JP4952253B2 - 定着装置および画像形成装置 - Google Patents

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Description

本発明は、定着装置および画像形成装置に関する。
色材(トナー)により形成された画像を記録媒体上に定着させる定着装置としてベルト式の定着装置がある(例えば、特許文献1〜4参照)。このベルト式定着装置は、記録媒体上の画像を周回移動する無端ベルトと共に加熱および加圧して無端ベルトに密着させ、加熱により温度が高くなった画像と無端ベルトとを冷却した後、記録媒体を無端ベルトから剥離させる。記録媒体上の色材は無端ベルトの表面によって滑らかにされているため、記録媒体が無端ベルトから剥離した際には画像は光沢のある画像となっている。
特開平5−119648号公報 特開2003−270987号公報 特開平5−165350号公報 特開2005−292578号公報
本発明は、定着ベルトの収縮量を制御しない場合に比較して、加熱および加圧した後の画像に光沢ムラが発生するのを防ぐことにある。
上述した課題を解決するため、請求項1に記載の発明においては、色材による画像が転写された記録媒体を加熱する加熱部材と、前記加熱部材に対向して配置され、前記加熱部材へ押し当てられる加圧部材と、前記加熱部材に掛け渡され周回移動することにより、前記加熱部材と前記加圧部材との間に供給された記録媒体を周回移動の方向に搬送する無端の定着ベルトと、前記定着ベルトが掛け渡されており、前記定着ベルトにより搬送されている前記記録媒体を前記定着ベルトから剥離させる剥離部材と、前記剥離部材と前記加熱部材との間に配置されて前記定着ベルトに接触し、前記定着ベルトの移動方向における1mmあたりの前記定着ベルトの収縮量が5×10−4mm以下となるように前記定着ベルトを冷却する冷却部とを有する定着装置を提供する。
請求項2に記載の発明は、上記請求項1に記載の構成において、前記冷却部は、前記定着ベルトに接触して前記定着ベルトを冷却する複数の冷却部材を有し、該冷却部材は、前記加熱部材側にある冷却部材から順に温度が低いことを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、上記請求項2に記載の構成において、前記複数の冷却部材は、前記加熱部材側にある冷却部材から順に熱容量が小さいことを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、上記請求項1に記載の構成において、前記冷却部は、前記定着ベルトに接触して前記定着ベルトを冷却する冷却部材を有し、該冷却部材は、前記加熱部材側から前記剥離部材側へ向かうにつれて冷却能力が高くなっていることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか一に記載の定着装置と、画像を表す画像情報に従って記録媒体上に該画像を形成する画像形成部とを有する画像形成装置を提供する。
請求項1または請求項5に記載の発明によれば、定着ベルトの収縮量を制御しない場合に比較して、加熱および加圧した後の画像に光沢ムラが発生するのを防ぐことができる。
請求項2記載の発明によれば、各冷却部材で冷却温度を設定でき、段階的に定着ベルトを冷却することができる。
請求項3記載の発明によれば、加熱部材の温度の上昇により加熱部材側にある冷却部材から順に早く温度を上昇させることができる。
請求項4記載の発明によれば、本構成を有しない冷却部材を用いる場合に比較して、冷却部材に接している間の定着ベルトの温度の制御が容易になる。
以下、本発明の一実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る画像形成装置の全体構成を模式的に示した図である。この画像形成装置は、大別すると、色材で形成した画像を記録媒体上に転写し、転写された画像を記録媒体に定着させる画像形成部1と、画像形成部1によって記録媒体上に定着された画像を再加熱および再加圧し、記録媒体上の画像に光沢を持たせる二次定着部2とで構成されている。
(画像形成部1の構成)
