JP4941260B2 - 保護層転写シート、保護層転写方法及び印画物 - Google Patents
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Description
しかし、前者は、根本的に大きな凹凸を設けることができず、充分なセミグロス調印画物を得ることが困難であった。また、後者は、2段階の処理であるためにユーザーの負担が大きくなるものであった。そのため、銀塩写真にて行われてきたサービスと比較すると、同等と言えるレベルには到達していなかった。
(1)転写時に高いエネルギーを付与しても、全くダメージを受けない設計。
(2)ある程度以上のエネルギーになると、転写界面が凝集破壊し始めて微細な凹凸が形成される設計。
しかしながら、(1)の設計の保護層は、熱転写時に非常に大きな熱量を必要とするので、保護層転写シートの基材自体の耐熱性裕度の確保が困難なこと、過剰な加熱を定期的に行うためプリンタの寿命が短くなってしまうこと、大きな凹凸形成に必要なエネルギーを付与することから高速印画プリンタでは染料転写時と比較して転写速度を遅めなければ対応できなくなる場合があること、といった問題があった。また、離型層として使用するシリコーンレジンは、一般に高価な材料であることからも、この設計は好ましくない。
しかしながら、転写界面が安定的に凝集破壊する領域を持った保護層の開発が困難であり、これまでの保護層転写シートでは、同じ外観の印画物を安定的に作製することが困難であった。
また、本発明の保護層転写シートは、保護層を熱転写する際に印加する熱エネルギーを調整することで、転写後の保護層の表面を、光沢度が40%以下のマット状態又は光沢度が70%以上の光沢状態とすることができることが好ましい。
また、本発明の保護層転写シートは、保護層を熱転写する際に印加可能な熱エネルギーのエネルギー幅が、転写後の保護層の表面をマット状態又は光沢状態とする場合のいずれにおいても0.027mJ/dot以上であることが好ましい。
更に、本発明の保護層転写シートは、更に、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及び/若しくはブラック(Bk)の各色の染料層、又は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及び/若しくはブラック(Bk)の各色の熱溶融性インキ層が、基材フィルム上に面順次に形成されていることが好ましい。
また、本発明は、本発明の保護層転写シートを用いて保護層を、被転写体上に印画された画像上に熱転写により転写する保護層転写方法であって、前記保護層の熱転写時に、転写後の上記保護層の表面を光沢度が40%以下のマット状態とする際に対応した高エネルギーを付与する部分と、転写後の上記保護層の表面を光沢度が70%以上の光沢状態とする際に対応した低エネルギーを付与する部分とを混在させることを特徴とする保護層転写方法である。
本発明の保護層転写方法は、転写後の保護層の表面の光沢度が40〜70%の範囲内にあることが好ましい。
また、本発明は、本発明の保護層転写方法により、被転写体上に印画された熱転写画像上に熱転写により転写された保護層を有することを特徴とする印画物である。
以下、本発明を詳細に説明する。
上記基材フィルムとしては特に限定されず、保護層転写シートに使用されている従来公知の基材フィルムと同様のものを用いることができる。
好ましい基材フィルムの具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトン若しくはポリエーテルサルホン等の耐熱性の高いポリエステル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、酢酸セルロース、ポリエチレン誘導体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリメチルペンテンまたはアイオノマー等のプラスチックの延伸又は未延伸フィルム等が挙げられる。
また、これらの材料を2種以上積層した複合フィルムも使用することができる。
上記背面層は、本発明の保護層転写シートを用いて被転写体上に印画された画像上に保護層を熱転写により転写する際、基材フィルムとサーマルヘッド等の加熱デバイスとの融着を防止し、摺動性を向上させるために、例えば、硬化型シリコーンオイル、硬化型シリコーンワックス、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂等の従来用いられている樹脂と同様の樹脂によって設けることができる。
