JP4087431B2 - シリカ被覆再生粒子の製造方法、シリカ被覆再生粒子、これを使用した内添紙及び塗工紙 - Google Patents

シリカ被覆再生粒子の製造方法、シリカ被覆再生粒子、これを使用した内添紙及び塗工紙 Download PDF

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Description

本発明は、脱墨フロスを主原料とする再生粒子又は再生粒子凝集体を利用したシリカ被覆再生粒子の製造方法、及びこの方法によって得られたシリカ被覆再生粒子に関し、特に内添用の填料や塗工用顔料として好適なシリカ被覆再生粒子に関する。さらに、シリカ被覆再生粒子を使用したシリカ被覆再生粒子内添紙及び塗工紙も提供するものである。
古紙リサイクル工程を含む各種パルプ製造工程や製紙工程において発生する排水中には、カオリンクレー、タルク、炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、チタンなどの無機粒子をかなりの比率で含んでいる。これら排水中の固形分処理方法として、従来は、沈殿又は浮上などを利用した固液分離法により固形分が分取され、これを脱水処理して製紙スラッジとし、さらに焼却処理して減容化するとともに、残った焼却灰をセメント原料や炉の保温材として利用するか埋立て処理していた。
近年、環境保全、リサイクルの観点から、古紙の利用が飛躍的に増加し、古紙パルプ製造工程から排出されるCODやSS原因物質が他の製紙スラッジと比較して多いため、古紙パルプ製造工程で排出される製紙スラッジを再利用することが提案されている。
その一つとして特開平10−29818号(特許文献1)には、製紙プラントまたは紙または古紙を処理するプラントの排出物から得られた製紙スラッジを焼成することで、有機物を含まない粒状炭酸カルシウム含有無機材料を提供する方法が提案されている。この方法では、製紙スラッジを比較的低い温度(600〜800℃)で焼成し、得られた生成物を水性溶媒中に再懸濁し、酸処理または二酸化炭素含有ガスを通すことにより、溶出したカルシウム分の炭酸化を行う。この再生炭酸カルシウムは内添用の填料として再利用できることが記載されている。
しかしこのように製紙スラッジを焼成して得られた生成物を内添用の填料として再利用する場合における最も大きな問題点は、原料とする製紙スラッジが、抄紙工程でワイヤーを通過して流出したもの、パルプ化工程での洗浄過程で発生した固形分を含む排水から回収したもの、排水処理工程において、沈殿又は浮上などを利用した固形分分離装置によりその固形分を分離、回収したもの、古紙処理工程での混入異物除去したもの等の各種スラッジが混在している点である。
これらの製紙スラッジのうち、例えば、抄紙工程でワイヤーを通過して流出したものは、紙力剤等が混入しており、また、抄紙工程における抄造物の変更によって品質に変動が生じる。さらに、排水スラッジであれば凝集剤が混入しており、さらに工場全体の抄造物、生産量の変動、又は生産設備の工程内洗浄などにより大きな変動が生じる。パルプ化工程での洗浄過程から生じる製紙スラッジにおいては、チップ水分やパルプ製造条件で変動が生じるなど、填料、顔料とすることができないさまざまな物質が混入し、品質変動が生じる。したがって、全ての製紙スラッジを無選別に使用しようとすると、得られる内添用の填料・顔料の品質が大きく低下し、しかも品質の変動が極めて大きく、不安定なものとなる。
すなわち、特許文献1の方法で得られる再生粒子は、焼成して得られた種となる生成物が不安定なものであるため、炭酸カルシウムを再生しても性状が安定せず、填料や塗工用の顔料として使用するには品質が適しない場合が多く、品質安定性に欠けるものであった。
他方、軽質炭酸カルシウムとアルカリ性のケイ酸金属塩水溶液を混合した液に、その煮沸温度以下の温度で、鉱酸を添加し液pHを7〜9として得られる、軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物における、軽質炭酸カルシウムとケイ酸との重量比率を30:70〜55:45とする方法の一つとして特開2005−219945号(特許文献2)や、無機微粒子を珪酸アルカリ水溶液に添加・分散し、スラリーを調製した後に加熱攪拌しながら、液温を60〜100℃の範囲に保持し酸を添加し、シリカゾルを生成させ、混合液のpHを中性〜弱アルカリ性の範囲に調整することにより、無機微粒子・シリカ複合粒子を製造する、さらに、これをパルプスラリーに填料として内添し、紙を製造する方法として特開2003−49389号(特許文献3)が提案されている。
特許文献2に記載の方法は、種となる無機粒子に炭酸カルシウムを使用し、炭酸カルシウム粒子の表面に非晶質のシリカを析出させる方法であり、特許文献1と比べ、種となる無機粒子が軽質炭酸カルシウム(水酸化カルシウム懸濁液と二酸化炭素の反応によって沈降させた軽質炭酸カルシウム)であるため性状・形状ともほぼ均質な点で優れている。
しかしながら、軽質炭酸カルシウムを種とした非晶質のシリカ析出は、相異なる無機成分であるため軽質炭酸カルシウムの表面にシリカが析出するよりも遊離した非晶質シリカの生成が主体となり、軽質炭酸カルシウムの被覆効率が低くシリカ被覆に長時間が必要であると共に、薬品歩留りが低く製造原価が高くなる問題が発現するため、特開昭58−115022に記載の製造方法のように、水酸化カルシウム〜軽質炭酸カルシウムを製造する反応工程中に珪酸アルカリ水溶液を混合し軽質炭酸カルシウムの析出と同じくしてシリカ被覆を行わせ、シリカ被覆効率を向上させようと試みたものである。
