JP4929962B2 - スロットレスモータ - Google Patents

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Description

本発明は、ロボットの関節等を駆動するスロットレスモータに関する。
従来のスロットレスモータは図8および図9(例えば、特許文献1および2参照)のような構成をしている。
図8は従来のスロットレスモータの正断面図、図9は側断面図である。
図8、図9において、11は固定子鉄心であり、11aは固定子鉄心端面であり、12は電機子巻線である。電機子巻線12は固定子鉄心11の内周面に固着され、固定子鉄心11と電機子巻線12により固定子10を形成している。21は回転子鉄心であり、22は永久磁石である。30は空隙であり、40は回転軸である。
永久磁石22は回転子鉄心21の外周面に固着され、回転子鉄心21と永久磁石22と回転軸40により回転子20を形成している。回転子20は固定子10の内部に空隙30を介して対向するように配置されている。回転軸40の両側には、図示していない軸受が設置されており、同じく図示していないブラケットに前記軸受を収納し、前記ブラケットを同じく図示していないフレームに嵌合することにより、回転子20を支えている。
次に、このように構成されたスロットレスモータの動作について説明する。
前記電機子巻線12に三相交流電流を流すことにより、固定子10の内部に回転磁界が発生し、この回転磁界と永久磁石22の作る磁界の相互作用により、回転子20が回転する。
スロットレスモータは、いわゆるスロット付きモータと異なり、固定子鉄心にティース及びスロットを有していないため、理論的にコギングトルクが発生せず、非常に滑らかに回転するという利点を有する。
図10および図11は、図8および図9とは異なる従来のスロットレスモータである(例えば特許文献3参照)。図10はスロットレスモータの斜視断面図であり、図11は成形コイル50である。図10、図11に示されるスロットレスモータの構造、特性および動作は、前述した図8、図9で示されるスロットレスモータとほぼ同等であり、記号も同一であるため、説明は省略する。図10、図11のスロットレスモータが、図8、図9のスロットレスモータと異なる点は、電機子巻線12の軸方向端部(コイルエンド部52と称する)の形状であり、コイルエンド部52を固定子鉄心11の端面11a上に折り曲げて固定しているところが異なる。このように電機子巻線12の軸方向端部を折り曲げることにより、モータの軸方向寸法を可及的に短縮し得る効果がある。
特開平11−234989号公報(第3頁、図1) 特開2002−101595号公報(第3頁、図1、図4) 実公平7−50867号公報(第3頁、図1、図2) 電気学会論文誌D 平成15年7月号(第814頁)
スロットレスモータは上記のような利点を有しているが、スロット付きモータと異なり、従来のスロットレスモータの電機子巻線は永久磁石と固定子鉄心間の空隙30に配置されているため、永久磁石の外周表面から固定子鉄心の内周表面までのいわゆる磁気ギャップは、スロット付きモータと比較して格段に大きくなる。磁気ギャップが大きくなると磁気抵抗が大きくため、通常スロットレスモータの巻線インダクタンスは、スロット付きモータの巻線インダクタンスに比べてかなり小さくなる。この巻線インダクタンスが小さいことが電動機を駆動する際に障害となる。通常,永久磁石型同期電動機は、PWM駆動されるドライバ装置により駆動される。この際、巻線インダクタンスが小さいと電流リップルが大きくなり、その結果として,電流リップルに起因する高周波損失が大きくなる。そのことにより、電動機の定格出力が低く抑えられるという問題があった。
また、この高周波損失は主として永久磁石に発生するために、永久磁石の温度が異常に高くなるために磁石が熱減磁しやすいという問題もあった。
この問題は、図8、図9または、図10、図11で示されたスロットレスモータのどちらについても当てはまる問題である。
巻線インダクタンスを大きくするためには、電動機とは別個に外部にリアクトルを追加することがもっとも簡単な方法であるが、リアクトルを設置するための空間が必要になると共に、電動機との接続も煩雑なものとなる欠点があった(例えば、非特許文献1参照)。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、外部にリアクトルを追加することなく、またモータ寸法を大きくすることなく、巻線インダクタンスが従来と比較して格段に大きくし、高周波損失の小さいスロットレスモータを提供することを目的とする。
