以下、本発明の各実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(第1の実施形態)
(実施例1)
まず、第1の実施形態の実施例1に係る干渉信号抑圧装置を備えた無線通信システム全体の構成例及び動作例を説明する。実施例1に係る干渉信号抑圧装置は、無線通信システムにおける受信局として位置付けることができる。以下の説明では、実施例1に係る干渉信号抑圧装置を、必要に応じて受信局と称するものとする。図1は、実施例1に係る干渉信号抑圧装置を備えた無線通信システムの一例を示す模式図である。図1に示されるように、実施例1に係る干渉信号抑圧装置402(受信局402)を備えた無線通信システムは、送信局401、受信局402、干渉局403、404を備えている。送信局401は、受信局402宛の送信データを無線信号405に変換して送信する。受信局402は、無線信号405を受信して信号の復調を行い、送信局401からの送信データを得る。この一連の動作により通信が行われる。
一方、干渉局403と干渉局404は、送信局401及び受信局402とは独立して無線信号の送信を行うものとする。この例では、干渉局403と干渉局404は、送信局401と受信局402が使用する通信チャネルとは別のチャネルを用いて信号の送受信を行う。
実施例1では、各無線局401、402、403、及び404は、同じアクセス方式を使用しているものとし、例えば、IEEE802.11のCSMA/CA方式を用いることができる。この方式では、無線局401、402、403、及び404は、送信前に無線通信キャリアの検出を行い、閾値レベル以上のキャリアを検出できなければ、ランダムな時間で送信待機をし、その後にフレームを送信する。この技術によって、同一チャネルで通信をしている複数の無線局が同時に信号を送信してフレームの衝突が発生することを防ぐことができる。この例では、同一チャネルで信号の送信を行っている干渉局403および404はこの技術を用いており、信号の同時送信を行わないものとする。
図2は、本発明の実施例1に係る干渉信号抑圧装置(受信局)402の構成を示すブロック図である。図2に示されるように、干渉信号抑圧装置402は、アンテナ101、102と、サブバンド分離部103、104と、アンテナ間相関値検出部105と、メモリ106と、比較部107と、プリアンブル検出部108と、電力検出部109と、タイミング検出部110と、判定部111と、干渉信号抑圧部112と、復調部113とを備える。
図3は、送信局401が送信する無線信号フォーマットの一例を示す図である。無線信号フォーマットは、同期検出および伝送路推定に用いるプリアンブルシンボル501と、データシンボル列502とを備える。データシンボル列502は、PHYヘッダ503と、MACヘッダ504とを含む。PHYヘッダ503は、各データシンボルの変調パラメータ、およびデータ長の情報を含む。MACヘッダ504は、送信元アドレス、送信先アドレス、および制御情報を含む。IEEE802.11a準拠の無線LANを例にとると、各シンボルは送信局401でOFDM変調され、受信局402でOFDM復調される。
図2を用いて干渉信号抑圧装置402の各部の動作を説明する。
サブバンド分離部103,104は、アンテナ101,102で受信された信号をサブバンド信号に分離する。サブバンド分離にはたとえばFFT(Fast Fourier Tranform)やウエーブレット変換またはフィルタバンクなどを用いることができる。FFTには、例えばOFDM復調のためのFFTを用いることができる。なお、図2ではサブバンド分離部をアンテナ入力毎に設けているが、2つのアンテナからの信号を1つのサブバンド分離部に入力し、該サブバンド分離部で受信信号を時分割で処理するようにしてもよい。
アンテナ間相関値検出部105は、サブバンド毎にアンテナ間相関値を検出する。異なる方向から送信された信号は異なるアンテナ間相関値を有しているため、そのアンテナ間相関値から、空間的に干渉信号源の位置等を特定することができる。このように特徴量として複数のアンテナを用いてアンテナ間相関値を求める構成を採用した場合、既知の信号ではなく未知の信号を受信した場合であっても、互いに異なる位置にある干渉局(無線局)を判別することができる。
なお、ここでは特徴量としてアンテナ間相関値を用いる例を示したが、干渉局毎に異なる値を示すものであれば、特徴量の種類は特に限定されるものではない。特徴量の例としては、例えば、複数のアンテナで受信した受信信号間の共分散行列、複数のアンテナで受信した複数の受信信号を重み付きで合成し干渉信号抑圧を行うための重み係数、複数のアンテナで受信した複数の受信信号の各受信電力値、複数のアンテナで受信した複数の受信信号の平均受信電力値等を挙げることができる。なお、単独では判別精度の低い特徴量でも、組み合わせて用いることで干渉局の判別精度を上げることができる。
検出されたアンテナ間相関値は、メモリ106に記憶される。
比較部107は、現在受信中の信号のアンテナ間相関値と、メモリ106に記憶されている過去に受信した信号の複数のアンテナ間相関値とを比較する。比較部107は、その比較により、メモリ106に記憶されているアンテナ間相関値と、現在受信中の信号のアンテナ間相関値との類似度を算出する。算出された類似度は、判定部111へ出力される。
プリアンブル検出部108は、各アンテナ入力に基づいて、受信した信号に固有の希望信号のプリアンブルが含まれるかどうかを検出する。
電力検出部109は、各アンテナ入力に基づいて、受信電力の変動を検出する。検出した受信電力の変動に基づいて、タイミング検出部110は変動の時間間隔を検出する。タイミング検出部110は、たとえば、受信電力が所定の閾値を超えて持続している時間や受信電力が検出されていない時間の測定を行う。
判定部111は、比較部107、プリアンブル検出部108、電力検出部109、及びタイミング検出部110の出力に基づいて、受信中の信号に希望信号が含まれるか否かを判定する。また、判定部111は、受信中の信号に希望信号が含まれないと判定したときは、受信中の信号が干渉信号であると判定する。受信信号に希望信号が含まれるか否かの情報は、メモリ106等へ出力される。また、判定部111は、受信中の信号に希望信号が含まれると判定したときは、比較部107から入力した類似度の情報に基づき、メモリ106に記憶されているアンテナ間相関値の中から、受信中の干渉信号のアンテナ間相関値と類似度の最も高いものを選択する。メモリ106に記憶されていたアンテナ間相関値の中で類似度の最も高いと判定された干渉信号特徴量の情報は、干渉信号抑圧部112へ出力される。つまり、干渉信号抑圧のため、判定部111は、過去に受信した干渉信号の中で、受信中の干渉信号と同一の干渉信号源から送信されたと推定される干渉信号の特徴量の情報を干渉信号抑圧部112へ出力する。過去に受信した干渉信号が、希望信号と重なって受信されたものでなければ、その干渉信号について測定されたアンテナ間相関値は希望信号の周波数帯域内についても正確な値となる。従って、受信中の干渉信号が希望信号と重なって到来したときに、過去に受信した干渉信号の正確なアンテナ間相関値を用いることで、希望信号の周波数帯域内で適切な干渉信号の抑圧が可能となる。
干渉信号抑圧部112は、判定部111から得た干渉信号特徴量の情報に基づいて、希望信号に重なった干渉信号を抑圧する。復調部113は、干渉信号が抑圧された希望信号の復調を行う。
ここで、本発明における干渉信号特徴量取得の典型的な動作を説明する。
図4は、受信信号に希望信号が含まれる可能性がない時の受信局402の動作を示す図である。図4の左側半分は、干渉信号特徴量と希望信号特徴量の関係を時系列的に示す図である。図4の左側半分において、横軸は干渉信号及び希望信号の周波数を示す。破線は希望信号の特徴量を表し、実線は干渉信号の特徴量を示す。図4の左側半分に示す状態では、受信信号に干渉信号のみが含まれ、希望信号は含まれていないものとする。図4の右側半分は、メモリ106に記憶される干渉信号の特徴量を時系列的に示す図である。図4は、特徴量としてアンテナ間相関値を用いた場合を示している。
初期状態としてメモリ106の内容は空であるとする。図4(a)に示されるように、干渉信号についての或るアンテナ間相関値(実線部)が検出されたとする。メモリ106には何も保存されていないため、検出されたアンテナ間相関値をメモリ106のアドレス1に保存する。次いで、(b)に示されるように、別のアンテナ間相関値(実線部)が新たに検出されたとする。メモリ106には、新たに検出されたアンテナ間相関値と類似するアンテナ間相関値が保存されていないため、新たに検出されたアンテナ間相関値をメモリ106のアドレス2に新規に保存する。次いで、(c)に示されるように、過去に検出したアンテナ間相関値と類似するアンテナ間相関値が検出されたとする。この例では、過去に検出された(a)に示すアンテナ間相関値と今回検出された(c)に示すアンテナ間相関値が類似しているとする。メモリ106には類似のアンテナ間相関値が存在するため、今回検出された類似のアンテナ間相関値の検出値を用いてメモリ106のアドレス1の内容を更新する。次いで、(d)に示されるように、別の新たなアンテナ間相関値が検出されたとする。メモリ106には類似のアンテナ間相関値が存在しないため、今回検出されたアンテナ間相関値をメモリ106のアドレス3に新規に保存する。
図5は、受信信号に希望信号が含まれる可能性がある時の受信局402の動作を示す図である。図5の左側半分は、干渉信号特徴量と希望信号特徴量の関係を示す図である。希望信号の特徴量と干渉信号の特徴量を各々実線で示す。図5の右側半分は、メモリ106に既に記憶された干渉信号の特徴量を示す図である。なお、(e)の表記は、図4(d)の続きであることを示している。図5(e)に示されるように、希望信号帯域内と希望信号帯域外において各々アンテナ間相関値が検出されたとする。判定部111は、検出されたアンテナ間相関値のうち希望信号帯域外の部分をメモリ106の記憶内容と照合し、類似の内容が保存されているアドレス2を選択する。上記記憶内容との照合は、類似度の算出により行う。類似度が所定値を超え、且つ、最大となる特徴量が格納されたアドレスを選択する。類似度を求める際には、希望信号帯域外のうち受信電力が基準値を超える周波数成分のみを用いても良い。これにより、希望信号の成分や雑音に乱されることなく正確に類似度を求めることができる。干渉信号源(干渉局)の特定値としては、アドレス2の情報を出力しても良いし、アドレス2に保存されている希望信号帯域内のアンテナ間相関値を出力しても良い。希望信号帯域内のアンテナ間相関値が出力された場合は、受信局402は、希望信号を復調する前に、周波数毎の信頼性の判断に使用したり、干渉信号を抑圧するための合成係数の生成に使用することができる。
次に、図1及び2に示される受信局(干渉信号抑圧装置)402の動作の一例について説明する。
以下の説明では、送信局401と受信局402の間の通信を自通信とし、自通信にとって干渉通信となる干渉局403と干渉局404間の通信を他通信とする。他通信は自通信の隣接チャネルで行われるものとする。図6は、自通信で用いられる信号の特徴量801と他通信で用いられる信号の特徴量802を、使用周波数帯域と関連付けて示す図である。図6における横軸は周波数を示し、縦軸は特徴量を示している。図6から分かるように、自通信の周波数帯域と他通信の周波数帯域が隣接関係にあるということもあって、他通信の特徴量の一部が自通信の信号帯域に混在している。
ここでは、自通信と他通信は同じアクセスプロトコルを使用しているものとする。このプロトコルでは、送信の優先順位を与えるために、フレーム間に所定の間隔を空けることが規定されている。たとえばIEEE802.11のCSMA/CAではフレーム間隔が短い順にSIFS(Short Inter Frame Space)、PIFS(Point Coordination IFS)、DIFS(Distributed Coordination IFS)などが規定されている。送信の優先度が最も高いSIFSは確認応答(ACK)パケットの送信などに用いられる。これらフレーム間隔に相当する期間は送信禁止期間となる。その他の送信禁止期間としては、特定の無線局に対してのみ送信権を与えるNAV(Network Allocation Vector)が設定された期間などがある。
図7に、受信局402で受信される他通信の受信電力の一例を示す。時刻T1からT2の間干渉局403から干渉局404に向けて無線信号406が送信される。干渉局404は無線信号406を受信、復調する。干渉局404は、復調を正常に行うことができた場合に、確認応答(ACK)パケットを送信する。干渉局404は、プロトコルで決められたフレーム間隔(T2からT3)をあけて、干渉局403に向けて確認応答パケットである無線信号407をT3からT4の間送信する。この時、干渉局403および干渉局404と受信局402との距離や配置の関係により、無線信号406と407の受信電力はそれぞれ異なる。
ここで、電力検出部109及びタイミング検出部110の動作の一例を説明する。電力検出部109で所定値以上の受信電力が検出されると、タイミング検出部110では、受信電力の持続時間および受信電力が検出されない時間(フレーム間隔)を検出する。図7の場合、持続時間としてT1からT2の時間、T3からT4の時間が検出され、フレーム間隔としてT2からT3の時間が検出される。この時、T1からT2の間の受信電力値とT3からT4の間の受信電力値が異なり、T2からT3の時間がプロトコルで規定された間隔であれば、T1からT2の間の受信信号とT3からT4の間の受信信号は異なる2つの無線局が交互に送信したものであると判断することができる。また、T3からT4の時間が、IEEE802.11のACKパケットのようなプロトコルで規定された制御パケットの長さと等しければ、より確実に2つの無線局が交互に送信していると判断することができる。
このように、干渉信号の時間占有率および出現間隔を測定する構成とした場合は、既知のプロトコルであれば干渉する無線局の判別の精度を上げることができる。
サブバンド分離部103、104とアンテナ間相関値検出部105の動作の一例を説明する。サブバンド分離部103、104は、各々、マルチバンド信号である受信信号を複数のサブバンドに分離する。アンテナ間相関値検出部105は、上記サブバンド毎にアンテナ間の信号相関を検出する。ここではサブバンド分離部にFFTを用い、自通信はOFDM信号で行われるものとする。各サブバンドはFFTの周波数ビンを指すものとする。アンテナ間相関値検出では各サブバンドについて、複数のアンテナ入力間の相関を求める。たとえばアンテナ番号をn(nは1〜Nの自然数)、サブバンド番号をm(mは1〜Mの自然数)とし、受信サブバンド信号をrm(n)とする。サブバンド番号mのアンテナ間相関値Rmは、
Rm=[rm(1)…rm(n)]H[rm(1)…rm(n)]・・・(式1−1)
とすればよい。ここでHは複素共役転置を表す。Rはアンテナが1本の場合は単にサブバンド毎の受信電力を表す。またアンテナが複数の場合は対角成分に各アンテナの受信電力、その他の成分に各アンテナ間の相関を示す行列となる。
図8は、受信局402で受信される他通信の無線信号の特徴量を周波数軸上で見た一例を示す図である。図8(a)には、実線で自通信信号の特徴量の包絡線801、破線で他通信信号の特徴量の包絡線802が示されている。他通信信号の特徴量の包絡線802内の縦線は、他通信信号のサブバンド毎の特徴量を表している。特徴量としてはたとえば受信信号の受信電力、位相、アンテナ間相関値などを挙げることができるが、特に限定はされない。
図8(b)は、(a)における他通信信号を、受信局402のサブバンド分離部103,104で複数のサブバンドに分離し、アンテナ間相関値検出部105等で各サブバンドについて特徴量を求めた時の一例を示す。サブバンド分離は、高速フーリエ変換(FFT)により行うことができる。図8(b)には、自通信の信号の周波数帯域901と、サブバンド分離を行う周波数帯域902が示されている。サブバンド分離を行う周波数帯域902は、自通信信号の周波数帯域901を含み、且つ、周波数帯域901より広く設定されている。受信局402は、サブバンド分離を行う周波数帯域902の成分をフィルタで取り出し、取り出した成分を高速フーリエ変換(FFT)する。高速フーリエ変換して得た値について、サブバンド毎にアンテナ間相関値等を求める。これにより、サブバンド分離を行う周波数帯域902内の各サブバンドについて、他通信信号(例えば干渉信号406)の特徴量が得られる。
同様に図8(c)は、(b)とは別の他通信信号(例えば干渉信号407)を、受信局402のサブバンド分離部103,104で複数のサブバンドに分離し、アンテナ間相関値検出部105等で各サブバンドについて特徴量を求めた時の一例を示す。別の他通信信号は、例えば、(b)の他通信信号に対する応答パケットである。(b)に示される他通信と(c)に示される別の他通信は、これらの図から分かるように、受信電力、伝搬経路、到来方向などの違いにより、サブバンド分離を行う周波数帯域902内における特徴量が異なる。
次に、図1、7、8を用いて、干渉信号の特徴量を保存する際の受信局402の動作の一例について説明する。以下の説明では、時刻T0、・・・、時刻T13について、単にT0、・・・、T13と記載する。
図1に示されるように、まず無線局403から他通信の信号406が送信され、この信号を受信した無線局404が別の他通信の信号407を送信するものとする。この段階では、自通信の信号405は送信されていないものとする。
受信局402は、図7に示されるように、T0から干渉信号の測定を開始する。この例では、T0からT4の間は自通信の送信禁止期間が設定されていないが、自通信は行われていない。
受信局402は、T1で所定の受信電力を検出する。T1からT4の間では自通信の送信禁止期間が設定されていないため、自通信に固有のプリアンブルが検出されるか否かにより、自通信の信号を受信したのか或いは他通信の信号を受信したのかを判定することができる。最初に受信した無線信号406は他通信の信号であるため、自通信の信号(希望信号)に固有のプリアンブルは検出されない。よって、受信局402は、T1からT2の間持続している受信信号は干渉信号であると判定する。
T1からT2の間は、図8(b)に示されるように、サブバンド分離を行う周波数帯域902内の特徴量(以下、必要に応じて干渉周波数特性と称する)が受信局402で得られる。ここで、受信局402は、過去に保存した干渉周波数特性の中に今回取得した干渉周波数特性と類似するものが存在するかどうかを判定する。類似するか否かの判定は、たとえばサブバンド毎に特徴量の差を求め、帯域902内全体について上記特徴量の差を合計または平均化したものを求め、その結果の差に基づいて行うことができる。例えば、その結果の差が最も小さいものを類似度が最大であるとし「類似した干渉周波数特性」として選択することができる。或いは、類否の判定は、保存されている干渉周波数特性と今回取得した干渉周波数特性に各々近似する直線または曲線を求め、その一致度に基づいて行っても良い。この場合、その一致度が最も大きいものを「類似した干渉周波数特性」として選択することができる。また、これら複数の類否判定方法を組み合わせて用いても良い。
今回取得した無線信号406の干渉周波数特性に類似するものがメモリ106に保存されていないと判定されたときは、受信局402は、無線信号406の干渉周波数特性を、新たな未知の干渉信号の特徴量であると判定し、これに固有の識別子を付して新規に保存する。ここでは、その新規な特徴量を例えば干渉周波数特性1として保存する(図4(a)参照)。
なお、T1からT2の間に複数回にわたって電力検出部109で受信電力を測定することができる場合は、各回の受信電力が一定値で持続していることを検知することで、T1からT2の間に1つの干渉信号が到来していると判定することができる。T1からT2の間に1つの干渉信号が到来し、且つ、該干渉信号の干渉周波数特性と過去に保存された干渉信号の干渉周波数特性が類似する場合は、保存されている干渉信号の干渉周波数特性を更新する。同じ干渉局から到来する干渉信号であっても、干渉局の位置変化、気象条件の変化等により干渉周波数特性は刻々と変化する可能性がある。しかしながら、上記の如く干渉周波数特性を更新することにより、干渉周波数特性は最新の状態に維持される。よって、類似度の判定精度を高めることができる。ここで、新たに測定された干渉周波数特性と保存されている干渉周波数特性を平均化し、その平均化したもので更新を行ってもよい。この場合は、類似度の判定精度を更に向上させることができる。
T3からT4の間は、図8(c)に示されるような干渉周波数特性が受信局402で得られる。受信局402は、過去に保存した干渉周波数特性1と今回取得した干渉周波数特性とを比較し、類似度を算出する。干渉周波数特性1と今回取得した干渉周波数特性の類似度は小さい。よって、今回取得した干渉周波数特性は干渉周波数特性1とは類似しないと判定され、干渉周波数特性2(図4(b)参照)として保存される。
干渉周波数特性の比較で類似しているか否かを判定できなかった場合は、類似しているか否かを受信電力、その持続時間、フレーム同士の間隔等の受信電力時間特性の比較で判断することができる。また、干渉周波数特性1で表される干渉信号はT2の時点で終了しており、フレーム間隔(T2からT3)を空けて、異なる電力の信号がT3で検出されている。よって、T3からT4の間の信号は、干渉周波数特性1の干渉信号とは異なる無線局から送信されたと判定することができる。あるいは、T3で検出された電力がT2の時点と同じであれば同一の無線局から送信された信号であると判定することもできる。
また、T1からT2の場合と同様に、電力が持続しているT3からT4の間に複数回にわたって干渉周波数特性を測定できた場合、同一の電力が持続していることからT3からT4の間に1つの干渉信号が到来していると判定する。T3からT4の間に1つの干渉信号が到来し、且つ、該干渉信号の干渉周波数特性と過去に保存された干渉信号の干渉周波数特性が類似する場合は、保存されている干渉信号の干渉周波数特性を更新する。
自通信が行われていない間、つまり自通信の送信禁止期間であるか或いは自通信に固有のプリアンブルを検出できない間は、上記の如く干渉信号を判別しながら干渉周波数特性を更新或いは新規保存する動作が継続して行われる。
次に、希望信号と干渉信号が重なって受信された場合に、その受信信号中の干渉信号の特徴量を取得する際の受信局402の動作について説明する。
図9は、希望信号と干渉信号が略同時期に到来した場合の、信号到来及び信号終了の様子を示す図である。干渉信号である無線信号406がT6からT9の間に受信され、別の干渉信号である無線信号407がT11からT13の間受信される。一方、自通信の希望信号である無線信号405がT7からT10の間受信される。図9の一番下の図は受信局402で検出される受信電力を示す。T7からT9の間では、干渉信号406と希望信号405が重畳している。
受信局402は、既にT0からT4の間に干渉周波数特性1および2を測定し保存している。T6からT7では、上記と同様の測定が行われ干渉周波数特性1が更新される。
T7からは受信電力が変化したことが検出され、プリアンブル検出が行われる。希望信号405には固有のプリアンブル501が含まれている。よって、T8の時点でそのプリアンブルが検出される。
受信局402は、希望信号405に固有のプリアンブルを検出すると、現在受信中の信号には希望信号が含まれている可能性が高いと判定する。
受信局402は、保存されている干渉周波数特性と現在受信中の信号の干渉周波数特性につき、希望信号405の周波数帯域外の部分を比較する。この比較により、受信局402は、現在受信中であり且つ希望信号と一部重なっている干渉信号の判別を行う。現在受信中の信号の干渉周波数特性は、サブバンド分離が行われる周波数帯域902の区間で測定されたものである。この周波数帯域902のうち希望信号の周波数帯域901は、希望信号が存在する可能性が高く、干渉信号の特徴量と希望信号の特徴量が合成されている可能性が高いため、比較対象から除外する。受信局402は、保存されている干渉周波数特性1および2と、現在受信中の信号の干渉周波数特性802の希望信号周波数帯域901以外の部分との類似度を判定する。
なお自通信において、希望信号の周波数帯域内で使用されていないサブバンドがある場合はそのサブバンドについても類似度の判定に用いることができる。たとえばT7からT8の間に受信されるプリアンブルシンボルでは少数の所定のサブバンドのみにキャリアがあり、残りのサブバンドはヌルキャリアを用いる場合がある。図10は、プリアンブルシンボルにおける干渉周波数特性の一例を示す図である。この例では、プリアンブルシンボルは希望信号の周波数帯域901のうち一部のサブバンド1001,1002,1003にのみにプリアンブル情報が乗ったキャリアが含まれ、残りのサブバンドはヌルキャリアとされている。この場合、ヌルキャリアのサブバンドには干渉信号406の干渉周波数特性が現れる。
希望信号帯域外における干渉周波数特性の比較で、現在受信中の信号の干渉周波数特性に類似する干渉周波数特性が、保存されている干渉周波数特性の中に存在しないと判定された場合は、受信電力の類似度を判定する。
ここで干渉信号の特徴量を特定できれば、希望信号に重畳された干渉信号の抑圧を行うことができる。よって、希望信号の復調精度を向上させることができる。干渉信号の特徴量を用いて干渉信号抑圧を行う干渉信号抑圧部112の構成としては、例えば、本出願人が先に出願した技術(国際公開第2006/003776パンフレット参照)を利用することができる。
希望信号に固有のプリアンブルが検出されたが、その時点で干渉信号の特徴量を特定できなかった場合は、受信中の信号を一旦希望信号として復調し、その復調結果を用いて後で詳述する如く干渉信号の判別を行う。データシンボル列502の復調は順次行われる。データシンボル502の先頭部分にはPHY(Physical Layer)ヘッダ503が含まれる。受信局402は、このPHYヘッダを検知し、それが希望信号に固有のものであることを確認すれば、PHYヘッダに記述されている変調パラメータに従って復調を続ける。変調パラメータには、データシンボルの変調方式やデータ長などが記述されている。
復調データの先頭にはMAC(Media Access Control)ヘッダ504が含まれる。MACヘッダにはMAC層が制御に用いるパラメータが含まれる。このパラメータは、送信元アドレス、宛先アドレス、フレーム種別などである。受信局402は、このMACヘッダを検知する。受信局402は、宛先アドレスが自局宛であるかを判定する。自局宛であれば希望信号であると判定する。受信局402は、希望信号についての干渉周波数特性は保存しない。なお、希望信号の周波数帯域外の特徴量については新規保存、或いは更新を行っても良い。
T9で無線信号406の受信が終了すると受信電力が急激に低下する。受信局402は、受信電力の急激な低下を検知することで、干渉信号の到来が終わったと判定することができる。あるいは受信電力が急激に上がれば、新たな干渉信号が到来し希望信号と重畳したと判定することができる。また、希望信号のPHYヘッダに誤りがない場合は希望信号の長さが分かる。よって、たとえばT9からT10の間の急激な受信電力の変動は干渉信号が重なったかどうかの判定に用いることができる。ここで干渉信号の到来が終わった時点から新たな干渉信号の到来が始まった時点の間は、他通信のフレーム間隔として検出することもできる。
T10で希望信号405の受信が終わる。T11で新たな受信電力が検出される。ここでT10からT12の間は自通信のプロトコルで規定されたフレーム間隔であり送信禁止期間である。よって、受信局402は、この間に検出された受信電力は干渉信号の電力であると判定することができる。受信局402は、新たに到来した干渉信号の干渉周波数特性を保存または更新する。
以上の動作を受信中に繰り返し行うことによりランダムなタイミングで異なる無線局から到来する干渉信号を判別することが可能となる。
図11は干渉特徴量取得動作の一例を示すフローチャートである。図11を用いて干渉信号特徴量取得動作の流れについて説明する。以下の説明において、自通信とは送信局401と受信局402間の通信を指し、他通信とは干渉局403と干渉局404間の通信を指す。
干渉信号特徴量取得動作の開始に当たり、受信局402は、まず、所定値以上の受信電力が検出されたかどうかを判定する(ステップS1101)。所定値以上の受信電力が検出されない場合は、検出されるまで受信電力の検出を続ける。所定値以上の受信電力が検出されると、ステップS1102に移る。
所定値以上の受信電力が検出された場合、受信局402は、自通信において送信禁止期間中であるか否かを判定する(ステップS1102)。送信禁止期間中であれば、受信中の信号は干渉信号であると判定する(ステップS1104)。送信禁止期間中でなければ、ステップS1103に移る。
送信禁止期間中でない場合、受信局402は、受信信号中に希望信号に固有のプリアンブルが検出されたかどうかを判定する(ステップS1103)。希望信号に固有のプリアンブルが検出されなければ、受信中の信号は干渉信号であると判定する(ステップS1104)。希望信号に固有のプリアンブルが検出されれば、受信中の信号には希望信号が含まれている可能性があると判定する(ステップS1109)。
ステップS1102でYES、ステップS1103でNOと判定された場合、いずれの場合も、受信中の信号が干渉信号であると判定される(ステップS1104)。ステップS1104以降のステップS1105からステップS1108では、受信中の干渉信号が、過去に受信した干渉信号と同一の干渉信号源(干渉局)から到来した信号であるか否かを判定する。この判定は、過去に受信した干渉信号について保存されている特徴量と、受信中の干渉信号の特徴量とを比較することで行われる。干渉信号の特徴量には、上記した如く、例えば、サブバンド毎のアンテナ間相関値、受信電力の時間変動特性などがある。
ステップS1104において、受信中の信号が干渉信号であると判定されると、受信中の信号のアンテナ間相関値が、過去に測定し保存したアンテナ間相関値のいずれかと類似しているか否かを判定する(ステップS1105)。アンテナ間相関値は、受信局402が受信すべき希望信号の周波数帯域を含む所定周波数帯域内で測定されるものとする。受信中の信号のアンテナ間相関値が、過去に測定し保存したアンテナ間相関値のいずれかと類似していれば、その類似するアンテナ間相関値を有する干渉信号と同一の干渉信号源から到来した干渉信号であると判定する。保存されているアンテナ間相関値は、受信中の干渉信号のアンテナ間相関値に更新される(ステップS1108)。類似したアンテナ間相関値がなければ、ステップS1106に移る。
