以下、本発明の実施形態(本願の出願時点において出願人が最良と考えている実施形態)について、図面を参照しつつ説明する。
なお、以下の実施形態に関する記載は、法令で要求されている明細書の記載要件(記述要件・実施可能要件)を満たすために、本発明の具体化の単なる一例を、可能な範囲で具体的に記述しているものにすぎない。よって、後述するように、本発明が、以下に説明する実施形態の具体的構成に何ら限定されるものではないことは、全く当然である。実施形態に対する変形例(modification)は、当該実施形態の説明中に挿入されると、首尾一貫した実施形態の説明の理解が妨げられるので、末尾にまとめて記載されている。
<第一実施形態の内燃機関の構成>
図1は、本発明の内燃機関の第一の実施形態であるエンジン1の概略構成を示す分解斜視図である。図2は、図1に示されているエンジン1の側断面図(図1におけるII−II断面図)である。
図1及び図2を参照すると、本実施形態のエンジン1は、シリンダブロック2と、シリンダヘッド3と、クランクケース4と、移動機構5と、を備えている。このエンジン1は、シリンダブロック2及びシリンダヘッド3を、クランクケース4に対して相対的に移動(スライド)させることで、圧縮比を変更可能に構成されている。
<<シリンダブロック>>
シリンダブロック2は、平面視にて略矩形状の、略直方体状の部材であって、アルミニウム合金によって一体に形成されている。シリンダブロック2の外壁面20aは、シリンダ21の内側表面と同程度の表面粗さを有する平滑な表面として形成されている。
シリンダブロック2には、シリンダ21が形成されている。シリンダ21は、略円柱形状の貫通孔である。本実施形態においては、複数(本実施形態においては4つ)のシリンダ21が、気筒配列方向ADに沿って一列に設けられている。このシリンダブロック2は、気筒配列方向ADと平行な長手方向を有するように形成されている。シリンダ21の内部には、ピストン22が、気筒配列方向ADと直交するシリンダ中心軸CCAに沿って往復移動可能に収容されている。
また、シリンダブロック2には、ウォータージャケット23が形成されている。ウォータージャケット23は、エンジン1を冷却するための冷却媒体(冷却水)が通過し得る空間であって、シリンダ21の外側を囲むように設けられている。
<<シリンダヘッド>>
シリンダブロック2の上端面には、シリンダヘッド3が接合されている。シリンダヘッド3は、アルミニウム合金によって一体に形成されている。
シリンダヘッド3は、シリンダ21における上死点側の一端(図中上側の端)を覆うように、シリンダブロック2に固定されている。すなわち、シリンダヘッド3は、シリンダブロック2と相対移動しないように(シリンダブロック2とともに上下動するように)、シリンダブロック2の上端部に、ボルト(図示せず)等によって固定されている。
シリンダヘッド3には、複数の凹部が形成されている。各凹部は、各シリンダ21に対応する位置に設けられている。この凹部と、ピストン22の頂面より上側のシリンダ21の内部の空間と、によって、燃焼室CCが形成されている。
<<クランクケース>>
クランクケース4は、アルミニウム合金によって一体に形成されている。本実施形態におけるクランクケース4は、その内側にシリンダブロック2を収容し得るように構成されている。
具体的には、クランクケース4の上部には、フレーム41が設けられている。フレーム41は、平面視にて略矩形状の筒状部材であって、気筒配列方向ADと平行な長手方向を有するように形成されている。
フレーム41の内側には、シリンダブロック収容部41aが形成されている。シリンダブロック収容部41aは、シリンダブロック2を収容し得るように設けられた、平面視にて略矩形状の空間であって、シリンダ中心軸CCAに沿って設けられている。
シリンダブロック収容部41aの内壁面41a1(以下、「フレーム41の内壁面41a1」と称されることもある。)は、シリンダブロック2の外壁面20aと対向するように設けられている。この内壁面41a1も、シリンダブロック2の外壁面20aと同様に、平滑な表面として形成されている。
このように、フレーム41は、シリンダブロック2の外壁面20aの下端部から上部までを覆うことで、シリンダブロック2とシリンダヘッド3との相対移動をスムーズにガイドし得るように構成されている。
クランクケース4の下端部には、クランクシャフト42が回転可能に支持されている。クランクシャフト42は、気筒配列方向ADと平行に配置されている。このクランクシャフト42は、ピストン22のシリンダ中心軸CCAに沿った往復移動に基づいて回転駆動されるように、コンロッド43を介して、ピストン22と連結されている。また、クランクシャフト42には、バランスウエイト44が設けられている。
<<移動機構>>
フレーム41の気筒配列方向ADに沿った両側壁及びその近傍には、一対の移動機構5,5が設けられている。一方の移動機構5と、他方の移動機構5とは、すべてのシリンダ21におけるシリンダ中心軸CCAが通る平面に関して、ほぼ対称に構成及び配置されている。
<<<カムシャフト>>>
移動機構5は、カムシャフト51の回転によって、シリンダブロック2とクランクケース4とをシリンダ中心軸CCAに沿って相対的に移動(スライド)させ得るように構成されている。
図3は、図1及び図2に示されているカムシャフト51を、その一部を分解して示す斜視図である。図1ないし図3を参照すると、カムシャフト51は、ジャーナル部51aと、円形カム部51bと、偏心シャフト51cと、ウォームホイール51dと、から構成されている。
