本発明の実施の形態について、図面を用いて以下に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されない。本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解されるからである。したがって、本発明は以下に示す実施の形態および実施の形態の記載内容のみに限定して解釈されるものではない。なお、図面を用いて本発明の構成を説明するにあたり、同じものを指す符号は異なる図面間でも共通して用いる。
(実施の形態1)
本実施の形態では、同一表面上に微小構造体および半導体素子を作製する方法について、図面を用いて説明する。図面において、上面図及びO−P、又はQ−Rにおける断面図を示す。
本発明の微小構造体および半導体素子は、同一表面上であって、絶縁性を有する基板(絶縁基板と記す)上に作製することができる。絶縁基板とは、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板等が挙げられる。例えば、プラスチック基板に微小構造体および半導体素子を形成することにより、柔軟性が高く、軽量な微小電気機械式装置を形成することができる。またガラス基板を研磨等により薄くすることによって、薄型な微小電気機械式装置を形成することもできる。さらには、金属等の導電性基板やシリコン等の半導体性基板上に、絶縁性を有する層(絶縁層と記す)を形成した基板を、絶縁基板として用いることも可能である。
まず、絶縁基板101上に剥離層102を形成する(図1(A)参照)。剥離層102とは、後に除去される層を指し、珪素膜、金属層、又は金属層と金属酸化膜の積層構造等を用いることができる。金属層としては、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)から選択された元素または前記元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料からなる膜を単層構造又は積層構造として形成することができる。また、これらの剥離層102は、スパッタリング法やCVD法を用いて形成することができる。金属層と金属酸化膜の積層構造としては、上述した金属層を形成した後に、酸素雰囲気化におけるプラズマ処理、酸素雰囲気化における加熱処理を行うことによって、金属層表面に当該金属層の酸化物を設けることができる。例えば、金属層としてスパッタリング法により形成したタングステン膜を設けた場合、タングステン膜にプラズマ処理を行うことによって、タングステン膜表面にタングステン酸化物からなる金属酸化膜を形成することができる。また、タングステン酸化物は、WOxで表され、Xは2〜3であり、Xが2の場合(WO2)、Xが2.5の場合(W2O5)、Xが2.75の場合(W4O11)、Xが3の場合(WO3)などがある。タングステン酸化物を形成するにあたり、上記に挙げたXの値に特に制約はなく、エッチングレート等を基に、どの酸化物を形成するかを決めるとよい。また、プラズマ処理の条件として、例えば、高周波(マイクロ波等)を用いて高密度、且つ低電子温度の条件下(以下、高密度プラズマとも記す)で行うことにより、金属層表面に酸化膜を形成することも可能である。高密度プラズマとは、プラズマ密度が1×1011cm−3以上、好ましくは1×1011cm−3から9×1015cm−3以下であり、マイクロ波(例えば周波数2.45GHz)といった高周波を用いたものである。このような条件でプラズマを発生させると、低電子温度が0.2eVから2eVとなる。低電子温度が特徴である高密度プラズマは、活性種の運動エネルギーが低いため、プラズマダメージが少なく、欠陥の少ない膜を形成することができる。また、金属酸化膜の他にも、金属窒化物や金属酸化窒化物を用いてもよい。この場合、金属層に窒素雰囲気下、または窒素及び酸素雰囲気下でプラズマ処理や加熱処理を行えばよい。プラズマ処理の条件としては、上記と同様にして行うことが可能である。
次に、剥離層102上に下地層103を形成する(図1(A)参照)。下地層103は、酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン(SiN)または酸化窒化シリコンなどの絶縁性材料を単層構造または積層構造として形成することができる。本実施の形態では下地層103として積層構造を用いる。下地層103の一層目としては、プラズマCVD法を用い、SiH4、NH3、N2O及びH2を反応ガスとして成膜される酸化窒化シリコンを10〜200nm(好ましくは50〜100nm)形成することができる。本実施の形態では、下地層103の一層目として、膜厚50nmの酸化窒化シリコンを形成する。下地層103のニ層目としては、プラズマCVD法を用い、SiH4及びN2Oを反応ガスとして成膜される酸化窒化シリコンを50〜200nm(好ましくは100〜150nm)の厚さとなるように積層して形成することができる。本実施の形態では、下地層103の二層目として、膜厚100nmの酸化窒化シリコンを形成する。
次に、下地層103上の第一の領域21に第1の構造層105、第二の領域22に半導体層104を形成する(図1(B)の上面図、図1(C)の断面図参照)。半導体層104は、半導体素子を構成する活性層、第1の構造層105は微小構造体を構成する構造層となる。なお活性層とは、チャネル形成領域、ソース領域及びドレイン領域を有する半導体層である。半導体層104、第1の構造層105は、シリコンを有する材料から形成することができる。シリコンを有する材料とは、シリコンからなる材料、又はゲルマニウムを0.01〜4.5atomic%程度に有するシリコンゲルマニウム材料がある。また半導体層104には、結晶状態を有するもの、微結晶状態を有するもの、又は非晶質状態を有するものを用いることができる。
第1の構造層105の材料および膜厚は、構造体の構造、パッケージの方法等、様々な要因を考慮して決定することができる。例えば、第1の構造層105として内部応力の分布差が大きい材料を用いると第1の構造層105に反りが生じる恐れがある。しかしながら、この第1の構造層105の反りを利用して構造体を構成することも可能である。また、第1の構造層105を厚く成膜すると内部応力に分布が生じ、反りや座屈の原因となる。以上を鑑み、第1の構造層105の膜厚は0.5μm以上10μm以下を有することが好ましい。
次に、半導体層104、および第1の構造層105の上に、絶縁層106を形成する(図1(B)の上面図、図1(C)の断面図参照)。絶縁層106は、半導体素子のゲート絶縁層として機能する。絶縁層106は、下地層103と同様、酸化シリコン、窒化シリコン等のシリコンを含む材料を、CVD法またはスパッタリング法等を用いて成膜することができ、単層構造または積層構造を用いることができる。本実施の形態では、絶縁層106として、プラズマCVD法により115nmの厚さで酸化窒化シリコン膜(組成比Si=32%、O=59%、N=7%、H=2%)を形成する。
また、絶縁層106の材料として、高誘電率を有する金属酸化物、例えば、ハフニウム(Hf)酸化物を用いることもできる。このような高誘電率材料によりゲート絶縁層を構成することにより、低い電圧で半導体素子を駆動することができ、低消費電力の微小電気機械式装置を提供することができる。
また、絶縁層106は高密度プラズマ処理によって成膜することができる。プラズマ処理を可能とする成膜室に、半導体層104、および第1の構造層105が形成された基板を配置し、プラズマ発生用の電極、所謂アンテナと被処理物との距離を20mmから80mm、好ましくは20mmから60mmとして成膜処理を行う。このような高密度プラズマ処理は、低温プロセス、具体的には基板温度400℃以下とするプロセスが可能となる。そのため、耐熱性の低いガラスやプラスチックを絶縁基板101として利用することができる。
