JP4911547B2 - 難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物および成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリブチレンテレフタレート樹脂に非ハロゲン系難燃剤を配合した難燃性樹脂組成物および成形品に関する。更に詳しくは、高度な難燃性、優れた機械特性、および成形品外観を有し、とくに薄肉部分の難燃性を必要とする械機構部品、電気電子部品または自動車部品に好適な非ハロゲン系難燃剤を用いた難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物および成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)は、その優れた射出成形性や機械物性などの諸特性を生かし、機械機構部品、電気・電子部品、自動車部品などの幅広い分野に利用されている。
【0003】
また、PBTに繊維強化材を複合することによって、さらに機械物性や耐熱性に優れる材料として広く用いられている。その繊維強化材の中ではとくにガラス繊維が多く使用されている。
【0004】
PBTは本質的に可燃性であるため、前記の機械機構部品、電気・電子部品、自動車部品などの工業用材料として使用するには一般の化学的、物理的諸特性のバランス以外に火炎に対する安全性、すなわち難燃性が要求され、UL−94規格のV−0を示す高度な難燃性が必要とされる場合が多い。また、前記の機械機構部品、電気・電子部品、自動車部品などの成形品厚みは、軽量化のため薄くなる傾向にある。しかし、薄肉成形品ほど燃え易くなるため、より高度な難燃材料が必要である。近年、前記のUL−94規格V−0の肉厚として、1/32インチ(約0.8mm)厚みから1/64インチ(約0.4mm)厚みに適合する高度な難燃性を持つ材料が望まれている。
【0005】
また、高度な難燃性と共に、顔料や染料により種々の色調が可能な成形品が望まれている。
【0006】
PBTに難燃性を付与する方法としては、難燃剤としてハロゲン系有機化合物、さらに難燃助剤としてアンチモン化合物を樹脂にコンパウンドする方法が一般的である。しかしながら、この方法には、燃焼の際の発煙量が多い傾向があった。
【0007】
また、環境意識の高まりから、ハロゲン系難燃材料の環境に及ぼす影響を懸念する動きがある。
【0008】
そこで、近年これらハロゲンを全く含まない難燃剤を用いることが強く望まれるようになった。
【0009】
これまで、ハロゲン系難燃剤を使わずに熱可塑性樹脂を難燃化する方法としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの水和金属化合物を添加することが広く知られているが、充分な難燃性を得るためには、上記水和金属化合物を多量に添加する必要があり、樹脂本来の特性が失われるという欠点を有していた。
【0010】
一方、このような水和金属化合物を使わずに熱可塑性樹脂を難燃化する方法として赤リンを添加することが、特開昭51−150553号公報、特開昭58−108248号公報、特開昭59−81351号公報、特開平5−78560号公報、特開平5−287119号公報、特開平5−295164号公報、特開平5−320486号公報、特開平5−339417号公報等に開示されている。
【0011】
しかしながら、ハロゲン系難燃剤を用いない有用な難燃性樹脂材料ではあるが、特有の着色があり、製品の色調が制限されることから用途が制限されるという課題を有していた。
【0012】
また、特開平3−281652号公報、特開平5−70671号公報、特開平7−233311号公報、特開平8−73713号公報には、燐酸エステルとメラミンシアヌレートを配合することが開示されている。
【0013】
しかしながら、ハロゲン系難燃剤を用いない有用な難燃性樹脂材料ではあるが、燐酸エステルが成形品表面にしみでるブリードアウトが生じ成形品外観の価値を大きく損なう問題点を有していた。
【0014】
また、高度な難燃性を得る手段として、前記の燐酸エステルとメラミンシアヌレートを多量に配合するほど難燃性は向上するものの、PBT樹脂成分が少なくなるため、衝撃強度などの機械特性が大きく損なう課題を有していた。
【0015】
また、特開平10−147699号公報、特開平10−182955号公報、特開平10−182956号公報、特開平2000−26710号公報には、PBT、ポリフェニレンエーテル、および燐酸エステル等を配合する組成物に対し、スチレン系樹脂を配合することが開示されている。
【0016】
しかしながら、ハロゲン系難燃剤を用いない有用な難燃性樹脂材料ではあるが、ポリフェニレンエーテルを配合することにより機械強度の低下、射出成形時の流動性低下、および成形品が黄色に着色するため、成形品色調の価値を大きく損なうなどの問題点を有していた。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
すなわち本発明は、ポリブチレンテレフタレート樹脂に非ハロゲン系難燃剤を配合して、優れた難燃性、機械特性、およびブリードアウトが生じ難く優れた成形品外観を有し、とくに薄肉部分の難燃性を必要とする械機構部品、電気電子部品または自動車部品に好適な難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物および成形品を得ることを課題とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは以上の状況を鑑み、鋭意検討を重ねた結果、ポリブチレンテレフタレート樹脂に、特定量のポリカーボネート樹脂、燐酸エステル、および繊維強化材を配合することで高度に優れた難燃性を保持しつつ、特異的に機械特性、およびブリードアウトが生じ難く優れた成形品外観を有する難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物および成形品が得られることを見いだし、本発明に到達した。
【0019】
本発明では、とくに燐酸エステル難燃剤系の欠点とされていた成形品表面に燐酸エステルがしみでるブリードアウトの生じない成形品を得ることが可能であり、さらに、優れた機械特性を維持しながら、1/64インチ(約0.4mm)厚みにおいて、UL−94難燃規格V−0に適合する組成物を得ることに成功した。
【0020】
すなわち本発明は、
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂99〜1重量%、ポリエチレンテレフタレート樹脂1〜99重量%の混合物100重量部に対して、(B)ポリカーボネート樹脂1〜100重量部、(C)芳香族燐酸エステル3〜60重量部、(D)繊維補強材1〜150重量部、および(E)トリアジン系化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸との塩をさらに1〜150重量部を配合し、さらに(A)成分100重量部に対して、(G)アルコール類と燐酸との部分エステルのアルキルアシッドホスフェート化合物をさらに0.01〜1重量配合してなることを特徴とする難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物、
前記の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる機械機構部品、電気電子部品または自動車部品用成形品、1/64インチ(約0.4mm)厚みにおいて、UL−94難燃規格V−0に適合する難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物、および
前記の1/64インチ(約0.4mm)厚みにおいて、UL−94難燃規格V−0に適合する難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる機械機構部品、電気電子部品または自動車部品用の成形品を提供するものである。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物および成形品について具体的に説明する。
【0022】
本発明における(A)を構成するポリブチレンテレフタレート樹脂とは、テレフタル酸あるいはそのエステル形成性誘導体と1,4−ブタンジオールあるいはそのエステル形成性誘導体との重縮合反応によって得られる重合体であるが、この他に酸成分として、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジ酸、シュウ酸などを、グリコール成分として、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオールなど、あるいは分子量400〜6000の長鎖グリコール、すなわちポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどを20モル%以下共重合することもできる。これら重合体あるいは共重合体の好ましい例としては、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリブチレン(テレフタレート/セバケート)、ポリブチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)、ポリブチレン(テレフタレート/ナフタレート)などが挙げられ、単独で用いても2種以上混合して用いても良い。なお、ここで「/」は、共重合を意味する。