上記問題を解決するため、請求項1記載の発明は、スロットレスモータに係り、固定子鉄心と該固定子鉄心の内周面に固着された電機子巻線とを有する固定子と、回転子鉄心と該回転子鉄心に設けられた永久磁石とを有する回転子、から構成され、前記回転子は前記固定子の内部に空隙を介して対向するように配置されているスロットレスモータにおいて、前記電機子巻線のうち前記永久磁石と対向していない端部分は、前記固定子鉄心に設けられた補助鉄心により覆われており、記永久磁石と対向している部分は、前記補助鉄心で覆われていないことを特徴としている。
請求項2記載の発明は、請求項1記載のスロットレスモータにおいて、前記電機子巻線の端部分が前記固定子鉄心の端面上に折り曲げられており、前記補助鉄心が前記電機子巻線の折り曲げられた端部分の上から覆うように前記固定子鉄心に設けたことを特徴としている。
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載のスロットレスモータにおいて、前記補助鉄心が絶縁被覆鉄粉形軟磁性材料で作られていることを特徴としている。
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項記載のスロットレスモータにおいて、前記補助鉄心は鍔付リング形状をし、前記補助鉄心の鍔部の高さが前記電機子巻線の厚みに相当し、かつ前記補助鉄心のリング部が前記電機子巻線の端部を覆っていることを特徴としている。
請求項1記載の発明によると、電機子巻線の永久磁石と対向していない端部分、即ち、コイルエンド部に補助鉄心を追加しているので、コイルエンド部の漏れ磁束が増加するため、外部に別個にリアクトルを追加することなく、巻線インダクタンスを大きくすることができるために、電流リップルが小さく抑えられ、その結果として高周波損失を小さく抑えることができる。従って、高周波損失が小さくなるために、モータの発熱が小さくなり、モータ出力を大きくすることができる。
また、補助鉄心はコイルエンド部に配置しているため、トルク発生に関係する電機子巻線及び永久磁石からの磁束に悪影響を与えることがない。従って、補助鉄心を追加してもトルクが小さくなることを防ぐことができる。
また、高周波損失は主として永久磁石に発生するために、高周波損失を小さく抑えることができることにより、永久磁石の温度上昇を低く抑えることができ、その結果として磁石の熱減磁を防止することができる。
請求項2記載の発明によると、請求項1記載の発明と同様にコイルエンド部に補助鉄心を追加しているため巻線インダクタンスを大きくでき、したがって電流リップルが小さく抑えられ、その結果として高周波損失を小さく抑えることができる。
さらに、コイルエンド部を固定子鉄心の端面上に折り曲げて、その上から補助鉄心を追加しているため、モータの軸方向寸法を可及的に短縮し得る効果がある。
また、請求項3記載の発明によると、補助鉄心は、絶縁被覆鉄粉形軟磁性材料としているので、補助鉄心内部の渦電流は小さくなり、補助鉄心内部に発生する高周波損失を小さくすることができる。
さらに、請求項4記載の発明によると、補助鉄心をリング形状としているため、補助鉄心を装着する作業が極めて容易になり、かつ短時間で実施することができる。
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施例を示すスロットレスモータの側断面図である。
図1において、11は固定子鉄心であり、11aは固定子鉄心端面であり、12は電機子巻線であり、13は補助鉄心である。電機子巻線12は固定子鉄心11の内周面に固着され、固定子鉄心11と電機子巻線12と補助鉄心13により固定子10を形成している。21は回転子鉄心であり、22は永久磁石である。30は空隙であり、40は回転軸である。
永久磁石22は回転子鉄心21の外周面に固着され、回転子鉄心21と永久磁石22と回転軸40により回転子20を形成している。回転子20は固定子10の内部に空隙30を介して対向するように配置されている。回転軸40の両側には、図示していない軸受が設置されており、同じく図示していないブラケットに前記軸受を収納し、前記ブラケットを同じく図示していないフレームに嵌合することにより、回転子20を支えている。
図2は、本発明の第1実施例のスロットレスモータの固定子内周面を示す展開図である。
図2は、円筒形状の固定子の内周面をわかりやすいように平面状に展開したところを示