アンテナ間相関値について類似したものがない場合、受信中の信号の受信電力及びその持続時間の組み合わせが、過去に測定し保存したものと類似しているか否かを判定する(ステップS1106)。例えば、図7に示されるT1からT2の間の受信電力とその持続時間、T3からT4の間の受信電力とその持続時間とが、予めメモリ106に記憶されていたとする。これら受信電力及び持続時間は、過去に受信した干渉信号についての値であって、電力検出部109及びタイミング検出部110がそのときに測定した値であるとする。この状態において、T6からT7の間の受信電力及びその持続時間の組み合わせがメモリ106に保存されている受信電力及びその持続時間の組み合わせと類似するかどうかを判定する。受信局402は、T6からT7の間の受信電力及びその持続時間の組み合わせがT1からT2の間の受信電力及びその持続時間の組み合わせに類似すると判定すると、受信局402は、相類似するそれらの信号は同一の干渉信号源から到来したものであると判定する。受信局402は、保存されている受信電力及びその持続時間の組み合わせを、今回の受信電力及びその組み合わせにより更新する(ステップS1108)。類似した受信電力及びその持続時間の組み合わせがなければ、新たな干渉信号源から到来した干渉信号であると判定し、今回の受信電力及びその持続時間を新規に保存する(ステップS1107)。
ステップS1107、ステップS1108で特徴量の新規保存或いは更新を行ったら、干渉信号特徴量の収集保存動作を終了する。
ステップS1103で希望信号に固有のプリアンブルが検出された場合(ステップS1103のYES)、受信中の信号に希望信号が含まれている可能性があると判定される(ステップS1109)。ステップS1109以降のステップS1110及び1111では、現在受信中の信号に干渉信号が含まれている場合に、その干渉信号が過去に受信した干渉信号と同一の干渉信号源から到来した信号であるか否かを判定し、干渉信号源を特定する。干渉信号源が特定されれば、その干渉信号源から到来した干渉信号の保存された特徴量に基づき、干渉信号の抑圧を行うことができる。
ステップS1109で、希望信号が含まれる可能性ありと判定されると、受信中の信号のアンテナ間相関値の周波数特性が、過去に測定し保存したアンテナ間相関値の周波数特性のいずれかと類似するか否かを判定する(ステップS1110)。類似するか否かの判定は、希望信号の周波数帯域外のアンテナ間相関値について行うことが好ましい。希望信号の周波数帯域内を含めて行うと、希望信号のアンテナ間相関値に干渉信号のアンテナ間相関値の測定が乱されて、干渉信号のアンテナ間相関値の測定が正確に行えない可能性があるからである。ステップ1110において行われるアンテナ間相関値の測定は、干渉信号と希望信号が混在した状態で行われる。希望信号の周波数帯域内のアンテナ間相関値は上記類否判断に不要であるため、希望信号の周波数帯域外で行われればよい。類似したものがあれば、その類似したアンテナ間相関値を有する干渉信号と干渉信号源(干渉局)が同一であると判定する(ステップS1113)。類似したものがなければ、ステップS1111に移る。
アンテナ間相関値について類似したものがない場合、受信中の信号の受信電力が、過去に測定し保存したものと類似しているか否かを判定する(ステップS1111)。例えば、図7に示されるT1からT2の間の受信電力とその持続時間、T3からT4の間の受信電力とその持続時間とが予めメモリ106に記憶されていたとする。この状態において、T6からT7の間の受信電力がメモリ106に保存された受信電力のいずれかと類似するかどうかを判定する。受信局402は、図9に示されるT6からT7の間の受信電力がT1からT2の間の受信電力に類似すると判定すると、予め保存されているT1からT2の間の持続時間から、T7からT9の間にはT1からT2の間の干渉信号電力が重畳されていると判断する。よって、受信局402は、T7からT9の間には、T1からT2の間の干渉信号と同じ干渉信号が到来していると判断する。これにより、到来している干渉信号の干渉信号源を特定することができる(ステップS1113)。T1からT2の間の干渉信号のアンテナ間相関値等の特徴量は、希望信号帯域外のみならず希望信号帯域内についても既に保存されているから、希望信号帯域内の干渉信号特徴量を用いて、後で干渉信号抑圧を行うことが可能となる。なお、図9の最下段に示される如く、希望信号に固有のプリアンブルが検出されないある電力が持続しており(T6からT7)、電力が大きく変化した後、希望信号に固有のプリアンブルが検出されたとする(T7からT8)。この場合、干渉信号の途中から希望信号が重なったと判定することができる。また、図示はしないが、希望信号を受信している状態において、受信電力が一旦増加した後しばらくして低下し、所定の間隔をあけて再度受信電力が増加し、しばらくして低下すれば、異なる干渉信号源からの干渉信号が到来したと判定することができる。ステップS1111において、類似したものがないと判定されると、受信局402は、受信中の信号を復調し(ステップS1112)、ステップS1114に移る。
ステップS1112で受信中の信号が復調されたら、受信局402は、復調信号のPHYヘッダに誤りがないかを判定する(ステップS1114)。PHYヘッダに誤りがあれば、ステップS1117に移る。PHYヘッダに誤りがなければ、ステップS1115に移る。
PHYヘッダに誤りがない場合、復調信号のMACヘッダを検出し、MACヘッダの内容から自局宛の信号であるか否かを判定する(ステップS1115)。自局宛の信号でなければ、受信中の信号は干渉信号であると判定する(ステップS1104)。これにより自通信と同一チャネルで行われる通信についても、その通信が自通信であるのか或いは他通信であるのかを判定することができる。自局宛の信号であると判定されれば、受信局402は、受信中の信号が希望信号であると判定する(ステップS1116)。
ステップS1116で受信中の信号が希望信号であると判定された場合、この時点で測定していたアンテナ間相関値や受信電力などの情報は干渉情報としては保存せず、測定を終了する。
ステップS1114でNOと判定された場合、希望信号帯域内の電力より信号帯域外の電力が大きいかどうかを判定する(ステップS1117)。ステップS1114においてPHYヘッダに誤りがあると判定された場合、希望信号の電力が小さいために復調誤りを起こしたか、或いはステップS1103において隣接チャネルの干渉信号のプリアンブルを、希望信号のプリアンブルであるとして誤って検出した可能性がある。そのため、希望信号帯域内の電力より希望信号帯域外の電力が大きい場合は受信中の信号は干渉信号であると判定する(ステップS1104)。希望信号帯域内の電力と比べて信号帯域外の電力が大きくない場合は、受信中の信号に希望信号が含まれるのかどうかを判定できなかったとする(ステップ1118)。
受信中の信号に希望信号が含まれているどうかを判定できなかった場合(ステップS1118)、この時点で測定していたアンテナ間相関値や受信電力などの情報は干渉信号情報としては保存せず、測定を終了する。以上の処理により、干渉信号特徴量の取得が可能となる。なお、図11では、フローチャートの最後で動作を終了させているが、基本的には、この一連の動作は、ステップS1101に戻って繰り返し継続して行われるものとする。
なお、本実施例のステップS1105とステップS1106、及びステップS1110とステップS1111では、アンテナ間相関値の周波数特性について類似したものがない場合に、受信電力について類似したものがあるかどうかを判定する例を説明したが、干渉信号源を特定するための類否判定方法は、これに限られるものではない。当然、アンテナ間相関値の周波数特性のみを用いて類否判定することも可能であるし、類否判定の順番を入れ替えても良い。
また、本実施例では、送信禁止期間の有無や、希望信号に固有のプリアンブルの有無、PHYヘッダの誤りの有無や、MACヘッダの内容に基づく自局宛通信であるかどうかの確認という4つの判定方法を用いて、受信信号に希望信号が含まれているかどうかを判定している。これらの4つの判定方法は、それぞれ単独で用いることもできるし、さらにこの4つの判定基準以外の基準と組み合わせて用いることもできる。
(実施例2)
図12は、第1の実施形態の実施例2に係る干渉信号抑圧装置(受信局)の構成を示すブロック図である。図12において、実施の形態1の図1と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。
実施の形態1との違いは、干渉信号について測定したアンテナ間相関値を保存する部分、及び、保存したアンテナ間相関値と受信中の信号のアンテナ間相関値とを比較する部分の構成である。実施例2においては、干渉信号について測定したアンテナ間相関値を保存する部分は、希望信号帯域内メモリ121と希望信号帯域外メモリ123とに分けて設けられている。希望信号帯域内メモリ121と希望信号帯域外メモリ123は、判定部111からの命令により情報の保存と読み出しを行う。保存したアンテナ間相関値と受信中の信号のアンテナ間相関値とを比較する部分は、希望信号帯域内比較部122と希望信号帯域外比較部124とに分けて設けられている。
図13は、希望信号帯域内及び希望信号帯域外の双方の成分を出力するサブバンド分離部103、104の構成例を示す図である。サブバンド分離部103とサブバンド分離部104の構成は互いに同じであるので、その一方のサブバンド分離部103の構成について説明する。図13に示されるサブバンド分離部103は、フーリエ変換部125を含む。フーリエ変換部125は、FFT等のフーリエ変換回路を有する。フーリエ変換回路は、サンプリング周波数帯域が、希望信号の周波数帯域を含み、且つ、希望信号の周波数帯域よりも広く設定されている。これにより、フーリエ変換回路は、希望信号の周波数帯域内成分のサブバンド信号と、希望信号の周波数帯域外成分のサブバンド信号とを出力することができる。
図14は、サブバンド分離部103の他の例を示す図である。図14に示されるサブバンド分離部103−1は、図13に示されるフーリエ変換部125に加え、希望信号周波数帯域内通過フィルタ126と、希望信号周波数帯域外通過フィルタ127とを含む。図14に示される例においては、フーリエ変換部125は希望信号周波数帯域内のサブバンド信号を出力する。フーリエ変換部125の前段には希望信号周波数帯域内通過フィルタ126が設けられている。希望信号周波数帯域内通過フィルタ126は、入力信号から希望信号の周波数帯域内成分を抽出する。希望信号周波数帯域内通過フィルタ126と並列に、希望信号周波数帯域外通過フィルタ127が設けられている。希望信号周波数帯域外通過フィルタ127は入力信号から希望信号の周波数帯域外成分を抽出する。復調するのは希望信号の周波数帯域内成分だけでよいので、希望信号周波数帯域内通過フィルタ126の後段にのみフーリエ変換部125を設ければよい。希望信号の周波数帯域内成分と希望信号の周波数帯域外成分とを個別に抽出することにより、周波数分離の際の周波数帯域幅などを個別に設定することができ、回路設計の柔軟性を高めることができる。
干渉信号測定動作は、実施例1の図11に示すフローチャートと基本的には同じである。但し、実施例2においては、アンテナ間相関値の保存を希望信号の信号帯域内と信号帯域外とに分けて行う。また、保存したアンテナ間相関値と受信中の信号のアンテナ間相関値との比較は、以下のように行う。すなわち、干渉信号のみの受信中には、希望信号帯域内メモリ121及び希望信号帯域外メモリ123に記憶されたアンテナ間相関値と、受信中の信号の希望信号周波数帯域内成分及び希望信号周波数帯域外成分についてのアンテナ間相関値とを比較する。受信中の信号に希望信号が含まれる可能性があるときは、信号帯域外メモリ123に記憶されたアンテナ間相関値と受信中の信号の希望信号周波数帯域外成分についてのアンテナ間相関値とを比較する。
なお、実施例2では、必ずしも希望信号帯域内比較部122は必要ではなく、これを省略することもできる。これは、少なくとも希望信号帯域外比較部124において希望信号周波数帯域外でのみ類否判断を行えば、干渉信号の判別を行うことができるからである。この場合であっても、希望信号帯域内メモリ121は必要である。干渉信号の抑圧を行うには、希望信号周波数帯域内についての特徴量が必要であるからである。
ここで本実施形態の構成としては、必ずしも以上に示したものに限られず、種々な構成を用いても良い。また、本発明の適用分野としては、必ずしも以上に示したものに限られず、種々な分野に適用することが可能なものである。一例として、本例ではマルチキャリア変調を用いたCSMAによる無線LANシステムに適用した例を示したが、シングルキャリア変調を用いた無線システムにも適用してもよく、またTDMAやFDMAやCDMAおよびSDMAなど種々のアクセス方式を用いる無線システムに適用してもよい。
なお、サブバンド分離部、アンテナ間相関値検出部、メモリ、比較部、プリアンブル検出部、電力検出部、タイミング検出部、判定部、干渉信号抑圧部、復調部等の各機能ブロックは典型的には集積回路であるLSIとして実現される。これらは個別に1チップ化されても良いし、一部または全てを含むように1チップ化されても良い。
ここではLSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSI、と呼称されることもある。
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサーを利用しても良い。あるいはプロセッサやメモリ等を備えたハードウエア資源においてプロセッサがROMに格納された制御プログラムを実行することにより制御される構成が用いられても良い。
さらには、半導体技術の進歩又は派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行っても良い。バイオ技術の適応等が可能性としてありえる。
次に、本発明の第2の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
(第2の実施形態)
(実施例1)
図15は、第2の実施形態の実施例1に係る干渉信号抑圧装置2020の構成を示すブロック図である。実施例1に係る干渉信号抑圧装置は、無線通信システムにおける受信局として位置付けることができる。以下の説明では、干渉信号抑圧装置を必要に応じて受信局と称するものとする。
図15に示されるように、干渉信号抑圧装置(受信局)2020は、2つのアンテナ2101、2102と、受信信号間特徴量抽出部2103と、記憶部2104と、比較部2105と、判定部2106と、干渉信号抑圧部2107と、復調部2108とを備えている。
図15に示されるアンテナ2101、2102は、受信した信号を受信信号間特徴量抽出部2103と干渉信号抑圧部2107とに出力する。
受信信号間特徴量抽出部2103は、アンテナ2101、2102が受信する信号を入力する。受信信号間特徴量抽出部2103は、受信信号の特徴量として2つのアンテナで受信する2つの信号間の特徴量を算出する。受信信号間特徴量抽出部2103は、算出した特徴量を記憶部2104、比較部2105へそれぞれ出力する。実施例1における受信信号間特徴量の種類は、アンテナ間相関値である。
比較部2105は、受信信号間特徴量抽出部2103が受信中の信号から抽出する特徴量と、記憶部2104に記憶され過去に受信した信号の特徴量とを入力する。比較部2105は、これら特徴量の差を算出する。比較部2105は、算出した特徴量の差を類似度として判定部2106に出力する。類似度とは、受信中の信号の特徴量と、記憶部2104に記憶された特徴量との類似の程度を表す量である。
判定部2106は、比較部2105が出力する類似度と所定の閾値との大小を判断する。判定部2106は、類似度が閾値以上であれば、受信中の信号と特徴量が保存されている過去に受信した干渉信号は同一の干渉信号源から到来した干渉信号であると判定する。また、判定部2106は、類似度が閾値未満であれば、受信中の信号と、特徴量が保存されている過去に受信した干渉信号は互いに異なる送信源から到来した信号であると判定する。なお、類似度が閾値以上である過去に受信した干渉信号の特徴量が複数保存されている場合には、それら複数の過去の干渉信号のうち類似度が最大である信号が、現在受信中の干渉信号と同一の干渉信号源から到来した信号であると判断することもできる。類似度の種類は特に限定されるものではなく、例えば、上記第1の実施形態の場合と同様とすることができるが、後述の如く、受信中の信号のアンテナ間相関値と過去に受信した信号のアンテナ間相関値の複素平面上の距離dとすることもできる。判定部2106は、受信中の干渉信号の判定情報を記憶部2104へ出力する。
記憶部2104は、受信信号間特徴量抽出部2103が抽出する特徴量を記憶する。また、記憶部2104は、判定部2106から干渉信号の判定情報を入力する。記憶部2104は、受信中の干渉信号の判定情報に基づき、受信中の干渉信号と同一の干渉信号源から過去に到来し且つ既に特徴量を保存済みの干渉信号の特徴量を、干渉信号抑圧部2107に入力することができる。第1の実施形態と同様、干渉信号のみが到来したときにその特徴量を希望信号の周波数帯域内および希望信号の周波数帯域外の双方について予め測定し保存しておけばよい。これにより、過去に到来した干渉信号と同一の特徴量を有する干渉信号が希望信号と同時期に到来しても、第1の実施形態と同様、到来中の干渉信号を抑圧することができる。
干渉信号抑圧部2107は、判定部2106が出力した判定情報に基づき記憶部2104が出力した干渉信号の特徴量に基づき、希望信号に重なった干渉信号を抑圧する。復調部2108は、干渉信号が抑圧された希望信号の復調を行う。
なお、2つのアンテナ2101、2102で受信する信号の信号電力が小さい場合は、相対的に熱雑音の影響が大きくなり、判定部2106における判定誤りが発生しやすくなる。従って、この場合には、受信信号間特徴量抽出部2103と、記憶部2104と、比較部2105と、判定部2106での処理を中断してもよい。これにより、判定誤りによる誤動作を防ぐことができる。
ここで、具体的な受信信号間特徴量抽出部2103の構成を説明する。図16は、実施例1における受信信号間特徴量抽出部2103の構成を示すブロック図である。
図16に示されるように、受信信号間特徴量抽出部2103は、2つの直交復調部2201,2202と、相関演算部2203とを含んでいる。
直交復調部2201は、アンテナ2101の受信信号r1を入力する。直交復調部2201は、直交復調により受信信号r1を同相成分r1iと直交成分r1qとに分離し、それぞれの成分を相関演算部2203へ出力する。
同様に直交復調部2202は、アンテナ2102の受信信号r2を入力する。直交復調部2202は、直交復調により受信信号r2を同相成分r2iと直交成分r2qとに分離し、それぞれの成分を相関演算部2203へ出力する。
なお、受信信号間特徴量抽出部2103へ入力される信号が高周波信号や中間周波数信号である場合には受信信号間特徴量抽出部2103内に直交復調部2201、2202が必要である。しかしながら、受信信号間特徴量抽出部2103へ入力される信号が複素ベースバンド信号である場合には、既に直交復調がなされているので、受信信号間特徴量抽出部2103内に直交復調部2201、2202は不要である。
相関演算部2203は、直交復調部2201、2202が出力する4つの成分r1i、r1q、r2i、r2qを入力する。
相関演算部2203は、受信信号間相関値の実部成分r12cReを、
r12cRe=r1i×r2i+r1q×r2q・・・(式2−1)
によって求める。
相関演算部2203は、受信信号間相関値の虚部成分r12cImを、
r12cIm=r1q×r2i−r1i×r2q・・・(式2−2)
によって求める。
相関演算部2203は、特徴量として、実部成分r12cReおよび虚部成分r12cImを、図15に示される記憶部2104および比較部2105へそれぞれ出力する。
これにより、比較部2105には、受信中の信号の受信信号間相関値の実部成分r12cRe、虚部成分r12cImと記憶部2104に記憶され過去に受信した信号の受信信号間相関値の実部成分r’12cRe、虚部成分r’12cImとが入力される。
比較部2105は、受信中の信号の相関値と過去に受信した信号の相関値の複素平面上の距離dを、
d=(r12cRe−r’12cRe)2+(r12cIm−r’12cIm)2・・・(式2−3)
によって求める。
比較部2105は、距離dを類似度として出力する。
図17は、異なる干渉信号源から送信された3つ受信信号A、B、Cの受信信号間相関値を複素平面上に表示した図である。
受信信号A、B、Cの受信信号間相関値の実部成分をrARe、rBRe、rCRe、受信信号間相関値の虚部成分をrAIm、rBIm、rCImで示す。また、受信信号Aと受信信号Bとの受信信号間相関値の距離をdAB、受信信号Bと受信信号Cとの受信信号間相関値の距離をdBC、受信信号Aと受信信号Cとの受信信号間相関値の距離をdACで示す。
図17に示されるように、同一の送信源より送信された信号は、2本のアンテナ間に一定の振幅差、位相差を持った信号となって受信され、干渉信号源により受信信号間に特有の相関値を持つ。このため、異なる干渉信号源より送信された信号同士は距離dAB、dBC、dACで示されるように、受信信号間相関値の間に0より大きい距離を有する。また、同一の干渉信号源より送信された信号同士は受信信号間相関値の間の距離が0となる。
従って、2つのアンテナで受信された信号間の相関値を干渉信号源間で比較することにより、異なる無線通信システムや隣接する周波数チャネルからの漏洩電力など希望信号以外の干渉信号が受信局に到来する場合においても、受信中の干渉信号と過去に受信した干渉信号の送信源が同一かどうかを判別することができる。
受信信号間特徴量抽出部2103の変形例2103−1の構成を説明する。図18は、実施例1における受信信号間特徴量抽出部2103の変形例2103−1の構成を示すブロック図である。
図18に示されるように受信信号間特徴量抽出部2103−1は、2つの直交復調部2201、2202と、相関演算部2203と、位相成分演算部2401とを含む。図18において、図16と同じ構成要素については同じ符号を付し、その説明を省略する。
なお、受信信号間特徴量抽出部2103−1へ入力される信号が高周波信号や中間周波数信号である場合には直交復調部2201、2202が必要である。一方、受信信号間特徴量抽出部2103−1へ入力される信号が複素ベースバンド信号である場合には、既に直交復調がなされているので、受信信号間特徴量抽出部2103−1内に直交復調部2201、2202は不要である。
位相成分演算部2401は、相関演算部2203から出力された受信信号間相関値を表す2つの成分r12cRe、r12cImを入力する。位相成分演算部2401は、受信信号相関値の位相成分r12cθを、
r12cθ=tan-1(r12cIm/r12cRe)・・・(式2−4)
によって求める。位相成分演算部2401は、受信信号間特徴量として位相成分r12cθを図15に示される記憶部2104、比較部2105へ出力する。
これにより、比較部2105には、受信中の信号の受信信号間相関値の位相成分と記憶部2104に記憶され過去に受信した信号の受信信号間相関値の位相成分とが入力される。比較部2105は、これら2つの位相成分の位相差を算出し、その算出値を類似度として判定部2106へ出力する。
図19は異なる干渉信号源から送信された3つ受信信号A、B、Cの受信信号間相関値の位相成分を複素平面上に表示した図である。
受信信号A、B、Cの受信信号間相関値の実部成分をrARe、rBRe、rCRe、受信信号間相関値の虚部成分をrAIm、rBIm、rCIm、受信信号間相関値の位相成分をrAθ、rBθ、rCθで示す。
同一の干渉信号源から送信された信号が振幅変調された信号である場合、振幅変調された信号のシンボル長ごとに受信信号の信号電力が異なる。このため、受信信号間相関値の実部成分rARe、rBRe、rCReや虚部成分rAIm、rBIm、rCImの値が変化する。しかし、振幅変調による信号電力の変化による実部成分rARe、rBRe、rCReと虚部成分rAIm、rBIm、rCImの変化の割合は一定である。このため、受信信号間相関値の位相成分rAθ、rBθ、rCθはシンボル長ごとに一定となる。従って、受信信号間相関値の位相成分rAθ、rBθ、rCθのみを比較することによって、振幅変調された送信信号を受信した際に起こる相関値の変化による判定誤りを避けることができる。従って、振幅変調された信号のシンボル長ごとに受信信号の信号電力が異なっても、受信中の信号と過去に受信した信号の送信源が同一かどうかを正確に判別することができる。
次に、受信信号間特徴量抽出部2103の別の変形例を説明する。図20は、実施例1における受信信号間特徴量抽出部2103−2の構成を示すブロック図である。図20において、図16と同じ構成要素については同じ符号を付し、その説明を省略する。
図20に示されるように、受信信号間特徴量抽出部2103−2は、2つの直交復調部2201、2202と、相関演算部2203と、符号化部2601、2602と、データ変換部2603とを含む。
なお、受信信号間特徴量抽出部2103−2へ入力される信号が高周波信号や中間周波数信号である場合には直交復調部2201、2202が必要である。一方、受信信号間特徴量抽出部2103へ入力される信号が複素ベースバンド信号の場合には、既に直交復調がなされているので、受信信号間特徴量抽出部2103−2内に直交復調部2201、2202は不要である。
符号化部2601は、相関演算部2203から出力された受信信号間相関値を表す2つの成分のうち実部成分を表すr12cReを入力する。
符号化部2601は、
r12cRe>=0ならば0を、
r12cRe<0ならば1を、
ビット情報b12cReとしてデータ変換部2603へ出力する。
同様に、符号化部2602は、相関演算部2203から出力された受信信号間相関値を表す2つの成分のうち虚部成分を表すr12cImを入力する。
符号化部2602は、
r12cIm>=0ならば0を、
r12cIm<0ならば1を、
ビット情報b12cImとしてデータ変換部2603へ出力する。
データ変換部2603は、符号化部2601、2602が出力する2つのビット情報b12cRe、b12cImを入力する。
データ変換部2603は、一つのビット列b12cを、
b12c={b12cReb12cIm}・・・(式2−5)
によって求める。
データ変換部2603は、受信信号間特徴量としてビット列b12cを、図15に示される記憶部2104、比較部2105へ出力する。
データ変換部2603が算出し出力するビット列b12cは、受信信号間相関値が複素平面上の4つの領域(図21参照)のどの領域に存在するかを示す。
比較部2105は、受信中の干渉信号の受信信号間相関値が存在する複素平面上の領域を表すビット列と記憶部2104に記憶され過去に受信した干渉信号の受信信号間相関値が存在する複素平面上の領域を表すビット列とを入力する。比較部2105は、これら2つのビット列の排他的論理和であるビット列を算出し、さらにこのビット列の各ビットの和を算出する。この和は、受信中の干渉信号の受信信号間相関値と過去に受信した干渉信号の受信信号相関値の類似度を示す。
なお、複素平面上の各領域に対する符号割り当ては、領域を表す符号とその領域の隣の領域を表す符号とのハミング距離が1になるように行われる。この場合、2つの受信信号を表す2つのビット列間の排他的論理和を求め、その排他的論理和を表すビット列の各ビットの和を求めるだけで類似度を求めることができる。この類似度は、隣接領域間と非隣接領域間とで値が異なる。また、この類似度は、領域間の離間程度の大小によって値が変わる。具体的には、離間の程度が大きくなるにつれて、上記ハミング距離が大きくなる。よって、この類似度を用いれば、受信中の干渉信号と過去に受信した干渉信号が互いにどれだけ類似しているかの判定を容易に行うことができる。
図21は、異なる干渉信号源から送信された3つ受信信号A、B、Cの位相成分を、4つの領域に分割した複素平面上に表示した図である。
図20に示される受信信号間特徴量抽出部2103−2は、符号化部2601,2602において受信信号の符号化を行う。すると、受信信号Aは“00”、受信信号Bは“01”、受信信号Cは“11”と表される。
さらに、受信信号間特徴量抽出部2103−2は、受信信号A、B、Cを表すビット列同士の排他的論理和を求める。すると、受信信号Aと受信信号B間の排他的論理和は“01”となり、類似度は1となる。受信信号Bと受信信号C間の排他的論理和は“10”となり、類似度は1となる。受信信号Aと受信信号C間の排他的論理和は“11”となり、類似度は2となる。これにより、互いに対角領域に存在する受信信号Aと受信信号Cは、互いに隣接領域に存在する受信信号Aと受信信号Bや受信信号Bと受信信号Cに比べて、受信信号間相関値の相違の程度が大きいことが分かる。
なお、受信中の干渉信号の相関値と過去に受信した干渉信号の相関値の類似度を求める際に、データ変換部2603を用いず、受信中の干渉信号についてのビット情報b12cRe、b12cImと、過去に受信した干渉信号についてのビット情報とを個々に比較し、類似度を求めてもよい。
次に、受信信号間特徴量抽出部2103のさらに別の変形例2103−3を説明する。
図22は、実施例1における受信信号間特徴量抽出部2103−3の構成を示すブロック図である。
図22において、図16と同じ構成要素については同じ符号を付し、その説明を省略する。
図22に示される受信信号間特徴量抽出部2103−3は、図20に示される構成にさらに2つの符号化部を加えたものである。受信信号間特徴量抽出部2103−3は、受信信号間相関値が複素平面上の8つの領域のどの領域に存在するかを判定することができる。図22に示されるように、受信信号間特徴量抽出部2103−3は、2つの直交復調部2201、2202と、相関演算部2203と、符号化部2801・・・2804と、データ変換部2805とを含む。
なお、受信信号間特徴量抽出部2103−3へ入力される信号が高周波信号や中間周波数信号である場合には直交復調部2201、2202が必要である。一方、受信信号間特徴量抽出部2103へ入力される信号が複素ベースバンド信号である場合には、既に直交復調がなされているので、受信信号間特徴量抽出部2103−3内に直交復調部2201、2202は不要である。
符号化部2801は、相関演算部2203から出力された受信信号間相関値を表す2つの成分のうち実部成分を表すr12cReを入力する。
符号化部2801は、
r12cRe>=0ならば0を、
r12cRe<0ならば1を、
ビット情報b12cReとしてデータ変換部2805へ出力する。
符号化部2802は、相関演算部2203から出力された受信信号間相関値を表す2つの成分のうち虚部成分を表すr12cImを入力する。
