JP4946630B2 - 皮剥装置 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば、NbやTaなどの軟質の金属あるいはこれらの合金からなる線材の表皮全体を連続して切削するための皮剥装置に関する。
一般に、鋼材やステンレス鋼などの比較的硬質な線材の表皮を連続して皮剥き(切除)する工程では、係る線材の外径よりもやや小径で且つ入口側にリング形の刃物を付けた貫通孔を有する皮剥ダイスに、上記線材を強制的に通過させることで行われている。係る皮剥ダイスは、工具鋼や超硬などの比較的硬質の素材からなるが、長尺な線材を連続して通しつつ皮剥きするため、焼け付きを生じるとその寿命が低下し、且つ皮剥きされた線材表面の品質が低下する。
上記皮剥ダイスの焼け付きを防ぐため、潤滑冷却剤などを線材と一緒にして、皮剥ダイスに通過させる皮剥方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開昭62−102916号公報(第1〜4頁、第1〜3図)
ところで、NbやTaなどの軟質の金属からなる線材の表皮を、前記同様の皮剥ダイスを用いて皮剥きする場合、リング形の刃物によって削り取られた線材の表皮は、ほぼ径方向に延びる切削屑となる。この際、線材の材料が軟質であるため、形成される切削屑の基部が線材の円周方向に沿って繋がり易く、且つその直前の位置で線径が部分的に縮小して断線するおそれがあった。このため、軟質の金属やその合金からなる線材を、確実に連続して効率良く皮剥きすることが安定して行えない、という問題があった。
本発明は、背景技術において説明した問題点を解決し、例えば、NbやTaなどの軟質の金属またはこれらの合金からなる線材の表皮を、断線を生じることなく、確実且つ安定して連続した皮剥きができる皮剥装置を提供する、ことを課題とする。
課題を解決するための手段および発明の効果
本発明は、前記課題を解決するため、皮剥ダイスの直前に線材の表皮を所定の皮剥ダイスで皮剥きし、且つ切削された軟質の切削屑を、ほぼ径方向に過度に成長させることなく、順次細かく破砕することに着想して成されたものである。
即ち、本発明の皮剥装置(請求項1)は、軟質金属またはその合金からなる線材の表皮を連続して切削する皮剥きに用いられ、係る線材を入口側に円形の刃先部を有する貫通孔に通過させて、係る線材の表皮を切削する皮剥ダイスと、係る皮剥ダイスにおける上記線材の供給方向の上流側に回転可能に配置されていると共に、先端が尖った先細形状であり、係る先端が上記ダイスの貫通孔の入口側に接近し、且つ基端が係る先端よりも線材の供給方向の上流側に位置するように、傾斜している切削屑ブレーカと、を備え、該切削屑ブレーカの先端と上記皮剥ダイスとの間の距離は、3〜6mmである、ことを特徴とする。
これによれば、軟質金属などからなり軸方向に沿って供給される線材を、皮剥ダイスの貫通孔に通過させる際に、係る線材の表皮がほぼ径方向で且つ供給方向と反対側に向かって拡がる複数の切削屑が生じる。係る複数の切削屑は、ほぼ帯状に成長し始めた直後に、皮剥ダイスに対し、線材の供給方向の上流側から傾斜して接近する切削屑ブレーカによって、多数の細かな切削屑に破砕される。このため、上記線材の表面を傷付けて表面品質を損なわず、且つ断線を生じることなく、確実に皮剥きができるので、皮剥工程の歩留まりを高めることが可能となる。
しかも、前記切削屑ブレーカの先端と前記皮剥ダイスとの間の距離を3〜6mmとしたので、ほぼ径方向に沿ってほぼ帯状に成長し始めた直後の複数の切削屑を、直ちに前記切削屑ブレーカに衝突させて、多数の細かな切削屑に確実に破砕することができる
尚、前記軟質金属には、NbまたはTaが含まれ、前記合金には、NbおよびTaの少なくとも一方をベースとする合金のほか、Nb−Ta系合金も含まれる。
また、前記線材は、直径10mm以下であるが、これよりも太径の棒材なども含まれる。
更に、前記切削屑ブレーカは、1個のみからなるほか、後述するように、2個または3個以上を配置する形態としても良い。
加えて、前記距離(3〜6mm)は、前記線材の供給方向に沿った切削屑ブレーカの先端と皮剥ダイスとの間の距離であって、両者間の最短距離ではない
また、本発明には、前記皮剥ダイスのすくい角は、10〜40度である、皮剥装置(請求項2)も含まれる。
