JP4945983B2 - ポリグリセリン脂肪酸エステルの製造方法 - Google Patents
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Description
また、グリシドールの付加重合反応は、触媒としてリン酸やリン酸エステルを用いることが多いが、生成するポリグリセリン中には付加重合触媒に由来するリン成分が含まれており、人体への影響が懸念される。また、このポリグリセリンは、熱安定性が不十分で、エステル化反応中に異常な発熱が生じて反応が暴走しやすいという問題がある。
更にポリグリセリン中のギ酸、酢酸、リン分等は、このポリグリセリンを原料とするポリグリセリン脂肪酸エステルの熱安定性を低下させる原因となっている可能性が大きい。
従って、本発明は、グリシドールを付加重合させて得られるポリグリセリンを、ポリグリセリン脂肪酸エステルの原料として好適になるように精製する方法を提供しようとするものである。
グリシドールの付加重合反応は、種々の方法で行うことができる。具体的には、グリシドールを単独で付加重合させる方法、グリセリンにグリシドールを付加重合させる方法等が挙げられる。
以下、グリセリンにグリシドールを付加重合させるポリグリセリンの製造について説明する。グリセリンへのリシドールの付加重合は、通常はリン系触媒の存在下に行われる。
リン酸系触媒としては、リン酸、無水リン酸、ポリリン酸、オルトリン酸、メタリン酸、ピロリン酸、三リン酸、四リン酸等のリン酸類、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート等の酸性リン酸エステル類等が挙げられる。酸性リン酸エステルは、モノエステル体、ジエステル体、これらの混合物のいずれでもよい。
触媒は1種を単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
グリセリンに対するグリシドールの仕込みモル比は、得ようとするポリグリセリンの重合度によって異なるが、3〜19、好ましくは3〜11である。
グリセリンとグリシドールとの反応は、反応容器にグリセリン及び触媒を入れ、これにグリシドールを少量ずつ添加して行う。反応は窒素ガス等の不活性ガス気流下に行うのが好ましい。反応温度は通常50〜180℃、好ましくは70〜160℃であり、より好ましくは120〜140℃である。反応温度が低すぎると反応速度が小さく、また180℃を越えると着色が激しくなり、230℃以上ではグリシドールが分解して副反応を起こすので好ましくない。
強酸性陽イオン交換樹脂としては、例えば、交換基がスルホン基である樹脂が挙げられる。その具体例としては、三菱化学(株)製、ダイヤイオンSK1B、SK104、SK110、SK112、SK116、PK208、PK212、PK216、PK220、PK228、HPK25(以上、商品名)、オルガノ(株)製、アンバーライトIR−120B、IR−124、200C、201B、252、IR−118(以上、商品名)等が挙げられる。
バッチ式は、1当量以上の交換基を有するイオン交換樹脂をポリグリセリン水溶液に加え、通常0.1〜10時間攪拌した後、イオン交換樹脂を分離する。イオン交換樹脂の分離は、例えば、濾過、遠心分離等の常法で行なうことができる。
これらの方法の中では、イオン交換樹脂の使用効率、イオン性低分子量不純物の低減効果及び操作時間の面から、流通法が好ましい。
なお、ポリグリセリン水溶液は、イオン交換樹脂と接触する前に、必要に応じて、限外濾過や電気透析等の公知の前処理を行ってもよい。
イオン交換樹脂と接触処理させたポリグリセリン水溶液は、薄膜蒸発機等により水分を除去すると、精製ポリグリセリンが得られる。
本発明の方法により精製したポリグリセリンと脂肪酸とのエステル化反応は、例えば、特開平7−145104号などに記載の公知の方法に従って行うことができる。
エステル化反応は、通常アルカリ触媒の存在下に行われる。アルカリ触媒としては、例えば炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどが挙げられる。触媒は、ポリグリセリンと脂肪酸の総和に対して、通常0.001〜3重量%、好ましくは0.001〜0.05重量%、さらに好ましくは0.001〜0.01重量%の割合で用いられる。
脂肪酸は、1種類を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
<実施例1>
グリセリンにグリシドールを付加重合して得られた平均重合度10のポリグリセリン(ダイセル化学工業(株)製 商品名PGL-10PS)に脱塩水を加えて50重量%水溶液とし、
