JP4941022B2 - ガスバリア性積層フィルム - Google Patents
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Description
通常のガスバリア性を有する包装材料としては、比較的ガスバリア性に優れている塩化ビニリデン樹脂フィルムまたは塩化ビニリデン樹脂をコーティングしたフィルムなどがよく用いられてきたが、これらの包装材料は、高度なガスバリア性が要求される包装に用いることはできない。従って高度なガスバリア性が要求される場合には、アルミニウムなどの金属箔をガスバリア層として積層した包装材料を用いざるを得なかった。
アルミニウムなどの金属箔を積層した包装材料は、温度や湿度の影響が殆どなく、高度なガスバリア性を有している。しかし、こうした包装材料では、それを透視して収容物を確認することができない、使用後に不燃物として廃棄処理しなければならない、収容物の検査に金属探知器が使用できない、などの多くの欠点を有していた。
これらの欠点を克服した包装材料として、特許文献1には、透明なプラスチックフィルムからなる基材層に、透明な酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムなどの無機酸化物の蒸着薄膜層をガスバリア層とし、その上に適宜のガスバリア性被膜層とを積層してなる積層フィルムが開示されている。
該被膜層を形成する該重合可能なアクリル系のモノマーまたはモノマーとオリゴマーとの混合物の硬化収縮率が0.2%以上10%以下であり、前記重合可能なアクリル系のモノマーまたはモノマーとオリゴマーとの混合物が、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレートとプロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレートとエトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートとの60/30/10(重量%)の混合物であることを特徴とするガスバリア性積層フィルムである。
請求項2に記載の発明は、前記被膜層が、前記重合可能なアクリル系のモノマーまたはモノマーとオリゴマーとの混合物をフラッシュ蒸着法により前記無機酸化物蒸着薄膜層上に積層し、紫外線または電子線を照射することで硬化した被膜層であることを特徴とする請求項1記載のガスバリア性積層フィルムである。
請求項3に記載の発明は、前記被膜層の表面がプラズマ処理されていることを特徴とする請求項1または2に記載のガスバリア性積層フィルムである。
これらの透明なプラスチックフィルムは、延伸、未延伸のどちらでもよいが、機械的強度や寸法安定性などが優れたものが好ましい。特に、耐熱性や寸法安定性などの面から、二軸方向に延伸したポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。また、透明なプラスチックフィルムは、帯電防止剤、紫外線防止剤、可塑剤、滑剤等などの添加剤を含有してもよい。さらに、透明なプラスチックフィルムにおいて、他の層を積層する側の表面には、密着性をよくするために、コロナ処理、低温プラズマ処理、イオンボンバード処理、薬品処理、溶剤処理などを施してもよい。
これらの透明なプラスチックフィルムからなる基材層1の厚さは、特に制限を受けるものではないが、包装材料としての適性や他の層を積層する場合の加工適性などを考慮すると、実用的には3〜200μmの範囲、特に6〜30μmの範囲であることが好ましい。
現時点の真空蒸着法において、真空蒸着装置内での蒸発源材料の加熱手段としては、電子線加熱方式や抵抗加熱方式や誘導加熱方式などが好ましい。また基材層1との密着性を向上させるために、プラズマアシスト法やイオンビームアシスト法などを用いることも可能である。さらに、無機酸化物蒸着薄膜層2の透明性を上げるために、酸素ガスなど吹き込んで反応性蒸着を行ってもよい。
本発明のガスバリア性積層フィルムにおいて、無機酸化物蒸着薄膜層2は、透明であり、かつ酸素、水蒸気などの収容物を変質させる気体を遮断する優れたガスバリア性を有している。この無機酸化物蒸着薄膜層2の厚さは、5〜200nm、より好ましくは5〜100nmである。ここで、膜厚が5nm未満であると、均一な蒸着薄膜層が得られないことがあり、ガスバリア材としての機能を十分に果たすことができない。一方、膜厚が200nmを越えると、無機酸化物蒸着薄膜層2にフレキシビリティを保持させることが難しく、折り曲げや引っ張りなどの外部応力が加わると、無機酸化物蒸着薄膜層2に亀裂を生じるおそれがある。
未硬化のフラッシュ蒸着被膜層に電子線を照射して硬化させる場合には、フラッシュ蒸着被膜層の膜厚と、電子線のエネルギー条件、加工速度、除電とのバランスが重要になる。これは、過度の電子線エネルギーを供給すると、フラッシュ蒸着被膜層に帯電を引き起こし、その結果として、剥離放電によって無機酸化物蒸着薄膜層2のガスバリア性が損なわれるおそれがあるためである。