このような高密度プラズマの成膜雰囲気は窒素雰囲気、又は酸素雰囲気とすることができる。窒素雰囲気とは、代表的には、窒素と希ガスとの混合雰囲気、又は窒素と水素と希ガスとの混合雰囲気である。希ガスは、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンの少なくとも1つを用いることができる。酸素雰囲気とは、代表的には、酸素と希ガスとの混合雰囲気、酸素と水素と希ガスとの混合雰囲気、又は一酸化二窒素と希ガスとの混合雰囲気である。希ガスは、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンの少なくとも1つを用いることができる。
このような高密度プラズマ処理により形成された絶縁層は、成膜中、他の被膜に与えるダメージが少なく、また緻密なものとなる。そして、当該絶縁層と接触する界面状態を改善することができる。例えば高密度プラズマ処理を用いてゲート絶縁層を形成すると、半導体層との界面状態を改善することができる。その結果、半導体素子の電気特性を向上させることができる。さらに、このように絶縁層を構造層上に成膜することによって、成膜中、構造層に与えるダメージを少なくすることができ、第1の構造層105の強度を保つことができる。
絶縁層106の成膜に高密度プラズマ処理を用いる場合を説明したが、半導体層に高密度プラズマ処理を施してもよい。高密度プラズマ処理によって、半導体層表面の改質を行うことができる。その結果、半導体素子の電気特性を向上させることができる。
さらに、絶縁層106の成膜のみではなく、下地層103や他の絶縁層を成膜する場合にも、高密度プラズマ処理を用いることができる。
次に、絶縁層106上に、導電層を形成し、半導体素子のゲート電極107を形成する(図1(D)の上面図、図1(E)の断面図参照)。導電層は、CVD法やスパッタリング法を用いて形成することができ、所定の形状となるように加工する。導電層の加工には、フォトリソグラフィ法によるレジストのパターニングと、ドライエッチングにより行うことができる。また導電性材料を含む組成物を液滴吐出法により形成することもできる。導電性材料としては、Ag、Au、Cu、Ni、Pt、Pd、Ir、Rh、W、Al、Ta、Mo、Cd、Zn、Fe、Ti、Si、Ge、Zr、Ba等の材料、ITO(酸化インジウム酸化スズ合金)、酸化ケイ素を組成物として有するITO(ITSOとも記す)、有機インジウム、有機スズ、酸化亜鉛(ZnO)、窒化チタン(TiN)等を用いることができる。また液滴吐出法により形成する場合、これら金属が混入された溶媒、若しくは分散性ナノ粒子、又はハロゲン化銀の微粒子等を用いることができる。液滴吐出法を用いることにより、フォトリソグラフィ法の現像や露光工程を省くことができる。液滴吐出法とは、調製された組成物を、電気信号に応じてノズルから噴出して微小な液滴を作り、所定の位置に付着させる方法であり、インクジェット法とも呼ばれる。
ゲート電極107の端面はテーパー状にエッチングしてもよい。また、ゲート電極107は単層構造又は積層構造を用いることが可能である。
次に、半導体素子を構成する半導体層104に不純物元素を添加してN型不純物領域111およびP型不純物領域110を形成する(図2(A)の上面図、図2(B)の断面図参照)。このような不純物領域は、マスクを形成し、これを用いて不純物元素を添加することで選択的に形成することができる。不純物元素を添加する方法は、イオンドープ法またはイオン注入法で行うことができる。N型を付与する不純物元素として、典型的にはリン(P)または砒素(As)を用い、P型を付与する不純物元素としては、ボロン(B)を用いることができる。N型不純物領域111、および、P型不純物領域110には、1×1020〜1×1021/cm3の濃度範囲で不純物元素が添加されることが望ましい。
次に、プラズマCVD法等によって窒化珪素等の窒素化合物や酸化珪素等の酸化物からなる絶縁層を形成し、当該絶縁層を垂直方向の異方性エッチングすることで、ゲート電極107の側面に接する絶縁層(以下、サイドウォールと記す)108を形成する(図2(A)の上面図、図2(B)の断面図参照)。
次に、N型不純物領域111を有する半導体層104に不純物元素を添加し、サイドウォール108下方に設けられたN型不純物領域111よりも高い不純物濃度を有する高濃度N型不純物領域109を形成する。サイドウォール108によって、ゲート長を短くするにつれて生じる短チャネル効果を防止することができる。N型の半導体素子は、短チャネル効果の影響を受けやすいからである。勿論、P型の半導体素子にサイドウォールを形成し、高濃度P型不純物領域を形成してもよい。
また、ゲート電極107を異なる導電性材料を積層させ、テーパー状に作製している場合、サイドウォールを設けなくとも、一度の不純物元素の添加でN型不純物領域111および高濃度N型不純物領域109を形成することもできる。
不純物領域を形成した後、不純物元素を活性化するために加熱処理、赤外光の照射、またはレーザ光の照射を行うとよい。また、活性化と同時に絶縁層106へのプラズマダメージや絶縁層106と半導体層104との界面へのプラズマダメージを回復することができる。特に、室温〜300℃の雰囲気中において、表面または裏面からエキシマレーザを用いて不純物元素を活性化させると、効果的な活性化を行うことができる。またYAGレーザの第2高調波等の高調波を照射して活性化させてもよい。YAGレーザはメンテナンスが少ないため好ましい活性化手段である。
また、酸化窒化シリコン膜、酸化シリコン膜などの絶縁層からなるパッシベーション膜を、ゲート電極や半導体層を覆うように形成した後、加熱処理、赤外光の照射、またはレーザ光の照射を行い、水素化を行うことも可能である。例えば、パッシベーション膜として、プラズマCVD法を用いて酸化窒化シリコン膜を形成し、その後、クリーンオーブンを用いて、300〜550℃で1〜12時間加熱し、半導体層の水素化を行うことができる。この工程は、パッシベーション膜に含まれる水素により、不純物元素添加によって生じた半導体層のダングリングボンドを終端することができる。また同時に、上述の不純物領域の活性化処理を行うこともできる。
上記の工程により、N型半導体素子112と、P型半導体素子113とが形成される(図2(A)の上面図、図2(B)の断面図参照)。このとき、微小構造体を構成する構造層105にも不純物領域が形成される。本実施の形態において、N型半導体素子としてNチャネル型薄膜トランジスタ、P型半導体素子としてPチャネル型薄膜トランジスタを適用する。
続いて、全体を覆うように絶縁層114を形成する(図2(C)の上面図、図2(D)の断面図参照)。絶縁層114は、絶縁性を有する無機材料や、絶縁性を有する有機材料等により形成することができる。無機材料には、酸化珪素、窒化珪素を用いることができる。有機材料には、ポリイミド、アクリル、ポリアミド、ポリイミドアミド、レジスト又はベンゾシクロブテン、シロキサン、ポリシラザンを用いることができる。シロキサンは、シリコン(Si)と酸素(O)との結合で骨格構造が構成される。置換基として、少なくとも水素を含む有機基(例えばアルキル基、芳香族炭化水素)が用いられる。置換基として、フルオロ基を用いてもよい。または置換基として、少なくとも水素を含む有機基と、フルオロ基とを用いてもよい。ポリシラザンは、珪素(Si)と窒素(N)の結合を有するポリマー材料を出発原料として形成される材料である。
次に、絶縁層114および絶縁層106を順次エッチングし、コンタクトホール115を形成する(図2(C)の上面図、図2(D)の断面図参照)。エッチングには、ドライエッチング法またはウエットエッチング法を用いることができる。本実施の形態では、ドライエッチング法によりコンタクトホール115、開口116を形成することができる。開口116は、絶縁層114の第1のコンタクトホールの側壁と、該第1のコンタクトホールによって露出した第1の構造層105とで囲まれる。
ここで開口116とは、微小構造体を可動するための空間となる部分である。従来は、犠牲層エッチングやシリコンウエハの深堀エッチング等で形成していた空間を、本発明では、半導体素子の作製工程で形成される絶縁層を加工することによって形成するため、作製工程の簡略化を達成し、結果として、生産タクト向上、コスト削減に繋がる。