これによれば、前記線材の表皮を深剃りすることなく、薄肉でほぼ径方向に薄く帯状に拡がる複数の切削屑が生じるので、係る複数の切削屑がほぼ帯状に成長し始めた直後に、切削屑ブレーカによって、多数の細かな切削屑に容易に破砕することができる。このため、前記線材の断線を生じることなく、所望の皮剥きを効率良く行うことが可能となる。
尚、前記すくい角が10度未満では、線材の表皮を切除して生じる切削屑が線材よりの基部で円周状に繋がって破砕性が低下する。一方、40度を超えると、皮剥ダイスの刃先部の厚みが過度に薄くなるので、当該皮剥ダイスの刃先部の付近を破損させるおそれがある。これらを防ぐため、すくい角の範囲を前記の通りとした。望ましいすくい角の範囲は、20〜30度である。
更に、本発明には、前記切削屑ブレーカは、細長い三角錐、四角錐、または多角錐形状を呈し、少なくとも1つの稜線を前記皮剥ダイス側に向けて突出させている、皮剥装置(請求項3)も含まれる。
これによれば、前記線材が皮剥ダイスの貫通孔に通過する際に、係る線材の表皮がほぼ径方向で且つ供給方向と反対側に向かってほぼ帯状に成長する複数の切削屑を、細長い三角錐、四角錐、または多角錐形状を呈する切削屑ブレーカの稜線の付近が衝突する。その結果、ほぼ帯状に成長し始めた直後の複数の切削屑を、多数の細かな切削屑に確実に破砕することができる。
また、本発明には、前記切削屑ブレーカは、2個または3個以上であり、前記傾斜した姿勢で配置されている、皮剥装置(請求項4)も含まれる。
これによれば、前記皮剥ダイスによってほぼ帯状に成長し始めた直後の複数の切削屑を、複数の切削屑ブレーカに衝突させて、一層迅速で且つ微細な切削屑に確実に破砕することができる
記距離が3mm未満では、切削屑ブレーカの先端が皮剥ダイスに接近し過ぎ、線材の表皮から切除された切削屑が帯状に延びる前に上記ブレーカの先端に衝突するため、微細になった多数の切削屑が皮剥き直前の線材に接触するおそれがある。一方、上記距離が6mm超になると、線材の表皮から帯状に延びた複数の切削屑に、切削屑ブレーカの先端が衝突しにくくなる。これらを防ぐため、係る距離の範囲を前記のように定めたものである。
以下において、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1は、本発明の皮剥装置1の要部を示す断面図、図2は、係る皮剥装置1を示す図1の左側面図である。尚、図1中にて右向きの太い矢印で示すように、皮剥きすべき線材の供給方向である図示で左側を上流側、右側を下流側と称する。
皮剥装置1は、図1に示すように、例えばNb(軟質金属)からなる断面円形の線材W1の表皮を皮剥きする皮剥ダイス2と、これを保持するホルダ4と、皮剥ダイス2における上記線材W1の供給方向の上流側に接近して配置された一対の切削屑ブレーカ10と、を含んでいる。
上記皮剥ダイス2は、例えば、WCなどの超硬や、ケイ素−炭化珪素、またはCr−炭化アルミナなどのサーメットからなり、全体がほぼ円錐形を呈すると共に、その中心部を貫通するテーパ付きの貫通孔3の入口側に、円形の刃先部cを有している。また、図1に示すように、皮剥ダイス2のすくい角θ1は、10〜40度、望ましくは20〜30度であり、且つその逃げ角θ2は、約3〜10度である。
また、図1に示すように、ホルダ4は、中心部を貫通する貫通孔5の上流側に刃先部cを突出させた皮剥ダイス2を保持している共に、貫通孔5の下流側には、テーパ付きの貫通孔6が同軸で連続している。係るホルダ4の下流側に隣接して、貫通孔8を有するほぼ円筒形のガイド7が配置されている。
更に、皮剥ダイス2、ホルダ4、ガイド7は、それらの貫通孔3,5,6,8を同軸にして、円筒形のケース9の内側に保持されている。係るケース9の周囲には、複数のベアリングbを介して、フレーム16が回転可能に支持されている。
図1,図2に示すように、フレーム16の上流側の端面17には、一対のアングル14がそれらの垂直片15を介して、互いに対称に取り付けられている。各アングル14において、互いに対向する内側面には、一対の切削屑ブレーカ10が下流側に傾斜した姿勢で且つ対称に取り付けられている。尚、各アングル14の垂直片15とケース9などとの間には、隙間sが位置している。