している。図2において、50は成形コイル、51は成形コイルの直線部、52は成形コイルのコイルエンド部である。成形コイル50は、絶縁被覆銅線を小判形に巻回し、その後、固定子鉄心11の内周面に沿うように、R形状に曲げ成形した成形コイルである。固定子鉄心11の内周面には、成形コイル50が複数個並べて固着されており、この成形コイル50を結線して電機子巻線12を形成している。成形コイル50は小判形をしているが、中央は直線部51を成しており、R部を持つ端部をコイルエンド部52と呼ぶ。永久磁石22が空隙30を介して対向しているのは、直線部51であり、コイルエンド部52には、永久磁石22はほとんど対向していない。これは、トルクの発生に寄与するのは、主に直線部51であるからであり、コイルエンド部52はトルクの発生にはほとんど寄与していないためである。図1および図2のとおり、補助鉄心13は電機子巻線12内周面に設置され、コイルエンド部52を覆うように取り付けられている。
このように、本発明が従来技術と異なる部分は、電機子巻線12のコイルエンド部52に補助鉄心13を設置している点である。なお、本発明のスロットレスモータの正断面図は図8のそれと同等であるため図示は省略する。
次に、上記のように構成された本発明の第1実施例によるスロットレスモータの動作について説明する。前記電機子巻線12に三相交流電流を流すことにより、固定子10の内部に回転磁界が発生し、この回転磁界と永久磁石22の作る磁界の相互作用により、回転子20が回転する。この点は従来技術と同様である。
次に、本発明で新たに追加している補助鉄心13について詳しく説明する。
補助鉄心13は、電機子巻線12の内周面でコイルエンド部52に密着するように設置されている。補助鉄心13の材質としては、磁性材料であることは勿論であり、電磁鋼板を積層したものが望ましい。これは、補助鉄心13の内部に発生する渦電流による損失を小さく抑えるためである。
補助鉄心13の働きは、図3に示すようになる。即ち、補助鉄心13が電機子巻線12のコイルエンド部52を覆うように設置されているため、補助鉄心13を設置しない場合と比較して、電機子巻線12のコイルエンド部52の漏れ磁束62が大きくなる。コイルエンド部52の漏れ磁束62が大きくなることにより、コイルエンド部52の漏洩パーミアンスが大きくなり、その結果、巻線インダクタンスが大きくなる。
また、補助鉄心13はコイルエンド部52に配置しているため、トルク発生に関係する電機子巻線12及び永久磁石22からの有効磁束61に悪影響を与えることがない。
このように補助鉄心13を電機子巻線12のコイルエンド部52に配置することにより、巻線インダクタンスを大きくすることができる。巻線インダクタンスを大きくできることにより、電流リップルが小さく抑えられ、その結果として電流リップルに起因する高周波損失を小さく抑えることができる。従って、高周波損失が小さくなるために、モータの発熱が小さくなり、モータ出力を大きくすることができる。
図4は、本発明の第2の実施例を示すスロットレスモータの側断面図であり、図5は、本発明の第2実施例の補助鉄心の働きによる磁束の流れを示す模式図である。
図4、図5に示される本発明の第2実施例のスロットレスモータの構造、特性および動作は、前述した図1〜3で示される本発明の第1実施例のスロットレスモータとほぼ同等であり、符号も同一であるため、符号の説明は省略する。本発明の第2実施例が、本発明の第1実施例と異なる点は、電機子巻線12の軸方向端部、すなわちコイルエンド部52の形状である。第2実施例では、コイルエンド部52を固定子鉄心11の端面11a上に折り曲げて固定し、補助鉄心13が電機子巻線12の折り曲げられた端部分の上から覆うように設けている。前述したように、コイルエンド部52はトルクの発生にはほとんど寄与していないために、このようにコイルエンド部を固定子鉄心端面11a上に折り曲げても、トルクが減少することはない。
さらに、補助鉄心13が電機子巻線12の折り曲げられた端部分の上から覆うように設けらているために、第1実施例と同様に、電機子巻線12のコイルエンド部52の漏れ磁束62(図5)が大きくなる。
コイルエンド部52の漏れ磁束62が大きくなることにより、コイルエンド部52の漏洩パーミアンスが大きくなり、その結果、巻線インダクタンスが大きくなる。
このように補助鉄心13を電機子巻線12のコイルエンド部52に配置することにより、巻線インダクタンスを大きくすることができる。巻線インダクタンスを大きくできることにより、電流リップルが小さく抑えられ、その結果として電流リップルに起因する高周波損失を小さく抑えることができる。従って、高周波損失が小さくなるために、モータの発熱が小さくなり、モータ出力を大きくすることができる。さらに、コイルエンド部52を固定子鉄心11の端面11a上に折り曲げて、その上から補助鉄心13を追加しているため、モータの軸方向寸法を可及的に短縮し得る効果がある。