また、開口116の側壁部にプラズマCVD法等によって窒化珪素等の窒素化合物や酸化珪素等の酸化物からなる絶縁層、又はスパッタリング法等によって金属層を形成してもよい。このとき、開口116の底部にも絶縁層や金属層が形成されうる。底部に形成された絶縁層や金属層が不要な場合、エッチング法等により除去すればよい。この構成によって、微小電気機械式装置を動作させる場合にかかる圧力により、あるいは微小電気機械式装置の温度変化により絶縁層114からガスが発生し、微小電気機械式装置の空間内の圧力に変化を防ぐことができる。
次に、絶縁層114上、およびコンタクトホール115に導電層117を形成し、ソース電極、ドレイン電極とする。また、第2の構造層118を形成する(図3(A)の上面図、図3(B)の断面図参照)。このときに、電気回路を構成する配線も同時に形成することができる。
導電層117及び第2の構造層118は、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)もしくはシリコン(Si)、又はこれらを用いた合金材料といった導電性材料を用いることができる。これら導電性材料のいずれか、又は複数が混入された組成物を液滴吐出法によって吐出して、ソース電極、ドレイン電極を構成する導電層117及び第2の構造層118を形成することができる。また、スパッタリング法やCVD法によって上記導電性材料を形成した後所定の形状に加工することによってソース電極、ドレイン電極を構成する導電層117を形成することができる。導電性材料の加工には、フォトリソグラフィ法によるレジストのパターニングと、ドライエッチングにより行うことができる。
第2の構造層118の材料および膜厚は、構造体の構造、パッケージの方法等、様々な要因を考慮して決定することができる。第2の構造層118を作製する場合、膜厚は0.5μm以上10μm以下を有することが好ましい。
また、ソース電極、ドレイン電極が上面からみて角を有するパターンとなる場合、当該角が丸みを帯びさせた形状となるようにエッチングすることが好ましい。そうすることによって、ゴミの発生を抑え歩留まりを向上させることができる。これは、ゲート電極107等の導電層をエッチングするときについても同様である。
次に、半導体素子部を覆うように、SOG(Spin On Glass)法、液滴吐出法等により、保護膜として機能する絶縁層119を形成する(図3(C)の上面図、図3(D)の断面図参照)。絶縁層119は、無機材料又は有機材料から形成することができる。例えばDLC(ダイヤモンドライクカーボン)などの炭素を含む膜、窒化珪素を含む膜、窒化酸化珪素を含む膜、エポキシ樹脂等により形成する。絶縁層119は膜厚が厚いため、エポキシ樹脂等の有機材料を用いると、柔軟性を失うことがなく好ましい。また絶縁層119は単層構造、又は積層構造として形成することができる。積層構造の場合、無機材料と有機材料を順に積層するとよい。
次に、剥離層102が露出するように、フォトリソグラフィ法またはレーザ光の照射により絶縁層114、119を加工して、剥離のための開口部120を形成する。また、第1の構造層105、第2の構造層118が露出するように開口部121、122を形成する(図4(A)参照)。開口部121、122は、エッチングやレーザ照射によって、同時又は順に形成することができる。開口部121と、開口部122とは、特定の線を介して対象に設けられている。特定の線とは、微小電気機械式装置を折り曲げるときに基準となる線である。また開口部121と、開口部122とを接続する配線に、同一層上に設けられた配線を用いることができる。同一層上に設けられた配線としては、導電層117やゲート電極107がある。
次に、開口部120にエッチング剤を導入して、剥離層102を除去する(図4(B)参照)。エッチング剤は、フッ化ハロゲンまたはハロゲン化合物を含む気体又は液体を使用する。例えば、フッ化ハロゲンを含む気体として三フッ化塩素(ClF3)を適用して、剥離層102を除去する。すると、微小電気機械式装置形成部分123は、絶縁基板101から剥離された状態となる(図4(C)参照)。微小電気機械式装置形成部分とは、機能素子が形成される領域が含まれる。なお、剥離層102は、全て除去せず一部分を残存させてもよい。一部分を残存させることによって、エッチング剤の消費量を抑え剥離層の除去に要する処理時間を短縮することが可能となる。また一部分を残存させることによって、剥離層102の除去を行った後にも、絶縁基板101上に微小電気機械式装置形成部分123を保持しておくことが可能となる。
微小電気機械式装置形成部分123が剥離された後、絶縁基板101はコストの削減のために、再利用するとよい。また、絶縁層119は、剥離層102を除去した後に、微小電気機械式装置形成部分123が飛散しないように形成したものである。微小電気機械式装置形成部分123は小さく薄く軽いために、剥離層102を除去した後は、絶縁基板101に密着していないために飛散しやすい。しかしながら、微小電気機械式装置形成部分123上に絶縁層119を形成することで、微小電気機械式装置形成部分123に重みが付き、絶縁基板101からの飛散を防止することができる。また、微小電気機械式装置形成部分123単体では薄くて軽いが、絶縁層119を形成することで、絶縁基板101から剥離した微小電気機械式装置形成部分123が応力等により巻かれた形状になることがなく、ある程度の強度を確保することができる。
次に、微小電気機械式装置形成部分123の一方の面を、第1のシート材124に接着させて絶縁基板101から完全に剥離する(図5(A)参照)。剥離層102を全て除去せず一部を残した場合には、物理的手段を用いて絶縁基板101から微小電気機械式装置形成部分123を剥離する。
上記工程において、微小電気機械式装置形成部分123と剥離層102との密着性が弱い場合には、剥離層102をエッチングにより除去する工程を省略し、物理的手段を用いて絶縁基板101から微小電気機械式装置形成部分123を剥離することができる。
続いて、微小電気機械式装置形成部分123の他方の面に、第2のシート材125を配置し、その後加熱処理と加圧処理の一方または両方を行って、第2のシート材125を貼り合わせる。これを第2のシート材125へ転置すると記す。また、第2のシート材125を設けると同時または設けた後に第1のシート材124を剥離する(図5(B)参照)。第2のシート材125はアクリル等の柔軟性の高い有機材料からなり、このようなシートを樹脂基板(可とう性基板)とも記す。
次に、第2のシート材125上に形成された微小電気機械式装置形成部分123における、第1の領域に設けられた第1の構造層105と、第2の領域に設けられた第2の構造層118とが向かい合わされ、少なくとも一部が重なるように屈曲させ封止する(図5(C)参照)。このような工程を用いることによって、空間129が生じる。すなわち、空間129は開口部121、122が向かい合って形成される。このとき、開口部121、122以外の領域では、絶縁層119同士が接するように折り曲げられるため、絶縁層119は、接着性を有するとよい。また屈曲の衝撃を和らげるためには、絶縁層119は有機材料を用いて形成するとよい。また絶縁層119に有機材料を用いると、無機材料を用いたときより膜厚を厚くすることができ、さらに有機材料は硬度が低いため、製品完成後に生じる衝撃も和らげることが可能である。
また、空間129は、封止することにより、閉じられても、いずれかで開放されていてもよい。閉空間である場合は、その空間内に気体を封じ込め、基準となる圧力を生じさせて、圧力センサとして使用することができる。
また本発明は微小構造体を屈曲させて封止するため、半導体素子を形成する領域は、絶縁基板の材質を考慮して、曲率のない、又は曲率半径の大きな領域となる。すなわち、微小構造体を屈曲させるとき、半導体素子として動作することが可能な領域に形成する。
このようにして同一表面上に微小構造体126と、半導体素子127、128を形成することができる(図5(C)参照)。同一表面上に微小構造体および半導体素子を作製することで、また、微小構造体を可動するための空間を形成する工程、微小構造体及び半導体素子のパッケージをする工程を簡略化することで、製造コストのかからない、生産タクトのよい微小電気機械式装置を提供することができる。