ジャーナル部51aは、円柱状の部材であって、カムシャフト51の回転中心軸(これは気筒配列方向ADと平行且つシリンダ中心軸CCAと垂直であって、図3にて一点鎖線で示されている。)と同軸に設けられている。ジャーナル部51aは、隣り合う円形カム部51bの間、及びカムシャフト51の両端部に設けられている。
円形カム部51bは、カムシャフト51の前記回転中心軸から偏心して設けられている。この円形カム部51bは、ジャーナル部51aよりも径が太い円柱状の部材であって、シリンダ21に対応して設けられている。
偏心シャフト51cは、カムシャフト51の前記回転中心軸に沿った長手方向を有する丸棒状の部材である。この偏心シャフト51cは、前記回転中心軸及び円形カム部51bの中心軸から偏心した位置にて、ジャーナル部51a及び円形カム部51bを挿通するように設けられている。
偏心シャフト51cの前記長手方向における略中央部には、ウォームホイール51dが設けられている。ウォームホイール51dは、その中心軸が前記回転中心軸と同軸となるように設けられている。
ジャーナル部51aは、偏心シャフト51cの周りを回転しないように、偏心シャフト51cに固定されている。一方、円形カム部51bは、偏心シャフト51cの周りを自由に回転し得るようになっている。すなわち、円形カム部51bは、前記回転中心軸とは異なる軸を中心として、ジャーナル部51aに対して相対的に回転し得るようになっている。ウォームホイール51dは、偏心シャフト51cに固定されている。
図1を参照すると、クランクケース4の下部であってフレーム41の前記長手方向における略中央部には、モータ52が装着されている。モータ52は、その中心軸がカムシャフト51及びシリンダ中心軸CCAと直交するように設けられている。モータ52は、一対のウォームホイール51dと対向するように設けられた一対のウォーム53を回転駆動し得るように構成されている。
ウォーム53は、ウォームホイール51dと噛み合うように形成された、螺旋状の歯形を有する円柱状のギヤであって、モータ52と同軸上に設けられている。一方のウォーム53は、他方のウォーム53とは逆向きの螺旋状の歯形を有するように構成されている。
このように、カムシャフト51は、モータ52及びウォーム53を介してウォームホイール51dが回転駆動されることで、ジャーナル部51aが前記回転中心軸を中心として回転するとともに、円形カム部51bがジャーナル部51aに対して相対的に回転するように構成されている。
<<<ブロック側支持部>>>
再び図1及び図2を参照すると、シリンダブロック2には、ブロック側支持部54が装着されている。ブロック側支持部54は、円形カム部51bと対応する位置に配置されている。すなわち、複数のブロック側支持部54が、シリンダ21に対応するように設けられている。
ブロック側支持部54には、軸受孔54aが形成されている。この軸受孔54aは、円形カム部51bの外径に対応する(円形カム部51bの表面と摺動し得るような)内径を有する貫通孔である。すなわち、円形カム部51bは、ブロック側支持部54によって回転可能に支持されている。
<<<クランクケース側支持部>>>
フレーム41には、ブロック側支持部54と同数の複数の開口部55が設けられている。開口部55は、フレーム41の気筒配列方向ADに沿った前記側壁を貫通するように設けられた孔であって、ブロック側支持部54が挿通され得るように設けられている。この開口部55は、ブロック側支持部54がその内側にてシリンダ中心軸CCAに沿って往復移動し得るように、ブロック側支持部54の高さ寸法(シリンダ中心軸CCAに沿った方向の寸法)よりも大きい高さ寸法に形成されている。
フレーム41には、複数のフレーム側支持部56が形成されている。各フレーム側支持部56は、開口部55に隣接するように設けられている。すなわち、複数のフレーム側支持部56が、各開口部55の両側に設けられ、且つ気筒配列方向ADに沿って配列されている。
フレーム側支持部56は、フレーム41の外側(内壁面41a1とは反対側)に設けられている。このフレーム側支持部56には、ジャーナル支持凹部56aが設けられている。ジャーナル支持凹部56aは、半円柱形状の凹部であって、ジャーナル部51aの外径に対応する内径を有するように形成されている。
フレーム41には、カバー部57が装着されている。カバー部57は、カムシャフト51(ジャーナル部51a)を挟んでフレーム側支持部56と対向するように設けられている。このカバー部57は、フレーム側支持部56に装着されることで、フレーム側支持部56とともにカムシャフト51(ジャーナル部51a)を回転可能に支持するように構成されている(図2においては図示の簡略化のためにカバー部57の図示が省略されている。)。
カバー部57は、気筒配列方向ADに沿って配列された複数のフレーム側支持部56に対応するように、一体(シームレス)に形成されている。このカバー部57には、ジャーナル支持凹部57aと、軸受収容部57bと、ウォームホイール収容部57cと、が形成されている。
ジャーナル支持凹部57aは、フレーム側支持部56のジャーナル支持凹部56aと対称な形状の、半円柱形状の凹部である。このジャーナル支持凹部57aは、ジャーナル支持凹部56aと対向するように設けられている。
軸受収容部57bは、ブロック側支持部54と対向する位置に設けられた凹部である。この軸受収容部57bは、開口部55からフレーム41の外側に突出したブロック側支持部54を、シリンダ中心軸CCAに沿って往復移動可能に収容するように形成されている。
ウォームホイール収容部57cは、ウォームホイール51dと対向する位置に設けられた凹部である。このウォームホイール収容部57cは、フレーム41の外側に突出したウォームホイール51dを収容し得るように形成されている。
<<潤滑摺動機構>>