特許文献3に記載の方法は、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、カオリン、焼成カオリン、二酸化チタン、水酸化アルミニウムの単独または2種以上の混合物である無機微粒子を珪酸アルカリ水溶液に添加・分散しスラリーを調製した後に加熱攪拌しながら、液温を60〜100℃の範囲に保持し酸を添加し、シリカゾルを生成させ、混合液のpHを中性〜弱アルカリ性の範囲に調整することにより形成される無機微粒子・シリカ複合粒子の製造方法であるが、その原料となる炭酸カルシウム、タルク、クレイ、カオリン、焼成カオリン、二酸化チタン、水酸化アルミニウム等にシリカを被覆する製法のため、個々の原料無機粒子の性状をシリカ被覆で向上させ得るものの、多孔性が飛躍的に向上するものでもなく、バージンの無機粒子を使用するため、製造コストが高く、実使用するには困難である。
特開2002−233851号(特許文献4)には、近年の環境保全、リサイクルの観点から、古紙リサイクル過程で排出される製紙スラッジを再利用し、製紙スラッジを比較的低い温度で焼成し、得られた焼成灰を水酸化カルシウム含有水性溶媒中に再懸濁し、二酸化炭素または二酸化炭素含有ガスを通すことにより、焼成灰粒子の周囲を軽質炭酸カルシウムで被覆する軽質炭酸カルシウム被覆粒子の製造技術が開示されている。
焼却灰をほぼ軽質炭酸カルシウムに覆った粒子が得られるので、炭酸カルシウムにほぼ近い物性の粒子が得られるとされる。
しかしこの方法は、先に述べた特許文献1と同様に、原料とする製紙スラッジが、抄紙工程でワイヤーを通過して流出したもの、パルプ化工程での洗浄過程で発生した固形分を含む排水から回収したもの、排水処理工程において、沈殿又は浮上などを利用した固形分分離装置によりその固形分を分離、回収したもの、古紙処理工程での混入異物除去したもの等の各種スラッジが混在している点が問題となるのである。
すなわち、炭酸カルシウムの析出は、焼成灰中に含まれるカルシウム元素を種として軽質炭酸カルシウムを析出するようにしているので、焼却灰中の種として作用するカルシウム元素が少ない場合には適応できない。その結果、焼成灰の周囲に部分的に軽質炭酸カルシウムが析出した粒子や、焼却灰と軽質炭酸カルシウムとが混在したものが得られ、これを製紙の填料や塗工用顔料として用いた場合、白色度、摩耗性などについて満足する特性が得られないことが、本発明者の取り組みでわかった。
特開平10−29818号公報 特開2005−219945号公報 特開2003−49389号公報 特開2002−233851号公報
そこで本発明は、古紙の処理工程における脱墨処理工程で排出される脱墨フロスを主原料とし、前記主原料を脱水工程、乾燥工程、焼成工程、粉砕工程を経て得られ、前記焼成工程において凝集体とした再生粒子(再生粒子凝集体)を利用して、この再生粒子凝集体粒子の周囲(外面)をシリカで被覆して、白色度、吸油度が高く、低摩耗性のシリカ被覆再生粒子を提供することを目的とする。
また本発明は、シリカ被覆再生粒子の核として作用する再生粒子凝集体が、カルシウム、ケイ素、アルミニウムを構成成分とする無機粒子凝集体であり、好適には、シリカ被覆再生粒子の構成成分におけるカルシウム、ケイ素、アルミニウムの割合が、酸化物換算で10〜80:10〜80:5〜29の質量割合で含有し、かつ、前記再生粒子の構成成分のうち、前記カルシウム、前記ケイ素及び前記アルミニウムの合計含有割合が再生粒子構成成分中の90質量%以上であるシリカ被覆再生粒子の製造方法を提供することを目的とする。
さらに本発明は上述したシリカ被覆再生粒子を利用した内添紙または塗工紙であって、必要な性能を充分な発揮する内添紙または塗工紙も提供することを目的とする。
上記目的を達成する本発明者らは、古紙の処理工程における脱墨処理工程で排出される脱墨フロスを主原料とし、前記主原料を脱水工程、乾燥工程、焼成工程、粉砕工程を経て、すなわち好適には炭化工程やいわゆる白化工程を採ることなく、得られた再生粒子凝集体、すなわち、粉砕工程後に架橋吸着を利用する凝集剤を添加して凝集を図るものでなく、焼成工程において凝集体とした再生粒子凝集体を利用して、当該再生粒子凝集体を核としてシリカ被覆再生粒子を製造する条件について鋭意研究した。その結果、次記の態様が好ましいことを見出した。
すなわち、脱墨フロスを主原料とする再生粒子凝集体を得るに当り、脱墨フロス中に含有される炭酸カルシウムの分解を最小限度に抑えるために焼成工程で500〜800℃(より好ましくは500〜700℃)の焼成温度、0.05%以上(より好ましくは0.15〜20%)の酸素濃度存在下で焼成を行う。
焼成工程後、粉砕工程前段で水溶液に分散させた際に水溶液は、焼成時に炭酸カルシウムが熱分解して生成した酸化カルシウムによりpHが10〜12程度になる。粉砕工程の前または/および後にてPHを8〜11程度に調整したうえで、所望の粒度に粉砕後の再生粒子凝集体と、珪酸アルカリ水溶液とを接触させ、60〜100℃に加熱し、さらに鉱酸を加える、懸濁、加熱、鉱酸の添加順序は特定されたものではないが、懸濁、加熱、鉱酸の添加を順次行うことで、再生粒子凝集体表面にシリカを析出させることができる。
再生粒子凝集体を含む水性懸濁液中に珪酸アルカリ水溶液を混合し、鉱酸と反応させることにより、脱墨フロスを主原料とする再生粒子凝集体を核とするシリカ生成反応が進み、脱墨フロスを主原料とする再生粒子凝集体粒子表面をシリカが覆った粒子が得られることにより、白色度の高いシリカ被覆再生粒子が得られることを見出したものである。