なお、本発明でいう硬化収縮率は、下式により硬化前後の密度の変化(%)を計算することによって設定された値である。
硬化収縮率={(硬化後の密度−硬化前の密度)/硬化後の密度}×100
この被膜層3をプラズマ処理する際に、DC電源またはRF電源を用いて、プラズマを連続的に安定して発生させ、重合可能なアクリル系のモノマーまたはモノマーとオリゴマーとの混合物の未硬化成分を効率よく除去するためには、水素、酸素、窒素、二酸化炭素などの通常のガスと、ヘリウム、アルゴンなどの少なくとも1種類の不活性ガスとを含むプラズマ処理用の混合ガスを使用することが望ましい。
上記の中間フィルム層または外側フィルム層としては透明なフィルム層が用いられる。こうした透明なフィルム層としては、たとえばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系フィルム、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリアクリルニトリル系フィルム、ポリイミド系フィルムなどが挙げられる。上記のヒートシール層としては、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸エステル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、およびこれらの金属架橋物、などの合成樹脂が用いられる。中間フィルム層、外側フィルム層、ヒートシール層の厚さは、目的に応じて決められるが、一般的には15〜200μmの範囲である。上記の接着剤としては、1液硬化型または2液硬化型のポリウレタン系接着剤などが用いられる。接着剤を介してこれらの層を積層するには、ドライラミネート法などが用いることができる。また、ヒートシール層の他の積層方法として、ヒートシール層の合成樹脂を、熱溶融押出する方法(エクストルージョンラミ)を用いることもできる。
基材層1として厚さ12μmのニ軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用意し、真空蒸着装置内に設置した。電子線加熱方式で酸化珪素を蒸発させて、基材層1上に厚さ20nmの酸化珪素蒸着薄膜からなる無機酸化物蒸着薄膜層2を積層した。次に、大気圧下において、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレートとプロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレートとエトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートとの60/30/10(重量%)の混合物(硬化収縮率:6.3%)をメチルエチルケトンにて希釈したアクリル固形分50重量%の希釈混合液を基材層1上に塗布し、70℃乾燥にてメチルエチルケトンを十分に蒸発させた後、電子線を照射して硬化させ、厚さ0.5μmの被膜層3を形成した。こうして実施例1のガスバリア性積層フィルムを作成した。
基材層1として厚さ12μmのニ軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用意し、真空蒸着装置内に設置した。電子線加熱方式で酸化珪素を蒸発させて、基材層1上に厚さ20nmの酸化珪素蒸着薄膜からなる無機酸化物蒸着薄膜層2を積層した。連続して、フラッシュ蒸着法により、無機酸化物蒸着薄膜層2上に2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレートとプロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレートとエトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートとの60/30/10(重量%)の混合物(硬化収縮率:6.3%)からなる、厚さ0.5μmの未硬化のフラッシュ蒸着被膜層を積層した。フラッシュ蒸着被膜層に電子線を照射して硬化させ、被膜層3を形成した。こうして実施例2のガスバリア性積層フィルムを作製した。
実施例2と同様にして、基材層1上に酸化珪素蒸着薄膜からなる無機酸化物蒸着薄膜層2と被膜層3とを順次積層した後、DC電源を用い窒素とアルゴンとの1/1混合ガスをプラズマ化して、被膜層3の表面をプラズマ処理した。こうして実施例3のガスバリア性積層フィルムを作製した。
実施例1のガスバリア性積層フィルムにおいて、基材層1上に酸化珪素蒸着薄膜からなる無機酸化物蒸着薄膜層2のみを積層し、被膜層3は積層しなかった。こうして比較例1のガスバリア性積層フィルムを作製した。