なお、コイルエンド部52が折り曲った成形コイル50の製作する一つの手段としては、平板状に小判形に巻装された空心コイルを、固定子鉄心11の内周面に沿うように、R形状に曲げ成形するのと同様に、コイルエンド部を折り曲げるように曲げ成形する方法が考えられる。別のもう一つの手段としては、予めコイルエンド部の折り曲がった巻き型を製作し、その巻き型に沿って巻装することによりコイルエンド部52が折り曲った成形コイルを得る方法が考えられる。
図6は、本発明の第3の実施例によるスロットレスモータの側断面図であり、補助鉄心131を絶縁被覆鉄粉形軟磁性材料とするものである。
第3の実施例が第1の実施例と異なる部分は、補助鉄心131の材質のみであり、図6中の符号で図1と同じ符号は同一部材であるため、重複説明は省略する。絶縁被覆鉄粉形軟磁性材料製補助鉄心131の絶縁被覆鉄粉形軟磁性材料とは、鉄粉表面を樹脂などの有機系物質あるいはガラスなどの無機系物質で被覆し、その後圧縮成形した軟磁性材料あり、鉄粉粒子間の電気的絶縁性を付与したもので、渦電流損の抑制を目的としている。
このように補助鉄心131を絶縁被覆鉄粉形軟磁性材料としているので、電磁鋼板を使った場合のような電磁鋼板の積層作業が省略でき、生産性を上げることができる。また、絶縁被覆鉄粉形軟磁性材料を使用しているため、積層していない一体物の形状でも、補助鉄心内部に発生する渦電流は小さくなり、補助鉄心内部に発生する高周波損失を小さくすることができる。
図7は、本発明の第4の実施例を示す補助鉄心の斜視図であり、前記補助鉄心13を鍔13aのついたリング部13bの形状としている。鍔部13aの高さが電機子巻線12の厚みに相当し、またリング部13bが電機子巻線12の端部(コイルエンド)を覆うような形状にしている。補助鉄心13をこのようなリング形状としているため、補助鉄心13を装着する作業が極めて容易になり、かつ短時間で実施することができる。
補助鉄心を追加することにより、外部に別個にリアクトルを追加することなく、巻線インダクタンスを大きくできるため、設置面積に制限があり、外部にリアクトルを追加することができないという用途にも適用できる。
本発明の第1実施例を示すスロットレスモータの側断面図である。 本発明の第1実施例のスロットレスモータの固定子内周面を示す展開図である。 本発明の第1実施例の補助鉄心の働きによる磁束の流れを示す模式図である。 本発明の第2実施例を示すスロットレスモータの側断面図である。 本発明の第2実施例の補助鉄心の働きによる磁束の流れを示す模式図である。 本発明の第3の実施例を示すスロットレスモータの側断面図である。 本発明の第4の実施例を示す補助鉄心の斜視図である。 従来のスロットレスモータの正断面図である。 図8のスロットレスモータの側断面図である。 図8とは異なる従来のスロットレスモータの斜視断面図である。 図10のスロットレスモータの成形コイルの斜視図である。
符号の説明
10 固定子
11 固定子鉄心
11a 固定子鉄心端面
12 電機子巻線
13 補助鉄心
131 絶縁被覆鉄粉形軟磁性材料製補助鉄心
13a 鍔部
13b リング部
20 回転子
21 回転子鉄心
22 永久磁石
30 空隙
40 回転軸
50 成形コイル
51 直線部
52 コイルエンド部
61 有効磁束
62 漏れ磁束

Claims (4)

  1. 固定子鉄心と該固定子鉄心の内周面に固着された電機子巻線とを有する固定子と、回転子鉄心と該回転子鉄心に設けられた永久磁石とを有する回転子、から構成され、前記回転子は前記固定子の内部に空隙を介して対向するように配置されているスロットレスモータにおいて、
    前記電機子巻線のうち
    前記永久磁石と対向していない端部分は、前記固定子鉄心に設けられた補助鉄心により覆われており、
    記永久磁石と対向している部分は、前記補助鉄心で覆われていないことを特徴とするスロットレスモータ。
  2. 前記電機子巻線の端部分は前記固定子鉄心の端面上に折り曲げられており、前記補助鉄心は前記電機子巻線の折り曲げられた端部分の上から覆うように前記固定子鉄心に設けたことを特徴とする請求項1記載のスロットレスモータ。
  3. 前記補助鉄心は絶縁被覆鉄粉形軟磁性材料で作られていることを特徴とする請求項1または2記載のスロットレスモータ。
  4. 前記補助鉄心は鍔付リング形状をし、前記補助鉄心の鍔部の高さが前記電機子巻線の厚みに相当し、かつ前記補助鉄心のリング部が前記電機子巻線の端部を覆っていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のスロットレスモータ。
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