本発明に係る再生粒子凝集体及びシリカ被覆再生粒子は、不定形な粒状構造を有する主として凝集体である。その形状を文言で特定しがたいが、あえて言えば、金魚の一種のランチュウの肉瘤に似ており、「略球状であり、大小の略球状が3次元フラクタルな構造」を有しており、「略球状粒子のフラクタルな凝集体」と呼べるものであり、「金魚のランチュウの肉瘤状に似た不定形な大小の略球状粒子の凝集体(略球状3次元フラクタル形状)」とも言えるものである。
かかる本発明によれば次記の態様が提供される。
<請求項1項記載の発明>
古紙パルプを製造する古紙処理工程の脱墨工程で排出される脱墨フロスを主原料とし、脱水工程、乾燥工程、焼成工程及び粉砕工程を経て、前記焼成工程において凝集体とした再生粒子を得て、この再生粒子を珪酸アルカリ水溶液中に懸濁するとともに鉱酸を添加し、再生粒子の周囲をシリカで被覆してシリカ被覆再生粒子を得ることを特徴とするシリカ被覆再生粒子の製造方法。
<請求項2項記載の発明>
前記再生粒子と珪酸アルカリ水溶液の液温60〜100℃の混合液に、前記混合液のpHが8.0〜11.0の範囲になるように鉱酸の添加を行う請求項1記載のシリカ被覆再生粒子の製造方法。
<請求項3項記載の発明>
前記再生粒子は、古紙パルプ製造工程の脱墨処理工程において排出される脱墨フロスを主原料に、500〜800℃、0.05%以上の酸素濃度存在下で焼成した脱墨フロスを主原料とする再生粒子を、平均粒子径が0.1〜10μmとなるように湿式粉砕したものである請求項1または2記載のシリカ被覆再生粒子の製造方法。
<請求項4項記載の発明>
前記再生粒子は、カルシウム、ケイ素、アルミニウムを構成成分とする無機粒子であり、得られるシリカ被覆再生粒子は、その構成成分におけるカルシウム、ケイ素、アルミニウムの割合が、酸化物換算で10〜80:10〜80:5〜29の質量割合で含有する請求項1〜3のいずれか1項記載のシリカ被覆再生粒子の製造方法。
<請求項5項記載の発明>
請求項1〜4のいずれか1項に記載の前記シリカ被覆再生粒子は、前記再生粒子を粒子種として、粒子種の表層がシリカで被覆された、不定形な粒状構造を有する構成であり、吸油度が50〜180ml/100g(JIS K 5101)であるシリカ被覆再生粒子。
<請求項項記載の発明>
請求項1〜4のいずれか1項に記載の前記シリカ被覆再生粒子を内添用填料として用いたことを特徴とするシリカ被覆再生粒子内添紙。
<請求項項記載の発明>
紙の少なくとも一方の面に1層又は複数層の塗工層を設けてなる顔料とバインダーを主成分とする塗工紙であって、前記顔料は請求項1〜4のいずれか1項に記載の前記シリカ被覆再生粒子であることを特徴とする塗工紙。
本発明によれば、脱墨フロスを利用して実用的かつ高品質の再生粒子凝集体のシリカ被覆再生粒子を提供することができる。特に本発明の製造方法によって製造された再生粒子凝集体のシリカ被覆再生粒子は、嵩高く白色度、吸油度、不透明度が高いので内添用填料又は塗工用顔料として有用であり、これを用いたシリカ被覆再生粒子内添紙又は塗工紙は通常のシリカを用いたものと殆ど変らない特性を有している。
次に、本発明の実施の形態を説明する。
まず、脱墨フロスを主原料とする再生粒子凝集体の原料と焼成方法について説明する。本発明のシリカ被覆再生粒子の製造方法において用いられる脱墨フロスを主原料とする再生粒子凝集体は、古紙から脱墨処理を行い古紙パルプを製造する脱墨処理工程における、脱墨処理工程で発生する脱墨フロスを主原料とし、脱水工程、乾燥工程、焼成工程を経て得られた再生粒子凝集体を利用することができる。
特に古紙のリサイクル工程で排出される脱墨フロスが、製紙原料由来の材料からなり、鉄分やその他重金属等の不純物の混入が少ないため好適である。これら脱墨フロスには、無機物として炭酸カルシウム、カオリン、タルク、シリカ、二酸化チタン等が含有される。
〔原料〕
古紙パルプ製造工程では、安定した品質の古紙パルプを連続的に生産する目的から、使用する古紙の選定、選別を行い、一定品質の古紙を使用する。
そのため、古紙パルプ製造工程に持ち込まれる無機物の種類やその比率、量が基本的に一定になる。しかも、再生粒子凝集体の製造方法において未燃物の変動要因となるビニルやフィルムなどのプラスチック類が古紙中に含まれていた場合においても、これらの異物は脱墨フロスを得る脱墨工程に至る前段階で除去することができる。従って、脱墨フロスは、工場排水工程や製紙原料調整工程等、他の工程で発生するスラッジと比べ、極めて安定した品質の再生粒子凝集体を製造するための原料となる。
本発明で云う脱墨フロスとは、古紙パルプを製造する古紙処理工程において、主に、古紙に付着したインクを取り除く脱墨工程で、パルプ繊維から分離されるものをいう。
〔脱水工程〕
脱墨フロスの更なる脱水は、公知の脱水手段を適宜に使用できる。本形態における一例では、脱墨フロスは、脱水手段たる例えばロータリースクリーンによって、脱墨フロスから水を分離して脱水する。ロータリースクリーンにおいて、水分95〜98%に脱水した脱墨フロスは、好適には例えばスクリュープレスに送り、更に40%〜70%に脱水することができる。
以上のように、脱墨フロスの脱水を多段工程で行い急激な脱水を避けると、無機物の流出が抑制でき脱墨フロスのフロックが硬くなりすぎるおそれがない。脱水処理においては、脱墨フロスを凝集させる凝集剤等の脱水効率を向上させる助剤を添加しても良いが、凝集剤には、鉄分を含まないものを使用することが好ましい。鉄分が含有されると、鉄分の酸化により再生粒子凝集体の白色度を下げる問題を引き起こす。
脱墨フロスの脱水工程は、本発明における再生粒子凝集体製造工程に隣接することが、生産効率の面で好ましいが、予め古紙パルプ製造工程に隣接して設備を設け、脱水を行った物を搬送することも可能である。
