以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
(実施の形態1)
本実施の形態では、犠牲層に同一フォトマスクを使用して、微小構造体を作製する方法について、図面を用いて説明する。図面において、上面図及びO−P、又はQ−Rにおける断面図を示す。
図1(A)に示すように、絶縁表面を有する基板(以下、絶縁基板100という)を用意する。絶縁基板として、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板等を用いることができる。例えば、プラスチック基板を用いると、柔軟性が高く、軽量な微小構造体及びこれを有する微小電気機械式装置を提供することができる。また、ガラス基板を研磨等により薄くすることによって、薄型な微小構造体及びこれを有する微小電気機械式装置を提供することもできる。さらには、金属等の導電性基板又はシリコンウェハ等の半導体性基板上に、絶縁性を有する層を形成した基板を、絶縁基板として用いることも可能である。
絶縁基板100の上に、第1の層101Aを形成する(図1(A)参照)。第1の層101Aは加工により、第1の犠牲層101Bとなる層であり、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、タンタル(Ta)等の金属、当該金属の酸化物や窒化物、又は珪素やゲルマニウムを有する半導体材料、当該半導体材料の酸化物や窒化物、リンガラス(PSG)等を用い、スパッタリング法やCVD法により形成することができる。
第1の層101Aの膜厚は、第1の犠牲層101Bの材料や、微小構造体の構造及び動作方法、犠牲層エッチングの方法等、様々な要因を考慮して決定される。例えば、第1の犠牲層101Bが薄すぎれば除去するための液体薬品又は気体薬品(エッチング剤)が拡散されにくく、またはエッチング後に構造層が座屈するといった現象が生じる。また第1の犠牲層101Bが厚すぎると、第1の犠牲層101Bを除去した後の空間において、犠牲層下部の導電層と構造層との間の距離が大きくなり、静電力で動作させる場合に微小構造体を駆動できなくなる。そのため、微小構造体が犠牲層下部の導電層と構造層との間の空間で静電力による駆動を行う場合、第1の層101Aは0.5μm以上3μm以下の厚さを有し、好適には1μm〜2.5μmを有することが好ましい。また、内部応力の大きい材料を犠牲層として利用する場合、一度に数μm程度の厚い犠牲層を形成することができない。この場合、犠牲層の形成とパターニングとを繰り返し、第1の犠牲層101Bを形成することが可能となる。
次に、第1の層101A上に、スピンコーティング法などの塗布法を用いてレジストマスク材料を塗り、犠牲層形成用フォトマスク(以下、フォトマスクAという)を使って、フォトリソグラフィー法によりレジストマスク102を形成する(図1(A)参照)。
次に、レジストマスク102をマスクとして用い、第1の層101Aをドライエッチング法により加工して、第1の犠牲層101Bを形成する(図1(B)参照)。続いて、レジストマスク102を除去し、構造層を構成する膜を形成し、フォトリソグラフィー法を用いて第1の犠牲層101B及び構造層を構成する膜上にレジストマスクを形成し、ドライエッチング法により構造層103を形成する(図1(B)参照)。
構造層103は、犠牲層のエッチングに用いるエッチング剤で、第1の犠牲層101Bとエッチングの選択比が取れる材料から形成すればよい。例えば、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、タンタル(Ta)等の金属、当該金属の酸化物や窒化物、又は珪素やゲルマニウムを有する半導体材料、当該半導体材料の酸化物や窒化物から選択することができる。
構造層103の膜厚は、第1の犠牲層101Bの厚さ、構造層103の材料、微小構造体の構造、または犠牲層エッチングの方法等、様々な要因を考慮して決定される。また、構造層103を厚く形成すると内部応力に分布が生じ、反りや座屈の原因となる。逆に、構造層103の厚さが薄いと、犠牲層エッチング時に用いる溶液の表面張力によって微小構造体が座屈する恐れがある。これらを考慮して、構造層の膜厚を決定することができる。構造層103は、必要な厚さを得るために、積層構造とすることも可能である。
また、構造層103の材料として内部応力の分布差が大きい物質を用いると、犠牲層除去後、構造層103に反りが生じ、好ましくないと考えられる。しかしながら、このような構造層103の反りを利用して微小構造体を構成することも可能である。具体的には、反りを利用してスイッチング素子として機能させることができる。
次に、構造層103の上に、第2の層104Aを形成する(図2(A)参照)。第2の層104Aは加工により、第2の犠牲層104Bとなる層であり、タングステン等の金属や窒化珪素等の金属又は珪素等の化合物を材料とし、金属や珪素などの元素や化合物を材料とし、スパッタリング法やCVD法等を用いて形成することができる。
第2の層104Aの膜厚は、第2の犠牲層104Bの材料や、微小構造体の構造及び動作方法、犠牲層エッチングの方法等、様々な要因を考慮して決定されることは、第1の層101Aと同様である。
次に、第2の層104A上に、スピンコーティング法などの塗布法を用いてレジストマスク材料を塗り、レジストマスク102を形成した時と同一のフォトマスクであるフォトマスクAを再度使用し、フォトリソグラフィー法によりレジストマスク105を形成する(図2(A)参照)。すると、第1の犠牲層の加工に用いたマスクと同じ形状のレジストマスクが形成される。
次に、レジストマスク105の外形寸法を異ならせる処理を行う。例えば、酸素プラズマ処理等のエッチング処理をレジストマスク105に行うことによって、レジストマスク105より寸法を縮小させることができる。このようにして、縮小されたレジストマスク106を形成する(図2(B)参照)。
レジストマスクの縮小化の方法として、酸素プラズマ処理の代わりに誘導結合式プラズマ(Inductively Coupled Plasma)を利用したエッチング装置を用いてもよい。誘導結合式エッチング装置は、プラズマ発生源のコイル型電極と引き出し電極を有し、コイル型電極側で高密度のプラズマを発生させ、プラズマを引き出し電極により引きつける。すなわち、引き出し電極の表面に配置される被加工体の表面にイオンやラジカルを引き寄せることができる。この引き出し電極の電圧を調整することにより、レジストマスクの下層をエッチングしながら、レジストマスクもエッチングして加工することができる。本実施の形態の場合、第2の層104Aをエッチングしながら、レジストマスク105をエッチングし縮小させることができる。このような誘導結合式エッチング装置を用いると、犠牲層のエッチングとレジストマスクの縮小とを同時に行うことができ、工程時間や工程数を削減することができる。
また、フォトリソグラフィー工程における露光量の調整によりレジストマスク外形寸法を変えることもできる。例えば、ポジ型のレジストマスクを使用した場合、露光量を多くする、露光時間を長くすることで現像後のレジストマスクの外形寸法を小さくすることができる。ネガ型のレジストマスクを使用した場合、露光量を少なくする、露光時間を短くすることで現像後のレジストマスクの外形寸法を小さくすることができる。
次に、レジストマスク106を用いて、第2の層104Aをエッチングにより加工する(図3(A)参照)。エッチングには、ドライエッチング法又はウエットエッチング法を適用することができる。
続いて、レジストマスク106を除去し、絶縁層107を形成する(図3(A)参照)。絶縁層107は、絶縁性を有する無機材料や、有機材料等により形成することができる。無機材料は、酸化珪素、窒化珪素を用いることができる。有機材料はポリイミド、アクリル、ポリアミド、ポリイミドアミド、ベンゾシクロブテン、シロキサン、又はポリシラザンを用いることができる。または、レジストマスクの材料を用いることができる。シロキサンは、珪素(Si)と酸素(O)との結合で骨格構造が構成される。置換基として、少なくとも水素を含む有機基(例えばアルキル基、芳香族炭化水素)が用いられる。置換基として、フルオロ基を用いてもよい。または置換基として、少なくとも水素を含む有機基と、フルオロ基とを用いてもよい。ポリシラザンは、珪素(Si)と窒素(N)の結合を有するポリマー材料を出発原料として形成される。
