JP2007177852A - ビスカスダンパー - Google Patents

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Abstract

【課題】慣性リングを収容するケースを軽量化してビスカスダンパーの減衰効果を向上させることと、ケースのコストを低減させることである。
【解決手段】ビスカスダンパー11に設けられるケース14の内部に慣性リング16を相対回転自在に収容し、ケース14の内面と慣性リング16の外面との間にシリコーンオイル18を充填する。ケース14をケース本体21とカバー22とにより構成し、ケース本体21に金属製のベース部23を設ける。ベース部23に複数の開口孔24を形成し、これらの開口孔24を樹脂製の閉塞部25により閉塞してケース本体21を構成する。また、ケース本体21の内面を閉塞部25と一体に形成される樹脂製の内壁部31〜33により形成する。さらに、慣性リング16をケース14に対して相対回転自在に支持する径方向支持部34と軸方向支持部35とを閉塞部25と一体に樹脂材料により形成する。
【選択図】図2

Description

本発明は、エンジンのクランクシャフト等の回転軸に装着されて当該回転軸に生じる捩り振動を低減させるビスカスダンパーに関する。
例えば、ディーゼルエンジンのクランクシャフトやカムシャフトなど、大きな捩り振動を生じる回転軸においては、その捩り振動を低減させるためのトーショナルダンパーとして粘性液の振動減衰特性を利用するビスカスダンパーが多く用いられている。
ビスカスダンパーは、回転軸に固定されて回転軸とともに回転するケースと、ケースに設けられる環状の収容室内にケースに対して相対回転自在に組み込まれる環状の慣性リングと、ケースの内面と慣性リングの外面とで形成されるクリアランスに充填されるシリコーンオイル等の粘性液とを有しており、回転軸の回転に応じて一定速度で回転しようとする慣性リングと内燃機関等に生じる回転脈動によって振動する回転軸すなわち回転軸に締結されたケースとの間に差動が生じ、その際に生じる粘性液の剪断抵抗により回転軸の捩り振動を低減させるものである。
このようなビスカスダンパーの減衰特性は、ケースの内面と慣性リングの外面とのクリアランスにより左右されるので、例えば特許文献1に示されるビスカスダンパーのように、鉄やアルミ合金等により形成される金属製のケースを備えたビスカスダンパーにおいては、ケースの内面を切削加工することにより寸法精度を高めるようにしている。
また、特許文献2には、ケースの内壁面に滑らかなる合成樹脂皮膜を施すようにした技術が記載されている。これは、上記クリアランスが非常に狭いものであるために温度上昇により粘性液の粘度が低下するなどして慣性リングがケース内壁面と接触しても、金属粉や金属片が粘性液中に混入して性能低下が生じないようにするものである。
一方、ビスカスダンパーの減衰効果は、振動系(回転軸とケース)の慣性質量に対する慣性リングの慣性質量の比率が大きいほど高くなるので、ケースを軽量化することにより減衰効果を高めることができる。そのため、特許文献3に記載されるビスカスダンパーでは、ケースを樹脂材料により形成し、これによりケースを軽量化して減衰効果を高めるようにしている。
実開平4−75259号公報 実開昭51−65191号公報 特表平11−501110号公報
しかしながら、特許文献3に示されるような樹脂製のケースでは、回転軸の回転に伴う応力に耐え得る強度を得るために、高い強度を有する特殊な樹脂材料を用いてケースを形成する必要があり、そのため、樹脂材料自体のコストが高くなるとともにその生産性が低下して、ケースのコストが高くなる。また、ケースの強度を高めるために樹脂材料中にガラス繊維などのフィラーを充填する方法があるが、フィラーが充填された樹脂材料は成形用の金型を痛め易く、また、フィラーを金型内に充填される樹脂材料に均一に分散させることが困難である。さらに、一般的に、樹脂材料は金属材料に比べて熱伝導率が低いため、樹脂製のケースでは粘性液が発する熱を効率的に放熱することが困難であり、そのため粘性液が生じる熱によりケースが変形してビスカスダンパーの減衰特性が変化してしまうおそれがある。これに対して、特許文献3に示されるビスカスダンパーでは、ケース外面に樹脂材料により通風板を設けるようにしているが、ケース自体の熱伝導率が低いため、通風板によっても十分な放熱効果を得ることができない。
一方、特許文献1に示されるような金属製のケースは、樹脂製のケースに比べて重量が重いので、ケースを軽量化してビスカスダンパーの減衰特性を向上させることは困難である。また、所望の減衰特性を得るためには、ケースの内面と慣性リングの外面とのクリアランスを高い寸法精度で設定する必要があるので、切削により寸法精度を高めるようにすると、ケースの加工コストが高くなるなどの問題があった。