上記保護層は、上記基材フィルム上に形成されており、後述するように熱転写により被転写体上に印画された画像上に転写される層である。
本発明の保護層転写シートにおいて、上記保護層は、酸価が5.0以下の(メタ)アクリル樹脂からなるものである。なお、本明細書において、上記(メタ)アクリル樹脂の酸価とは、上記(メタ)アクリル樹脂を合成する際に添加した(メタ)アクリル酸を中和するのに必要なKOH量(mgKOH/1gポリマー)を意味する。
上記(メタ)アクリル樹脂の酸価は、1.0以上であることが好ましい。1.0未満であると、(メタ)アクリル樹脂の分子間相互作用が若干低くなり、熱転写時に破断が発生しやすくなり、作製する印画物の印画面の美観を損なうことがあり、また、セミグロス調の印画物を熱転写方式により安定的に得ることが困難となる。上記(メタ)アクリル樹脂の酸価のより好ましい下限は1.3であり、より好ましい上限は4.0である。
なかでも、メタクリル酸メチルをメインモノマーとし、アクリル酸を共重合成分とし、これらを所定の酸価となる範囲で共重合させたポリメチルメタクリレート(PMMA)が好適に用いられる。
また、上記(メタ)アクリル樹脂は、ガラス転移温度が80〜140℃であることが好ましく、より好ましい下限は100℃、より好ましい上限は120℃である。
なお、上記重量平均分子量は、GPC法により測定された値である。
上記多層構造を有する場合の保護層のその他の層を構成する材料としては特に限定されず、例えば、上述した(メタ)アクリル樹脂とは酸価の異なる(メタ)アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、酢酸セルロースと熱硬化型(メタ)アクリル樹脂、メラミン樹脂、ニトロセルロース樹脂、及び、ポリエチレンワックスとの混合物等が挙げられる。
上記感熱接着剤層としては、従来公知の感熱接着剤を用いて形成したものが挙げられるが、なかでも、ガラス転移温度(Tg)が50〜100℃の熱可塑性樹脂を用いて形成したものが好適である。具体的には、例えば、紫外線吸収性樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ブチラール樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂等が挙げられる。
本発明の保護層転写シートにこのような背面層が形成されていることで、上述の保護層の熱転写時におけるサーマルヘッドの熱によるスティッキングやシワ等の悪影響を防止することができる。
上記背面層を形成する樹脂としては特に限定されず、従来公知の樹脂を用いることができ、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセトアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエーテル樹脂、ポリブタジエン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリルポリオール、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタン又はエポキシのプレポリマー、ニトロセルロース樹脂、セルロースナイトレート樹脂、セルロースアセトプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートヒドロジエンフタレート樹脂、酢酸セルロース樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
上記背面層を形成する樹脂の硬化方法として特に限定されず、例えば、加熱、電離放射線照射等使用する樹脂の種類等に応じて適宜決定される。
上記滑り性付与剤としては、例えば、燐酸エステル、シリコーンオイル、グラファイトパウダー、シリコーン系グラフトポリマー、フッ素系グラフトポリマー、アクリルシリコーングラフトポリマー、アクリルシロキサン、アリールシロキサン等のシリコーン重合体が挙げられる。
また、上記背面層には必要に応じて従来公知の充填剤が添加されていてもよい。
上記背面層用インキを塗布する方法としては、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースコーティング法等が挙げられる。
また、上記背面層用インキの塗工量としては、固形分で0.1〜2g/m2程度であることが好ましい。
上記染料層は、公知の方法で適当な昇華性染料と適当なバインダー樹脂とから構成され、上記熱溶融性インキ層は、公知の方法で適当な顔料と適当なワックス等の熱溶融性物質とから形成される。