まず、画像形成部1について説明する。制御部17は、図2に示したように、CPU(Central Processing Unit)17A、制御プログラムを記憶したROM(Read Only Memory)17B、RAM(Random Access Memory)17C、各種情報を記憶する記憶部17D、外部のコンピュータ装置との通信インターフェースとして機能する通信インターフェース17E、画像形成装置の各部に接続され各部とCPU17Aとの間の信号や情報の授受の仲介を行う制御インターフェース17F、画像情報が表す画像に画像処理を施す画像処理部17G、画像形成装置を操作するための各種キーを備えた操作部17Hを備えている。制御部17の各部はバス171により接続されており、このバス171を介して各部間で各種情報や各種信号を授受する。
ROM17Bに記憶されている制御プログラムがCPU17Aにより実行されると、画像形成装置の各部が制御部17により制御され、記録媒体上に画像を形成する機能が画像形成装置において実現する。そして、制御部17は、カラー画像を表す画像情報を外部装置から通信インターフェース17Eを介して受信すると、受信した画像情報を画像処理部17Gへ供給する。画像処理部17Gは、画像情報を受け取ると、画像情報が表す画像に階調補正やスクリーン処理等の画像処理を施す。そして、画像処理が施された画像からY(Yellow),M(Magenta),C(Cyan),K(黒)各色の画像の画像情報を生成し、生成した画像情報を露光装置12へ出力する。
また、制御部17は、操作部17Hにされた操作に応じて二次定着部2の各部を制御する。具体的には、操作部17Hにおいて、記録媒体上の画像の再加熱および再加圧を指示する操作がユーザにより行われた場合には、制御部17は二次定着部2を制御し、記録媒体上に定着した画像を再度加熱および加圧する処理を行う。また、操作部17Hにおいて、記録媒体上の画像を再加熱および再加圧しないように指示する操作がユーザにより行われた場合には、制御部17は二次定着部2を制御し、記録媒体上に定着した画像が再度加熱および再加圧されないようにする。
形状が円柱状である感光体10は、表面に電荷受容体としてOPC(Organic Photo Conductor:有機光導電体)からなる光導電層が形成されており、図示せぬモータにより図1中の矢印A方向に回転する。帯電装置11は、例えばコロトロンであり、コロナ放電によって感光体10の表面を帯電させる。露光装置12は光を出力する光源を備えており、制御部17から供給されるY,M,C,K各色の画像情報に従って光を感光体10の表面に照射する。露光装置12は、光を感光体10に照射することにより照射領域の電位を変化させ、Y,M,C,Kの各色の画像情報毎に、画像情報が表す画像に対応した静電潜像を形成する。
現像装置13は、ロータリ式の現像装置であり、Y(Yellow)のトナーを保持する現像ロール13Y、M(Magenta)のトナーを保持する現像ロール13M、C(Cyan)のトナーを保持する現像ロール13C、K(黒)のトナーを保持する現像ロール13Kとを備えている。現像装置13は制御部17の制御の下、現像ロールを感光体10に対向させる。具体的には、例えば、露光装置12により感光体10にYの画像に対応した静電潜像が形成されると、現像装置13は回転して現像ロール13Yを感光体10に対向させる。現像ロール13Yが感光体10に対向すると、現像ロール13Yに保持されているYのトナーが感光体10の静電潜像に付着し、Yの画像に対応したトナー像が感光体10の表面に形成される。また、同様に他の色(M,C,K)についても、各色に対応した静電潜像が形成されると、この静電潜像に対応した色の現像ロールが感光体10に対向し、各色のトナー像が感光体10の表面に形成される。
クリーニング装置16は、用紙に転写されずに感光体10表面に残留したトナーを除去する装置である。クリーニング装置16は、感光体10に残留したトナーを掻き落とし、掻き落としたトナーを保持する。
中間転写ベルト20は無端ベルトであり、駆動ロール21、支持ロール22,23、バックアップロール24に掛け渡されている。駆動ロール21は、中間転写ベルト20を周回移動させるためのロールである。駆動ロール21は、図示せぬモータにより回転させられ、中間転写ベルト20を図1中の矢印B方向へ周回移動させる。支持ロール22,23は、中間転写ベルト20を支持するロールであり、中間転写ベルト20の移動に伴って回転する。
一次転写ロール15は、感光体10の表面に形成されたトナー像を中間転写ベルト20に転写するロールであり、中間転写ベルト20を挟んで感光体10に対向している。一次転写ロール15は、図示せぬ電源に接続されており、この電源から電圧が印加されている。一次転写ロール15には電圧が印加されているため、感光体10との間に電位差が生じ電界が形成される。感光体10に形成されたトナー像が一次転写ロール15に対向する位置に移動すると、感光体10上のトナー像は、この形成された電界により中間転写ベルト20上に転写される。