符号化部2802は、
r12cIm>=0ならば0を、
r12cIm<0ならば1を、
ビット情報b12cImとしてデータ変換部2805へ出力する。
符号化部2803は、相関演算部2203から出力された受信信号間相関値を表す2つの成分r12cRe、r12cImを入力する。
符号化部2803は、
r12cRe+r12cIm>=0ならば0を、
r12cRe+r12cIm<0ならば1を、
ビット情報b12cRe+Imとしてデータ変換部2805へ出力する。
符号化部2804は、相関演算部2203から出力された受信信号間相関値を表す2つの成分r12cRe、r12cImを入力する。
符号化部2804は、
r12cRe−r12cIm>=0ならば0を、
r12cRe−r12cIm<0ならば1を、
ビット情報b12cRe-Imとしてデータ変換部2805へ出力する。
データ変換部2805は、符号化部2801〜2804が出力する4つのビット情報b12cRe、b12cIm、b12cRe+Im、b12cRe-Imを入力する。
データ変換部2805は、一つのビット列b12cを、
b12c={b12cReb12cImb12cRe+Imb12cRe-Im}・・・(式2−6)
によって求める。
データ変換部2805は、受信信号間特徴量としてビット列b12cを、図15に示される記憶部2104、比較部2105へ出力する。
データ変換部2805が算出し出力するビット列b12cは、受信信号間相関値が複素平面上の8つの領域(図23参照)のどの領域に存在するかを示す。
比較部2105は、受信中の干渉信号の受信信号間相関値が存在する複素平面上の領域を表すビット列と記憶部2104に記憶され過去に受信した干渉信号の受信信号間相関値が存在する複素平面上の領域を表すビット列とを入力する。比較部2105は、これら2つのビット列の排他的論理和を求める。比較部2105は、さらにこの排他的論理和が表すビット列の各ビットの和を求める。この和は、受信中の干渉信号の受信信号間相関値と過去に受信した干渉信号の受信信号相関値の類似度を示す。
なお、複素平面上の各領域に対する符号割り当ては、領域を表す符号とその領域の隣の領域を表す符号とのハミング距離が1になるように行われる。この場合、2つの受信信号を表す2つのビット列間の排他的論理和を求め、その排他的論理和を表すビット列の各ビットの和を求めるだけで類似度を求めることができる。この類似度は、隣接領域間と非隣接領域間とで値が異なる。また、この類似度は、領域間の離間程度の大小によって値が変わる。具体的には、離間の程度が大きくなるにつれて、上記ハミング距離が大きくなる。よって、この類似度を用いれば、受信中の干渉信号と過去に受信した干渉信号が互いにどれだけ類似しているかの判定を容易に行うことができる。
図23は異なる干渉信号源から送信された3つ受信信号A、B、Cの位相成分を、8つの領域に分割した複素平面上に表示した図である。
図22に示される受信信号間特徴量抽出部2103−3は、受信信号の符号化を行う。すると、受信信号Aは“0000”、受信信号Bは“1011”、受信信号Cは“1111”と表される。
受信信号間特徴量抽出部2103−3は、さらに、受信信号A、B、Cのビット列同士の排他的論理和を求める。すると、受信信号Aと受信信号B間では出力は“1011”となり、類似度は3となる。受信信号Bと受信信号C間で排他的論理和は“0100”となり、類似度は1となる。受信信号Aと受信信号C間で排他的論理和は“1111”となり、類似度は4となる。これにより、互いに対角領域に存在する受信信号Aと受信信号Cは、互いに隣接領域に存在する受信信号Aと受信信号Bや受信信号Bと受信信号Cに比べて、受信信号間相関値の相違の程度が大きいことが分かる。また複素平面を4つの領域に分割した場合に比べて判別精度が向上する。
なお、受信中の干渉信号の相関値と過去に受信した干渉信号の相関値の類似度を求める際に、データ変換部2805を用いず、受信中の干渉信号についてのビット情報情報b12cRe、b12cIm、b12cRe+Im、b12cRe-Imと、過去に受信した干渉信号についてのビット情報とを個々に比較し、類似度を求めてもよい。
なお、さらに受信信号間相関値の判別精度を上げるために、複素平面上の領域数をさらに増やしてもよい。
(実施例2)
図24は、第2の実施形態の実施例2に係る干渉信号抑圧装置(受信局)の構成を示すブロック図である。図24において、図15と同じ構成要素については同じ符号を付し、その説明を省略する。
実施例2の干渉信号抑圧装置(受信局)に対する無線送信局は、送信信号を周波数分割多重化する。送信信号はF個の送信信号ベクトルから成る。ただし、Fは周波数分割多重信号が持つ周波数成分の数で、2以上の整数である。
そのため、図24に示されるように、干渉信号抑圧装置(受信局)は、2つのアンテナ2101、2102と、受信信号をそれぞれF個の周波数領域に分離する2つの周波数分離部21001、21002と、F個の受信信号間特徴量抽出部2103と、F個の記憶部2104と、F個の比較部2105と、F個の判定部2106と、F個の干渉信号抑圧部2107と、復調部21003とを備える。
図24に示される周波数分離部21001、21002は、アンテナ2101、2102が受信する信号を入力する。周波数分離部21001、21002は、入力信号に対して周波数分離を実施し、周波数多重化された受信信号をF個の周波数成分に分離する。周波数分離部21001、21002は、分離した信号をそれぞれの周波数成分に対応する受信信号間特徴量抽出部2103へ出力する。
なお、周波数多重化されていない受信信号に対して周波数分離を行ってもよい。これにより、周波数多重化されていない受信信号が各周波数成分に分離される。周波数分離にはFFTやウエーブレット変換またはフィルタバンクなどを用いることができる。無線信号の各シンボルがOFDM変調されている場合は、OFDM復調のためのFFTを用いてもよい。
なお、雑音等の影響を軽減するために受信信号の周波数成分間で平均化を行ってもよい。また、受信信号特徴量抽出部2103が出力する受信信号間特徴量に対して平均化を行ってもよい。
受信信号間特徴量抽出部2103と、記憶部2104と、比較部2105と、判定部2106と、干渉信号抑圧部2107は、それぞれの処理を周波数成分ごとに実施する。干渉信号抑圧部2107は、周波数成分ごとに希望信号に重なった干渉信号を抑圧する。復調部21003は、干渉信号が抑圧された希望信号の復調を行う。
なお、具体的な受信信号間特徴量抽出部2103の構成としては、例えば実施例1に用いた構成を用いることができる。
(実施例3)
図25は、第2の実施形態の実施例3に係る干渉信号抑圧装置(受信局)の構成を示すブロック図である。図25において、図15、図24と同じ構成要素については同じ符号を付し、その説明を省略する。
実施例3の干渉信号抑圧装置(受信局)は、送信信号を周波数分割多重化する。送信信号はF個の送信信号ベクトルから成る。ただし、Fは周波数分割多重信号が有する周波数成分の数で、2以上の整数である。
図25に示されるように、干渉信号抑圧装置(受信局)は、2つのアンテナ2101、2102と、2つの周波数分離部21001、21002と、F個の受信信号間特徴量抽出部2103と、データ変換部21101と、記憶部2104と、比較部2105と、判定部2106と、F個の干渉信号抑圧部2107と、復調部21003とを備える。
図25に示されるデータ変換部21101は、各周波数成分についての受信信号間特徴量抽出部2103が出力する各周波数成分の受信信号間特徴量を入力する。データ変換部21101は、各周波数成分の受信信号間特徴量を一列のビット列に変換する。データ変換部21101は、受信信号間特徴量のビット列を記憶部2104、比較部2105へそれぞれ出力する。
記憶部2104と、比較部2105と、判定部2106のそれぞれの処理は、実施例1と同様に実施される。各周波数成分に対応する干渉信号抑圧部2107は、判定部2106が出力した判定情報に基づき記憶部2104が出力した干渉信号の特徴量に基づき、希望信号に重なった干渉信号を抑圧する。復調部21003は、干渉信号が抑圧された希望信号の復調を行う。
なお、具体的な受信信号間特徴量抽出部2103の構成は、実施例1に用いた構成とすることができる。
データ変換部21101の具体的な処理について、図26を用いて説明する。
各周波数成分に対応する受信信号間特徴量抽出部21201〜2120Fは、実施例1と同様、複素平面を例えば4つの領域(図17参照)に分割して符号化を行うことができる。
F個の受信信号間特徴量抽出部21201〜2120Fはそれぞれ、F個の周波数成分f1〜fFについて2ビットのビット列である受信信号間特徴量bf1〜bfFを算出する。受信信号間特徴量抽出部21201〜2120Fは、受信信号間特徴量bf1〜bfFをそれぞれデータ変換部21101へ出力する。
データ変換部21101は、F個の受信信号間特徴量抽出部21201〜2120Fがそれぞれ出力するF個の受信信号間特徴量bf1〜bfFを入力する。データ変換部21101は、受信信号間特徴量ビット列bfを、
bf={bf1bf2bf3bf4・・・bfF}・・・(式2−7)
によって求める。
データ変換部21101は、受信信号間特徴量のビット列bfを図25に示される記憶部2104、比較部2105へ出力する。この時、受信信号間特徴量のビット列bfのビット数は、2×Fとなる。
なお、ビット列の順序は周波数成分のf1を先頭にしなくてもよい。ビット列の順序は、全ての受信信号に対して同じ順序となるように変換を行えば、どのような順序でもよい。
図26に示されるように、データ変換部21101へ、受信信号間特徴量抽出部21201から受信信号間特徴量bf1として“00”、受信信号間特徴量抽出部21201から受信信号間特徴量bf1として“00”、受信信号間特徴量抽出部21202から受信信号間特徴量bf2として“01”、受信信号間特徴量抽出部21203から受信信号間特徴量bf3として“11”、受信信号間特徴量抽出部21204から受信信号間特徴量bf4として“00”、受信信号間特徴量抽出部2120Fから受信信号間特徴量bfFとして“01”が入力される。この場合、データ変換部21101からの出力bf1bf2bf3bf4・・・bfFは、“00011100・・・01”となる。
比較部2105は、データ変換部21101が出力する受信信号間特徴量のビット列と記憶部2104に記憶され過去に受信した信号の受信信号間特徴量のビット列とを入力する。比較部2105は、これら2つのビット列の排他的論理和を求め、その排他的論理和のビット列の各ビットの和を求める。この和が類似度である。これにより、すべての周波数成分の受信信号間特徴量の比較を容易に行うことができ、受信中の干渉信号と過去に受信した干渉信号の送信源が同一かどうかを正確に判別することができる。よって、干渉信号抑圧の精度が高まる。
ここで本発明に係る無線送信装置の構成としては、必ずしも以上に示したものに限られず、種々な構成を用いてもよい。また、本発明の適用分野としては、必ずしも以上に示したものに限られず、種々な分野に適用することが可能なものである。一例として、本例ではCSMAによる無線LANシステムに適用した例を示したが、TDMAやFDMAやCDMAおよびSDMAなど種々のアクセス方式を用いる無線システムに適用してもよい。
なお、周波数変換部、干渉検出部、送信タイミング制御部、パケット送信部、送信パケット長制御部、パケット分割部などの各機能ブロックは典型的には集積回路であるLSIとして実現される。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部または全てを含むように1チップ化されてもよい。
ここではLSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
また、集積回路化の手法はLSIに限るものでなく、専用回路又は汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programabble Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル、プロセッサを利用してもよい。あるいはプロセッサやメモリ等を備えたハードウエア資源においてプロセッサがメモリに格納された制御プログラムを実行することにより制御される構成が用いられてもよい。
さらには、半導体技術の進歩又は派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適応等が可能性としてあり得る。
以下、本発明の第3の実施形態について説明する。
(第3の実施形態)
(実施例1)
第3の実施形態の実施例1に係る干渉信号抑圧装置を備えた無線通信システム全体の構成および動作を説明する。実施例1に係る干渉信号抑圧装置は、無線通信システムにおける受信局として位置付けることができる。以下の説明では、干渉信号抑圧装置を必要に応じて受信局と称するものとする。
図27は、実施例1に係る干渉信号抑圧装置を備えた無線通信システムの一例を示す模式図である。図27に示されるように、実施例1に係る干渉信号抑圧装置(受信局)3302を備えた無線通信システムは、送信局3301、受信局3302、無線局A3303、無線局B3304、無線局C3305、無線局D3306を備えている。無線局A乃至Dは、いずれも干渉信号を送信する干渉局である。
受信局3302は、送信局3301からの無線信号3307を受信する。無線局A3303と無線局B3304は、送信局3301と受信局3302が使用している周波数チャネルに隣接する下側の周波数チャネルを使用して互いに通信を行う。また無線局C3305と無線局D3306は、送信局3301と受信局3302が使用している周波数チャネル(自通信周波数チャネル)に隣接する上側の周波数チャネルを使用して互いに通信を行う。
ここでは、送信局3301と無線局A3303および無線局C3305が同時に無線信号を送信した場合を考える。この場合、受信局3302には送信局3301及び無線局A3303、無線局C3305からの無線信号3307、3308、3310が到達する。お互いの無線局の位置関係によっては、送信局3301からの希望無線信号3307に対して、無線局A、無線局Cからの干渉無線信号3308、3310がより強いレベルで受信局3302に到達することも考えられる。
このとき受信局3302が受信する無線信号の周波数と信号レベルを示すスペクトラムを図28に示す。無線信号が広帯域信号であり、且つ、送信パワーアンプによる非線形歪が該無線信号に生じた場合、以下のような干渉状態が生じる。すなわち、図28に示されるように、自通信周波数チャネルに隣接する下側周波数チャネルおよび上側周波数チャネルから、自通信周波数チャネルに一部のスペクトラムが漏洩する。この漏洩スペクトラムは、自通信周波数チャネルにとって無視できないレベルで発生する。図28に示される例の場合、希望無線信号スペクトラム3307に対して上下両側の隣接周波数チャネルからの無線信号スペクトラム3308と3310が、干渉信号として希望信号の受信および復調に影響する。
以下、実施例1の構成と、図28に示される状況における実施例1の動作例を説明する。
図29は、実施例1における干渉信号抑圧受信装置3302の構成を示すブロック図である。図29に示されるように、干渉信号抑圧受信装置3302は、アンテナ3101、3102と、サブバンド分離部3103、3104と、干渉信号アンテナ間相関値検出部3105と、メモリ3106と、干渉信号判定部3107と、干渉信号算出部3108と、希望信号伝搬路推定部3109と、重み係数算出部3110と、干渉信号抑圧重み付き合成部3111と、復調部3112とを備えている。
続いて各部の動作の概要を説明する。
サブバンド分離部3103、3104は、アンテナ3101、3102で受信された信号を複数のサブバンド信号に分離する。サブバンド分離には、例えばFFT(fast Fourier transform)やウェーブレット変換またはフィルタバンクなどを用いることができる。無線信号の各シンボルがOFDM変調されている場合はOFDM復調のためのFFTを用いてもよい。なお図29では、サブバンド分離部3103、3104をアンテナ入力ごとに設けているが、2つのアンテナ3101,3102からの信号を1つのサブバンド分離部に入力し、複数のサブバンドに分離した受信信号を時分割で使用するようにしてもよい。
アンテナ間相関値検出部3105は、サブバンド毎にアンテナ間相関値を検出する。異なる方向から送信された信号は異なるアンテナ間相関値を有している。そのため、アンテナ間相関値から、空間的に干渉信号源の位置等を特定し、干渉信号源を判別することができる。すなわち、受信信号の特徴量として、複数のアンテナを用いてアンテナ間相関値を求める構成を採用した場合、既知の信号ではなく未知の信号を受信した場合であっても、互いに異なる位置にある干渉局を判別することができる。なお、受信信号に希望信号が含まれるか否かは、例えば第1の実施形態と同様、図示しないプリアンブル検出部等を設け、プリアンブル検出部等で受信信号中に希望信号に固有のプリアンブルが検出されるか否かにより判定することができる。受信信号に希望信号が含まれないと判定された場合は、受信信号が干渉信号であると判定される。干渉信号であると判定された受信信号のアンテナ間相関値は、干渉信号のアンテナ間相関値としてメモリ3106に保存される。
なお、ここでは受信信号の特徴量としてアンテナ間相関値を用いる例を示したが、干渉局毎に異なる値を示すものであれば、特徴量の種類は特に限定されるものではない。特徴量の例としては、例えば、複数のアンテナで受信した受信信号間の共分散行列、複数のアンテナで受信した複数の受信信号を重み付きで合成し干渉信号抑圧を行うための重み係数、複数のアンテナで受信した複数の受信信号の各受信電力値、複数のアンテナで受信した複数の受信信号の平均受信電力値等を挙げることができる。なお、単独では判別精度の低い特徴量でも、組み合わせて用いることで干渉局の判別精度を上げることができる。
メモリ3106は、アンテナ間相関値検出部3105で検出された干渉信号の相関値を、対応する干渉局に関連付けて記憶する。対応する干渉局への関連付けは、例えば各相関値に対し、対応する干渉局毎に異なる識別子を付すことにより行うことができる。
ここで、アンテナ間相関値検出部3105で検出される相関値の具体例を示す。2つのアンテナ3101、3102で受信された干渉信号をそれぞれu1、u2とし(式3−1)、これら干渉信号を行列Uで表すと、相関値は式3−2に示すRUUのように求めることができる。
干渉信号のアンテナ間相関値がメモリ3106に保存された状態で、希望信号を含む信号が受信されると、干渉信号判定部3107は以下の動作を行う。すなわち、干渉信号判定部3107は、アンテナ間相関値検出部3105で検出されたアンテナ間相関値とメモリ3106に保存されたアンテナ間相関値とを比較する。干渉信号判定部3107は、その比較により類似度の高いものを選択する。この選択は、複数のサブバンドに分離された受信中の干渉信号のサブバンド毎に行われる。
アンテナ間相関値同士の類似度の判定基準の一例としては、アンテナ間相関値の差分を挙げることができる。干渉信号判定部3107は、メモリ3106に保存されているアンテナ間相関値と、受信中の干渉信号のアンテナ間相関値の差分を算出する。干渉信号判定部3107は、その差分が最小となるアンテナ間相関値が、受信中の干渉信号と同一の干渉信号源から到来した干渉信号のアンテナ間相関値である、と判定する。この判定は、サブバンド毎に行われる。これにより、後述の干渉信号算出部3108は、過去に受信した干渉信号であって干渉信号判定部3107において受信中の干渉信号と同一の干渉信号源から到来したと判断された干渉信号のアンテナ間相関値を、サブバンド毎に適切に保存データから選択することができる。
干渉信号算出部3108は、メモリ3106に保存されている複数の干渉局についてのアンテナ間相関値の中から、干渉信号抑圧に用いるべきアンテナ間相関値を、サブバンド毎に選択(抽出)する。干渉信号算出部3108は、選択・合成などの演算により、干渉信号抑圧に用いるのに最適な、式3−2に示されるアンテナ間相関値RUUをメモリ3106の保存データの中からサブバンドごとに選択する。干渉信号算出部3108は、選択したアンテナ間相関値RUUをサブバンド毎に重み係数算出部3110へ出力する。サブバンド毎に選択されたアンテナ間相関値RUUは、重み係数算出部3110において、重み付け合成のための重み係数の算出に用いられる。
図28に示される例の場合、アンテナ間相関値の周波数特性3308を有する干渉信号、および、アンテナ間相関値の周波数特性3310を有する干渉信号からの各漏洩スペクトラムに対処すべく、干渉信号算出部3108は、アンテナ間相関値を以下の如く選択する。すなわち、干渉信号算出部3108は、周波数領域3401内のサブバンドの漏洩スペクトラムについて干渉信号3308のアンテナ間相関値を選択し、周波数領域3402内のサブバンドの漏洩スペクトラムについて干渉信号3310のアンテナ間相関値を選択し、出力する。
希望信号伝搬路推定部3109は、受信信号に含まれる希望信号のプリアンブル(トレーニング)信号に基づいて、希望信号を送信する希望局からアンテナ3101、3102までの伝搬路をサブバンドごとに推定する。
伝搬路を推定する最も一般的な方法としては、実際に受信したプリアンブル信号rpを受信局側で既知である、送信時のプリアンブル信号tpで除算することにより、式3−3で示されるように伝搬路を推定する方法を挙げることができる。伝搬路推定値は、式3−3で示される如くhで表される。
実施例1における受信局では、希望信号伝搬路推定部3109は、2つのアンテナでの受信信号について、伝搬路推定値をそれぞれh1、h2とし、式3−4に示される行列Hをサブバンドごとに算出する。希望信号伝搬路推定部3109は、その行列Hを重み係数算出部3110へ出力する。
重み係数算出部110では、希望信号の伝搬路推定部3109で推定された伝搬路推定値と干渉信号算出部3108で算出された干渉信号のアンテナ間相関値とから、各アンテナからの受信信号を干渉信号が抑圧されるように合成するための重み係数をサブバンドごとに算出する。重み係数の算出に用いられる算出式の一例を式3−5に示す。MMSE法を適用した干渉信号抑圧のための合成の重み係数をWとする。重み係数Wは、干渉信号算出部3108の出力RUUと希望信号の伝搬路推定部3109の出力Hとから、式3−5に示されるようにサブバンドごとに求めることができる。
さらに干渉信号抑圧重み付き合成部3111は、重み係数算出部3110で算出された重み係数Wに基づきサブバンド分離部3103、3104からの出力である受信信号を合成して出力する。ここでは2つのアンテナからの受信信号をr1、r2とする。これら受信信号を式3−6に示す如く行列rで表すと、重み付き合成後の信号sは式3−7に示す式で表される。干渉信号抑圧重み付き合成部3111は、この合成処理をサブバンドごとに行う。これにより、各サブバンドについて干渉信号が抑圧された受信信号、すなわち希望信号が得られる。希望信号は復調部3112へ出力される。
復調部3112は、干渉信号抑圧重み付き合成部3111からの出力である、干渉信号が抑圧された受信信号、すなわち希望信号(式3−7に示されるs)に対して復調処理を行う。
次に、実施例1における処理の手順を、図30に示されるフローチャートを用いて説明する。
まず、ステップS3701で、受信局3302は、複数の位置で信号を受信する。ここでは、2つのアンテナで信号を受信し、その受信信号に基づいて干渉信号抑圧を行う場合について説明する。
次のステップS3702で、受信局3302は、受信した信号を複数のサブバンドに分離する。
次のステップS3703で、受信局3302は、受信した信号について特徴量を算出する。ここで算出される特徴量は、受信信号に含まれる干渉信号を判別可能なものであれば、どのような値を用いても良い。ここでは、一例として複数のアンテナで受信した信号のアンテナ間の相関値を特徴量として用いている。
次のステップ3704で、受信局3302は、受信した信号に希望信号が含まれるかどうかを判定する。ここで希望信号が含まれないと判断された場合は、ステップ3705に移り、希望信号が含まれると判断された場合はステップ3706に移る。
ステップ3705で、受信局3302は、干渉信号をその特徴量に基づき干渉局に対応付けて判別し、干渉信号の特徴量を対応する干渉局に関連付けて保存し、処理を終了する。
ステップ3706で、受信局3302は、受信信号の特徴量と、過去に受信した干渉信号の特徴量であってステップ3705で保存された特徴量との類似度を求め、ステップ3707に移行する。
ステップ3707で、受信局3302は、ステップ3706で求められた類似度に基づいて、サブバンドごとに受信信号に含まれると判断される干渉信号を判定し、重み付き合成に用いられる干渉信号の特徴量をサブバンド毎に求めて出力する。実施例1では、サブバンドごとに受信電力が最大である干渉信号の特徴量を選択して、重み付き合成に用いる干渉信号の特徴量とする。
ステップ3708で、受信局3302は、受信信号に含まれる希望信号のプリアンブルに基づいて、希望信号の伝搬路推定を行う。
ステップ3709で、受信局3302は、ステップ3707で求めた干渉信号の特徴量と、ステップ3708で求めた希望信号の伝搬路推定値とから、重み付き合成の際に用いる重み係数を算出する。
ステップ3710で、受信局3302は、ステップ3709で算出した重み係数に基づいて、2つのアンテナで受信した信号を重み付き合成して、処理を終了する。
以上の処理により、実施例1の干渉信号抑圧受信装置は、干渉信号が適切に抑圧された信号を得ることができる。
実施例1の構成によれば、干渉信号のみが到来しているときは、干渉信号の特徴量測定をサブバンドごとに行いその結果を保存し、希望信号到来時には希望信号と重なって到来している干渉信号の特徴量をサブバンドごとに抽出する。これにより、同時に到来する複数の干渉信号に対して干渉信号抑圧を行うための受信信号重み付き合成が可能になる。つまり、同時に複数の干渉局から干渉信号が受信される状況下においても安定した希望信号の受信、復調を行うことができる。
また、サブバンドごとに重み係数Wの算出に用いる干渉信号の算出処理を行うことで、2つのアンテナしか備えない無線受信装置であっても、同時に到来する2つ以上の干渉信号に適応した干渉信号抑圧を行うことが可能になる。
(実施例2)
続いて実施例1と異なる干渉信号算出部3108の別の動作について具体的な例を挙げて説明する。
実施例1の場合と同様に、図27における送信局3301と無線局A3303および無線局C3310が同時に無線信号を送信した場合を考える。受信局3302にはそれぞれの送信局3301及び無線局A3303、無線局C3305からの無線信号3307、3308、3310が到達する。お互いの無線局の位置関係によっては、送信局3301からの希望無線信号3307に対して、無線局A3303、無線局C3305からの干渉無線信号3308、3310が強いレベルで受信局3302に到達する。
このとき受信局3302が受信する無線信号の周波数と信号レベルを示すスペクトラムを図31に示す。無線信号が広帯域信号であり、該無線信号に送信パワーアンプによる非線形歪が生じた場合、図31に示されるように、自通信チャネルに対して上側および下側の隣接チャネルから自通信チャネル内へ漏洩スペクトラムが無視できないレベルで発生し得る。図31に示される例の場合、特徴量周波数特性3307を有する希望信号に対し、特徴量周波数特性3310、3308を有する上側および下側の隣接チャネルからの漏洩スペクトラムが、干渉信号として影響する。
実施例2に係る干渉信号抑圧装置(受信局)における干渉信号算出部3108は、干渉信号判定部3107から入力した干渉信号の判定情報に基づき、サブバンド毎に存在する複数の干渉局からの干渉信号をサブバンド毎に合成あるいは平均することにより、重み付き合成に用いる干渉信号の相関値をサブバンド毎に得ることができる。ここで得た干渉信号の相関値は、重み係数算出部3110へ出力される。
ここに言う「干渉信号を合成する」とは、サブバンド毎に存在する複数の干渉局からの干渉信号について求めた実施例1における相関値RUUの各要素を単純に加算処理したものである。また「干渉信号を平均する」とは、実施例1における相関値RUUの各要素を単純加算した値を、さらに加算に用いたRUUの個数で除したものである。
図31に示される例の場合、特徴量周波数特性3308、3310を有する干渉信号からの各漏洩スペクトラムに対処すべく、干渉信号算出部3108は以下の処理を行う。すなわち、干渉信号算出部3108は、周波数範囲3601のサブバンドでは干渉信号3308の相関値を選択し、周波数範囲3602のサブバンドでは、干渉信号3308と干渉信号3310の相関値を合成・あるいは平均した値を求め、周波数範囲3603のサブバンドでは干渉信号3310の相関値を選択する。干渉信号算出部3108は、選択した値、合成或いは平均した値、選択した値をそれぞれ出力する。
次に、実施例2における処理の手順を説明する。実施例2の処理の手順は、実施例1と比較して、図30のステップ3701からステップ3706及びステップ3708からステップ3710は同様であり、ステップ3707のみが異なる。
ステップ3707で、受信局3302は、ステップ3706で求められた類似度に基づき、受信信号に含まれると判断される干渉信号をサブバンドごとに判別する。これにより、受信局3302は、重み付き合成に用いられる干渉信号の特徴量をサブバンド毎に求める。求めた値は重み係数算出部3110へ出力される。実施例2では、図31に示される周波数領域602の如く受信信号に複数の干渉信号が含まれる場合は、含まれる干渉信号の特徴量を加算または平均したものを重み付き合成に用いる干渉信号の特徴量とする。
以上の処理により、複数の干渉信号が同時に到来した場合であっても、それら干渉信号を適切に抑圧することが可能になる。
また、実施例2では、2つのアンテナしか備えない干渉信号抑圧装置(受信局)であっても、同時に到来する2つ以上の干渉信号に適応した干渉信号抑圧を行うことが可能になる。
(実施例3)
ここでは、実施例1及び実施例2とは異なる干渉信号算出部3108の動作について説明する。送信局3301と無線局A3303が同時に無線信号を送信した場合を考える。この場合、受信局3302には送信局(希望局)3301からの希望信号3307及び無線局A3303からの干渉信号3308が到来する。
このとき受信局3302が受信する無線信号の周波数と信号レベルを示すスペクトラムを図32に示す。図32に示される例の場合、希望無線信号3307に対して下側の隣接チャネルからの無線信号3308が、干渉信号として影響する。
