JP4941149B2 - ガスバリア性積層フィルム - Google Patents
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Description
通常のガスバリア性を有する包装材料としては、比較的ガスバリア性に優れている塩化ビニリデン樹脂フィルムまたは塩化ビニリデン樹脂をコーティングしたフィルムなどがよく用いられてきたが、これらの包装材料は、高度なガスバリア性が要求される包装に用いることはできない。従って高度なガスバリア性が要求される場合には、アルミニウムなどの金属箔をガスバリア層として積層した包装材料を用いざるを得なかった。
アルミニウムなどの金属箔を積層した包装材料は、温度や湿度の影響が殆どなく、高度なガスバリア性を有している。しかし、こうした包装材料では、それを透視して収容物を確認することができない、使用後に不燃物として廃棄処理しなければならない、収容物の検査に金属探知器が使用できない、などの多くの欠点を有していた。
しかしながら、上記ドライコーティング法を用いたとしても、高いガスバリア性を目指すために緻密な膜を得ようとすると、高温プロセスが必要であったり、緻密であるために膜中の応力が大きくなる傾向がある。そのため、プラスチックフィルムの使用可能な温度範囲では緻密な膜を得ることが困難であったり、プラスチックフィルムと無機酸化物薄膜との熱膨張係数の差が大きいため密着不良やクラックが発生したりする問題が生じ、高いガスバリア性の発現は容易ではない。
特に本発明の目的は、上述した電子ペーパーや有機ELなどのFPD向けとして、ガスバリア性が不十分である問題を解決するものであり、酸素バリア性および水蒸気バリア性に優れた、透明なガスバリア性積層フィルムを提供することにある。
前記基材層の両面上に積層した各々の前記ガスバリア層は酸化珪素からなり、かつ、各々の膜厚(厚さXaおよびXb)が0.01μm以上0.1μm以下であり、
前記基材層の両面上に積層した各々の前記被膜層は、フラッシュ蒸着法を用いて重合可能な2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレートとプロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレートとエトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートとの60/30/10(重量%)の混合物を成膜し、紫外線または電子線を照射して硬化させてなり、
前記ガスバリア層の厚さXaおよびXbと前記被膜層の厚さYaおよびYbとの関係が、下記3つの式を満たすことを特徴とするガスバリア性積層フィルムである。
0.01≦XaYa≦0.1
0.01≦XbYb≦0.1
(Xa+Xb)(Ya+Yb)=0.04〜0.4
(式中、XaおよびYa、XbおよびYbは、各々前記基材層の同一面に積層したガスバリア層および被膜層の厚さを示し、単位はμmである)
請求項2に記載の発明は、前記基材層の両面上に積層した各々の前記ガスバリア層がプラズマ化学蒸着(CVD)法により形成されたことを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性積層フィルムである。
請求項3に記載の発明は、前記基材層の両面上に積層した各々、もしくは、どちらか一方の前記被膜層の表面がプラズマ処理されていることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルムである。
これらの透明なプラスチックフィルムは、延伸、未延伸のどちらでもよいが、機械的強度や寸法安定性などが優れたものが好ましい。特に、耐熱性や寸法安定性などの面から、二軸方向に延伸したポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。また、透明なプラスチックフィルムは、帯電防止剤、紫外線防止剤、可塑剤、滑剤等などの添加剤を含有してもよい。さらに、透明なプラスチックフィルムにおいて、他の層を積層する側の表面には、密着性をよくするために、コロナ処理、低温プラズマ処理、イオンボンバード処理、薬品処理、溶剤処理などを施してもよい。
プラズマCVD法により積層される酸化珪素蒸着薄膜のガスバリア層2は、分子内に炭素を有するシラン化合物と酸素ガスを原料として成膜することができ、この原料に不活性ガスを加えて成膜することもできる。分子内に炭素を有するシラン化合物としては、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラメチルシラン(TMS)、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、テトラメチルジシロキサン、メチルトリメトキシシランなどの比較的低分子量のシラン化合物を選択し、これらシラン化合物の1つまたは、複数を選択しても良い。これらシラン化合物のうち、成膜圧力と蒸気圧を考えると、TEOS、TMOS、TMS、HMDSO、テトラメチルシランなどが好ましい。
0.002≦XbYb
(Xa+Xb)(Ya+Yb)≦0.5
硬化収縮率 = (硬化後の密度−硬化前の密度)/硬化後の密度×100
未硬化のフラッシュ蒸着被膜層は、真空蒸着装置内において、高温の蒸発源の中に挿入したノズルなどから、重合可能なアクリル系のモノマーまたはモノマーとオリゴマーとの混合物を滴下して気化させ(フラッシュ蒸着)、ガスバリア層2上に連続して積層することができる。