〔乾燥工程〕
脱墨フロスを脱水して得た脱水物は、トラックやベルトコンベア等の搬送手段によって定量供給機16まで搬送し、この定量供給機16から乾燥手段17に供給する。
この乾燥手段は、脱水物が供給される乾燥容器と、この乾燥容器の底部に備わり供給された脱水物をかきあげる一対のロールと、この一対のロール相互間から上方に熱風を吹き上げる熱風吹上手段と、から主になる。また、熱風吹上手段は、乾燥容器の底部に給送流路56が接続され、この給送流路を通して、乾燥容器内に熱風が吹き込まれる構成となっている。
すなわち、本乾燥手段は、脱水物を、一対のロールという有形的な手段によって、強くかつ大まかにほぐし、これに加えて熱風という無形的な手段によって、弱くかつ精細にほぐすことにより、大きい・小さい、硬い・柔らかい等さまざまな性質を有する脱水物の水分率の制御と粒揃えを安定的に行うことができる。
特に、乾燥容器内に供給する脱水物を、水分率40〜70質量%に脱水している場合は、熱風の温度を、100〜200℃にするのが好ましく、120〜180℃にするのがより好ましく、130〜170℃にするのが特に好ましい。脱水物の水分率が40〜60質量%の場合は、100℃の熱風でも十分に乾燥することができる。他方、熱風の温度は200℃以下とすることが好ましい。熱風の温度が200℃を超える場合は、大きい・小さい、硬い・柔らかい等さまざまな性質を有する脱水物の粒揃えが進行するよりも早く乾燥が進むため、粒子表面と内部の水分率の差を少なく均一にすることが困難になる。
以上の脱水物の乾燥は、焼成工程前の乾燥物の水分率が2〜20質量%となるように乾燥するのが好ましく、乾燥物の水分率が3〜15質量%となるように乾燥するのがより好ましく、乾燥物の水分率が3〜10質量%となるように乾燥するのが特に好ましい。脱水物を、水分率が2質量%未満の範囲まで乾燥すると、後行する焼成において、過焼する問題が生じる。他方、脱水物を、水分率が20質量%を超える範囲で乾燥すると、後行する焼成を確実に行うことが困難になる。
乾燥物の粒揃えは、粒子径355〜2000μmのものが70質量%以上となるように調整するのが好ましく、粒子径355〜2000μmのものが75質量%以上となるように調整するのがより好ましく、粒子径355〜2000μmのものが80質量%以上となるように調整するのが特に好ましい。
また、乾燥物を、粒子径355μm〜2000μm以上のものが70質量%以上となるように製造すると、つまり小径な粒子の乾燥物を除去すると、部分的な過焼が防止され、焼成が均一になる。従って、得られる再生粒子凝集体の品質を均一にするという観点における実用化可能性に、有益である。更に、本形態のように、分級を乾燥後とすると、小径な粒子の乾燥物を確実に除去することができ、また、処理効率も向上する。
〔焼成工程〕
サイクロン内を底部まで落下した乾燥物は、移送流路を通して、かつこの移送流路の途中に備わる排風ファンで勢いを増して、サイクロン式の第1焼成段階を構成する燃焼炉に送られる。
この焼成炉では、乾燥物を、旋回落下させることで粒子の微細化を抑制し、また、この過程で、焼成し未燃分を調整する。
本焼成炉での焼成は、製紙用として有用に利用できるレベルの白色度を有するシリカ被覆再生粒子を得るために、その再生粒子凝集体の焼成における酸素濃度としては0.05%以上、好ましくは0.05〜20%に、さらに好ましくは0.15〜20%、特に好ましくは5〜15%に調整され、更に、未燃率が5〜30質量%となるように行うのが好ましく、8〜25質量%となるように行うのがより好ましく、10〜30質量%となるように行うのが特に好ましい。
焼成における酸素濃度が0.05%未満では、有機物の焼成が進まず炭化する問題が生じ、炭化により表層部から芯部にいたる燃焼が均等に行われがたくなり、得られる再生粒子凝集体が灰黒色になる又は、白色度が向上しない問題が生じる。また、酸素濃度が20%以上になると、焼成が進みすぎる過焼により極めて硬い再生粒子凝集体が生じ、抄紙用語の摩耗や破損を招く問題が生じる恐れがある。
焼成における未燃率についても、5質量%未満では、焼成における粒子表面の過焼が生じ表面が硬くなるとともに、内部の酸素不足が生じ、再生粒子凝集体の白色度が低下する問題が生じる。他方、焼成を、未燃率が30質量%を超えると、後行する燃焼焼成後においても未燃分が残る問題、更にはこの未燃分が残るのを防止するためとして粒子表面が過焼するまで燃焼焼成してしまい、向き粒子表面が硬くなる問題が生じる。
本焼成炉の形態は、特に限定されないが、サイクロン式であることが好ましい。サイクロン式によると、前述のとおり、粒子の微細化を抑制することで未燃率を均一かつ確実に調節することができる。
焼成温度範囲は、510〜750℃の範囲で行うことが好ましく、第1段階焼成は、焼成炉上端部の温度を510〜750℃とし、燃焼焼成炉25内の温度を化焼成炉上端部の温度より低い500〜700℃とするのが好ましく、焼成炉上端部の温度を550〜730℃とし、燃焼焼成炉内の温度を焼成炉上端部の温度より低い510〜680℃とするのがより好ましく、焼成炉上端部の温度を580〜700℃とし、燃焼焼成炉内の温度を焼成炉上端部の温度より低い550〜660℃とするのが特に好ましい。
脱墨フロス中にシリカが含まれる場合には、シリカがカルシウムおよびアルミニウムと反応し、硬度の高いケイ酸アルミニウムカルシウム等が生成するのを防止するために硬度の高い物質が生成しない条件(例えば、500℃以下)で焼成することもできるが、このような条件では、有機化合物を完全燃焼させることが難しいために、500℃以上が好ましい。