ここで実施例3に係る干渉信号抑圧装置(受信局)3302における干渉信号算出部3108は、希望信号伝搬路推定部3109の出力値である希望信号の伝搬路推定値から、復調に必要とされるCINR(信号電力対干渉雑音電力比)を算出し、このCINRを基にサブバンドごとに閾値を設定する。この閾値を超えた電力の干渉信号が受信されるサブバンドでは干渉信号の相関値を出力する。しかし閾値以下の電力の干渉信号しか受信されないサブバンドでは、MRC(最大比合成)を行うために相関値の出力を0にするか或いは干渉信号の電力値のみを出力する。このような出力に設定しても、重み付き合成後の復調には干渉信号の影響が及ばない。
図32に示される例の場合、復調に必要とされるCINRを閾値3501で表している。特徴量周波数特性3307(図示された特徴量は信号受信電力である)を有する希望信号の周波数帯域内で、サブバンドごとに閾値3501を設定する。その上で周波数特性3308を有する干渉信号からの漏洩スペクトラムに対処すべく、周波数範囲3502のサブバンドでは干渉信号3308の相関値を選択して出力し、周波数範囲3503のサブバンドでは0もしくは干渉信号の電力値を出力する。相関値を選択し出力するか、又は、0若しくは干渉信号の電力値を出力するかは、干渉信号の受信電力が閾値3501より大きいか或いは小さいかで決定される。
次に、実施例3における処理の手順を説明する。実施例3の処理の手順は、実施例1と比較して、図30のステップS3701からステップS3706及びステップS3708からステップS3710は同様であり、ステップS3707のみが異なる。
ステップS3707で、受信局3302は、ステップS3706で求められた類似度に基づいて、サブバンドごとに受信信号に含まれると判断される干渉信号を判定し、重み付き合成に用いられる干渉信号の特徴量(アンテナ間相関値等)を求めて出力する。実施例3では、受信局3302は、復調に必要とされるCINRに基づいてサブバンドごとに閾値を設定する。受信局3302は、この閾値を超えた大きさの電力の干渉信号が受信されるサブバンドに対しては受信した干渉信号の相関値(アンテナ間相関値等)を出力し、閾値を超えない大きさの電力の干渉信号が受信されるサブバンドでは0若しくは干渉信号の電力値のみを、重み付き合成に用いる干渉信号の特徴量とし、出力する。
以上の処理により、干渉信号が適切に抑圧された信号を得ることが可能になる。
以上の干渉信号の算出処理を行うことで、サブバンドごとに不要な重み付き合成を行わずに、到来する干渉信号に適応した干渉信号抑圧を行うことが可能になる。
また、実施例3における干渉信号算出部3108の動作は、実施例1あるいは実施例2における、干渉信号算出部3108の動作と組み合わせることも当然可能である。
なお、本発明の各実施例1における干渉信号抑圧受信装置の各機能ブロックは、典型的には集積回路であるLSIとして実現される。これらは個別に1チップ化されても良いし、一部または全てを含むように1チップ化されても良い。
ここではLSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSI、と呼称されることもある。
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサーを利用しても良い。あるいはプロセッサやメモリ等を備えたハードウエア資源においてプロセッサがROMに格納された制御プログラムを実行することにより制御される構成が用いられても良い。
さらには、半導体技術の進歩又は派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行っても良い。バイオ技術の適応等が可能性としてありえる。
以下、本発明の第4の実施形態について説明する。
(第4の実施形態)
(実施例1)
第4の実施形態の実施例1に係る干渉信号抑圧装置を用いた無線通信システムについて説明する。図33は、実施例1に係る干渉信号抑圧装置(受信局412)を用いた無線通信システムの構成を示す模式図である。図33に示されるように、無線通信システムは、送信局411と、受信局412と、干渉局413、414を備えている。実施例1に係る干渉信号抑圧装置は、受信局412に相当する。実施例1では、干渉信号及び他の干渉信号の特徴量を互いに関連付けて記憶して特徴量テーブルを作成し、この特徴量テーブルの情報を用いて干渉信号抑圧を行う。以下の説明では、特徴量テーブルを作成するために干渉信号の特徴量等を測定する時期を「干渉信号測定時」、この特徴量テーブルの情報を用いて干渉信号抑圧を行う時期を「干渉信号抑圧時」と称することにする。
送信局411は受信局412宛の送信データを無線信号415に変換して送信する。受信局412は無線信号415を受信して復調を行い送信局411からの送信データを得る。これらの動作により送信局411と受信局412の間で通信が行われる。
一方、干渉局413と干渉局414が互いに通信を行うものとする。干渉局413は干渉局414宛の無線信号416を送信し、干渉局414はこれを受信する。また、干渉局414は干渉局413宛の無線信号417を送信し、干渉局413はこれを受信する。つまり、干渉局413と干渉局414は互いに通信相手局である。
ここでは、送信局411と受信局412が使用する通信チャネルと、干渉局413と干渉局414が使用する通信チャネルとは別チャネルである場合を例にとって説明する。
ここでは、各無線局は同じアクセス方式を使用しているものとする。例えば、IEEE802.11規格のCSMA/CA方式を使用しているものとする。このアクセス方式では、無線局に送信の優先順位を与えるために、パケットとパケットの間に所定のフレーム間隔を空けることが規定されており、フレーム間隔が短い順にSIFS(Short Inter Frame Space)、PIFS(Point Coordination IFS)、DIFS(Distributed Coordination IFS)などが規定されている。最も優先度の高いSIFSは、確認応答(ACK)パケットの送信、送信要求(RTS)/受信準備完了(CTS)パケットの送信、分割(フラグメント)したパケットの送信等に用いられる。
ここでは、干渉信号測定を行う場合において、通信相手局を判定するための所定の時間間隔、及び、干渉信号抑圧を行う場合において、到来した干渉信号を送信した干渉局を判定するための所定の時間間隔がSIFSである場合を例に説明を行う。
図34は、実施例1に係る干渉信号抑圧装置の構成を示すブロック図であり、上記の如く受信局412に適用した場合の構成を示している。
受信局412の構成について、まず、請求の範囲の文言を使って概要を説明する。
受信局412は、受信信号中の干渉信号を抑圧するための装置であって、干渉信号特徴量測定部と、第一の時間間隔測定部と、他の干渉信号特徴量測定部と、特徴量記憶部と、希望信号検知部と、第二の時間間隔測定部と、時間間隔判定部と、特徴量選択部と、干渉信号抑圧部とを備えている。
干渉信号特徴量測定部は、到来した干渉信号の特徴量を測定するものである。干渉信号特徴量測定部は、図34における干渉信号抑圧部427に相当する。
第一の時間間隔測定部は、干渉信号の終了から他の干渉信号の到来までの時間間隔を測定するものである。第一の時間間隔測定部は、図34における時間間隔測定部424に相当する。なお、以下の説明では、上記干渉信号を送信する干渉局を第一の干渉局とし、上記他の干渉信号を送信する干渉局を第二の干渉局と称することとする。
他の干渉信号特徴量測定部は、干渉信号の終了から他の干渉信号の到来までの時間間隔が所定間隔である場合に、他の干渉信号の特徴量を測定するものである。他の干渉信号特徴量測定部は、図34における干渉信号抑圧部427に相当する。
特徴量記憶部は、干渉信号の終了から他の干渉信号の到来までの時間間隔が所定間隔である場合に、干渉信号の特徴量と他の干渉信号の特徴量を、第一の干渉局毎に相互に関連付けて記憶するものである。特徴量記憶部は、図34における干渉情報記憶部426に相当する。なお、実施例1では、干渉信号の終了から他の干渉信号の到来までの時間間隔が所定間隔である場合、第一の干渉局と第二の干渉局とが互いに通信する関係にあるとして、第一の干渉局、干渉信号の特徴量、第二の干渉局、及び他の干渉信号の特徴量が1組にして特徴量テーブルに記憶される。
希望信号検知部は、干渉信号の到来中に希望信号が到来したことを検知するものである。希望信号検知部は、図34における信号検出部423に相当する。
第二の時間間隔測定部は、干渉信号の到来中に希望信号が到来し、希望信号の到来中に干渉信号が終了するとき、その終了から他の干渉信号の到来までの時間間隔を測定するものである。第二の時間間隔測定部は、図34における時間間隔測定部424に相当する。
時間間隔判定部は、第二の時間間隔測定ステップで測定された時間間隔が、通信関係推定ステップにおける所定間隔と一致するかどうかを判定するものである。時間間隔判定部は、図34における干渉識別部425に相当する。
特徴量選択部は、時間間隔判定ステップで一致の判定がなされた場合、希望信号到来時に測定中の干渉信号の特徴量と、特徴量記憶ステップにおける記憶情報とを照合し、記憶された他の干渉信号の特徴量の中から、干渉信号の特徴量に対応する他の干渉信号の特徴量を選択するものである。特徴量選択部は、図34における干渉識別部425及び干渉情報記憶部426に相当する。
干渉信号抑圧部は、特徴量選択部で選択された干渉信号特徴量に基づき、受信信号中に含まれる干渉信号を抑圧するものである。干渉信号抑圧部は、図34における干渉信号抑圧部427に相当する。
次に、図33及び図34を参照しつつ、実施例1に係る干渉信号抑圧装置412(受信局412)について詳説する。
受信局412は、複数のアンテナ421−1、・・・、421−kと、複数のRF部422−1、・・・、422−kと、信号検出部423と、時間間隔測定部424と、干渉識別部425と、干渉情報記憶部426と、干渉信号抑圧部427とを備えている。
アンテナ421−1、・・・、421−kは、それぞれ、希望信号と干渉信号が重畳された受信信号をそれぞれ受信する。RF部422−1、・・・、422−kは、それぞれ、高周波帯域の信号である受信信号を周波数変換等により、ベースバンド帯域の信号に変換し、受信ベースバンド信号を干渉信号抑圧部427及び信号検出部423へ出力する。
信号検出部423は、受信ベースバンド信号を基に、干渉信号が到来したこと、及び、到来中の干渉信号が終了したことを検出する。また、信号検出部423は、干渉信号が到来、終了したことを示す信号検出信号を出力する。例えば、信号検出部423は、受信ベースバンド信号の電力値の変化を検出することで、干渉信号の到来、終了を検出することができる。干渉信号か否かの判定は、パケット化された無線信号の先頭に希望信号固有のプリアンブルが検出されるか否かで判定することができる。あるいは、プリアンブルの後に希望信号固有のユニークワードが検出されるか否かで判定してもよい。これらの方法では、隣接チャネルなどからの漏洩信号による干渉や、互換性のないシステムからの干渉を検出することができる。また、互換性のあるシステムの同一チャネル干渉に対しては、信号中のアドレス情報を解釈して希望信号以外であることを判断することにより検出することができる。この場合、信号中のパケット長情報を解釈することで、干渉の終了時刻も検出することができる。
なお、干渉信号の到来、終了を検出するための別の方法として、例えば、複数のアンテナから得られる受信ベースバンド信号間の相関(アンテナ間相関値)の変化を検出してもよいし、あるいは、アンテナ間相関値と受信電力値の情報を含む共分散行列の変化を検出してもよい。アンテナ間相関値は、空間的な信号到来角度にほぼ対応するため、相関の情報を用いると、電力値の変化が検出困難な場合にも信号の変化を検出できる利点がある。また、隣接チャネルを観測し、隣接チャネルの電力値変化を検出してもよく、この場合は隣接チャネルからの干渉を精度よく検出できる。また、例えば、複数系統の受信ベースバンド信号のそれぞれに対して電力値を観測し、どれか1つでも所定のしきい値を超えた・下回った場合に干渉信号が到来・終了したと判断してもよいし、あるいは、所定数以上の系統について所定のしきい値を超えた・下回った場合に干渉信号が到来・終了したと判断してもよい。また、複数系統の受信ベースバンド信号を合成した信号が所定のしきい値を超えた・下回った場合に信号が到来・終了したと判断してもよい。なお、これらの検出方法は、単独で用いることもできるし、あるいは併用することも可能である。
なお、信号検出部423は、例えば図35に例示するように構成することができる。図35に示す信号検出部423は、サブバンド分離部4101−1、・・・、4101−kとサブバンド統合信号検出部4102とを含む。サブバンド分離部4101−1、・・・、4101−kは、受信ベースバンド信号をそれぞれ複数のサブバンドの信号に分割し、受信サブバンド信号を出力する。サブバンド統合信号検出部4102は、受信サブバンド信号を元にサブバンド毎の電力値やアンテナ間相関値等の変化量の検出を行い、干渉信号が到来・終了したことを検出する。このような構成により、サブバンド毎の電力値やアンテナ間相関値を用いて総合的に変化を検出することもでき、より高い精度で干渉信号の検出が可能となる。例えば、隣接チャネルの干渉信号が到来した場合には、隣接チャネルに近いサブバンドに大きな電力が発生するが、受信帯域全体で見ると大きな値とならないため、正確な検出が困難となる場合がある。しかし、サブバンド毎の電力を検出し、例えば、所定のしきい値を超えるサブバンドが所定個数以上のときに検出するようにすることで、より正確な干渉の検出が可能になる。もし、図36の干渉信号抑圧部427のように他の回路でもサブバンド分離部を用いる場合は、これらを共用できることは言うまでもない。
時間間隔測定部424は、信号検出部423からの信号検出信号を入力し、到来している干渉信号の時間間隔を測定し、測定した時間間隔を示す時間間隔信号を出力する。例えば、時間間隔を測定する方法としては、干渉信号が終了した時点でカウンタをリセットしてカウントを開始し、次の干渉信号が到来した時点のカウント値を時間間隔信号として出力することができる。また、例えば、干渉信号抑圧装置内部に時刻を計時する機能を有する場合には、干渉信号が終了した時刻と次の干渉信号が到来した時刻の差分を求めることで時間間隔を求めてもよい。
干渉識別部425は、干渉信号測定時には、時間間隔測定部424からの時間間隔信号が所定値となった場合に、到来中の干渉信号(他の干渉信号)を送信した第二の干渉局と、直前の干渉信号を送信した第一の干渉局とが通信を行っていることを示す通信相手判定信号を干渉情報記憶部426へ出力する。
また、干渉識別部425は、干渉信号抑圧時には、時間間隔測定部424からの時間間隔信号と、干渉情報記憶部426に記憶された第二の干渉局の情報とに基づいて、どの干渉局からの干渉信号が到来したかを判定し、判定した干渉局を示す干渉局判定信号を干渉情報記憶部426へ出力する。具体的には、干渉情報記憶部426からは、直前の干渉信号から所定の時間間隔をおいて次の干渉信号(他の干渉信号)が到来したときに、到来した他の干渉信号を送信したと推測される第二の干渉局の候補を示す候補干渉局信号が干渉識別部425へ出力される。干渉識別部425は、時間間隔測定部424からの時間間隔信号が所定値となった場合に、候補干渉局信号が示す第二の干渉局の候補中から、到来した他の干渉信号を送信した第二の干渉局を判定し、その判定した干渉局を示す干渉局判定信号を干渉情報記憶部426へ出力する。
干渉情報記憶部426は、干渉信号測定時には、干渉識別部425からの通信相手判定信号と、干渉信号の特徴量及び他の干渉信号の特徴量を示す特徴量信号(干渉信号抑圧部27から出力される)とを入力する。干渉情報記憶部426は、干渉信号の特徴量に第一の干渉局に対応する識別子を付与するとともに、他の干渉信号の特徴量に第二の干渉局に対応する識別子を付与する。そして、識別子を付与した干渉信号特徴量及び他の干渉信号特徴量を、それぞれ、干渉信号を送信した第一の干渉局及びその通信相手である第二の干渉局に対応させ、これらを1組として記憶し、特徴量テーブルを作成する。
また、干渉情報記憶部426は、干渉信号抑圧時には、干渉信号抑圧部427からの特徴量信号、または、干渉識別部425からの干渉局判定信号を基に、干渉信号抑圧に用いる特徴量を特徴量テーブルの中から選択し、選択した特徴量を干渉信号抑圧部427へ出力する。
干渉信号抑圧部427は、RF部422−1、・・・、422−kからの受信ベースバンド信号を基に干渉信号の特徴量を測定して特徴量信号を干渉情報記憶部426へ出力する。また、干渉信号抑圧部427は、干渉情報記憶部426から出力される干渉信号抑圧用特徴量を用いて、受信ベースバンド信号に含まれる干渉信号成分を抑圧し、干渉信号抑圧を行った信号を復調し、復調データを外部へ出力する。
ここでは、図34に示される干渉信号抑圧部427として、図36に示される干渉信号抑圧部427を適用した場合を例にとって説明する。また、変復調方式としてOFDM方式等のマルチキャリア変調方式を用いた場合を例にとって説明する。図36に示される干渉信号抑圧部427は、本出願人が先に出願した技術(国際公開第2006/003776パンフレット参照)である。
図36は、干渉信号抑圧部427の構成の一例を示すブロック図である。この干渉信号抑圧部427は、サブバンド分離部451−1、・・・、451−kと、伝搬路推定部452と、干渉信号測定部453と、重み付け合成部454と、復調部455とを備えている。
サブバンド分離部451−1、・・・、451−kは、複数本のアンテナで受信された複数系統の受信ベースバンド信号をそれぞれ複数のサブバンドの信号に分割し、受信サブバンド信号を出力する。受信ベースバンド信号を複数のサブバンドの信号に分離する方法としては、例えば、高速フーリエ変換(FFT)やウエーブレット変換またはフィルタバンク等を用いることができる。なお、図36に示す例では、サブバンド分離部451−1、・・・、451−kをアンテナ入力毎に設けているが、1つのサブバンド分離部を時分割で使用するようにしてもよい。
伝搬路推定部452は、希望信号受信時に、希望信号の各受信サブバンド信号に含まれる既知信号に基づいて、希望信号の伝搬路推定を行い、伝搬路推定信号Hを出力する。
干渉信号測定部453は、干渉信号受信時に、各受信サブバンド信号の特徴量として、各受信サブバンド信号間の相関である共分散行列Ruuを求め、これを特徴量信号として出力する。干渉情報記憶部426(図34参照)は、サブバンド毎に、この特徴量を記憶するとともに、干渉信号抑圧に用いる特徴量を重み付け合成部454へ出力する。
重み付け合成部454は、伝搬路推定部452から出力された伝搬路推定信号Hと、干渉情報記憶部426から出力された共分散行列Ruuとから、各サブバンドについて、式1に示されるように受信サブバンド信号rを重み付け合成し、干渉信号成分を抑圧した信号vを出力する。
v=RSSHH(HRSSHH+Ruu)-1r ・・・(式4−1)
ここで、AHはAの複素共役転置、A-1はAの逆行列を表す。
RSSは、送信局から送出された信号sの共分散行列を表し、送信信号の統計的性質から知ることができる。
復調部455は、重み付け合成部454から出力される干渉信号成分を抑圧した信号vを復調し、復調データを出力する。
このように、図36に示される干渉信号抑圧部427は、あらかじめ、干渉信号の特徴量として、複数アンテナの受信信号間の共分散行列Ruuを測定し、希望信号の伝搬路推定結果Hと干渉信号の共分散行列Ruuに基づいて受信信号を重み付け合成することで干渉信号成分を抑圧することができる。
実施例1の干渉信号抑圧装置においては、干渉信号の特徴量及び他の干渉信号の特徴量を測定し、干渉信号の終了と他の干渉信号の到来の時間間隔に基づいて第二の干渉局(通信相手局)を判定する動作と、干渉信号の終了と他の干渉信号の到来の時間間隔に基づいて干渉信号抑圧に用いる特徴量を切り換える動作の2つに特徴がある。以下、干渉信号の測定動作と、干渉信号の抑圧動作について説明する。
図37は、実施例1に係る干渉信号抑圧装置が干渉信号を測定するときの信号到来の様子の一例を時系列的に示す図である。図33、37を用いて、受信局412(干渉信号抑圧装置)が干渉信号を測定するときの動作例を説明する。
図33に示されるように、干渉局413と干渉局414は互いに通信を行っている。図37に示されるように、干渉局413が送信したデータパケット416aに対し、干渉局414がSIFS間隔でACKパケット417aを送信しているものとする。同様に、互いに通信を行っている別の2つの干渉局(図示せず)のうち、一方の干渉局が送信したデータパケット416bに対し、他方の干渉局がSIFS間隔でACKパケット417bを送信しているものとする。
まず、受信局412は、T1において、干渉信号416aが到来したことを検出し、特徴量の測定を開始する。そして、T2において、干渉信号416aが終了したことを検出すると、測定した特徴量に識別子Aを付与して記憶する。
受信局412は、次の干渉信号が到来するまでの時間間隔(T2〜T3)を測定し、T3において、干渉信号417aの到来を検出し、かつ、T2〜T3の時間間隔がSIFSであると判定すると、到来中の干渉信号417aの特徴量の測定を開始するとともに、到来中の干渉信号417aを送信した干渉局と、直前に干渉信号を送信した干渉局とは互いに通信を行っていると判定する。そして、T4において、干渉信号417aが終了すると、測定した特徴量に識別子Bを付与し、識別子Bに対応する干渉局の通信相手局が識別子Aに対応する干渉局であると記憶する。それとともに、識別子Aに対応する干渉局の通信相手局が識別子Bに対応する干渉局であると記憶する。
受信局412は、次の干渉信号が到来するまでの時間間隔(T4〜T5)を測定する。T5において干渉信号416bの到来を検出し、かつ、T4〜T5の時間間隔がSIFSでないと判定すると、到来中の干渉信号416bの特徴量の測定を開始するとともに、到来中の干渉信号416bを送信した干渉局と、直前に干渉信号を送信した干渉局とは互いに通信を行っていないと判定する。そして、T6において、干渉信号416bが終了すると、測定した干渉信号416bの特徴量に識別子Cを付与して記憶する。以下、同様に、干渉信号417bの特徴量を測定し、干渉信号416bと干渉信号417bの時間間隔(T6〜T7)がSIFSであると判定すると、測定した干渉信号417bの特徴量に識別子Dを付与し、識別子Dに対応する干渉局の通信相手局が識別子Cに対応する干渉局であると記憶する。それとともに、識別子Cに対応する干渉局の通信相手局が識別子Dに対応する干渉局であると記憶する。
図37を用いて説明したように干渉信号測定を行うと、干渉情報記憶部426には、図38に示されるように干渉信号の情報が記憶され、特徴量テーブルが作成される。図38に示される特徴量テーブルにおいて、列(a)は第一の干渉局の識別子、列(b)は干渉信号の特徴量、列(c)は列(a)で示される第一の干渉局の通信相手である第二の干渉局を示す識別子、(d)は第二の干渉局からの干渉信号の特徴量である。この情報(特徴量テーブル)を参照することで、第一の干渉局と、第一の干渉局が送信する干渉信号の特徴量と、第一の干渉局の通信相手である第二の干渉局と、第二の干渉局が送信する干渉信号の特徴量とを知ることができる。例えば、識別子Aの干渉局に関する情報を参照すると、識別子Aの干渉局が送信する干渉信号の特徴量がWAであること、識別子Aの干渉局の通信相手局が識別子Bの干渉局であること、識別子Bの干渉局が送信する干渉信号の特徴量がWBであることがわかる。
次に、図33、39を用いて、受信局が干渉信号抑圧するときの動作例を説明する。図39に示されるように、送信局411が希望信号415を送信し、干渉局413が干渉信号416cを送信し、干渉局414が干渉信号417cを送信する。希望信号415の途中で干渉信号を送信する干渉局が干渉局413から干渉局414へ切り替わっている。また、図37の場合と同様、干渉局413が送信したデータパケット416cに対し、干渉局414がSIFS間隔でACKパケット417cを送信しているものとしている。あらかじめ、図37を用いて説明した如く干渉信号の測定を完了しているものとする。
まず、T11において、受信局412は、干渉信号416cが到来したことを検出し、特徴量の測定を開始する。このとき、受信局412は、測定中の特徴量と干渉情報記憶部426に記憶してある特徴量とを比較することで、到来中の干渉信号416cが識別子Aの干渉信号であると判定する。
T12において希望信号415が送信されると、受信局412は、干渉信号測定と並行してプリアンブル検出等を行っているので、希望信号415が到来したことを検出する。そして、測定していた干渉信号416cの特徴量を用いて干渉信号抑圧を行い、希望信号415の復調を行う。
T13において、受信局412は、干渉信号416cが終了したことを検出すると、次の干渉信号が到来するまでの時間間隔(T13〜T14)を測定する。そして、T14において、干渉信号417cの到来を検出し、かつ、T13〜T14の時間間隔がSIFSであると判定すると、到来した干渉信号417cは、識別子Aの干渉局の通信相手局が送信したものと判定する。そして、図38に示される、あらかじめ記憶しておいた干渉局及び干渉信号特徴量の情報(特徴量テーブル)を参照することで、識別子Aの通信相手局は識別子Bの干渉局であると判定し、識別子Bの干渉局の特徴量に切り替えて干渉信号抑圧を行う。
CSMA/CA方式において、ある無線局が新たにパケットを送信する場合には、キャリアセンスを行い、SIFSよりも長い時間間隔であるDIFS以上の間、キャリアが観測されなかった後、ランダム時間経過後に送信を開始する。つまり、CSMA/CA方式において、あるパケットが終了後、SIFS間隔でパケットを送信することができる無線局は制限される。例えば、CSMA/CA方式において、あるデータパケットが送信された場合、データパケットの宛先である無線局は、データパケットを正しく復調できると、SIFS間隔でACKパケットを送信する。また、RTS/CTSパケットを送信する場合においては、データパケットを送信しようとする送信元の無線局は、まず、RTSパケットをデータパケットの宛先の無線局へ送信する。そして、データパケットの宛先の無線局は、RTSパケットを正しく復調できると、SIFS間隔でCTSパケットを返送する。そして、送信元の無線局は、CTSパケットを正しく復調できると、SIFS間隔でデータパケットを送信する。また、分割(フラグメント)したパケットを送信する場合においては、送信元の無線局がデータパケットを送信した後、宛先の無線局は、SIFS間隔でACKパケットを送信する。そして、送信元の無線局はACKパケットを受信後、SIFS間隔でデータパケットを送信し、以降、分割したパケットを全て送信するまで同様の手順を繰り返す。このように、CSMA/CA方式において、あるパケットが終了後にSIFS間隔でパケットを送信できるのは、特定の無線局に限られる。従って、上述のように、干渉信号の時間間隔がSIFSである場合に干渉局の通信相手局の判定やどの干渉局からの干渉信号が到来したかの判定を行うことができる。
図40は、実施例1の干渉信号抑圧装置における干渉信号の測定動作の一例を示すフローチャートである。図40を用いて、干渉信号抑圧装置における干渉信号の測定動作を説明する。
まず、干渉信号が送信されると、信号検出部423は、干渉信号が到来したことを検出する(ステップS431)。
次に、干渉信号抑圧部427は、到来した干渉信号の特徴量を測定する(ステップS432)。
次に、信号検出部423は、干渉信号が終了したか否かを判断する(ステップS433)。もし、干渉信号が終了していなければ(ステップS433のNo)、干渉信号の特徴量の測定を継続する(ステップS432)。もし、干渉信号が終了したら(ステップS433のYes)、測定した特徴量に識別子を付与して記憶する(ステップS434)。
次に、時間間隔測定部424は、次の干渉信号が到来するまでの時間間隔を測定する(ステップS435)。
次に、干渉識別部425は、測定した時間間隔が所定値であるか否かを判定する(ステップS436)。もし、測定した時間間隔が所定値である場合(ステップS436のYes)、到来中の干渉信号を送信した第二の干渉局と、直前に干渉信号を送信した第一の干渉局とは互いに通信を行っていると判定する(ステップS437)。もし、測定した時間間隔が所定値でない場合(ステップS436のNo)、干渉識別部425は、到来中の干渉信号を送信した第二の干渉局と、直前に干渉信号を送信した第一の干渉局とは互いに通信を行っていないと判定する(ステップS438)。
次に、干渉信号抑圧部427は、到来中の干渉信号が終了するまで干渉信号の特徴量を測定する(ステップS439、ステップS4310)。干渉信号が終了したら、干渉信号抑圧部427は、測定した特徴量を干渉情報記憶部426へ出力する。干渉情報記憶部426は、測定された特徴量と通信相手局の情報を記憶する(ステップS4311)。その後、再び、ステップS431へ戻る。
なお、特徴量の測定方法としては、干渉信号が到来している間の特徴量の平均値を測定結果として保存してもよいし、短い期間で測定した特徴量のうち干渉信号が終了する直前の測定結果を保存してもよい。前者の方法は、伝搬路変動が大きく特徴量の変動が大きな場合に、平均化することで特徴量の変動を抑えることができるという利点がある。後者の方法は、最新の結果を使えるので干渉信号抑圧時の抑圧効果を高めることができるという利点がある。
図41は、実施例1の干渉信号抑圧装置における干渉信号抑圧中の動作の一例を示すフローチャートである。図41は、干渉信号抑圧装置が干渉信号抑圧するときの信号到来の様子の一例を示す図である。図39、41を用いて、干渉信号抑圧装置における干渉信号抑圧中の動作を説明する。
ここで、干渉信号抑圧部427は、測定中の干渉信号特徴量を用いて、受信信号中に含まれる干渉信号を抑圧しているものとする(ステップS441)。図39に示されるように干渉信号416cの到来中に希望信号415が到来すると、干渉信号抑圧部427は、干渉信号416cの特徴量の測定と並行して希望信号検出(例えば、プリアンブル検出やユニークワード検出)を行う。そして、希望信号415の到来までに測定した干渉信号416cの特徴量を用いて、受信信号中に含まれる干渉信号416cを抑圧し、希望信号415の復調を開始することができる。
次に、干渉信号抑圧部427は、希望信号415を復調しながら、干渉信号416cが終了したかどうかを判定する(ステップS442)。希望信号415の長さは、固定長でなくても希望信号415のプリアンブル後に付加されるヘッダ情報から知ることができるので、受信局412は希望信号415の終了時点を認識することができる。従って、受信局412は、希望信号415の終了と干渉信号416cの終了を誤って判断することは無い。
干渉信号416cが終了すると(ステップS442のYes)、時間間隔測定部424は、次の干渉信号が到来するまでの時間間隔を測定する(ステップS443)。干渉信号416cが終了していなければ(ステップS442のNo)、干渉信号の抑圧を継続する(ステップS441)。