記録媒体格納部30は、シート状の記録媒体(例えば、紙やプラスチック製のシートなど)を格納するものであり、複数枚の記録媒体を格納可能となっている。ピックアップロール31は、図示せぬモータにより回転させられ、記録媒体格納部30に格納されている記録媒体を一枚ずつ搬送路Sへ送り出す。なお、搬送路Sについては、以下の説明では記録媒体格納部30側を上流と称し、排出ロール37側を下流と称する。搬送ロール対32,33,34は、図示せぬモータにより回転させられ、搬送路Sにある記録媒体を中間転写ベルト20と二次転写ロール25との間へ搬送する。
バックアップロール24と二次転写ロール25は、中間転写ベルト20に転写されたトナー像を記録媒体上に転写するロールである。二次転写ロール25は、記録媒体がバックアップロール24と二次転写ロール25との間に搬送される直前にバックアップロール24側へ移動し、中間転写ベルト20に接触して中間転写ベルト20をバックアップロール24へ押し当てる。バックアップロール24は、図示せぬ電源に接続されており電圧が印加されている。二次転写ロール25が中間転写ベルト20をバックアップロール24へ押し当てると、バックアップロール24と二次転写ロール25との間に電位差が生じ、バックアップロール24に印加された電圧に応じた電界が形成される。そして、中間転写ベルト20上のトナー像と二次転写ロール25との間に記録媒体が搬送されると、中間転写ベルト20上のトナー像は、形成された電界により記録媒体上に転写される。そして、二次転写ロール25は、トナー像の転写が終了するとバックアップロール24とは反対方向へ移動する。これにより中間転写ベルト20はバックアップロール24から離れることとなる。
ベルトクリーナ25は、記録媒体に転写されずに中間転写ベルト20に残留したトナーを除去する装置である。ベルトクリーナ25は、中間転写ベルト20に残留したトナーを掻き落とし、掻き落としたトナーを保持する。
搬送ベルト35は、トナー像が転写された記録媒体を搬送するベルトである。搬送ベルト35は無端ベルトであり、図1中の矢印C方向へ周回移動し、当該ベルト上に搬送された記録媒体を案内部材36へ搬送する。案内部材36は、板状で矩形の部材であり、加熱ロール41と加圧ロール42から見て搬送路Sの上流側に配置されている。案内部材36は、搬送ベルト35によって搬送された記録媒体を加熱ロール41と加圧ロール42の間に案内する。
加熱ロール41と加圧ロール42は、記録媒体上に転写されたトナー像を記録媒体に定着させるロールである。加熱ロール41は、内部に熱源として例えばハロゲンランプを有しており、制御部17の制御の下、所定の温度に加熱されて加熱ロール41の温度を上昇させる。また、加熱ロール41は図1中の矢印D方向へ回転している。加圧ロール42は、搬送路Sを挟んで加熱ロール41に対向しており、加熱ロール41に押し当てられている。加熱ロール41と加圧ロール42との間にトナー像が転写された記録媒体が搬送されると、記録媒体は排出ロール37の方向へ移動する。ここで、記録媒体上のトナー像は加熱ロール41と加圧ロール42からの熱と圧力により記録媒体に定着する。
排出ロール対37は、トナー像が定着した記録媒体を二次定着部2へ搬送するためのロールである。排出ロール対37は、加熱ロール41と加圧ロール42から見て搬送路Sの下流側に配置されており、加熱ロール41と加圧ロール42により画像が定着した記録媒体を二次定着部2へ送りだす。
(二次定着部2の構成)
次に二次定着部2について説明する。経路変更部材50は、二次定着部2内における記録媒体の搬送方向を変更するものである。経路変更部材50は、制御部17の制御の下、排出ロール対37によって搬送された記録媒体を排出ロール対51または搬送ロール対52のいずれかの方向へ案内する。排出ロール対51は、記録媒体を二次定着部2の外へ排出するロールであり、経路変更部材50によって案内された記録媒体を二次定着部2の外へ排出する。搬送ロール対52,55は、記録媒体を搬送するロールであり、経路変更部材50によって案内された記録媒体を二次定着装置7へ搬送する。排出ロール対56は、記録媒体を二次定着部2の外へ排出するロールであり、二次定着装置7を通過した記録媒体を二次定着部2の外へ排出する。
(二次定着装置7の構成)
