表面平滑度試験機(MESSER BUCHEL社製(英国):MODEL M−569型)を用い、バッキングディスク:ソフトラバー、クランプ圧力:0.98MPaで5回平滑度測定を行い、その平均を求めた。
(不透明度の評価)
黒色の文字や模様を印刷した紙の上に白紙サンプルを重ねておき、その不透明性を目し評価した。
◎ :文字や模様が全く見えない。
○:文字や模様がごくわずかに見られる。
△ :文字や模様が見える。
× :文字は模様が明瞭に見える。
(印刷光沢の評価)
RI印刷機にて、印刷インキ(商品名:TKハイユニティSOY8 赤MZ、東洋インキ社製)と印刷インキ(商品名:TKハイユニティSOY21 黄MZ、東洋インキ社製)を各々0.6ccと0.4cc使用して2色が重ね印刷を行い、乾燥後、60°光沢度計にて光沢度を測定した。
(印刷平滑の評価)
RI印刷機にて、印刷インキ(商品名:FUSION−G墨 Sタイプ、大日本インキ化学工業社製)を0.1cc使用して印刷を行い、転写したインキの均一性を目し評価した。
◎:印刷品質が特に優れる。
○:印刷品質が優れる。
△:印刷品質がやや劣る。
×:印刷品質が劣る。:
(表面強度の評価)
RI印刷機にて、印刷インキ(商品名:SMXタックグレード20、東洋インキ社製)を0.5cc使用して評価する塗工紙に転写速度をゆっくりめにしてインキを転写し印刷を行った後、ロール上のインキをふき取らずにインキを練り直して1度印刷した塗工紙に重ね刷りした後、再度ロールの上のインキをふき取らずにインキロール上に残ったインキに存在する紙表面の剥けた状態を別の紙に転写し、転写したインキの色抜けに状態を目し評価した。
◎:極めて良好。
○:良好。
△:やや劣る。
×:劣る。◎:
Figure 2012241304
本発明によれば、その大半が産業廃棄物として処分されている製紙スラッジ原料とした無機粒子を高濃度かつ低粘度スラリーにすること、また無機粒子の沈降嵩を制御することで、コストを抑制しつつ、印刷平滑や印刷光沢、不透明性に優れた高品質な印刷用塗工紙を提供できる。
1 ・・・・回転胴
1a ・・・・原料供給口
1b ・・・・焼成物排出口
2 ・・・・加熱ジャケット
3 ・・・・排気口
4 ・・・・原料投入口
5 ・・・・原料供給手段
6 ・・・・・給気口
7 ・・・・・焼成物取出口
8A、8B・・間接的加熱手段
81 ・・・熱風ブロア
82 ・・・熱風放出口
9 ・・・・・排気手段
10 ・・・排気循環ブロア
a ・・・・空気が流れる方向
b ・・・・製紙スラッジの進行方向
c ・・・・・回転胴の回転軸中心
d ・・・・・回転胴の回転方向
K1・・・・・筒型熱処理炉
S ・・・・・製紙スラッジ

Claims (8)

  1. 原紙の少なくとも片面に、顔料と接着剤を主成分とする 塗工層を2層以上設けた印刷用塗工紙において、原紙に接する 塗工層がフィルムトランスファー方式で塗工され、片面の塗工量が1〜10g/mで、前記フィルムトランスファー方式で塗工された 塗工層中に、製紙スラッジを含む原料を乾燥後、焼成する熱処理工程と、焼成物を水に懸濁して懸濁物を得る懸濁工程、二酸化炭素を含有するガスを接触させる炭酸化工程と、炭酸化した懸濁液を濃縮脱水する脱水工程と、得られた脱水濃縮物を分散させる分散工程を経て、得られた沈降嵩が0.6〜0.8cc/gの無機粒子を顔料100質量部に対して、10質量部以上含有し、接着剤としてラテックスと澱粉を含み、ラテックスと澱粉の質量比が、1:0.5〜1:10であることを特徴とする印刷用塗工紙。
  2. 前記接着剤が、 塗工層中の顔料100質量部に対して、20質量部以上含有することを特徴とする請求項1記載の印刷用塗工紙。
  3. 分散工程で用いられる分散機が、混合容器を自転させ、攪拌工具を別駆動で回転させる構造を有し、攪拌周速10m/s以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の印刷用塗工紙。
  4. 熱処理工程で得られた焼成物と水と混合する懸濁工程から炭酸化工程開始までの時間が、6時間以下であり、懸濁工程開始から炭酸化工程終了までの間の懸濁液の温度を70℃以下に制御することを特徴とする請求項1から3までのいずれかに記載の印刷用塗工紙。
  5. 熱処理工程が下記の条件の一次燃焼工程および二次燃焼工程を含むことを特徴とする請求項1から4までのいずれかに記載の印刷用塗工紙。
    一次燃焼工程:加熱炉内から燃焼ガスを強制的に排出しつつ、650℃以下の温度で原料を加熱する工程。
    二次燃焼工程:加熱炉内から燃焼ガスを強制的に排出しつつ、700〜850℃の温度で原料を加熱する工程。
  6. 原紙の古紙配合率が60〜100%である、請求項1から5までのいずれかに記載の印刷用塗工紙。
  7. 製紙スラッジを含む原料を乾燥後、焼成する前に、スラッジの大きさ(造粒径)をφ1〜25mmにする工程を含む、請求項1から6までのいずれかに記載の印刷用塗工紙。
  8. 製紙スラッジを含む原料を乾燥後、焼成する熱処理工程と、焼成物を水に懸濁して懸濁物を得る懸濁工程、二酸化炭素を含有するガスを接触させる炭酸化工程と、炭酸化した懸濁液を濃縮脱水する脱水工程と、得られた脱水濃縮物を分散させる分散工程を経て得られた沈降嵩が0.6〜0.8cc/gの無機粒子を顔料100質量部に対して、10質量部以上含有し、接着剤としてラテックスと澱粉を含み、ラテックスと澱粉の質量比が、1:0.5〜1:10である塗工層を原紙表面の少なくとも片面に、フィルムトランファー方式で、片面の塗工量が1〜10g/mとなるように塗工し、更にその上に塗工層を設けることを特徴とする印刷用塗工紙の製造方法。
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