他方、特許文献2に示されるような、内壁に合成樹脂皮膜を施したケースにおいては、前記合成樹脂被膜は、不測の事態における慣性リングとケース内壁の接触時に摺動材として機能するものであり、常態時においては減衰効果に関与するものではない。
本発明の目的は、慣性リングを収容するケースを軽量化してビスカスダンパーの減衰効果を向上させることにある。
本発明の他の目的は、ビスカスダンパーに用いられるケースのコストを低減させることにある。
本発明のビスカスダンパーは、回転軸に装着されて前記回転軸の捩り振動を低減させるビスカスダンパーであって、軸方向に開口する断面略コの字形の環状に形成され、前記回転軸に固定されるケース本体と、前記ケース本体の開口を閉塞し、前記ケース本体とにより環状の収容室を備えたケースを構成するカバーと、前記ケースに対して回転方向に相対回転自在に前記収容室に組み込まれる環状の慣性リングと、前記ケースの内壁部と前記慣性リングの外側面とで形成されるクリアランスに充填される粘性液とを有し、前記ケース本体は、開口孔を有し前記回転軸に固定される金属製のベース部と、前記開口孔を閉塞する樹脂製の閉塞部とにより構成されることを特徴とする。
本発明のビスカスダンパーは、軸方向に垂直な環状の底壁部と前記底壁部に連なる外側円筒部と内側円筒部とにより前記ベース部を構成し、前記底壁部に前記開口孔を形成することを特徴とする。
本発明のビスカスダンパーは、前記ケース本体は前記閉塞部と一体に形成される樹脂製の内壁部を有することを特徴とする。
本発明のビスカスダンパーは、前記閉塞部と一体に形成され、前記収容室内に突出して前記慣性リングに摺接する樹脂製の支持部を有することを特徴とする。
本発明のビスカスダンパーは、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、フッ素樹脂、フェノール樹脂などの摺動性樹脂材料により前記閉塞部を形成することを特徴とする。
本発明のビスカスダンパーは、前記閉塞部と一体に形成され、前記ケースの外側に突出する樹脂製のブレードを有することを特徴とする。
本発明のビスカスダンパーは、前記開口孔の開口端を曲げ起こして前記ベース部に形成され、前記ケースの外側に突出する金属製のブレードを有することを特徴とする。
本発明のビスカスダンパーは、前記ブレードは径方向に対して傾斜を有し、前記ケースの回転動作により、前記ケースの外側に冷却風を生じせしめることを特徴とする。
本発明によれば、ケースを構成する金属製のベース部に開口孔を形成し、この開口孔を樹脂製の閉塞部により閉塞するようにしたので、ケースを軽量化してビスカスダンパーの減衰効果を高めることができる。また、ケースは金属製のベース部において回転軸に固定され、樹脂製の閉塞部には回転軸の回転に伴う応力が加えられないので、軽量なケースとしながらも、充分な強度を確保することができるとともに安価で成形容易な樹脂材料で閉塞部を形成してケースのコストを低減させることができる。
また、本発明によれば、閉塞部と一体に形成される樹脂材料によりケース本体の内壁部を形成するようにしたので、ベース部の寸法精度によらずにケース内面の寸法精度を高めることができる。したがって、ベース部の加工は容易となるので、例えば成形加工精度にばらつきが生じやすい板金製のベース部や表面粗さが粗いまま切削処理なしの鋳物や鍛造によるベース部を使用することが可能となり、このビスカスダンパーのコストを低減させることができる。
さらに、本発明によれば、閉塞部と一体に形成される樹脂製の支持部により慣性リングを支持するようにしたので、スラストベアリングやジャーナルベアリング等の別部材をケースに装着する必要がなく、部品点数や組付け工数を削減してビスカスダンパーのコストを低減させることができる。ここで、慣性リングの荷重がかかりづらいジャーナルベアリングのみを閉塞部と一体の例えばフェノール樹脂などとし、より摺動性が求められるスラストベアリングは、例えばPTFE材などとしてもよいことはもちろんである。
さらに、本発明によれば、ケースの外側に冷却風を生じせしめる樹脂製のファンブレードを閉塞部と一体に形成するようにしたので、ファンブレードの形成を容易にして、ビスカスダンパーのコストを低減させることができる。
さらに、本発明によれば、ベース部に形成される開口孔の開口端を曲げ起こしてファンブレードを形成するようにしたので、ファンブレードの形成を容易にして、ビスカスダンパーのコストを低減させることができる。特に、ベース部を板金により形成する場合には、開口孔を形成する際にファンブレードを形成することができ、ファンブレードの形成をさらに容易にすることができる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の一実施の形態であるビスカスダンパーを示す斜視図であり、このビスカスダンパー11は、図中一点鎖線で示すエンジンの回転軸つまりクランクシャフト12の捩り振動を低減させるために、このクランクシャフト12の先端部に装着される。