次に、絶縁層107をフォトリソグラフィー法により形成したレジストマスクを用いてエッチングし、第1の犠牲層101B及び第2の犠牲層104Bを露出させるためのコンタクトホール108(開口部ともいう)を形成する。そして、レジストマスクを除去する(図3(B)参照)。エッチング方法は、ドライエッチング法またはウエットエッチング法を適用することができる。本実施の形態では、ドライエッチングによりコンタクトホール108を形成する場合を説明する。コンタクトホール108は、第1の犠牲層101B及び第2の犠牲層104Bをエッチング除去するために形成される。したがって、エッチング剤が流入するように直径を決定する。そのため、コンタクトホール108の直径を2μm以上とすることが好ましい。
次に、第1の犠牲層101B、及び第2の犠牲層104Bをエッチングにより除去する(図4(A)参照)。エッチングには、ドライエッチング法又はウエットエッチング法を適用することができ、犠牲層の材料によって適したエッチング剤がコンタクトホール108を通って、犠牲層をエッチングする。犠牲層がエッチング除去されると、底面側を絶縁層、側面側及び上面側を構造層で囲まれた空間が生じる。
例えば、犠牲層がタングステン(W)である場合、28%のアンモニアと31%の過酸化水素水を1:2で混合した溶液に20分程度漬けることで犠牲層のエッチングを行うことができる。犠牲層が二酸化珪素の場合は、フッ酸49%水溶液1に対してフッ化アンモニウムを7の割合で混合したバッファードフッ酸を用いて犠牲層のエッチングを行うことができる。犠牲層が珪素の場合は、リン酸、KOH、NaOH、CsOH等のアルカリ金属の水酸化物、NH4OH、ヒドラジン、EPD(エチレンジアミン、ピロカテコール、水の混合物)、TMAH(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)、IPA(イソプロピルアルコール)、NMD3溶液(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドを0.2〜0.5%含む水溶液)等を用いて犠牲層のエッチングを行うことができる。ウエットエッチング後の乾燥に際しては、毛管現象による微小構造体の座屈を防ぐため、粘性の低い有機溶媒(例えばシクロヘキサン)を用いてリンスを行う、または低温低圧の条件で乾燥させるか、またはこの両者を組み合わせることができる。また、大気圧などの高圧の条件下において、F2やXeF2を用いてドライエッチングを行うことにより犠牲層をエッチング除去することができる。
ここで、第1の犠牲層101B及び第2の犠牲層104Bが異なる材料で形成されており、同一のエッチング剤でエッチングできない場合には、二度に分けて犠牲層をエッチングする必要がある。この場合には、例えば構造層103や絶縁層107等の除去はせず、且つエッチング剤と接している層と、犠牲層との選択比を十分に考慮してエッチング剤を選択する必要がある。
犠牲層除去後、毛管現象による微小構造体の座屈を防ぐため、微小構造体表面に撥水性を持たせるプラズマ処理を行うこともできる。プラズマ処理には酸素プラズマ、窒素プラズマ、又はフッ素プラズマを用いることができる。
このような工程を用いて第1の犠牲層101B及び第2の犠牲層104Bをエッチング除去することによって、構造体109を作製することができる(図4(B)参照)。このような構造体は、非常に小さいため微小構造体と呼ぶ。
本実施の形態では、第2の層104A上のレジストマスクを加工することで、第1の犠牲層101Bより小さな第2の犠牲層104Bを形成することができる。これら犠牲層を除去すると、構造層103下側の空間より構造層103上側のほうが小さな空間を有する微小構造体を作製することができる。
また、第1の犠牲層形成後、構造層形成前に第2の犠牲層を形成してもよい。第1の犠牲層のレジストマスクを加工して外形寸法を拡大、又は第2の犠牲層のレジストマスクを加工して外形寸法を縮小することにより、構造層下側に大きさの異なる二つの空間を有し、該空間の上部が該空間の下部よりも小さな微小構造体を作製することができる(図30参照)。
このように本実施の形態では、第1の犠牲層101B及び第2の犠牲層104Bを、同一フォトマスクを使って形成するため、コストを削減できる。また同一フォトマスクによって形成されるレジストマスクを加工することで、フォトリソグラフィー工程で使用する装置の能力以上にレジストマスクを微細化することができる。その結果、微細な微小構造体を作製することができる。
このように空間の大きさが異なる微小構造体は、センサーとして使用することができる。
(実施の形態2)
本実施の形態では、犠牲層に同一フォトマスクを使用して、実施の形態1とは異なり、第1の空間を第2の空間より小さくした微小構造体の作製方法について、図面を用いて説明する。図面において、上面図及びO−P、又はQ−Rにおける断面図を示す。
図5(A)に示すように、絶縁基板200を用意する。絶縁基板200の上に、第1の層201Aを形成する(図5(A)参照)。第1の層201Aは加工により、第1の犠牲層201Bとなる層であり、第1の層201Aは、上記実施の形態と同様な材料を用いて、スパッタリング法やCVD法等を用いて形成することができる。
次に、第1の層201A上に、塗布法、スピンコーティング法などを用いてレジストマスク材料を塗り、犠牲層形成用のフォトマスクAを使って、フォトリソグラフィー法によりレジストマスク202を形成する(図5(A)参照)。
次に、レジストマスク202を酸素プラズマ処理等のエッチング処理を行うことによって縮小させ、レジストマスク203を形成する(図5(B)参照)。
レジストマスクの縮小化の方法として、誘導結合式(Inductively Coupled Plasma)エッチング装置を用いてもよいことは、上記実施の形態と同様である。また、フォトリソグラフィー工程における露光量の調整によりレジストマスクの外形寸法を変えることができる点も、上記実施の形態と同様である。
次に、レジストマスク203をマスクとして、第1の層201Aをドライエッチング法により加工して、第1の犠牲層201Bを形成する(図6(A)参照)。続いて、レジストマスク203を除去し、構造層を形成し、フォトリソグラフィー法を用いてレジストマスクを形成し、ドライエッチング法により構造層204を形成する(図6(A)参照)。
構造層204は、上記実施の形態と同様な材料を用いて、スパッタリング法やCVD法等を用いて形成することができる。
次に、構造層204の上に、第2の層205Aを形成する(図6(B)参照)。第2の層205Aは、第1の層201Aと同様に形成することができる。
次に、第2の層205A上に、スピンコーティング法などの塗布法を用いてレジストマスク材料を塗り、レジストマスク202を形成した時と同一のフォトマスクであるフォトマスクAを再度使用し、フォトリソグラフィー法によりレジストマスク206を形成する(図6(B)参照)。レジストマスク206は、第1の層201Aを加工するときに用いたレジストマスクより大きな外形寸法を有する。このようにして同一フォトマスクを利用して、複数の外形寸法を有するレジストマスクを形成することができる。
次に、レジストマスク206をマスクとして、第2の層205Aをドライエッチング法により加工して第2の犠牲層205Bを形成し、レジストマスク206を除去した後に絶縁層207を形成する(図7(A)参照)。絶縁層207は、絶縁層107と同様に絶縁性を有する無機材料や、有機材料等を用いて形成することができる。
次に、絶縁層207をフォトリソグラフィー法により形成したレジストマスクを用いてエッチングを行い、第2の犠牲層205Bを露出させるようにコンタクトホール208を形成する。コンタクトホール208は、エッチング剤が流入するように直径を決定すればよく、コンタクトホール208の直径を2μm以上とすることが好ましい。その後、当該レジストマスクを除去する(図7(B)参照)。
次に、第1の犠牲層201B、及び、第2の犠牲層205Bをエッチングにより除去する(図8(A)参照)。エッチングは、ドライエッチング法又はウエットエッチング法を適用することができ、犠牲層の材料によって適したエッチング剤がコンタクトホール208を通って、犠牲層をエッチングする。犠牲層がエッチング除去されると、底面側を絶縁層、側面側及び上面側を構造層で囲まれた第1の空間と、底面側を構造層、側面側及び上面側を絶縁層で囲まれた第2の空間とが生じる。
このような工程を用いて第1の犠牲層201B及び第2の犠牲層205Bをエッチング除去することによって、構造体209を作製することができる(図8(B)参照)。
本実施の形態では、第1の層201A上のレジストマスクを加工することで、第2の犠牲層205Bより小さな第1の犠牲層201Bを形成することができる。これら犠牲層を除去すると、構造層204上側の空間より構造層204の下側のほうが小さな空間を有する微小構造体を作製することができる。