切削屑ブレーカ10は、例えば、鋼材を切削加工したもので、全体が細長い三角錐を呈し、各アングル14の内側面に取り付けられる太い基端12と、皮剥ダイス2の貫通孔3の入口(刃先部c)側に傾斜して接近する尖った先端11と、を備えている。係る切削屑ブレーカ10が有する三つの稜線のうち、一つの稜線13は、皮剥ダイス2の貫通孔3の入口側に向けて突出している。係る切削屑ブレーカ10の中心軸は、図1中の水平線に対して、約40〜70度の範囲で傾斜している。
尚、図1中で示すように、切削屑ブレーカ10の先端11と皮剥ダイス2との間における線材W1の供給方向に沿った距離Lは、3〜6mmの範囲に設定されている。また、切削屑ブレーカ10は、アングル14およびフレーム16と共に回転可能とされている。
図3は、皮剥装置1によって、Nbからなる線材W1の表皮を皮剥きする状態を示す概略図、図4は、その皮剥き部付近を示す拡大図、図5は、図4中のX−X線に矢視に沿った線材W1の表皮きを状態を示す模式的な概略図である。尚、図3においても、同図中の右向きの太い矢印で示すように、皮剥きすべき線材W1の供給方向である図示で左側を上流側、右側を下流側と称する。
予め、切削屑ブレーカ10は、フレーム16と共に約1000rpmで回転している。図3中の太い矢印で示すように、上流側から軸方向に沿って供給されたNbからなる線材W1は、高速回転する一対の切削屑ブレーカ10における先端11,11間を通過した直後に、皮剥ダイス2における貫通孔3の入口側に到達する。その際に、皮剥ダイス2の刃先部cによって、線材W1の表皮全体が、約0.05〜0.10mmと比較的薄いの厚み(切削代)で連続して切削(皮剥き)される。係る薄さによって、後述する破砕が容易となる。
尚、線材W1がある程度の引張強度を有していれば、約0.1mm程度の切削代を取ることも可能である。また、線材W1の表皮が皮剥きされて細径となった線材W2は、皮剥ダイス2、ホルダ4、ガイド7の貫通孔3,5,6,8の中心部を下流側に送給される。
図4に示すように、例えば、直径が6mmで約30〜60m/分の供給速度で供給されたNbの線材W1は、皮剥ダイス2における貫通孔3の入口側に位置する刃先部cによって、表皮全体が前述した薄い厚みで連続して皮剥きされる。尚、皮剥ダイス2の刃先部c付近には、予め、冷却潤滑剤が連続して供給されている。
線材W1の供給方向の先端部が、皮剥ダイス2の刃先部cに到達した際には、図5の左側で示すように、係る線材W1の円周方向に沿った表皮全体が所要の厚みで皮剥きされ、ほぼ帯状を呈する複数の切削屑(通称、ダライ)d1が、ほぼ放射(径)方向で且つ上流側に向かって斜めに成長する。
この際、皮剥ダイス2のすくい角θ1が10〜40度(望ましくは、20〜30度)であるため、刃先部cが線材W1の表皮から内部に過度に深く進入する深剃りとならない。その結果、線材W1の断線を確実に防ぐことができる。即ち、すくい角θ1が小さ過ぎて、切削屑d1が線材W2寄りの基部で円周方向に繋がる事態を防げ、且つすくい角θ1が大き過ぎて、刃先部c付近が破損する事態も防止できる。
更に、皮剥ダイス2の刃先部cによって、線材W1の表皮の全体から薄く皮剥きされ、ほぼ帯状を呈して細長く延びる複数の切削屑d1は、ほぼ放射方向で且つ上流側に向かって成長し始める。その直後において、高速回転する切削屑ブレーカ10の先端11と皮剥ダイス2との距離Lが、3〜6mmと短いため、図4および図5の右側に示すように、複数の切削屑d1は、一対の切削屑ブレーカ10における先端11および係る先端11寄りの稜線13付近に衝突する。
その結果、約0.05〜0.10mmの薄い厚みで成長して延びた帯状の切削屑d1は、それぞれの先端部から多数の微細な切削屑d2に破砕された後、飛散して本装置1の外側に排出される。このため、ほぼ帯状に成長して延びた切削屑d1が、供給される線材W1の円周方向に沿ってリング形状になって絡んだり、線材W1の表皮を不用意に傷付ける事態を防止できるので、いわゆるダライ(切削屑)詰まりを生じることなく、スムースな皮剥きが可能となる。
因みに、直径が6mmで約50m/分の供給速度で供給したNbの線材W1を、すくい角θ1が10,20,30,40度別の皮剥ダイス2に切削代0.10mmとなるように個別に供給して皮剥きし、前記距離L3,4,5,6mmごとの位置に、1000rpmで回転する切削屑ブレーカ10の先端11を配置した。
