JP4936606B2 - 半導電性ジルコニア焼結体の製造方法 - Google Patents

半導電性ジルコニア焼結体の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた耐熱性と半導電性を備え、ジルコニアの持つ機械的特性を大きく低下させることなく、常圧焼成にて緻密化することが可能な半導電性ジルコニア焼結体に関するものであり、例えば、半導体装置、磁気ヘッド、電子部品や半導体装置等の製造工程で使用される治工具、テープガイド、画像処理装置に用いられる分離爪などの静電気除去作用を必要とする用途に好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、構造部品材料として使用されているアルミナ、ジルコニア、窒化珪素、炭化珪素等を主成分とするセラミック焼結体は、高強度でかつ高硬度を有するとともに、耐熱性や耐食性に優れることから、様々な分野で使用されているが、特に優れた機械的強度や摺動特性が要求されるような用途ではジルコニア焼結体が用いられている。
【0003】
ところで、ジルコニア焼結体は高絶縁材料であるため、半導体製造装置等で使用される搬送アームやウェハ把持用ピンセット等の治工具、あるいはプリンタ等の画像形成装置において使用される分離爪、さらには磁気テープ等のテープ状体を搬送、案内するのに用いられるテープガイドなど、静電気の除去作用が必要とされる用途に使用するには、ジルコニア焼結体の体積固有抵抗値(以下、単に抵抗値と略称する。)を107Ω・m以下とする必要があり、その為、ジルコニア焼結体に導電性付与剤を含有させ、その抵抗値を小さくすることが試みられている。
【0004】
例えば、特開昭60−103078号公報には、Y23やMgOで安定化したZrO2を主体とし、これに導電性付与剤としてTiC、TaC、WC等の炭化物のうち少なくとも一種以上を含有させ、体積固有抵抗値を0.005〜60×10-5Ω・cmとした導電性ジルコニア焼結体が開示されている。
【0005】
ところが、このような導電性ジルコニア焼結体では、抵抗値が低すぎることから、静電気を逃がすと一気に除去されるため、大気摩擦によって超高電圧の放電が発生するといった課題があった。その為、例えば、上記導電性ジルコニア焼結体によりテープガイドを形成し、磁気テープとの摺動に伴う静電気を除去しようとすると、磁気テープの記録内容が破壊される恐れがあった。
【0006】
また、このような導電性ジルコニア焼結体を製造するには、非酸化性雰囲気中にて焼成しなければならないことから特殊な装置が必要となり、さらに上記導電性付与剤は原料自体が高価であることから製造コストが高くなるといった課題もあった。
【0007】
そこで、大気雰囲気中で焼成することができ、かつ適度な体積固有抵抗値を有する半導電性ジルコニア焼結体として、特開平10−297968号公報には、Y23、MgO、CaO、CeO2等の安定化剤を含むZrO2を60〜90重量%と、導電性付与剤として、Fe、Co、Ni、Crの酸化物のうち一種以上を10〜40重量%含有した半導電性ジルコニア焼結体が開示されており、この半導電性ジルコニア焼結体によれば、酸化雰囲気中での焼成が可能で安価に製造でき、かつジルコニアの持つ機械的特性を大きく低下させることなく静電気を適度な速度で逃がすことができるといった利点があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平10−297968号公報に開示された半導電性ジルコニア焼結体は、使用される周囲の温度条件により焼結体中における単斜晶ジルコニアの含有量が増加し、構造部品として信頼性が低下し易いといった課題があった。
【0009】
即ち、ZrO2は、立方晶、正方晶、単斜晶の3つの結晶形態をとることができ、このうち構造部品としての機械的特性を維持するには安定な状態である立方晶、あるいは準安定状態である正方晶であるものが良いのであるが、ジルコニアは熱に弱く、特に150〜300℃程度の熱に曝されると、立方晶や正方晶の結晶形態を有するジルコニアが相変態を起し、焼結体中における大半のジルコニアの結晶構造が単斜晶となるため、強度や破壊靱性値等の機械的特性の低いジルコニア焼結体となってしまい、構造部品として使用するには信頼性の低いものであった。
【0010】