図2は図1に示すビスカスダンパーのA−A断面図であり、このビスカスダンパー11はハブ部13においてクランクシャフト12に固定される環状のケース14を有しており、図2に示すように、このケース14の内部には環状の収容室15が形成され、この収容室15には鋼材により環状に形成された慣性リング16がケース14に対してクランクシャフト12の回転方向について相対回転自在に組み込まれている。ケース14の内壁部と慣性リング16の外側面との間には隙間が設けられており、この隙間にはケース14に設けられた注入口17から注入された粘性液としてのシリコーンオイル18が充填されている。
なお、注入口17は中心軸対称に一対設けられており、一方の注入口17からシリコーンオイル18を注入するとともに他方の注入口17から吸引して、流動性の低いシリコーンオイル18を迅速に注入させるようになっている。そして、シリコーンオイル18の注入後には注入口17は栓部材19により閉塞される。
クランクシャフト12が回転するとケース14はクランクシャフト12とともに回転し、収容室15に収容される慣性リング16もシリコーンオイル18の粘性によりケース14とともに回転する。クランクシャフト12に捩り振動が生じると、クランクシャフト12の回転に応じて一定速度で回転しようとする慣性リング16とエンジンに生じる回転脈動によって振動するクランクシャフト12すなわちケース14との間に差動が生じ、その差動により生じるシリコーンオイル18の剪断抵抗によりクランクシャフト12の捩り振動が低減される。
図3は図1に示すビスカスダンパーの分解斜視図であり、図4は図3に示すベース部を単体で示す斜視図である。図3に示すように、このビスカスダンパー11のケース14はケース本体21とカバー22とにより構成されており、また、ケース本体21は金属製のベース部23を有している。
ベース部23はアルミ合金の鍛造品を切削加工することにより、図4に示すように、クランクシャフト12の軸方向に対して垂直な環状の底壁部23aとこの底壁部23aの外側に連なる外側円筒部23bと底壁部23aの内側に連なる内側円筒部23cとを備えた軸方向に開口する断面略コの字形であるとともに、クランクシャフト12を軸心とした環状に形成されており、これによりケース本体21の形状も、軸方向に開口する断面略コの字形の環状とされている。内側円筒部23cの内側には前述のハブ部13が一体に形成され、このハブ部13には複数の取付孔13aが設けられており、これらの取付孔13aに挿通される図示しないボルトによりベース部23はクランクシャフト12の先端部に固定される。つまり、このビスカスダンパー11では、ケース14はこれを構成する金属製のベース部23においてクランクシャフト12の先端部に固定される。
一方、カバー22は、例えば鋼板やアルミ板等の板材によりベース部23の開口に対応した環状に形成され、溶接あるいはかしめ等によりベース部23の開口に固定されており、底壁部23aと対向した状態でベース部23の開口つまりケース本体21の開口を閉塞している。これにより、ケース14にはケース本体21とカバー22とにより環状の収容室が形成される。
図4に示すように、ベース部23の底壁部23aには軸方向に貫通する6つの開口孔24が回転方向に等間隔に並べて形成されており、図2に示すように、これらの開口孔24はそれぞれ樹脂製の閉塞部25により閉塞されている。
閉塞部25は、図示しない射出成形型内にベース部23を配置し、これに樹脂材料を射出成形することにより形成されており、その樹脂材料としては、例えばポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、フッ素樹脂、フェノール樹脂など高い摺動性を有する摺動性樹脂材料が用いられ、これらの樹脂材料の比重はベース部23を形成するアルミ合金の比重よりも小さくなっている。また、底壁部23aの内面側と外面側には、それぞれ環状の連結部26,27が閉塞部25と一体に樹脂材料により形成されており、これらの連結部26,27により各開口孔24を閉塞する閉塞部25は、底壁部23aの内外両面側から挟み込まれた状態で回転方向に連ねられてベース部23に固定されている。