次に、干渉識別部425は、測定した時間間隔が所定値であるか否かを判定する(ステップS444)。もし、測定した時間間隔が所定値である場合には(ステップS444のYes)、直前に干渉信号を送信した干渉局の通信相手局が干渉信号を送信したと判断し、通信相手局の特徴量に切り換えて干渉信号417cの抑圧を行う(ステップS445)。もし、測定した時間間隔が所定値でない場合には(ステップS444のNo)、直前に干渉信号を送信した干渉局の通信相手局以外が干渉信号を送信したと判断し、処理を終了する。ステップS445で干渉信号抑圧中、干渉信号が終了したかどうかを測定し(ステップS446)、終了していれば(ステップS446のYes)、処理を終了する。もし、干渉信号が終了していなければ(ステップS446のNo)、干渉信号417cの抑圧を継続する(ステップS445)。
以上説明したように、実施例1における受信局412は、干渉信号測定時において、干渉信号間の時間間隔に基づき、到来中の他の干渉信号を送信した第二の干渉局と、直前の干渉信号を送信した第一の干渉局が互いに通信していると判定する。更に、干渉信号の特徴量と他の干渉信号の特徴量を測定し、これら特徴量を第一の干渉局及び第二の干渉局にそれぞれ対応させて記憶しておく。これにより、第一の干渉局と通信を行う第二の干渉局と、第二の干渉局の特徴量とを認識することができる。また、干渉信号を復調することなく、干渉信号の時間間隔に基づいて第二の干渉局を認識するので、簡易に、かつ、短時間で第二の干渉局を認識することができる。また、同一チャネルだけでなく、異なるチャネルで通信する第一の干渉局と第二の干渉局であっても、第二の干渉局及びその干渉信号の特徴量を認識することができる。
更に、実施例1における受信局412は、干渉信号抑圧時においては、干渉信号の時間間隔と、記憶しておいた第一の干渉局及び第二の干渉局の情報とに基づいて、どの干渉局からの干渉信号が到来したかを判定し、判定した第二の干渉局(この場合は通信相手局)の他の干渉信号の特徴量に基づいて干渉信号抑圧を行う。これにより、干渉信号抑圧中に、干渉信号を送信する第一の干渉局が第二の干渉局(通信相手局)に切り替わっても、どの干渉局からの干渉信号が到来したかを認識できるので、受信信号中に含まれる干渉信号を抑圧し、希望信号を誤り無く復調することができる。また、干渉信号の時間間隔に基づいてあらかじめ記憶しておいた特徴量を読み出すので、簡易に、かつ、短時間でどの干渉局からの干渉信号が到来したかを判定し、特徴量を切り替えることができる。
なお、上記実施の形態において、干渉検出や干渉信号抑圧などの信号処理は受信ベースバンド信号において行うものとしたが、これに限るものではなく、各処理毎に、中間周波信号や高周波信号において信号処理を行う構成としても良い。
なお、実施例1では、アクセス方式としてCSMA/CA方式を例に説明したが、本発明に適用できるアクセス方式はこれに限られない。例えば、TDMA方式のように、時分割されたスロット単位でアクセスするものについても適用できる。プロトコルにおいて、ある無線局が別の無線局宛にパケットを送信した場合に、宛先の無線局は所定間隔後のスロットでACKパケット(またはNACKパケット)を返送すると規定されていれば、本発明を適用することで、第二の干渉局(この場合は通信相手局)としてどの干渉局からの干渉信号が到来したかの判定を行うことができる。
なお、実施例1では、干渉信号抑圧部427は図36に示すものを例に説明したが、干渉信号抑圧部427の構成はこれに限られない。図36では、マルチキャリア変調方式を適用した場合を例に説明したが、例えば、QPSK、QAM等のシングルキャリア変調方式を適用することも可能である。シングルキャリア変調方式に適用するには、図36におけるサブバンド分離部を有しない構成にすればよい。また、干渉信号の特徴量を用いて干渉成分を抑圧する技術として、希望信号の伝搬路推定結果と干渉信号の共分散行列に基づく干渉信号抑圧技術を例に説明したが、別の干渉信号抑圧技術として、例えば、アダプティブアレイによる干渉信号抑圧技術を適用することも可能である。
図42を参照しながら、アダプティブアレイを適用した場合の干渉信号抑圧部427aの動作を説明する。図42に示す干渉信号抑圧部427aは、複数の位相制御部491−1、・・・、491−kと、合成部492と、誤差検出部493と、重み係数演算部494と、スイッチ495と、復調部496とから構成される。
複数の位相制御部491−1、・・・、491−kは、スイッチ495から出力される特徴量に従って、受信ベースバンド信号の位相を制御し、合成部492へ出力する。合成部492は、位相制御された受信ベースバンド信号を合成し、合成信号を出力する。復調部496は、合成信号を復調し、復調データを出力する。誤差検出部493は、合成信号と基準信号との誤差を検出し、誤差信号を出力する。重み係数演算部494は、誤差信号に従って、受信ベースバンド信号の位相を制御するための重み係数を演算し、これを特徴量として出力する。スイッチ495は、干渉信号特徴量測定中か、あるいは干渉信号抑圧中かに応じて、干渉情報記憶部426から出力される特徴量と重み係数演算部494から出力される特徴量とを切り換えて、位相制御部491−1、・・・、491−kへ出力する。
図42の干渉信号抑圧部427aを用いて、干渉信号測定を行う場合の動作を説明する。スイッチ495は、重み係数演算部494からの特徴量(重み係数)を位相制御部491−1、・・・、491−kへ出力するように制御されている。重み係数演算部494は、干渉信号が到来したことを検出すると、干渉信号の到来方向にヌル点が向くように重み係数を算出する。重み係数が収束すると、干渉情報記憶部426は、収束した重み係数に識別子を付与して記憶する。このように、干渉信号抑圧部427aは、フィードバックループを構成することで、干渉信号の特徴量として、干渉信号抑圧するための重み係数を測定することができる。干渉信号の時間間隔に基づいて通信相手局を判定する方法については、前述の通りであるので説明を省略する。
図42の干渉信号抑圧部427aを用いて、干渉信号抑圧を行う場合の動作を説明する。希望信号と干渉信号が重なっており、干渉信号抑圧部427aは、干渉信号の重み係数を用いて干渉信号抑圧を行っているものとする。干渉信号が終了し、次の干渉信号が到来するまでの時間間隔が所定値であった場合には、直前に干渉信号を送信した第一の干渉局の通信相手である第二の干渉局からの干渉信号が到来したと判定し、通信相手である第二の干渉局の重み係数に切り換える。このとき、スイッチ495は干渉情報記憶部426からの重み係数を位相制御部491−1、・・・、491−kへ出力するように制御されている。一度、干渉情報記憶部426から出力された重み係数が読み込まれると、スイッチ495は、再び重み係数演算部494から出力された重み係数を位相制御部491−1、・・・、491−kへ出力するように切り換え、再びフィードバックループを構成する。
以上の動作により、アダプティブアレイを適用した干渉信号抑圧部427aを用いても、本発明によって干渉信号抑圧することが可能となる。干渉信号抑圧中に、干渉信号を送信する干渉局が第二の干渉局(この場合は通信相手局)に切り替わっても、干渉信号の時間間隔に基づいてあらかじめ記憶しておいた重み係数を読み出すので、干渉信号抑圧時に重み係数を算出する必要が無く、短時間で重み係数を切り換えることができる。
なお、実施例1においては、第一の干渉局と第二の干渉局の組が1つ存在する場合でも干渉信号を抑圧できるし、第一の干渉局と第二の干渉局の組が複数存在する場合でも、干渉信号を抑圧することができる。すなわち、あらかじめ、第一の干渉局からの干渉信号の特徴量と、第二の干渉局からの干渉信号の特徴量とを、図38に示される如く、第一の干渉局毎に相互に関連付けて記憶しておくことで、希望信号の到来中に、干渉信号を送信する干渉局が切り替わった際、第一の干渉局と通信する第二の干渉局を推定し、干渉信号抑圧のための特徴量を第二の干渉局からの干渉信号の特徴量に切り替えて、第二の干渉局からの干渉信号を抑圧することができる。
また、記憶してある干渉信号の特徴量、他の干渉信号の特徴量、第一の干渉局、及び第二の干渉局の情報を用いて干渉信号抑圧を行って、所定の通信品質が得られない場合には、記憶してある情報を破棄してもよい。記憶してある干渉信号の特徴量、他の干渉信号の特徴量、第一の干渉局、及び第二の干渉局の情報を用いて干渉信号抑圧を行って、所定の通信品質が得られないということは、その第一の干渉局が別の場所に移動したか、伝搬路状態が変動したために、別の干渉局として認識されている場合等が考えられる。所定の通信品質が得られないと判断する方法としては、例えば、CRC等の誤り検出符号により復調データに誤りがあった場合に所定の通信品質を得られないと判定する方法や、復調データに誤りがあった回数を記憶しておき、所定回数誤りのある復調データを受信した場合に所定の通信品質を得られないと判定してもよい。このように、所定の通信品質が得られない場合には、記憶してある情報を破棄することで、記憶するメモリ領域を削減できるとともに、より正確に干渉信号抑圧を行うことができる。
なお、到来したと推定される干渉局の候補が複数存在する場合が有り得る。この場合は、図43に示されるような特徴量テーブルを作成することができる。図43に示される例では、識別子Aの干渉局は、識別子Bの干渉局と通信する場合(1行目の組参照)と、識別子Cの干渉局と通信する場合(3行目の組参照)がある。このようなときは、例えば、第二の干渉局Bが送信した干渉信号の特徴量WB、第二の干渉局Cが送信した干渉信号の特徴量WCが干渉信号抑圧のための特徴量候補となる。干渉信号抑圧の際には、これらの特徴量を用いて干渉信号抑圧を行うために、対応する回路をそれぞれ用意しておき、候補である特徴量のそれぞれを用いて干渉信号抑圧を行い、復調し、その中から復調時に誤りの少ない復調データを選択するとしてもよい。あるいは、各特徴量を用いて干渉信号抑圧を行うための回路を1つだけ用意しておき、順番に候補となる特徴量を用いて干渉信号抑圧を行い、復調してもよい。この場合、候補となる特徴量全てについて得られた復調データを比較し、誤りが最も少ない復調データを選択してもよいし、得られた復調データの品質が所定値を満たした時点で、その復調データを選択し、それ以降、候補となる特徴量を用いて干渉信号抑圧を行わないものとしてもよい。これにより、候補となる特徴量を絞り込まない場合に比べて、復調データを得るための回路規模を削減し、あるいは、復調データを得るまでの遅延時間を短縮することができる。
また、到来したと推定される干渉局の候補が複数存在する場合の別の対応として、到来したと推定される干渉局の候補の中から、過去の通信履歴に基づいてどの干渉局からの干渉信号が到来したかを判定してもよい。過去の通信履歴に基づいてどの干渉局からの干渉信号が到来したかを判定する方法としては、例えば、第二の干渉局(通信相手局)の過去の送信回数を記憶しておき、最も多く送信された第二の干渉局の他の干渉信号を優先的に選択するとしてもよい。あるいは、直前に送信された第二の干渉局の他の干渉信号のみを記憶しておき、直前に送信された第二の干渉局の他の干渉信号を選択するとしてもよい。このような方法によって、到来したと推定される他の干渉信号の候補が複数存在する場合に、その中から最も到来する確率が高い他の干渉信号の特徴量を判断することができる。
なお、記憶してある干渉信号の特徴量、他の干渉信号の特徴量、第一の干渉局、及び第二の干渉局の情報が一定期間参照されなかった場合には、記憶してある情報を破棄してもよい。記憶してある干渉信号の特徴量、他の干渉信号の特徴量、第一の干渉局、及び第二の干渉局の情報が一定期間参照されないということは、その第一の干渉局は存在しないと考えられる。あるいは、別の場所に移動したか伝搬路状態が変動したために、別の干渉局として認識されている場合等が考えられる。このように、一定期間参照されない情報を破棄することで、記憶するメモリ領域を削減できるとともに、より正確に干渉信号抑圧を行うことができる。
なお、特徴量記憶部は、干渉信号の特徴量と他の干渉信号の特徴量とを比較する特徴量比較部を含み、特徴量比較部において、干渉信号測定時に干渉信号の特徴量と他の干渉信号の特徴量が同一でないと判断された場合には、干渉信号を送信した第一の干渉局と、他の干渉信号を送信した第二の干渉局は異なる干渉局であるとして、干渉信号の特徴量と他の干渉信号の特徴量を、第一の干渉局毎に相互に関連付けて記憶してもよい。このように、干渉信号の特徴量と他の干渉信号の特徴量が異なることを条件に加えることで、第一の干渉局と第二の干渉局が互いに通信する関係にあると確実に判断することができる。
(実施例2)
用いられるプロトコルによっては、ある干渉局がパケットを送信後、所定の時間間隔で同じ干渉局がパケットを送信する場合がある。例えば、ブロックACKと呼ばれるプロトコルがこれに当てはまる。ブロックACKを行う場合、送信元の無線局はデータパケットをSIFS間隔で連続的に送信し、データパケットの宛先の無線局は複数のデータパケットを受信し、受信した複数のデータパケットに対してまとめてACKパケットを送信する。このように、ブロックACKでは同じ無線局がSIFS間隔でパケットを送信する。
このようなプロトコルを本発明に適用するには、例えば、干渉信号測定時において、干渉信号の時間間隔が所定値となった場合に到来中の干渉信号の特徴量と直前の干渉信号の特徴量を比較する。これら干渉信号の特徴量が同一又は実質的に同一であるときに、到来中の干渉信号を送信した第二の干渉局と、直前に干渉信号を送信した第一の干渉局が同一の局であると判定し、測定した第一の干渉局からの干渉信号の特徴量を第二の干渉局(実際は直前に干渉信号を送信した干渉局)からの干渉信号の特徴量として記憶すればよい。干渉信号抑圧時においては、直前の干渉信号を送信した第一の干渉局からの干渉信号の特徴量に基づき、干渉信号抑圧を行えばよい。一方、干渉信号測定時において、干渉信号の時間間隔が所定値となった場合に到来中の他の干渉信号の特徴量と直前の干渉信号の特徴量を比較し、これら干渉信号の特徴量が相違するときには、到来中の他の干渉信号を送信した第二の干渉局と、直前に干渉信号を送信した第一の干渉局とが互いに通信を行っていると判定する。この場合は、測定した直前の干渉信号の特徴量と、到来中の他の干渉信号の特徴量と、第一の干渉局と、第二の干渉局(通信相手局)の情報を記憶すればよい。干渉信号抑圧時においては、第二の干渉局からの他の干渉信号の特徴量に基づき、干渉信号抑圧を行えばよい。
図44は、ブロックACKに対応することができる干渉信号抑圧装置の構成を示すブロック図である。この干渉信号抑圧装置は、図34に示される実施例1の干渉信号抑圧装置の機能を全て備えており、ブロックACK以外の通常の場合(送信元の無線局と宛先の無線局とが交互にデータパケットとACKパケットをやりとりする場合)の抑圧もすることができる。以下、主としてブロックACKに対応するために必要な構成について説明する。図34の場合と同一の動作をする構成については、図34と同一の参照符号を付してその説明を適宜省略する。
この干渉信号抑圧装置について、まず、請求の範囲の文言を用いて説明する。図44に示される干渉信号抑圧装置は、ブロックACKに対応するために、図34に示される構成と比べて、主として特徴量記憶部が相違している。
特徴量記憶部は、実施例1と異なり、特徴量比較部を更に含んでいる。特徴量比較部は、干渉信号の終了から他の干渉信号(次の干渉信号)の到来までの時間間隔が所定間隔である場合に、干渉信号の特徴量と他の干渉信号の特徴量が同一であるかどうかを比較するものである。特徴量比較部において、干渉信号の特徴量と他の干渉信号の特徴量が同一でないと判断された場合には、特徴量記憶部は、干渉信号を送信した第一の干渉局と、他の干渉信号を送信した第二の干渉局は異なる干渉局であるとして、干渉信号の特徴量と他の干渉信号の特徴量を、第一の干渉局毎に相互に関連付けて記憶する。この場合、干渉信号を送信した第一の干渉局と他の干渉信号を送信した第二の干渉局とが互いに通信する関係にあるとして、第一の干渉局、干渉信号の特徴量、第二の干渉局、及び他の干渉信号の特徴量に係る情報が1組にして記憶される。一方、特徴量比較部において、干渉信号の特徴量と他の干渉信号の特徴量が同一であると判断された場合には、特徴量記憶部は、干渉信号を送信した第一の干渉局と、他の干渉信号を送信した第二の干渉局は同じ干渉局であるとして、特徴量記憶部は、干渉信号の特徴量と他の干渉信号の特徴量を、第一の干渉局毎に相互に関連付けて記憶する。特徴量記憶部は、図44における干渉情報記憶部4260に相当する。
次に、図44を参照しつつ、実施例2に係る干渉信号抑圧装置の動作について、主として実施例1と相違する部分を説明する。実施例1とは、干渉識別部4250及び干渉情報記憶部4260が相違している。
干渉識別部4250は、干渉信号測定時には、時間間隔測定部424で測定された時間間隔信号を入力し、その時間間隔がSIFS等の所定値となった場合に、到来中の干渉信号(他の干渉信号)を送信した第二の干渉局が、直前の干渉信号を送信した第一の干渉局の通信相手局、あるいは、直前の干渉信号を送信した第一の干渉局、のいずれかであることを示す通信相手判定信号を出力する。
また、干渉識別部4250は、干渉信号抑圧時には、時間間隔測定部424からの時間間隔信号と、干渉情報記憶部4260に記憶された第二の干渉局の情報とに基づいて、どの干渉局からの干渉信号が到来したかを判定し、到来中の干渉信号(他の干渉信号)を送信したと判定した第二の干渉局を示す干渉局判定信号を干渉情報記憶部4260へ出力する。具体的には、干渉情報記憶部4260からは、直前の干渉信号から所定の時間間隔をおいて次の干渉信号(他の干渉信号)が到来したときに、到来した他の干渉信号を送信したと推測される干渉局(第二の干渉局)の候補を示す候補干渉局信号が干渉識別部4250へ出力される。干渉識別部4250は、時間間隔測定部424からの時間間隔信号が所定値となった場合に、候補干渉局信号が示す第二の干渉局の候補中から、到来した他の干渉信号を送信した干渉局を判定し、その判定した第二の干渉局を示す干渉局判定信号を出力する。第二の干渉局の候補には、第一の干渉局と通信を行う干渉局の他、第一の干渉局自身を含めることができる。
干渉情報記憶部4260は、干渉信号測定時には、干渉識別部4250からの通信相手判定信号と、干渉信号の特徴量を示す特徴量信号及び他の干渉信号の特徴量を示す特徴量信号(いずれも干渉信号抑圧部427から出力される)とを入力し、各特徴量に識別子を付与し、干渉信号の特徴量及び他の干渉信号の特徴量を、第一の干渉局及び第二の干渉局にそれぞれ関連付け、これら特徴量及び干渉局を1組にして記憶しておく。ここで、第一の干渉局が送信した干渉信号の特徴量と、第二の干渉局が送信した他の干渉信号の特徴量が同一である場合には、第一の干渉局と第二の干渉信号は同一の局であると判断される。干渉情報記憶部4260では、図45に例示されるような特徴量テーブルを作成することができる。第一の干渉局と第二の干渉局が同一の局であると判断された場合、特徴量テーブルの5行目の組に例示されるように、第一の干渉局と第二の干渉局に同一の識別子を付して(図示例ではA)第一の干渉局及び第二の干渉局が記憶される。
また、干渉情報記憶部4260は、干渉信号抑圧時には、干渉信号抑圧部427からの特徴量信号、または、干渉識別部4250からの干渉局判定信号を基に、記憶している第二の干渉局の他の干渉信号の特徴量の中から、干渉信号抑圧に用いる特徴量を干渉信号抑圧部427へ出力する。
このような構成を採る干渉信号抑圧装置は、干渉信号測定時には以下の動作をする。時間間隔測定部424で測定された時間間隔がSIFS等の所定間隔と一致し、且つ、干渉信号の特徴量と他の干渉信号の特徴量が同一若しくは実質的に同一であると判定した場合には、第一の干渉局と第二の干渉局が同一であると判断し、干渉信号の特徴量と他の干渉信号の特徴量を第一の干渉局毎に相互に関連付けて記憶する。また、時間間隔測定部424で測定された時間間隔がSIFS等の所定間隔と一致し、且つ、干渉信号の特徴量と他の干渉信号の特徴量が相違すると判定した場合には、第一の干渉局と第二の干渉局が互いに通信する関係にあると判断し、干渉信号の特徴量と他の干渉信号の特徴量を、第一の干渉局毎に相互に関連付けて記憶する。
なお、到来中の他の干渉信号を送信したと推定される第二の干渉局の候補が複数存在する場合は、図45に示されるような特徴量テーブルを作成することで対応することができる。図45に示される例では、識別子Aの干渉局は、識別子Bの干渉局と通信する場合(1行目の組参照)と、識別子Cの干渉局と通信する場合(3行目の組参照)がある。また、図45に示される例では、識別子Aの干渉局はブロックACKプロトコルにより、過去にSIFS等の所定間隔で繰り返し干渉信号を送信したことがある。よって、5行目の組において、第一の干渉局として識別子Aが付され、且つ、第二の干渉局として同じ識別子Aが付されている。また、5行目の組において、第一の干渉局が送信した干渉信号の特徴量と第二の干渉局が送信した干渉信号の特徴量は共にWAとして記憶されている。このようなときは、例えば、第二の干渉局Bからの干渉信号の特徴量WB、第二の干渉局Cからの干渉信号の特徴量WC、第二の干渉局Aからの干渉信号の特徴量WAが干渉信号抑圧のための特徴量候補となる。干渉信号抑圧の際には、これらの特徴量を用いて干渉信号抑圧を行うために、対応する回路をそれぞれ用意しておき、候補である特徴量のそれぞれを用いて干渉信号抑圧を行い、復調し、その中から復調時に誤りの少ない復調データを選択するとしてもよい。あるいは、各特徴量を用いて干渉信号抑圧を行うための回路を1つだけ用意しておき、順番に候補となる特徴量を用いて干渉信号抑圧を行い、復調してもよい。この場合、候補となる特徴量全てについて得られた復調データを比較し、誤りが最も少ない復調データを選択してもよいし、得られた復調データの品質が所定値を満たした時点で、その復調データを選択し、それ以降、候補となる特徴量を用いて干渉信号抑圧を行わないものとしてもよい。これにより、候補となる特徴量を絞り込まない場合に比べて、復調データを得るための回路規模を削減し、あるいは、復調データを得るまでの遅延時間を短縮することができる。
また、到来したと推定される干渉局の候補が複数存在する場合の別の対応として、到来したと推定される干渉局の候補の中から、過去の通信履歴に基づいてどの干渉局からの干渉信号が到来したかを判定してもよい。過去の通信履歴に基づいてどの干渉局からの干渉信号が到来したかを判定する方法としては、例えば、第二の干渉局(通信相手局)の過去の送信回数を記憶しておき、最も多く送信された第二の干渉局の他の干渉信号を優先的に選択するとしてもよい。あるいは、直前に送信された第二の干渉局の他の干渉信号のみを記憶しておき、直前に送信された第二の干渉局の他の干渉信号を選択するとしてもよい。このような方法によって、到来したと推定される他の干渉信号の候補が複数存在する場合に、その中から最も到来する確率が高い他の干渉信号の特徴量を判断することができる。
このように、図44に示される干渉信号抑圧装置は、通常の場合(送信元の無線局と宛先の無線局とが交互にデータパケットとACKパケットをやりとりする場合)の他、ブロックACKプロトコルを適用する場合にも、適切に抑圧することができる。
(実施例3)
図46は、実施例3に係る干渉信号抑圧装置の構成を示すブロック図である。この実施の形態は、上記したブロックACKプロトコルに対応することができる干渉信号抑圧装置の他の実施の形態に係るものである。この実施の形態に係る干渉信号抑圧装置は、実施例2と比べて、主として特徴量記憶部の構成が異なっている。実施例2と同一の構成については、図44と同一の符号を付してその説明を省略する。
実施例3は、干渉信号の終了から他の干渉信号(次の干渉信号)の到来までの時間間隔が所定間隔であり且つ干渉信号の特徴量と他の干渉信号の特徴量が相違する場合、2通りの送受信パターンが想定され得ることに着目したものである。その2通りの送受信パターンのうち一つ目は、干渉信号を送信した第一の干渉局と他の干渉信号を送信した第二の干渉局が相違するパターンである。二つ目は、干渉信号を送信した第一の干渉局と他の干渉信号を送信した第二の干渉局が同一ではあるが、その干渉局が干渉信号を送信した後に移動し或いは伝搬路状況が変化等したことにより、その干渉局が後に送信した他の干渉信号と先に送信した干渉信号との間で特徴量が相違するパターンである。
以下、図46を参照しつつ、実施例3に係る干渉信号抑圧装置の動作について、主として実施例2と相違する部分を説明する。実施例2とは、干渉識別部4251及び干渉情報記憶部4261が相違している。
干渉識別部4251は、干渉信号測定時には、時間間隔測定部424で測定された時間間隔信号を入力し、その時間間隔がSIFS等の所定値となった場合に、到来中の干渉信号を送信した第二の干渉局が、直前の干渉信号を送信した第一の干渉局の通信相手局、あるいは、直前の干渉信号を送信した第一の干渉局、のいずれかであることを示す通信相手判定信号を出力する。
また、干渉識別部4251は、干渉信号抑圧時には、時間間隔測定部424からの時間間隔信号と、干渉情報記憶部4261に記憶された第二の干渉局の情報とに基づいて、どの干渉局からの干渉信号が到来したかを判定し、到来中の他の干渉信号を送信したと判定した第二の干渉局を示す干渉局判定信号を干渉情報記憶部4261へ出力する。具体的には、干渉情報記憶部4261からは、直前の干渉信号から所定の時間間隔をおいて次の干渉信号(他の干渉信号)が到来したときに、到来中の他の干渉信号を送信したと推測される干渉局(第二の干渉局)の候補を示す候補干渉局信号が干渉識別部4251へ出力される。このとき、第二の干渉局の候補には、第一の干渉局と通信を行う干渉局の他、第一の干渉局自身が含められる。干渉識別部4251は、時間間隔測定部424からの時間間隔信号が所定値となった場合に、候補干渉局信号が示す第二の干渉局の候補中から、到来した他の干渉信号を送信した第二の干渉局を判定し、その判定した干渉局を示す干渉局判定信号を出力する。
干渉情報記憶部4261は、干渉信号測定時には、干渉識別部4251からの通信相手判定信号と、干渉信号の特徴量を示す特徴量信号及び他の干渉信号の特徴量を示す特徴量信号(いずれも干渉信号抑圧部427から出力される)とを入力する。更に、干渉情報記憶部4261は、各特徴量に識別子を付与し、干渉信号の特徴量と他の干渉信号の特徴量を、第一の干渉局及び第二の干渉局にそれぞれ関連付け、これら特徴量及び干渉局を1組にして干渉量テーブルに記憶しておく。ここで、第一の干渉局が送信した干渉信号の特徴量と、第二の干渉局が送信した他の干渉信号の特徴量が同一である場合は、第一の干渉局と第二の干渉信号は同一の局であると判断され、第一の干渉局と第二の干渉局には同じ識別子が割り当てられる。一方、第一の干渉局が送信した干渉信号の特徴量と、第二の干渉局が送信した他の干渉信号の特徴量が相違する場合は、上記の如く、第二の干渉局は、第一の干渉局とは異なる干渉局であって第一の干渉局と通信する関係にあるか、あるいは、第一の干渉局と同一の局ではあるが、第一の干渉局の移動等により当該移動等の前後で特徴量が変化したと判断される。
実施例3では、第一の干渉局が送信した干渉信号の特徴量と、第二の干渉局が送信した他の干渉信号の特徴量が相違する場合にそれぞれ対応して、特徴量テーブルに以下の2行を設ける。一つ目(図47に示される特徴量テーブルの第1行目)は、第二の干渉局が第一の干渉局とは異なる干渉局であって第一の干渉局と通信する関係にある場合に対応するものである。第一の干渉局と第二の干渉局にそれぞれ異なる識別子A,Bが付与される。干渉信号の特徴量は例えばWAであり、他の干渉信号の特徴量は例えばWBである。二つ目(図47に示される特徴量テーブルの第6行目)は、第二の干渉局が第一の干渉局と同一の局ではあるが、第一の干渉局の移動等により当該移動等の前後で特徴量が変化した場合に対応するものである。第一の干渉局と第二の干渉局に同じ識別子A,Aが付与される。他の干渉信号の特徴量は例えばWBである。干渉信号の特徴量は、第一の干渉局の移動等の前は例えばWAであるが、移動等の後は例えばWBに変化する。そこで、干渉信号の特徴量は、移動等の後の特徴量に書き換えられ、その書き換え後の値WBで特徴量テーブルに保存される。
また、干渉情報記憶部4261は、干渉信号抑圧時には、干渉信号抑圧部427からの特徴量信号、または、干渉識別部4251からの干渉局判定信号を基に、特徴量テーブルに記憶されている第二の干渉局の他の干渉信号の特徴量の中から、干渉信号抑圧に用いる特徴量を選択し、選択した特徴量を干渉信号抑圧部427へ出力する。
なお、本実施の形態では、第一の干渉局が送信した干渉信号の特徴量と、第二の干渉局が送信した他の干渉信号の特徴量が相違する場合には、図47の1行目と5行目の組に示されるように、他の干渉信号を送信したと推定される干渉局の候補が複数存在することになる。この場合でも、特徴量候補の絞込み等は、上記した実施例2の場合と同様の方法で行うことができる。また、実施例3においても、そのような特徴量の絞込みを行うことで、適切な復調信号を選択することができる。
従って、図46に示される干渉信号抑圧装置も、通常の場合(送信元の無線局と宛先の無線局とが交互にデータパケットとACKパケットをやりとりする場合)の他、ブロックACKプロトコルを適用する場合にも、他の干渉信号を適切に抑圧することができる。
なお、各実施の形態で説明した無線局が備える各機能ブロックは、典型的には、集積回路であるLSIとして実現される。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部または全てを含むように1チップ化されてもよい。ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後にプログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。更には、半導体技術の進歩または派生する別技術により、LSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適応等が可能性としてあり得る。
以下、本発明の第5の実施形態について説明する。
(第5の実施の形態)
(実施例1)
まず、第5の実施形態の実施例1に係る干渉信号抑圧装置を備えた無線通信システム全体の構成例及び動作例を説明する。実施例1に係る干渉信号抑圧装置は、無線通信システムにおける受信局として位置付けることができる。以下の説明では、実施例1に係る干渉信号抑圧装置を、必要に応じて受信局と称するものとする。図48は、実施例1に係る干渉信号抑圧装置を備えた無線通信システムの一例を示す模式図である。図48に示されるように、実施例1に係る干渉信号抑圧装置5802(受信局5802)を備えた無線通信システムは、送信局5101、受信局5802、干渉局5103、5104を備えている。送信局5101は、受信局5802宛の送信データを無線信号5105に変換して送信する。受信局5802は、無線信号5105を受信して信号の復調を行い、送信局5101からの送信データを得る。この一連の動作により通信が行われる。