このように本実施の形態では、第1の犠牲層201B及び第2の犠牲層205Bを、同一フォトマスクを使って形成するため、コストを削減できる。また同一フォトマスクによって形成されるレジストマスクを加工することで、フォトリソグラフィー工程で使用する装置の能力以上にレジストマスクを微細化することができる。その結果、微細な微小構造体を作製することができる。
このように空間の大きさが異なる微小構造体は、センサーとして使用することができる。
(実施の形態3)
本実施の形態では、犠牲層に同一フォトマスクを使用して、実施の形態1及び実施の形態2とは異なり、拡大されたレジストマスクを用いて微小構造体を作製する方法について、図面を用いて説明する。図面において、上面図及びO−P、又はQ−Rにおける断面図を示す。
図9(A)に示すように、絶縁基板300を用意する。絶縁基板300の上に、第1の層301Aを形成する(図9(A)参照)。第1の層301Aは、上記実施の形態と同様な材料を用いて、スパッタリング法やCVD法等を用いて形成することができる。
次に、第1の層301A上に、スピンコーティング法などの塗布法を用いてレジストマスク材料を塗り、犠牲層形成用のフォトマスクAを使って、フォトリソグラフィー法によりレジストマスク302を形成する(図9(A)参照)。
次に、レジストマスク302をマスクとして用い、第1の層301Aをドライエッチング法により加工して、第1の犠牲層301Bを形成する(図9(B)参照)。続いて、レジストマスク302を除去し、構造層を形成し、フォトリソグラフィー法を用いてレジストマスクを形成し、ドライエッチング法により構造層303を形成する(図9(B)参照)。
構造層303は、上記実施の形態と同様な材料を用いて、スパッタリング法やCVD法等を用いて形成することができる。
次に、構造層303の上に、第2の層304Aを形成する(図10(A)参照)。第2の層304Aは、第1の層301Aと同様に形成することができる。
次に、第2の層304A上に、塗布法、スピンコーティング法などを用いてレジストマスク材料を塗り、レジストマスク302を形成した時と同一のフォトマスクであるフォトマスクAを再度使用し、フォトリソグラフィー法によりレジストマスク305を形成する(図10(A)参照)。
次に、レジストマスク305を熱処理することによって、レジストマスク305を拡大させ、レジストマスク306とする(図10(B)参照)。例えば、フォトリソグラフィー工程後に、オーブンなどの熱処理装置を使って、熱を加えることにより、レジストマスクを横方向に拡大させることができる(図11参照)。図11(A)には、熱処理前のレジストマスク10を、図11(B)には200℃で1時間の熱処理をした後のレジストマスク20を示す。このように熱処理を行うと、レジストマスクの外形寸法を拡大させることができる。
レジストマスクの拡大化の方法として、フォトリソグラフィー工程における露光量の調整を利用することができる。例えば、ポジ型のレジストマスクを使用した場合、露光量を少なくする、露光時間を短くすることで現像後のレジストマスクの外形寸法を大きくすることができる。ネガ型のレジストマスクを使用した場合、露光量を多くする又は露光時間を長くすることで現像後のレジストマスクの外形寸法を大きくすることができる。
次に、レジストマスク306をマスクとして、第2の層304Aをドライエッチング法により加工して第2の犠牲層304Bを形成し、レジストマスク306を除去した後に、絶縁層307を形成する(図12(A)参照)。絶縁層307は、絶縁層107と同様に絶縁性を有する無機材料や、有機材料等を用いて形成することができる。
次に、絶縁層307をフォトリソグラフィー法により形成したレジストマスクを用いてエッチングを行い、第2の犠牲層304Bを露出させるようにコンタクトホール308を形成する。コンタクトホールは、エッチング剤が流入するように直径を決定すればよく、コンタクトホール308の直径を2μm以上とすることが好ましい。その後、当該レジストマスクを除去する(図12(B)参照)。
次に、第1の犠牲層301B、及び第2の犠牲層304Bをエッチングにより除去する(図13(A)参照)。エッチングは、ドライエッチング法又はウエットエッチング法を適用することができ、犠牲層の材料によって適したエッチング剤がコンタクトホール308を通って、犠牲層をエッチングする。犠牲層がエッチング除去されると、底面側を絶縁層、側面側及び上面側を構造層で囲まれた第1の空間と、底面側を構造層、側面側及び上面側を絶縁層で囲まれた第2の空間とが生じる。
このような工程により、第1の犠牲層301B及び第2の犠牲層304Bをエッチング除去することによって、構造体309を作製することができる(図13(B)参照)。
本実施の形態では、第1の犠牲層301B及び第2の犠牲層304Bを、同一フォトマスクを使って形成するため、コストを削減できる。また、第2の犠牲層304Bのレジストマスクを加工することで、第1の犠牲層301Bより大きな第2の犠牲層304Bを形成することができ、構造層303下側の空間より構造層303上側の空間のほうが大きな微小構造体を作製することができる。
本実施の形態では、第2の犠牲層のレジストマスクを拡大化させているが、第1の犠牲層のレジストマスクを拡大化させることもできる。この場合、第2の犠牲層より大きな第1の犠牲層を形成することができ、構造層上側の空間より構造層下側の空間のほうが大きな微小構造体を作製することができる。
また、第1の犠牲層形成後、構造層形成前に第2の犠牲層を形成してもよい。第1の犠牲層のレジストマスクを加工して外形寸法を縮小、又は第2の犠牲層のレジストマスクを加工して外形寸法を拡大することにより、構造層下側に大きさの異なる二つの空間を有し、該空間の下部が該空間の上部よりも小さな微小構造体672を作製することができる(図31(A)、(B−1)参照)。なお、構造層の形成方法によって、微小構造体は図31(B−2)に示す微小構造体673に示す形態にもなりうる。
このように空間の大きさが異なる微小構造体は、センサーとして使用することができる。
(実施の形態4)
上記実施の形態1乃至3では、第1の犠牲層のレジストマスク又は第2の犠牲層のレジストマスクのいずれか一方を縮小又は拡大しているが、双方を加工することもできる。
また本発明は、微小構造体の空間が積層構造を有する場合に同一のフォトマスクを適用することを特徴とする。そのため、空間が3層以上積層した構造であっても、本発明を適用することができる。
このように、縮小又は拡大されたレジストマスクを用いることにより、複数の異なる機械的特性を有する微小構造体を作製することができる。
(実施の形態5)
本実施の形態では、構造層に用いる半導体層の構造について説明する。
構造層に適用する珪素を有する層には、結晶状態を有するもの、微結晶状態を有するもの、又は非晶質状態を有するものを用いることができる。ここでは、構造層に多結晶珪素を用いる場合を説明する。なお、構造層は積層構造を有してもよく、そのいずれかに多結晶珪素を有する場合も含まれる。
まず、図21(A)に示すように、構造層の被形成面となる絶縁基板160上に、非晶質珪素を有する層(非晶質珪素層161という)を形成する。非晶質珪素層161を加熱処理することによって結晶化された多結晶珪素層を得ることができる。加熱処理には、加熱炉、レーザ照射、若しくはレーザ光の代わりにランプから発する光の照射(以下、ランプアニールという)、又はそれらを組み合わせて用いることができる。
レーザ照射を用いる場合、連続発振型のレーザビーム(以下、CWレーザビームという)やパルス発振型のレーザビーム(以下、パルスレーザビームという)を用いることができる。レーザとしては、Arレーザ、Krレーザ、エキシマレーザ、YAGレーザ、Y2O3レーザ、YVO4レーザ、YLFレーザ、YAlO3レーザ、ガラスレーザ、ルビーレーザ、アレキサンドライトレーザ、Ti:サファイヤレーザ、銅蒸気レーザまたは金蒸気レーザのうち一種または複数種から発振されるものを用いることができる。このようなレーザビームの基本波、及び当該基本波の第2高調波から第4高調波のレーザビームを照射することで、大粒径の結晶を得ることができる。例えば、Nd:YVO4レーザ(基本波1064nm)の第2高調波(532nm)や第3高調波(355nm)を用いることができる。このときレーザのエネルギー密度は0.01〜100MW/cm2程度(好ましくは0.1〜10MW/cm2)が必要である。そして、走査速度を10〜2000cm/sec程度として照射する。
なお連続発振の基本波のレーザビームと連続発振の高調波のレーザビームとを照射するようにしてもよいし、連続発振の基本波のレーザビームとパルス発振の高調波のレーザビームとを照射するようにしてもよい。複数のレーザビームを照射することにより、エネルギーを補うことができる。