本実施形態の微小構造体を有する微小電気機械式装置は、以下の実施の形態で示すセンサ、メモリ、分別装置、吐出装置、圧力センサに適用することができる。勿論微小構造体は、ガス成分吸引装置など吐出に限らず微小ポンプとして適用することができる。
また、微小電気機械式装置の種類、使用目的に応じて、フィルムなどで微小電気機械式装置を覆い、保護するような構成を用いてもよい。
(実施の形態2)
本実施の形態では、構造層に適用する半導体層には、結晶状態を有するもの、微結晶状態を有するもの、又は非晶質状態を有するものを用いることができる。そこで本実施の形態では、構造層に多結晶シリコンを用いる場合を説明する。なお、構造層は積層構造を有してもよく、構造層に多結晶シリコンを用いるとき、そのいずれかに多結晶シリコンがあればよい。そのため、構造層は多結晶シリコンを有する層であると記すことができる。これは非晶質シリコン層に対しても同様であって、構造層は非晶質シリコンを有する層であると記すことができる。
まず、構造層の被形成面に、非晶質シリコン層を形成する。そして非晶質シリコン層を加熱処理することによって結晶化された多結晶シリコン層を得ることができる。加熱処理には、加熱炉、レーザ照射、若しくはレーザ光の代わりにランプから発する光の照射(以下、ランプアニールと記す)、又はそれらを組み合わせて用いることができる。
レーザ照射を用いる場合、連続発振型のレーザビーム(以下、CWレーザビームと記す)やパルス発振型のレーザビーム(以下、パルスレーザビームと記す)を用いることができる。レーザビームとしては、Arレーザ、Krレーザ、エキシマレーザ、YAGレーザ、Y2O3レーザ、YVO4レーザ、YLFレーザ、YAlO3レーザ、ガラスレーザ、ルビーレーザ、アレキサンドライトレーザ、Ti:サファイヤレーザ、銅蒸気レーザまたは金蒸気レーザのうち一種または複数種から発振されるものを用いることができる。このようなレーザビームの基本波、及び当該基本波の第2高調波から第4高調波のレーザビームを照射することで、大粒径の結晶を得ることができる。例えば、Nd:YVO4レーザ(基本波1064nm)の第2高調波(532nm)や第3高調波(355nm)を用いることができる。このときレーザのエネルギー密度は0.01〜100MW/cm2程度(好ましくは0.1〜10MW/cm2)が必要である。そして、走査速度を10〜2000cm/sec程度として照射する。
なお連続発振の基本波のレーザビームと連続発振の高調波のレーザビームとを照射するようにしてもよいし、連続発振の基本波のレーザビームとパルス発振の高調波のレーザビームとを照射するようにしてもよい。複数のレーザビームを照射することにより、エネルギーを補うことができる。
またパルス発振型のレーザビームであって、シリコンがレーザ光によって溶融してから固化するまでに、次のパルスのレーザ光を照射できるような発振周波数でレーザを発振させるレーザビームを用いることもできる。このような周波数でレーザビームを発振させることで、走査方向に向かって連続的に成長した結晶粒を得ることができる。具体的なレーザビームの発振周波数は10MHz以上であって、通常用いられている数十Hz〜数百Hzの周波数帯よりも著しく高い周波数帯を使用する。
その他の加熱処理として加熱炉を用いる場合には、非晶質シリコン層を400〜550℃で2〜20時間かけて加熱する。このとき、徐々に高温となるように温度を400〜550℃の範囲で多段階に設定するとよい。最初の400℃程度の低温加熱工程により、非晶質シリコン層の水素等が出てくるため、結晶化の際の膜荒れを低減することができる。
さらに、結晶化を促進させる金属元素、例えばNiを非晶質シリコン層上に形成すると、加熱温度を低減することができ好ましい。金属元素としては、Fe、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Au等の金属を用いることもできる。
加熱処理に加えて、上記のようなレーザを用いて照射を行って多結晶シリコン層を形成してもよい。
このような金属を用いて結晶化された多結晶シリコンは、金属を用いない結晶化によって作製される多結晶シリコンに比べて靭性を高くすることができる。これは金属を用いた結晶化により、結晶粒界が連続している多結晶シリコンを作ることができるからである。結晶粒界が連続している多結晶シリコンは、金属を用いない結晶化によって得られる多結晶シリコンと異なり、結晶粒界で共有結合が途切れることが無い。そのため、結晶粒界が欠陥となって起こる応力集中が起こらず、結果として金属を用いずに形成された多結晶シリコンに比べて破壊応力が高くなる。
結晶粒界が連続していることによって電子の移動度が大きいため、微小構造体を静電力、例えば静電引力で制御する場合の材料として適している。さらに、構造層は、結晶化を助長させる金属元素を含み、導電性を有するため、構造体を静電力で制御する本発明の微小電気機械式装置に好適である。勿論、微小構造体を電磁力により制御する場合の構造層に多結晶シリコン層を適用してもよい。
また、金属にニッケルを用いる場合、ニッケルの濃度によってニッケルシリサイドが形成されうる。ニッケルシリサイドのようなシリコン合金は一般に強度が高いことが知られている。そのため、加熱処理時に用いる金属をシリコン層中の全体または選択的に残しておき、適当な熱処理を加えることで、さらに硬く、導電性の高い微小構造体を作製することができる。
上記のような結晶化に用いた金属を残したニッケルシリサイドを有する層(ニッケルシリサイド層)と、多結晶シリコン層とを積層させることで、導電性に優れ、しなやかな構造層を得ることができる。ニッケルシリサイドのような珪素合金は一般に強度が高いことが知られている。半導体層の結晶化時に用いる金属を半導体層中の全体または選択的に残しておき、適当な熱処理を加えることで、さらに硬く、導電性の高い構造体を作製することができる。このようなニッケルシリサイド層と、非晶質シリコン層とを積層することで、導電性に優れ、硬い材料にすることができる。
このようなシリサイド層は、ニッケル以外にタングステン、チタン、モリブデン、タンタル、コバルト、白金によっても形成することができる。それぞれ、タングステンシリサイド層、チタンシリサイド層、モリブデンシリサイド層、タンタルシリサイド層、コバルトシリサイド層、白金シリサイド層となる。このうち、コバルトや白金は、加熱温度を低下させるための金属として用いることができる。
結晶化を助長させる金属は微小電気機械式装置の汚染源となるため、結晶化した後に除去することも可能である。この場合、加熱処理又はレーザ照射による結晶化の後、シリコン層上にゲッタリングシンクとなる層を形成し、加熱することにより、金属元素をゲッタリングシンクへ移動させることができる。ゲッタリングシンクには、多結晶半導体層や不純物が添加された半導体層を用いることができる。例えば、半導体層上にアルゴン等の不活性元素が添加された非晶質半導体層を形成し、これをゲッタリングシンクとして適用することができる。不活性元素を添加することによって、非晶質半導体層にひずみを生じさせることができ、ひずみにより効率的に金属元素を捕獲することができる。リン等の元素を添加した半導体層を形成することによって、金属を捕獲することもできる。
構造層に導電性が必要な場合は、金属除去後、リンや砒素、ボロン等の不純物元素を添加することも可能である。導電性を持たせた構造体は、静電力で制御する本発明の微小電気機械式装置に好適である。また金属を除去することなく、構造層が有していてもよい。
構造層は、必要な厚さを得るために、積層構造とすることも可能である。たとえば、非晶質シリコン層の形成と、加熱処理による結晶化を繰り返すことによって多結晶シリコン層の積層構造を形成することができる。この加熱処理によって、先に形成された多結晶シリコンの層内の応力を緩和し、膜剥がれや基板の変形を防ぐことができる。また、さらに膜内の応力を緩和するために、シリコン層のエッチングも含めて繰り返すこともできる。このようなエッチングを含めた作製方法は、内部応力の大きい材料を構造層に用いる場合に好適である。