このように、このビスカスダンパー11では、金属製のベース部23とベース部23に形成される開口孔24を閉塞する樹脂製の閉塞部25とによりケース本体21を構成するようにしたので、ケース本体21を金属製とした場合に比べてケース14を軽量化することができ、これによりビスカスダンパー11の減衰効果を高めることができる。また、ケース14は金属製のベース部23においてクランクシャフト12に固定され、樹脂製の閉塞部25にはクランクシャフト12の回転に伴う応力が加えられないので、安価な樹脂材料で閉塞部25を形成してケース14のコストを低減させることができる。
ところで、このようなビスカスダンパー11の減衰特性は、ケース14の内壁部と慣性リング16の外側面とで形成されるクリアランスにより大きく影響される。そのため、このビスカスダンパー11では、ケース本体21の内面に閉塞部25と一体に樹脂材料により内壁部31〜33を形成し、その寸法精度を高めるようにしている。
図2、図3に示すように、ベース部23の外側円筒部23bの内周面にはこれに沿って閉塞部25と一体に樹脂材料がコーティングされ、これにより内壁部31が形成され、内側円筒部23cの外周面にはこれに沿って閉塞部25と一体に樹脂材料がコーティングされ、これにより内壁部32が形成され、底壁部23aの内面には閉塞部25と一体に形成される連結部26により内壁部33が形成されている。各内壁部31〜33は閉塞部25とともに樹脂材料の射出成形により形成されるので、これらの内壁部31〜33によりケース本体21の内面を形成するようにすると、金属製のベース部を切削加工して形成する場合に比べて、ケース本体21の内面の寸法精度を容易に高めることができる。
このように、このビスカスダンパー11では、ケース本体21の内面を樹脂製の内壁部31〜33により形成するようにしたので、ケース14の内壁部31〜33と慣性リング16の外側面とで形成されるクリアランスの寸法精度を高めて、ビスカスダンパー11に所望の減衰特性を与えることができる。また、各内壁部31〜33を閉塞部25と一体に樹脂材料により形成するようにしたので、ベース部23の寸法精度によらずにケース本体21の内面の寸法精度を高めることができ、これによりベース部23の加工を容易にしてビスカスダンパー11のコストを低減させることができる。
内側円筒部23cの外周面に形成される内壁部32には、底壁部23aの側に位置して環状の径方向支持部34が設けられている。この径方向支持部34は内壁部32つまり閉塞部25と一体に樹脂材料により形成されており、収容室15の内部に向けて径方向に突出して慣性リング16の内周面に摺接している。これにより、慣性リング16は径方向支持部34により支持されてケース14の内部で回転方向に相対回転自在となっている。
また、底壁部23aの内面に形成される内壁部33には、内側円筒部23cの側に位置して環状の軸方向支持部35が設けられている。この軸方向支持部35は連結部26つまり閉塞部25と一体に樹脂材料により形成されており、収容室15の内部に向けて軸方向に突出して慣性リング16の側面に摺接している。さらに、図3に示すように、慣性リング16のカバー22と対向する側の側面には回転方向に等間隔に並ぶ4つの装着孔36が形成され、これらの装着孔36にはそれぞれ樹脂製の軸方向軸受37が装着されており、これらの軸方向軸受37は慣性リング16の側面に摺接している。慣性リング16は軸方向支持部35と軸方向軸受37とにより支持されて軸方向への移動が規制され、これにより慣性リング16は、その側面が内壁部33あるいはカバー22に対して所定の隙間を空けて対向するように位置決めされる。なお、前記軸方向支持部35は、慣性リング16を支持できればよいので、必ずしも環状である必要はなく、複数の突部として形成してもよい。また、同様に、軸方向軸受37は、4つに限定されるものでないことはもちろんである。
各支持部34,35は閉塞部25と一体にポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、フッ素樹脂、フェノール樹脂などの摺動性樹脂材料により形成されることが好ましく、慣性リング16に対して高い摺動性を有し、慣性リング16をケース14に対して滑らかに相対回転させることができる。
このように、このビスカスダンパー11では、閉塞部25と一体に形成される樹脂製の径方向支持部34と軸方向支持部35により慣性リング16を支持するようにしたので、スラストベアリングやジャーナルベアリング等の別部材をケース本体21に装着する必要がなく、部品点数や組付け工数を削減してビスカスダンパー11のコストを低減させることができる。