他方、焼成温度が1000℃を超えると脱墨フロス中に含まれる炭酸カルシウム、カオリン、タルク等無機物の分解および焼結が進み、焼成して得られた脱墨フロスを主原料とする再生粒子凝集体を本発明において所望される粒子径まで粉砕するのに多大のエネルギーや時間を要するので1000℃以下が好ましく、焼成炉上端部の温度を600〜680℃とし、燃焼焼成炉内の温度を焼成炉上端部の温度より低い580〜650℃とすると、製造される製紙用微細粒子が再生填料や顔料として使用するに好適なものとなる。
燃焼焼成炉内の温度を焼成炉上端部の温度より10〜50℃低くすることで、製紙用微細粒子表面の過焼を防止しながら、未燃物を燃焼させることができる。
焼成炉で得た焼成物は、第2焼成段階である燃焼焼成炉に送り、燃焼焼成する。燃焼焼成炉は、ロータリーキルン炉、流動床炉、ストーカー炉、サイクロン炉、半乾留・負圧燃焼式炉等、公知の装置を用いることができるが、本発明においては、温度変化が少ない環境下で過大な物理的圧力を掛けることなく攪拌しながら満遍なく燃焼させることができる方策として、ロータリーキルン炉が好ましい。
〔粉砕工程〕
次に脱墨フロスを主原料とする再生粒子凝集体の粉砕工程について説明する。本発明では、上述のような焼成によって得られた脱墨フロスを主原料とする再生粒子凝集体を平均粒子径が0.1〜10μm、好適には0.5〜5μmとなるように粉砕する。かかる粒径に粉砕を行うことにより、後述するシリカ生成反応において、核として作用するカルシウム化合物が少ない脱墨フロスを主原料とする再生粒子凝集体や、焼成した脱墨フロスを主原料とする再生粒子凝集体であっても、再生粒子凝集体を核としてその表面にシリカが生成し、再生粒子凝集体粒子がほぼ完全にシリカで覆われた粒子を得ることができる。
脱墨フロスを主原料とする再生粒子凝集体の粉砕方法としては、乾式粉砕機による粉砕、または湿式粉砕機による粉砕が可能であり、乾式粉砕機、湿式粉砕機をそれぞれ、又は片方のみ複数段設けることやこれらを適宜組み合わせて粉砕することができる。脱墨フロスを主原料とする再生粒子凝集体の平均粒子径が0.1〜10μmとなるように粉砕する。湿式粉砕前に乾式粉砕等の手段によりにより予め小粒子化しておくことが粉砕効率上、より好ましい。
乾式粉砕機としては、例えば、数mmのものを数十μmにまで粉砕する粉砕機としてロールクラッシャ、ローラーミル、スタンプミル、エッジランナ、カッタミル、ロッドミルなどを例示することができる。また数μm以下に粉砕する粉砕機としてローラーミル、ジェットミル、乾式ボールミル、衝撃式粉砕機などが使用できる。
湿式粉砕機としては、湿式ボールミル、振動ミル、攪拌槽型ミル、流通管型ミル、コボールミルなどが使用できる。湿式粉砕では脱墨フロスを主原料とする再生粒子凝集体に水を加えてスラリー化するが、この際、均一に分散するために分散剤を添加してもよい。分散剤を添加することによって、スラリーを高濃度化しても粘度上昇を防止することができるほか、湿式粉砕による粘度上昇を防止し、粉砕効率やハンドリング性を向上させることができる。
なお、湿式粉砕前後にオープン型振動スクリーン、多管式振動加圧フィルタや機械式加圧フィルタなどのスクリーニング装置を介して難粉砕性の焼結物を除去することもできる。このような分級工程を経ることにより、焼成工程で生成した高硬度粒子や粒径の大きな粒子を取り除くことができる。これによりその後のシリカ被覆処理工程において粒度の揃った白色度の高い低摩耗度のシリカ被覆再生粒子を得ることができる。またシリカ被覆処理前に分級しておくことにより、シリカ被覆後の分級にかかる負荷を低減することができる。
(シリカ被覆処理工程)
次にシリカ被覆処理工程について説明する。上述のようにして粉砕した脱墨フロスを主原料とする再生粒子凝集体を珪酸アルカリ水溶液中に混合する。珪酸アルカリ水溶液は特に限定されないが、珪酸ナトリウム溶液(3号水ガラス)が入手に容易である点で望ましい。珪酸アルカリ溶液の濃度は水溶液中の珪酸分(SiO2換算)で3〜10質量%が好適である。10質量%を超えると形成される再生粒子凝集体とシリカが被覆された複合体は無機微粒子・シリカ複合凝集体ではなく、前記の再生粒子凝集体がホワイトカーボンで被覆されてしまい、芯部の再生粒子凝集体の、多孔性、光学的特性が全く発揮されなくなってしまう。また、3質量%未満では複合粒子中のシリカ成分が低下するため、シリカが被覆された再生粒子凝集体粒子が形成しにくくなってしまう。
再生粒子凝集体と珪酸アルカリ水溶液、鉱酸の混合工程は、上述のように調製した珪酸アルカリ水溶液に粉砕後の脱墨フロスを主原料とする再生粒子凝集体を加え、シリカ被覆化の反応を行う。本発明で使用される鉱酸としては希硫酸、希塩酸、希硝酸などの鉱酸の希釈液等が挙げられるが、価格、ハンドリングの点で希硫酸が最も望ましい。さらに、希硫酸を使用する場合の添加時の濃度は、0.2〜4.0モル濃度が望ましい。また、鉱酸添加量が多いほど短時間内にシリカが析出するので、それらの条件に合わせて添加速度を調整することが望ましい。5分以内の添加は、均一な反応系の構成が不十分になる。
本発明で用いる再生粒子には、所定の範囲でカルシウム、アルミニウムを構成元素として含有しており、過度の濃度の鉱酸添加は、再生粒子の変質を生じる恐れがある。
本発明での再生粒子凝集体のシリカ被覆再生粒子の製造時の反応温度に関しては、60〜100℃の範囲が望ましい。本発明者らの鋭意検討の結果から、本発明に使用する再生粒子凝集体との反応温度はシリカの生成、結晶成長速度および形成された再生粒子凝集体のシリカ被覆再生粒子の力学的強度に影響を及ぼす。反応温度が60℃未満ではシリカの生成・成長速度が遅く、形成された再生粒子凝集体のシリカ被覆再生粒子の被覆性に劣り、被覆の剥落が生じやすく、填料内添紙の抄造時にかかる剪断力で被覆が壊れ易い。100℃を超えると、水系反応であるためオートクレーブを使用しなければならないため反応工程が複雑になってしまう。最適反応温度は60〜80℃である。
