JP4907467B2 - スラブの研削方法、熱間圧延用スラブ及びそれらを用いた鋼板の製造方法 - Google Patents
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例えば、特許文献1には、圧延を行う前に、カリバー溝を有するプレス金型で加熱したスラブを幅プレスして、コーナー部の切り欠き長さが20〜40mm、コーナー部の厚み方向切り欠き長さが幅プレス前のスラブ厚みの10〜15%となるように幅方向両側のエッジが面取りされた形状にスラブを成形するオーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法が開示されている。
また、特許文献2には、圧延を行う前に、凸金型を用いて加熱したスラブを幅プレスして、スラブの長さ方向に伸びる各コーナーの全長にわたり、面取り量をスラブ厚みに対して5%以上25%未満、かつスラブ厚み方向に対する面取り角度を15度以上45度以下とした面取り、或いは、屈曲部を有し、かつ面取り角度の異なる2段の面取りを形成しておくステンレス鋼板の製造方法が開示されている。
また、特許文献2記載のステンレス鋼板の製造方法においては、スラブの全長よりも凸金型の長さが通常短いため、スラブの長さ方向にわたって複数回の幅プレスを行う必要があるが、各プレス部位の境界部に生じる段差が圧延時における新たな瑕の発生原因となる場合がある。
従来は、砥石の位置を高精度に制御することが困難であったため、グラインダ上に設置された運転室にオペレータが搭乗し、運転室からスラブのエッジ部を目視により確認しながら手動操作により砥石又はスラブを移動させて研削するのが一般的であったが、スラブ形状を自動的に認識してスラブの表面手入れを行うための装置及び方法が提案されている。
また、特許文献4には、グラインダによってスラブ表面を研削してスラブの表面手入れを行うに際し、前記スラブの搬送方向と直交する搬送直交方向の所定の位置からスラブまでの距離を前記スラブの全周にわたって計測することにより前記スラブの形状及び位置を認識し、その認識結果に応じて砥石がスラブより脱落しないように砥石の移動を制御するスラブ表面手入れ用のグラインダ研削方法及びスラブ表面手入れ用のグラインダ研削装置が開示されている。
また、特許文献4に記載のスラブ表面手入れ用のグラインダ研削方法及びスラブ表面手入れ用のグラインダ研削装置では、スラブ側面に対するマシンスカーフの実施の有無、スケールの付着状況等によりレーザの反射率が変化するため計測誤差が大きくなり、エッジ部の面取り研削に必要なエッジ位置の検出精度を確保することができず、砥石が誤ったスラブ形状に基づいて研削を行う結果、スラブの損傷、又は装置の破損を招くおそれがある。さらに、研削面上に不連続面が発生する結果、圧延時に瑕を生じるおそれもある。
ここで、図1は本発明の第1の実施の形態に係るスラブの研削方法に用いられるスラブの研削装置の概略説明図、図2は同スラブの研削装置に用いられるグラインダ装置の概略説明図、図3は同スラブの研削装置におけるデータ処理の流れを示す説明図、図4はスラブのエッジと砥石の軌跡との関係を示す説明図、図5はスラブの屈折点近傍及びエッジ部側面近傍の説明図、図6はレーザ距離計とスラブの距離の関係を示す説明図、図7はv1、v2と研削面形状の良否との関係を示すグラフである。
図1に示すように、スラブの研削装置10は、チェーンコンベア16を跨ぐように配置され、チェーンコンベア16上を幅方向に全体に又は部分的に跨がって搬送されるスラブ17を上方から撮像した画像を用いてスラブ17の幅方向両側のエッジ部を識別し、スラブ17の形状を計測する形状計測手段11、形状計測手段11の下流側の床面に、チェーンコンベア16に平行に配置されたレール14上を、図示しない門型台車用移動手段を介してX方向に移動可能な門型台車12、及び門型台車12上をY方向に移動可能なグラインダ装置13とを備える。
ローラーテーブル15上を搬送されたスラブ17は、ローラーテーブル15と直交方向にスラブ17を搬送するチェーンコンベア16によって、スラブの研削装置10に搬送される。
スラブ17の大きさに特に制限はないが、本実施の形態において、幅1000〜1600mm、厚さ120〜300mm、長さ5000〜10000mmのスラブを用いた。