【0023】
また、重合体あるいは共重合体は、O−クロロフェノール溶媒を用いて25℃で測定した固有粘度が0.36〜1.60、特に0.42〜1.25の範囲にあるものが得られる組成物の衝撃強度、成形性の点から好適である。また、(A)を構成するポリブチレンテレフタレート樹脂は固有粘度の異なるポリブチレンテレフタレート樹脂を併用しても良く、固有粘度が0.36〜1.60の範囲にあるポリブチレンテレフタレート樹脂を用いることが好ましい。
【0024】
さらに、これらポリブチレンテレフタレート樹脂は、m−クレゾール溶液をアルカリ溶液で電位差滴定して求めたCOOH末端基量が1〜50eq/t(ポリマー1トン当りの末端基量)の範囲にあるものが耐久性、異方性抑制効果の点から好ましく使用できる。さらに、特にCOOH末端基の少ないものは、耐加水分解性に優れるため好ましく使用できる。
【0025】
本発明における(A)を構成するポリブチレンテレフタレート樹脂と共もに配合するポリエチレンテレフタレート樹脂とは、テレフタル酸を酸成分に、エチレングリコールをグリコール成分に用いて重縮合した、主鎖にエステル結合を有する高分子量の熱可塑性ポリエステル樹脂を指すが、この他に酸成分として、イソフタル酸、アジピン酸、シュウ酸などを、グリコール成分として、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオールなど、あるいは分子量400〜6000の長鎖グリコール、すなわちポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどを20モル%以下共重合することもできる。また、ポリエチレンテレフタレート樹脂は、O−クロロフェノール溶媒を用いて25℃で測定した固有粘度が0.36〜1.60、特に0.45〜1.15の範囲にあるものが得られる組成物の衝撃強度、成形性の点から好適である。
【0026】
また、(A)を構成するポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂との混合割合は、難燃性と結晶性の点から、1〜99重量%であることが必要であり、好ましくは5〜90重量%である。
【0027】
また、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂99〜1重量%、ポリエチレンテレフタレート樹脂1〜99重量%の混合物100重量部に対し、ポリエステルエラストマー、ポリアリレート樹脂、全芳香族液晶ポリエステル、半芳香族液晶ポリエステルおよびポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート樹脂などのポリエステル樹脂を1種以上配合してもよく、配合量は本発明の効果が大きく低下しない範囲の量である。
【0028】
本発明において、(B)ポリカーボネート樹脂とは、芳香族二価フェノール系化合物とホスゲン、または炭酸ジエステルとを反応させることにより得られる芳香族ホモまたはコポリカーボネートが挙げられる。該芳香族ホモまたはコポリカーボネート樹脂は、重量平均分子量が、10000〜1100000の範囲のものであり、重量平均分子量が10000〜1000000の範囲であれば、重量平均分子量の異なるポリカーボネート樹脂を併用しても良い。重量平均分子量60000〜1100000の範囲のポリカーボネート樹脂がとくに好ましく用いられる。重量平均分子量とは、溶媒にテトラヒドロフランを用い、ゲル透過クロマトグラフィーにより、ポリスチレン換算で測定して得られるものであり、重量平均分子量が10000以下では、本発明の優れた機械特性が損なわれるため好ましくなく、重量平均分子量が110000以上では、成形時の流動性が損なわれるため好ましくない。
【0029】
また、300℃の温度で荷重1.2kgの条件でASTM D1238に準じてメルトインデキサーで測定した溶融粘度指数(メルトフローインデックス)が1〜100g/10分の範囲のものであり、とくに機械特性の点から1〜15g/10分のポリカーボネート樹脂が好ましく用いられる。
【0030】
また、前記の芳香族二価フェノール系化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等が使用でき、これら単独あるいは混合物として使用することができる。また、ポリカーボネート樹脂の配合量は、難燃性と機械特性の点から(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂99〜1重量%、ポリエチレンテレフタレート樹脂1〜99重量%の混合物100重量部に対して、1〜100重量部であることが必要であり、好ましくは2〜90重量部、更に好ましくは20〜80重量部である。また、本発明の特性を損なわない範囲の量であれば、ポリカーボネート樹脂オリゴマーを配合しても良い。
【0031】
本発明における(C)芳香族燐酸エステルとは、一般に市販されているものや、合成された任意の芳香族燐酸エステルが使用できる。具体例としては、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリス・イソプロピルビフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、オルトフェニルフェノール系燐酸エステル、および下記(1)式の芳香族燐酸エステルなどが挙げられ、とくに下記(1)式の芳香族燐酸エステル好ましく用いられる。
【0032】
【化5】
【0033】
(上式において、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4は、同一または相異なるフェニル基あるいはハロゲンを含有しない有機残基で置換されたフェニル基を表す。また、Xは下記の(2)〜(4)式から選択される1種を示し、R1〜R8は同一または相異なる水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表し、Yは直接結合、O、S、SO2、C(CH3)2、CH2、CHPhを表し、Phはフェニル基を表す。また、(1)式のnは0以上の整数であり、異なるnの混合物でもよい。また、(1)式のk、mはそれぞれ0以上2以下の整数であり、かつ(k+m)は0以上2以下の整数である。
【0034】
【化6】
【0035】
【化7】
【0036】
【化8】
【0037】
なかでも下記化合物が好ましい。
【0038】
【化9】
【0039】
また、(C)芳香族燐酸エステルの添加量は、難燃性と機械特性の点から(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂99〜1重量%、ポリエチレンテレフタレート樹脂1〜99重量%の混合物100重量部に対して、3〜60重量部である。
【0040】
本発明における(D)繊維強化材とは、(D)繊維強化材をポリブチレンテレフタレート樹脂に配合することによって、高い強度の樹脂を得ることができるものであり、限定されるものではないが、ガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維、チタン酸カリ繊維、セラミックス繊維、およびスチール繊維などが挙げられ、ガラス繊維と炭素繊維が好ましく用いられる。前記の好ましく用いられるガラス繊維と炭素繊維としては、通常のPBTの強化材に使用されるチョップドストランドタイプやロービングタイプのガラス繊維と炭素繊維などが挙げられ、表面処理剤としてアミノシラン化合物やエポキシシラン化合物などのシランカップリング剤および/またはウレタン、酢酸ビニル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ノボラック系エポキシ化合物などの一種以上のエポキシ化合物などを含有した集束剤で処理されたガラス繊維が好ましく用いられる。また、前記のシランカップリング剤および/または集束剤はエマルジョン液で使用されていても良い。
【0041】
また、前記の(D)繊維強化材の繊維径は、5μm〜20μmが好ましく、特に好ましくは6μm〜15μmである。
【0042】
