JP4940512B2 - 樹脂の無電解メッキ被膜形成方法 - Google Patents

樹脂の無電解メッキ被膜形成方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に樹脂の無電解メッキ方法において、紫外線照射前に樹脂表面を活性化させることによりメッキ被膜の密着性を向上させる樹脂の無電解メッキ被膜形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
高分子材料からなる樹脂の表面を金属化することにより、樹脂の安価で軽量な点と、金属の高電導性や高耐熱性等に優れた点の両方を併せ持つ材料が近年開発されてきている。
【0003】
上記樹脂の表面に金属化処理を行う方法として、例えば、生産性に優れ、低コストの無電解メッキ方法が採用されている。この無電解メッキ方法は、通常、樹脂表面を改質した後、無電解メッキを行っている。上記樹脂表面改質方法としては、例えば、樹脂表面をエッチング剤によりエッチングする方法、樹脂表面へのイオンの打ち込み、レーザー照射、プラズマ照射、オゾン照射等の化学的及び物理的な方法が挙げられる。
【0004】
上記表面改質により、樹脂表面に官能基を付与するとともにミクロな凹凸を形成する。これにより、表面改質された樹脂表面とメッキ層とは、化学的結合と凹凸によるアンカー効果により良好な密着性を有することとなる。
【0005】
上述のエッチング剤としては、例えば無電解メッキが施されるプラスチックの大半を占めるアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂では、クロム酸・硫酸混合液による表面処理が一般的である。
【0006】
しかしながら、上記クロム酸は、危険性、公害性の高い薬剤であることから、取り扱いに問題があった。
【0007】
そこで、近年では、クロム酸等危険性の高い薬剤をエッチング剤として用いることなく、樹脂表面を改質する方法が提案されている。
【0008】
例えば、特開平8−253869号公報の「樹脂の無電解メッキ方法」には、樹脂表面に紫外光を少なくとも照射量50mJ/cm2以上照射した後、無電解メッキによって金属膜を形成する樹脂の無電解メッキ方法が提案されている。
【0009】
また、特開平10−310873号公報の「無電解メッキ方法」には、樹脂材料からなる被メッキ素地表面に対して波長350nm以下の遠紫外線を照射した後、無電解メッキを施す無電解メッキ方法が提案されている。
【0010】
更に、特開平10−88361号公報の「高分子成形対への無電解メッキ方法」には、高分子成形体への無電解メッキの前処理として、高分子成形体の所定領域に紫外線を照射した後、その領域をポリオキシエチレン結合を有する非イオン界面活性剤を含有するアルカリ溶液と接触させる表面処理工程を行う無電解メッキ方法が提案されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特開平8−253869号公報及び特開平10−310873号公報に記載のいずれの無電解メッキ方法も、無電解メッキの前処理として、紫外線を照射することにより樹脂表面改質を改質しているのみであり、十分に樹脂表面を改質するには、多量の紫外線照射を行う必要があり、これによって樹脂自体の変形等の問題が生じるおそれがあった。
【0012】
また、上記特開平10−88361号公報に記載の無電解メッキ方法は、紫外線照射による樹脂表面改質の後に、ポリオキシエチレン結合(−(OCH2CH2n−)を有する非イオン界面活性剤を含有するアルカリ溶液を接触させることによって、上述の公報の方法に比べ、樹脂正面とメッキ層との密着性は向上するものの、近年要望されている強度の密着性を得るには、今一歩というところであった。
【0013】
そこで、本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、樹脂表面とメッキ被膜とのより強固な密着性を得るための樹脂の無電解メッキ被膜形成方法を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の樹脂の無電解メッキ被膜形成方法は、以下の特徴を有する。
【0015】