また、特開平10−297968号公報に開示された半導電性ジルコニア焼結体では、半導電性をもたせるために導電性付与材を10〜40重量%も含有させる必要があり、焼結体中にジルコニア以外の材質が多く存在することから、常圧焼成では緻密化が難く、焼結体中の気孔を少なくかつ小さくするには、ホットプレス装置や熱間静水圧プレス装置等の特殊な焼成手段が必要となり、安価に製造することができず、また、このような特殊な焼成手段は製品の大きさに制限があり、大型構造部品や複雑形状を有する構造部品を製造することが難しいといった課題もあった。
【0011】
【発明の目的】
本発明の目的は、優れた耐熱性と半導電性を備え、ジルコニアの持つ機械的特性を大きく低下させることなく、大気雰囲気中で常圧下の焼成にて緻密化することが可能な半導電性ジルコニア焼結体を安価に提供できるようにすることにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
そこで、上記課題に鑑み、本発明の半導電性ジルコニア焼結体の製造方法は、ZrO粉末と、Dy粉末と、CeO粉末と、ZnO粉末と、を混練乾燥することにより顆粒を作製する工程と、作製された顆粒を用いて所定の形状に成形体を成形する工程と、該成形体を大気雰囲気中で常圧下にて1250〜1400℃の温度で焼成する工程と、を含むことにより、安定化剤として、Dyを0.5〜4.5mol%、CeOを2〜8mol%でかつ合計量が6mol%以上の範囲で含むZrOを60〜90重量%、導電性付与剤としてZnの酸化物を10〜40重量%で含有し、体積固有抵抗値が10〜10Ω・mで、ボイド占有面積率が1.5%以下である半導性ジルコニア焼結体を作製することを特徴とする。
【0013】
即ち、本発明の半導電性ジルコニア焼結体の製造方法は、導電性付与剤として、Znの酸化物を含有させるようにしたことから、これらの導電性付与剤がジルコニア焼結体の粒界相を構成し、ジルコニアのもつ強度を大きく低下させることなく焼結体の体積固有抵抗値が103〜107Ω・mと、半導電性を持たせることができる。
【0014】
その為、静電気を適度な速度で逃がすことができるため、ジルコニア焼結体と当接する物体が電気的な影響を受け易いものであっても、破壊することなく静電気を除去することができる。
【0015】
しかも、上記導電性付与剤は、いずれも酸化物であるため、酸化雰囲気中での焼成が可能であることから、焼成に特殊な装置を用いる必要がなく、また、これらの導電性付与剤は安価に入手することができるため、容易にかつ安価に製造することができる。
【0016】
ただし、上記導電性付与剤の含有量が10重量%未満となると、抵抗値を下げる効果が小さく、逆に、40重量%より多くなると、抵抗値が103Ω・cm未満となり、静電気が一気に逃げ易くなるために、大気摩擦による超高電圧の放電が発生する恐れがあるとともに、焼結体の機械的特性(曲げ強度、破壊勒性値、硬度など)が大きく低下するため、ジルコニア本来の機械的特性を発揮できなくなる。その為、導電性付与剤の含有量は10〜40重量%、好ましくは20〜30重量%とすることが重要である。
【0017】
また、本発明の半導電性ジルコニア焼結体は、主体をなすZrO2として、酸化ジスプロシウムと酸化セリウムの二種類の安定化剤で部分安定化したものを用いることを特徴とする。
【0018】
具体的には、酸化ジスプロシウムをZrO2に対して0.5〜4.5mol%の範囲で添加するとともに、酸化セリウムをZrO2に対して2〜8mol%の範囲で添加し、かつ酸化ジスプロシウムと酸化セリウムの合計含有量がZrO2に対して6mol%以上の範囲で含有したものが良く、これらの範囲で上記安定化剤を添加すれば、全ジルコニア量に対する単斜晶以外のジルコニア(正方晶ジルコニア及び立方晶ジルコニア)量を95%以上とすることができるため、導電性付与剤を含有したことによる強度低下を抑え、曲げ強度600MPa以上、破壊勒性値5MPam1/2以上、ビッカース硬度11GPa以上と、高強度、高靱性、高硬度を実現することができる。
【0019】
即ち、ジルコニアの結晶状態には立方晶、正方晶、単斜晶の3つの状態があり、特に、正方晶ジルコニアは外部応力に対し、応力誘軌変態を受けて単斜晶ジルコニアに相変態し、この時に生じる体積膨張によってジルコニアの周囲に微小なマイクロクラックを形成して外部応力の進行を阻止できるため、ジルコニア焼結体の強度、靱性、硬度等の機械的特性を高めることができる。