また、(D)繊維状強化材の一部に無機充填剤を配合することができ、本発明組成物の結晶化特性、耐トラッキング性、耐アーク性、異方性、機械強度、難燃性あるいは熱変形温度などの一部を改良するものであり、かかる無機充填剤としては、限定されるものではないが針状、粒状、粉末状および層状の無機充填剤が挙げられ、具体例としては、ガラスビーズ、ミルドファイバー、チタン酸カリウィスカー、ワラステナイト、シリカ、カオリナイト、タルク、スメクタイト系粘土鉱物(モンモリロナイト、ヘクトライト)、バーミキュライト、マイカ、フッ素テニオライト、燐酸ジルコニウム、燐酸チタニウム、およびドロマイトなどが挙げられ、一種以上で用いられる。また、上記の無機充填剤には、カップリング剤処理、エポキシ化合物、あるいはイオン化処理などの表面処理が行われていても良い。また、粒状、粉末状および層状の無機充填剤の平均粒径は衝撃強度の点から0.1〜20μmであることが好ましく、特に0.2〜10μmであることが好ましい。また、無機充填剤の配合量は、繊維強化剤の配合量を越えない量が好ましい。
【0043】
とくに無機充填剤として、ガラス繊維の一部として、ガラスフレークを配合した組成物は、ソリの少ない成形品の製造に有用、あるいは珪酸塩化合物のタルクを配合した組成物は、射出成形性に優れたポリブチレンテレフタレート樹脂成形品の製造に有用である。
【0044】
また、前記の(D)繊維強化材をチョップドストランドタイプとして用いる際の繊維長さは、1mm〜10mmが好ましく、特に好ましくは2mm〜7mmである。
【0045】
また、前記の(D)繊維強化材の配合量は、難燃性と成形時の流動性の点から(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂99〜1重量%、ポリエチレンテレフタレート樹脂1〜99重量%の混合物100重量部に対して、1〜150重量部であることが必要であり、好ましくは20〜140重量部、更に好ましくは40〜130重量部である。
【0046】
また、前記の(D)繊維強化材の配合方法は、限定されるものではないが、他の本発明組成物あるいは一部の組成物と混合後に溶融混合する方法、溶融混練機である押出機の途中あるいは吐出口付近から投入して他の本発明組成物と溶融混合する方法などが挙げられる。
【0047】
本発明における(E)トリアジン系化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸の塩とは、シアヌール酸またはイソシアヌール酸とトリアジン系化合物との付加物が好ましく、通常は1対1(モル比)、場合により1対2(モル比)の組成を有する付加物である。トリアジン系化合物のうち、シアヌール酸またはイソシアヌール酸と塩を形成しないものは除外される。また、(E)トリアジン系化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸との塩のうち、とくにメラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、2−アミド−4,6−ジアミノ−1,3,5−トリアジン、モノ(ヒドロキシメチル)メラミン、ジ(ヒドロキシメチル)メラミン、トリ(ヒドロキシメチル)メラミンの塩が好ましく、とりわけメラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミンの塩が好ましく、公知の方法で製造されるが、例えば、トリアジン系化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸の混合物を水スラリーとし、良く混合して両者の塩を微粒子状に形成させた後、このスラリーを濾過、乾燥後に一般には粉末状で得られる。また、上記の塩は完全に純粋である必要は無く、多少未反応のトリアジン系化合物ないしシアヌール酸、イソシアヌール酸が残存していても良い。また、樹脂に配合される前の塩の平均粒径は、成形品の難燃性、機械的強度や耐湿熱特性、滞留安定性、表面性の点から100〜0.01μmが好ましく、更に好ましくは80〜1μmである。また、上記の塩の分散性が悪い場合には、トリス(β−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどの分散剤や公知の表面処理剤、シリカ、ポリビニルアルコールなどを併用してもかまわない。
【0048】
また、(E)トリアジン系化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸の塩の配合量は、難燃性と機械特性の点から(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂99〜1重量%、ポリエチレンテレフタレート樹脂1〜99重量%の混合物100重量部に対して、1〜150重量部であることが必要であり、好ましくは2〜140重量部、更に好ましくは10〜130重量部である。
【0049】
本発明における(F)フッ素系化合物とは、燃焼時の難燃性樹脂組成物が溶融落下することを抑制し、さらに難燃性を向上させることができる。前記の(G)フッ素系化合物とは、物質分子中にフッ素を含有する樹脂であり、具体的には、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、(テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン)共重合体、(テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル)共重合体、(テトラフルオロエチレン/エチレン)共重合体、(ヘキサフルオロプロピレン/プロピレン)共重合体、ポリビニリデンフルオライド、(ビニリデンフルオライド/エチレン)共重合体などが挙げられるが、中でもポリテトラフルオロエチレン、(テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル)共重合体、(テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン)共重合体、(テトラフルオロエチレン/エチレン)共重合体、ポリビニリデンフルオライドが好ましく、特にポリテトラフルオロエチレン、(テトラフルオロエチレン/エチレン)共重合体が好ましい。また、(F)フッ素系化合物の配合量は、難燃性と機械特性の点から(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂99〜1重量%、ポリエチレンテレフタレート樹脂1〜99重量%の混合物100重量部に対して、0.02〜10重量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜8重量部、更に好ましくは0.2〜6重量部である。
【0050】
本発明における(G)アルコール類と燐酸との部分エステルのアルキルアシッドホスフェート化合物は、低分子量のものは無色液体、高分子量のものは白色ロウ状、フレーク状固体である。アルコール類と燐酸との部分エステルのアルキルアシッドホスフェート化合物は、(A)のポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂成分と(B)ポリカーボネート樹脂のエステル交換防止剤として有用であり、とくに熱変形温度などの低下を防止する。(G)アルコール類と燐酸との部分エステルのアルキルアシッドホスフェート化合物の具体例としては、限定されるものではないが、モノメチルアシッドホスフェート、モノエチルアシッドホスフェート、モノイソプロピルアシッドホスフェート、モノブチルアシッドホスフェート、モノラウリルアシッドホスフェート、モノステアリルアシッドホスフェート、モノドデシルアシッドホスフェート、モノベヘニルアシッドホスフェート、ジメチルアシッドホスフェート、ジエチルアシッドホスフェート、ジイソプロピルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、ジステアリルアシッドホスフェート、ジドデシルアシッドホスフェート、ジベヘニルアシッドホスフェート、トリメチルアシッドホスフェート、トリエチルアシッドホスフェート、および前記のモノとジの混合物、モノ、ジおよびトリとの混合物や前記化合物の一種以上の混合物であっても良い。好ましく用いられるアルコール類と燐酸との部分エステルのアルキルアシッドホスフェート化合物としては、モノおよびジステアリルアシッドホスフェートの混合物などの長鎖アルキルアシッドホスフェート化合物が挙げられ、旭電化社から“アデカスタブ”AX−71の名称で市販され、融点を持つフレーク状固体である。
【0051】
また、前記の(G)アルコール類と燐酸との部分エステルのアルキルアシッドホスフェート化合物の配合量は、熱変形温度と機械特性の点から(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂99〜1重量%、ポリエチレンテレフタレート樹脂1〜99重量%の混合物100重量部に対して、0.01〜1重量部であり、好ましくは0.2〜0.6重量部である。