形状計測手段11は、このようにして得られた画像データを用いてスラブ17のエッジ部を識別し、エッジ上の所定間隔毎の標本点について、その位置座標を形状のデータとして図示しない形状データ記憶手段に格納する機能を有する。
門型台車12は、脚部25、脚部25上に設けられた枠体26、及び門型台車12全体をレール14に案内されてX方向に移動させる図示しない門型台車用移動手段を備えている。なお、門型台車12の移動方法に特に制限はなく、各種の手段によって自走式としてもよく、あるいは、ラックアンドピニオン、ねじ伝動、チェーンやワイヤを利用した巻き掛け伝動等の任意の公知の機械的手段を用いることができる。門型台車12のX方向への移動速度は、例えば0.5〜15m/分である。
グラインダ装置13において、シリンダ21は、油圧シリンダでもエアシリンダでもよい。或いは、シリンダ21の代わりにギアやリンク機構を利用した機械的な手段を用いてもよい。
また、グラインダ装置用移動手段についても、門型台車用移動手段と同様に自走式としてもよく、あるいは、ねじ伝動や巻き掛け伝動等の任意の機械的手段を用いることができる。グラインダ装置13のY方向への移動速度は、例えば0〜30m/分である。
砥石20は、鋼板の研削加工に通常用いられる任意の材質のものを用いることができる。砥石20の径は、例えば700〜900mmである。
位置座標データ記憶手段に格納された再演算後の各標本点の位置座標は、スラブ17のエッジ部の位置座標データとして制御手段28に転送される。制御手段28は、転送されたスラブ17のエッジ部の位置座標データ及び砥石位置検知装置からの信号に基づいて、門型台車用移動手段、グラインダ装置用移動手段、砥石20の位置及び回転数、及びシリンダ21の押圧力を制御し、スラブ17の幅方向両端エッジ部の研削を行う。
しかしながら、実際の研削現場では、スラブ17のチェーンコンベア16上での斜行、スラブ17における幅可変部又は幅の変動の存在等により、スラブ17の幅方向両端のエッジの少なくとも一部がY方向と平行でない場合が殆どである。このような場合、面取り加工の際には、砥石20をY方向のみならずX方向にも移動させながら研削を行う必要がある。グラインダ装置用移動手段は、砥石20のX方向の位置を無段階に変化させることができず、有限のステップ幅が存在するので、砥石20はX方向に間欠的に移動する。そのため、砥石20の軌跡は、図4中に破線で示したスラブ17のエッジと平行な一本の直線はならず、図4中に矢印付の実線で示したように、Y方向に平行な線分Aと、X方向への変位を伴う線分Bとが互いに連接する折れ線状となる。なお、矢印は砥石20の移動方向を表す。
以上述べたように、砥石20によるスラブ17のエッジ部の研削量は圧延方向の全般にわたって一定とはならず、局所的に変動する。
屈折点における切削面の形状の変動が著しくなると、急峻なエッジが形成されるため、圧延加工時における瑕の発生率が増大する。したがって、全ての屈折点において、θを常にある一定の値以下に保つか、θがある一定の値より大きい屈折点で隣接する線分のうち短い方(砥石20がX方向に移動した際に形成される)の長さLを一定の値以下に保たないと、スラブ17の圧延加工時に、前記した切削面の形状の変動が著しい屈折点近傍に形成された急峻なエッジ部分の倒れ込みが発生し、製品における新たな瑕の発生原因となりうる。
そこで、θ及びLの値と圧延時のエッジの倒れ込みに起因する瑕の発生率との関係について検討した結果、後述する実施例1に示すように、下記の(1)及び(2)のいずれかが成立する場合には、圧延時のエッジの倒れ込みに起因する瑕の発生率を0.5%以下に抑制できることがわかった。
(1)全ての該屈折点においてθ≦60°である。
(2)θ>60°となる屈折点で隣接する2本の線分のうち短い方の長さが25mm以下である。
砥石20によるスラブ17のエッジ部の研削量の局所的な変動に伴い、スラブ17上面と研削面とがなす角度(面取り角度)α、及び研削面の幅W(図5中のエッジ部近傍の部分拡大図参照)もそれぞれ変動するが、これらの値についても、それぞれ所定の範囲内に保たないと、エッジシーム瑕の発生や製品歩留まりの低下を招くおそれがある。