(1)硬質粒子によって樹脂表面を摩擦する表面活性化工程と、表面活性化された樹脂表面に紫外線を照射する紫外線照射工程と、界面活性剤を含有するアルカリ溶液に樹脂表面を接触させる表面処理工程と、表面処理後の樹脂表面に無電解メッキを行い樹脂表面に金属膜を形成する無電解メッキ工程と、を有し、前記表面活性化工程では、大気より高い酸素濃度雰囲気下で、樹脂表面を硬質粒子にて摩擦する樹脂の無電解メッキ被膜形成方法である。
【0016】
紫外線照射前に、硬質粒子により樹脂表面を摩擦することによって、樹脂表面にアンカー(投錨)形状ほどではないが微細な凹凸を形成することができる。これにより、樹脂表面における分子鎖を機械的に切断することができるとともに、後工程における紫外線照射のための表面積を大きくすることができる。このように、紫外線照射前に、樹脂表面の分子鎖を切断するとともにその表面に微細な凹凸を形成することによって、紫外線による更なる樹脂表面付近の高分子の化学結合の切断が促進され、より多くのラジカルが生成することとなる。その結果、その多くのラジカルと大気中の酸素とが結合して、一種の酸化劣化を受け、これにより、樹脂表面には、カルボキシル基(−COOH)、カルボニル基(−CO)、水酸基(−OH)等の官能基が多く生成する。これらの官能基は、メッキ材料である活性な金属粒子と化学的な結合力或いは電気的な親和力により強固に結合する。また、紫外線照射によって、樹脂表面には更なる凹凸が形成されアンカー効果が発現する。従って、従来に比べ、樹脂表面への官能基付与が多く、更にアンカー効果を有する凹凸もあるため、樹脂表面とメッキ層とは、より強い化学的結合力或いは電気的な親和力とアンカー効果との相乗効果により、強固に密着することとなる。
【0018】
硬質粒子により樹脂表面の高分子の化学結合が切断する際にも、樹脂表面にはラジカルが生成する。従って、大気より高い酸素濃度雰囲気下において摩擦処理による表面活性化を行うことにより、大気の場合に比べ、樹脂表面により多くのカルボキシル基(−COOH)、カルボニル基(−CO)、水酸基(−OH)等の官能基を付与することができる。その結果、上記官能基を有する樹脂表面と活性な金属粒子を有するメッキ層とは、より強い化学的な結合力或いは電気的な親和力により強固に密着することとなる。
【0019】
硬質粒子によって樹脂表面を摩擦する表面活性化工程と、表面活性化された樹脂表面に紫外線を照射する紫外線照射工程と、界面活性剤を含有するアルカリ溶液に樹脂表面を接触させる表面処理工程と、表面処理後の樹脂表面に無電解メッキを行い樹脂表面に金属膜を形成する無電解メッキ工程と、を有し、前記表面活性化工程では、酸素濃度60%以上の高い酸素濃度雰囲気下で、樹脂表面を硬質粒子にて摩擦する樹脂の無電解メッキ被膜形成方法である。
【0020】
酸素濃度を60%以上にすることによって、摩擦時に生成するラジカルと高効率で酸素が結合して、上述の官能基をより多く樹脂表面に生成させることができる。従って、上述のように、官能基が付与された樹脂表面と活性な金属粒子を有するメッキ層とは、より強い化学的な結合力或いは電気的な親和力により強固に密着することとなる。
【0021】
硬質粒子によって樹脂表面を摩擦する表面活性化工程と、表面活性化された樹脂表面に紫外線を照射する紫外線照射工程と、界面活性剤を含有するアルカリ溶液に樹脂表面を接触させる表面処理工程と、表面処理後の樹脂表面に無電解メッキを行い樹脂表面に金属膜を形成する無電解メッキ工程と、を有し、前記表面活性化工程では、湿度50%以下の環境下で、樹脂表面を硬質粒子にて摩擦する樹脂の無電解メッキ被膜形成方法である。
【0022】
湿度が高過ぎる場合(50%を越える場合)、摩擦により生成した樹脂表面のラジカルは、酸素と反応するだけではなく、周囲の水分と反応してしまい、上述の官能基の生成が阻害され、摩擦による官能基生成が減少する。その結果、樹脂表面とメッキ層との密着性が減少する。また、湿度が高い場合、硬質粒子による摩擦により生成する静電気が弱められ、静電気によるクローン力によって樹脂表面とメッキ層との電気的な結合力も弱められてしまう。従って、摩擦による表面活性化工程では、湿度は50%以下に保つことが好ましい。
【0023】
)上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の樹脂の無電解メッキ被膜形成方法において、前記表面活性化工程における硬質粒子は、絶縁性粒子である樹脂の無電解メッキ被膜形成方法である。