その結果、何れの皮剥きのケースでも、複数の切削屑d1が、線材W1の表皮から放射状で且つ供給方向の上流側にほぼ帯状に延びた後、切削屑ブレーカ10の先端11付近に衝突して、多数の微細な切削屑d2となって、周囲に飛散した。
従って、軟質金属のNbからなる線材W1を断線させずに、その表皮全体を所要の厚みで連続して皮剥きできるので、所望の直径とされた線材W2を、効率良く確実に得ることができる。
図6は、前記皮剥装置1と異なる形態の皮剥装置1aにおける前記図2と同様な側面図である。係る皮剥装置1aも、前記同様の皮剥ダイス2、ホルダ4、ガイド7、ケース9、およびフレーム16を有している。係る皮剥装置1aが前記皮剥装置1と相違するのは、図6に示すように、フレーム16の上流側の端面17に、3つのアングル14を介して、3個の切削屑ブレーカ10を、供給される線材W1の軸心に対して互いに対称に配置している。
係る皮剥装置1aは、3個の切削屑ブレーカ10を有するため、前述した線材W1の皮剥きの際に、表皮の全体からほぼ帯状に成長する複数の切削屑d1を、ほぼ放射方向で且つ上流側に向かって成長し始めた直後に、それらの先端部から多数の微細な切削屑d2に、一層速く且つ細かに破砕することが可能となる。
尚、本発明は、前述したような各形態に限定されるものではない。
例えば、本発明の皮剥装置により皮剥きする対象は、Nb合金からなる線材や、Taまたはそれらの合金などからなる線材としても良い。
また、前記切削屑ブレーカ10は、1個のみをフレーム16の上流側の端面17に取り付けても良い。
更に、切削屑ブレーカは、四角錐または五角錐以上の多角錐形状とし、皮剥ダイス側に1つまたは2つ以上の稜線13が突出する形態としても良い。
また、切削屑ブレーカは、供給される前記線材W1の軸心に対して傾斜するだけの姿勢に限らず、基端12に対してその先端11が、更に線材W1の径方向に沿って若干傾斜したり、あるいは僅かに湾曲する形態としても良い。
更に、切削屑ブレーカは、供給される前記線材W1の径方向に沿って、その取り付け位置が調整可能とされた形態としても良い。
加えて、切削屑ブレーカの内部にも、冷却潤滑剤の供給路を形成し、その先端11から皮剥ダイス2の刃先部c付近に、上記潤滑剤を噴射可能としても良い。
本発明の皮剥装置を示す断面図。 上記皮剥装置の要部を示す側面図。 上記皮剥装置によって線材Wを皮剥きする状態を示す概略図。 図3中の皮剥き部付近を示す拡大図。 図4中のX−X線に矢視に沿った線材の表皮きを状態を示す模式的な概略図。 異なる形態の皮剥装置を示す図2と同様な側面図。
符号の説明
1,1a…皮剥装置
2…………皮剥ダイス
3…………貫通孔
10………切削屑ブレーカ
11………先端
12………基端
13………稜線
c…………刃先部
θ1………すくい角
W1………線材
L…………距離

Claims (4)

  1. 軟質金属またはその合金からなる線材の表皮を連続して切削する皮剥きに用いられ、
    上記線材を入口側に円形の刃先部を有する貫通孔に通過させて、係る線材の表皮を切削する皮剥ダイスと、
    上記皮剥ダイスにおける上記線材の供給方向の上流側に回転可能に配置されていると共に、先端が尖った先細形状であり、係る先端が上記ダイスの貫通孔の入口側に接近し、且つ基端が係る先端よりも線材の供給方向の上流側に位置するように、傾斜している切削屑ブレーカと、を備え、
    上記切削屑ブレーカの先端と上記皮剥ダイスとの間の距離は、3〜6mmである
    ことを特徴とする皮剥装置。
  2. 前記皮剥ダイスのすくい角は、10〜40度である、
    ことを特徴とする請求項1に記載の皮剥装置。
  3. 前記切削屑ブレーカは、細長い三角錐、四角錐、または多角錐形状を呈し、少なくとも1つの稜線を前記皮剥ダイス側に向けて突出させている、
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の皮剥装置。
  4. 前記切削屑ブレーカは、2個または3個以上であり、前記傾斜した姿勢で配置されている、
    ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の皮剥装置。
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