また、「セミグロス状態」とは、光沢状態とマット状態との組み合わせによって形成される状態であり、光沢状態の領域における光沢度とマット状態の領域における光沢度との差によって形成される目視可能な模様が一様に形成された状態である。
従って、熱転写による転写後の保護層の表面が上記セミグロス状態である場合、該表面がセミグロス状態の保護層は、表面に大きな凹凸が形成された銀塩写真のセミグロス調に匹敵する外観を有するものとなる。
すなわち、本発明の保護層転写方法は、本発明の保護層転写シートを用いて保護層を、被転写体上に印画された画像上に熱転写により転写する保護層転写方法であって、転写後の上記保護層の表面を光沢度が40%以下のマット状態とする際に対応した高エネルギー、又は、転写後の上記保護層の表面を光沢度が70%以上の光沢状態とする際に対応した低エネルギーになるように、上記保護層の熱転写時にサーマルヘッドに印加するエネルギーを調整することを特徴とする。
なお、上記「対応した高エネルギー」とは、本発明の保護層転写シートを用いて表面の光沢度が40%以下となるように上記保護層の熱転写を行ったときに、サーマルヘッドに印加したエネルギーである。上記「対応した低エネルギー」とは、本発明の保護層転写シートを用いて表面の光沢度が70%以上となるように上記保護層の熱転写を行ったときに、サーマルヘッドに印加したエネルギーである。これら「高エネルギー」又は「低エネルギー」の具体的な値は、上記保護層の原料やその組成比、厚さ等により適宜決定される。
上記マット状態と光沢状態との組み合わせからなるパターンとする方法としては、例えば、上記マット状態とするためにサーマルヘッドに必要なエネルギーを印加する配列と、上記光沢状態とするためにサーマルヘッドに必要なエネルギーを印加する配列とが、ランダムに配置された印刷パターンを使用する方法が挙げられる。
なお、上記マット領域と光沢領域との割合は、例えば、前述の光沢度計(日本電色社製光沢度計VG200)にて測定された値から算出することができる。すなわち、光沢領域、マット領域についてそれぞれ得られた光沢度の値に対し、その存在比率の加重平均値が得られたセミグロス印画物の光沢度である。
例えば、光沢度80の光沢領域の存在比率が50%、光沢度40のマット領域の存在比率が50%の場合には、得られたセミグロス印画物の光沢度は60となる。
このような本発明の保護層転写方法により作製した印画物もまた、本発明の1つである。
厚さ6μmで透明なポリエチレンテレフタレートを基材フィルムとして用い、その表面に、以下の組成よりなる背面層用インキを塗布量0.5g/m2で塗布し、オーブンを用いて110℃、1分で乾燥させることで背面層を形成した。
<背面層用インキ組成>
ポリイミド樹脂(HR−15ET、東洋紡績(株)製) 5質量部
ポリアミドイミド樹脂(HR−34ET 東洋紡績(株)製) 5質量部
ステアリル燐酸亜鉛(LBT−1830 堺化学工業(株)製) 1質量部
ステアリン酸亜鉛(GF−200 日本油脂(株)製) 1質量部
トルエン 44質量部
工業用エタノール 44質量部
ポリメチルメタクリレート共重合体(1) 20部
メチルエチルケトン 80部
<感熱接着層用インキ>
ポリエステル樹脂(バイロン700 東洋紡績(株)製) 20質量部
トルエン 40質量部
メチルエチルケトン 40質量部
保護層転写用塗工液の組成を以下に変更した以外は、実施例1と同様にして保護層転写シートを作製した。
<保護層用塗工液>
ポリメチルメタクリレート共重合体(2) 20部
メチルエチルケトン 80部
保護層転写用塗工液の組成を以下に変更した以外は、実施例1と同様にして保護層転写シートを作製した。
<保護層用塗工液>
ポリメチルメタクリレート 20部
メチルエチルケトン 80部
保護層転写用塗工液の組成を以下に変更した以外は、実施例1と同様にして保護層転写シートを作製した。
<保護層用塗工液>
ポリメチルメタクリレート共重合体(3) 20部
メチルエチルケトン 80部
実施例及び比較例で作製した保護層転写シートを用いて、以下の評価を行った。結果を表1及び表2に示した。
保護層転写シートの保護層を構成する(メタ)アクリル樹脂の原料モノマーとして添加したアクリル酸の重量比率から理論的に予測される酸価(mgKOH/1gポリマー)を測定した。
実施例及び比較例で作製した保護層転写シートを用いて、下記条件でアルテックADS社製、昇華転写型プリンタ、メガピクセルIIIの専用受像紙に対して熱転写を行い、保護層を転写した。
なお、保護層の転写に際して、印加エネルギーを大きく変化させるときは、印加電圧を適宜変化させることで対応し、印加エネルギーを小さく変化させるときは、階調値を適宜変化させることで対応した。
<熱転写条件>
プリンタ:テストプリンタ