一方、干渉局5103と干渉局5104は、送信局5101及び受信局5802とは独立して無線信号の送信を行うものとする。この例では、無線局5103と無線局5104は、送信局5101と受信局5802が使用する通信チャネルとは別のチャネルを用いて信号の送受信を行う。
実施例1では、各無線局5101、5802、5103、及び5104は、同じアクセス方式を使用しているものとし、例えば、IEEE802.11のCSMA/CA方式を用いることができる。この方式では、無線局5101、5802、5103、及び5104は、送信前に無線通信キャリアの検出を行い、閾値レベル以上のキャリアを検出できなければ、ランダムな時間で送信待機をし、その後にフレームを送信する。この技術によって、同一チャネルで通信をしている複数の無線局が同時に信号を送信してフレームの衝突が発生することを防ぐことができる。この例では、同一チャネルで信号の送信を行っている干渉局5103および5104はこの技術を用いており、信号の同時送信を行わないものとする。
なお、IEEE802.11規格では、送信フレームのフォーマットが規定されており、送信フレームの先頭部分にはヘッダ情報として、送信元無線局(送信局5101)のMACアドレス、送信先無線局(受信局5802)のMACアドレス、送信フレーム長が記載されている。
以下、実施例1に係る干渉信号抑圧装置5802(受信局5802)について図面を参照しつつ説明する。図49は、本発明に係る干渉信号抑圧装置の一例を示すブロック図であり、干渉信号抑圧装置を受信局に適用した場合を示している。図50は、本発明に係る干渉信号抑圧装置が干渉信号を抑圧するときの信号到来のタイミングを時系列的に示す図である。図51は、本発明に係る干渉信号抑圧装置が干渉信号及び合成信号の特徴量を測定し、特徴量テーブルを作成するときの信号到来のタイミング、及び、特徴量テーブルに保持された特徴量に基づき干渉信号抑圧を行うときの信号到来のタイミングを時系列的に示す図である。
図49に示される干渉信号抑圧装置5802は、複数のアンテナおよびRF部5801−1、・・・、5801−kと、干渉信号検出部5803と、合成信号検出部5804と、干渉識別部5805と、干渉情報記憶部5806と、干渉信号抑圧部5807とを備えている。
図49に例示される干渉信号抑圧装置5802は、希望信号5105c(図50参照)受信中に到来した干渉信号5106cを抑圧するための干渉信号抑圧装置である。干渉信号抑圧装置5802は、請求の範囲における、干渉信号特徴量測定部と、第一の合成信号特徴量測定部と、特徴量記憶部と、第二の合成信号特徴量測定部と、干渉信号特徴量取得部とを備えている。
図49における干渉信号抑圧部5807は、請求の範囲における干渉信号特徴量測定部、第一の合成信号特徴量測定部、及び第二の合成信号特徴量測定部に対応している。つまり、干渉信号抑圧部5807は、請求の範囲における干渉信号特徴量測定部、第一の合成信号特徴量測定部、及び第二の合成信号特徴量測定部の機能を含んでいる。図49における干渉情報記憶部5806は、請求の範囲における特徴量記憶部及び干渉信号特徴量取得部に対応している。つまり、干渉情報記憶部5806は、請求の範囲における特徴量記憶部及び干渉信号特徴量取得部の機能を含んでいる。
ここで、請求の範囲に示した構成要素の文言を使用して、実施例1の概要を説明する。実施例1に係る干渉信号抑圧装置5802は、干渉信号特徴量測定部と、第一の合成信号特徴量測定部と、特徴量記憶部と、第二の合成信号特徴量測定部と、干渉信号特徴量取得部と、干渉信号抑圧部とを備えている。
干渉信号特徴量測定部は、干渉信号5106aの特徴量を測定する。
第一の合成信号特徴量測定部は、干渉信号5106aの特徴量の測定中に希望信号5105aの到来が検知されたとき、干渉信号5106aと希望信号5105aの合成信号(図示せず)の特徴量を測定する。
特徴量記憶部は、測定された干渉信号特徴量と合成信号特徴量を、干渉局5103毎に相互に関連付けて記憶する。
第二の合成信号特徴量測定部は、希望信号5105c(図50参照)の到来中に干渉信号5106cが到来したことが検知されたとき、希望信号5105cと干渉信号5106cの合成信号の特徴量を測定する。
干渉信号特徴量選択部は、第二の合成信号特徴量測定部の測定値と特徴量記憶部で記憶した情報を照合して、記憶された複数の干渉局の干渉信号特徴量の中から、対応する干渉局からの干渉信号5106cの特徴量を選択する。
干渉信号抑圧部は、干渉信号特徴量選択部で選択された干渉信号特徴量を基に干渉信号5106cを抑圧する。
これら構成要素が相互に関連して機能することにより、干渉信号5106cを抑圧することができる。すなわち、干渉信号特徴量と合成信号特徴量を測定し、これらを干渉局毎に互いに関連付けて記憶してあらかじめ特徴量テーブルを作成しておく。その後、干渉信号抑圧を行うために合成信号特徴量を測定し、その測定値を特徴量テーブル中の合成信号特徴量と照合することにより、記憶された複数の干渉局の干渉信号特徴量の中から、対応する干渉局5103からの干渉信号の特徴量を選択し、この干渉信号特徴量を用いて干渉信号抑圧を行うことができる。
次に、図49を用いて実施例1の構成及び作用効果について詳述する。
複数のアンテナおよびRF部5801−1、・・・、5801−kは、それぞれ、希望信号5105a、5105b、5105c(図50、51参照)、干渉信号5106a、5106b、5106c(図50、51参照)を受信する。希望信号5105a、5105b、5105cと、干渉信号5106a、5106b、5106cが同時期に到来すると、図50、51に例示されるように、希望信号5105a、5105b、5105cと、干渉信号5106a、5106b、5106cが互いに重畳されて合成信号が生じる。複数のアンテナおよびRF部5801−1、・・・、5801−kは、この合成信号を受信することになる。尚、図50及び図51には、合成信号を具体的には示していない。また、複数のアンテナおよびRF部5801−1、・・・、5801−kは、高周波帯域の信号である受信信号を周波数変換等により、ベースバンド帯域の信号に変換し、この受信ベースバンド信号を干渉信号抑圧部5807、干渉信号検出部5803、及び合成信号検出部5804へ出力する。
干渉信号検出部5803は、受信ベースバンド信号を入力することで、干渉信号が到来したこと、及び、到来中の干渉信号が終了したことを検出し、その到来及び終了の時刻を示す時刻信号を干渉識別部5805へ出力する。干渉信号検出部5803は、例えば受信ベースバンド信号の電力値の変化を検出することで、無線信号の到来及び終了を検出することができる。到来した無線信号が干渉信号であるか否かの判定は、無線信号の先頭に希望信号固有のプリアンブルが検出されるか否かで判定することができる。あるいは、プリアンブルの後に希望信号固有のユニークワードが検出されるか否かで判定することもできる。すなわち、希望信号固有のプリアンブル或いはユニークワードが検出されれば希望信号であり、検出されなければ干渉信号であると判定することができる。希望信号固有のプリアンブル或いはユニークワードの有無を判定に用いた場合、電力値変化を検出しにくい場合の信号干渉、隣接チャネル等からの漏洩信号の干渉、又は通信互換性のないシステムからの信号干渉であっても、その干渉信号を確実に検出することができる。
また、通信互換性のあるシステムとの同一チャネルでの干渉については、信号中の送信元或いは送信先アドレス情報を解釈することで、該信号が希望信号以外であることを判断することができる。これにより、干渉信号の到来を検出することができる。また、信号中の例えばシグナル情報からパケット長情報を解釈することで、信号干渉の終了時刻を検出することができる。また、信号中のMACアドレスから、該信号を送信した干渉局を特定することができる。
なお、干渉信号の到来、終了を検出するための別の方法として、複数のアンテナから得られる受信ベースバンド信号のアンテナ間相関値の変化を検出してもよいし、或いは、アンテナ間相関値と信号電力値の情報を含む共分散行列の変化を検出してもよい。アンテナ間相関値は、空間的な信号到来角度にほぼ対応するため、アンテナ間相関値の情報を用いると、電力値の変化を検出困難な場合にも信号の変化を検出できる利点がある。また、隣接チャネル内の信号を観測し、その信号の電力値の変化を検出してもよい。この場合は、隣接チャネル内の信号のうち、受信局の使用チャネルに干渉する漏洩信号を高精度で検出することができる。
また、例えば、複数のアンテナを備えた干渉信号抑圧装置において、複数のアンテナが受信する複数系統の受信ベースバンド信号のそれぞれについて電力値を観測し、その電力値の内どれか1つでも所定のしきい値を超えたり或いはこれを下回った場合に干渉信号が到来、終了したと判断してもよい。また、それら複数系統のうち所定数以上の系統について、受信ベースバンド信号の電力値が所定のしきい値を超えたり或いはこれを下回った場合に干渉信号が到来、終了したと判断してもよい。また、複数系統の受信ベースバンド信号を合成した信号の電力値が所定のしきい値を超えたり或いはこれを下回った場合に干渉信号が到来、終了したと判断してもよい。以上の電力値やアンテナ間相関値などを検出するための構成として干渉信号検出部5803を用いることができる。干渉信号検出部5803は、図52に示されるように、受信ベースバンド信号の伝送線路の本数と同じ数のサブバンド分離部51201−1・・・51201−kと、サブバンド統合干渉信号検出部51202とを含む構成とすることができる。この場合、サブバンド毎の電力値やアンテナ間相関値を用いて総合的に電力値及びアンテナ間相関値の変化を検出することができ、より高精度に干渉信号を検出することができる。隣接チャネル信号の干渉では、隣接チャネルに近いサブバンドに大きな干渉電力が発生するが、受信帯域幅全体で見ると大きな値にならない。よって、サブバンド毎に電力値を検出し、例えば電力値が所定のしきい値を超えるサブバンドの数が所定個数以上であれば干渉信号が到来したと判定してもよく、この場合、より正確に干渉信号を検出することが可能になる。
なお、これら干渉信号検出方法は単独で用いることもできるし、或いは、これらの方法を組み合わせて用いることも可能である。
合成信号検出部5804は、RF部5801−1、・・・、5801−kからの受信ベースバンド信号と、干渉信号検出部5803からの信号検出信号と、干渉信号抑圧部5807からの特徴量及び同期検出信号を入力して機能する。これら入力信号に基づき、干渉信号と希望信号の重畳が始まったこと、及び、干渉信号と希望信号のいずれか一方が終了して重畳が解除されたことを検出する。図50に示される例では、T7のタイミングで重畳が開始され、T8のタイミングで重畳が解除されている。図51に示される例では、T2、T5のタイミングで重畳が開始され、T3、T6のタイミングで重畳が解除されている。合成信号検出部5804は、重畳開始の検出或いは重畳解除の検出を示す重畳開始時刻信号或いは重畳終了時刻信号を干渉識別部5805へ出力する。干渉信号を検出中に希望信号が到来したことの検出は、干渉信号抑圧部5807からの同期信号の検出により行うことができる。尚、干渉信号受信中における希望信号の終了や、干渉信号の終了による重畳解除の検出は、干渉信号検出部5803で干渉信号を検出した後に、複数のアンテナから得られる受信ベースバンド信号間の相関(アンテナ間相関値)の変化を検出することで行ってもよいし、或いは隣接チャネルの信号を観測し、隣接チャネルの信号の電力値変化を検出することで行ってもよい。
また、複数のアンテナに個々に対応した複数系統の受信ベースバンド信号のそれぞれについて電力値を観測し、複数系統の受信ベースバンド信号のうちどれか1つでも所定のしきい値を超えるか或いはこれを下回る場合に重畳が発生或いは解除した、つまり合成信号が発生或いは終了したと判断してもよい。または、所定数以上の系統について電力値が所定のしきい値を超えるか或いはこれを下回る場合に合成信号が発生或いは終了したと判断してもよい。
合成信号検出部5804は、希望信号の受信中に干渉信号が到来したことを検出する機能も備える。この検出方法は上記した干渉信号検出部5803の動作と似ている。具体的には、合成信号検出部5804は、複数のアンテナから得られる受信ベースバンド信号を入力し、受信ベースバンド信号間の相関(アンテナ間相関値)の変化を検出することで、希望信号の受信中に干渉信号が到来、すなわち合成信号が到来したこと、及び、合成信号の到来中に干渉信号或いは希望信号が終了、すなわち合成信号が終了したことを検出することができる。或いは、受信ベースバンド信号の電力値の変化等を基に合成信号の到来及び終了を検出することができる。また、合成信号検出部5804は、合成信号の到来及び終了の時刻を示す時刻信号を干渉識別部5805へ出力する。干渉信号識別部5805は、この時刻信号を受けると、干渉信号抑圧部5807から来た特徴量を合成信号の特徴量であると認識する。また、合成信号検出部5804は、希望信号の受信中に干渉信号が到来したことを検知すると、特徴量テーブルの参照命令を干渉識別部5805へ出力する。ここで言う「特徴量テーブルの参照命令」とは、干渉識別部5805に干渉情報記憶部5806内の特徴量テーブルを参照させる命令である。この命令を受けると、干渉識別部5805は特徴量テーブルの情報を参照する。干渉識別部5805はテーブルに無い新たな特徴量を干渉信号抑圧部5807から受けたことが分かると、干渉信号記憶部5806に対し新たな特徴量を保存させる命令を出す。
なお、合成信号検出部5804は、図53に示されるように、複数のサブバンド分離部51301−1、・・・、51301−kと、サブバンド統合合成信号検出部51302とを含む構成とすることができる。これにより、サブバンド毎の電力値やアンテナ間相関値を用いて総合的に電力値やアンテナ間相関値の変化を検出することもでき、干渉信号をより高い精度で検出することができる。
干渉識別部5805は、干渉信号検出部5803からの時刻信号と、合成信号検出部5804からの時刻信号及びテーブル参照命令信号と、干渉信号抑圧部5807からの特徴量とを基に、合成信号、干渉信号にそれぞれ固有の識別信号を干渉情報記憶部5806へ出力する。この動作は、合成信号と干渉信号をそれぞれ一意に認識するための動作である。干渉信号検出部5803から干渉信号到来時刻を示す時刻信号、合成信号検出部5804から合成信号到来時刻を示す時刻信号が入力されると、干渉信号抑圧部5807からの合成信号特徴量、干渉信号特徴量に基づきそれぞれ識別信号を生成し、この識別信号を干渉情報記憶部5806へ出力する。具体的には、識別信号として、複数のアンテナから得られる受信ベースバンド信号間の相関(アンテナ間相関値)、アンテナ間相関値の時間平均値を意味する信号、受信電力を意味する信号を挙げることができる。尚、アンテナ間相関値が所定の範囲内であれば同一の識別信号を付加してもよい。
また、干渉局が送信局と同一のチャネルで信号を送る局であり、受信局において干渉信号が干渉信号抑圧動作の前にあらかじめ受信されているならば、干渉信号のMACアドレス等を識別信号としても良い。
また、干渉識別部5805に、合成信号検出部5804からテーブル参照命令信号が入力された場合においても、干渉識別部5805は干渉信号抑圧部5807からの特徴量を基に、先程と同様に識別信号を生成し、干渉情報記憶部5806へ識別信号を出力する。
干渉情報記憶部5806は、干渉信号抑圧部5807が干渉信号特徴量の測定を行った際には、干渉識別部5805から出力された干渉信号特徴量用識別信号と、干渉信号の特徴量を示す特徴量信号(干渉信号抑圧部5807から出力される)とを入力し、干渉信号の特徴量に、その特徴量の識別信号を付して、これを図54に例示されるように特徴量テーブルに記憶する。
また、干渉情報記憶部5806は、干渉信号抑圧部5807が合成信号特徴量の測定を行った際には、干渉識別部5805から出力された合成信号特徴量用識別信号と、合成信号の特徴量を示す特徴量信号(干渉信号抑圧部5807から出力される)とを入力し、合成信号の特徴量に、その特徴量の識別信号を付して、これを図54に例示されるように特徴量テーブルに記憶する。
一方、干渉情報記憶部5806は、干渉信号抑圧部5807が干渉信号抑圧を行う際には、合成信号の識別情報が干渉識別部5805から干渉情報記憶部5806へ出力される。干渉情報記憶部5806は、その内部にある特徴量テーブルを参照し(図54参照)、入力された識別情報(例えばS+A)を基にどの干渉局から干渉信号が到来したかを推定する。そして、推定された干渉局(例えばA)の干渉信号特徴量(WA)を干渉信号抑圧部5807へ出力する。
干渉信号抑圧部5807は、受信ベースバンド信号から干渉信号及び合成信号の特徴量を測定してこれら特徴量信号を合成信号検出部5804、干渉識別部5805、及び干渉情報記憶部5806へ出力する。また、干渉信号抑圧部5807は、干渉情報記憶部5806から出力された干渉信号の特徴量を用いて、受信ベースバンド信号に含まれる干渉信号成分を抑圧し、干渉信号抑圧を行った信号を復調し、復調データを外部へ出力する。
実施例1では、図49に示した干渉信号抑圧部5807に、干渉信号抑圧技術として、本出願人が先に出願した技術(国際公開第2006/003776パンフレット参照)を利用することができる。この技術は、干渉信号受信前にあらかじめ測定した不要信号列ベクトルの共分散行列を用い、干渉局から受信局に至る伝送路と、干渉局からの干渉を反映させた上で希望信号送信局から送信された信号とを推定する干渉信号抑圧装置に関するものである。また、変復調方式として、OFDM方式等のマルチキャリア変調方式を用いた場合を例にとって説明する。
図55は、前述の国際公開公報に開示された干渉信号抑圧装置を適用した場合の干渉信号抑圧部51101の一例を示すブロック図である。図55に示される干渉信号抑圧部5807は、複数のサブバンド分離部51102−1、・・・、51102−kと、伝送路推定部51104と、干渉信号測定部51105と、重み付け合成部51107と、復調部51106とを備えている。
サブバンド分離部51102−1、・・・、51102−kは、複数のアンテナ(図示せず)に対応した複数系統の受信ベースバンド信号を、それぞれ複数のサブバンド信号に分割し、受信サブバンド信号をメモリ51108、伝送路推定部51104、及び干渉信号推定部51105へ出力する。受信ベースバンド信号を複数のサブバンド信号に分離する方法としては、例えば、高速フーリエ変換(FFT)、ウエーブレット変換、またはフィルタバンク等を用いることができる。なお、図55ではサブバンド分離部51102−1、・・・、51102−kをアンテナ入力ごとに設けているが、1つのサブバンド分離部を時分割で使用するようにしてもよい。
伝送路推定部51104は、各受信サブバンド信号に含まれる既知信号に基づいて、伝送路推定を行い、伝送路推定信号Hを重み付け合成部51107へ出力する。干渉信号測定部51105は、各受信サブバンド信号の特徴量として、各受信サブバンド信号間の相関である共分散行列Ruu(アンテナ間相関値)を求め、これを特徴量信号として干渉情報記憶部5806等(図49参照)へ出力する。重み付け合成部51107は、伝送路推定部51104から出力された伝送路推定信号Hと、干渉情報記憶部5806から出力された干渉信号抑圧用の干渉信号特徴量(共分散行列Ruu)とから、各サブバンドについて、式1に示されるように受信サブバンド信号rを重み付け合成し、干渉信号成分を抑圧した信号vを出力する。
v=RSSHH(HRSSHH+Ruu)-1r ・・・(式5−1)
ここで、AHはAの複素共役転置、A-1はAの逆行列を表す。
RSSは、送信局から送出された信号sの共分散行列を表し、送信信号の統計的性質から知ることができる。
復調部51106は、重み付け合成部51107から出力される、干渉信号成分を抑圧した信号vを復調し、復調データを外部へ出力する。重み付け合成部51107は、サブバンド分離部51102−1、・・・、51102−kからの複数のサブバンド信号を、上記した伝送路推定信号Hと共分散行列Ruuを基に重み付け合成する。この時、伝送路推定信号Hすなわち干渉信号抑圧用特徴量の算出、およびこの特徴量を保持する時間が必要となるので、メモリ51108はサブバンド分離部51102−1、・・・、51102−kからの信号を遅延させるために一時的に保持する。
以上説明したように、図55に示される干渉信号抑圧部5807は、干渉信号抑圧の前にあらかじめ、干渉信号の特徴量として、複数のアンテナによる受信信号間のアンテナ間相関値を測定する。このアンテナ間相関値に基づいて複数のサブバンド信号を重み付け合成することで、干渉信号抑圧部5807は、受信信号の干渉成分を抑圧することができる。
図51を用いて、受信局5802が干渉信号を測定するときの動作の一例を説明する。まず、受信局5802(図48参照)は、時刻T1に干渉信号5106aが到来すると、その時刻T1を検出し、この干渉信号5106aについてアンテナ間相関値等の特徴量の測定を開始する。そして、時刻T2に希望信号5105aが到来すると、その時刻T2を検出し、既に測定を開始していた干渉信号5106aの特徴量に識別子Aを付与し、この識別子Aを干渉信号5106aに付与してこれを記憶する。時刻T2では希望信号5105aも到来するので、時刻T2〜T3の期間は希望信号5105aと干渉信号5106aが合成されて到来している。受信局5802は時刻T2において合成信号の到来を検出し、特徴量の測定を開始する。そして、T3において、干渉信号5106aが終了したことを検出すると、測定した特徴量特徴量は干渉信号5106aと希望信号の合成信号の特徴量であると判断し、この合成信号の特徴量に識別子A+Sを付与し、この特徴量WS+Aを記憶する。
受信局5802は、次の干渉信号5106bが到来した場合も同様に時刻T4を検出し、干渉信号106bの特徴量の測定を行う。時刻T5に希望信号5105bが到来すると、その時刻T5を検出し、既に測定を開始していた干渉信号5106bの特徴量に識別子Bを付与し、この特徴量WBを記憶する。さらに、時刻T5〜T6の期間は希望信号5105bと干渉信号5106bが重畳されて到来している。受信局5802は、特徴量の測定を開始し、T6で干渉信号5106bの終了を検出すると、測定した特徴量は干渉信号5106bと希望信号5105bの合成信号の特徴量であると判断し、この合成信号の特徴量に識別子B+Sを付与し、この特徴量WS+Bを記憶する。
図51に示されるような干渉信号及び希望信号が到来し、これら信号の特徴量の測定を行うと、干渉情報記憶部5806には、図54に示されるような特徴量情報が干渉局情報とともに記憶される。これを特徴量テーブルと呼ぶ。図54において、列(a)は干渉局の識別子、列(b)は干渉信号又は合成信号の特徴量である。干渉局の識別子S+Aは、希望信号Sと干渉信号Aの合成信号の識別子であり、この合成信号の特徴量はWS+Aとなる。同様に、干渉局の識別子S+Bは、希望信号Sと干渉信号Bの合成信号の識別子であり、この合成信号の特徴量はWS+Bとなる。これらの情報を参照することで、合成信号の特徴量を手掛かりに、合成信号に含まれる干渉信号の特徴量を取得することができる。
次に、図50を参照しながら、受信局が干渉信号抑圧するときの動作例を説明する。図50において、希望信号5105cは送信局5101が送信した信号であり、干渉信号5106cは干渉局5103が送信した信号である。図51を参照して既に説明したように、干渉信号抑圧前にあらかじめ、干渉信号の特徴量および合成信号の特徴量の測定を行い、特徴量テーブルにこれらの情報が記憶されているものとする。
まず、受信局5802は、時刻T7において、希望信号5105cと混信する形で干渉信号5106cが到来したことを検出する。この時、受信局5802は合成信号の到来を検出したことになり、この合成信号の特徴量を検出する。次いで、受信局5802は、図54に示される特徴量テーブルを参照する。特徴量テーブルを参照することで、受信局5802は、合成信号の特徴量を手掛かりに希望信号5105cにどの干渉局からの信号が重畳されたのかを推定することができる。つまり、合成特徴量としてWS+Aが測定されると、図54の特徴量テーブルを参照することで、合成信号は、干渉局Aを送信元とする干渉信号5106cと希望信号5105cの合成信号であると推定することができる。よって、受信局5802は時刻T7〜T8の期間、到来している干渉信号5106cの特徴量WAを知ることができ、この特徴量WAを用いて受信信号すなわち合成信号の干渉信号抑圧を行うことが可能となる。
図56は、実施例1における干渉信号特徴量及び合成信号特徴量の測定動作、並びにこれら特徴量を保持するテーブルの作成例を示すフローチャートである。図51、54、56を用いて、干渉信号特徴量及び合成信号特徴量の測定動作、並びにこれら特徴量を保持するテーブルの作成動作を説明する。
まず、干渉信号5106a(図51参照)が送信されると、受信局は干渉信号5106aが到来したことを検出する(ステップS5501)。次に、受信局は、到来した干渉信号5106aの特徴量を測定する(ステップS5502)。次に、受信局は、干渉信号5106aが終了したか否かを判断する(ステップS5503)。もし、干渉信号5106aが終了していなければ(ステップS5503のNo)、遅れて希望信号5105aが到来したかを判定する(ステップS5504)。希望信号5105aが到来していなければ(ステップS5504のNo)、干渉信号5106aの特徴量の測定を継続する。もし、干渉信号5106aが終了したら(ステップS5503のYes)、測定した特徴量に識別子A(図54参照)を付与してその特徴量WAを特徴量テーブルに記憶する(ステップS5505)。干渉信号5106aが終了していないときに、希望信号5105aが到来した場合(ステップS5504のYes)、合成信号(図示せず)の特徴量を測定する(ステップS5506)。合成信号が到来している間は(ステップS5507のNo)、継続して合成信号の特徴量を測定する。干渉信号5106a又は希望信号5105aが終了することで合成信号が終了すれば(ステップS5507のYes)、測定した合成信号の特徴量に識別子S+Aを付与してその特徴量WS+Aを特徴量テーブルに記憶する(ステップS5505)。以上により、干渉信号5106a及び合成信号の測定動作、特徴量テーブルの作成動作が完了する。
図57は、実施例1の受信局において、干渉信号を受信中に希望信号が到来した場合の干渉信号抑圧動作の一例を示すフローチャートである。図51、54、57を用いて、干渉信号到来中に希望信号が到来した場合における干渉信号抑圧動作を説明する。
まず、受信局は干渉信号5106a(図51参照)の到来を検出する(ステップS5601)。次に、希望信号5105aの到来を検出した場合(ステップS5602)、希望信号5105a到来までに測定した干渉信号5106aの特徴量WA(図54参照)を用いて、受信信号中に含まれる干渉信号を抑圧し、希望信号5105aを復調することができる。次に、受信局は、希望信号5105aを復調しながら、干渉信号5106aが終了したかどうかを判定する(ステップS5604)。干渉信号5106aが終了すると(ステップS5604のYes)、受信局は、希望信号5105aが終了したかどうかを判定する(ステップS5605)。希望信号が終了していなければ(ステップS5605のNo)、受信局は、希望信号5105aの終了まで希望信号5105aの復調を続ける(ステップS5606)。希望信号が終了すれば(ステップS5605のYes)、受信局は希望信号5105aの復調動作を終了する。以上により、干渉信号の抑圧動作、希望信号の復調動作が完了する。希望信号5105aの長さは、固定長であるか、或いは、固定長でなくても希望信号5105aのプリアンブル後に付加されるヘッダ情報から希望信号5105aの長さを知ることができるので、受信局は希望信号5105aの終了時点を認識することができる。従って、希望信号5105aの終了と干渉信号5106aの終了を誤って判断することは無い。
図58は、実施例1の受信局において、希望信号の受信中に、干渉信号が到来した場合の干渉信号抑圧動作の一例を示すフローチャートである。図50、54、58を用いて、希望信号受信中に干渉信号が到来した場合における干渉信号抑圧動作を説明する。
まず、受信局は希望信号5105c(図50参照)の到来を検出する(ステップS5701)。希望信号5105c受信中に、干渉信号5106cの到来を検出した場合(ステップS5702)、受信局は特徴量テーブルを参照する(ステップS5703)。ここで、合成信号特徴量WS+A(図54参照)が特徴量テーブルに有れば(ステップS5704のYes)、受信局は特徴量テーブルを参照することで干渉信号5106cを送信した干渉局Aを特定し(ステップS5705)、あらかじめ測定した干渉局Aからの干渉信号5106cの特徴量WAを用いることで干渉信号抑圧を行う(ステップS5706)。次に、受信局は、希望信号5105aを復調しながら、干渉信号5106aが終了したかどうかを判定する(ステップS5707)。干渉信号5106aが終了すると(ステップS5707のYes)、受信局は、希望信号5105aが終了したかどうかを判定する(ステップS5708)。希望信号が終了していなければ(ステップS5708のNo)、受信局は、希望信号5105aの終了まで希望信号5105aの復調を続ける(ステップS5709)。希望信号が終了すれば(ステップS5708のYes)、受信局は希望信号5105aの復調動作を終了する。以上により、干渉信号の抑圧動作、希望信号の復調動作が完了する。
以上説明したように、実施例1における受信局5802は、干渉信号の到来中に希望信号が到来した場合には、希望信号到来前に干渉信号の特徴量を測定し、その特徴量に基づき、合成信号中に含まれる干渉信号を抑圧し、誤り無く希望信号を復調することができる。