二次定着装置7は、画像形成部1によって記録媒体上に定着したトナー像に再度定着処理を施す装置である。図3に示したように二次定着装置7は、定着ベルト70、加熱ロール71、加圧ロール75、剥離ロール72、ステアリングロール73、第1冷却部材81と第2冷却部材82とを有する冷却部80、送風機100A,100Bにより構成されており、加熱ロール71で加熱された定着ベルト70を冷却部80で冷却する構成となっている。
本実施形態においては、加熱ロール71は、コア71A、離型層71B、加熱用ハロゲンランプ71Cとにより構成されている。コア71Aは、例えば、金属製でその形状が円柱状であり、本実施形態では周面にはポリテトラフルオロエチレンなどの4フッ化エチレン樹脂などからなる離型層71Bが形成されている。加熱用ハロゲンランプ71Cはコア71Aの内部に配置されており、その温度が制御部17によって制御される。加熱ロール71の周面は加熱用ハロゲンランプが発する熱により、その温度が所定の温度になる。
加圧ロール75は、コア75A、弾性体層75B、離型層75Cとにより構成されている。コア75Aは、金属製でその形状が円柱状であり、本実施形態では、周面には、ゴム硬度(JIS−A)40°程度のシリコーンゴムなどからなる弾性体層75Bが形成されている。また、本実施形態では、弾性体層75Bの表面には、ポリテトラフルオロエチレンなどの4フッ化エチレン樹脂などからなる離型層75Cが形成されている。加圧ロール75は、図示せぬモータにより図3中の矢印E方向へ回転させられる。また、加圧ロール75は制御部17の制御の下、図示せぬ移動機構により加熱ロール71の方向または加熱ロール71とは反対の方向に移動させられる。
ステアリングロール73は、定着ベルト70を支持するロールであり、定着ベルト70の移動に伴って回転する。また、ステアリングロール73は、定着ベルト70の移動方向に対する角度を変化させ、定着ベルト70がステアリングロール73の回転軸方向に移動するのを防止する。
剥離ロール72は、その形状が円柱状であり、定着ベルト70の周回移動に伴って回転する。定着ベルト70に密着して搬送される記録媒体は、剥離ロール72の位置まで移動すると記録媒体の剛性により定着ベルト70から剥離する。
定着ベルト70は、加熱ロール71、剥離ロール72、ステアリングロール73に掛け渡されており、加熱ロール71の回転に伴って図3中の矢印F方向へ周回移動する。図4は、定着ベルト70の断面を示した図である。図4に示したように基材層70Aと表面層70Bとを有している。表面層70Bは、例えば、シリコーンゴムにより形成されている。基材層70Aは、ニッケル、アルミニウム、ステンレスなどの金属で形成されている。基材層70Aの厚みは、30μm〜200μmの範囲内が好ましく、より好ましくは40μm〜150μmの範囲内、さらに好ましくは50μm〜130μmの範囲内にあるのがよい。これは、基材層70Aの厚みが30μmより薄いと、加熱または冷却された時の寸法変化が大きく、また強度も不足し、一方、基材層70Aの厚みが200μmを越えると、定着ベルト70の熱容量が大きくなり、熱が伝わりにくくなるためである。本実施形態においては、定着ベルトのサイズは、直径が168[φmm]、幅320[mm]であり、厚さが50[μm]のステンレスの基材層70A上に厚さが30[μm]のシリコーンゴムの表面層70Bが形成されている。
なお、本実施形態においては、基材層70Aは金属により形成されているが、ポリブチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリイミドアミド等の合成樹脂により基材層70Aを形成してもよい。また、合成樹脂により基材層70Aを形成する場合、炭素の粉末(カーボンブラック)などの電気を通す特性のある粉体を基材層70Aに添加して体積抵抗率を低下させることにより、帯電による埃の付着を抑えるようにしてもよい。
送風機100Aは第1冷却部材81へ空気を送るものであり、送風機100Bは第2冷却部材82へ空気を送るものである。各送風機は、各冷却部材へ空気を送り冷却部材の熱を空気中に放熱させる。
冷却部80は、加熱ロール71により加熱された定着ベルト70を冷却するものであり、第1冷却部材81と第2冷却部材82とを備えている。第1冷却部材81は、加熱ロール71と加圧ロール75から見て搬送路Sの下流側に配置されており定着ベルト70に接触している。また、第2冷却部材82は、第1冷却部材81から見て搬送路Sの下流側に配置されており定着ベルト70に接触している。