【0052】
本発明の(H)アルカリ土類金属塩とは、アルカリ土類金属に属するマグネシウム、カルシウム、およびバリウムの塩が好ましく、具体例としては水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、乳酸マグネシウム、乳酸カルシウム、乳酸バリウム、さらにはオレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸およびモンタン酸などの有機酸のマグネシウム塩、カルシウム塩、およびバリウム塩などが挙げられ、水酸化マグネシウムおよび炭酸カルシウムが好ましく用いられ、より好ましくは炭酸カルシウムが用いられる。また、上記の炭酸カルシウムは製造方法により、コロライド炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、湿式粉砕微粉重質炭酸カルシウム、湿式重質炭酸カルシウム(白亜)などが知られており、いずれも本発明に包含される。また、上記の炭酸カルシウムおよびアルカリ土類金属塩は、シランカップリング剤、有機物および無機物などの一種以上の表面処理剤で処理されていても良く、形状は粉末状、板状あるいは繊維状であっても構わないが、10μm以下の粉末状で用いることが分散性などから好ましい。
【0053】
(H)アルカリ土類金属塩を添加することにより、加水分解特性を著しく向上させることができる。非ハロゲン難燃剤として有効な燐酸エステル系化合物は燐酸エステル結合が加水分解され易いため、加水分解性に劣るという欠点を有している。本発明では、本アルカリ土類金属塩による酸トラップの作用により大きく加水分解性が改良されているものと推察される。
【0054】
また(H)アルカリ土類金属塩の配合量は、機械特性と加水分解性の点から(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂99〜1重量%、ポリエチレンテレフタレート樹脂1〜99重量%の混合物100重量部に対して、0.1〜5重量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜4.5重量部、更に好ましくは1〜4重量部である。
【0055】
本発明で使用される(I)エポキシ化合物とは、グリシジルエステル化合物、グリシジルエーテル化合物、およびグリシジルエステルエーテル化合物の少なくとも一種以上を用いたエポキシ化合物である。
【0056】
また、PBTの加水分解性に優れた改善効果を発現するには、エポキシ当量500未満のエポキシ化合物が好ましく、さらにはエポキシ当量400未満のエポキシ化合物が特に好ましい。ここで、エポキシ当量とは、1グラム当量のエポキシ基を含むエポキシ化合物のグラム数が500未満のエポキシ化合物であり、エポキシ当量の測定例を示すと、エポキシ化合物をピリジンに溶解し、0.05N塩酸を加え40〜45℃で加熱後、指示薬にチモールブルーとクレゾールレツドの混合液を用い、0.05N苛性ソーダで逆滴定する方法などが知られている。
【0057】
また、上記のエポキシ化合物としては、単官能のグリシジルエステル化合物とグリシジルエーテル化合物を併用したエポキシ化合物あるいは単官能のグリシジルエステル化合物が好ましく用いられ、とくに、得られる組成物の粘度安定性と加水分解性のバランスから単官能のグリシジルエステル化合物がより好ましい。
【0058】
また、上記のグリシジルエステル化合物としては、限定されるものではないが、具体例として、安息香酸グリシジルエステル、tBu−安息香酸グリシジルエステル、P−トルイル酸グリシジルエステル、シクロヘキサンカルボン酸グリシジルエステル、ペラルゴン酸グリシジルエステル、ステアリン酸グリシジルエステル、ラウリン酸グリシジルエステル、パルミチン酸グリシジルエステル、ベヘン酸グリシジルエステル、バーサティク酸グリシジルエステル、オレイン酸グリシジルエステル、リノール酸グリシジルエステル、リノレイン酸グリシジルエステル、ベヘノール酸グリシジルエステル、ステアロール酸グリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、ナフタレンジカルボン酸ジグリシジルエステル、ビ安息香酸ジグリシジルエステル、メチルテレフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、ドデカンジオン酸ジグリシジルエステル、オクタデカンジカルボン酸ジグリシジルエステル、トリメリット酸トリグリシジルエステル、ピロメリット酸テトラグリシジルエステルなどが挙げられ、これらは1種または2種以上を用いることができる。
【0059】
また、前記のグリシジルエ−テル化合物としては、限定されるものではないが、具体例として、フェニルグリシジルエ−テル、O−フェニルフェニルグリシジルエ−テル、1,4−ビス(β,γ−エポキシプロポキシ)ブタン、1,6−ビス(β,γ−エポキシプロポキシ)ヘキサン
、1,4−ビス(β,γ−エポキシプロポキシ)ベンゼン、1−(β,γ−エポキシプロポキシ)−2−エトキシエタン、1−(β,γ−エポキシプロポキシ)−2−ベンジルオキシエタン、2,2−ビス−[р−(β,γ−エポキシプロポキシ)フェニル]プロパンおよび2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン
や2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)メタンなどのビスフェノールとエピクロルヒドリンの反応で得られるビスグリシジルポリエーテルなどが挙げられ、これらは1種または2種以上を用いることができる。
【0060】
また、(I)エポキシ化合物の配合量は機械特性と加水分解性の面から(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂99〜1重量%、ポリエチレンテレフタレート樹脂1〜99重量%の混合物100重量部に対して、0.05〜5重量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜4.5重量部、更に好ましくは1〜4重量部である。
【0061】
一般に、エポキシ化合物を使用することでポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基を封鎖し、ポリブチレンテレフタレート樹脂の耐加水分解性を向上させることは知られているが、本発明では、アルカリ土類金属塩、および本エポキシ化合物を併用すると、相乗的に耐加水分解性が向上し、単なるエポキシ化合物の添加では到底達成なしえない高度の加水分解性を付与することが可能となる。
【0062】
本発明においては、さらにシリコーン化合物、フェノール樹脂、ホスホニトリル化合物、ポリ燐酸アンモニウム、ポリ燐酸メラミンおよび無機水和物などの難燃性向上や燃焼時の発生ガスを抑制する難燃助剤を配合でき、1種以上で用いられる。また、上記の難燃助剤の配合量は、難燃性と機械特性の点から(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂99〜1重量%、ポリエチレンテレフタレート樹脂1〜99重量%の混合物100重量部に対して、0.1〜30重量部が好ましく、特に好ましくは0.5〜20重量部である。
【0063】
前記のシリコーン化合物としては、シリコーン樹脂、シリコーンオイルおよびシリコーンパウダーが挙げられる。
【0064】
上記のシリコーン樹脂としては、飽和または不飽和一価炭化水素基、水素原子、ヒドロキシル基、アルコキシル基、アリール基、ビニルまたはアリル基から選ばれる基とシロキサンが化学的に結合されたポリオルガノシロキサンが挙げられ、室温で約200〜300000000センチポイズの粘度を有するものが好ましいが、上記のシリコーン樹脂である限り、それに限定されるものではなく、製品形状がオイル状、パウダー状およびガム状であっても良く、官能基としてエポキシ基、メタクル基およびアミノ基が導入されていても良く、2種以上のシリコーン樹脂との混合物であっても良い。
【0065】
また、シリコーンオイルとしては、飽和または不飽和一価炭化水素基、水素原子、ヒドロキシル基、アルコキシル基、アリール基、ビニルまたはアリル基から選ばれる基とシロキサンが化学的に結合されたポリオルガノシロキサンが挙げられ、室温で約0.65〜100000センチストークスの粘度を有するものが好ましいが、上記のシリコーンオイル樹脂である限り、それに限定されるものではなく、製品形状がオイル状、パウダー状およびガム状であっても良く、官能基としてエポキシ基、メタクル基およびアミノ基が導入されていても良く、2種以上のシリコーンオイルあるいはシリコーン樹脂との混合物であっても良い。
【0066】