またパルス発振型のレーザビームであって、珪素がレーザビームによって溶融してから固化するまでに、次のパルスのレーザ光を照射できるような周波数で発振させるレーザを用いることもできる。このような周波数でレーザビームを発振させることで、走査方向に向かって連続的に成長した結晶粒を得ることができる。具体的なレーザビームの発振周波数は10MHz以上であって、通常用いられている数十Hz〜数百Hzの周波数帯よりも著しく高い周波数帯を使用する。
その他の加熱処理として加熱炉を用いる場合には、非晶質珪素層を400〜550℃で2〜20時間かけて加熱する。このとき、徐々に高温となるように温度を400〜550℃の範囲で多段階に設定するとよい。最初の400℃程度の低温加熱工程により、非晶質珪素層の水素等が出てくるため、結晶化の際の膜荒れを低減することができる。
さらに図21(B)に示すように、結晶化を促進させる金属元素、例えばNiを有する層162を非晶質珪素層上に形成すると、加熱温度を低減することができ好ましい。金属元素としては、Fe、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Au等の金属を用いることもできる。
すると、図21(C)に示すように多結晶珪素層163を形成することができる。
加熱処理に加えて、上記のようなレーザを用いて照射を行って多結晶珪素層を形成してもよい。そしてレーザ条件を変化させ、選択的にレーザを照射することで、部分的に結晶化することもできる。
このような結晶化された多結晶珪素は、非晶質珪素に比べて硬度が高く、塑性変形を起こしにくい。これは結晶化、特に上記金属元素を用いた結晶化により、結晶粒界が連続している多結晶珪素を作ることができるからである。結晶粒界が連続していることによって電子の移動度が大きくなるため、微小構造体を静電力(静電引力)で制御する場合の構造層の材料として適している。さらに、構造層は、結晶化を助長させる金属元素を含み、導電性を有するため、微小構造体を静電力で制御する本発明の微小電気機械式装置に好適である。勿論、微小構造体を電磁力により制御する場合の構造層に多結晶珪素層を適用してもよい。
また、金属にニッケルを用いる場合、ニッケルの濃度によってニッケルシリサイドが形成されうる。ニッケルシリサイドのような珪素合金は一般に強度が高いことが知られている。そのため、加熱処理時に用いる金属を珪素層中の全体または選択的に残しておき、適当な熱処理を加えることで、さらに硬く、導電性の高い微小構造体を作製することができる。
上記のような結晶化に用いた金属を残したニッケルシリサイドを有する層(ニッケルシリサイド層)と、多結晶珪素層とを積層させることで、導電性に優れた構造層を得ることができる。ニッケルシリサイドのような珪素合金は一般に強度が高いことが知られている。半導体層の結晶化時に用いる金属を半導体層中の全体または選択的に残しておき、適当な熱処理を加えることで、さらに硬く、導電性の高い微小構造体を作製することができる。このようなニッケルシリサイド層は、多結晶珪素層との積層構造に適用することができ、ニッケルシリサイド層により導電性に優れ、構造層の一部又は全部を硬くすることができる。
このようなシリサイド層は、ニッケル以外にタングステン、チタン、モリブデン、タンタル、コバルト、白金によっても形成することができる。それぞれ、タングステンシリサイド層、チタンシリサイド層、モリブデンシリサイド層、タンタルシリサイド層、コバルトシリサイド層、白金シリサイド層となる。このうち、コバルトや白金は、加熱温度を低下させるための金属として用いることもできる。
上記のように、金属を用いて結晶化を行う場合、金属を用いずに行う結晶化に比べて低温で結晶化することができるため、微小構造体を形成する基板として使用できる材料の幅が広がる。例えば、半導体層を加熱のみで結晶化させる場合、1000℃程度の温度で1時間程度の加熱を行う必要があり、熱に被弱なガラス基板を用いることができない。しかしながら、本実施の形態のように上記金属を用いて結晶化することによって、歪み点が約600℃であるガラス基板等を用いることが可能になる。
上記工程のように金属を用いた結晶化は、半導体膜に選択的に金属を塗布することで、部分的に行うこともできる。
結晶化を助長させる金属は微小電気機械式装置等の汚染源となるため、結晶化した後に除去することも可能である。この場合、加熱処理又はレーザ照射による結晶化の後、珪素層上にゲッタリングサイトとなる層を形成し、加熱することにより、金属元素をゲッタリングシンクへ移動させることができる。ゲッタリングシンクには、多結晶半導体層や不純物が添加された半導体層を用いることができる。例えば、半導体層上にアルゴン等の不活性元素が添加された多結晶半導体層を形成し、これをゲッタリングシンクとして適用することができる。不活性元素を添加することによって、多結晶半導体層にひずみを生じさせることができ、ひずみにより効率的に金属元素を捕獲することができる。リン等の元素を添加した半導体層を形成することによって、金属を捕獲することもできる。
また金属は必ずしも除去することなく、構造層が有していてもよい。金属を有することで、構造層に導電性を持たせることができる。
特に構造層に導電性が必要な場合は、金属除去後、リンや砒素、ボロン等の不純物元素を添加することも可能である。導電性を持たせた微小構造体は、静電力で制御する本発明の微小電気機械式装置に好適である。
その後、図21(D)に示すように、多結晶珪素層を所定の形状に加工し、縞状の多結晶珪素層164を形成する。
また構造層は、その厚みを得るため、積層構造とすることができる。たとえば、非晶質珪素層の形成と、加熱処理による結晶化を繰り返すことによって多結晶珪素層の積層構造を形成することができる。この加熱処理によって、すでに形成された多結晶珪素の層内の応力を緩和し、膜剥がれや基板の変形を防ぐことができる。また、さらに膜内の応力を緩和するために、珪素層のエッチングも含めて繰り返すこともできる。このようなエッチングを含めた作製方法は、内部応力の大きい材料を構造層に用いる場合に好適である。
なお、本実施の形態は上記実施の形態と自由に組み合わせて行うことができる。
(実施の形態6)
本実施の形態では、上記実施の形態3の方法より作製することができる微小構造体を有する微小電気機械式装置の例として、センサー装置について説明する。
本実施の形態における微小構造体は、絶縁基板400上に剥離層401を備え、剥離層401上に下部電極402を備える(図14(A)参照)。剥離層401は、後に絶縁基板400と、薄膜トランジスタ等の素子層とを剥離するために設けられた層である。
剥離層401は、金属層や半導体層によって形成され、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ネオジウム(Nd)、パラジウム(Pd)、ニオブ(Nb)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、鉛(Pb)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、珪素(Si)から選択された元素または前記元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料からなる単層膜である。またはこれらの単層膜が積層された、積層膜である。剥離層401となる薄膜の形成方法は、スパッタリング法、プラズマCVD法、液滴吐出法(代表的にはインクジェット法)、印刷法等の手段を用いればよい。このような金属層は、金属をターゲットにして用いるスパッタリング法を用いて形成することができる。剥離層として形成された金属膜の膜厚は、10nm〜200nm、好ましくは50nm〜75nmとする。剥離層401として半導体層を用いる場合、その膜厚は、30nm〜1μmとすればよく、装置の薄膜形成限界が許容すれば、30nm以下とすることも可能である。また珪素を含む層の結晶構造は、非晶質、微結晶、多結晶のいずれでもよい。
下部電極402上に絶縁層403を備え、絶縁層403上に第1の空間404、構造層405、第2の空間406、絶縁層407が順次形成されている。第1の空間404は、その底面側を絶縁層403、側面側及び上面側を構造層405により囲まれている。第2の空間406は、その底面側を構造層405、側面側及び上面側を絶縁層407により囲まれている。絶縁層407には、犠牲層エッチング用のコンタクトホール408が形成されている(図14(A)参照)。第1の空間404及び第2の空間406は、コンタクトホール408等を介して同一エッチング工程によって犠牲層を除去し、形成することができる。そのため、犠牲層には同一材料、又は同一エッチング剤によって除去することのできる材料を用いる。勿論、第1の空間404及び第2の空間406は、別のエッチング工程によって犠牲層を除去することによっても、形成することができる。