第1冷却部材81と第2冷却部材82は、熱伝導性の高い金属(例えば、アルミニウムまたは銅など)で形成されたヒートシンクであり、各冷却部は表面積を大きくして放熱量を大きくするために多数の板状突起(フィン)90を有している。なお、各板状突起90間の間隔を狭くして板状突起90の数を増やすと各冷却部材の表面積は大きくなるが、板状突起90の間隔が狭すぎると各板状突起90間の空気の流れが悪くなるため、効率よく冷却できる間隔が実験により求められて設定される。
二次定着装置7は、トナー像を加熱ロール71側にして搬送されてきた記録媒体を加熱ロール71と加圧ロール75との間で再加熱・再加圧し、加熱されて軟化したトナー像を定着ベルト70に密着させる。ところで、定着ベルト70は冷却部材により冷却されて収縮するが、定着ベルト70に密着しているトナー像においては、冷却されて固化する前に定着ベルト70から剥離する部分が発生し、定着ベルト70から剥離した後の画像においては光沢ムラが発生してしまうことがある。
本発明者は、どのような条件で光沢ムラが発生するのか確認するため、冷却部材に接触する前の定着ベルト70の温度と、冷却部材に接しているときの定着ベルト70の温度との温度差を調整し、光沢ムラの発生条件を調べる実験を行った。なお、実験では、定着ベルト70の基材層70Aの直径を168[φmm]、厚さを50[μm]、幅を320[mm]とし、定着ベルトの移動速度は52[mm/sec]とした。また、線膨張率が54×10−6[1/℃]であるポリイミドが基材層である定着ベルト70と、線膨張率が17.3×10−6[1/℃]であるSUS304(18%のクロムと、8%のニッケルを含むステンレス鋼)が基材層である定着ベルトについて光沢ムラの発生条件を調べた。冷却部材に接触する前の定着ベルトの温度は、冷却部材の搬送路Sにおける上流側端部から1cm上流側、また冷却部材に接しているときの定着ベルトの温度は、冷却部材の搬送路Sにおける上流側端部から1cm下流側の位置で測定した。
図5は、冷却部材に接触する前の定着ベルトの温度と冷却部材に接触しているときの定着ベルト70の温度との温度差(横軸)と、定着ベルト70の周方向における1[mm]あたりの収縮量(縦軸)との関係を示したグラフである。実験の結果、ポリイミドを基材層にしたベルトの場合、温度差が9℃以下であると光沢ムラが発生しなかった。また、SUS304を基材層にしたベルトの場合、温度差が28℃以下であると光沢ムラが発生しなかった。ポリイミドを基材層とするベルトにおいて温度差が9℃であるときのベルトの伸縮量と、SUS304を基材層とするベルトにおいて温度差が28℃であるときのベルトの収縮量は、いずれも1mmあたり5×10−4[mm]である。つまり、伸縮量を1mmあたり5×10−4[mm]以下に抑えつつベルトを冷却するようにすれば、光沢ムラの発生を抑えることができるといえる。
本実験ではポリイミドおよびSUSを基材層とする定着ベルトを用いたが、ベルトの伸縮量と光沢ムラとの関係はこれらを基材層とするベルトに限定されるものではない。定着ベルト70の収縮量が大きいと、定着ベルト70に密着しているトナー像において、冷却されて固化する前に定着ベルト70から剥離する部分が発生し、定着ベルト70から剥離した後の画像においては光沢ムラが発生してしまうという現象は、ベルト基材に依存するものではない。
記録媒体が剥離ロール72の位置に到達した時点においては、記録媒体上のトナー像が固化していないと記録媒体が定着ベルト70から剥離しないこととなる。記録媒体が定着ベルト70から剥離する際の温度は、トナーの成分や、記録媒体の表面に光沢を出すための樹脂がコーティングされている際には、この樹脂の成分によって異なるが、トナーや樹脂が軟化する温度より低い60℃〜80℃となっていることが望ましい(以下、剥離温度という)。本実施形態では、第2冷却部材82の温度が70℃となるように、第2冷却部材82の大きさや、送風機100Bの送風量等が実験で求められて設定されている。
図6は、上記実験にて用いた定着ベルトおよび冷却部材を用い、定着ベルトの移動方向における温度低下を表すグラフを模式的に表したものである。加熱ロール71の温度が120℃に制御されており、第1冷却部材81が95℃、第2冷却部材82の温度が70℃に冷却されている場合、加熱ロール71で加熱された定着ベルト70の温度は第1冷却部材81により95℃にまで低下する。この後、記録媒体が密着している領域は、定着ベルト70の周回移動により第2冷却部材82の位置へ移動し、第2冷却部材82により70℃に冷却される(図6中のラインL1)。