また、再生粒子凝集体のシリカ被覆再生粒子を製造する場合、再生粒子凝集体を珪酸アルカリ水溶液に添加、分散しスラリーを調製するが、このスラリー濃度は、3〜35質量%が望ましい。スラリー濃度を調整することにより、形成される再生粒子凝集体のシリカ被覆再生粒子の粒径がコントロールされると同時に再生粒子凝集体とシリカの組成比率が決まる。
本発明では、再生粒子凝集体を珪酸アルカリ水溶液に添加・分散しスラリーを調製した後に攪拌しながら、液温を60〜100℃の範囲に保持し鉱酸を添加した混合液を調整し、シリカゾルを生成させ、前記混合液のpHを中性〜弱アルカリ性、好ましくは混合液を8〜11の範囲に調整することにより再生粒子凝集体のシリカ被覆再生粒子を製造し、スラリーをろ過・水洗するとウェットケーキが得られる。
(用途又は適用)
このような方法によって製造した本発明のシリカ被覆再生粒子は、バージンシリカと同程度の白色度を有し、しかも脱墨フロスを主原料とする再生粒子凝集体であるために硬度が低く、これを製紙用の填料や顔料として使用した場合に抄紙機や塗工機等の摩耗性トラブルを回避できる。また本発明のシリカ被覆再生粒子は、元来ポーラスな再生填料の表面をシリカで被覆したものであることから比表面積が大きく、これを内添用の填料や塗工用顔料として使用すると、白色度と不透明度が高い紙を得ることもできる。
なお、本発明のシリカ被覆再生粒子は製紙用以外に、ゴム、プラスチック、塗料、インキ等のフィラーとして用いることができ、高い白色度と隠蔽性を付与することができる。
更に、シリカ被覆再生粒子の吸油度は、50〜180ml/100gの範囲が好ましい。これは、この範囲のシリカ被覆再生粒子を内添填料として使用する場合、紙層中において、シリカ被覆再生粒子が紙層中に含浸されるインクのビヒクル分や有機溶剤等を吸収し、用紙の印刷不透明度が低下するのを抑制し、また、インクのビヒクル分や有機溶剤等を吸収することで、インク乾燥性やニジミの防止効果が顕著になるためである。一方、吸油度が50ml/100g未満の場合には上記の効果が十分でなく、シリカ被覆再生粒子がインクの吸収・乾燥性を阻害する傾向が生じる場合が有るので注意が必要である。また吸油度が180ml/100gを超えると、インクの吸収性が高いためインクの沈みこみ、所謂発色性が劣る問題が生じる。
次に本発明のシリカ被覆再生粒子の内添用填料や塗工用顔料への適用について説明する。本発明のシリカ被覆再生粒子は、単独で又は通常の炭酸カルシウム、カオリンクレー、タルク、二酸化チタン、サチンホワイト、プラスチックピグメント等の通常の顔料と混合して用いることができる。
填料や塗工用顔料として使用する場合、例えば、上記通常の内添用填料や塗工用顔料の合計量に対して、本発明のシリカ被覆再生粒子を5〜100質量%、好適には10〜100質量%添加して使用することができる。
本発明のシリカ被覆再生粒子を用いてシリカ被覆再生粒子内添紙を製造する方法は、通常の填料内添紙の製造方法と同様であり、例えば本発明のシリカ被覆再生粒子と上記比率でほかの填料と混合したスラリーをパルプ原料スラリーに添加し、さらに必要に応じて紙力増強剤、サイズ剤、歩留り向上剤等の添加剤を加えた紙料とし、これを抄紙することにより得られる。パルプ原料に対する填料添加率は、1〜50質量%、好適には3〜30質量%とする。
紙料スラリーに添加する添加剤としては公知のものを用いることができ、例えば紙力増強剤としては澱粉類、植物性ガム、水性セルロース誘導体、ポリアクリルアミド等が、サイズ剤としてはロジン、澱粉、CMC(カルボキシルメチルセルロース)、ポリビニルアルコール、アルキルケテンダイマー、ASA(アルケニル無水コハク酸)、中性ロジン等が、また歩留り向上剤としてポリアクリルアミドおよび共重合体、第4級アンモニウム塩等が挙げられる。さらに必要に応じて染料、顔料等の色料を添加してもよい。
これら添加剤を添加、混合し紙料を公知の抄紙機で抄造することによりシリカ被覆再生粒子内添紙を製造することができる。坪量は特に限定されないが、通常10〜300g/m2程度とする。
さらに、本発明のシリカ被覆再生粒子を用いて塗工紙を製造する方法は、通常の塗工紙の製造方法と同様であり、例えば本発明のシリカ被覆再生粒子を前記比率でほかの顔料と混合し、分散剤を添加して得たスラリーを接着剤や他の添加剤を混合して塗料を調整し、これを中質紙、上質紙等の紙材上に塗工することにより得られる。ただし、塗工用顔料として使用する場合には塗工機における作業性、欠陥の防止を目的に平均粒子径を0.5〜5μm好ましくは1〜2μmに調整する必要がある。調整方法としては、1)シリカを被覆させる前の再生粒子凝集体の粒子径を2μm以下に調整する。2)シリカ被覆再生粒子を粉砕機好ましくは湿式粉砕機で処理し、粒子径を調整する。以上の方法で粒子径を0.5〜5μmに調整することができる。
接着剤としては、例えばスチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等の共役ジエン系共重合体ラテックス、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルの重合体または共重合体等のアクリル系重合体ラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス、又はこれらの各種重合体ラテックスをカルボキシル基等の官能基含有単量体で変性したアルカリ部分溶解性又はアルカリ非溶解性の重合体ラテックスが使用される。