また、シリコーンパウダーとは、上記のシリコーン樹脂および/またはシリコーンオイルに無機充填剤を配合したものであり、無機充填剤としてはシリカなどが好ましく用いられる。
【0067】
前記のフェノール樹脂としては、フェノール性水酸基を複数有する高分子であれば任意であり、例えばノボラック型、レゾール型および熱反応型の樹脂、あるいはこれらを変性した樹脂が挙げられる。これらは硬化剤未添加の未硬化樹脂、半硬化樹脂、あるいは硬化樹脂であってもよい。中でも、硬化剤未添加で、非熱反応性であるノボラック型フェノール樹脂が難燃性、機械特性、経済性の点で好ましい。
【0068】
また、フェノール樹脂の形状は特に制限されず、粉砕品、粒状、フレーク状、粉末状、針状、液状などいずれも使用でき、必要に応じ、1種または2種以上使用することができる。また、フェノール系樹脂は特に限定するものではなく市販されているものなどが用いられる。例えば、ノボラック型フェノール樹脂の場合、フェノール類とアルデヒド類のモル比を1:0.7〜1:0.9となるような比率で反応槽に仕込み、更にシュウ酸、塩酸、硫酸、トルエンスルホン酸等の触媒を加えた後、加熱し、所定の時間還流反応を行う。生成した水を除去するため真空脱水あるいは静置脱水し、更に残っている水と未反応のフェノール類を除去する方法により得ることができる。これらの樹脂あるいは複数の原料成分を用いることにより得られる共縮合フェノール樹脂は単独あるいは二種以上用いることができる。レゾール型フェノール樹脂の場合、フェノール類とアルデヒド類のモル比を1:1〜1:2となるような比率で反応槽に仕込み、水酸化ナトリウム、アンモニア水、その他の塩基性物質などの触媒を加えた後、ノボラック型フェノール樹脂と同様の反応および処理をして得ることができる。
【0069】
ここで、フェノール類としてはフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、チモール、p−tert−ブチルフェノール、tert−ブチルカテコール、カテコール、イソオイゲノール、o−メトキシフェノール、4,4’−ジヒドロキシフェニル−2,2−プロパン、サルチル酸イソアミル、サルチル酸ベンジル、サルチル酸メチル、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール等が挙げられる。これらのフェノール類は一種または二種以上用いることができる。一方、アルデヒド類としてはホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ポリオキシメチレン、トリオキサン等が挙げられる。これらのアルデヒド類は必要に応じて一種または二種以上用いることができる。
【0070】
フェノール系樹脂の分子量は、特に限定されないが好ましくは数平均分子量で200〜2,000であり、特に400〜1,500の範囲のものが機械的物性、流動性、経済性に優れ好ましい。なおフェノール系樹脂の分子量は、テトラヒドラフラン溶液、ポリスチレン標準サンプルを使用することによりゲルパーミエションクロマトグラフィ法で測定できる。
【0071】
前記のホスホニトリル化合物としては、ホスホニトリル線状ポリマー及び/または環状ポリマーを主成分とするホスホニトリル化合物が挙げられ、直鎖状、環状のいずれかあるいは混合物であってもかまわない。前記ホスホニトリル線状ポリマー及び/または環状ポリマーは、著者梶原『ホスファゼン化合物の合成と応用』などに記載されている公知の方法で合成することができ、例えば、りん源として五塩化リンあるいは三塩化リン、窒素源として塩化アンモニウムあるいはアンモニアガスを公知の方法で反応させて(環状物を精製してもよい)、得られた物質をアルコール、フェノールおよびアミン類で置換することで合成することができる。
【0072】
前記のポリ燐酸アンモニウムとしては、ポリ燐酸アンモニウム、メラミン変性ポリ燐酸アンモニウム、およびカルバミルポリ燐酸アンモニウムなどが挙げられ、熱硬化性を示すフェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、およびユリア樹脂などの熱硬化性樹脂などによって被覆されていてもいなくても良く、1種で用いても2種以上で用いても良い。
【0073】
前記の燐酸メラミンとしては、ポリ燐酸メラミンやピロ燐酸メラミンなどの燐酸塩が挙げられ、1種で用いても2種以上で用いても良い。
【0074】
前記の無機水和物類としては、限定されるものではないが、例えば、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト、硼酸、硼酸カルシウム、硼酸カルシウム水和物、硼酸亜鉛、硼酸亜鉛水和物、水酸化亜鉛、水酸化亜鉛水和物、亜鉛錫水酸化物、亜鉛錫水酸化物水和物、赤リン、加熱膨張黒鉛およびドーソナイトなどが挙げられ、熱硬化性メラミン樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂が混合あるいは表面に被覆されていても良い。また、カップリング剤、エポキシ化合物、あるいはステアリン酸などの油脂類などが混合あるいは表面に被覆されていても良い。
【0075】
本発明においては、さらに加水分解性を改良する目的でフェノキシ樹脂、オキサゾリン化合物、およびカルボジイミド化合物などを配合でき、とくにフェノキシ樹脂が好ましく用いられる。また、上記の加水分解性改良材の添加量は、得られる組成物の加水分解性と難燃性の点から(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂99〜1重量%、ポリエチレンテレフタレート樹脂1〜99重量%の混合物100重量部に対して、0.1〜30重量部が好ましく、とくに好ましくは0.5〜20重量部である。
【0076】
また、前記のフェノキシ樹脂とは、芳香族二価フェノール系化合物とエピクロルヒドリンとを各種の配合割合で反応させることにより得られ、フェノキシ樹脂またはフェノキシ共重合体の分子量は特に制限はないが、粘度平均分子量が1000〜100000の範囲のものでである。ここで、芳香族二価フェノール系化合物 の例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5ジエチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1−フェニル−1、1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン等が使用でき、これら単独あるいは混合物として使用することができる。また、形状は特に制限されず、粉砕品、粒状、フレーク状、粉末状、液状などいずれも使用できる。これらのフェノキシ樹脂は必要に応じて一種または二種以上用いることができる。
【0077】
本発明においては、さらに本発明の組成物が長期間高温にさらされても極めて良好な耐熱エージング性を与える安定剤としてヒンダードフェノール系酸化防止剤および/またはホスファイト系酸化防止剤を配合でき、ヒンダードフェノール系酸化防止剤および/またはホスファイト系酸化防止剤の配合量は、耐熱エージング性と難燃性の点から(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂99〜1重量%、ポリエチレンテレフタレート樹脂1〜99重量%の混合物100重量部に対して、0.1〜15重量部が好ましく、特に好ましくは0.2〜10重量部である。
【0078】
また、前記のヒンダードフェノール系酸化防止剤の具体例としては、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビスもしくはトリス(3−t−ブチル−6−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、N,N’−トリメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)などが挙げられる。
【0079】
また、前記のホスファイト系安定剤の例としては、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、アルキルアリル系ホスファイト、トリアルキルホスファイト、トリアリルホスファイト、ペンタエリスリトール系ホスファイト化合物などが挙げられる。
【0080】
本発明においては、さらに滑剤を一種以上添加することにより成形時の流動性、離型性、および摩耗性や摺動特性を改良することが可能である。かかる滑剤としては、ステアリン酸カルウシム、ステアリン酸バリウムなどの金属石鹸、脂肪酸エステル、脂肪酸エステルの塩(一部を塩にした物も含む)、エチレンビスステアロアマイドなどの脂肪酸アミド、エチレンジアミンとステアリン酸およびセバシン酸からなる重縮合物あるいはフェニレンジアミンとステアリン酸およびセバシン酸の重縮合物からなる脂肪酸アミド、ポリアルキレンワックス、酸無水物変性ポリアルキレンワックスおよび上記の滑剤とフッ素系樹脂やフッ素系化合物の混合物が挙げられるがこれに限定されるものではない。滑剤の添加量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂99〜1重量%、ポリエチレンテレフタレート樹脂1〜99重量%の混合物100重量部に対して、0.05〜5重量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜5重量部である。