さらに、実施例1における受信局5802は、希望信号の受信中に干渉信号が到来した場合においても、その干渉信号を抑圧することができる。すなわち、実施例1における受信局5802は、干渉信号の特徴量を測定しこれをテーブルに記憶するだけでなく、希望信号と干渉信号が混信してなる合成信号の特徴量を測定しこれもテーブルに記憶しておく。つまり、干渉信号だけが到来した場合の特徴量と、干渉信号到来中に希望信号が到来した場合の合成信号の特徴量を、干渉局毎に互いに関連付けて記憶しておく。これにより、希望信号の受信中に干渉信号の到来が検出されたときに、合成信号の特徴量を測定することで、その測定した合成特徴量と記憶した合成特徴量を照合し、記憶した合成特徴量に関連付けられた干渉信号特徴量を干渉情報記憶部5806から読み出し、この干渉信号特徴量を基に干渉信号抑圧を行うことができる。また、この技術は合成信号の特徴量を保存するところに特徴があるため、受信局と同一のチャネルで運用される通信システムで適用できることは勿論、受信局と異なるチャネルで運用される通信システムに適用することもできる。また、希望信号に複数の干渉信号が重畳される場合においても、あらかじめ合成信号の特徴量を保持していれば、同様の技術でこれら干渉信号を抑圧することが可能である。また、あらかじめ記憶しておいた特徴量を読み出すので、簡易かつ短時間でどの干渉局からの干渉信号が到来したかを判定し、干渉信号抑圧に用いる特徴量を切り替えることができる。
なお、実施例1において、干渉信号検出や干渉信号抑圧などの信号処理は受信ベースバンド信号において行うものとしたが、これに限るものではなく、各処理につき、中間周波信号や高周波信号において信号処理を行う構成としても良い。
なお、実施例1では、干渉信号抑圧部5807は図49に示されるものを例に説明したが、干渉信号抑圧部807の構成はこれに限られない。すなわち、図49では、マルチキャリア変調方式を適用した場合を例にとって説明したが、例えば、QPSK、QAM等のシングルキャリア変調方式を適用することも可能である。シングルキャリア変調方式に適用するには、図49における干渉信号抑圧部5807を、図55に示されるものから図59に示されるものに置き換えるとよい。図59に示される干渉信号抑圧部58070は、サブバンド分離部を有しない構成となっており、それ以外は図55の構成と同じである。尚、同じ動作する構成要素については同一の参照符号を付してその説明を省略する。また、干渉信号の特徴量を用いて干渉成分を抑圧する別の干渉信号抑圧技術として、例えば、アダプティブアレイによる干渉信号抑圧技術を適用することも可能である。
また、図49に示される干渉信号抑圧部5807に代えて、図60に示される、アダプティブアレイを適用した干渉信号抑圧部58071を用いることも可能である。図60に示す干渉信号抑圧部58071は、複数の位相制御部51003−1、・・・、51003−kと、合成部51005と、誤差検出部51006と、重み係数演算部51004と、スイッチ51008と、復調部51007とを備えている。
複数の位相制御部51003−1、・・・、51003−kは、スイッチ51008から出力される特徴量に従って、受信ベースバンド信号の位相を制御し、位相制御された受信ベースバンド信号を合成部51005へ出力する。合成部51005は、位相制御された複数の受信ベースバンド信号を合成し、合成信号を出力する。復調部51007は、入力された合成信号を復調し、復調データを外部へ出力する。誤差検出部51006は、合成信号と参照信号との誤差を検出し、誤差信号を重み係数演算部51004へ出力する。重み係数演算部51004は、誤差信号に従って、受信ベースバンド信号の位相を制御するための重み係数を演算し、これを特徴量としてスイッチ51008、干渉情報記憶部5806等(図49参照)へ出力する。スイッチ51008は、干渉信号測定中であるか、或いは干渉信号抑圧中であるかに応じて、干渉情報記憶部5806から出力される干渉信号抑圧用特徴量と、重み係数演算部51004から出力される特徴量とを切り換え、その特徴量を位相制御部51003−1、・・・、51003−kへ出力する。
このように、図60に示される干渉信号抑圧部58071は、フィードバックループを構成することで、干渉信号の特徴量として、干渉信号抑圧するための重み係数を測定することができる。
図60に示される干渉信号抑圧部58071を用いて、干渉信号測定を行う場合の動作を説明する。スイッチ51008は、重み係数演算部51004からの特徴量(重み係数)を位相制御部51003−1、・・・、51003−kへ出力するように制御されている。重み係数演算部51004は、干渉信号が到来したことを検出すると、干渉信号の到来方向にヌル点が向くように干渉信号の特徴量である重み係数を算出する。重み係数が収束すると、干渉情報記憶部5806は、収束した重み係数に識別子を付与して記憶する。
次に、図60に示される干渉信号抑圧部58071を用いて干渉信号抑圧を行う場合の動作を説明する。希望信号の途中から干渉信号が到来した場合には、図49を用いて説明した場合と同様、合成信号の特徴量を基に干渉信号の特徴量を推定し、適切な重み係数に切り換える。このとき、スイッチ51008は干渉情報記憶部5806からの特徴量(重み係数)を位相制御部51003−1、・・・、51003−kへ出力するように制御されている。一度、干渉情報記憶部5806から出力された重み係数が読み込まれると、スイッチ51008は、再び重み係数演算部51004から出力された重み係数を位相制御部51003−1、・・・、51003−kへ出力するように切り換える。
以上の動作により、アダプティブアレイを適用した干渉信号抑圧部58071を用いても、干渉信号抑圧をすることが可能となる。あらかじめ記憶しておいた重み係数を読み出すので、重み係数を新規に算出する必要が無く、短時間で重み係数を切り換えることができる。
尚、実施例1においては、干渉信号抑圧後の信号のフレームチェックを行うフレームチェック部(図示せず)を更に備えた構成としてもよい。この場合、取得された干渉信号特徴量が複数存在する場合、干渉信号抑圧部5807において、それら各特徴量に基づき干渉信号抑圧を行う。更に、干渉信号抑圧後の各信号のフレームチェックを、フレームチェック部で行う。フレームチェックを行うことで、正確に干渉信号抑圧が行われている信号のみを抽出することができる。フレームチェックの方式としては、例えばCRC(Cyclic Redundancy Check)を挙げることができる。
また、実施例1においては、干渉情報記憶部5806において記憶された特徴量が一定期間、干渉信号抑圧時に測定された合成信号特徴量との照合に用いられなかった場合にその特徴量を破棄する破棄部(図示せず)を更に備える構成としてもよい。
また、実施例1においては、干渉情報記憶部5806において記憶された特徴量を干渉信号抑圧に用いた結果、干渉信号抑圧後の信号に所定の通信品質が得られなかった場合、その特徴量を破棄する破棄部(図示せず)を更に備える構成としてもよい。通信品質は、例えば、干渉信号抑圧後の信号にCRC等のフレームチェックをかけることにより確認することができる。
また、実施例1においては、取得された干渉信号特徴量が複数存在する場合、希望信号の受信履歴に基づき、取得された干渉信号特徴量の数を絞り込む特徴量絞込み部(図示せず)を更に備えた構成としてもよい。受信履歴に残っている希望信号のうち、他に比べて多く残っている受信信号は、再度受信する可能性が高い。よって、新たに信号を受信した際、受信履歴に多く残っている受信信号と同一でない信号は干渉信号であると判断することができる。
また、実施例1においては、取得された干渉信号特徴量が複数存在する場合、直前に受信した希望信号に基づき、取得された干渉信号特徴量の数を絞り込む特徴量絞込み部(図示せず)を更に備えた構成としてもよい。直前に受信した受信信号は、再度受信する可能性が高い。よって、新たに信号を受信した際、直前に受信した受信信号と同一でない信号は干渉信号であると判断することができる。
なお、各実施形態で説明した無線局が備える各機能ブロックは、典型的には、集積回路であるLSIとして実現される。これらは個別に1チップ化されてもよいし、或いは一部または全てを含むように1チップ化されてもよい。本実施の形態で用いられる集積回路は、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後にプログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術により、LSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適応等が可能性としてあり得る。
以下、本発明の第6の実施形態について説明する。
(第6の実施形態)
(実施例1)
まず、第6の実施形態の実施例1に係る干渉信号抑圧装置を備えた無線通信システム全体の構成例及び動作例を説明する。実施例1に係る干渉信号抑圧装置は、無線通信システムにおける受信局として位置付けることができる。以下の説明では、実施例1に係る干渉信号抑圧装置を、必要に応じて受信局と称するものとする。
図61は、第6の実施形態の実施例1に係る干渉信号抑圧装置(受信局)を備えた無線通信システムの構成を示す図である。この無線通信システムは、複数の無線局で構成される。この無線通信システムは、送信局6401と、受信局6402と、干渉信号を送信する無線局(干渉局)6403,6404とを備えている。
送信局6401は受信局6402宛の送信データを無線信号(希望信号)6405に変換して送信する。受信局6402は無線信号6405を受信して復調を行い、送信局6401からの送信データを得ることで通信が行われる。
一方、干渉局6403と干渉局6404が互いに通信を行うものとする。干渉局6403は干渉局6404宛の無線信号(干渉信号)6406を送信し、干渉局6404はこれを受信する。また干渉局6404は干渉局6403宛の無線信号(干渉信号)6407を送信し、干渉局6403はこれを受信する。
ここで、無線信号6405が送信されるタイミングと、無線信号6406または6407が送信されるタイミングが重なると、受信局6402では希望信号である無線信号6405と干渉信号である無線信号6406または6407が含まれた信号が受信される。
図62は、実施例1における干渉信号抑圧装置(受信局)6402の構成を示すブロック図である。図62に示されるように、実施例1に係る干渉信号抑圧装置6402は、アンテナ6101、6102と、サブバンド分離部6103、6104と、アンテナ間相関値検出部6105と、メモリ6106と、比較部6107と、プリアンブル検出部6108と、電力検出部6109と、タイミング検出部6110と、判定部6111と、干渉信号抑圧部6112と、復調部6113と、相関保存判定部6114と、相関保存判定基準測定部6115とを備える。
図63は、送信局6401が送信する希望信号のフォーマットの一例を示す図である。この希望信号は、同期検出および伝送路推定に用いられるプリアンブルシンボル6501と、データシンボル6502とを備える。データシンボル6502は、PHYヘッダ6503、MACヘッダ504を含む。PHYヘッダ503は、データシンボル502内のPHYヘッダ6503の後ろに続く部分の変調パラメータおよびデータ長の情報を有する。MACヘッダ6504は、送信元アドレス、宛先アドレス、および制御情報を有する。希望信号の変調方式は特に限定されるものではないが、例えばIEEE802.11a準拠の無線LANでは希望信号の各シンボルはOFDM変調される。
図62を用いて、干渉信号抑圧装置(受信局)6402の各部の動作概要を説明する。
アンテナ6101、6102で受信された信号は、サブバンド分離部6103、6104で複数のサブバンド信号に分離される。サブバンド分離にはたとえばFFTやウエーブレット変換またはフィルタバンクなどを用いることができる。送信局6401において無線信号の各シンボルがOFDM変調される場合は、干渉信号抑圧装置(受信局)6402においてOFDM復調のためのFFTを用いてもよい。なお、図62ではサブバンド分離部6103、6104を各アンテナ入力毎に設けているが、サブバンド分離部を1つとし、これを時分割で使用してもよい。
アンテナ間相関値検出部6105は、サブバンド毎にアンテナ6101,6102間の信号相関を検出する。異なる方向から送信された信号は異なるアンテナ間相関値を有する。従って、アンテナ間相関値に基づき、おおよそ空間的に各干渉信号源(例えば無線局)を判別することができる。このように特徴量として複数のアンテナを用いてアンテナ間相関値を求める構成にした場合は、未知の信号であっても異なる位置にある干渉信号源を判別することができる。
なお、ここでは特徴量としてアンテナ間相関値を用いる例を示したが、干渉局ごとに異なる値を示すものであれば、どのような特徴量を用いても構わない。また、単独では判別精度の低い特徴量でも、組み合わせて用いることで干渉局の判別精度を上げることもできる。
相関保存判定基準測定部6115は、到来した干渉信号が希望信号の受信特性の劣化要因となるか否かの判定基準値を相関保存判定部6114において設定するために、その判定基準値の設定要素である干渉信号や希望信号の受信電力等を測定するものである。ここで測定された干渉信号や希望信号の受信電力等は、相関保存判定基準要素として、相関保存判定部6114へ入力される。
相関保存判定基準値の種類は特に限定されるものではないが、その初期値としては例えば熱雑音の受信電力を挙げることができる。また、相関保存判定基準値は更新可能とすることができる。相関保存判定基準値は、受信信号に含まれる干渉信号の受信電力とすることもできる。また、相関保存判定基準値の初期値を熱雑音の受信電力に設定しておき、干渉信号を受信しその干渉信号が所定の要件を満たすときに、判定基準値をその干渉信号の受信電力に更新することもできる。その所定の要件は、例えば、受信中の干渉信号の受信電力が、過去に受信した干渉信号の受信電力の最大値を超えるという要件を挙げることができる。この要件を採用した場合、大きな電力の干渉信号を受信するにつれて、順次、判定基準値を更新することができる。また、初期値が熱雑音の受信電力に設定されている場合に、その熱雑音の受信電力を超える電力の干渉信号を受信したときに、判定基準値をその干渉信号の受信電力に更新することができる。相関保存判定基準値は、受信信号のSIR(希望信号電力対干渉信号電力比)とすることもできる。SIRを求めるためには、干渉信号のみならず、希望信号の受信電力の測定も必要となる。この場合の更新の要件は、例えば、受信中の信号のSIRが過去の受信信号のSIR未満となること、とすることができる。
相関保存判定部6114は、アンテナ間相関値検出部6105で検出されたアンテナ間相関値をメモリ6106に保存するべきかどうかの判定を行うものである。相関保存判定部6114は、相関保存判定基準測定部6115から入力された相関保存判定基準要素信号6116と、判定部6111から入力された希望・干渉判定結果信号6117に基づき、アンテナ間相関値を保存するべきかどうかの判定を行う。
希望・干渉判定結果信号6117は、現在受信中の信号のアンテナ間相関値が希望信号のものであるのか、或いは干渉信号のものであるのかを示す信号である。希望・干渉判定結果信号6117は、判定部6111から出力される。
相関保存判定部6114において、アンテナ間相関値検出部6105から出力されるアンテナ間相関値を保存するべきであると判定された場合、そのアンテナ間相関値はメモリ6106に保存される。
比較部6107は、現在受信中の信号のアンテナ間相関値と、メモリ6106に記憶されている過去に受信した干渉信号の複数のアンテナ間相関値とを比較する。比較部6107は、その比較により、メモリ6106に記憶されているアンテナ間相関値と、現在受信中の信号のアンテナ間相関値との類似度を算出する。算出された類似度は、判定部6111へ出力される。類似度の算出方法は、特に限定されるものではないが、例えば第1の実施形態等と同様とすることができる。
プリアンブル検出部6108は、アンテナ6101,6102から入力された受信信号に希望信号のプリアンブルが含まれるかどうかを検出する。
電力検出部6109は、アンテナ6101,6102から入力された受信信号の受信電力の変動を検出する。タイミング検出部6110は、電力検出部6109で検出された受信電力の変動に基づき、変動の時間間隔を検出する。タイミング検出部6110は、たとえば受信電力が所定の閾値を超えて持続している時間や、受信電力が検出されていない時間の測定を行う。
判定部6111は、比較部6107、プリアンブル検出部6108、電力検出部6109、タイミング検出部6110の出力のうち、例えばプリアンブル検出部6108からの出力に基づいて、受信中の信号に希望信号が含まれるか否かを判定する。また、判定部6111は、受信中の信号に希望信号が含まれないと判定したときは、受信中の信号が干渉信号であると判定することができる。受信信号に希望信号が含まれるか否かの情報は、相関保存判定部6114等へ出力される。また、判定部6111は、受信中の信号に希望信号が含まれると判定したときは、比較部6107から入力した類似度の情報に基づき、メモリ6106に記憶されているアンテナ間相関値の中から、受信中の干渉信号のアンテナ間相関値と類似度の最も高いものを選択する。メモリ6106に記憶されていたアンテナ間相関値の中で類似度の最も高いと判定された干渉信号特徴量の情報は、干渉信号抑圧部6112へ出力される。
干渉信号抑圧部6112は、判定部6111から得た干渉信号特徴量についての情報に基づいて、希望信号に重なった干渉信号を抑圧する。復調部6113は、干渉信号が抑圧された希望信号の復調を行う。
図64は、相関保存判定部6114の構成を示すブロック図である。相関保存判定部6114は、判定条件比較部61201と、メモリ61202とを含む。判定条件比較部61201は、アンテナ間相関値検出部6105からアンテナ間相関値信号6118、相関保存判定基準測定部6115から相関保存判定基準要素信号6116、判定部6111から希望・干渉判定結果信号6117をそれぞれ入力する。
判定条件比較部61201は、希望・干渉判定結果信号6117の入力により、希望信号が到来したと判定した場合、相関保存判定基準要素の一つである希望信号の受信電力を示す信号6116をメモリ61202に入力する。メモリ61202は、希望信号の受信電力を更新する。希望信号の受信電力は、相関保存判定基準値としてSIRを求める際に使用される。
判定条件比較部61201は、希望・干渉判定結果信号6117の入力により、干渉信号が到来したと判定した場合、相関保存判定基準要素の一つである干渉信号の受信電力を示す信号6116をメモリ61202に入力する。メモリ61202は、受信中の干渉信号が過去に受信した干渉信号より大きければその値を更新する。干渉信号の受信電力は、相関保存判定基準値として使用することができる。また、干渉信号の受信電力は、相関保存判定基準値としてSIRを求める際に使用することができる。
また、判定条件比較部61201は、希望・干渉判定結果信号6117の入力により、干渉信号が到来したと判定した場合、メモリ61202から相関保存判定基準要素の一つである干渉信号(過去に受信した干渉信号)の受信電力を取得する。判定条件比較部61201は、干渉信号の過去の受信電力と受信中の干渉信号から得た受信電力を比較する。受信中の干渉信号から得た受信電力は、特許請求の範囲に記載した「比較対象値」である。過去の受信電力よりも、受信中の干渉信号から得た受信電力の方が大きければ、受信中の干渉信号の方が過去に受信した干渉信号よりも希望信号の受信特性に与える影響が大きい。よって、判定条件比較部61201は、受信中の干渉信号のアンテナ間相関値を示す信号をメモリ6106へ出力する。メモリ6106は、入力した干渉信号のアンテナ間相関値を保存する。ここでは、相関保存判定基準値をその一例として干渉信号の受信電力としている。この場合、干渉信号のメモリ6106は、保存されている相関保存判定基準値を比較対象値が超えた場合に、干渉信号のアンテナ間相関値を保存することになる。従って、メモリ6106の保存容量に必要以上に負担を掛けることがない。しかも、希望信号の受信特性の劣化要因となる干渉信号のアンテナ間相関値のみを保存することができる。
また、受信中の干渉信号から得た保存判定基準値が過去の相関保存判定基準値よりも干渉信号特徴量の保存条件として厳しいものであれば、メモリ61202において、過去の相関保存判定基準値を、受信中の干渉信号から得た保存判定基準値に更新する。そうでなければ、通常は、メモリ61202の保存内容を更新しない。
なお、図62に示される相関保存判定基準測定部6115は、サブバンド分離前の受信信号を入力しているが、実施例1においては必ずしもサブバンド分離前の受信信号を入力する必要はない。例えば図65,66に示される如く、サブバンド分離後の受信信号を入力しても良い。サブバンド分離後の受信信号を入力することにより、サブバンド毎の測定を行うことが可能となり、より精度の高い測定を行うことが可能となる。
なお、図62に示される相関保存判定部6114は、判定部6111からの希望・干渉判定結果信号6117のみで、受信中の信号が干渉信号であるのか否かの判断をしているが、実施例1はこれに限られない。例えば図66、67に示される如く、判定部6111からの希望・干渉判定結果信号6117に加え、復調部6113からの復調後のデータも利用して、受信中の信号が干渉信号であるのか否かの判断をしてもよい。これにより、希望信号や干渉信号の到来を精度良く検知することができる。ここで言う復調後のデータとしては、例えば、干渉信号の長さを示す干渉測定時間信号6119を挙げることができる。
また、希望信号の到来検知や干渉信号の到来検知に関しては、復調部6113の復調後のデータ6119からのみ判断しても良い、これによって、判定部6111の回路規模を小さくすることができる。
図68は、図66および図67に示される相関保存判定部6114−1の構成を示すブロック図である。この相関保存判定部6114−1は、図64に示される相関保存判定部6114に比べて、復調部6113からの干渉測定時間信号6119をさらに入力する点が異なっている。このような構成とすることで、干渉信号が到来している時間や、希望信号が到来している時間を正確に測定することができる。なお、干渉信号、希望信号が到来している時間を知るための信号は、かならずしも、図68に示されるように希望・干渉判定結果信号6117と干渉測定時間信号6119の両方を利用する必要はなく、干渉測定時間信号6119だけを用いても良い。
復調部6113から相関保存判定部6114−1へ入力される信号6119は、希望信号や干渉信号が到来している時間、希望信号や干渉信号が到来しない時間を相関保存判定部6114−1に知らせる。例えば、希望信号受信後のSIFS時間を示す信号を相関保存判定部6114−1へ入力すれば、希望信号が到来しない時間を知らせることができる。
なお、集中制御局が受信端末の送信機会を制御しているシステム(図示せず)においては、希望信号の送信局が希望信号を送信しない時間を示す信号を、干渉信号、希望信号が到来している時間を知るための信号として利用することができる。
また、干渉測定時間信号6119は、RTS/CTS(request to send/clear to send)等の制御パケットにおける待機期間情報であっても良い。例えばRTS/CTSを使用する通信システムにおいて、干渉信号抑圧装置(受信機)が希望信号の送信局以外の局からRTS/CTS情報を受信した場合、RTS/CTSにおける待機期間中は希望信号の送信が中止されている可能性が高い。このため、この待機期間中に到来する信号は干渉信号である可能性が高い。
図69は、実施例1に係る干渉信号抑圧装置の干渉測定動作の一例を示すフローチャートである。図69を用いて干渉測定の概略的な流れについて説明する。
まず、ステップS61101で、干渉信号抑圧装置は所定値以上の受信電力が検出されたかどうかを判定する。所定値以上の受信電力が検出されない場合は、検出されるまで受信電力の検出を続ける。所定値以上の受信電力が検出されると、ステップS61102に移る。
ステップS61102では、現在、自通信エリアで送信禁止期間が設定されているか否かを判定する。送信禁止期間が設定されていれば、受信中の信号は干渉信号であると判定する(ステップS61104)。送信禁止期間が設定されていなければ、ステップS61103に移る。
ステップS61103では、干渉信号抑圧装置は希望信号のプリアンブルが検出されたかどうかを判定する。希望信号のプリアンブルが検出されなければ、干渉信号抑圧装置は受信中の信号が干渉信号であると判定する(ステップS61104)。希望信号のプリアンブルが検出されれば、受信中の信号には希望信号が含まれている可能性があると判定する(ステップS61109)。
ステップS61104は、受信中の信号が干渉信号であると判定された状態である。ステップS61119では、測定されたアンテナ間相関値を保存するべきかどうかを判定する。具体的な判定方法に関しては図70から図72を用いて説明する。以降のステップS61105からステップS61108では、受信中の干渉信号が過去に受信した干渉信号と干渉信号源が同一であるか否かを判定する。この判定は、受信中の干渉信号の情報と、過去に受信した干渉信号の保存情報とを比較して行う。ここでの干渉信号の情報としては、サブバンド毎のアンテナ間相関値や受信電力及び受信電力の持続時間などの特徴量を挙げることができる。
ステップS61105では、受信中の信号につき希望信号の周波数帯域を含む測定周波数帯域内のアンテナ間相関値の周波数特性と、過去に測定し保存した干渉信号のアンテナ間相関値の周波数特性との類似度を求める。類似度の高いものが保存されていれば、受信中の干渉信号は過去に受信した干渉信号と同一の干渉信号源から到来した干渉信号であると判定し、アンテナ間相関値等の保存特徴量を受信中の干渉信号の特徴量に更新する(ステップS61108)。類似度の高いものが保存されていなければ、ステップS61106に移る。
ステップS61106では、受信中の信号の受信電力や電力変動の時間特性が、過去に測定し保存したものと類似しているか否かを判定する。たとえば、ほぼ一定の受信電力が持続している期間は、同一の干渉信号源からの信号が続いていると判定する。あるいは所定の間隔が空いた後受信電力が変動すれば、異なる干渉信号源からの信号に変わったと判定する。類似したものがあれば、同一の干渉信号源からの干渉信号であると判定し、保存した情報を更新する(ステップS61108)。類似したものがなければ、新たな干渉信号源からの信号であると判定し、その情報を保存する(ステップS61107)。
ステップS61107では、受信中の干渉信号が新たな干渉信号源からの干渉信号であると判定されたため、干渉信号抑圧装置は、受信中の干渉信号の情報を新たな干渉信号の情報として保存する。干渉信号抑圧装置は、情報の保存が完了したら測定を終了する。
ステップS61108では、受信中の干渉信号が過去に受信した干渉信号と同一の干渉信号源からの干渉信号であると判定されたため、同一の干渉信号源からの干渉信号と判定された過去の受信信号の情報を更新する。
ステップS61109は、受信中の信号に希望信号が含まれている可能性があると判定された状態である。以降のステップS61110及びS61111では、現在受信中の信号に干渉信号が含まれている場合に、その干渉信号が過去に受信された干渉信号と同一の干渉信号源からの信号であるかどうかを判定し、干渉信号源を特定する。干渉信号源が特定されれば、保存してある干渉信号の情報を用いて、受信中の干渉信号を抑圧することができる。ここで言う干渉信号の情報とは干渉信号の特徴量であり、例えばアンテナ間相関値である。
ステップS61110では、受信中の信号につき希望信号帯域を含む測定帯域内のアンテナ間相関値の周波数特性と、過去に測定し保存した干渉信号のアンテナ間相関値の周波数特性との類似度を求める。類似度が高いものが保存されていれば、過去に受信した干渉信号と同一の干渉信号源から到来した干渉信号であると判定する。これにより、干渉信号源を特定することができる(ステップS61113)。類似度の高いものが保存されていなければ、ステップS61111に移る。なお、類似度の判定は、希望信号帯域外のアンテナ間相関値の周波数特性について行われることが好ましい。希望信号帯域内で類似度の判定を行うと、干渉信号と希望信号が混信した帯域での類似度判定となり、干渉信号自体の類似度判定を正確に行うことが難しくなるからである。
ステップS61111では、受信中の信号の受信電力値や電力変動の時間特性が、過去に測定し保存したものと類似しているか否かを判定する。例えば、希望信号のプリアンブルが検出されないある電力が持続しており、電力が大きく変化した後プリアンブルが検出されたとする。この場合、干渉信号の途中から希望信号が重なったと判定することができる。これにより、希望信号到来後も到来前と同一の干渉信号源からの干渉信号が継続していると判定することができる。あるいは、希望信号受信中に一旦受信電力が低下し、所定の時間間隔があいた後、受信電力が大きくなれば、異なる干渉信号源からの干渉信号に切り替わったと判定することができる。このような受信電力値や電力変動の時間特性が類似したものが保存されていれば、過去に干渉信号源が同一の干渉信号を受信したと判定する。これにより、受信中の干渉信号の干渉信号源を特定することができる(ステップS61113)。このような受信電力値や電力変動の時間特性が類似したものが保存されていなければ、ステップS61112に移る。受信中の干渉信号の干渉信号源を特定できれば、保存してあるこの特定された干渉信号の特徴量を用いて、受信中の干渉信号の抑圧を行うことができる。
ステップS61112では、干渉信号抑圧装置は、受信中の信号を復調する。復調が終われば、ステップS61114に移る。
ステップS61114では、干渉信号抑圧装置は、復調信号のPHYヘッダに誤りがないかを判定する。PHYヘッダに誤りがあれば、ステップS61117に移る。PHYヘッダに誤りがなければ、ステップS61115に移る。
ステップS61115では、復調信号のMACヘッダに誤りがなく自局宛の信号であるか否かを判定する。自局宛の信号でなければ、受信中の信号は干渉信号であると判定する(ステップS61104)。これにより自通信と同一チャネルで行われる他通信についても干渉信号を判定することが可能となる。自局宛の信号であると判定されれば、受信中の信号は希望信号であると判定する(ステップS61116)。
ステップS61116では、受信中の信号が希望信号であると判定された状態である。この時点で測定していた希望信号についての保存判定基準値を相関保存判定部6114へ保存し(ステップS61120)、測定を終了する。
ステップS61117では、干渉信号抑圧装置は、希望信号帯域内の受信電力より希望信号帯域外の受信電力の方が大きいかどうかを判定する。ステップS61114においてPHYヘッダに誤りがあると判定された場合は、希望信号の受信電力が小さいために復調誤りを起こしたか、或いはステップS61103において隣接チャネルの干渉信号のプリアンブルを検出した可能性がある。そのため、希望信号帯域内の受信電力より希望信号帯域外の受信電力が大きい場合は受信中の信号は干渉信号であると判定する(ステップS61104)。希望信号帯域内の受信電力と比べて希望信号帯域外の受信電力が大きくない場合は、受信中の信号に希望信号が含まれるか否かを判定できなかったと判断する(ステップS61118)。