実施例1のガスバリア性積層フィルムにおいて、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレートとプロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレートとエトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートとの60/30/10(重量%)の混合物(硬化収縮率:6.3%)の代わりに、トリプロピレングリコールジアクリレート(硬化収縮率:11.5%)を用いた。その他の条件は実施例1と同様であった。こうして比較例2のガスバリア性積層フィルムを作製した。
実施例2のガスバリア性積層フィルムにおいて、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレートとプロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレートとエトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートとの60/30/10(重量%)の混合物(硬化収縮率:6.3%)の代わりに、トリプロピレングリコールジアクリレート(硬化収縮率:11.5%)を用いた。その他の条件は実施例2と同様であった。こうして比較例3のガスバリア性積層フィルムを作製した。
次に、実施例1、2、3および比較例2、3のそれぞれの単体フィルムの被膜層3の表面および比較例1の単体フィルムの無機酸化物蒸着薄膜層2の表面に、厚さ1.2μmの印刷層を積層した。以下、これらを印刷フィルムという。
次に、実施例1、2、3および比較例1、2、3のそれぞれの印刷フィルムの印刷層の表面に、5g/m2のポリウレタン系接着剤を介して厚さ50μmのポリプロピレンのヒートシール層を積層した。以下、これらを積層フィルムという。
1.酸素透過度
実施例1、2、3および比較例1、2、3の単体フィルム、印刷フィルムおよび積層フィルムについて、モダンコントロール社製の酸素透過度計(MOCON OX-TRAN 2/21)により、30℃−70%RH雰囲気下での酸素透過度(cc/m2・24h・MPa)を測定した。
2.水蒸気透過度
実施例1、2、3および比較例1、2、3の単体フィルムについて、モダンコントロール社製の水蒸気透過度計(MOCON PERMATRAN-W 3/31)により、40℃−90%RH雰囲気下での水蒸気透過度(g/m2・24h)を測定した。
3.ラミネート強度
実施例1、2、3および比較例1、2、3の積層フィルムから15mm幅にスリットした試験片について、通常のテンシロン型万能試験機により、ラミネート強度(N/15mm)を測定した。
これらの測定結果を表1に示す。
一方、被膜層が積層されていない比較例1のガスバリア性積層フィルム(単体フィルム、印刷フィルムおよび積層フィルム)は、実施例1、実施例2および実施例3のガスバリア性積層フィルムと比較して、酸素透過度、水蒸気透過度が高くガスバリア性に劣っていた。特に、印刷フィルムおよび積層フィルムでは酸素透過度がかなり高く、ガスバリア性が著しく劣っていた。
また、被膜層の原材料としてトリプロピレングリコールジアクリレート(硬化収縮率:11.5%)を用いた比較例2、比較例3のガスバリア性積層フィルムは、実施例1、実施例2および実施例3のガスバリア性積層フィルムと比較して、積層フィルムのラミネート強度が著しく劣っていた。
2…無機酸化物蒸着薄膜層
3…被膜層
Claims (3)
- 透明プラスチックフィルム面上に、厚さ5nm以上200nm以下の無機酸化物蒸着薄膜層と、重合可能なアクリル系のモノマーまたはモノマーとオリゴマーとの混合物を硬化してなる厚さ0.1μm以上20μm以下の被膜層が順次積層されてなり、
該被膜層を形成する該重合可能なアクリル系のモノマーまたはモノマーとオリゴマーとの混合物の硬化収縮率が0.2%以上10%以下であり、前記重合可能なアクリル系のモノマーまたはモノマーとオリゴマーとの混合物が、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレートとプロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレートとエトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートとの60/30/10(重量%)の混合物であることを特徴とするガスバリア性積層フィルム。 - 前記被膜層が、前記重合可能なアクリル系のモノマーまたはモノマーとオリゴマーとの混合物をフラッシュ蒸着法により前記無機酸化物蒸着薄膜層上に積層し、紫外線または電子線を照射することで硬化した被膜層であることを特徴とする請求項1記載のガスバリア性積層フィルム。
- 前記被膜層の表面がプラズマ処理されていることを特徴とする請求項1または2に記載のガスバリア性積層フィルム。
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