図5は図2に示すビスカスダンパーを矢視Aから見た正面図であり、底壁部23aの外面側に形成される連結部27の外面にはケース14の外側に突出する複数の樹脂製のファンブレード41が設けられている。これらのファンブレード41は、それぞれ連結部27を介して閉塞部25と一体に形成され、回転方向に等間隔に並ぶとともに径方向に対して傾斜を有しており、ケース14の回転動作つまりケース14が回転することによりファンブレード41はケース14の軸方向外側に冷却風を生じせしめ、これにより、クランクシャフト12の回転時におけるケース14の放熱性を高めることができ、ケース14の内部に充填されるシリコーンオイル18が発する熱を効率良く放熱することができる。ファンブレード41に用いる樹脂材料としては、ビスカスダンパー11本体を支える強度は必要とされないので、熱伝導性のよい樹脂材料を用いることができる。さらに、成形性の良い樹脂材料を用いることができるので、ベース部23の熱伝導性のよい金属部位に冷却風が当たるような形状とすることも容易である。
このように、このビスカスダンパー11では、ケース14の外側に冷却風を生じせしめる樹脂製のファンブレード41を閉塞部25と一体に形成するようにしたので、ベース部23に閉塞部25を射出成形してケース本体21を形成する際にファンブレード41を同時に形成することができ、ファンブレード41の形成を容易にして、ビスカスダンパー11のコストを低減させることができる。
図6は図1に示すビスカスダンパーの変形例を示す断面図であり、図7は図6に示すA−A線に沿う断面図である。なお、図6、図7においては、前述した部材に対応する部材には同一の符号が付されている。
図1に示すビスカスダンパー11では、ケース本体21はアルミ合金の鍛造品を切削加工して形成されるベース部23を用いて構成されているが、図7に示すビスカスダンパー51では、板金製のベース部52を用いてケース本体21を構成するようにしている。図示する場合では、ベース部52をクランクシャフト12に固定するためのハブ部13はベース部52とは別体に形成され、ベース部52に対して溶接あるいは圧入等により固定されている。
このような板金製のベース部52においても、ベース部52の底壁部52aに開口孔53を形成し、この開口孔53を樹脂製の閉塞部25により閉塞してケース本体21を構成するようにすると、ケース本体21つまりはケース14を軽量化してビスカスダンパー11の減衰効果を高めることができる。また、板金製のベース部52では切削加工により形成されるベース部23に比べて高い寸法精度を確保することが困難であるが、本発明では、ベース部52に形成される開口孔53を閉塞する樹脂製の閉塞部25と一体に形成される内壁部31〜33によりケース本体21の内面を形成するようにしたので、ベース部52を板金製としてもケース本体21の内面の寸法精度を確保することができる。
一方、図7に示すように、このビスカスダンパー51では、底壁部52aに開口孔53を形成する際に、開口孔53の開口端をケース本体21の外側に曲げ起こすことにより、ケース14の外側に突出する金属製のファンブレード54を形成するようにしている。これにより、プレス加工によりベース部52に開口孔53を形成する際にファンブレード54を形成することができ、これによりファンブレード54の形成を容易にして、ビスカスダンパー51のコストを低減させることができる。
このように、このビスカスダンパー51では、ケース14の外側に冷却風を形成する金属製のファンブレード54を開口孔53の開口端を曲げ起こしてベース部52に形成するようにしたので、ベース部52に開口孔53を形成する際にファンブレード54を同時に形成することができ、ファンブレード54の形成を容易にして、ビスカスダンパー51のコストを低減させることができる。
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。たとえば、本実施の形態においては、ビスカスダンパー11,51はエンジンのクランクシャフト12に装着されているが、これに限らず、捩り振動を生じる回転軸であれば、例えばディーゼルエンジンのカムシャフトや、エンジン以外の回転軸に用いるようにしてもよい。
また、本実施の形態においては、ベース部23はハブ部13においてボルトによりクランクシャフト12に固定されるが、これに限らず、例えば、内側円筒部23cをクランクシャフト12に圧入するなど、ベース部23をクランクシャフト12に固定する方法や構造は問わない。
さらに、本実施の形態においては、ベース部23の底壁部23aに開口孔24を形成するようにしているが、これに限らず、外側円筒部23bや内側円筒部23cに開口孔24を形成するようにしても良い。
さらに、本実施の形態においては、ベース部23はアルミ合金の鍛造品により形成されているが、これに限られるものでないことは勿論であり、例えば一般にはコストは嵩むが全て切削により形成してもよいし、鋳鉄や鍛造品を用いてもよい。また、ベース部52は板金により形成されているが、これに限らず、例えば溶接などにより形成してもよく、製品として充分な強度を有する素材により形成されていればよいが、コストと強度、放熱性の面から金属が適している。