【0020】
しかも、安定化剤として酸化ジスプロシウムと酸化セリウムを上記範囲で含有することにより、120〜300℃程度の熱に曝したとしてもジルコニアの相変態を抑え、全ジルコニア量に対する単斜晶以外のジルコニア(正方晶ジルコニア及び立方晶ジルコニア)量を90%以上とすることができ、熱による機械的特性の劣化を防止することができ、耐熱性に優れた半導電性ジルコニア焼結体を得ることができる。
【0021】
さらに、驚くべきことに、安定化剤として酸化ジスプロシウムと酸化セリウムを用いた本発明の半導電性ジルコニア焼結体は、導電性付与剤を10〜40重量%も含むものの、後述する常圧焼成によって緻密化することができ、そのボイド占有面積率を1.5%以下とすることができる。
【0022】
このように緻密化することができる理由については不明であるが、特開平10−297968号公報に開示する、安定化剤として、Fe、Co、Ni、Crの酸化物を用いた半導電性ジルコニア焼結体では達成することができず、本発明のように、安定化剤として酸化ジスプロシウムと酸化セリウムを用いた半導電性ジルコニア焼結体に特有のものである。
【0023】
ただし、酸化ジスプロシウムと酸化セリウムを安定化剤として含むZrO2を用いたとしても、このZrO2の含有量が焼結体全体に対して60重量%未満となると、ジルコニア焼結体本来の機械的特性が得られなくなり、また、ZrO2の含有量が焼結体全体に対して90重量%を超えると、導電性付与剤の含有量が10重量%未満となり、半導電性を得ることができなくなる。
【0024】
その為、本発明において、酸化ジスプロシウムと酸化セリウムを安定化剤として含むZrO2は、60重量%〜90重量%の範囲で含有することが必要である。
【0025】
また、本発明の半導電性ジルコニア焼結体中には、原料粉末や製造工程から、Al23、MnO、SiO2、Na、Fe等の不純物が混入する恐れがあるが、これらの不純物は焼結体全体に対して4重量%以下の範囲であれば含有していても構わない。
【0026】
さらに、半導電性ジルコニア焼結体中におけるZrO2の平均結晶粒子径は0.3〜1.0μm、好ましくは0.4〜0.8μmのものが良く、このような範囲とすることで、上述したような機械的特性を得ることができる。
【0027】
かくして、本発明の半導電性ジルコニア焼結体を用い、半導体製造装置等で使用される薄肉の搬送アームやウェハ把持用ピンセット等の治工具、あるいはプリンタ等の画像形成装置において紙をローラから分離するのに使用される分離爪、さらには磁気テープ等のテープ状体を搬送、案内するのに用いられるテープガイド等を形成すれば、短期間で摩耗したり、熱劣化を生じたり、破揖することがないため、長期間にわたって使用することができる。
【0028】
また、本発明の半導電性ジルコニア焼結体はボイドが少ないことから、鏡面加工が要求される構造部品ではより平滑で品質の高い鏡面が得られ、また、ボイドが少なくかつ小さいことから、塵埃等がボイドに溜まることを防止することができ、塵埃等の付着を嫌う半導体製造装置用の治工具やテープガイド等において好適に用いることができる。
【0029】
なお、本発明において、ボイド占有面積率とは、ニレコ製LUZEX−FSによって測定し、0.8μmの大きさ以上のものをボイドとし、測定視野の面積に対し、測定視野内に存在するボイドが占める割合のことである。
【0030】
また、ジルコニア焼結体中における全ジルコニア量に対し、単斜晶以外のジルコニア量を算出するには、X繰回折により単斜晶ジルコニアのX繰回折強度と、正方晶ジルコニア及び立方晶ジルコニアのX繰回折強度をそれぞれ測定し、数1により算出すれば良い。
【0031】
【数1】
Figure 0004936606
【0032】
次に、本発明に係る半導電性ジルコニア焼結体の製造方法について説明する。
【0033】