未硬化のフラッシュ蒸着被膜層に紫外線を照射して硬化させる場合には、重合可能なアクリル系のモノマーまたはモノマーとオリゴマーとの混合物に光重合開始剤を混合する。具体的な光重合開始剤としては、ベンゾインエーテル類、ベンゾフェノン類、キサントン類、アセトフェノン誘導体などを挙げることができる。これらの光重合開始剤を0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%の割合で混合される。
未硬化のフラッシュ蒸着被膜層に電子線を照射して硬化させる場合には、フラッシュ蒸着被膜層の膜厚と、電子線のエネルギー条件、加工速度、除電とのバランスが重要になる。これは、過度の電子線エネルギーを供給すると、フラッシュ蒸着被膜層に帯電を引き起こし、その結果として、剥離放電によってガスバリア層2のガスバリア性が損なわれるおそれがあるためである。
上記基材層1の両面上に積層した各々の上記被膜層3の厚さYaおよびYbは0.1μm以上20μm以下であることが好ましい。膜厚が0.1μm未満であると、均一な被膜層を形成することが難しく十分な保護機能が発揮できず、また、被膜層3形成時の硬化収縮による内部応力が僅かに生じるだけで、基材層1の同一面上に積層したガスバリア層2を十分に引き締めることができないため、上記ガスバリア性向上機能もあまり期待できない。また、膜厚が20μmを超えると被膜層3形成時の電子線照射もしくはUV照射による硬化が困難になり、さらに硬化収縮による内部応力が過度に働き、基材層1の同一面上に積層したガスバリア層2との密着性が低下する可能性が高くなる。
0.002≦XaYa
0.002≦XbYb
(Xa+Xb)(Ya+Yb)≦0.5
硬化収縮率が0.2%未満であると被膜層3形成時の硬化収縮による内部応力が僅かに生じるだけで、ガスバリア層2を十分に引き締めることができないため、上記ガスバリア性向上機能が期待できない。また、硬化収縮率が10%を超えると被膜層3形成時の硬化収縮による内部応力が過度に働き、ガスバリア層2との密着性が低下する可能性が高くなる。
モノアクリレート、ジアクリレートおよびトリアクリレートには様々な種類があり、特に限定されないが、ガスバリア層との密着性が良好であって、効率良く未硬化のフラッシュ蒸着被膜層が形成でき、さらに衛生性に優れたものを選択することが好ましい。具体的には、モノアクリレートとしては、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−アクリロイロキシエチル−コハク酸、メトキシ−ポリエチレングリコールアクリレート、フェノキシ−ポリエチレングリコールアクリレートなどが挙げられる。ジアクリレートとしては、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレートなどが挙げられる。トリアクリレートとしては、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートなどが挙げられる。これらの比率は、たとえば、モノアクリレート/ジアクリレート/トリアクリレート=60/30/10(重量%)に設定することが望ましい。
以下の実施例1、2、3においては、図1に示したように、基材層1の両面上に、ガスバリア層2と被膜層3とを順次積層したガスバリア性積層フィルムを作製した。
基材層1として厚さ25μmのニ軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用意し、巻取式真空蒸着装置内に設置した。ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)5sccm/酸素100sccmの混合ガスを電極間に導入し、13.56MHzの高周波を0.5kW印加してプラズマ化し、基材層1の片面上に厚さ0.02μmの酸化珪素蒸着薄膜層からなるガスバリア層2を積層した。連続して、フラッシュ蒸着法により、ガスバリア層2上に2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレートとプロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレートとエトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートとの60/30/10(重量%)の混合物(硬化収縮率:6.3%)からなる、厚さ1μmの未硬化のフラッシュ蒸着被膜層を積層した。フラッシュ蒸着被膜層に電子線を照射して硬化させ、被膜層3を形成した。
こうして実施例1のガスバリア性積層フィルムを作製した。
実施例1のガスバリア性積層フィルムにおいて、基材層1の両面に積層した酸化珪素蒸着薄膜層からなるガスバリア層2の厚さを両面とも0.1μmにした。その他の条件は実施例1と同様であった。こうして実施例2のガスバリア性積層フィルムを作製した。
実施例1のガスバリア性積層フィルムにおいて、基材層1の両面に積層した酸化珪素蒸着薄膜層からなるガスバリア層2の厚さを両面とも0.01μmにした。その他の条件は実施例1と同様であった。こうして実施例3のガスバリア性積層フィルムを作製した。
実施例1と同様にして、基材層1の両面上に酸化珪素蒸着薄膜からなるガスバリア層2と被膜層3とを順次積層した後、DC電源を用い窒素とアルゴンとの1/1混合ガスをプラズマ化して、基材層1の両面に積層した被膜層3の表面をプラズマ処理した。こうして実施例4のガスバリア性積層フィルムを作製した。