本実施形態のエンジン1は、シリンダブロック2とこれに対向するフレーム41との摺動部分におけるクリアランスが「実質的に」ゼロにされつつ、シリンダブロック2とフレーム41とが潤滑状態で相対移動し得るように構成されている。
すなわち、シリンダブロック2とフレーム41とが対向する位置には、潤滑摺動機構60が設けられている。潤滑摺動機構60は、移動機構5によるシリンダブロック2とクランクケース4との相対移動の際に、シリンダブロック2の外壁面20aとフレーム41の内壁面41a1とが互いに押圧している状態で、シリンダブロック2とフレーム41とを潤滑状態で摺動させ得るように構成されている。
図4は、図2に示されている潤滑摺動機構60の具体例である摺動ベルト61の外観を示す斜視図である。図5は、図2に示されているシリンダブロック2の外壁面20aとフレーム41の内壁面41a1とが対向する部分を一部省略しつつ拡大した側断面図(図4に示されている摺動ベルト61を拡大した側断面図)である。
図4を参照すると、摺動ベルト61は、シリンダブロック2の外壁面20aのほぼ全周を取り巻くように設けられている。具体的には、シリンダブロック2の外壁面20aには、摺動ベルト61の位置決め及び脱落防止のための溝が形成されていて、この溝に摺動ベルト61が嵌め込まれている。
また、本実施形態においては、1本の摺動ベルト61がシリンダブロック2の上部に設けられていて、もう1本の摺動ベルト61がシリンダブロック2の底部に設けられている。
摺動ベルト61には、熱変形を吸収するとともにシリンダブロック2に対する組付けを容易にするためのスリット61aが形成されている。スリット61aは、摺動ベルト61の長手方向における少なくとも1カ所に設けられている。また、スリット61aは、摺動ベルト61のオイルシール部材としての機能を損なわないように、ラビリンス状に形成されている。
図5を参照すると、摺動ベルト61は、支持層61bと、低摩擦層61cと、弾性押圧層61dと、から構成されている。
支持層61bは、鋼板からなり、その外側表面(フレーム41側の表面)には低摩擦層61cが固着されている。
低摩擦層61cは、いわゆる固体潤滑膜を構成するフッ素系合成樹脂からなり、その外側表面(フレーム41側の表面)は、平滑な表面粗さで、フレーム41の内壁面41a1と摺動可能に密着するように形成されている。
本発明の押圧部としての弾性押圧層61dは、支持層61bの内側表面(シリンダブロック2側の表面)に固着されている。この弾性押圧層61dは、ゴムからなり、低摩擦層61cをフレーム41の内壁面41a1に向けて弾性的に押圧するように構成されている。この弾性押圧層61dは、摺動ベルト61の長手方向における略半分、すなわち、シリンダブロック2の外壁面20aにおける4面のうちの互いに隣接する2面に対応する部分にのみ設けられている。
具体的には、エンジン幅方向(図1における気筒配列方向AD及びシリンダ中心軸CCAと直交する方向:図2及び図5における左右方向)に沿って並ぶ2面の外壁面20aのうちの、ピストンサイドフォース(燃焼室CCでの燃料混合気の燃焼によってピストン22に生じる力における横向きの分力:図2における左向きの矢印参照)が作用する側とは反対側(図2における右側)に対応する、摺動ベルト61の部分(図5における右側の部分)に、弾性押圧層61dが設けられている。
一方、前記エンジン幅方向に沿って並ぶ2面の外壁面20aのうちの、ピストンサイドフォースが作用する側(図2における左側)に対応する、摺動ベルト61の部分(図5における左側の部分)は、弾性押圧層61dが設けられないことで、低摩擦層61cが内壁面41a1と剛体的に当接するように構成されている。
同様に、エンジン長手方向(シリンダブロック2やフレーム41の長手方向)に沿って並ぶ2面の外壁面20aのうちの一方に対応する、摺動ベルト61の部分には、弾性押圧層61dが設けられている。これに対して、他方に対応する、摺動ベルト61の部分は、弾性押圧層61dが設けられないことで、低摩擦層61cが内壁面41a1と剛体的に当接するように構成されている。
すなわち、弾性押圧層61dは、シリンダブロック2の外壁面20aにおける、(a)フレーム41の気筒配列方向ADに沿った前記側壁における内壁面41a1と対向し、且つピストンサイドフォースが作用する側とは反対側の面と、(b)これに隣接する面と、に対応するように、シリンダブロック2の略半周にわたって設けられている。
<実施形態の可変圧縮比動作の説明>
以下、各図を参照しつつ、本実施形態のエンジン1における圧縮比変更動作の概要について説明する。
圧縮比変更の際には、モータ52が起動され、ウォーム53が回転駆動される。すると、ウォームホイール51dが、互いに反対方向に回転する(例えば、図中右側のウォームホイール51dが反時計回りに回転し且つ図中左側のウォームホイール51dが時計回りに回転する。)。これにより、一対のカムシャフト51が、互いに反対方向に回転する。
このとき、ジャーナル部51aは、フレーム側支持部56のジャーナル支持凹部56aとカバー部57のジャーナル支持凹部57aとによって形成された軸受孔の内側で、カムシャフト51の前記回転中心軸を中心として回転する。また、偏心シャフト51cは、前記回転中心軸の周りを周回するように回転する。
一方、円形カム部51bは、ブロック側支持部54における軸受孔54aの内面と摺動しながら、前記回転中心軸とは異なる軸(偏心シャフト51cの中心軸)を中心として、ブロック側支持部54の内側で回転する。これにより、円形カム部51bは、ジャーナル部51aに対して相対的に回転する。