ここで、構造層405を挟む第1の空間404と第2の空間406を提供する犠牲層は、同一フォトマスクを使用して、フォトリソグラフィー法により形成することができる。すなわち、同一フォトマスクを用いて、第1の空間404と第2の空間406に対応する犠牲層を形成することができる。第1の空間404は第2の空間406より幅が狭いため、上記の実施の形態で示したように、第2の犠牲層加工時のレジストマスクを縮小する工程を適用することで形成することができる。勿論、第1の空間404が第2の空間406より幅が広い場合は、上記の実施の形態で示したように、第2の犠牲層加工時のレジストマスクを拡大する、又は第1の犠牲層加工時のレジストマスクを縮小する工程を適用すればよい。
次に、絶縁層407をフォトリソグラフィー法により形成したレジストマスクを用いてエッチングを行い、コンタクトホール409を形成する(図14(B)参照)。コンタクトホール409は、コンタクトホール408と同時に形成するとよい。工程数を減らすことができるからである。
次に、コンタクトホール409を充填するように導電層410A及び導電層410Bを形成し、構造層405と電気的に接続する(図14(C)参照)。導電層410A及び導電層410Bは、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)又は珪素(Si)の元素からなる膜又はこれらの元素を用いた合金膜を用いることができる。
次に、微小構造体を制御するための制御回路を、薄膜トランジスタにより形成する(図15(A)参照)。薄膜トランジスタは、半導体膜、ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極、及びドレイン電極を有し、公知の方法によって絶縁基板上に形成することができる。半導体膜は非晶質であっても、微結晶、結晶質であってもよい。結晶性の高い半導体膜を用いると、薄膜トランジスタの電気的特性を高めることができ、制御回路として好適である。
本実施の形態では、絶縁基板411上に、薄膜トランジスタ412、413、414を形成する。なお、後に絶縁基板411を剥離するため、剥離層415を介して薄膜トランジスタ412、413、414を形成する。剥離層415は、剥離層401と同様に形成することができる。
このとき薄膜トランジスタの表面を平坦化するため、絶縁層416を形成する。絶縁層416に開口部を設けてソース電極及びドレイン電極を形成する。ソース電極及びドレイン電極は、それぞれソース配線及びドレイン配線としても機能する。ソース配線及びドレイン配線の表面を平坦化するため、絶縁層417を形成する。その後、ソース配線及びドレイン配線と接続された接続端子418を絶縁層417上に形成する。絶縁層416、417は無機材料又は有機材料から形成することができるが、有機材料から形成すると簡便に平坦性を高めることができる。接続端子418は、簡便な接続を可能とするため、面積の広いパッドとするとよい。このようにして、絶縁基板上の薄膜トランジスタを有する制御回路を形成することができる。
勿論、制御回路はシリコンウェハからなるチップを用いて形成することもできるが、絶縁基板上の薄膜トランジスタで形成することにより、低コスト化を図ることができる。またシリコンウェハから形成する場合、シリコンウェハを研磨することにより薄型化してもよい。その結果、薄膜トランジスタを簡便に積層することができ、制御回路の高機能化を図ることもできる。
次に、制御回路と微小構造体とを接続する。なお、微小構造体において、構造層405と導電層410Aとが接続している部分を第1の電極419、下部電極402と導電層410Bとが接続している部分を第2の電極420とする(図15(B)参照)。
このような微小構造体と、制御回路とを貼り合わせると、図15(C)に示すように接続端子418と、微小構造体の第1の電極419及び第2の電極420とが接続される。
その後、微小構造体の絶縁基板400、制御回路の絶縁基板411を剥離する。剥離層401、415に物理的、又は化学的に変化を与え、接着力を低下させることによって、絶縁基板400、411を剥離することができる。例えば、剥離層401、415にタングステンを用いる場合、加熱処理を行うことによって、結晶構造に変化が生じ、接着力が低下する。その結果、剥離層401、415との界面、又は剥離層401、415の内部が分離し、絶縁基板400、411を剥離することができる。また剥離層401、415に珪素を有する層を用いる場合、剥離層401、415に到達する開口部を設け、エッチング剤を導入して剥離層401、415を除去してもよい。その結果、絶縁基板400、411は剥離することができる。エッチング剤には気体、又は液体を用いることができ、剥離層のみ選択的に反応するエッチング剤を用いる。例えば、珪素を有する層のみ選択的に反応するエッチング剤として、フッ化ハロゲンが挙げられる。フッ化ハロゲンとしては、三フッ化塩素(ClF3)やフッ化水素(HF)を用いることができる。
このようにして、制御回路、微小構造体のそれぞれを絶縁基板400、411から剥離した後、制御回路、微小構造体のそれぞれにプラスチック基板又はプラスチックフィルム基板(以下、フィルム基板421という)を設けることができる。フィルム基板を設けることにより、微小構造体の薄型化、軽量化を図ることができる。そしてフィルム基板を有する微小構造体により、柔軟性が高く、軽量化、薄型化された微小電気機械式装置を提供することができる。
そして、異方性導電フィルム422(ACF:Anisotropic Conductive Film)を用いて、制御回路と微小構造体とを接続する(図15(C)参照)。ACFは一方向のみに導電をとることができるため、接続端子418と、第1の電極419及び第2の電極420との接続をとることができる。接続端子418と、電極419、420とは、銀ペースト、銅ペーストまたはカーボンペースト等の導電性接着剤、NCP(Non Conductive Paste)や半田接合等を用いて電気的に接続してもよい。
本実施の形態では、制御回路、微小構造体ともに絶縁基板から剥離し、フィルム基板を設けたのち、電気的に接続を行う場合を示したが、これに限定されるものではない。例えば、制御回路、微小構造体いずれか一方を絶縁基板から剥離し、フィルム基板を設けた後に、電気的な接続を行ってもよいし、制御回路、微小構造体のいずれも絶縁基板から剥離することなく電気的な接続を行い、その後絶縁基板から剥離することもできる。
このようにして、柔軟性の高い微小電気機械式装置を形成することができ、センサーとして使用することができる。
(実施の形態7)
本実施の形態では、センサー装置の例として検知素子について説明する。
図16(A)に示す検知素子450は、第1の電極419(構造層405に相当)と第2の電極420(下部電極402に相当)とで容量を形成している。外界の重力や圧力などにより、第1の電極419と第2の電極420との間の距離が変化すると、容量が変化するため、その容量変化から外界の重力や圧力などをセンシングすることができる。
図16(B)に示すように、検知素子450とともに、薄膜トランジスタからなる制御回路453、それに加えてA/D変換回路452、インターフェース454、及びメモリ455も有する電気回路部451を設けることで、センサー装置460を形成することができる。
A/D変換回路452は、検知素子450から伝えられた情報をデジタル信号に変換することができる。制御回路453は、当該デジタル信号をメモリ455に記憶するなど、A/D変換回路452を制御することができる。インターフェース454は、外部の制御装置456から駆動電力を受ける、制御信号を受信する、または外部の制御装置456へセンシング情報を送信する等の動作を行うことができる。メモリ455は、センシング情報や、センサー装置固有の情報などを記憶することができる。
また、電気回路部451は、検知素子450から受信した信号を増幅する増幅回路や、検知素子450が得た情報を処理するための中央演算処理回路等を有することも可能である。
外部の制御装置456は、センサー装置460を制御する信号を送信する、センサー装置460が得た情報を受信する、または検知素子に駆動電力を供給する等の動作を行うことができる。
このような構成を有するセンサー装置によって、外界の重力や圧力などを検知することができる。
また、センサー装置が中央処理演算回路を有することで、検知した情報を装置内で処理し、他の装置を制御する制御信号を生成し出力するようなセンサー装置を実現することも可能である。
また、第1の電極419(構造層405)を、熱膨張率の異なる2種類の物質を積層させて形成してもよい。この場合、第1の電極419(構造層405)は温度変化によって可動するので、センサー装置460は、温度検知素子として利用することが可能である。