本発明の半導電性ジルコニア焼結体を製造するには、0.5〜1.0μmのZrO2粉末と、安定化剤としての酸化ジスプロシウム(Dy23)と酸化セリウム(CeO2)の粉末、及び導電性付与剤として酸化鉄(Fe23)、酸化亜鉛(ZnO)のうち一種以上の酸化物粉末を用いるか、あるいは焼成中にこれらの材料に変化しうる水酸化物粉末や炭酸化粉末等を用い、安定化剤を含むZrO2が60〜90重量%、導電性付与剤が10〜40重量%となるように調合し、これらを乾式又は湿式で混合する。なお、湿式の場合はスプレードライヤー等で乾燥造粒して顆粒を製作することもできる。また、ZrO2と安定化剤の混合において共沈法を用いても良く、この共沈法を用いれば、微細かつ均一に安定化剤が分散されたZrO2を得ることができる。
【0034】
そして、乾式による原料粉末や湿式による顆粒を型内に充填し、メカプレス成形法やラバープレス成形法等の公知の成形手段により所定の形状に成形するか、あるいは湿式による泥しょうを押出成形法や射出成形法、テープ成形法等の公知の成形手段により所定の形状に成形したのち、酸化雰囲気中にて1〜3時間程度焼成する。この時、焼成温度が1250℃未満であると完全に焼結させることができず、1400℃より高くなるとシンターオーバーとなるために、いずれもジルコニア焼結体の強度や硬度を高めることができない。その為、1250〜1400℃の温度で焼成することが重要である。
【0035】
このような条件にて製作すれば、全ジルコニア量に対する単斜晶以外のジルコニア量が95%以上となり、ボイド占有面積率が1.5%以下、曲げ強度600MPa以上、破壊靭性値5MPam1/2以上、ビッカース(Hv)硬度11GPa以上を有するとともに、103〜107Ω・mの体積固有抵抗値を有する半導電性ジルコニア焼結体を得ることができ、また、緻密化するにあたりホットプレス装置や熱間静水圧プレス装置のような高価な装置を必要とせず安価にかつ容易に製造することができる。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を説明する。
【0037】
平均粒子径0.8μmのZrO2粉末に対し、Dy23粉末を1.5mol%とCeO2粉末を6.0mol%添加するとともに、導電性付与剤としてFe23粉末を30重量%添加し、さらにバインダーと溶媒を加えて混練乾燥することにより顆粒を製作した。そして、この顆粒を金型中に充填してメカプレス成形法により1.0ton/cm2のプレス圧にて所定の形状に成形し、しかるのち、1300℃の大気雰囲気中にて2時間程度焼成することによりジルコニア焼結体を得た。
【0038】
そして、このジルコニア焼結体をX繰回折により単斜晶ジルコニアのX繰回折強度と正方晶ジルコニア及び立方晶ジルコニアのX線回折強度をそれぞれ測定し、全ジルコニア量に対する単斜晶以外のジルコニア量を数1より算出したところ99%が単斜晶以外のジルコニアであった。
【0039】
また、上記ジルコニア焼結体を3mm×4mm×50mmの角柱となるように切削した後、表面を算術平均粗さ(Ra)で0.1μmとなるように研磨して試料を作製し、この試料をJIS R1601に基づく3点曲げ試験により曲げ強度と破壊靭性値を測定したところ、曲げ強度843MPa、破壊靭性値5.6MPaml/2を有していた。そして、試料表面のボイド占有面積率をニレコ製LUZEX−FSにて倍率を100倍とし、演算処理にて求めたところ、1.5%以下の値となった。
【0040】
また、別に切り出した試料を用意し、ビッカース硬度(Hv)を測定したところ12.3GPaを有しており、さらに別の試料を4端子法にて、体積固有抵抗値を測定したところ、3.6×104Ω・mであった。そこで、静電気の除去具合を見るために、2.5mm×6mm×40mmの角柱をしたジルコニア焼結体を用意し、一方端に1000Vの電圧を印加し、他方端における電圧値が100Vとなるまでの降下時間を測定したところ、0.1〜20秒の時間を要し、大気摩擦による放電を生じることなく適度な速度で静電気を逃がすことができ良好であった。
【0041】
また、ジルコニア焼結体の緻密度合いを調べるため、アルキメデス法により見掛比重を測定したところ5.9と十分に緻密化されていた。
【0042】
さらに、このジルコニア焼結体の耐熱性を調べるため、別に切り出したジルコニア焼結体を3mm×4mm×50mmの角柱に切削した後、表面を算術平均粗さ(Ra)で0.1μm以下に研摩して試料を作製し、大気雰囲気中で136℃まで加熱し、6500minの加熱時間で熱処理を行なった後、単斜晶以外のジルコニア量、曲げ強度、破壊靭性値、ビッカース硬度、体積固有抵抗値、ボイド占有面積率を測定したところ、単斜晶以外のジルコニア量:98.3%、曲げ強度758MPa、破壊靭性値5.3MPaml/2、ビッカース硬度12.4GPa、体積固有抵抗値3.5×104Ω・m、ボイド占有面積率1.0%と、熱処理前と比較して特性劣化が見られず、120〜300℃の熱に対しても優れた耐熱性を有するものであった。