このような、円形カム部51bのジャーナル部51aに対する相対的な回転により、円形カム部51bのジャーナル部51aからの突出状態が変化する。ここで、ジャーナル部51aは、クランクケース4に対して相対移動しないように、クランクケース4によって回転可能に支持されている。また、円形カム部51bは、シリンダブロック2に固定されたブロック側支持部54によって、前記エンジン幅方向についての移動が制限されている。
したがって、円形カム部51bのジャーナル部51aに対する相対的な回転により、円形カム部51bのジャーナル部51aからのシリンダ中心軸CCAに沿った方向の突出量が変化する。これにより、円形カム部51b及びこれを回転可能に支持するブロック側支持部54が、クランクケース4に対して、シリンダ中心軸CCAに沿って相対的に移動する。このようにして、シリンダブロック2が、クランクケース4に対して、シリンダ中心軸CCAに沿って相対的に移動する。
シリンダブロック2のクランクケース4に対するシリンダ中心軸CCAに沿った相対移動に伴って、シリンダヘッド3とクランクケース4との位置関係、すなわち、ピストン22の上死点位置とシリンダヘッド3の下端面との距離が変動する。これにより、エンジン1の圧縮比が変化する。
<第一実施形態の構成による作用・効果>
図5を参照すると、本実施形態の構成においては、弾性押圧層61dが設けられた側(図中右側)の低摩擦層61cが、弾性押圧層61dによって、フレーム41の互いに対向する内壁面41a1のうちの一方に向けて弾性的に押圧される(図中右向きの矢印参照)。
すると、この反作用により、シリンダブロック2、及び、弾性押圧層61dが設けられていない側(図中左側)の低摩擦層61cが、フレーム41の互いに対向する内壁面41a1のうちの他方(前記一方と対向する方)に向けて弾性的に押圧される(図中左向きの矢印参照)。
これにより、弾性押圧層61dが設けられている側の低摩擦層61cの平滑な表面が、これに対向するフレーム41の内壁面41a1に弾性的に当接する。一方、弾性押圧層61dが設けられていない側の低摩擦層61cの平滑な表面が、これに対向するフレーム41の内壁面41a1に剛体的に当接する。すなわち、シリンダブロック2の外壁面20aとフレーム41の内壁面41a1とが、摺動ベルト61を介して互いに押圧している状態となる。
このとき、シリンダブロック2がフレーム41に対して、一定の方向に押しつけられる(図5における右側の矢印参照)。
特に、前記エンジン幅方向に関しては、弾性押圧層61dによってシリンダブロック2がフレーム41に対して押しつけられる方向と、ピストンサイドフォースによってシリンダブロック2がフレーム41に対して押しつけられる方向とが、同じ方向となる。
これにより、シリンダブロック2のフレーム41内(図1におけるシリンダブロック収容部41a内)での揺動(振動)が可及的に抑制される。
そして、シリンダブロック2のほぼ全周にわたって、シリンダブロック2側に設けられた低摩擦層61cの平滑な表面がフレーム41の内壁面41a1と密着した状態となる。この状態で、当該低摩擦層61cの表面と内壁面41a1とのすべりにより、シリンダブロック2とクランクケース4とがスムーズに相対移動する。
このように、本実施形態においては、シリンダブロック2(これに装着された摺動ベルト61を含む)とフレーム41との摺動部分におけるクリアランスが「実質的に」ゼロにされつつ、シリンダブロック2とフレーム41(クランクケース4)とが潤滑状態で相対移動する。
かかる構成によれば、シリンダブロック2のフレーム41内でのガタつきが可及的に抑制されつつ、シリンダブロック2とクランクケース4との相対移動による圧縮比変更動作がスムーズに行われ得る。また、シリンダブロック2やフレーム41に熱変形が生じても、シリンダブロック2とフレーム41とが良好に摺動し得る。また、シリンダブロック2の振動や、シリンダブロック2とフレーム41との打撃音の発生が、効果的に抑制され得る。
また、本実施形態においては、摺動ベルト61が良好にオイルシールとしての機能を奏する。
さらに、本実施形態においては、摺動ベルト61が、シリンダブロック2の上部及び底部に設けられている。これにより、シリンダブロック2のフレーム41内でのガタつきがより効果的に抑制されつつ、圧縮比変更動作がよりスムーズに行われ得るようになる。
<第二実施形態>
次に、本発明の第二の実施形態について説明する。以下の実施形態の説明においては、上述の第一の実施形態における各構成要素と同様の構成・機能を有する構成要素については、本実施形態においても同一の名称及び同一の符号が付されるとともに、技術的に矛盾しない範囲で、上述の第一の実施形態の説明や図面が適宜援用されるものとする(後述する第三以降の実施形態や変形例においても同様である)。
図6は、図2に示されている潤滑摺動機構60の他の具体例(本発明の第二の実施形態)における、シリンダブロック2の外壁面20aとフレーム41の内壁面41a1とが対向する部分を一部省略しつつ拡大した側断面図(第一の実施形態における図5に相当する図)である。
<<構成>>
本実施形態においては、シリンダブロック2の外壁面20aを取り巻く摺動ベルト61は、支持層61bと低摩擦層61cとから構成されている。すなわち、本実施形態における摺動ベルト61には、低摩擦層61cをフレーム41の内壁面41a1に押圧するための押圧部(図5における弾性押圧層61d)が設けられていない。
一方、本実施形態においては、フレーム41側に、摺動押圧部材62が設けられている。この摺動押圧部材62は、フレーム41の内壁面41a1に形成された溝によって、当該内壁面41a1上に支持されている。