【0081】
本発明においては、さらに本発明組成物の衝撃強度などの靱性を改良する目的でエチレン(共)重合体やコアシェルゴムを配合することができ、かかるエチレン(共)重合体としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレンなどのエチレン重合体および/またはエチレン共重合体が挙げられ、上記のエチレン共重合体とは、エチレンおよびそれと共重合可能なモノマーを共重合して得られるものであり、共重合可能なモノマーとしてはプロピレン、ブテン−1、酢酸ビニル、イソプレン、ブタジエンあるいはアクリル酸、メタクリル酸等のモノカルボン酸類あるいはこれらのエステル酸類、マレイン酸、フマル酸あるいはイタコン酸等のジカルボン酸類等が挙げられる。エチレン共重合体は通常公知の方法で製造することが可能である。エチレン共重合体の具体例としては、エチレン/プロピレン、エチレン/ブテン1、エチレン/酢酸ビニル、エチレン/エチルアクリレート、エチレン/メチルアクリレートおよびエチレン/メタクリル酸エチルアクリレートなどが挙げられる。また、上記のエチレン(共)重合体に酸無水物あるいはグリシジルメタクリレートをグラフトもしくは共重合された共重合体も好ましく用いられる。これらは一種または二種以上で使用され、上記のエチレン(共)重合体の一種以上と混合して用いても良い。また、エチレン(共)重合体のなかでもポリエチレンに酸無水物あるいはグリシジルメタクリレートがグラフトもしくは重合された共重合体がPBTとの相溶性が良く好ましく用いられる。
【0082】
また、前記のコアシェルゴムとは、コア層にゴム成分、最外層のシェル層に熱可塑性樹脂成分からなる多層構造重合体である。例えば、コア層がジメチルシロキサン/アクリル酸ブチル重合体で最外層がメタクリル酸メチル重合体であるもの、コア層がブタンジエン/スチレン重合体で最外層がメタクリル酸メチル重合体であるもの、およびコア層がアクリル酸ブチル重合体で最外層がメタクリル酸メチル重合体であるものなどが挙げられる。さらに、ゴム層または最外層のいずれか一つもしくは両方の層がメタクリル酸グリシジル単位を含有する重合体などが挙げられる。
【0083】
また、エチレン(共)重合体やコアシェルゴムの配合量は、得られる組成物の難燃性と衝撃強度の点から(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂99〜1重量%、ポリエチレンテレフタレート樹脂1〜99重量%の混合物に対して、1〜50重量部が好ましく、特に好ましくは2〜30重量部である。
【0084】
本発明においては、さらに、カーボンブラック、酸化チタン、および種々の色の顔料や染料を1種以上配合することにより色調を改良あるいは調色することも可能であり、配合量は、得られる組成物の機械特性の点から(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂99〜1重量%、ポリエチレンテレフタレート樹脂1〜99重量%の混合物100重量部に対して、0.1〜30重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜20重量部、さらに好ましくは0.1〜15重量部である。
【0085】
また、前記のカーボンブラックとしては、限定されるものではないが、チャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、アントラセンブラック、油煙、松煙、および、黒鉛などが挙げられ、平均粒径500nm以下、ジブチルフタレート吸油量50〜400cm3/100gのカーボンブラックが好ましく用いられ、処理剤として酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、ポリオール、シランカップリング剤などで処理されていても良い。また、上記の酸化チタンとしては、ルチル形、あるいはアナターゼ形などの結晶形を持ち、平均粒子径5μm以下の酸化チタンが好ましく用いられ、処理剤として酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、ポリオール、シランカップリング剤などで処理されていても良い。また、上記のカーボンブラック、酸化チタン、および種々の色の顔料や染料は、本発明の難燃性樹脂組成物との分散性向上や製造時のハンドリング性の向上のため、種々の熱可塑性樹脂と溶融ブレンドあるいは単にブレンドした混合材料として用いても良い。とくに、前記の熱可塑性樹脂としては、ポリアルキレンテレフタレートが好ましく用いられる。
【0086】
さらに、本発明の難燃性ポリブチレレンテレフタレート樹脂組成物および成形品に対して本発明の目的を損なわない範囲で、イオウ系酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、および帯電防止剤などの公知の添加剤を1種以上配合された材料も用いることができる。
【0087】
本発明の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物および成形品は、通常公知の方法で製造される。例えば、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂の混合物、(B)ポリカーボネート樹脂、(C)芳香族燐酸エステル、(D)繊維強化材、(E)トリアジン系化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸との塩、(G)アルコール類と燐酸との部分エステルのアルキルアシッドホスフェート化合物、必要に応じて(F)フッ素系化合物、(H)アルカリ土類金属塩、(I)エポキシ化合物、およびさらに必要に応じて、難燃助剤、エチレン(共)重合体やコアシェルゴム、加水分解性改良材、ヒンダードフェノール系酸化防止剤および/またはホスファイト系酸化防止剤、顔料や染料の着色剤、滑剤、およびさらに必要に応じてその他の必要な添加剤を予備混合して、または混合せずに押出機などに供給して十分溶融混練することにより難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が調製される。
【0088】
前記の予備混合の例として、ドライブレンドするだけでも本発明の効果が発揮できるが、タンブラー、リボンミキサーおよびヘンシェルミキサー等の機械的な混合装置を用いて混合することが挙げられる。また、繊維強化材は、二軸押出機などの多軸押出機の元込め部とベント部の途中にサイドフィダーを設置して添加する方法であっても良い。また、液体の添加剤の場合は、二軸押出機などの多軸押出機の元込め部とベント部の途中に液添ノズルを設置してプランジャーポンプによる添加方法や元込め部などから定量ポンプで供給する方法などであっても良い。また、難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を製造する方法とては、限定されるものではないが、例えば“ユニメルト”あるいは“ダルメージ”タイプのスクリューを備えた単軸押出機、二軸押出機、三軸押出機およびニーダータイプの混練機などを用いて溶融混練して製造することができる。
【0089】
かくして得られる難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、通常公知の方法で成形することができ、例えば射出成形、押出成形、圧縮成形、シート成形、フィルム成形などによって、あらゆる形状の成形品とすることができ、なかでも射出成形が好適であり、金属部品の一部を直接成形品と一体化させるインサート成形による射出成形方法で得られる成形品であっても良い。
【0090】
また、本発明の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる成形品は、機器内部の電気火炎に対する安全性や成形品自体の火災に対する安全性が高く、さらに成形品外観に優れ任意の色調が可能で、機械特性と熱変形温度などに優れているため、電気・電子部品、機械機構部品、および自動車部品に有用である。具体的には、一般家庭電化製品、OA機器などのハウジング、コイルボビン、コネクター、リレー、ディスクドライブシャーシー、トランス、電磁開閉器、スイッチ部品、コンセント部品、モーター部品、ソケット、プラグ、コンデンサー、各種ケース類、抵抗器、金属端子や導線が組み込まれる電気・電子部品、コンピューター関連部品、音響部品、レーザーディスクなどの音声部品、照明部品、電信・電話機器関連部品、エアコン部品、洗濯機部品、VTRやテレビなどの家電部品、複写機用部品、ファクシミリ用部品、光学機器用部品、自動車点火装置部品、自動車用コネクター、および各種自動車用電装部品などが挙げられる。