【0024】
硬質粒子を、絶縁性粒子とすることにより、摩擦時に静電気が発生し、より樹脂表面を活性化することができ、その結果、樹脂表面とメッキ層とは、静電気によるクーロン力によっても電気的な結合力が増大し、強固に密着することとなる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。
【0026】
図1に示すように、本実施に形態の樹脂の無電解メッキ被膜形成方法は、硬質粒子により樹脂表面を摩擦する表面活性化工程を行い(S100)、その後、表面活性化された樹脂表面に紫外線を照射する紫外線照射工程を行い(S102)、次いで、界面活性剤を含有するアルカリ溶液に樹脂表面を接触させる表面処理工程を行い(S104)、その後、表面処理後の樹脂表面に無電解メッキを行い樹脂表面に金属膜を形成する無電解メッキ工程を行う(S106)ことによって、樹脂表面に金属膜(メッキ被膜)を形成する方法である。
【0027】
更に詳説すると、上記表面活性化工程(S100)では、大気より高い酸素濃度雰囲気下で、樹脂表面を硬質粒子によって摩擦することが好ましく、酸素濃度60%以上の高い酸素濃度雰囲気下で摩擦することがより好ましい。
【0028】
硬質粒子により樹脂表面の高分子の化学結合が切断する際に、樹脂表面にはラジカルが生成する。従って、大気より高い酸素濃度、特に酸素濃度60%以上の雰囲気下において摩擦処理による表面活性化を行うことにより、図2に示すように、大気の場合に比べ、樹脂基板10の表面12により多くのカルボキシル基(−COOH)20、カルボニル基(−CO)30、水酸基(−OH)40等の官能基を付与することができる。これらの官能基の酸素は、非結合電子対を有し、この非結合電子対と活性な金属原子とは化学的な結合力或いは電気的な親和力を有する。従って、上記官能基を有する樹脂表面と活性な金属粒子を有するメッキ層とは、より強い化学的な結合力或いは電気的な親和力により強固に密着することができる。更に、酸素濃度を60%以上にすることによって、摩擦時に生成するラジカルと高効率で酸素が結合して、上述の官能基をより多く樹脂表面に生成させることができる。従って、上述のように、官能基が付与された樹脂表面と活性な金属粒子を有するメッキ層とは、更なる強い化学的な結合力或いは電気的な親和力により強固に密着することとなる。
【0029】
また、上記表面活性化工程(S100)では、湿度50%以下の環境下で、樹脂表面を硬質粒子によって摩擦することが好適である。
【0030】
上述したように、湿度が高過ぎる場合(50%を越える場合)、摩擦により生成した樹脂表面のラジカルは、周囲の酸素と反応するだけではなく、周囲の水と反応してしまい、上記官能基の生成が阻害されてしまう。その結果、摩擦による官能基生成が減少し、これにより、樹脂表面とメッキ層との密着性が減少する。従って、本実施の形態の摩擦による表面活性化工程では、湿度は50%以下に保つことが好ましい。
【0031】
また、表面活性化工程(S100)における硬質粒子は、絶縁性粒子であることが好ましい。
【0032】
硬質粒子を、絶縁性粒子とすることにより、摩擦時に静電気が発生し、より樹脂表面を活性化することができる。これにより、樹脂表面とメッキ層とは、静電気によるクーロン力によっても電気的な結合力が増大し、強固に密着することとなる。絶縁性粒子としては、例えばガラスビーズが挙げられる。
【0033】
また、表面活性化工程(S100)における摩擦時間は、樹脂の組成、硬質粒子の大きさや堅さ、硬質粒子の特性に応じて適宜選択することが好ましい。
【0034】
また、紫外線照射工程(S102)では、200〜400nmの範囲で、照射される樹脂に応じて適宜選択して照射する。これにより、樹脂中の高分子の化学結合を効率的に切断してラジカルを生成させるとともに、樹脂表面にミクロの凹凸を生成させることができる。
【0035】
紫外線の光源としては、例えば低圧水銀ランプ、エキシマレーザ、バリア放電ランプ、誘電体バリア放電ランプ、マイクロ波無電極放電ランプ、過渡放電ランプ等を用いることができる。なお、上記低圧水銀ランプを用いた場合、184.9nm、253.7nmの主波長が特に有効である。
【0036】