さらに上記のような合成接着剤のほかに、例えば陽性化澱粉、酸化澱粉、酸素変性澱粉、熱化学変性澱粉、エーテル化澱粉、エステル化澱粉、冷水可溶澱粉等の澱粉類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等のセルロース類、ポリビニルアルコール、オレフィン−無水マレイン酸樹脂などの水溶性合成接着剤等を適宜選択して併用できる。必要に応じて、顔料スラリーや塗料中には消泡剤、耐水化剤、流動性変性剤、着色剤、蛍光増白剤等の各種添加剤が添加される。また分散剤としてはケイ酸ソーダ、ヘキサメタリン酸ソーダ、ポリアクリル酸ソーダ等が挙げられる。
塗工は、塗工量に応じて、エアーナイフ、ブレード、ゲートロール、ロッド、バー、キャスト、グラビア、カーテン等の公知の塗工機(コーター)で行うことができる。塗工量は片面当たり乾燥重量で通常数〜数10g/m2程度である。
このようにして得られた乾燥後の塗工紙は、一般に印刷適性(例えば、高平滑や高光沢)を付与する目的で、カレンダに通紙して加圧仕上げが施される。この場合のカレンダ装置としては、例えばスーパーカレンダ、グロスカレンダ、ソフトコンパクトカレンダなどの金属またはドラムと弾性ロールの組み合わせになる各種カレンダが、オンマシン又はオフマシン仕様で適宜使用できる。
シリカ被覆再生粒子を用いて塗工紙を製造する場合においても、シリカ被覆再生粒子の吸油度は、50〜180ml/100gの範囲が好ましい。これは、接着剤と混合して使用する場合、その塗工液中においてシリカ被覆再生粒子が接着剤を吸収し、その真密度が低下するため沈降が抑制され、更にシリカ被覆再生粒子が塗工層中で偏った沈降を呈さなくなり、塗工層中で均一に分散される効果が顕著に現れるため非常に好ましい。しかし、吸油度が50mL/100g以下の場合には上記の効果が不十分であり、シリカ被覆再生粒子の真比重と塗工液の比重との差によりシリカ被覆再生粒子が沈降して塗工層中に不均一な分散状態になるので好ましくない。また、吸油度が180mL/100gを越える場合では、接着剤中に混合して塗料として使用すると、それらを塗工した後、乾燥中にシリカ被覆再生粒子が吸収した多量の塗料を放出して収縮するため、塗膜がひび割れを起こしたり、塗工層表面の平滑性が失われたりする不都合が生じるので好ましくない。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例に示す部または%は、特に断らない限り、それぞれ有効成分の質量部または質量%を示す。実施例および比較例において行った測定、分析、評価は次のとおりである。
再生粒子凝集体のシリカ被覆再生粒子の平均粒子径の測定]
レーザー回折粒度分布測定装置〔マイクロトラック/日機装社〕を使用し、50%体積平均粒子径を測定した。測定試料の調製は、0.1%ヘキサメタ燐酸ソーダ水溶液に、再生粒子凝集体のシリカ被覆再生粒子を添加し、超音波で1分間分散した。
再生粒子凝集体のシリカ被覆再生粒子の成分分析]
蛍光X線分析装置(RIGAKU SYSTEM3080E2)により成分分析を行った。
[脱墨フロスを主原料とする再生粒子凝集体へのシリカ被覆状態の確認]
走査型電子顕微鏡(SEM)写真、再生粒子凝集体のシリカ被覆再生粒子のエネルギー分散型X線分光器(EDS)による元素分析から脱墨フロスを主原料とする再生粒子凝集体をシリカが被覆しているかを碓認した。
被覆しているものを○、被覆していないものを×として示した。
再生粒子凝集体のシリカ被覆再生粒子の白色度測定]
乾燥再生粒子凝集体のシリカ被覆再生粒子約5.0gを乳鉢で粗い粒子がなくなるまで粉砕したのち、粉体を白色度測定用ガラスセルに詰め、白色度を色差計(TC−8600A/東京電色社)で測定した。
再生粒子凝集体のシリカ被覆再生粒子含有紙の製造]
再生粒子凝集体のシリカ被覆再生粒子をコーレスミキサーでスラリー化し、固形分濃度10%のスラリーを調製した。
抄紙条件:NBKP(フリーネス=CSF 520ml)10部、LBKP(フリーネス=CSF 480ml)90部を配合したパルプスラリーに、前記スラリーを固形分で15部、硫酸バンドを0.5部、カチオン化澱粉0.7部、中性ロジンサイズ剤1.0部、歩留向上剤0.1部をそれぞれ添加し、固形分濃度0.9%の紙料を調製した。この紙料を手抄き抄紙機でパルプシートを作成し、乾燥後、ラボスーパーカレンダーに通紙して、米坪が64g/m2の上質紙を得た。
得られた上質紙の評価結果を表2に示す。
[塗工紙の製造]
再生粒子凝集体のシリカ被覆再生粒子にそれぞれ分散剤(アロンA−6028/東亜合成化学工業)を顔料に対し固形分対比で1.5%でコーレスミキサーでスラリー化し、固形分50%のスラリーを調製した。
塗工条件:表に示す組成の塗被液を調製し、これを坪量64g/m2の上質原紙の片面に乾燥量12g/m2となるように片面ずつブレードコーターで塗工、乾燥、さらにスーパーカレンダ仕上げして両面塗工紙を得た。
得られた塗工紙の評価結果とブレード塗工適性評価結果を表3に示す。
なお、塗被液に用いた材料は、カオリン(HF−90:ヒューバー社)、炭酸カルシウム(ハイドロカーブ#90:オミヤ社)、澱粉(スターコート:日本食品加工社)、ラテックス(PA4098:日本A&L社)、分散剤(A−6028:東亜合成化学工業社)である。
再生粒子凝集体のシリカ被覆再生粒子含有紙および塗工紙の金属摩耗性]