【0043】
【実験例】
参考例1)ここで、上記実施形態におけるジルコニア焼結体において、導電性付与剤である酸化鉄(Fe23)の含有量を異ならせた時の機械的特性(曲げ強度、破壊靭性値、ビッカース硬度)と電気的特性(体積固有抵抗値及び静電気の除去具合)について測定した。
【0044】
なお、機械的特性と電気的特性については実施形態と同様の方法にて測定した。また、比較のために、安定化剤としてY23を3mol%含むジルコニアに対し、導電性付与剤として鉄をFe23換算で10,30,40重量%含有させた半導電性ジルコニア焼結体を製作し、同様の測定を行った。
【0045】
それぞれの結果は表1に示す通りである。
【0046】
【表1】
Figure 0004936606
【0047】
この結果、酸化鉄(Fe23)の含有量が10重量%未満である試料No.1,2は、ジルコニアの持つ優れた機械的特性を有していたものの、体積固有抵抗値が1010Ω・m以上と絶縁性が高いために、静電気の除去効果が得られなかった。
【0048】
また、酸化鉄(Fe23)の含有量が40重量%より多い試料No.7,8では、機械的特性の低下が見られ、曲げ強度600MPa未満、破壊勒性値5MPaml/2未満、ビッカース硬度(Hv)11GPa未満であった。しかも、Fe23の含有量が多すぎるために、体積固有抵抗値が102Ω・mまで低下した結果、静電気が一気に逃げてしまうといった問題もあった。
【0049】
これに対し、酸化鉄(Fe23)の含有量が10〜40重量%の範囲にある試料No.3〜6及び試料No.9〜11は、その体積固有抵抗値を103〜107Ω・mとすることができるため、静電気を適度な速度で逃がすことができ、優れた静電気除去効果を有するとともに、いずれも曲げ強度600MPa以上、破壊勒性値5MPaml/2以上、ビッカース硬度(Hv)9GPa以上と優れた機械的特性を有していた。
【0050】
ただし、ジルコニアの安定化剤としてY23を用いた試料No.9〜11は、同じ導電性付与剤の含有量を有する試料No.3,5,6と比較すると、ボイド占有面積率が大きく、緻密化されてなかった。
【0051】
これに対し、ジルコニアの安定化剤としてDy23とCeO2を用いた試料No.3,5,6は、ボイド占有面積率がいずれも1.5%以下と緻密化されたものであった。
【0052】
この結果、ジルコニアの安定化剤として酸化ジスプロシウム(Dy23)と酸化セリウム(CeO2)を用いるとともに、導電性付与剤である酸化鉄(Fe23)を10〜40重量%の範囲で含有量すれば、ジルコニアの持つ機械的特性を大きく低下させることなく、優れた静電気除去効果を有する緻密化された半導電性ジルコニア焼結体が得られることが判る。
【0053】
さらに、耐熱性について調べるため、試料No.3,5,6,9〜11のジルコニア焼結体を用い、各焼結体を3mm×4mm×50mmの角柱に切削した後、その表面を算術平均粗さ(Ra)で0.1μm以下となるように研磨して試料片を作製し、各試料片を大気雰囲気中で136℃まで加熱した状態で、6500分加熱した後、各試料片の単斜晶以外のジルコニア量、曲げ強度、破壊靭性値、ビッカース硬度、体積固有抵抗値、ボイド占有面積率を測定したところ、表1より判るように、ジルコニアの安定化剤としてY23を用いた試料No.9〜11は、加熱処理によってジルコニア焼結体中における単斜晶以外のジルコニア量が大幅に減少し(単斜晶ジルコニアの増加)、それに伴い、曲げ強度及び破壊靱性値が大きく低下するとともに、表面粗さの劣化も認められた。
【0054】
これに対し、ジルコニアの安定化剤として酸化ジスプロシウム(Dy23)と酸化セリウム(CeO2)を用いた試料No.9〜11は、熱処理前後において機械的特性、電気的特性、静電気除去具合、及び緻密度合いに関して大きな変化が殆どなく、耐熱性に優れていた。
【0055】