上記のように、金属を用いて結晶化を行う場合、金属を用いずに行う結晶化に比べて低温で結晶化することができるため、微小構造体を形成する基板として使用できる材料の幅が広がる。例えば、半導体層を加熱のみで結晶化させる場合、1000℃程度の温度で1時間程度の加熱を行う必要があり、熱に被弱なガラス基板を用いることができない。しかしながら、本実施の形態のように上記金属を用いて結晶化することによって、ゆがみ点が593℃であるガラス基板等を用いることが可能になる。
上記工程のように金属を用いた結晶化は、選択的に金属を塗布(添加)することで、部分的に結晶化を行うこともできる。
上記のような結晶化は、レーザ条件を変化させる、選択的にレーザを照射することで、部分的に結晶化することもできる。
上記のように部分的に結晶化することで、様々な組み合わせの材料を得ることができる。たとえば、駆動量の多い部分のみ結晶化して、靭性を高めることができる。
なお第2の構造層118についても、同様に多結晶シリコン層を用いることができる。
本実施の形態は、上記実施の形態と自由に組み合わせることができる。
(実施の形態3)
本発明において、構造層には様々な性質を持つシリコンやシリコンの化合物を積層させることができる。様々な性質を持つシリコン層は、その状態が非晶質、微結晶、多結晶等のいずれかを選択することによって、強度等の性質が異なるシリコンとなる。さらに多結晶であっても、結晶方向の移動による性質の違いを有するシリコン層となる。そこで本実施の形態では、構造層に用いられる層の積層構成例について説明する。
図6に示すように、様々な性質を持つシリコンおよびシリコンの化合物を積層させることができる。図6には、構造層118として、非晶質シリコン層150、多結晶シリコン層151、およびニッケルシリサイド層152を積層させ、空間153を有する形態を示す。このような機械特性の異なるものを積層することによって、必要に応じた構造層118を得ることができる。
また空間153は、上記実施の形態と同様に二つの開口部が向かい合って形成される。このとき、開口部以外の領域では、絶縁層同士が接するように折り曲げられるため、絶縁層は接着性を有するとよい。また絶縁層に有機材料を用いて形成すると、屈曲の緩衝や製品完成後に生じる衝撃も和らげることができる。
また、空間153は、封止することにより、閉じられても、いずれかで開放されていてもよい。閉空間である場合は、その空間内に気体を封じ込め、基準となる圧力を生じさせて、圧力センサとして使用することができる。
構造体を構成する層は、全ての層を積層した後エッチングして加工したり、一つの膜を形成する毎にエッチングして加工することが可能である。このように所望の性質を有する構造層118を容易に作成することが可能である。
なお積層させる層のそれぞれの厚さの比率によって、しなやかさと堅さのバランスを決めることができる。例えば非晶質シリコン層のダングリングボンド(未結合手)欠陥などから破壊がおきても、結晶性の高い多結晶シリコン層には破壊が伝播しにくいため、そこで破壊が止まると考えられ、非晶質シリコン層を厚く、多結晶シリコン層は相対的に薄く形成することができる。
また、金属を用いてレーザ結晶化した場合、シリコンの結晶成長方向が基板に対して垂直方向に進み、金属を用いないでレーザ結晶化した場合、結晶成長方向が基板に対して平行方向に進む。この両者を積層することで、さらに靭性に優れた構造層を得ることができる。結晶の成長方向が異なる膜が積層しているため、一つの層で破壊が起きても、結晶方向の違う層には亀裂が伝播しにくく、結果として破壊が起こりにくく、強度の高い構造層となる。
上記のような非晶質シリコン層、多結晶シリコン層、またはニッケルシリサイド層は、必要な厚さを得るために、成膜を繰り返して積層させることも可能である。たとえば、非晶質シリコン層の成膜と、加熱を繰り返してもよい。また、さらに膜内の応力を緩和するために、エッチングも含めて繰り返してもよく、非晶質シリコン層の成膜や加熱とパターニングとを繰り返す。その結果、絶縁基板上に形成された非晶質シリコン層のピーリングを防止することができる。成膜と結晶化の組み合わせは、上記した例の中から自由に選んで組み合わせることができる。
このように半導体層を積層させることで、しなやかさと硬さを併せ持つ構造層を得ることができる。
なお第2の構造層118についても、同様な積層構成を用いることができる。
本実施の形態は、上記実施の形態と自由に組み合わせることができる。
(実施の形態4)
本実施の形態では、同一表面上に形成された微小電気機械式装置を組み立てる方法について説明する。
微小電気機械式装置形成部分123が形成された第2のシート材125に、あらかじめアライメント用マーカー160を形成しておく(図7(A)参照)。
次に、アライメント用マーカー160を基準にして、第2のシート材125上を、物理的手段を用いて屈曲させる(図7(B)参照)。この工程により、例えば図5(C)に示されるような微小構造体を可動するための空間を備えた微小構造体と微小構造体を制御する半導体素子を組み立てることができる。
図7では、アライメント用マーカー160を基準にして、第2のシート材125の中央を境界として、二つに屈曲させる例を示したが、アライメント用マーカーの種類、形状、大きさ、個数、場所は適宜選択することができ、それに合わせてシート材の折たたみパターンも適宜選択して行うことができる。
また、上記工程とは異なる手段を用いて、組み立てることもできる。物理的手段を用いて、微小電気機械式装置形成部分123を最小単位として、第2のシート材125を切り出す(図8(A)参照)。
次に、切り出された微小電気機械式装置形成部分123を、あらかじめ形成されたアライメント用マーカー161を基準にして、屈曲させる(図8(B)参照)。この工程により、例えば図5(C)に示されるような可動するための空間を備えた微小構造体と微小構造体を制御する半導体素子を組み立てることができる。
図8においては、アライメント用マーカー161を基準にして、微小電気機械式装置形成部分123の中央を境界として、二つに屈曲させる例を示したが、アライメント用マーカーの種類、形状、大きさ、個数、場所は適宜選択することができ、それに合わせて微小電気機械式装置形成部分の折たたみパターンも適宜選択して行うことができる。
図8においては、微小電気機械式装置形成部分123の一つを最小単位とする例を示したが、微小電気機械式装置形成部分123の複数個を最小単位として切り出してもよい。
本実施の形態において、屈曲させる境界について、あらかじめ溝を形成しておくことも可能である。溝は、レーザスクライブ法、カッター等の物理的手段、又は化学反応を用いた化学的手段等を用いて、形成することができる。この場合、溝を基準に屈曲させればよく、アライメント用マーカーは設けなくてもよい。
(実施の形態5)
本実施の形態では、同一表面上に微小構造体および半導体素子を作製する方法について、実施の形態1とは異なる方法を、図面を用いて説明する。図面において、上側には上面図を示し、下側には上面図O−P、もしくはQ−Rにおける断面図を示す。
まず、実施の形態1と同様に、絶縁基板201上に剥離層202を形成し、剥離層202上に下地層203を形成する(図9(A)参照)。
下地層203上に、半導体層204、第1の構造層205を形成する(図9(B)の上面図、図9(C)の断面図参照)。半導体層204、第1の構造層205は、実施の形態1と同様に作製することができる。また半導体層204、第1の構造層205には、非晶質状態、微結晶状態又は結晶状態を有するシリコン層を適用することができる。
実施の形態1と同様に半導体層204、第1の構造層205上に、絶縁層206を形成する(図9(B)の上面図、図9(C)の断面図参照)。絶縁層206は、半導体素子のゲート絶縁層として機能する。また実施の形態1と同様に、絶縁層等は、高密度プラズマにより作製することができる。
実施の形態1と同様に絶縁層206上に、導電層を形成し、半導体素子のゲート電極207を形成する(図9(D)の上面図、図9(E)の断面図参照)。