そこで、α及びWの値と圧延時のエッジシーム瑕の発生率との関係について検討した結果、後述する実施例2に示すように、下記の(3)及び(4)が共に成立する場合には、エッジシーム瑕の発生率を0.5%以下に抑制できることがわかった。
(3)αについて、常に20°≦α≦70°なる関係が成立する。
(4)Wについて、常に10mm≦W≦40mmなる関係が成立する。
まず、光学的検査装置19は、チェーンコンベア16によって搬送されたスラブ17を上方から撮像して得られた画像データを用いて、背景との輝度の差によってスラブ17のエッジ部を識別し、エッジ上の所定間隔毎の標本点について、その位置座標を形状のデータとして形状データ記憶手段に格納する。
次に、第1のレーザ距離計22及び第2のレーザ距離計23は、グラインダ装置架台24と共にY方向に移動しながら、図6に示すように、第1のレーザ距離計22とスラブ17の一方の側面との距離LA、及び第2のレーザ距離計23とスラブ17の他方の側面との距離LBを、スラブ17の圧延方向(次工程でスラブが圧延される方向をいう。以下同じ)の全長にわたって所定間隔毎の標本点について計測し、その値を距離のデータとして、距離データ記憶手段に格納する。併せて、計測時の第1のレーザ距離計22、第2のレーザ距離計23の位置座標を計測点位置記憶手段に格納する。
まず、形状データ記憶手段に格納された形状のデータ中のY座標が等しい2つの標本点のX座標の差を演算手段27により演算し、各Y座標におけるスラブ17の幅L1を求める。
次に、演算手段27により、各Y座標について、第1のレーザ距離計22より計測されたLA、及び第2のレーザ距離計23により計測されたLBを用いて、L2=d−(LA+LB)を演算する。ここで、dは、第1のレーザ距離計22と第2のレーザ距離計23との距離である(図6参照)。
ある標本点について|L1−L2|>Dとなる場合、演算手段27は、その標本点における距離のデータ(座標値)に異常値が含まれると判定し、異常値の補正を行う。異常値の補正は、例えば、異常値を含む標本点のX座標を、隣接する標本点のX座標で置換することにより行われる。
このようにして補正された距離のデータは、補正後の距離のデータとして距離データ記憶手段に格納される。次いで、補正された距離のデータと計測点位置記憶手段に格納された計測時の第1のレーザ距離計22、第2のレーザ距離計23の位置座標とを用いて各標本点の位置座標が再演算され、位置座標データ記憶手段に格納される。
さらに、門型台車12をX方向に移動させる際のグラインダ装置13のY方向への移動速度v1、及び門型台車12のX方向への移動速度v2とθとの関係についても検討した結果、v1とv2との間に、0.2≦|v2/v1|≦√3なる関係が成り立つように門型台車12及びグラインダ装置13の移動速度を制御した場合に、θを60度以下に保つことできることもわかった。特に、図7に示すように、0.2≦|v2/v1|≦1なる関係が成り立つ場合には、研削面の形状が良好である(図7中で、「面形状○」と記載)。1<|v2/v1|≦√3なる関係が成り立つ場合には、研削面には若干の段差や不連続面が見られるものの、θは60度以下に保たれていた(図7中で、「面形状△」と記載)。
なお、グラインダ装置のX方向への移動速度v2については、装置構成で定まる下限値a、及び上限値bが存在するので、a<v2<bなる関係が成り立つ範囲内で、v1及びv2を制御手段28により制御する必要がある。
特に、凝固組織がフェライト単相であるため組織が粗大化し、粒界より割れを生じやすいため熱間圧延時にコイルエッジ部にシーム瑕が発生しやすいSi含量が1.2%以上の電磁鋼板用スラブ、鋳造組織が粗大化し、熱問圧延峙に粒界より割れを生じやすいため熱間圧延時にコイルエッジ部にシーム瑕が発生しやすいCr含量が11%以上である含クロム鋼板用スラブ、及び熱間圧延時の縦ロールとスラブコーナー部の接触時のスリ下げ変形によりコイルエッジ部が折りたたまれ、コイルエッジ部にエッジシーム瑕が発生しやすい、C含量が0.02%〜0.06%であり、自動車用鋼板よりも固くなるため、熱間圧延時の加熱炉抽出温度が1050℃〜1250℃(好ましくは、1100℃〜1250℃)であるブリキ鋼板用スラブを用いた鋼板の製造において、従来の方法に比べて熱間圧延時における瑕の発生を大幅に抑制することができる。