摺動押圧部材62は、互いに向かい合うフレーム41の内壁面41a1のうちの一方に設けられている。すなわち、(a)前記エンジン幅方向に沿って並ぶ2面の内壁面41a1のうちの、ピストンサイドフォースが作用する側とは反対側と、(b)前記エンジン長手方向に沿って並ぶ2面の内壁面41a1のうちの一方と、に摺動押圧部材62が設けられている。
摺動押圧部材62は、支持層62bと、対向層62cと、弾性押圧層62dと、から構成されている。
支持層62bは、鋼板からなり、その外側表面(シリンダブロック2側の表面)には対向層62cが固着されている。
対向層62cは、いわゆる固体潤滑膜を構成するフッ素系合成樹脂からなり、低摩擦層61cと対向するように設けられている。対向層62cの外側表面(シリンダブロック2側の表面)は、平滑な表面粗さで、摺動ベルト61の低摩擦層61cと摺動可能に密着するように形成されている。
本発明の押圧部としての弾性押圧層62dは、支持層62bの内側表面(フレーム41側の表面)に固着されている。この弾性押圧層62dは、ゴムからなり、対向層62cをシリンダブロック2の外壁面20a(摺動ベルト61の低摩擦層61c)に向けて弾性的に押圧するように構成されている。
<<作用・効果>>
かかる構成においては、互いに対向する内壁面41a1のうちの一方側に設けられた摺動押圧部材62における、対向層62cの表面が、弾性押圧層62dによって、摺動ベルト61における低摩擦層61cの表面に向けて弾性的に押圧される(図6における右側の左向き矢印参照)。
これにより、摺動押圧部材62における対向層62cの表面と、摺動ベルト61における低摩擦層61cの表面とが、互いに弾性的に当接する。また、摺動押圧部材62による押圧によって、シリンダブロック2が、互いに対向する内壁面41a1のうちの他方(摺動押圧部材62が設けられていない方)に向けて付勢される。すると、摺動ベルト61における低摩擦層61cの表面が、この内壁面41a1に剛体的に当接する。
この状態で、互いに密着した、低摩擦層61cの表面と、対向層62c及び内壁面41a1と、のすべりにより、シリンダブロック2とクランクケース4とがスムーズに相対移動する。
かかる第二の実施形態の構成によれば、上述の第一の実施形態と同様の作用・効果が奏される。
<第三実施形態>
次に、本発明の第三の実施形態について説明する。図7は、図2に示されている潤滑摺動機構60のさらに他の具体例(本発明の第三の実施形態)における、シリンダブロック2の外壁面20aとフレーム41の内壁面41a1とが対向する部分を一部省略しつつ拡大した側断面図(第二の実施形態における図6の右側の部分に相当する図)である。
<<構成>>
本実施形態においては、第二の実施形態における摺動押圧部材62(図6参照)に代えて、摺動押圧部材63が、フレーム41の内壁面41a1に設けられている。なお、本実施形態においては、シリンダブロック2の外壁面20aにおける、摺動押圧部材63に対向する部分については、摺動ベルト61(図6参照)が省略されている。
本実施形態の摺動押圧部材63は、支持部63bと、低摩擦層63cと、弾性押圧層63dと、係止部63eと、から構成されている。
支持部63bは、鋼板からなり、その表側の表面(シリンダブロック2側の表面)には低摩擦層63cが固着されている。支持部63bの裏側は、前記エンジン長手方向に沿って設けられた櫛歯状の多数の突起及び隣り合う突起の間に形成された溝からなる凹凸形状に形成されている。
低摩擦層63cは、いわゆる固体潤滑膜を構成するフッ素系合成樹脂からなり、その外側表面(シリンダブロック2側の表面)は、平滑な表面粗さで、シリンダブロック2の外壁面20aと摺動可能に密着するように形成されている。
本発明の押圧部としての弾性押圧層63dは、支持部63bの裏側の凹凸部を覆うように設けられている。この弾性押圧層63dは、支持部63bの裏側の凹凸形状に倣って一定膜厚にコーティングされたゴムからなり、低摩擦層63cをシリンダブロック2の外壁面20aに向けて弾性的に押圧するように構成されている。
係止部63eは、鋼板からなり、その裏側の表面がフレーム41の内壁面41a1に固着されている。係止部63eの表側は、支持部63bと同様の凹凸形状に形成されている。係止部63eは、支持部63bの裏側の凹凸形状に倣って形成された弾性押圧層63dの凹凸と係合することで、支持部63b、低摩擦層63c、及び弾性押圧層63dのアッセンブリを内壁面41a1上に係止し得るように構成されている。
弾性押圧層63dにおける凹部の底と、係止部63eにおける凸部の先端と、の間には、微小なクリアランスが設けられている。同様に、弾性押圧層63dにおける凸部の先端と、係止部63eにおける凹部の底と、の間にも、微小なクリアランスが設けられている。
すなわち、弾性押圧層63dのせん断方向(厚さ方向と直交する方向/面方向と平行な方向)の弾性変形によって、支持部63b及び低摩擦層63cがシリンダブロック2に向けて付勢されることで、低摩擦層63cがシリンダブロック2の外壁面20aに押しつけられるように、摺動押圧部材63が構成されている。
<<作用・効果>>
かかる構成によれば、上述の第一及び第二の実施形態と同様の作用・効果が奏される。
特に、本実施形態においては、支持部63bと係止部63eとが図7における左右方向に相対移動すると、弾性押圧層63dが、主としてせん断方向に変形する。このせん断方向の変形の際の弾性押圧層63dの弾性定数は、厚さ方向の変形の際の弾性押圧層63dの弾性定数よりもはるかに小さい。さらに、図7に示されている中立状態(せん断方向の変形量がゼロである状態)から、支持部63bと係止部63eとが近づく場合と、遠ざかる方向とで、弾性定数がほぼ等しくなる。