実施の形態1と同様に半導体素子を構成する半導体層204に不純物元素を添加してN型不純物領域211およびP型不純物領域210を形成する(図10(A)の上面図、図10(B)の断面図参照)。
プラズマCVD法等によって窒化珪素等の窒素化合物や酸化珪素等の酸化物からなる絶縁層を形成し、当該絶縁層を垂直方向の異方性エッチングすることで、ゲート電極207の側面に接する絶縁層、つまりサイドウォール208を形成する(図10(A)の上面図、図10(B)の断面図参照)。サイドウォール208によって、ゲート長を短くするにつれて生じる短チャネル効果を防止することができる。
N型不純物領域211を有する半導体層204に不純物元素を添加し、サイドウォール208下方に設けられたN型不純物領域211よりも高い不純物濃度を有する高濃度N型不純物領域209を形成する。上記の工程により、N型半導体素子212と、P型半導体素子213とが形成される(図10(A)の上面図、図10(B)の断面図参照)。このとき、微小構造体を構成する第1の構造層205にも不純物領域が形成される。
続いて、全体を覆うように絶縁層214を形成する(図10(C)の上面図、図10(D)の断面図参照)。絶縁層214は、絶縁性を有する無機材料や、絶縁性を有する有機材料等により形成することができる。
絶縁層214および絶縁層206を順次エッチングし、コンタクトホール215を形成する(図10(C)の上面図、図10(D)の断面図参照)。エッチングには、ドライエッチング法またはウエットエッチング法を用いることができる。本実施の形態では、ドライエッチング法によりコンタクトホール215を形成する。
絶縁層214上、およびコンタクトホール215に導電層を形成し、ソース電極、ドレイン電極217とする。また、第2の構造層218を形成する(図11(A)の上面図、図11(B)の断面図参照)。このときに、電気回路を構成する配線を形成することができる。
半導体素子部を覆うように、SOG法、液滴吐出法等により、保護膜として機能する絶縁層219を形成する(図11(C)の上面図、図11(D)の断面図参照)。絶縁層219は、無機材料又は有機材料から形成することができる。例えばDLC(ダイヤモンドライクカーボン)などの炭素を含む膜、窒化珪素を含む膜、窒化酸化珪素を含む膜、エポキシ樹脂等により形成する。絶縁層219は膜厚が厚いため、エポキシ樹脂等の有機材料を用いると、柔軟性を失うことがなく好ましい。また絶縁層219は単層構造、又は積層構造として形成することができる。積層構造の場合、無機材料と有機材料を順に積層するとよい。
次に、剥離層202が露出するように、フォトリソグラフィ法またはレーザ光の照射により絶縁層を加工して、剥離のための開口部220を形成する。(図12(A)参照)。
開口部220にエッチング剤を導入して、剥離層202を除去する(図12(B)参照)。エッチング剤は、フッ化ハロゲンまたはハロゲン化合物を含む気体又は液体を使用する。エッチング剤を導入すると、微小電気機械式装置形成部分221は、絶縁基板201から剥離された状態となる(図12(C)参照)。
微小電気機械式装置形成部分221の一方の面を、第1のシート材222に接着させて絶縁基板201から完全に剥離する(図13(A)参照)。剥離層202を全て除去せず一部を残した場合には、物理的手段を用いて絶縁基板201から微小電気機械式装置形成部分221を剥離する。
上記工程において、微小電気機械式装置形成部分221と剥離層202との密着性が弱い場合には、剥離層202をエッチングにより除去する工程を省略し、物理的手段を用いて絶縁基板201から微小電気機械式装置形成部分221を剥離してもよい。
続いて、微小電気機械式装置形成部分221の他方の面に、開口部223、224を備えた第2のシート材225を設け、その後加熱処理と加圧処理の一方または両方を行って、第2のシート材225を貼り合わせる。また、第2のシート材225を設けると同時または設けた後に第1のシート材222を剥離する(図13(B)参照)。このとき、第2のシート材225の開口部223、224は、それぞれ第1の構造層205、第2の構造層218に対応する位置に設けられている。また、開口部223、224の側壁部にCVD法等によって窒化珪素等の窒素化合物や酸化珪素等の酸化物からなる絶縁層あるいはスパッタリング法等によって金属層を形成してもよい。側壁部に形成された金属層を配線として利用することもできる。
そして第2のシート材225上に形成された微小電気機械式装置形成部分221を、第1の構造層205と第2の構造層218とが向かい合うように、開口部223と開口部224とが向かい合うように屈曲させる(図13(C)参照)。すなわち、空間229は、開口部223、224が向かい合って形成される。このとき、開口部223、224以外の領域では、第2のシート材225同時が接するように折り曲げられるため、第2のシート材225は、接着性を有するとよい。また屈曲の衝撃を和らげるためには、絶縁層219は有機材料を用いて形成するとよい。また第2のシート材225に有機材料を用いると、無機材料を用いたときより膜厚を厚くすることができ、さらに有機材料は硬度が低いため、製品完成後に生じる衝撃も和らげることが可能である。
また、空間229は、封止することにより、閉じられても、いずれかで開放されていてもよい。閉空間である場合は、その空間内に気体を封じ込め、基準となる圧力を生じさせて、圧力センサとして使用することができる。
このような工程を用いることによって、第2のシート材225に両端を囲まれ、下地層203で上下を囲まれた、つまり第2のシート材225及び下地層203によって周囲を囲まれた空間229が形成される。そして、同一表面上に微小構造体226と、半導体素子227、228を形成することができる(図13(C)参照)。同一表面上に微小構造体および半導体素子を作製することで、また、微小構造体を可動するための空間を形成する工程、微小構造体及び半導体素子のパッケージをする工程を簡略化することで、製造コストのかからない、生産タクトのよい微小電気機械式装置を提供することができる。
また、微小電気機械式装置の種類、使用目的に応じて、フィルムなどで微小電気機械式装置を覆い、保護するような構成を用いてもよい。
なお、本実施の形態は上記実施の形態と自由に組み合わせて行うことができる。
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の微小電気機械式装置の構成例について図面を用いて説明する。
図14に、本発明の微小電気機械式装置の概念図を示す。本発明の微小電気機械式装置11は、半導体素子を有する電気回路部12、および微小構造体によって構成されている構造体部13を有する。電気回路部12は、微小構造体を制御する制御回路14や、外部の制御装置10と通信を行うインターフェース15等を有する。また構造体部13は、微小構造体により構成され、センサ16やアクチュエータ17、スイッチ等の機能を有する。
アクチュエータとは、信号(主に電気信号)を物理量に変換する構成要素を意味する。
また、電気回路部12は、構造体部13が得た情報を処理するための中央演算処理装置等を有することも可能である。
外部の制御装置10は、微小電気機械式装置11を制御する信号を送信する、微小電気機械式装置11が得た情報を受信する、または微小電気機械式装置11に駆動電力を供給する等の動作を行う。
本発明は上記構成例のみに限定されることはない。すなわち、本発明は微小電気機械式装置内部に、半導体素子を有し、微小構造体を制御する電気回路、および電気回路によって制御される微小構造体を有することを特徴とする。
従来、ミリメートル単位以下といった微小なものを扱う場合、まず、微小な対象物の構造を拡大し、人間やコンピュータがその情報を得て情報処理および動作の決定を行い、そして、その動作を縮小して微小な対象物に伝えるというプロセスを必要としていた。
しかし、本発明の微小電気機械式装置は、人間やコンピュータが上位概念的な命令を伝えるだけで、微小なものを扱うことが可能になる。すなわち、人間やコンピュータが目的を決定して命令を伝えると、当該微小電気機械式装置はセンサ等を用いて対象物の情報を得て情報処理を行い、行動を取ることができる。