なお、図16(B)に示すブロック図は、検知素子以外のセンサー装置にも適用することができる。
なお、本実施の形態は上記の実施の形態と自由に組み合わせて行うことができる。
(実施の形態8)
本実施の形態では、上記の実施の形態のいずれか一により作製することができる微小構造体を複数有するセンサー装置について説明する。
例えば、実施の形態1のように、第1の犠牲層と第2の犠牲層を、同一フォトマスクを使用して形成する形態において、第2の犠牲層のレジストマスクを加工して、縮小することにより、構造層下側の空間より構造層上側の空間のほうが小さな微小構造体651を作製することができる(図18(A)参照)。
微小構造体651は、構造層下側の空間より構造層上側の空間のほうが小さいため、構造層上部と絶縁層との接触部652の面積が大きい(図18(A)参照)。このため、構造層にとって、支持点となる絶縁層の影響が大きくなり、上記の実施の形態のように検知素子として用いた場合、構造の安定性が高いものとなる。
また、実施の形態2のように、第1の犠牲層と第2の犠牲層を、同一フォトマスクを使用して形成する形態において、第1の犠牲層のレジストマスクを加工して、縮小することにより、構造層上側の空間より構造層下側の空間のほうが小さな微小構造体653を作製することができる(図18(B)参照)。
微小構造体653は、構造層上側の空間より構造層下側の空間のほうが小さいため、構造層上部と絶縁層との接触部がない、あるいは接触部の面積が極めて小さい(図18(B)参照)。このため、構造層にとって、支持点となる絶縁層の影響がない、あるいは極めて小さくなり、上記の実施の形態のように検知素子として用いた場合、外界の重力や圧力などに対して変形しやすい、つまり、検知感度が高くなる。
またさらに、第1の犠牲層と第2の犠牲層を、同一フォトマスクを使用して形成する形態において、いずれのレジストマスクも加工することなく、構造層下側の空間と構造層上側の空間が同一幅の微小構造体654を作製することもできる(図18(C)参照)。
微小構造体654は、構造層下側の空間と構造層上側の空間が同一なため、構造層上部と絶縁層との接触部655の面積が比較的小さい(図18(C)参照)。このため、構造層にとって、支持点となる絶縁層の影響は大きくなく、上記の実施の形態のように検知素子として用いた場合、構造の安定性と外界の重力や圧力などに対しての変形しやすさ(検知感度)とはバランスがとれており、好ましい。
そして上記の実施の形態により作製することのできる検知感度の低い微小構造体651を有する検知素子607、検知感度の高い微小構造体653を有する検知素子608及び微小構造体651よりは検知感度が高く、微小構造体653よりは検知感度が低い微小構造体654を有する検知素子609を一緒にパッケージしたセンサー装置606を完成する(図19(A)参照)。このように検知感度の異なる検知素子を複数有することで、検出感度の広いセンサー装置を提供することができる。
センサー装置606は複数の検知素子と、これを制御する制御回路を有する。本実施の形態において、センサー装置606は3つの検知感度の異なる検知素子607〜609と、これらを制御する制御回路610を有する。なお検知素子の数は、3つに限定されるものではなく、3つ以上設けることもできる(図20(A)参照)。
また、センサー装置606は、以下に示す無線通信用の電気回路を有してもよい。この場合、センサー装置606は、リーダライタから放射される電磁波により駆動電力を得て、電磁波を介してリーダライタと情報の送受信を行うことができる。例えば、アンテナ620、メモリ619、CPU618(Central Processing Unit)を有する(図20(A)参照)。勿論、センサー装置606に内蔵電池を搭載してもよい。
次に、センサー装置の具体的な形態を図20(B)に示す。センサー装置は、最も大きな面積を占めるCPU618、複数の検出素子を有する検出素子群662、ROMやRAMを有するメモリ619、これらの動作を制御する制御回路610、RF回路663、RF回路に接続されるアンテナ620を有する。アンテナ620は螺旋状に巻かれた形状を有しており、例えば、通信周波数13.56MHzの場合に適用することができる。
図20(C)には、図20(B)と同様に、CPU618、検出素子群662、メモリ619、制御回路610、RF回路663、アンテナ620を有し、当該アンテナの形状が異なる形態を示す。アンテナ620は、直線状であり、例えば、通信周波数がUHF帯(860〜960MHz帯)の場合に適用することができる。UHF帯は通信距離が長いことを特徴とする。通信距離によっては、複雑な形状を有するアンテナを使用する。
アンテナは、CVD法、スパッタ法、印刷法、液滴吐出法(代表的にはインクジェット法)、ディスペンサ法、メッキ法等を用いて、導電性材料により形成することができる。導電性材料には、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、銀(Ag)、銅(Cu)、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)から選択された元素、又はこれらの元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料が用いられ、これらの単層構造又は積層構造で形成する。
例えば、スクリーン印刷法を用いてアンテナとして機能する導電層を形成する場合には、粒径が数nmから数十μmの導電体粒子を有機樹脂に溶解または分散させた導電性のペーストを選択的に印刷することによって設けることができる。また、上述した材料以外にも、セラミックやフェライト等をアンテナに適用してもよい。
このようなアンテナから、電波や信号を得ることにより、無線機能を備えたセンサー装置を提供することができる。
検知素子は、構造の安定性(寿命)を重視すれば、検知感度が低くなり、検知感度を重視すれば、構造の安定性(寿命)が低下してしまい、一長一短である。また、検知したい範囲が広い場合には、一つの検知素子では網羅できない場合がある。広い検知範囲に対応するために、何種類もの検知素子を作製するには、何種類ものフォトマスクを用意する必要があり、コストが高くなってしまう。しかしながら本発明では、検知素子の構造の安定性(寿命)と検知感度にとって大きな因子である犠牲層の形状を同一フォトマスクにより形成することができるため、コストを上げることなく複数種類の検知素子を作製することができる。
このようにコストを大幅に上げることなく、検知範囲の広いセンサー装置を提供することができる。
なお、本実施の形態は上記の実施の形態と自由に組み合わせて行うことができる。
(実施の形態9)
本実施の形態では、微小構造体を有する微小電気機械式装置を備え、無線通信を可能とした半導体装置について説明する。
図17に、半導体装置601が有する電気回路604の詳細な構成を説明する。まず、電気回路604は、外部(リーダライタに相当する)から放射される電磁波を受信して半導体装置601を駆動させる電力を生成し、さらに、外部と無線で通信を行う機能を有する。そのため電気回路604は、電源回路611、クロック発生回路612、復調回路613、変調回路614、復号化回路615、符号化回路616、及び情報判定回路617等、無線通信に必要な回路を有する。また、無線通信に使用する電磁波の周波数や通信方法によって、異なる回路構成を有する場合がある。
電気回路604は微小電気機械式装置603を制御する、リーダライタからの情報を処理する等の機能を有する。そのため電気回路604は、メモリ、メモリ制御回路、演算回路等を有する。図示した例では、メモリ621、メモリ制御回路622、演算回路623、構造体制御回路624、A/D変換回路625、信号増幅回路626を有する。
電源回路611はダイオード及び容量を有し、アンテナ602に発生した交流電圧を整流して定電圧を保持し、当該定電圧を各回路に供給することができる。クロック発生回路612はフィルタや分周回路を有し、アンテナ602に発生した交流電圧をもとに必要な周波数のクロックを発生させ、当該クロックを各回路に供給することができる。ここで、クロック発生回路612が生成するクロックの周波数は、基本的にリーダライタと半導体装置601とが通信に用いる電磁波の周波数以下である。また、クロック発生回路612はリングオシレータを有し、電源回路611から電圧を入力して任意の周波数のクロックを生成することも可能である。