30°≦α≦45°、かつ15mm≦W≦35mmを満たすスラブを用いて、スラブ上面と砥石による研削面との稜線の屈折点(「研削面形状変動部」ということもある)に起因するスラブの圧延加工時におけるエッジの倒れこみの発生と、θ、Lの関係について検討を行った。その結果を以下の表1に示す。
表1に示すように、Lの大きさによらずθを60度以下に保つか、あるいはθが60度を超えた部分についてもLを25mm以下に保つことができれば、スラブの圧延加工時におけるエッジの倒れこみの発生率を0.5%以下に抑制できることがわかった。
30°≦θ≦45°、かつ15mm≦L≦20mmを満たすスラブを用いて、スラブの圧延加工時におけるエッジの倒れこみの発生と、α、Wの関係について検討を行った。その結果を以下の表2に示す。
表2に示すように、αを20度以上70度以下に保ち、かつWを10mm以上40mm以下(製品歩留まりの向上の観点から、Wは10mm以上30mm以下であることがより好ましい)に保つことができれば、スラブ17の圧延加工時におけるエッジシーム瑕の発生率を0.5%以下に抑制できることがわかった。
例えば、前記実施の形態では、形状計測手段及びグラインダ装置を、ローラーテーブルに直交するチェーンコンベア上に配置したが、ローラーテーブル上に配置してもよい。また、砥石の押圧手段としてギアやリンク機構を利用した機械的な手段を用いてもよい。
前記実施の形態においては、1台のグラインダ装置を用いて面取り加工を行っているが、2台のグラインダ装置を同時に用いて、スラブの幅方向両側のエッジ部の面取り加工を同時に行うような構成とすることもできる。
さらに、前記実施の形態ではレーザ距離計をグラインダ装置と共にY方向に移動させて距離の計測を行ったが、スラブをY方向に移動させて計測を行うこともできる。
Claims (7)
- 搬送路上を跨がって搬送されるスラブの形状を計測して得られた該スラブのエッジ部の位置座標データを用いて、前記スラブの搬送方向であるX方向及び該X方向に直交するY方向に移動可能な砥石を制御し、前記スラブのエッジ部の面取り加工を行う自動研削装置を用いて、連続鋳造された前記スラブのエッジ部の面取り加工を行うスラブの研削方法において、
前記スラブの上面と前記自動研削装置を用いた面取り加工によって形成される研削面との稜線は、1又は複数の屈折点を有し、該屈折点で折れ線状に連接する複数の線分からなり、該屈折点で互いに隣接する線分間の角度θ(但し、0°<θ≦90°)が、全ての該屈折点においてθ≦60°となるか、θ>60°となる該屈折点で隣接する線分のうち短い方の長さが25mm以下となるように前記砥石を制御して研削を行うことを特徴とするスラブの研削方法。 - 請求項1記載のスラブの研削方法において、前記スラブの上面と前記自動研削装置による研削面とがなす角度αについて、常に20°≦α≦70°なる関係が成立し、かつ前記研削面の幅Wについて、常に10mm≦W≦40mmなる関係が成立するように前記自動研削装置を制御して研削を行うことを特徴とするスラブの研削方法。
- 請求項1及び2のいずれか1項に記載のスラブの研削方法によりエッジ部の面取り加工がなされたことを特徴とする熱間圧延用スラブ。
- 請求項3記載の熱間圧延用スラブを加熱炉で加熱する工程と、前記加熱された熱間圧延用スラブを熱間圧延する工程とを有することを特徴とする鋼板の製造方法。
- 請求項4記載の鋼板の製造方法において、前記熱間圧延用スラブが、ケイ素(Si)含量が1.2%以上である電磁鋼板用スラブであることを特徴とする鋼板の製造方法。
- 請求項4記載の鋼板の製造方法において、前記熱間圧延用スラブが、クロム(Cr)含量が11%以上含む含クロム鋼板用スラブであることを特徴とする鋼板の製造方法。
- 請求項4記載の鋼板の製造方法において、前記熱間圧延用スラブが、炭素(C)含量が0.06%以下であり、かつ熱問圧延時の加熱炉抽出温度が1050℃〜1250℃であるブリキ鋼板用スラブであることを特徴とする鋼板の製造方法。
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