さらに、本実施の形態においては、粘性液としてシリコーンオイル18が用いられているが、これに限らず、所望の粘度や特性を有する粘性液であれば、他の粘性液を用いるようにしてもよい。
さらに、本実施の形態においては、ケース14の外側には径方向に対して傾斜を有しケース14が回転すると冷却風を生成するファンブレード41,54が形成されているが、これに限らず、例えばケース14の外側に突出するとともに径方向に沿って延びるブレードをケース14に設けるようにしてもよい。これにより、ケース14の内部に充填されるシリコーンオイル18が発する熱をブレードにより放熱して、減衰性能、耐久性の低下や、軟化温度が低い樹脂を使用した場合の樹脂製の閉塞部25や内壁部31〜33などの熱変形を防止することができる。
本発明の一実施の形態であるビスカスダンパーを示す斜視図である。 図1に示すビスカスダンパーのA−A断面図である。 図1に示すビスカスダンパーの分解斜視図である。 図3に示すベース部を単体で示す斜視図である。 図2に示すビスカスダンパーを矢視Aから見た正面図である。 図1に示すビスカスダンパーの変形例を示す断面図である。 図6に示すA−A線に沿う断面図である。
符号の説明
11 ビスカスダンパー
12 クランクシャフト
13 ハブ部
13a 取付孔
14 ケース
15 収容室
16 慣性リング
17 注入口
18 シリコーンオイル
19 栓部材
21 ケース本体
22 カバー
23 ベース部
23a 底壁部
23b 外側円筒部
23c 内側円筒部
24 開口孔
25 閉塞部
26,27 連結部
31〜33 内壁部
34 径方向支持部
35 軸方向支持部
36 装着孔
37 軸方向軸受
41 ファンブレード
51 ビスカスダンパー
52 ベース部
52a 底壁部
53 開口孔
54 ファンブレード

Claims (8)

  1. 回転軸に装着されて前記回転軸の捩り振動を低減させるビスカスダンパーであって、
    軸方向に開口する断面略コの字形の環状に形成され、前記回転軸に固定されるケース本体と、
    前記ケース本体の開口を閉塞し、前記ケース本体とにより環状の収容室を備えたケースを構成するカバーと、
    前記ケースに対して回転方向に相対回転自在に前記収容室に組み込まれる環状の慣性リングと、
    前記ケースの内壁部と前記慣性リングの外側面とで形成されるクリアランスに充填される粘性液とを有し、
    前記ケース本体は、開口孔を有し前記回転軸に固定される金属製のベース部と、前記開口孔を閉塞する樹脂製の閉塞部とにより構成されることを特徴とするビスカスダンパー。
  2. 請求項1記載のビスカスダンパーにおいて、軸方向に垂直な環状の底壁部と前記底壁部に連なる外側円筒部と内側円筒部とにより前記ベース部を構成し、前記底壁部に前記開口孔を形成することを特徴とするビスカスダンパー。
  3. 請求項1または2記載のビスカスダンパーにおいて、前記ケース本体は前記閉塞部と一体に形成される樹脂製の内壁部を有することを特徴とするビスカスダンパー。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のビスカスダンパーにおいて、前記閉塞部と一体に形成され、前記収容室内に突出して前記慣性リングに摺接する樹脂製の支持部を有することを特徴とするビスカスダンパー。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のビスカスダンパーにおいて、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、フッ素樹脂、フェノール樹脂などの摺動性樹脂材料により前記閉塞部を形成することを特徴とするビスカスダンパー。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のビスカスダンパーにおいて、前記閉塞部と一体に形成され、前記ケースの外側に突出する樹脂製のブレードを有することを特徴とするビスカスダンパー。
  7. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のビスカスダンパーにおいて、前記開口孔の開口端を曲げ起こして前記ベース部に形成され、前記ケースの外側に突出する金属製のブレードを有することを特徴とするビスカスダンパー。
  8. 請求項6または7記載のビスカスダンパーにおいて、前記ブレードは径方向に対して傾斜を有し、前記ケースの回転動作により、前記ケースの外側に冷却風を生じせしめることを特徴とするビスカスダンパー。
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