復調回路613はフィルタや増幅回路を有し、アンテナ602に発生した交流電圧に含まれる信号を復調することができる。復調回路613は、無線通信に用いる変調方式によって異なる構成の回路を有する。復号化回路615は、復調回路613によって復調された信号を復号化する。この復号化された信号が、リーダライタより送信された信号である。情報判定回路617は比較回路等を有し、復号化された信号がリーダライタより送信された正しい信号であるか否かを判定することができる。正しい情報であると判断された場合、情報判定回路617は各回路(例えば、メモリ制御回路622や演算回路623、構造体制御回路624等)に正しいことを示す信号を送信し、その信号を受けた回路は所定の動作を行うことができる。
符号化回路616は、半導体装置601からリーダライタへ送信するデータを符号化する。変調回路614は、符号化されたデータを変調し、アンテナ602を介してリーダライタへ送信する。
リーダライタへ送信するデータは、メモリが記憶している半導体装置固有のデータや半導体装置が有する機能により得られたデータである。半導体装置固有のデータとは、例えば、半導体装置が不揮発性のメモリを有し、当該不揮発性のメモリに記憶される個体識別情報等のデータである。半導体装置が有する機能により得られたデータとは、例えば、微小電気機械式装置によって得られたデータや、それらをもとに何らかの演算を行ったデータ等である。
メモリ621は、揮発性メモリ、及び不揮発性メモリを有することができ、半導体装置601固有のデータや、微小電気機械式603から得られた情報等を記憶する。図にはメモリ621が一つのみ記載されているが、記憶する情報の種類や、半導体装置601の機能に応じて複数種類のメモリを有することも可能である。メモリ制御回路622は、メモリ621に記憶されている情報を読み出す、及びメモリ621に情報を書き込む場合にメモリ621を制御する。具体的には、書き込み信号、読み出し信号、メモリ選択信号等を生成する、アドレスを指定する、等の動作を行うことができる。
構造体制御回路624は、微小電気機械式装置603を制御するための信号を生成することができる。例えば、リーダライタからの命令によって微小電気機械式装置603を制御する場合には、復号化回路615によって復号化された信号をもとに微小電気機械式装置603を制御する信号を生成する。また、メモリ621内に微小電気機械式装置603の動作を制御するプログラム等のデータが記憶されている場合は、メモリ621から読み出したデータをもとに微小電気機械式装置603を制御する信号を生成する。そのほかにも、メモリ621内のデータ、リーダライタからのデータ、及び微小電気機械式装置603から得られたデータをもとに微小電気機械式装置603を制御するための信号を生成するフィードバック機能を有することも可能である。
演算回路623は、例えば、微小電気機械式装置603から得られたデータの処理を行うことができる。また、上記の構造体制御回路624がフィードバック機能を有する場合の、情報処理等を行うことも可能である。A/D変換回路625は、アナログデータとデジタルデータとの変換を行う回路であり、微小電気機械式装置603へ制御信号を伝達する、または微小電気機械式装置603からのデータを変換して各回路に伝達することができる。信号増幅回路626は、微小電気機械式装置603から得られる微小な信号を増幅してA/D変換回路625へ伝達することができる。
このような無線機能を備えた半導体装置により、無線通信を可能とすることができる。半導体装置が有する微小電気機械式装置は、フォトマスクを共有することができるため、製造コストを抑えることがえきる。
加えて微小電気機械式装置は、フィルム基板を用いることができるため、半導体装置の軽量化、薄型化、高柔軟性を図ることができる。
(実施の形態10)
本実施の形態では、微小構造体としてカンチレバー構造を用い、第1の空間及び第2の空間のための犠牲層を、同一フォトマスクを利用して加工する場合について説明する。
図26(A)に示すように、基板502上に導電層501を形成する。導電層501は基板502上に直接形成しても良く、基板502上に下地膜503を形成した後に導電層501を形成することもできる。図26は基板502上に下地膜503を形成し、その後に導電層501を形成する例を示す。導電層501は、導電性を有する層を形成した後に、フォトリソグラフィー法によってレジストマスクを形成し、当該レジストマスクを用いたエッチングにより、一対の電極となるように加工することができる。エッチングには、ドライエッチング法又はウエットエッチング法を用いることができる。このような導電層501は、カンチレバーの上層を引きつけるための電極として形成され、スイッチの駆動を制御することができる。
図26(B)に示すように、導電層501上に絶縁層504を形成し、その上に導電層505を形成する。絶縁層504は、CVD法やスパッタリング法等により形成することができる。また、導電層505は上記の導電層501と同様に形成、加工することができ、一対の導電層501間に形成する。ここで形成した導電層505は、信号の電導路として機能する。
図26(C)に示すように、導電層505上に第1の犠牲層507を形成する。第1の犠牲層507は、フォトマスクAを用いてレジストマスクを形成し、当該レジストマスクを用いたエッチングにより、加工することができる。エッチングには、ドライエッチング法又はウエットエッチング法を用いることができる。ここで形成した第1の犠牲層507は、後の犠牲層エッチング時に除去され、第1の犠牲層507が存在した部分は第1の空間となる。
図27(A)に示すように、第1の犠牲層507上に導電層508、509を形成する。導電層508、509は上記導電層501、505と同様に形成、加工することができる。ここで形成した導電層508、509のうち、導電層509は導電層505と接触することにより電導路を導通する接触電極となり、導電層508は導電層501との間に電圧をかけることでスイッチを駆動する駆動電極となる。そのため、導電層508は第1の犠牲層507を介して一対の導電層501と対向するように配置され、導電層509は第1の犠牲層507を介して導電層505と対向するように配置される。
図27(B)に示すように、導電層508、509上に第1の構造層510を形成する。第1の構造層510は絶縁性を有する材料を用いることができ、積層構造又は単層構造を有することができる。第1の構造層510は、橋構造を有する構造体の形を形成し、可動する主体部分を構成するものとなる。
次いで、図27(B)に示すように、第2の犠牲層515を形成する。第2の犠牲層515は、第1の犠牲層507と同様にフォトマスクAを用いてレジストマスクを形成し、当該レジストマスクを用いたエッチングにより、加工することができる。エッチングには、ドライエッチング法又はウエットエッチング法を用いることができる。このとき第2の犠牲層515の大きさを第1の犠牲層507と異ならせる場合、上記の実施の形態で示したように、レジストマスクの縮小工程又は拡大工程を施す。その結果、犠牲層除去後に形成される空間の大きさを異ならせることができる。このように積層された空間のための犠牲層を、同一のフォトマスクを用いて形成することにより、製造コストを低くすることができる。その後、第2の犠牲層515を覆うように第2の構造層516を形成する。第2の構造層516は、第1の構造層510と同様に形成することができる。第2の構造層516は、橋構体を保護する部分を構成するものとなる。
図27(C)に示すように、犠牲層エッチングによって第1の犠牲層507及び第2の犠牲層515を除去する。すると、第1の空間514及び第2の空間517が形成される。この状態で、導電層509と、導電層505とは第1の空間514を介して対向し、導電層501と、導電層508とは第1の空間514及び絶縁層504を介して対向する。そして第1の構造層510と第2の構造層516は、第2の空間517を介して対向する。このようにして、犠牲層を除去することで形成された第1の空間514、第2の空間517及びその空間内を可動することのできる構造層を有する構造体512を形成することができる。
上記方法によって作製した構造体の動作について説明する。構造体は信号を伝えるか否かを制御するためのスイッチとして機能する。図27(C)はスイッチがオフの状態を示している。ここでは駆動電極(すなわち導電層501及び508)間に電圧が印加されないために導電層505と、導電層509とは非導通である。
そして図28はオンの状態を示す。ここでは駆動電極(すなわち導電層501及び508)間に電位差を生じさせることで静電気力を発生させ、第1の構造層510を引き下げる。導電層505と導電層509が接触するまで第1の構造層510が引き下げられることによって導電層505と導電層509が導通する。導電層505と導電層509とは空間を介して設けられているため、このようにスイッチング動作を行うことができる。