得られた再生粒子凝集体のシリカ被覆再生粒子含有紙および塗工紙について、紙加工時の金属刃摩耗の目安となる以下の試験を行った。すなわち、シリカ被覆再生粒子内添紙又は塗工紙を一定角度に固定したステンレス製のカミソリナイフで10m引き裂き、カミソリ刃の顕微鏡拡大観察により摩耗量を測定した。
再生粒子凝集体のシリカ被覆再生粒子含有紙および塗工紙の紙質]
白色度はJ.TAPPI No.69、不透明度はJ.TAPPI No.70、光沢度はJIS P 8142、密度はJIS P 8118、平滑度はJIS P 8118、透気度JIS P 8117に準じて測定した。
[塗工適性]
固形分濃度を60%に調整した塗被液をラボブレードコーターで、紙を使用せずバッキングロール上に10g/m2となるようにブレード角度を調整し、1000m/minで1時間塗工した後のブレードの摩耗度をブレード刃角の変化で評価した。未使用のブレード刃角は45°であり、刃角変化が大きいものほど塗被液のブレード摩耗が大きい。なお、ブレードはスウェーデン鋼製で厚み0.508mmを使用した。
再生粒子凝集体の製造例]
印刷用紙用の抄紙機および塗工機、さらに原料として使用する脱墨パルプ化設備を有する製紙工場の古紙処理工程における脱墨処理工程で排出される脱墨フロスを脱水機により固形分濃度が約50%となるように脱水した。脱水後の脱墨フロスを焼成炉にて1次焼成温度580℃で、酸素濃度が10%で、供給空気が4秒以上滞留する条件で燃焼させて、焼成灰を得た。これを湿式粉砕し、平均粒子径が1.6μmの再生粒子凝集体を調製した。再生粒子凝集体の白色度は81%であった。成分分析結果を表3に示す。
再生粒子凝集体のシリカ被覆再生粒子の吸油度]
ここで言うところの吸油度はJIS K 5101記載の練り合わせ法によるものである。すなわち105℃〜110℃で2時間乾燥した試料2g〜5gをガラス板に取り、精製アマニ油(酸化4以下のもの)をビュレットから少量ずつ試料の中央に滴下しその都度ヘラで練り合わせる。滴下練り合わせの操作を繰り返し、全体が初めて1本の棒状にまとまったときを終点として、精製アマニ油の滴下量を求め、次の式によって吸油度を算出する。
吸油量=[アマニ油量(ml)×100]/紙料(g)
再生粒子凝集体のシリカ被覆再生粒子の製造例]
再生粒子凝集体のスラリー(濃度10%)200gに珪酸ナトリウム水溶液60gを添加して、ホモミキサーを使用して回転数3000rpmで20分間、分散処理を行い再生粒子凝集体と珪酸ナトリウム水溶液の分散スラリーを調製した。次に、このスラリーを攪拌機、温度センサー、還流冷却器の付いた1Lの四口フラスコに入れ、攪拌しながら油浴にて75℃に昇温した。次に容器内のスラリーを75℃に保ちながら、1規定の硫酸150mlを定量ポンプを使用して、滴下速度2.5ml/分で1時間かけて滴下し再生粒子凝集体のシリカ被覆再生粒子を得た。このときの反応液のpHは8.8であった。さらに、No.2ろ紙を用いてろ過・水洗し再度ろ過することにより、再生粒子凝集体のシリカ被覆再生粒子のウェットケーキが得られた。レーザー回折粒度分布測定装置〔マイクロトラック/日機装社〕を使用して、50%体積平均粒子径を測定したところ、平均粒径は8.6μmであった。
Figure 0004087431
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Claims (7)

  1. 古紙パルプを製造する古紙処理工程の脱墨工程で排出される脱墨フロスを主原料とし、脱水工程、乾燥工程、焼成工程及び粉砕工程を経て、前記焼成工程において凝集体とした再生粒子を得て、この再生粒子を珪酸アルカリ水溶液中に懸濁するとともに鉱酸を添加し、再生粒子の周囲をシリカで被覆してシリカ被覆再生粒子を得ることを特徴とするシリカ被覆再生粒子の製造方法。
  2. 前記再生粒子と珪酸アルカリ水溶液の液温60〜100℃の混合液に、前記混合液のpHが8.0〜11.0の範囲になるように鉱酸の添加を行う請求項1記載のシリカ被覆再生粒子の製造方法。
  3. 前記再生粒子は、古紙パルプ製造工程の脱墨処理工程において排出される脱墨フロスを主原料に、500〜800℃、0.05%以上の酸素濃度存在下で焼成した脱墨フロスを主原料とする再生粒子を、平均粒子径が0.1〜10μmとなるように湿式粉砕したものである請求項1または2記載のシリカ被覆再生粒子の製造方法。
  4. 前記再生粒子は、カルシウム、ケイ素、アルミニウムを構成成分とする無機粒子であり、得られるシリカ被覆再生粒子は、その構成成分におけるカルシウム、ケイ素、アルミニウムの割合が、酸化物換算で10〜80:10〜80:5〜29の質量割合で含有する請求項1〜3のいずれか1項記載のシリカ被覆再生粒子の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の前記シリカ被覆再生粒子は、前記再生粒子を粒子種として、粒子種の表層がシリカで被覆された、不定形な粒状構造を有する構成であり、吸油度が50〜180ml/100g(JIS K 5101)であるシリカ被覆再生粒子。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の前記シリカ被覆再生粒子を内添用填料として用いたことを特徴とするシリカ被覆再生粒子内添紙。
  7. 紙の少なくとも一方の面に1層又は複数層の塗工層を設けてなる顔料とバインダーを主成分とする塗工紙であって、前記顔料は請求項1〜4のいずれか1項に記載の前記シリカ被覆再生粒子であることを特徴とする塗工紙。
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