ここで、本実施の形態で用いる樹脂としては、紫外線照射で化学結合が切断されるとともに、周囲の酸素により酸化される化学構造を有するものであればいかなる樹脂でもよいが、例えば、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリメタクリル酸メチル(PMM)、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニルレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエチレンエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、熱硬化性のエポキシ樹脂、フェノール樹脂等が挙げられ、これらの単独又は2種以上の組み合わせにより生成された樹脂でもよい。
【0037】
また、表面処理工程(S104)では、非イオン界面活性剤又は陰イオン界面活性剤のいずれかを含有するアルカリ溶液に、紫外線照射された樹脂表面を接触させる。
【0038】
アルカリ溶液中のアルカリ成分としては、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア、三リン酸ナトリウム等が挙げられ、そのアルカリ溶液の濃度は、0.05〜0.5モル/リットル程度が好適である。
【0039】
また、上記界面活性剤は、好ましくは非イオン界面活性剤であり、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸モノエステル等が挙げられる。そして、非イオン界面活性剤の濃度は、0.05〜1g/リットルが好ましい。
【0040】
また、表面処理工程(S104)の処理液温度は30〜90℃、処理時間は30秒〜5分が好ましい。
【0041】
また、上記無電解メッキ工程(S106)は、まず表面処理された樹脂表面を触媒化した後、促進化工程を経て、主として金属の塩、錯化剤及び還元剤を含有する酸性浴、中性浴、アルカリ浴等のメッキ浴に浸漬することによって行うことができる。
【0042】
上記触媒化工程では、非電導体である樹脂表面上で無電解メッキ反応を開始させるために必要な還元剤のアノード酸化触媒(例えば、Pd、Au、Ag、Pt等)を樹脂表面に吸着又は析出させる工程である。具体的には、酸化スズ(II)溶液に浸漬してSn2+を樹脂表面に吸着させる工程と、塩化パラジウム溶液、Au、Ag、Pt等を含有する溶液に浸漬してPd、Au、Ag、Pt等の貴金属触媒核を樹脂表面に析出させる工程と、からなる。通常、20〜50℃、30秒〜10分間で行うことが好適である。
【0043】
また、上記促進課工程は、上記触媒化工程において樹脂表面に析出させた貴金属触媒核を硫酸、塩酸等の溶液により活性化させる工程である。塩酸を用いる場合には、30〜50℃、1〜10分間程度浸漬させるのが好ましく、その濃度は0.5〜1Nが好ましい。
【0044】
また、メッキ浴では、無電解メッキ方法により形成する金属被膜によって金属の塩を適宜選択するが、例えば、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、次亜リン酸ニッケル、硫酸コバルト、塩化コバルト、硫酸銅、シアン化金カリウム等が挙げられ、またメッキ浴に添加される還元剤としては、次亜リン酸ナトリウム、ヒドラジン、ホウ水素化ナトリウム、ホルムアルデヒド等が挙げられる。
【0045】
なお、上記無電解メッキにより形成されたメッキ被膜上に更に電気メッキにより金属被膜を形成してもよい。
【0046】
また、樹脂表面を硬質粒子により摩擦する前に、樹脂表面を清浄化するために脱脂、洗浄を行ってもよい。
【0047】
【実施例】
次に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。
【0048】
[実施例1〜3及び比較例1、参考例1]
以下に示す方法により形成したメッキ被膜と樹脂表面との密着強度を引っ張り強度試験器を用いて測定し、評価した。その結果を表1〜5に示す。
【0049】
比較例1:
射出成形にて作成したABS樹脂基板に出力0.6kWの水銀ランプを用いて紫外線を5〜20分間照射した。その後、ABS樹脂基板を、60℃に加熱した0.05g/リットルのポリオキシエチレンアルキルエーテルを含有する50g/リットルの水酸化ナトリウム水溶液に2分間浸漬した。次に、塩化パラジウムを0.1wt%、塩化スズ5wt%を溶解した3N塩酸を50℃に加熱し、この塩酸浴にABS樹脂基板を浸漬した。その後、0.5N塩酸に3分間浸漬した。次いで、Ni−P化学メッキ浴(40℃)に浸漬して、10分間Ni−PメッキをABS樹脂基板表面に析出させた。その後、硫酸銅系Cu電気メッキ浴にて銅メッキを100μm析出させた。析出後、メッキ被膜が形成されたABS樹脂基板を1cmの幅に切断して、引っ張り試験により密着強度を測定した。
【0050】
実施例1:
射出成形にて作成したABS樹脂基板とガラスビーズを樹脂容器に入れ、ボールミルによって5〜20分間の摩擦を行った。その後、出力0.6kWの水銀ランプを用いて紫外線を5分間照射した。その後、ABS樹脂基板を、60℃に加熱した0.05g/リットルのポリオキシエチレンアルキルエーテルを含有する50g/リットルの水酸化ナトリウム水溶液に2分間浸漬した。次に、塩化パラジウムを0.1wt%、塩化スズ5wt%を溶解した3N塩酸を50℃に加熱し、この塩酸浴にABS樹脂基板を浸漬した。その後、0.5N塩酸に3分間浸漬した。次いで、Ni−P化学メッキ浴(40℃)に浸漬して、10分間Ni−PメッキをABS樹脂基板表面に析出させた。その後、硫酸銅系Cu電気メッキ浴にて銅メッキを100μm析出させた。析出後、メッキ被膜が形成されたABS樹脂基板を1cmの幅に切断して、引っ張り試験により密着強度を測定した。
【0051】
実施例2:
射出成形にて作成したABS樹脂基板とガラスビーズを樹脂容器に入れ、樹脂容器内部の空気を酸素によって置換して行き、容器内の酸素濃度が20〜80%になるように調整した後、ボールミルによって5分間の摩擦を行った。その後、出力0.6kWの水銀ランプを用いて紫外線を5分間照射した。その後、ABS樹脂基板を、60℃に加熱した0.05g/リットルのポリオキシエチレンアルキルエーテルを含有する50g/リットルの水酸化ナトリウム水溶液に2分間浸漬した。次に、塩化パラジウムを0.1wt%、塩化スズ5wt%を溶解した3N塩酸を50℃に加熱し、この塩酸浴にABS樹脂基板を浸漬した。その後、0.5N塩酸に3分間浸漬した。次いで、Ni−P化学メッキ浴(40℃)に浸漬して、10分間Ni−PメッキをABS樹脂基板表面に析出させた。その後、硫酸銅系Cu電気メッキ浴にて銅メッキを100μm析出させた。析出後、メッキ被膜が形成されたABS樹脂基板を1cmの幅に切断して、引っ張り試験により密着強度を測定した。
【0052】
実施例3:
射出成形にて作成したABS樹脂基板とガラスビーズを樹脂容器に入れ、樹脂容器内部の空気の湿度を80〜20%に変化させた後、ボールミルによって5分間の摩擦を行った。その後、出力0.6kWの水銀ランプを用いて紫外線を5分間照射した。その後、ABS樹脂基板を、60℃に加熱した0.05g/リットルのポリオキシエチレンアルキルエーテルを含有する50g/リットルの水酸化ナトリウム水溶液に2分間浸漬した。次に、塩化パラジウムを0.1wt%、塩化スズ5wt%を溶解した3N塩酸を50℃に加熱し、この塩酸浴にABS樹脂基板を浸漬した。その後、0.5N塩酸に3分間浸漬した。次いで、Ni−P化学メッキ浴(40℃)に浸漬して、10分間Ni−PメッキをABS樹脂基板表面に析出させた。その後、硫酸銅系Cu電気メッキ浴にて銅メッキを100μm析出させた。析出後、メッキ被膜が形成されたABS樹脂基板を1cmの幅に切断して、引っ張り試験により密着強度を測定した。
【0053】
参考例1:
射出成形にて作成したABS樹脂基板と鉄粉を樹脂容器に入れ、ボールミルによって5〜20分間の摩擦を行った。その後、出力0.6kWの水銀ランプを用いて紫外線を5分間照射した。その後、ABS樹脂基板を、60℃に加熱した0.05g/リットルのポリオキシエチレンアルキルエーテルを含有する50g/リットルの水酸化ナトリウム水溶液に2分間浸漬した。次に、塩化パラジウムを0.1wt%、塩化スズ5wt%を溶解した3N塩酸を50℃に加熱し、この塩酸浴にABS樹脂基板を浸漬した。その後、0.5N塩酸に3分間浸漬した。次いで、Ni−P化学メッキ浴(40℃)に浸漬して、10分間Ni−PメッキをABS樹脂基板表面に析出させた。その後、硫酸銅系Cu電気メッキ浴にて銅メッキを100μm析出させた。析出後、メッキ被膜が形成されたABS樹脂基板を1cmの幅に切断して、引っ張り試験により密着強度を測定した。
【0054】