かかる構成によれば、シリンダブロック2とフレーム41との摺動抵抗が軽減される。また、シリンダブロック2やフレーム41に熱変形が生じた場合であっても、両者が互いに押圧する力の変化が可及的に抑制され得る。したがって、シリンダブロック2とクランクケース4(フレーム41)との相対移動が、よりスムーズに行われ得る。
<第四実施形態>
次に、本発明の第四の実施形態について説明する。図8は、本発明の第四の実施形態に係るエンジン1の概略構成を示す側断面図である。図9は、図8に示されているシリンダブロック2の外壁面20aとフレーム41の内壁面41a1とが対向する部分を一部省略しつつ拡大した側断面図である。
<<構成>>
図8及び図9を参照すると、シリンダブロック2における、ウォータージャケット23よりも外側には、潤滑油供給機構としてのオイル環流路24が形成されている。
オイル環流路24は、シリンダヘッド3に供給された潤滑油(以下、単に「オイル」と称する。)LOを、シリンダヘッド3からクランクケース4側に環流させ得るように設けられている。このオイル環流路24は、シリンダブロック2の上端面(ピストン22の上死点側の端面)から下端面まで設けられている。
さらに、シリンダブロック2には、潤滑油供給機構としてのオイル供給路25が形成されている。オイル供給路25は、その一方の端部が、オイル環流路24と連通するように設けられている。また、オイル供給路25は、他方(前記一方とは反対側)の端部が、シリンダブロック2の外壁面20aにおける、開口部55よりも上方にてフレーム41の内壁面41a1と対向する部分の上端部にて、開口するように設けられている。
オイル供給路25は、前記一方の端部から前記他方の端部に向けて斜め下方にオイルLOを流動させることで、シリンダブロック2の外壁面20aとフレーム41の内壁面41a1との間に、オイルLOを供給し得るように形成されている。
シリンダヘッド3には、潤滑油供給機構としてのオイル環流路31が形成されている。オイル環流路31は、シリンダブロック2に設けられたオイル環流路24と連通するように設けられている。このオイル環流路31は、シリンダヘッド3内の潤滑のためにシリンダヘッド3に供給されたオイルLOを、シリンダブロック2のオイル環流路24に導入し得るように形成されている。
シリンダブロック2の外壁面20aとフレーム41の内壁面41a1との間であって、開口部55よりも上方には、オイル保持層64と、オイルシール65と、が介装されている。
本発明の潤滑油保持層としてのオイル保持層64は、適度な弾性及び剛性を有していて、オイルLOを内部に保持し得るとともに押圧されることでオイルLOを滲み出させ得るような、多孔質材料(具体的には、例えば、ポリアセタールやテトラフルオロエチレン等の合成樹脂の多孔質体)から構成されている。本実施形態においては、オイル保持層64は、シリンダブロック2をほぼ全周にわたって囲むように設けられている。
オイル保持層64は、外壁面20aと内壁面41a1との間に挟持されている。また、オイル保持層64の上端部に接するように若干量のオイル溜まりが形成されるように、オイル保持層64の上端部は、オイル供給路25の開口部からやや下方に設けられている。
オイルシール65は、オイル供給路25の上方にて、外壁面20aと内壁面41a1との間に挟持されている。
クランクケース4の内側であって、フレーム41の下端部には、潤滑油供給機構としてのオイル噴射部66が設けられている。このオイル噴射部66は、シリンダブロック2よりも下方且つクランクシャフト42よりも上方の位置から、シリンダブロック2の外壁面20aとフレーム41の内壁面41a1との間に向けてオイルLOを噴射し得るように構成及び配置されている。
具体的には、本実施形態においては、オイル噴射部66は、細管状の部材である摺動部噴射ノズル66aを備えている。摺動部噴射ノズル66aは、シリンダブロック2の外壁面20aとフレーム41の内壁面41a1との間に向けてオイルLOを噴射し得るように構成されている。この摺動部噴射ノズル66aは、クランクケース4の内部に設けられたオイル通路であるオイルギャラリ66bと接続されている。
本実施形態においては、オイル噴射部66は、ピストンサイドフォースが作用する側(図中左側)にのみ設けられている。
<<作用・効果>>
かかる構成においては、シリンダブロック2の外壁面20aとフレーム41の内壁面41a1との間にオイル保持層64が挟持された状態で、当該オイル保持層64によって保持されているオイルLOによって、外壁面20aと内壁面41a1との潤滑が行われる。
かかる構成によれば、上述の第一の実施形態等と同様の作用・効果が奏される。特に、本実施形態によれば、外壁面20aと内壁面41a1との間にオイルLOが良好に供給されるので、外壁面20aや内壁面41a1におけるフレッティングの発生が良好に抑制され得る。
<第五実施形態>
次に、本発明の第五の実施形態について説明する。図10は、図2に示されている潤滑摺動機構60のさらに他の具体例(本発明の第五の実施形態)における、シリンダブロック2の外壁面20aとフレーム41の内壁面41a1とが対向する部分を一部省略しつつ拡大した側断面図(第一の実施形態における図5の左側の図に相当する図)である。
<<構成>>
図10を参照すると、本実施形態においては、シリンダブロック2及びフレーム41は、強磁性を示す(磁石が強固に吸着され得る)鉄系の材料から構成されている。
フレーム41の内壁面41a1における、シリンダブロック2の外壁面20aと対向する部分には、粒子保持部としての粒子保持溝41a2が形成されている。
粒子保持溝41a2内には、多数の粒子67が収容されている。すなわち、多数の粒子67が、シリンダブロック2の外壁面20aとフレーム41の内壁面41a1との間の空間(粒子保持溝41a2の内側の空間を含む)内に配置されている。