この結果、ジルコニアの安定化剤として酸化ジスプロシウムと酸化セリウムを用い、このジルコニアに対して導電性付与剤である鉄をFe23換算で10〜40重量%の範囲で含有すれば、常圧焼成にもかかわらず、緻密なジルコニア焼結体とすることができるとともに、その体積固有抵抗値を103〜107Ω・mとし、静電気を適度な速度で逃がすことができ、さらには曲げ強度が600MPa以上、破壊勒性値が5MPaml/2以上、ビッカース硬度(Hv)が11GPa以上と優れた機械的特性を得ることができる。しかも、耐熱性に優れることから、120〜300℃程度の熱に曝されたとしても機械的特性や電気的特性が劣化することがない。(実施例)次に、導電性付与剤として酸化鉄(Fe23)に代えて酸化亜鉛を用いる以外は参考例1と同様の実験を行った。
【0056】
結果は表2に示す通りである。
【0057】
【表2】
Figure 0004936606
【0058】
この結果、導電性付与剤として酸化鉄(Fe23)に代えて酸化亜鉛を用いたとしても実施例1と同様の傾向が見られ、ジルコニアの安定化剤として酸化ジスプロシウムと酸化セリウムを用い、このジルコニアに対して導電性付与剤である亜鉛をZrO換算で10〜40重量%の範囲で含有すれば、常圧焼成にもかかわらず、緻密なジルコニア焼結体とすることができるとともに、その体積固有抵抗値を103〜107Ω・mとし、静電気を適度な速度で逃がすことができ、さらには曲げ強度が600MPa以上、破壊勒性値が5MPaml/2以上、ビッカース硬度(Hv)が11GPa以上と優れた機械的特性を有していた。しかも、耐熱性に優れることから、120〜300℃程度の熱に曝されたとしても機械的特性や電気的特性が劣化することがなかった。
【0059】
【発明の効果】
以上のように、本発明の半導電性ジルコニア焼結体の製造方法は、ZrO粉末と、Dy粉末と、CeO粉末と、ZnO粉末と、を混練乾燥することにより顆粒を作製する工程と、作製された顆粒を用いて所定の形状に成形する工程と、該成形体を大気雰囲気中で常圧下にて1250〜1400℃の温度で焼成する工程と、を含むことにより、安定化剤として、Dyを0.5〜4.5mol%、CeOを2〜8mol%でかつ合計量が6mol%以上の範囲で含むZrOを60〜90重量%、導電性付与剤としてZnの酸化物を10〜40重量%で含有し、体積固有抵抗値が10〜10Ω・mで、ボイド占有面積率が1.5%以下である半導電性ジルコニア焼結体を作製するための製造方法であることから、常圧下の焼成にもかかわらず、緻密なジルコニア焼結体とすることができ、また、ジルコニアの持つ機械的特性を大きく低下させることなく、静電気を適度な速度で逃がすことができる。その為、この半導電性ジルコニア焼結体により、半導体製造装置で使用される搬送アームやりウェハ把持用ピンセット等の治工具、あるいはプリンタ等の画像形成装置において使用される分離爪、さらには磁気テープ等のテープ状体を搬送、案内するのに用いられるテープガイド等を形成すれば、静電気による悪影響を受けることがなく、また、短期間で摩耗したり、破揖することがないため、長期間にわたって好適に使用することができる。しかも、上記半導電性ジルコニア焼結体は耐熱性にも優れることから、熱に曝されるような用途であっても機械的特性や電気的特性の劣化がないことから長期間にわたって使用することができる。
【0060】
その上、上記半導電性ジルコニア焼結体は、酸化雰囲気中での焼成が可能であるため、ホットプレス装置や熱間静水圧プレス装置のような特殊な装置を必要とせず、さらに、本発明で使用する導電性付与剤は原料自体が安価に入手できるため、安価にかつ容易に製造することができる。

Claims (1)

  1. ZrO粉末と、Dy粉末と、CeO粉末と、ZnO粉末と、を混練乾燥することにより顆粒を作製する工程と、作製された顆粒を用いて所定の形状に成形体を成形する工程と、該成形体を大気雰囲気中で常圧下にて1250〜1400℃の温度で焼成する工程と、を含むことにより、安定化剤として、Dyを0.5〜4.5mol%、CeOを2〜8mol%でかつ合計量が6mol%以上の範囲で含むZrOを60〜90重量%、導電性付与剤としてZnの酸化物を10〜40重量%で含有し、体積固有抵抗値が10〜10Ω・mで、ボイド占有面積率が1.5%以下である半導性ジルコニア焼結体を作製することを特徴とする半導性ジルコニア焼結体の製造方法。
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