なお、図6中のラインL2は第1冷却部材81を用いず第2冷却部材のみで冷却した場合の定着ベルトの温度低下を示したグラフである。第1冷却部材81と第2冷却部材82とを用いた場合(ラインL1)には、第2冷却部材82のみを用いた場合(ラインL2)のように定着ベルトの急激な温度低下は見られず、光沢ムラが発生しない程度の定着ベルトの収縮量に抑えながら剥離温度にまで冷却されている。
(実施形態の動作)
次に、本実施形態の動作について説明する。まず、画像形成部1においてトナー像が定着された記録媒体は、排出ロール対37により二次定着部2へ送られる。ここで、トナー像が記録媒体に形成されるより前に、ユーザが記録媒体上の画像を再加熱および再加圧しないようにする指示を操作部17Hを操作して入力していた場合には、制御部17により経路変更部材50が制御され、記録媒体が排出ロール対51のほうへ案内される。排出ロール対51に案内された記録媒体は、排出ロール51によって二次定着部2の外へ排出されるので、記録媒体が再加熱および再加圧されることがない。
一方、トナー像が記録媒体に形成されるより前に、ユーザが記録媒体上の画像を再加熱および再加圧する指示を操作部17Hを操作して入力していた場合には、制御部17により、経路変更部材50が制御され、記録媒体が搬送ロール対52のほうへ案内される。搬送ロール対52のほうへ案内された記録媒体は、搬送ロール対52と搬送ロール対55により二次定着装置7へ搬送される。
二次定着装置7に搬送された記録媒体は、トナー像が加熱ロール71側にある状態で加熱ロール71と加圧ロール75との間に搬送される。加圧ロール75が加熱ロール71に押し当てられている状態において、加圧ロール75と加熱ロール71との間に記録媒体が搬送されると記録媒体は定着ベルト70に密着させられ、加熱ロール71と加圧ロール75との間で加熱および加圧される。そして、記録媒体上の色材は加熱により溶融し、無端ベルトの表面に密着する。なお、ここで定着ベルト70は加熱されることにより膨張する。
さて、定着ベルト70は加熱ロール71の回転に伴って周回移動しているため、加熱および加圧されて定着ベルト70に密着した記録媒体は、定着ベルト70と共に搬送路Sの下流側へ移動する。そして、定着ベルト70において記録媒体が密着している領域が第1冷却部材81の位置まで移動すると、記録媒体と定着ベルト70において記録媒体が密着している部分が第1冷却部材81により冷却される。この後、記録媒体が密着している領域は、定着ベルト70の周回移動により第2冷却部材82の位置へ移動し、第2冷却部材82により冷却される。
第2冷却部材82により冷却された領域は、定着ベルト70の周回移動により剥離ロール72の位置へ移動する。記録媒体が剥離ロール72の位置に到達すると、記録媒体は自身の剛性により定着ベルト70から剥離し、排出ロール対56へ送られる。排出ロール対56へ送られた記録媒体は、排出ロール対56により二次定着装置7の外へ排出される。
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、上述した実施形態は本発明に係る実施形態の一例であり、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。例えば、上述の実施形態を以下のように変形して本発明を実施してもよい。
上述した実施形態においては、加圧部材、剥離部材ともに円柱状のロールを用いているが、ロール状に限られるものではなく、掛け渡された定着ベルトが周回移動できる部材であればよい。
上述した二次定着装置7においては、加圧ロール75にも加圧ロール75を熱する熱源を設けるようにしてもよい。また、上述した実施形態においては、冷却部80の各冷却部材の温度が所定の温度に保たれるのであれば、冷却部80に空気を送る送風機を設けなくてもよい。
上述した実施形態においては、第1冷却部材81と第2冷却部材82はヒートシンクとなっているが、金属製の部材をベルトに接触させ、この部材を液体により冷却して定着ベルト70を冷却するようにしてもよい。
上述した実施形態においては、冷却部80の冷却部材は2つではなく、図7に示したように第3冷却部材83を設け、冷却部材の数を3つとしてもよい。また、冷却部材の数は4つ以上であってもよい。また、上述した実施形態においては、記録媒体の搬送方向上流側にある冷却部材と下流側にある冷却部材の材質や大きさ等を異ならせ、上流方向にある冷却部材の熱容量を下流側にある冷却部材の熱容量より小さくしてもよい。