本実施形態においては、粒子67は、強磁性を示す鉄系の材料からなる球体であって、粒子保持溝41a2の深さよりも若干大きめ(例えば0.数mmないし10mm程度)の直径に形成されている。
なお、本実施形態においては、粒子保持溝41a2及び粒子67は、ピストンサイドフォースが作用する側を含む、フレーム41の内壁面41a1における4面のうちの互いに隣接する2面に対応する部分にのみ設けられている。ピストンサイドフォースが作用する側とは反対側を含む残りの2面側は、第一の実施形態の場合(図5における右側の部分)、第二の実施形態の場合(図6における右側の部分)、あるいは第三の実施形態の場合(図7)と同様に、シリンダブロック2とフレーム41とが潤滑状態で互いに押圧するように構成されているものとする。
フレーム41における、粒子保持溝41a2及び粒子67に対応する位置には、電磁石68が装着されている。電磁石68は、粒子保持溝41a2内に磁界を印加することで、フレーム41と粒子67とシリンダブロック2とを互いに一時的且つ電磁的に固着させ得るように構成されている。
<<作用・効果>>
かかる構成においては、電磁石68が通電されることで、フレーム41とシリンダブロック2とが、粒子67を介して電磁的に固着される。これにより、シリンダブロック2とクランクケース4との所望の位置関係が保持される。
一方、電磁石68の通電が解除されることで、フレーム41とシリンダブロック2との、粒子67を介しての電磁的固着が解除される。その後、シリンダブロック2の外壁面20aとフレーム41の内壁面41a1との間に粒子67が介在した状態で、シリンダブロック2とクランクケース4とが相対移動する。すなわち、外壁面20aと内壁面41a1とが、粒子67を介して互いに押圧しつつ、潤滑状態で相対移動する。
かかる構成によれば、シリンダブロック2とクランクケース4とがスムーズに相対移動し、これによる圧縮比の変更が良好に行われる。また、電磁石68及び粒子67がクラッチとしての機能を奏することで、所望の圧縮比が良好に保持され、予期しない圧縮比の変動が効果的に抑制され得る。
<変形例の例示列挙>
なお、上述の各実施形態は、上述した通り、出願人が本願の出願時点において最良であると考えた本発明の具体的構成例を単に例示したものにすぎないのであって、本発明はもとより上述の各実施形態によって何ら限定されるべきものではない。よって、上述の各実施形態に示された具体的構成に対して、本発明の本質的部分を変更しない範囲内において、種々の変形が施され得ることは、当然である。
以下、変形例について幾つか例示する。もっとも、変形例とて、下記のものに限定されるものではないことは、いうまでもない。本発明を、上述の実施形態や下記変形例の記載に基づいて限定解釈することは、(特に先願主義の下で出願を急ぐ)出願人の利益を不当に害する反面、模倣者を不当に利するものであって、許されない。
また、上述の各実施形態の構成、及び下記の各変形例に記載された構成は、技術的に矛盾しない範囲において、適宜複合して適用され得ることも、いうまでもない。
(1)図4及び図5を参照すると、第一の実施形態において、摺動ベルト61をシリンダブロック2に装着するためには、シリンダブロック2の外壁面20aに図5に示されているような溝を形成することは必須ではない。
摺動ベルト61は、シリンダブロック2の上部にのみ設けられていてもよい。
摺動ベルト61の構成も、上述の実施形態に示された具体的構成に限定されない。例えば、以下の通りに変形され得る。
スリット61aの位置や数に限定はない。例えば、シリンダブロック2の平面視における対角位置であって、弾性押圧層61dの有無が切り換えられる位置に、2つのスリット61aが設けられ得る。すなわち、摺動ベルト61は、弾性押圧層61dを有する部分と有しない部分とに分割され得る。この場合、スリット61aの位置、換言すれば、摺動ベルト61の分割位置は、シリンダブロック2の平面視における角部に設けられる。
支持層61bは、或る程度の剛性が確保されれば、合成樹脂によっても形成され得る。あるいは、支持層61bは省略され得る。特に、低摩擦層61cがフッ素系等の合成樹脂からなる場合であって、その厚さが或る程度大きい(例えば0.5mm程度あるいはそれ以上の)ときは、支持層61bは良好に省略され得る。
低摩擦層61cを構成する材料も、フッ素系の合成樹脂に限定されない。すなわち、低摩擦層61cとして、二硫化モリブデンやダイヤモンドライクカーボン等、任意の材料からなる固体潤滑膜が、良好に用いられ得る。
弾性押圧層61dは、摺動ベルト61の全周にわたって設けられていても大きな不都合はない。
さらに、第一の実施形態において、フレーム41の内壁面41a1にも、固体潤滑膜が設けられていてもよい。この場合、ダイヤモンドライクカーボン等の硬質な薄膜コーティングがより好適である。
(2)図6に示されている第二の実施形態において、摺動ベルト61は、摺動押圧部材62が設けられていない側にのみ設けられていてもよい。すなわち、第三の実施形態と同様に、シリンダブロック2の外壁面20aにおける、摺動押圧部材62に対向する部分については、摺動ベルト61が省略されていてもよい。この場合、摺動押圧部材62は、対向層62cの外側表面(シリンダブロック2側の表面)がシリンダブロック2の外壁面20aと摺動可能に密着するように設けられる。
摺動押圧部材62は、フレーム41の内壁面41a1の全周にわたって設けられていてもよい。この場合、上述の第一の実施形態と同様に、弾性押圧層62dが摺動押圧部材62の略半分にのみ設けられていてもよい。
摺動押圧部材62の構成も、上述の実施形態に示された具体的構成に限定されない。例えば、対向層62cの材料や表面粗さは、摺動ベルト61における低摩擦層61cと同一であってもよいし、異なっていてもよい。