【0091】
本発明においては、優れた機械特性を維持しながら、1/64インチ(約0.4mm)厚みにおいて、UL−94難燃規格V−0に適合する組成物を得ることが可能であることから、部品の薄肉軽量化が期待できる。
【0092】
【実施例】
以下、実施例により本発明の効果を更に詳細に説明する。ここで%および部とはすべて重量%および重量部をあらわす。各特性の測定方法は以下の通りである。
【0093】
参考例1(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂(以下、PBTと略す)
<A−1>東レPBT−1100S(東レ社製)。
【0094】
参考例2 ポリエチレンテレフタレート樹脂(以下、PETと略す)
<A−2>三井PETJ005(三井ペット樹脂社製、固有粘度0.65)。
【0095】
参考例3(B)ポリカーボネート樹脂(以下、PCと略す)
<B−1>“タフロン”A−2500(出光石油化学工業社製、溶融粘度指数8g/10分)
<B−2>“タフロン”A−1900(出光石油化学工業社製、溶融粘度指数19g/10分)。
【0096】
参考例4(C)燐酸エステル
<C−1>下記の(5)式の芳香族燐酸エステル“PX−200”(大八化学社製)。
【0097】
【化10】
【0098】
<C−2>下記の(6)式の芳香族燐酸エステル“CR741”(大八化学社製)。
【0099】
【化11】
【0100】
参考例5(D)繊維強化材(以下、GFと略す)
<D−1>繊維径約10μmのチョップドストランド状のガラス繊維“CS3J948”(日東紡績社製)。
【0101】
参考例6(E)トリアジン系化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸との塩(以下、MC塩と略す)
<E−1>メラミンシアヌレート“MCA”(三菱化学社製)。
【0102】
参考例7(F)フッ素系化合物
<F−1>ポリテトラフルオロエチレン“テフロン(登録商標)6J”(三井デュポンフロロケミカル社製)。
【0103】
参考例8(G)酸性燐酸エステル(以下、DSPと略す)
<G−1>モノおよびジステアリルホスフェートの混合物“アデカスタブ”AX−71(旭電化社製)。
【0104】
参考例9(H)アルカリ土類金属塩
<H−1>水酸化マグネシウム“キスマ6E”(共和化学工業社製)(以下、水マグと略す)
<H−2>炭酸カルシウム“KSS1000”(同和カルファイン社製)(以下、炭カルと略す)。
【0105】
参考例10(I)エポキシ化合物
<I−1>ビスフェノールAジグリシジルエーテルを主成分としたエポキシ化合物“エピコート819”(ジャパンエポキシレジン社製)。
【0106】
参考例11 繊維強化材以外の無機充填剤
<J−1>珪酸塩のタルク“LMS300”(富士タルク社製)(以下、タルクと略す)。
【0107】
参考例12 ヒンダードフェノール系酸化防止剤および/またはホスファイト系酸化防止剤
<K−1>ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]のヒンダードフェノール系酸化防止剤“IR−1010”(日本チバガイギー社製)(以下、IR1010と略す)
<K−2>ペンタエリスリトール系ホスファイト化合物のホスファイト系酸化防止剤“Mark PEP−36”(旭電化社製)(以下PEP36と略す)。
【0108】
参考例13〜23、実施例1〜12、比較例1〜13
スクリュ径30mm、L/D35の同方向回転ベント付き2軸押出機(日本製鋼所製、TEX−30α)を用いて、(A)PBT、PET、(B)ポリカーボネート樹脂、(C)燐酸エステル、(E)MC塩、(F)フッ素系化合物、(G)酸性燐酸エステル、(H)アルカリ土類金属塩、および(I)エポキシ化合物、さらに必要に応じて、その他の添加剤<J>無機充填剤、および<K>酸化防止剤を表1〜表2に示した配合組成で混合し、元込め部から添加した。また、(D)成分のGFは、元込め部とベント部の途中にサイドフィダーを設置して添加した他は上記と同じ方法で表1〜表2に示す添加量の配合物を元込め部から添加した。なお、混練温度270℃、スクリュ回転150rpmの押出条件で溶融混合を行い、ストランド状に吐出し、冷却バスを通し、ストランドカッターによりペレット化した。
【0109】
得られたペレットを乾燥後、次いで射出成形機により、それぞれの試験片を成形し、次の条件で物性を測定し、同じく表1〜表2にその結果を示した。
【0110】
(1)難燃性
東芝機械製IS55EPN射出成形機を用いて、成形温度270℃、金型温度80℃の条件で難燃性評価用試験片の射出成形を行い、UL94垂直試験に定められている評価基準に従い、難燃性を評価した。難燃性はV−0>V−1>V−2の順に難燃性が低下しランク付けされる。また、試験片の厚みは1/16インチ(約1.59mm、以下1/16"と略す)厚み、1/32インチ(約0.79mm、以下1/32"と略す)厚み、および1/64インチ(約0.40mm、以下1/64"と略す)厚みを用い、厚みが薄いほど難燃性は厳しい判定となる。また、燃焼性に劣り上記の難燃性ランクに該当(合格)しなかった材料は規格外と記録した。
【0111】
(2)機械特性
(2−1)引張強度
東芝機械製IS55EPN射出成形機を用いて、成形温度270℃、金型温 度80℃の条件で3mm厚みのASTM1号ダンベル射出成形品を得た。ASTMD638に準じて引張強度を測定した。
【0112】
(2−2)アイゾット衝撃強度
東芝機械製IS55EPN射出成形機を用いて、成形温度270℃、金型温 度80℃の条件で3mm厚みのアイゾット衝撃試験片の射出成形品を得た。ASTMD256に準じてノッチ無しアイゾット衝撃強度を測定した。ここで、NBと記載されている試験結果は、試験片が破壊しないことを示す。
【0113】
(3)熱変形温度
東芝機械製IS55EPN射出成形機を用いて、成形温度270℃、金型温度80℃の条件で3mm厚みの熱変形温度試験片の射出成形品を得た。荷重1.82MPaの条件で、ASTMD648に準じて熱変形温度を測定した。
【0114】
(4)ブリードアウト試験
東芝機械製IS55EPN射出成形機を用いて、成形温度270℃、金型温度80℃の条件で射出成形された80mm×80mm×厚み3mmの角板を試料とし、150℃に温調されたタバイ社製熱風乾燥機“HighTempOven”PVH210に100時間投入した。
【0115】
前記の乾燥機投入前後の角板の外観を目視観察し、次の基準でブリードアウトの有無を判定した。
【0116】
ここで、ブリードアウトとは、成形品組成物中の配合物の一部が成形品の表面にしみでてくる現象である。
【0117】
○ :乾燥機投入前後の成形品にブリードアウトが観察されない
△ :乾燥機投入前の成形品にブリードアウトが観察されない
しかし、乾燥機投入後の成形品にブリードアウトが観察される
× :乾燥機投入前後の成形品にブリードアウトが観察される。
【0118】
(5)色調
東芝機械製IS55EPN射出成形機を用いて、成形温度270℃、金型温度80℃の条件で射出成形された80mm×80mm×厚み3mmの角板を試料とし、スガ試験機社製SMカラーコンピューターを使用して黄色度(YI)を測定した。なお、YIの値が小さいほど白色に近く、色調に優れる材料である。
【0119】
(6)加水分解性
東芝機械製IS55EPN射出成形機を用いて、成形温度270℃、金型温度80℃の条件で3mm厚みのASTM1号ダンベル片の射出成形を行い、得られたASTM1号ダンベル片を温度121℃、湿度100%RHの条件下で100時間湿熱処理した後、ASTM D648に準じて引張強度を測定し、測定値は未処理品の引張強度で割った値の百分率である引張強度保持率(%)で示した。
【0120】
(7)半結晶化時間
難燃性の評価に用いた1/32”厚み燃焼試験片からサンプル約15mgを採取し、パーキングエルマー社製DSC−7示差熱量計にセットした。270℃×5分間サンプルを溶融後、最大の降温スピードで190℃まで冷却させ、190℃を保持させ結晶化ピークの出る時間を記録した。なお、結晶化ピークまでの時間は、結晶の半分に相当することから、半結晶化時間として表した。この時間が短い程、射出成形時の固化速度も速いものと推定されることから、結晶化速度の目安となる測定値である。
【0121】
(8)耐熱性
東芝機械製IS55EPN射出成形機を用いて、成形温度270℃、金型温度80℃の条件で3mm厚みのASTM1号ダンベル片の射出成形を行い、得られたASTM1号ダンベル片を温度180℃に温調されたタバイ社製パーフェクトオーブン中に200時間投入した後、ASTM D648に準じて引張強度を測定し、測定値は未処理品の引張強度で割った値の百分率である引張強度保持率(%)で示した。