冷却部80が有する各冷却部材に温度センサを配置し、冷却部材の温度が定められた温度範囲内に入るように制御してもよい。また、冷却部材が複数ある場合、各冷却部材の大きさ、突起部材の数、冷却部材の材質は、それぞれ同じにしてもよい。この場合、各送風機が送る空気の量を制御するなどして、搬送路Sの下流側に配置されている冷却部材ほど温度が低くなるようにする。
上述した実施形態においては、冷却部材84を搬送路Sの下流側になるほど冷却能力が高く設計してもよい。ここで冷却能力とは、定着ベルト70の移動方向における定着ベルト70の温度の低下量をいう。例えば図8に示したように、冷却部材84においては搬送路Sの上流側から下流側に向かうにつれて板状突起90(フィン)間の間隔が狭くなるようにしてもよい。また、図9に示したように、搬送路Sの上流側から下流側に向かうにつれて、冷却部材84の高さが徐々に高くなるようにしてもよい。これらの構成によれば、冷却部材84は搬送路Sの下流側になるほど冷却能力が高くなっている。このため、図10に示したように定着ベルト70の温度低下は搬送路Sの上流側ほど小さく、下流側になるにつれて大きくなる。例えば図8や図9に示したような冷却部材を用いる場合、記録材が剥離される位置での定着ベルト70の温度が剥離温度にまで冷却されているように冷却能力を設計すれば、冷却部材を複数設けなくてもよい。
本発明の一実施形態に係る画像形成装置の全体構成を示した模式図である。 制御部17のハードウェア構成を示したブロック図である。 二次定着装置7の構成を示した模式図である。 定着ベルト70の断面を示した図である。 冷却部材に接触する前の定着ベルトの温度と冷却部材に接触しているときの定着ベルト70の温度との温度差と、定着ベルト70の周方向における1[mm]あたりの伸縮量との関係を示したグラフである。 定着ベルト70の温度変化を示したグラフである。 本発明の変形例に係る二次定着装置7を例示した図である。 本発明の変形例に係る二次定着装置7を例示した図である。 本発明の変形例に係る二次定着装置7を例示した図である。 定着ベルト70の温度変化を示したグラフである。
符号の説明
1・・・画像形成部、2・・・二次定着部、7・・・二次定着装置、17・・・制御部、70・・・定着ベルト、71・・・加熱ロール、72・・・剥離ロール、73・・・ステアリングロール、75・・・加圧ロール、80・・・冷却部、81・・・第1冷却部材、82・・・第2冷却部材、83・・・第3冷却部材、84・・・冷却部材、90・・・板状突起、100A,100B・・・送風機

Claims (5)

  1. 色材による画像が転写された記録媒体を加熱する加熱部材と、
    前記加熱部材に対向して配置され、前記加熱部材へ押し当てられる加圧部材と、
    前記加熱部材に掛け渡されて周回移動することにより、前記加熱部材と前記加圧部材との間に供給された記録媒体を周回移動の方向に搬送する無端の定着ベルトと、
    前記定着ベルトが掛け渡されており、前記定着ベルトにより搬送されている前記記録媒体を前記定着ベルトから剥離させる剥離部材と、
    前記剥離部材と前記加熱部材との間に配置されて前記定着ベルトに接触し、前記定着ベルトの移動方向における1mmあたりの前記定着ベルトの収縮量が5×10−4mm以下となるように前記定着ベルトを冷却する冷却部と
    を有する定着装置。
  2. 前記冷却部は、前記定着ベルトに接触して前記定着ベルトを冷却する複数の冷却部材を有し、該冷却部材は、前記加熱部材側にある冷却部材から順に温度が低いことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
  3. 前記複数の冷却部材は、前記加熱部材側にある冷却部材から順に熱容量が小さくなっていることを特徴とする請求項2に記載の定着装置。
  4. 前記冷却部は、前記定着ベルトに接触して前記定着ベルトを冷却する冷却部材を有し、該冷却部材は、前記加熱部材側から前記剥離部材側へ向かうにつれて冷却能力が高くなっていることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
  5. 請求項1乃至4のいずれか一に記載の定着装置と、画像を表す画像情報に従って記録媒体上に該画像を形成する画像形成部とを有する画像形成装置。
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