以下に、上記実施例1〜3と比較例1,2との結果を示す。
【0055】
表1には、比較例1における核紫外線照射時間におけるメッキ被膜の密着強度の結果が示されている。
【0056】
【表1】
Figure 0004940512
【0057】
表2には、実施例1における各摩擦時間におけるメッキ被膜の密着強度の結果が示されている。
【0058】
【表2】
Figure 0004940512
【0059】
上記表1,2より、紫外線照射前に樹脂表面を摩擦することによって、密着強度が飛躍的に向上することが分かる。
【0060】
表3には、実施例2における各酸素濃度におけるメッキ被膜の密着強度の結果が示されている。
【0061】
【表3】
Figure 0004940512
【0062】
上記表3より、酸素濃度が60%以上において、メッキ被膜の密着強度が顕著に向上することが分かる。
【0063】
また、表4には、実施例3における各湿度におけるメッキ被膜の密着強度の結果が示されている。
【0064】
【表4】
Figure 0004940512
【0065】
上記表4より、湿度が50%以下であることが好ましいことが分かる。
【0066】
更に、表5には、参考例1における、絶縁粒子ではない鉄粉を用いて樹脂表面を摩擦した場合のメッキ被膜の密着強度の結果が示されている。
【0067】
【表5】
Figure 0004940512
【0068】
上記表5及び表2の結果より、絶縁性粒子であるガラスビーズを用いた場合の方が、鉄粉を用いた場合に比べ、密着強度が増大することが分かる。これは、絶縁性粒子を用いて摩擦した場合には、樹脂表面に静電気が発生し、その結果、樹脂表面が活性化することによって、樹脂表面とメッキ被膜との密着強度が増すと推定される。このことは、表4に示すように、湿度が低い場合には、より良好な結果が得られることからも裏付けられる。
【0069】
【発明の効果】
以上の通り、本発明によれば、従来に比べ、樹脂表面とメッキ被膜とがより固に密着した無電解メッキ被膜が形成された樹脂基板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態に示す無電解メッキ被膜形成方法のフローチャートである。
【図2】 本発明の実施の形態に示す表面活性化工程及び紫外線照射工程において樹脂表面に生成する官能基を説明する模式図である。
【符号の説明】
10 樹脂基板、12 表面、20 カルボキシル基、30 カルボニル基、40 水酸基。

Claims (4)

  1. 硬質粒子によって樹脂表面を摩擦する表面活性化工程と、表面活性化された樹脂表面に紫外線を照射する紫外線照射工程と、界面活性剤を含有するアルカリ溶液に樹脂表面を接触させる表面処理工程と、表面処理後の樹脂表面に無電解メッキを行い樹脂表面に金属膜を形成する無電解メッキ工程と、を有し、前記表面活性化工程では、大気より高い酸素濃度雰囲気下で、樹脂表面を硬質粒子にて摩擦することを特徴とする樹脂の無電解メッキ被膜形成方法。
  2. 硬質粒子によって樹脂表面を摩擦する表面活性化工程と、表面活性化された樹脂表面に紫外線を照射する紫外線照射工程と、界面活性剤を含有するアルカリ溶液に樹脂表面を接触させる表面処理工程と、表面処理後の樹脂表面に無電解メッキを行い樹脂表面に金属膜を形成する無電解メッキ工程と、を有し、前記表面活性化工程では、酸素濃度60%以上の高い酸素濃度雰囲気下で、樹脂表面を硬質粒子にて摩擦することを特徴とする樹脂の無電解メッキ被膜形成方法。
  3. 硬質粒子によって樹脂表面を摩擦する表面活性化工程と、表面活性化された樹脂表面に紫外線を照射する紫外線照射工程と、界面活性剤を含有するアルカリ溶液に樹脂表面を接触させる表面処理工程と、表面処理後の樹脂表面に無電解メッキを行い樹脂表面に金属膜を形成する無電解メッキ工程と、を有し、前記表面活性化工程では、湿度50%以下の環境下で、樹脂表面を硬質粒子にて摩擦することを特徴とする樹脂の無電解メッキ被膜形成方法。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の樹脂の無電解メッキ被膜形成方法において、前記表面活性化工程における硬質粒子は、絶縁性粒子であることを特徴とする樹脂の無電解メッキ被膜形成方法。
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