上記例では、対象物が微小なものであると仮定した。これは例えば、対象物自体はメートル単位の大きさを有するが、その対象物から発せられる微小な信号(例えば、光や圧力の微小な変化)等を含むとしている。
本発明の微小電気機械式装置は、マイクロマシンの分野に属するものであり、マイクロメートルからミリメートル単位の大きさを有する。また、ある機械装置の部品として組み込まれるために作製される場合は、組み立て時に扱いやすいよう、メートル単位の大きさを有する場合もある。
(実施の形態7)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した微小電気機械式装置の例を説明する。本発明の微小電気機械式装置は、微小構造体でセンシング素子を作製したセンサ装置を構成することができる。
図15(A)に、本発明の微小電気機械式装置の一形態であるセンサ装置301の構成を示す。本実施の形態のセンサ装置301は、半導体素子を有する電気回路部302、および微小構造体によって構成されている構造体部303を有する。
構造体部303は、外界の圧力や物質の濃度、気体や液体の流量等を検知する、微小構造体によって構成される検知素子304を有する。
電気回路部302は、A/D変換回路305、制御回路306、インターフェース307、およびメモリ308等を有する。
A/D変換回路305は、センシング素子から伝えられた情報をデジタル信号に変換する。制御回路306は、当該デジタル信号をメモリに記憶する等、A/D変換回路を制御する。インターフェース307は、外部の制御装置310から駆動電力を受ける、制御信号を受信する、または外部の制御装置310へセンシング情報を送信する、等を行う。メモリ308は、センシング情報や、センサ装置固有の情報等を記憶する。
また、電気回路部302は、構造体部303から受信した信号を増幅する増幅回路や、構造体部303が得た情報を処理するための中央演算処理回路等を有することも可能である。
外部の制御装置310は、センサ装置301を制御する信号を送信する、センサ装置301が得た情報を受信する、またはセンサ装置301に駆動電力を供給する等の動作を行う。
上記構成を有するセンサ装置301によって、外界の圧力や物質の濃度、気体や液体の流量、温度等を検知することができる。また、当該センサ装置が中央処理演算回路を有することで、検知した情報をセンサ装置内で処理し、他の装置を制御する制御信号を生成し出力するようなセンサ装置を実現することも可能である。
図15(B)に、検知素子304の構造例を、断面図によって示す。図15に示す検知素子304は、上記実施の形態における第1の構造層が第1の導電層320となり、上記実施の形態における第2の構造層が上記実施の形態における第2の導電層321となるような容量を有し、空間323を有する。さらに、第1の導電層320は、空間323があるため、静電力や圧力等を受けて可動することができる。すなわち、検知素子304は、第1の導電層と第2の導電層との間の距離が変化する、つまり空間が変形することによる可変容量を備える。
また、空間323は、封止することにより、閉じられても、いずれかで開放されていてもよい。閉空間である場合は、その空間内に気体を封じ込め、基準となる圧力を生じさせて、圧力センサとして使用することができる。
この構造を利用して、検知素子304は、圧力によって第1の導電層320が可動する圧力検知素子として利用することができる。
また、図15(B)に示す検知素子304において、第1の導電層320を、熱膨張率の異なる2種類の物質を積層させて作製することができる。この場合、第1の導電層320は温度変化によって可動するので、検知素子304は、温度検知素子として利用することが可能である。
本発明は上記の構成例のみに限定されることはない。すなわち、本実施の形態ではセンサ装置内部に、半導体素子を有し微小構造体を制御する電気回路、および電気回路によって制御される微小構造体で構成され、何らかの物理量を検知する検知素子を有することを特徴とする。さらに、上記センサ装置は、上記実施の形態で説明した作製方法を用いて作製されていることを特徴とする。
なお、本実施の形態は上記実施の形態と自由に組み合わせて行うことができる。
(実施の形態8)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した微小電気機械式装置の具体的な例を説明する。本発明の微小電気機械式装置は、記憶素子に微小構造体を有する記憶装置を構成することができる。本実施の形態では、デコーダ等の周辺回路は半導体素子等を用いて構成し、メモリセル内部を、微小構造体を用いて構成する記憶装置の例を示す。
図16に、本発明の微小電気機械式装置の一形態である記憶装置401の構成を示す。
記憶装置401は、メモリセルアレイ402、デコーダ403、404、セレクタ405、読み出し・書き込み回路406を有する。上記デコーダ403、404、セレクタ405の構成は、公知のものを用いることができる。
メモリセル409は、例えば、記憶素子を制御するスイッチ素子407および記憶素子408を有することができる。本実施形態で説明する記憶装置401は、当該スイッチ素子407、および/または記憶素子408が微小構造体で構成されていることを特徴とする。
図17にメモリセル409の構成例を示す。図17(A)はメモリセル409の回路図、図17(B)に構造の断面図を示している。
図17(A)に示すように、メモリセル409は、トランジスタ410で構成されたスイッチ素子407、および微小構造体で構成された記憶素子408で構成される。
図17(B)が示すように、記憶素子408は、上記実施の形態で説明した作製方法を用いて作製された微小構造体であて、空間412を有する。記憶素子408は、構造層が導電層となり、空間412を介したコンデンサである。そして、導電層の一方は、トランジスタ410の二つの高濃度不純物領域の一方に接続されている。
また、空間412は、封止することにより、閉じられても、いずれかで開放されていてもよい。閉空間である場合は、その空間内に気体を封じ込め、基準となる圧力を生じさせて、圧力センサとして使用することができる。
また、導電層の一方は、記憶装置401が有する全てのメモリセル409の記憶素子408に共通して接続されている。当該導電層は、記憶装置の読み出し時、および書き込み時に、全ての記憶素子に共通の電位を与えるものであり、本明細書においては共通電極411と記載する場合がある。
上記構成を有する記憶装置は、揮発性のメモリ、代表的にはDRAM(Dinamic Random Access Memory)として使用することができる。また、作製工程においてコンデンサのギャップを変化させることでマスクロムとして使用することもできる。記憶素子を破壊させるような手段によりライトワンス型のメモリとして使用することもできる。記憶装置における周辺の回路構成および駆動方法等は、公知の技術を用いることができる。
なお、本実施の形態は上記実施の形態と自由に組み合わせて行うことができる。
(実施の形態9)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した微小電気機械式装置の例を説明する。
本発明の微小電気機械式装置は、例えば、特定の細胞を分別する分別装置として構成することができる。以下に当該分別装置の説明を行う。
図18に、本実施の形態の分別装置の基本的な構成例を示す。ここでは、分別装置の例として、2種類以上の細胞から特定の細胞を分別する分別装置を説明する。
分別装置501は、電気回路部502および構造体部503に大別され、構造体部503は検知素子504、および複数の開閉手段505を有する。電気回路部502は信号処理手段506、開閉制御手段507、情報記憶手段508、および通信手段509を有する。