実施例1のガスバリア性積層フィルムにおいて、基材層1の両面上に酸化珪素蒸着薄膜からなるガスバリア層2のみを積層し、被膜層3は基材層1の両面とも積層しなかった。こうして比較例1のガスバリア性積層フィルムを作製した。
実施例1のガスバリア性積層フィルムにおいて、酸化珪素蒸着薄膜層からなるガスバリア層2の厚さを0.1μm、被膜層3の厚さを10μmにした。その他の条件は実施例1と同様であった。こうして比較例2のガスバリア性積層フィルムを作製した。
実施例1のガスバリア性積層フィルムにおいて、基材層1の両面上に積層した酸化珪素蒸着薄膜層からなるガスバリア層2の厚さを0.01μm、基材層1の両面上に積層した被膜層3の厚さを0.1μmにした。その他の条件は実施例1と同様であった。こうして比較例3のガスバリア性積層フィルムを作製した。
次に、実施例1、2、3、4および比較例2、3のそれぞれの単体フィルムの最初に積層した被膜層3の表面および比較例1の単体フィルムの最初に積層したガスバリア層2の表面に、厚さ1.2μmの印刷層を積層した。以下、これらを印刷フィルムという。
次に、実施例1、2、3、4および比較例1、2、3のそれぞれの印刷フィルムの印刷層の表面に、5g/m2のポリウレタン系接着剤を介して厚さ50μmのポリプロピレンのヒートシール層を積層した。以下、これらを積層フィルムという。
1.酸素透過度
実施例1、2、3、4および比較例1、2、3の単体フィルム、印刷フィルムおよび積層フィルムについて、モダンコントロール社製の酸素透過度計(MOCON OX-TRAN 2/21)により、30℃−70%RH雰囲気下での酸素透過度(cc/m2・24h・MPa)を測定した。
実施例1、2、3、4および比較例1、2、3の単体フィルムについて、モダンコントロール社製の水蒸気透過度計(MOCON PERMATRAN-W 3/31)により、40℃−90%RH雰囲気下での水蒸気透過度(g/m2・24h)を測定した。
実施例1、2、3、4および比較例1、2、3の積層フィルムから15mm幅にスリットした試験片について、通常のテンシロン型万能試験機により、ラミネート強度(N/15mm)を測定した。
これらの測定結果を表1に示す。
一方、被膜層が積層されていない比較例1のガスバリア性積層フィルムからなる印刷フィルムおよび積層フィルムは、実施例1、実施例2、実施例3および実施例4のガスバリア性積層フィルムと比較して、酸素透過度が高くガスバリア性に劣っていた。
また、ガスバリア層2の厚さXa[μm]、Xb[μm]、被膜層3の厚さYa[μm]、Yb[μm]が(Xa+Xb)(Ya+Yb)≧0.5となる比較例2のガスバリア性積層フィルムは、実施例1、実施例2、実施例3および実施例4のガスバリア性積層フィルムと比較して、ガスバリア性はほぼ同等レベルであるが、積層フィルムのラミネート強度が著しく劣っていた。
さらにまた、ガスバリア層2の厚さXa[μm]、Xb[μm]、被膜層3の厚さYa[μm]、Yb[μm]がXaYa≦0.002かつXbYb≦0.002となる比較例3のガスバリア性積層フィルムは、実施例1、実施例2、実施例3および実施例4のガスバリア性積層フィルムと比較して、積層フィルムのラミネート強度は同等レベル以上であるが、単体フィルムの酸素透過度および水蒸気透過度、印刷フィルムおよび積層フィルムの酸素透過度が高く、ガスバリア性が著しく劣っていた。
2…ガスバリア層
3…被膜層
Claims (3)
- 透明なプラスチックフィルムからなる基材層の両面上に、ガスバリア層と被膜層を順次積層してなるガスバリア性積層フィルムにおいて、
前記基材層の両面上に積層した各々の前記ガスバリア層は酸化珪素からなり、かつ、各々の膜厚(厚さXaおよびXb)が0.01μm以上0.1μm以下であり、
前記基材層の両面上に積層した各々の前記被膜層は、フラッシュ蒸着法を用いて重合可能な2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレートとプロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレートとエトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートとの60/30/10(重量%)の混合物を成膜し、紫外線または電子線を照射して硬化させてなり、
前記ガスバリア層の厚さXaおよびXbと前記被膜層の厚さYaおよびYbとの関係が、下記3つの式を満たすことを特徴とするガスバリア性積層フィルム。
0.01≦XaYa≦0.1
0.01≦XbYb≦0.1
(Xa+Xb)(Ya+Yb)=0.04〜0.4
(式中、XaおよびYa、XbおよびYbは、各々前記基材層の同一面に積層したガスバリア層および被膜層の厚さを示し、単位はμmである) - 前記基材層の両面上に積層した各々の前記ガスバリア層がプラズマ化学蒸着(CVD)法により形成されたことを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性積層フィルム。
- 前記基材層の両面上に積層した各々、もしくは、どちらか一方の前記被膜層の表面がプラズマ処理されていることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルム。
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