このように静電引力を利用するスイッチは、駆動電極(すなわち導電層501及び508)間に生じる静電引力と、第1の構造層510の材料及び構造に起因する復元力(=バネ定数×変位の大きさ)とのバランスによって駆動される。すなわち、第1の構造層510の復元力に打ち勝つ静電力を発生させる電圧を印加することでスイッチをオンとすることができる(図28参照)。
図29(A)(B)に示すように、第1の構造層510及び第2の構造層516に穴513を設けることもできる。図29(A)には上面図を示し、図29(B)にはO−Pにおける断面図を示す。
穴513は、犠牲層エッチングの前にレジストマスクを用いたエッチングにより形成することができる。エッチングには、ドライエッチング法又ウエットエッチング法を適用することができる。
図29(A)(B)のように構造層に穴を設けると、橋形状を有し可動する構造層に作用する空気抵抗を減少し、スイッチングのスピードを上げることができる。また、穴を設けることで構造層内部の残留応力を低減し、バネ定数を小さくする効果もある。さらには質量を低減することによって構造層の機械的な共振周波数を向上させる効果がある。また、導電層508を貫通するように穴を設けても、穴の直径が駆動電極である導電層501及び導電層508との距離の3〜4倍以下であれば、駆動電極間の静電容量は穴を設けなかった場合とほとんど変わらない。これはフリンジング効果によって穴の静電容量の欠陥を補うことができるからである。
本実施の形態では橋構造の構造体の例を示したが、例えば片持ち梁型の構造体として形成することも可能である。また、本実施の形態は上記の実施の形態と自由に組み合わせることができる。
(実施の形態11)
本発明の微小電気機械式装置は、記憶素子に微小構造体を有する記憶装置を構成することができる。本実施の形態では、デコーダ等の周辺回路は半導体素子等を用いて構成し、メモリセル内部を、微小構造体を用いて構成する記憶装置の例を示す。
図22に、本発明の微小電気機械式装置の一形態である記憶装置441の構成を示す。
記憶装置441は、メモリセルアレイ442、デコーダ443、444、セレクタ445、読み出し・書き込み回路446を有する。上記デコーダ443、444、セレクタ445の構成は、公知のものを用いることができる。
メモリセル449は、例えば、記憶素子を制御するスイッチ素子447及び記憶素子448を有することができる。本実施形態の記憶装置441は、当該スイッチ素子447と記憶素子448の双方が微小構造体、スイッチ素子447のみが微小構造体、又は記憶素子448のみが微小構造体で構成されていてもよい。
図23にメモリセル449の構成例を示す。図23はメモリセル449の回路図を示す。
図23に示すように、メモリセル449は、トランジスタ440で構成されたスイッチ素子447、及び微小構造体で構成された記憶素子448で構成される。
このようなメモリセルには、上記の実施の形態で示した微小構造体を用いることができる。記憶素子448は、構造層が導電層となるコンデンサを構成する。そして、導電層の一方は、トランジスタ440の二つの高濃度不純物領域の一方に接続されている。導電層の一方は、記憶装置441が有する全てのメモリセル449の記憶素子448に共通して接続されている。当該導電層は、記憶装置の読み出し時、及び書き込み時に、全ての記憶素子に共通の電位を与えるものであり、本明細書においては共通電極444と記載する場合がある。
上記の構成を有する記憶装置は、揮発性のメモリ、代表的にはDRAM(Dinamic Random Access Memory)として使用することができる。また、作製工程においてコンデンサのギャップを変化させることでマスクロムとして使用することもできる。記憶素子を破壊させるような手段によりライトワンス型のメモリとして使用することもできる。記憶装置における周辺の回路構成及び駆動方法等は、公知の技術を用いることができる。
記憶装置は、上記実施の形態で説明した作製方法を用いて作製されるため、製造コストを高めることがない。
なお、本実施の形態は上記実施の形態と自由に組み合わせて行うことができる。例えば、上記実施の形態で示した半導体装置が有するメモリとして、本実施の形態で示した記憶装置を適用することができる。
(実施の形態12)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した無線通信技術を有する半導体装置の具体的な構成及び使用の例を、図面を用いて説明する。
図24(A)に示す半導体装置704は、保護層によってコーティングされたカプセル705内に本実施の形態の微小電気機械式装置700が設けられている。また、微小電気機械式装置700に設けられた吐出口に接続される流路706が設けられている。流路706を設けることなく、微小電気機械式装置700の吐出口から直接カプセル705外に吐出してもよい。カプセル705と微小電気機械式装置700との間には、充填剤707が満たされていてもよい。
カプセルの表面に設けられた保護層は、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、窒化珪素、酸化珪素、窒化酸化珪素、酸化窒化珪素、又は窒化炭素を含んでいることが好ましい。カプセルや充填材は公知のものを適宜用いる。カプセルに保護層を設けることで、体内でカプセルや半導体装置が溶解、変性することを防止することが可能である。
さらにカプセル最外面を楕円球状のように丸みを帯びた形状にしておくことによって人体を傷つけることもなく、安全に利用することができる。
本実施の形態の半導体装置704は、人体の中に投入し、疾病の患部に薬剤を注入することができる。また、半導体装置704に物理量や化学量を測定して生体の機能データを検出するセンサーや患部細胞をサンプリングする採取体等の付加機能を付けることにより、得られた情報を電気回路によって信号変換、情報処理を行い、無線通信によってリーダライタへ送信することが可能である。半導体装置が有する電気回路の構成によっては、微小電気機械式装置によって得られた情報をもとに、疾病患部を探索して体内を移動する、患部を観察して薬剤の注入をするか否かの判断を行う、等の高度な機能を持たせることも可能である。
図24(B)に示すように、被験者708が半導体装置704を嚥下し、薬剤を投入すべき所定の位置まで体内腔709を移動させる。リーダライタ710により半導体装置704の制御、無線通信を行い、薬剤の吐出を行う。
本実施の形態の半導体装置704は、医療目的に限定されず、遠隔操作可能な吐出装置として幅広く利用することができる。例えば、薬品の調合時に、有害なガスが発生する、爆発の可能性があるなど、作業者に危険が伴う作業において、本実施の形態の半導体装置704の微小電気機械式装置700に設けられたタンクに前記薬品を充填し、遠隔操作をすることで、薬品の調合を行うことができる。これにより作業者への危険性はかなり低減される。
(実施の形態13)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した無線通信技術を有する半導体装置の具体的な構成及び使用の別の例を、図面を用いて説明する。
ここでは、微小電気機械式装置を圧力センサーとして用いる半導体装置の例について説明する。
図25(A)に示すように、本実施の形態の微小電気機械式装置801は、第1の導電層802と第2の導電層803とから構成される検知素子804を備えている。前記第1の導電層802は静電力や圧力等を受けて可動するため、検知素子804は、第1の導電層と第2の導電層との間の距離が変化する可変容量である。
この構造を利用して、検知素子804は、圧力によって第1の導電層802が可動する圧力センサーとして利用することができる。
また、微小電気機械式装置801は、リーダライタとの無線通信を行うためのアンテナ805が形成されている。リーダライタから放射される電磁波により駆動電力を得て、電磁波を介してリーダライタと情報の送受信を行う。
図25(B)に、微小電気機械式装置801を圧力センサーとして用いる場合の具体例を示す。自動車のタイヤ806の空気圧が低下すると、タイヤ806の変形量が大きくなり、抵抗が増加し、結果として燃費の悪化や事故の原因となりうる。本実施の形態の半導体装置では、比較的簡便にかつ日常的に、タイヤ806の空気圧をモニターするシステムを提供することができる。
図25(B)に示すように、微小電気機械式装置801を保護層によってコーティングした半導体装置807をタイヤ806のホイール808部分に設置する。
そして、半導体装置807にリーダライタ809を近づけ、無線通信を行うことで、タイヤ806の空気圧の情報を得ることができる。無線通信技術等は、上記実施の形態10と同様である。
本実施の形態であれば、ガソリンスタンド等の自動車整備工場へ行くことなく、比較的簡便にかつ日常的にタイヤの空気圧をモニターすることができる。