サーマルヘッド:東芝ホクト電子株式会社製、サーマルヘッドF3598(解像度300dpi、抵抗値5323Ω)
印画速度:2.0ms/Line、及び、1.0ms/Line
パルスデューティー:96%
光沢度の測定は以下の条件にて測定した。
<光沢度測定条件>
グロスメーター:日本電色社製、光沢度計VG2000
条件:測定角45度
上述の熱転写条件において印画速度2.0ms/Lineの場合、印加エネルギーを0.13mJ/dotとなるエネルギー領域(光沢領域)及び0.20mJ/dotとなるエネルギー領域(マット領域)とした。また、印画速度1.0ms/Lineの場合、印加エネルギーを0.09mJ/dotとなるエネルギー領域(光沢領域)及び0.17mJ/dotとなるエネルギー領域(マット領域)とした。そして、それぞれのエネルギー領域が、300dpiに換算して4ドット(ライン)を1単位とし、その存在比率がそれぞれ50%である印画パターンを作成した。なお、それぞれの光沢領域、マット領域は、それぞれがランダムに分布するようにして設けた。
この印画パターンを上述の各印画速度条件にて印画し、セミグロス調印画物を得た。
得られた印画物の表面を目視での評価、及び、プリンタでの印画挙動に着目して以下の基準にて評価を行った。
○:印画音が静かであり、かつ、好ましいセミグロスの印画物が得られた
△:印画音が若干大きいが、好ましいセミグロス調の印画物が得られた
×:印画時にインクリボンが破断した(印画不可能)
日本電色社製光沢度計VG2000(測定角45度)を用いて、得られた各印画物の光沢度を測定した。
一方、比較例の保護層を構成する(メタ)アクリル樹脂は、酸価が5.0を超えるものであり、光沢状態とする場合の印加可能なエネルギー幅は、実施例と同等であったものの、マット状態とする場合の印加可能なエネルギー幅が狭く、そのため、セミグロス調の外観を有する印画物を安定的に作製できないものであった。
Claims (9)
- 基材フィルムと保護層とを有し、被転写体上に印画された画像上に前記保護層を熱転写により転写する保護層転写シートであって、
前記保護層は、酸価が5.0以下の(メタ)アクリル樹脂からなり、前記基材フィルムに接する状態で設けられたものである
ことを特徴とする保護層転写シート。 - 保護層の(メタ)アクリル樹脂は、酸価が1.0以上である請求項1記載の保護層転写シート。
- 保護層を熱転写する際に印加する熱エネルギーを調整することで、転写後の保護層の表面を、光沢度が40%以下のマット状態又は光沢度が70%以上の光沢状態とすることができる請求項1又は2記載の保護層転写シート。
- 保護層を熱転写する際に印加可能な熱エネルギーのエネルギー幅が、転写後の保護層の表面をマット状態又は光沢状態とするいずれにおいても0.027mJ/dot以上である請求項3記載の保護層転写シート。
- 更に、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及び/若しくはブラック(Bk)の各色の染料層、又は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及び/若しくはブラック(Bk)の各色の熱溶融性インキ層が、基材フィルム上に面順次に形成されている請求項1、2、3又は4記載の保護層転写シート。
- 請求項1、2、3、4又は5記載の保護層転写シートを用いて保護層を、被転写体上に印画された画像上に熱転写により転写する保護層転写方法であって、
転写後の前記保護層の表面を光沢度が40%以下のマット状態とする際に対応した高エネルギー、又は、転写後の前記保護層の表面を光沢度が70%以上の光沢状態とする際に対応した低エネルギーになるように、前記保護層の熱転写時にサーマルヘッドに印加するエネルギーを調整する
ことを特徴とする保護層転写方法。 - 請求項1、2、3、4又は5記載の保護層転写シートを用いて保護層を、被転写体上に印画された画像上に熱転写により転写する保護層転写方法であって、
前記保護層の熱転写時に、転写後の前記保護層の表面を光沢度が40%以下のマット状態とする際に対応した高エネルギーを付与する部分と、転写後の前記保護層の表面を光沢度が70%以上の光沢状態とする際に対応した低エネルギーを付与する部分とを混在させる
ことを特徴とする保護層転写方法。 - 転写後の保護層の表面の光沢度が40〜70%の範囲内にある請求項7記載の保護層転写方法。
- 請求項6、7又は8記載の保護層転写方法により、被転写体上に印画された画像上に熱転写により転写された保護層を有することを特徴とする印画物。
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