これを、空間速度5h-1(流速1200ml/h)で、まず、H型にしたカチオン交換樹脂(三菱化学(株)製、商品名:SK1B)240mlを充填した耐圧ガラス製カラム(内径26mm、長さ500mm、)を通過させ、次に、OH型にしたアニオン交換樹脂(三菱化学(株)製、商品名:ダイヤイオンSA10A)240mlを充填した耐圧ガラス製カラム(内径26mm、長さ500mm)を通過させ、さらに、H型及びOH型のイオン交換樹脂よりなる混床用イオン交換樹脂(三菱化学(株)製、商品名:SMT100)240mlを充填した耐圧ガラス製カラム(内径26mm、長さ500mm)を通過させて精製した。
得られた精製ポリグリセリン及び原料のポリグリセリンについて、リン原子、リン酸イオン、ギ酸イオン及び酢酸イオンの濃度を測定した。また、鎖状ポリグリセリンの割合を分析し、かつDSC測定を行った。結果を表−1及び2に示す。
ポリグリセリンに占める鎖状ポリグリセリン(以下、ポリグリセリンをPOGと略記することがある)の割合は、MALDI−TOF−MSによって求めた。
DSC測定は、メトラー・トレド社DSC821eを用い、セル:SUS密封、試料量:4mg、測定温度:25〜450℃、昇温速度:10℃/min、測定雰囲気:窒素の条件で行い、発熱開始温度と発熱ピークのピークトップ温度を測定した。
実施例1で得られた精製ポリグリセリン600gを、窒素導入管、攪拌機、還流管、温度調節器、加熱ジャケット及び原材料仕込み口を備えた容量2リットルの反応容器に仕込んだ。次いで、ラウリン酸:ポリグリセリンのモル比が1:1となるような量のラウリン酸(純度99%)及びポリグリセリンとラウリン酸との総量に対して0.113重量%となる量の10%水酸化ナトリウム水溶液とを仕込み、窒素気流下、常圧で、内温を240℃に昇温し、この温度で3時間反応させた。反応終了後、内温を常温まで冷却した後、デカグリセリンラウリン酸エステル740gを得た。
グリセリンを重合して得られた平均重合度10のポリグリセリンのラウリン酸エステル(三菱化学フーズ(株)製 商品名L−10D)について、実施例1,2と同様にして、
リン原子の含有量、全ポリグリセリン成分に占める鎖状ポリグリセリン成分の割合、曇点及び水溶液の安定性を測定した。
その結果、リン原子<1ppm、リン酸イオン<1ppm、ギ酸イオン0.483μmol/g、酢酸イオン0.357μmol/g、鎖状ポリグリセリン成分の割合44.8%、曇点27.%、水溶液の安定性2日であった。
結果をまとめて、表−3及び表−4に示す。
Claims (5)
- リン酸系触媒の存在下にグリシドールを付加重合させて得られた粗ポリグリセリンを、交換基に4級アンモニウム基を有する強塩基性陰イオン交換樹脂で処理して陰イオン成分を除去することにより精製ポリグリセリンとし、これに脂肪酸を反応させるポリグリセリン脂肪酸エステルの製造方法であって、該強塩基性陰イオン交換樹脂による処理方法がカラム式であり、カラムに通液する際の空間速度〔ポリグリセリン水溶液供給容積速度(m3/h)/カラムのイオン交換樹脂の体積(m3)〕が1h-1以上10h-1以下であることを特徴とするポリグリセリン脂肪酸エステルの製造方法。
- 陰イオン交換樹脂処理を、ポリグリセリン中に残存するギ酸と酢酸との合計量が2μmol/g以下となるように行うことを特徴とする請求項1に記載のポリグリセリン脂肪酸エステルの製造方法。
- 陰イオン交換樹脂処理を、ポリグリセリン中に残存するリンが100ppm以下となるように行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のポリグリセリン脂肪酸エステルの製造方法。
- 陰イオン交換樹脂処理を、ポリグリセリン中に残存するリン酸イオンが10ppm以下となるように行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のポリグリセリン脂肪酸エステルの製造方法。
- リン酸系触媒の存在下にグリシドールを付加重合させて得られた、鎖状ポリグセリンの割合が60%以上である粗ポリグリセリンを、交換基に4級アンモニウム基を有する強塩基性陰イオン交換樹脂で処理して、残存するリンが100ppm以下、ギ酸と酢酸の合計量が2μmol/g以下の精製ポリグリセリンとし、これに脂肪酸を反応させるポリグリセリン脂肪酸エステルの製造方法であって、該強塩基性陰イオン交換樹脂による処理方法がカラム式であり、カラムに通液する際の空間速度〔ポリグリセリン水溶液供給容積速度(m3/h)/カラムのイオン交換樹脂の体積(m3)〕が1h-1以上10h-1以下であることを特徴とするポリグリセリン脂肪酸エステルの製造方法。
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