ステップS61118は、受信中の信号を特定できなかった状態である。干渉信号抑圧装置は、この時点で測定していたアンテナ間相関値や受信電力などの情報を干渉信号情報として保存せず、測定を終了する。
以上の処理により、干渉信号の特徴量測定および保存が可能となる。
なお、本実施例1のステップS61105とステップS61106、及びステップS61110とステップS61111では、アンテナ間相関値の周波数特性について類似したものがない場合に、受信電力の時間特性に基づいて判定を行う例を説明した。しかしながら、受信中の干渉信号が、過去に受信した干渉信号と同一の干渉信号源から到来した信号であるかどうかの判定方法は、これに限られるものではない。アンテナ間相関値の周波数特性のみを用いて判定することも可能であるし、判定の順番を入れ替えても良い。また、順番に判定を行うだけでなく、アンテナ間相関値の周波数特性と受信電力の時間特性を組み合わせて判定を行うことも可能である。
また、本実施例1では、送信禁止期間の有無や、プリアンブル検出の有無、PHYヘッダの誤りの有無や、MACヘッダの誤りの有無と自局宛の通信であるかどうかの確認という4つの判定方法を用いて、希望信号が含まれているかどうかを判定している。これらの4つの判定方法は、それぞれ単独で用いることもできるし、さらにこの4つの判定基準以外の基準と組み合わせて用いることもできる。
次に、図70乃至図72を用いて、希望信号や干渉信号が到来したときの相関保存判定部6114および相関保存判定基準測定部6115の動作を中心に説明する。
図70は、アンテナ間相関値を保存するべきか否かの判定を行う際のフローチャートである。
まず、ステップS61301で、相関保存判定部6114は、希望信号が到来したかどうかを判定する。希望信号が到来したと判定された場合、ステップS61302で相関保存判定部6114内のメモリ61202に保存された希望信号の受信電力を更新する。ステップS61301で希望信号が到来しなかったと判定された場合、ステップS61303で干渉信号が到来したかどうかの判定を行う。干渉信号が到来したと判定された場合、ステップS61304で到来した干渉信号が相関保存条件を満たしているかどうかの判定を行う。相関保存条件を満たしている場合、すなわち受信中の干渉信号の受信電力が過去の干渉信号の受信電力より大きい場合には、ステップS61305で干渉信号の受信電力を更新する。相関保存判定基準値が干渉信号の受信電力である場合は、干渉信号の受信電力の更新が、相関保存判定基準値の更新になる。相関保存条件を満たさない場合は更新されない。
相関保存判定基準値がSIRである場合は、受信中の干渉信号の受信電力と希望信号の受信電力に基づき新たなSIRを算出し、その新たなSIRが、過去のSIRと比べて小さいかどうかが判断される。新たなSIRの方が小さければ、受信中の干渉信号の方が希望信号の受信特性に影響を与える可能性が高い。よって、新しいSIRに更新される。新たなSIRが過去のSIR以上であればSIRは更新されない。相関保存判定基準値が更新される場合は、ステップS61305でメモリ6106がアンテナ間相関値を保存し、処理が終了する。ステップS61303で干渉信号が到来しなかった場合や、ステップ61304で相関保存条件が満たされない場合、信号の検出が継続される。なお、希望信号および干渉信号それぞれの受信電力を相関保存判定基準要素として用いる場合、つまり相関保存判定基準値にSIRを用いる場合は、干渉信号のみを相関保存判定基準要素として用いる場合よりも高い精度で相関保存条件を設定することが可能となる。
図71は、ステップS61304の相関保存条件に干渉信号の受信電力を利用した場合の具体例を示すフローチャートである。
まず、ステップS61401で干渉信号の受信電力が、通信システムで定められた閾値(干渉信号の受信電力閾値)より大きいかどうかが判定される。この閾値は例えば熱雑音の受信電力である。干渉閾値より大きいと判定された場合、ステップS61402で、相関保存判定部6114は、過去の干渉信号の受信電力の測定結果をメモリ61202から参照する。干渉閾値以下であると判定された場合、図70のステップS61301に戻る。ステップS61403で、相関保存判定部6114は、メモリ61202内に過去の干渉信号の受信電力の測定結果があるかどうかを判断する。過去の測定結果が無いと判断された場合、ステップS61305で相関保存判定部6114は、干渉信号の受信電力を更新(保存)し、ステップS61306で相関保存判定部6114は、受信中の干渉信号のアンテナ間相関値をメモリ6106に保存する。ステップS61403で過去の測定結果があると判断された場合、相関保存判定部6114は、ステップS61406で過去の測定結果より、受信中の干渉信号の受信電力が大きいかどうかを判定する。受信中の干渉信号の受信電力の方が大きいと判定された場合にはステップS61305で相関保存判定部6114は、干渉信号の受信電力を更新し、ステップS61306で相関保存判定部6114は、受信中の干渉信号のアンテナ間相関値をメモリ6106に保存する。一方、受信中の干渉信号の受信電力が過去の測定結果以下であると判定された場合には、図70に示されるステップS61301に戻る。この場合、干渉信号の受信電力およびアンテナ間相関値はいずれも更新されない。
ここで、ステップS61401における干渉信号閾値は熱雑音の受信電力であることが望ましい。これにより、干渉局が送信した信号のアンテナ間相関値をすべて保存判定対象とすることができる。
図72は、ステップS61304の相関保存条件にSIR(希望信号受信電力対干渉信号受信電力比)を利用した場合の具体例を示すフローチャートである。
まず、ステップS61401で受信中の干渉信号の受信電力が、通信システムで定められた閾値(干渉信号受信電力閾値)より大きいかどうかが判定される。受信中の干渉信号の受信電力が閾値より大きいと判定された場合、相関保存判定部6114は、ステップ61402で過去の干渉信号および希望信号の受信電力測定結果を、メモリ61202から参照する。受信中の干渉信号の受信電力が閾値以下であると判定された場合、図70のステップS61301に戻る。ステップ61403ではメモリ61202内に過去の干渉信号の受信電力測定結果があるかどうかが判定される。過去の測定結果が無いと判断された場合、ステップS61305で相関保存判定基準値が保存される。ステップS61306では受信中の干渉信号のアンテナ間相関値がメモリ6106に保存される。ステップS61403で過去の測定結果があると判定された場合、ステップS61505で過去の希望信号の受信電力測定結果の有無が判定される。測定結果が無いと判定されれば、ステップS61305で相関保存判定基準値が更新される。ステップS61306ではアンテナ間相関値がメモリ6106に保存される。ステップS61505で、過去の希望信号の受信電力測定結果があると判定された場合、ステップS61506でSIRが算出される。算出されたSIRがSIR閾値より小さければ、ステップS61305で相関保存判定基準値が更新される。ステップS61306では受信中の干渉信号のアンテナ間相関値がメモリ6106に保存される。ステップS61506で、算出されたSIRがSIR閾値より小さければ、図70のステップS61301に戻る。
なお、受信電力の測定は電力検出時の瞬時的な値について行われる。しかし、本発明における電力測定技術に関しては、必ずしもこの測定方法に限られるわけではない。
例えば、受信電力の測定方法に関しては、一定時間の平均受信電力について行われてもよい。この場合、伝搬環境の急激な変動により干渉信号の一時的な受信電力低下が生じても、その電力低下が測定値に与える影響を抑えることができる。
なお、図71、図72を用いて相関保存判定基準値の測定方法の一例を示したが、本発明では必ずしもこの技術に限定されるものではない。
例えば、受信中の干渉信号および希望信号の受信電力を過去の受信電力と比較する際に、直前の受信電力と比較するだけでなく、過去の時間軸上の所定個数の受信電力を平均化した電力との比較を行っても良い。これにより、伝搬環境の瞬間的な変動に左右されることなく、干渉信号および希望信号についての受信電力の測定を安定して行うことができる。
また、過去の時間軸上の所定個数の受信電力を平均化する際に、時間軸上で重み付けを行い、最近の受信電力の重みを大きくする方法が考えられる。これにより、受信電力の平均化を実現すると共に、再度干渉信号として到来する確率の高い直近の干渉信号の受信電力との比較を重視することが可能となる。
また、無線端末にGPS機能などが搭載され、無線端末間の距離が測定される場合には、受信電力ではなく無線端末間の距離に基づき、干渉信号の特徴量を保存するべきか否かの判定を行っても良い。これにより、伝搬環境に依存することなく保存するべきか否かの判定を行うことが可能となる。
なお、ステップS61506では、受信中の信号について算出したSIRがSIR閾値より大きいか否かで保存判定を行ったが、SIR閾値は希望信号の復号誤りに基づき決定されることが望ましい。
なお、SIR閾値との大小だけでなく、受信中の信号について算出されたSIRが、SIR閾値より小さく、かつ、過去の測定結果のSIRより小さい場合にアンテナ間相関値を保存する方法が考えられる。これによって、より受信特性に与える影響の大きい干渉信号のアンテナ間相関値をメモリに保存することができる。
また、SIR閾値は必ずしもシステムで定められた一意の値である必要はなく、伝送モード情報に応じて変化させても良いし、或いは、受信復号特性に応じて変化させても良い。これによって、より無線通信システムの環境に適したSIR閾値を設定することが可能となる。
また、相関保存判定基準値は必ずしも信号電力やSIRである必要はない。
例えば、相関保存判定基準値は、干渉信号が無線チャネルを使用する時間(占有時間)等のチャネル占有割合に基づく値であっても良い。具体的には、干渉信号を送信する干渉局に識別子を付与し、一定期間の信号送信回数が閾値以上である干渉局からの干渉信号の特徴量を優先的に劣化要因干渉信号の特徴量として保存することが望ましい。これにより、希望信号と重なって到来する可能性が高い干渉信号を判定し、抑圧することができる。
また、このチャネル占有割合として、一定期間内で閾値以上の時間を占有した干渉局からの干渉信号を優先的に劣化要因干渉信号としてその特徴量を保存する方法が考えられる。これにより、希望信号と重なって到来する可能性が高い干渉信号を判定し、抑圧することができる。
また、相関保存判定基準値は干渉信号のデータの種類を利用して設定しても良い。例えば、待ち時間が短いデータを送信している干渉信号や、送信優先度が高く、送信機会が多いデータを送信している干渉信号や、無線チャネルを優先的に使用する機能が付加された無線局から送信されている干渉信号は希望信号と干渉を起こす可能性が比較的高いと考えられる。よって、これらの干渉信号の相関値の保存を行う基準を緩めることで、受信特性を改善することができる。
また、相関保存判定基準値は、無線システムの通信環境を条件として設定されても良い。端末の移動などによって、伝搬環境の変動が激しい場合、過去のSIRや受信電力の値の信頼性が低くなる。このため、伝搬環境の変動が激しい場合には、相関保存判定基準を緩め、できるだけ最近の相関保存判定基準値の測定結果をメモリに保存することで、希望信号の受信特性を改善することが可能となる。
ステップS61306で、アンテナ間相関値がメモリ6106に保存される。その保存方法にはいくつかの方法が考えられる。保存できるアンテナ間相関値が1つである場合、相関保存判定の結果、アンテナ間相関値を保存するべきであると判断されれば、順次メモリ6106の内容が更新される。
複数のメモリ6106が存在する場合や、1つのメモリ6106に複数のアンテナ間相関値を保存できる場合は、より多くのアンテナ間相関値を保存することが可能となる。ここで、メモリ6106にアンテナ間相関値を保存する領域が空いている場合には、アンテナ間相関値は空いているメモリ領域に格納されることができる。メモリ6106にアンテナ間相関値を保存する領域が空いていない場合には、保存されているアンテナ間相関値のうちのいずれかを消去する必要がある。この時、好ましいメモリ消去の方法としては、古い保存結果から消去する方法がある。これにより、常に最新のアンテナ間相関値を保持することが可能となる。
なお、メモリ消去の方法は必ずしもこの手段に限られるものではない。例えば、優先度の低いものから消す方法等が考えられる。優先度の例としては、受信電力やSIRの大きなものを優先度が高いとすることができる。これによって、より希望信号の受信特性劣化に与える影響が大きい干渉信号のアンテナ間相関値を保持することが可能となる。
次に、図61に示される送受信システムの動作の一例について詳しく説明する。
ここでは送信局6401と受信局6402の間の通信を自通信とする。自通信にとって干渉局となる無線局6403と無線局6404の間の通信を他通信とする。他通信は自通信の隣接チャネルで行われるものとする。図73は、自通信と他通信の周波数帯域を示した図である。自通信は周波数帯域6801、他通信は自通信の周波数帯域に隣接する周波数帯域6802をそれぞれ用いるものとする。他通信の電力の一部が自通信の周波数帯域に漏洩している。
また、ここでは自通信と他通信は同じアクセスプロトコルを使用しているものとする。このプロトコルでは、送信の優先順位を与えるために所定のフレーム間隔を空けることが規定されている。たとえばIEEE802.11のCSMA/CAではフレーム間隔が短い順にSIFS(Short Inter Frame Space)、PIFS(Point Coordination IFS)、DIFS(Distributed Coordination IFS)などが規定されている。最も優先度の高いSIFSは確認応答(ACK)パケットの送信などに用いられる。これらのフレーム同士の間は送信禁止期間となる。その他の送信禁止期間としては特定の無線局に対してのみ送信権を与えるNAV(Network Allocation Vector)が設定された期間などがある。
図74は、図61に示される受信局6402で受信される他通信の受信電力の一例を示す図である。T1〜T4は、それぞれ時刻を示している。T1からT2の間では、無線局6403から無線信号6406が無線局6404に向けて送信される。無線局6404は無線信号6406を受信、復調する。復調が正常に行われた場合には、無線局6404は確認応答パケットを送信する。無線局6404は、プロトコルで決められたフレーム間隔(T2からT3)をあけて、無線局6404に向けて確認応答パケットである無線信号6407を時刻T3から時刻T4の間送信する。この時、無線局6403および無線局6404と受信局6402との距離や配置の関係により、無線信号6406と無線信号6407の受信電力は互いに異なる。
ここで、電力検出部6109及びタイミング検出部6110の動作の一例を説明する。電力検出部6109で所定値以上の受信電力が検出されると、タイミング検出部6110では、その持続時間および受信電力が検出されない時間(フレーム間隔)が検出される。図74の場合、持続時間としてT1からT2、T3からT4が検出され、フレーム間隔としてT2からT3が検出される。この時、T1からT2の間の受信電力値とT3からT4の間の受信電力値が異なり、且つ、T2からT3がプロトコルで規定された間隔であれば、T1からT2の受信信号とT3からT4の受信信号は異なる2つの無線局が交互に送信したものであると判断することができる。また、T3からT4が、IEEE802.11のACKパケットのようなプロトコルで規定された制御パケットの長さと等しければ、より確実に2つの無線局が交互に送信していると判断することができる。
このように、干渉信号の時間占有率および出現間隔を測定する構成とした場合、測定された時間間隔が既知のプロトコルで規定されたものであれば、干渉信号を送信する無線局の判別の精度を上げることができる。
次に、サブバンド分離部6103,6104とアンテナ間相関値検出部6105の動作の一例を説明する。
受信信号は、サブバンド分離部6103,6104でそれぞれ複数のサブバンドに分離される。アンテナ間相関値検出部6105は、受信信号のサブバンド毎にアンテナ間の信号相関値を検出する。ここで、サブバンド分離部6103,6104はFFTを用い、自通信はOFDM信号で行われるものとする。以降の説明では各サブバンドはFFTの周波数ビンを指す。アンテナ間相関値は、複数のアンテナ入力間でサブバンド毎に求められる。たとえばアンテナ番号をn(nは1〜Nの自然数)、サブバンド番号をm(mは1〜Mの自然数)とし、受信サブバンド信号をrm(n)とする。サブバンドmのアンテナ間相関値Rmは
Rm=[rm(1)…rm(n)]H[rm(1)…rm(n)]・・・(式6−1)
とすればよい。ここでHは複素共役転置を表す。Rはアンテナが1本の場合は単にサブバンド毎の受信電力を表す。またアンテナが複数本の場合は、対角成分に各アンテナの受信電力、その他の成分に各アンテナ間の相関を示す行列となる。
図75は、受信局6402で受信される他通信の特徴量を周波数軸上で見た一例を示す図である。図75(a)には、自通信の無線信号6801が示されている。無線信号6406内の縦線は、サブバンド毎の特徴量を模式的に表している。特徴量としてはたとえば電力、位相、アンテナ間相関値などが挙げられる。
図75(b)は、無線信号6406を受信局6402のFFTで複数のサブバンドに分離した状態の一例を示す図である。FFTを行う周波数帯域6902と、自通信の周波数帯域6901が示されている。受信局6402では自通信の周波数帯域だけがフィルタで取り出されFFTされるため、周波数帯域6902内の各サブバンドに無線信号6406の特徴量が現れる。
同様に図75(c)は、無線信号6407を受信局6402のFFTで複数のサブバンドに分離した一例を示す図である。無線信号6406と無線信号6407は、受信電力、伝搬経路、到来方向などの違いにより、周波数帯域6902内に現れる特徴量の周波数特性が互いに異なる。
このように、希望信号帯域外の領域についてもアンテナ間相関値の周波数特性を測定する構成とした場合は、隣接チャネル周波数帯域からの漏洩信号の干渉についてもその干渉信号源を判別することが可能となる。
次に、図74に示される受信電力を受信した場合の受信局6402の動作の一例について説明する。
受信局402は時刻T0から干渉信号の観測を開始する。T0からT4の間は自通信エリアでは送信禁止期間は設定されていないが、自通信は行われていないものとする。
図74に示されるように、時刻T1で所定の受信電力が検出される。T1からT4では自通信エリアでは送信禁止期間は設定されていないため、自通信のプリアンブルが検出できるか否かが判定される。ここでは無線信号6406は他通信の信号であるため、自通信のプリアンブルは検出されない。よって受信局6402はT1からT2の間持続している受信信号は干渉信号であると判定する。
T1からT2の間は図75(b)に示されるような受信信号6801の周波数帯域6902内の特徴量(以降、必要に応じて単に干渉周波数特性と称する)が得られる。次に干渉周波数特性を保存するべきか否かの判定が行われる。保存するべきであると判定された場合に干渉周波数特性の保存動作を開始される。まず、過去に保存された干渉周波数特性の中に、受信中の干渉信号の干渉周波数特性と類似するものがあるか否かが判定される。類似の判定は、たとえばサブバンド毎に特徴量の差を求め、周波数帯域6902内全てについて誤差を合計または平均したものを求め、差が最も少ないものを類似していると判定することで行うことができる。あるいは、隣接するサブバンド間の特徴量の差を、上記と同様にして求め、その差がもっとも少ないものを選択することで行ってもよい。あるいは、干渉周波数特性に近似する直線または曲線を求め、その近似直線または近似曲線の一致度が最も大きいものを選択することで行ってもよい。または、上記の複数の判定方法を組み合わせて行ってもよい。
T1からT2の時点で図75(b)の干渉周波数特性に類似するものが保存されていなければ、この干渉周波数特性は新たな異なる干渉信号であると判定される。次に干渉周波数特性を保存するべきか否かの判定が行われる。保存するべきであると判定された場合には、干渉周波数特性は固有の識別子が付与されて保存される。ここではたとえば干渉周波数特性1とする。
T1からT2の間に複数回にわたって干渉周波数特性が測定された場合は、同一の電力が持続していることから同じ干渉信号であると判定される。次にその干渉周波数特性を保存するか否かの判定が行われる。保存するべきであると判定された場合には、この干渉周波数特性と類似する干渉周波数特性が過去に保存された干渉周波数特性の中に存在するかどうかが判定される。類似するものが存在すれば、上記保存するべきであると判定された新たな干渉周波数特性に更新される。このとき新たな干渉周波数特性と保存されている干渉周波数特性を平均化していくことでさらに特徴量の推定精度を向上することもできる。
T3からT4の間は図75(c)に示されるような干渉周波数特性が得られる。次に干渉周波数特性を保存するべきか否かの判定が行われる。保存するべきであると判定された場合には、過去に保存された干渉周波数特性1と比較し類似度が判定される。受信中の干渉信号の干渉周波数特性が干渉周波数特性1とは類似度が低いと判定された場合、受信中の干渉信号の干渉周波数特性は干渉周波数特性2として保存される。
干渉周波数特性の比較で類似しているか否かを判定できなかった場合は時間特性で判断する。干渉周波数特性1で表される干渉信号はT2の時点で終了しており、フレーム間隔(T2からT3)を空けて、異なる電力がT3で検出されている。従って、T3からT4の間の信号は干渉周波数特性1の干渉信号とは異なる無線局から送信されたと判定することができる。あるいはT3で検出された電力がT2の時点と同じであれば同一の無線局から送信されたと判定することもできる。
またT1からT2の場合と同様に、電力が持続しているT3からT4の間に複数回にわたって干渉周波数特性を測定できた場合は、干渉周波数特性2を更新する。
自通信が行われていない間、つまり自通信エリアでの送信禁止期間であるか、或いは自通信のプリアンブルが検出できない間は、上記動作が繰り返される。すなわち、干渉信号を判別しながら干渉周波数特性を保存するべきか否かの判定が行われ、保存するべきであると判定された場合には干渉周波数特性が保存される。
次に希望信号と干渉信号が重なって受信された場合の動作について説明する。
図76は、希望信号と干渉信号が略同時期に到来した場合の、信号到来および信号終了の様子を示す図である。干渉信号である無線信号6406がT6からT9の間に受信され、別の干渉信号である無線信号6407がT11からT13の間受信される。一方、自通信の希望信号である無線信号6405がT7からT10の間受信される。図76の一番下の図は受信局6402で検出される受信電力を示す。
受信局6402は、既にT0からT4の間に干渉周波数特性1および2を測定し保存している。T6からT7では、上記と同様の測定が行われ干渉周波数特性1が更新される。
T7からは受信電力が変化したことが検出され、プリアンブル検出が行われる。希望信号6405には固有のプリアンブル6501が含まれている。よって、T8の時点でそのプリアンブルが検出される。
受信局6402は、希望信号6405に固有のプリアンブルを検出すると、現在受信中の信号には希望信号が含まれている可能性が高いと判定する。
受信局6402は、保存されている干渉周波数特性と受信中の信号の干渉周波数特性につき、希望信号6405の周波数帯域外の部分を比較する。この比較により、受信局6402は、現在受信中であり且つ希望信号と一部重なっている干渉信号の判別を行う。現在受信中の信号の干渉周波数特性は、サブバンド分離が行われる周波数帯域6902の区間で測定されたものである。この周波数帯域6902のうち希望信号の周波数帯域6901は、希望信号が存在する可能性が高く、干渉信号の特徴量と希望信号の特徴量が合成されている可能性が高いため、比較対象から除外する。受信局6402は、保存されている干渉周波数特性1および2と、現在受信中の信号の干渉周波数特性6802の希望信号周波数帯域6901以外の部分との類似度を判定する。
なお自通信において、希望信号の周波数帯域内で使用していないサブバンドがある場合はそのサブバンドについても類似度の判定に用いることができる。たとえばT7からT8の間のプリアンブルシンボルでは少数の所定のサブバンドのみにキャリアがあり、残りのサブバンドはヌルキャリアを用いる場合がある。図77は、プリアンブルシンボルにおける干渉周波数特性の一例を示す図である。この例では、プリアンブルシンボルは希望信号の周波数帯域6901のうち一部のサブバンド61001,61002,61003にのみにプリアンブル情報が乗ったキャリアが含まれ、残りのサブバンドはヌルキャリアとされている。この場合、ヌルキャリアのサブバンドには干渉周波数特性6406の一部が現れる。
希望信号帯域外における干渉周波数特性の比較で、現在受信中の信号の干渉周波数特性に類似する干渉周波数特性が、保存されている干渉周波数特性の中に存在しないと判定された場合は、受信電力の類似度を判定する。
ここで干渉信号の特徴量を特定できれば、希望信号に重畳された干渉信号の抑圧を行うことができる。よって、希望信号の復調精度を向上させることができる。干渉信号の抑圧は、例えば、本出願人が先に出願した技術(国際公開第2006/003776パンフレット参照)を利用することができる。
希望信号に固有のプリアンブルが検出されたが、その時点で干渉信号の特徴量を特定できなかった場合は、受信中の信号を一旦希望信号として復調し、その復調結果を用いて後で詳述する如く干渉信号の判別を行う。
データシンボル列6502の復調は順次行われる。データシンボル6502の先頭部分にはPHY(Physical Layer)ヘッダ6503が含まれる。受信局6402は、このPHYヘッダを検知し、それが希望信号に固有のものであることを確認すれば、PHYヘッダに記述されている変調パラメータに従って復調を続ける。変調パラメータには、データシンボルの変調方式やデータ長などが記述されている。
復調データの先頭にはMAC(Media Access Control)ヘッダ6504が含まれる。MACヘッダにはMAC層が制御に用いるパラメータが含まれる。このパラメータは、送信元アドレス、宛先アドレス、フレーム種別などである。受信局6402は、このMACヘッダを検知する。受信局6402は、宛先アドレスが自局宛であるかを判定する。自局宛であれば希望信号であると判定する。受信局6402は、希望信号についての干渉周波数特性は保存しない。但し、測定された相関保存判定基準値は保存される。なお、希望信号の周波数帯域外の特徴量については新規保存、或いは更新を行っても良い。
T9で無線信号6406の受信が終了すると受信電力が急激に低下する。受信局6402は、受信電力の急激な低下を検知することで、干渉信号の到来が終わったと判定することができる。あるいは受信電力が急激に上がれば、新たな干渉信号が到来し希望信号と重畳したと判定することができる。また、希望信号のPHYヘッダに誤りがない場合は希望信号の長さが分かる。よって、たとえばT9からT10の間の急激な受信電力の変動は干渉信号が重なったかどうかの判定に用いることができる。ここで干渉信号の到来が終わった時点から新たな干渉信号の到来が始まった時点の間は、他通信のフレーム間隔として検出することもできる。
T10で希望信号405の受信が終わる。
T11で新たな受信電力が検出される。ここでT10からT12の間は自通信のプロトコルで規定されたフレーム間隔であり送信禁止期間である。よって、受信局6402は、この間に検出された受信電力は干渉信号の電力であると判定することができる。受信局402は、新たに到来した干渉信号の干渉周波数特性を保存するべきか否かの判定を行う。受信局402は、保存するべきであると判定した場合には、干渉周波数特性を保存する。
以上の動作を受信中に繰り返し行うことによりランダムなタイミングで異なる無線局から到来する干渉信号を判別することが可能となる。
なお、上記の説明では、干渉周波数特性を保存するべきかどうかの判定(すなわち、保存判定基準を満たすか否かの判定)を行った後に、保存されている干渉周波数特性と受信中の干渉信号の干渉周波数特性との類似度判定を行ったが、必ずしもこの順序で各判定を行う必要はない。例えば、まず類似度判定を行い、その結果、過去に受信した干渉信号と同一の干渉信号源から到来した干渉信号を受信中であると判断された場合には、たとえ保存判定基準を満たさない干渉信号であってもその干渉周波数特性を更新してもよい。これにより、例えば、過去のある時点で測定された干渉信号の干渉周波数特性の受信電力が電波環境の変動によって、余りにも大きくなった場合に、同一局から送信された干渉の干渉周波数特性を更新できないという課題を解決することができる。
なお、上記の説明では、干渉信号抑圧部6112はアンテナ間相関値を用いて干渉信号抑圧を行う方式を説明したが、実施例1では、アンテナ間相関値を用いる方法とは異なる方法で干渉信号を抑圧することも可能である。例えば、アダプティブアレイによる干渉信号抑圧技術を用いることも可能である。
ここで本実施形態の構成としては、必ずしも以上に示したものに限られず、種々な構成を用いても良い。また、本発明の適用分野としては、必ずしも以上に示したものに限られず、種々な分野に適用することが可能である。上記の例ではマルチキャリア変調を用いたCSMAによる無線LANシステムに適用した例を示したが、シングルキャリア変調を用いた無線システムにも適用してもよい。或いは、TDMA、FDMA、CDMA、およびSDMAなど種々のアクセス方式を用いる無線システムに適用してもよい。
なお、サブバンド分離部、アンテナ間相関値検出部、メモリ、比較部、プリアンブル検出部、電力検出部、タイミング検出部、判定部、干渉信号抑圧部、復調部、相関保存判定部、相関保存基準測定部等の各機能ブロックは典型的には集積回路であるLSIとして実現される。これらは個別に1チップ化されても良いし、一部または全てを含むように1チップ化されても良い。
ここではLSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSI、と呼称されることもある。
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後にプログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用しても良い。あるいはプロセッサやメモリ等を備えたハードウエア資源において、ROMに格納された制御プログラムをプロセッサが実行することにより制御される構成を用いても良い。
さらには、半導体技術の進歩又は派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行っても良い。バイオ技術の適応等が可能性としてあり得る。