【0122】
【表1】
【0123】
【表2】
【0124】
表1の比較例1〜比較例2から、(D)繊維強化材の配合量が約30重量%の(A)ポリエステル樹脂として、PBTあるいはPETを単品で用いた組成物は、難燃性とブリードアウトのどちちらかに欠点があり、優れた難燃材料を得ることができなかった。
【0125】
本発明の参考例13〜参考例17から、(D)繊維強化材の配合量が約30重量%、約15重量%、約38重量%の組成物において、(A)ポリエステル樹脂として、PBTあるいはPETの混合物を用いた場合は、1/64”厚みV−1以上の燃焼性を示し、ブリードアウトが生じない優れた機械強度を持つ材料が得られた。
【0126】
また、参考例13と参考例14、および参考例16と参考例17から、(D)繊維強化材の配合量が約30重量%の組成物では(F)成分のフッ素系樹脂化合物を配合した方がより高度な難燃性が得られ、(D)繊維強化材の配合量が約38重量%の組成物では、配合しない方がより高度な難燃性が得られることから、(F)フッ素系樹脂化合物は組成物によって配合すべきか否かを考慮する必要があると言える。
【0127】
また、参考例18〜参考例19から、1/64”厚みの燃焼性に優れ、ブリードアウトが生じない優れた機械強度を持つ材料が得られる効果があると言える。
【0128】
また、参考例20から、溶融粘度指数の高い(分子量の低い)(B)PCを配合した場合は、1/64”厚みの燃焼性に優れ、ブリードアウトが生じない優れた材料が得られるものの機械特性は約10%低下することから、溶融粘度指数の低い(分子量の高い)(B)PCを用いれば機械特性にも優れる組成物が得られる効果があると言える。
【0129】
また、参考例21から、参考例14と異なる本発明の(C)燐酸エステルを配合しても、1/64”厚みの燃焼性に優れ、ブリードアウトが生じない優れた材料が参考例14と同じく得られると言える。
【0130】
また、参考例22〜参考例23から、1/64”厚みの燃焼性に優れ、ブリードアウトが生じない優れた機械強度を持つ材料が得られる効果があると言える。
【0131】
また、比較例3〜比較例6から、本発明の(B)PC、(C)燐酸エステル、(D)繊維強化材、および(E)MC塩のいずれかの成分を配合しない場合は、優れた難燃材料が得られなかったばかりか、(C)燐酸エステルを配合した組成物では、ブリードアウトが生じ、商品価値のない成形品と言える。
【0132】
また、比較例7〜比較例9には、本発明の(B)PC、(C)燐酸エステル、および(E)MC塩のいずれかを本発明の範囲以上に配合した場合の組成物を示した。(B)PCを範囲以上に配合した組成物は、優れた難燃性を有するものの、熱変形温度と加水分解性が極度に低下するため、商品価値のない成形品であった。また、(C)燐酸エステルの場合は、特に機械特性の大きな低下とブリードアウトが生じ、(E)MC塩の場合は、特に機械特性が極度に低下するため、商品価値のない成形品と言える。
【0133】
また、比較例10〜比較例12から、本発明の(B)PCに替えて、PBTより難燃性に優れる他の材料(PPE、PPS、およびナイロン樹脂)を配合した場合は、いずれも黄色に着色し、商品価値に劣る成形品であり、難燃性、ブリードアウト防止効果も満足できるものでなかったと言える。
【0134】
表2には、参考例14の組成物に配合できる(G)酸性燐酸エステル、(H)アルカリ土類金属塩、(I)エポキシ化合物、(J)繊維強化材以外の無機充填剤、および(K)耐熱剤をさらに配合した組成物を示した。
【0135】
また、実施例1と実施例2から、(G)酸性燐酸エステルをさらに配合することによって、機械特性と熱変形温度が向上する効果があると言える。
【0136】
また、実施例3〜実施例4から、(H)アルカリ土類金属塩をさらに配合することによって、加水分解性が向上する効果があると言える。
【0137】
また、実施例5〜実施例6から、(I)エポキシ化合物をさらに配合することによって、加水分解性が向上する効果があると言える。
【0138】
また、実施例7から、(H)アルカリ土類金属塩と(I)エポキシ化合物をさらに併用配合することによって、大きく加水分解性が向上することがわかった。
【0139】
また、実施例8と実施例1の比較から、(J)繊維強化材以外の無機充填剤のタルクを配合することによって、優れた物性と難燃性を維持しながら、結晶化速度に優れる組成物が得られる効果があると言える。
【0140】
また、実施例9〜実施例10、と実施例1の比較から、(K)酸化防止剤を配合することによって、優れた物性と難燃性を維持しながら、耐熱性に優れる組成物が得られる効果があると言える。
【0141】
また、比較例13には、本発明の(G)酸性燐酸エステルの配合量の範囲以上に配合した場合の組成物を示した。(G)酸性燐酸エステルを範囲以上に配合した組成物は、難燃性、機械特性および加水分解性が極度に低下するため、商品価値を損なう成形品と言える。
【0142】
【発明の効果】
PBTとPETの混合物に、特定量のポリカーボネート樹脂、芳香族燐酸エステル、および繊維強化材、トリアジン系化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸との塩、アルコール類と燐酸との部分エステルのアルキルアシッドホスフェート化合物、必要に応じて、フッ素系化合物、アルカリ土類金属塩およびエポキシ化合物、およびさらに必要に応じて、繊維強化材以外の無機充填剤、および酸化防止剤などを配合することで、高度な難燃性を保持しつつ、特異的に機械特性、熱変形温度、およびブリードアウトが生じ難く優れた成形品外観を有する信頼性の高い非ハロゲンの難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物および成形品を得ることできた。また、1/64インチ(約0.4mm)厚みにおいて、UL−94難燃規格V−0に適合する難燃材料が得られ、自動車部品、電気・電子部品および機械部品の市場拡大に大きく寄与することが期待できる。
Claims (9)
- (A)ポリブチレンテレフタレート樹脂99〜1重量%、ポリエチレンテレフタレート樹脂1〜99重量%の混合物100重量部に対して、(B)ポリカーボネート樹脂1〜100重量部、(C)芳香族燐酸エステル3〜60重量部、(D)繊維補強材1〜150重量部、および(E)トリアジン系化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸との塩をさらに1〜150重量部を配合し、さらに(A)成分100重量部に対して、(G)アルコール類と燐酸との部分エステルのアルキルアシッドホスフェート化合物をさらに0.01〜1重量配合してなることを特徴とする難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
- (A)成分100重量部に対して、(F)フッ素系化合物をさらに0.02〜10重量部配合してなる請求項1に記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
- (A)成分100重量部に対して、(H)アルカリ土類金属塩をさらに0.1〜5重量部配合してなる請求項1または2に記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
- (A)成分100重量部に対して、(I)エポキシ化合物をさらに0.05〜5重量部配合してなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
- (B)のポリカーボネートの溶融粘度指数が1〜15g/10分である請求項1〜4のいずれか1項に記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
- (C)の芳香族燐酸エステルが下記(1)式の芳香族燐酸エステルである請求項1〜5のいずれか1項に記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる機械機構部品、電気電子部品または自動車部品用の成形品。
- 1/64インチ(約0.4mm)厚みにおいて、UL−94難燃規格V−0に適合する請求項1〜6のいずれか1項に記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
- 1/64インチ(約0.4mm)厚みにおいて、UL−94難燃規格V−0に適合する請求項1〜6のいずれか1項に記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる機械機構部品、電気電子部品または自動車部品用の成形品。
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