摺動押圧部材62の位置決めや脱落防止のための、フレーム41の内壁面41a1に設けられた溝(図6参照)は、無くてもよい。
(3)図7に示されている第三の実施形態において、摺動押圧部材63の構成は、上述の実施形態に示された具体的構成に限定されない。
例えば、支持部63bや係止部63eの材料は、剛性が高ければ鋼板に限定されない。これらは、他の種類の金属や、セラミックス、耐熱性の合成樹脂、等によっても構成され得る。また、支持部63bの材料は、係止部63eの材料と同一でもよいし、異なっていてもよい。もっとも、熱膨張率の観点からは、支持部63bの材料は、係止部63eの材料と同一であることが好適である。
支持部63bや係止部63eに形成された櫛歯状の突起及び溝の方向は、シリンダ中心軸CCAに沿った方向であってもよい。あるいは、支持部63bや係止部63eの凹凸形状も、櫛歯状に限定されない。
弾性押圧層63dは、支持部63bと係止部63eとの双方に密着するように設けられていてもよい。すなわち、弾性押圧層63dにおける凹部の底と係止部63eにおける凸部の先端とは、密着していてもよい。同様に、弾性押圧層63dにおける凸部の先端と係止部63eにおける凹部の底とは、密着していてもよい。
弾性押圧層63dは、支持部63b側でなく係止部63e側に設けられていてもよい。
(4)図8に示されている第四の実施形態において、オイル供給路25、オイル保持層64、及びオイルシール65は、開口部55よりも下方にも設けられ得る。
また、オイル供給路25及び/又はオイル噴射部66は、省略され得る。オイル噴射部66等が省略された場合、クランクシャフト42の回転に伴うバランスウエイト44によるオイルLOの跳ね上げや、クランクケース4内に充満するオイルミスト等によって、オイルLOが、シリンダブロック2の外壁面20aとフレーム41の内壁面41a1との間、及び/又はオイル保持層64に供給され得る。
オイル保持層64は、弾性体から構成され得る。この場合、上述の第一の実施形態における弾性押圧層61d(図5参照)のように、ピストンサイドフォースが作用する側とは反対側の部分を含む、シリンダブロック2の略半周にわたって設けられ得る。
シリンダブロック2又はフレーム41には、オイル保持層64を係止するための溝が形成され得る。あるいは、オイル保持層64は、シリンダブロック2の外壁面20a又はフレーム41の内壁面41a1に対して、その他の手段によって固定あるいは係止され得る。
オイル噴射部66は、ピストン22の冷却のために当該ピストン22の背面(図8における下面)に向けてオイルLOを噴射するためのピストン冷却用オイルジェットを兼ねるように構成されていてもよい。
オイル噴射部66において、摺動部噴射ノズル66aに代えて、クランクケース4の内部にてオイルギャラリ66bから分岐して設けられた細いオイル通路が用いられてもよい。
(5)図10に示されている第五の実施形態において、シリンダブロック2の外壁面20aとフレーム41の内壁面41a1との間の空間内に粒子67を保持するための構成(本発明の粒子保持部)は、上述の実施形態に示された具体的構成に限定されない。
例えば、粒子保持溝41a2に代えて、粒子67を保持するための凹部が、シリンダブロック2の外壁面20a側に設けられていてもよい。この場合、かかる凹部の高さ方向における一端又は両端は、図9に示されているオイルシール65のようなオイルシール部材によって規定され得る。
あるいは、粒子67を保持するための凹部は、無くてもよい。この場合、シリンダブロック2の外壁面20aとフレーム41の内壁面41a1との間のクリアランスが、粒子67を保持するための空間を構成する。また、電磁石68が本発明の粒子保持部として機能する。このとき、シリンダブロック2とクランクケース4との相対移動の際にも、当該空間内に粒子67が保持され得る程度で且つシリンダブロック2とクランクケース4とのスムーズな相対移動を妨げない程度の磁界が、当該空間に印加され得る。
粒子67の形状や材料も、上述の実施形態に示された具体的構成に限定されない。
例えば、粒子67は、円柱状や回転楕円体状に形成され得る。
また、粒子67は、微粉末状(例えば数μmないし数百μmの粒径)に形成され得る。この場合、シリンダブロック2の外壁面20aとフレーム41の内壁面41a1との間に、粒子67が多層状に配列されつつ充填され得る。また、この場合、粒子67は球形でなくてもよい。例えば、粒子67は、回転楕円体状や半正多面体(切頂二十面体や五角六十面体等)状に形成され得る。
また、粒子67は、セラミックス等の非磁性材料から構成され得る。この場合、電磁石68は省略される。
(6)その他、特段に言及されていない変形例についても、本発明の本質的部分を変更しない範囲内において、本発明の技術的範囲に含まれることは当然である。
例えば、本発明は、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、メタノールエンジン、バイオエタノールエンジン、その他の任意のタイプの内燃機関に適用可能である。気筒数や気筒配列方式(直列、V型、水平対向)も、特に限定はない。
材料の変更は、適宜行われ得る。また、一体(ワンピース)であったものは別体(ツーピース)にされ得るし、その逆もあり得る。一体(ワンピース)のものは、継ぎ目なし(シームレス)に形成され得るし、溶接や接着等による接合層を用いて形成され得る。
さらに、本発明の課題を解決するための手段を構成する各要素における、作用・機能的に表現されている要素は、上述の実施形態や変形例にて開示されている具体的構造の他、当該作用・機能を実現可能ないかなる構造をも含む。