ここで、検知素子504および開閉手段505は、分別する細胞程度の大きさを有する微小構造体によって構成する。検知素子504は、一つの開閉手段505に隣接して一つ設けられ、どのような細胞が開閉手段505の近くに存在するかを検知する。開閉手段505は通過口を有し、開閉制御手段507からの制御信号を受け、特定の細胞が近くに存在したときのみ通過口を開いて特定の細胞を通過させる。
信号処理手段506は、検知素子504から伝えられる信号を、増幅、A/D変換等で加工し、開閉制御手段507に伝達する。開閉制御手段507は、検知素子504から伝えられた信号をもとに開閉手段505を制御する。情報記憶手段508は、当該分別装置501を動作させるプログラムファイルや分別装置501固有の情報等を記憶している。通信手段509は、外部の制御装置510と通信を行う。
外部の制御装置510は、通信手段511、情報処理手段512、表示手段513、および入力手段514等を有する。
通信手段511は、分別装置501を制御する信号を送信する、分別装置501が得た情報を受信する、または分別装置501に駆動電力を供給する等を行う。情報処理手段512は、分別装置501から受信した情報を処理する、入力手段から入力された情報を分別装置501に伝えるために処理する、等を行う。表示手段513は、分別装置501から得られた情報や分別装置501の動作状況等を表示する。入力手段514は、情報を入力する手段を提供する。
図18(B)に分別装置501を利用する一形態を示す。上記構成を有する分別装置501は、混合細胞層520および特定細胞層521との間に設置される。分別装置501は外部の制御装置510から、どの細胞を分別するか、等の情報を受信すると、検知素子504によって開閉手段505のすぐ近くにどのような細胞が存在するかを検出する。次に、信号処理手段506によって検出信号を加工して開閉制御手段507に伝える。開閉制御手段507は、開閉手段505のすぐ近くに分別するべき細胞が存在する時のみ通過口を開くように開閉手段505を制御する。そして、開閉手段505は開閉制御手段507からの制御をうけて、分別する細胞のみを通過口から通過させる。
上記動作により、分別装置501は2種類以上の細胞から特定の細胞を分別することができる。上記の構成を用いることによって、紫外線を照射すると蛍光する細胞のみを分別するように制御することができる。さらには、微小な粒界、例えば、放射性物質を含む粒子のみを分別する、磁性を有する鉱石の粒子のみを分別する、等の機能を有する分別装置を実現することができる。また、上記分別装置501は、細胞の分別のみに制限されない。例えば、特定の気体を分別する装置として構成することも可能である。
本発明は、上記の分別装置501、混合細胞層520、特定細胞層521、および外部の制御装置510を有し、複数の細胞から特定の細胞を分別する分別システムを提供することができる。
なお、本実施の形態は上記実施の形態と自由に組み合わせて行うことができる。
(実施の形態10)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した微小電気機械式装置と無線通信技術とを用いた例を説明する。
近年、情報を電子回路に記憶する無線チップ、無線チップが記憶する情報を読み書きするリーダライタ、および、読み取った情報の処理やリーダライタの制御等を行う上位システムで構成される個体識別管理通信技術が利用されている。本実施の形態は当該無線チップを用いるものであるが、無線チップは、無線通信IDタグ、ICタグ、無線タグ等、様々な名称で呼ばれることが多いが、本明細書中では半導体装置と記載する。半導体装置は基本的に無電池方式で、リーダライタから放射される電磁波により駆動電力を得て、リーダライタと無線通信を行う。
図19(A)に、本実施の形態の構成を示す。本実施の形態の半導体装置601は、アンテナ602、微小電気機械式装置603、および電気回路604を有する。電気回路604は、無線通信回路605、および処理回路606を有し、アンテナ602は無線通信回路に接続され、微小電気機械式装置603は処理回路606に接続される。
アンテナ602および無線通信回路605は、外部に設置されるリーダライタ607から放射される電磁波を受信し、半導体装置601を駆動するための駆動電力の供給を受ける。そして、電磁波を介してリーダライタ607と情報の送受信を行う。処理回路606は、リーダライタ607から受信した情報をもとに微小電気機械式装置603を制御する、または微小電気機械式装置603が外界の対象610から受けた情報を処理する、等の動作を行う。処理回路606は、微小電気機械式装置603から得て処理を行った情報、およびリーダライタ607から伝えられた情報を合わせて処理し微小電気機械式装置603を制御する、フィードバック機構を有することもできる。
リーダライタ607は、電磁波を介して半導体装置601に電力供給を行い、また、電磁波を介して半導体装置601と情報の送受信を行う。リーダライタ607の動作は、上位システム、例えばここではコンピュータ608によって制御される。リーダライタ607およびコンピュータ608は、USB(Universal Serial Bus)等の通信回線を介して接続されていても良いし、赤外線等を用いて無線通信を行うことも可能である。
また、図19(B)に示すように、本発明の半導体装置601はアンテナ602および電気回路604を有し、電気回路604は半導体素子631および微小電気機械式装置632によって構成することもできる。電気回路604は、図19(A)と同様、無線通信回路および処理回路等を有し、アンテナ602は電気回路604において無線通信機能を有する回路に接続される。例えば、応答速度の速い微小電気機械式装置632を用いて回路を構成することによって、より高い周波数を用いた無線通信を行うことが可能となる。
本実施の形態の半導体装置601は、図に示すように、アンテナ602および無線通信回路605を有することによって、外部から駆動電力および制御信号を入力するための配線を有さず、物理的に他と接続する必要がない。
図20に、半導体装置601が有する電気回路604の詳細な構成を説明する。まず、電気回路604は、外部(ここではリーダライタ607)から放射される電磁波を受信して半導体装置601を駆動させる電力を生成し、さらに、外部と無線で通信を行う機能を有する。そのため電気回路604は、電源回路611、クロック発生回路612、復調回路613、変調回路614、復合化回路615、符号化回路616、および情報判定回路617等、無線通信に必要な様々な回路を有する。また、無線通信に使用する電磁波の周波数や通信方法によって、異なる回路構成を有する場合がある。
また、電気回路604は微小電気機械式装置603を制御する、リーダライタ607からの情報を処理する等の機能を有する。そのため電気回路604は、メモリ、メモリ制御回路、演算回路等を有する。図に示した例では、メモリ621、メモリ制御回路622、演算回路623、構造体制御回路624、A/D変換回路625、信号増幅回路626を有する。
電源回路611はダイオードおよび容量を有し、アンテナ602に発生した交流電圧を整流して定電圧を保持し、当該定電圧を各回路に供給することができる。クロック発生回路612はフィルタや分周回路を有し、アンテナ602に発生した交流電圧をもとに必要な周波数のクロックを発生させ、当該クロックを各回路に供給することができる。ここで、クロック発生回路612が生成するクロックの周波数は、基本的にリーダライタ607と半導体装置601とが通信に用いる電磁波の周波数以下である。また、クロック発生回路612はリングオシレータを有し、電源回路611から電圧を入力して任意の周波数のクロックを生成することも可能である。
復調回路613はフィルタや増幅回路を有し、アンテナ602に発生した交流電圧に含まれる信号を復調することができる。復調回路613は、無線通信に用いる変調方式によって異なる構成の回路を有する。復合化回路615は、復調回路613によって復調された信号を復合化する。この復合化された信号が、リーダライタ607より送信された信号である。情報判定回路617は比較回路等を有し、復合化された信号がリーダライタ607より送信された正しい信号であるか否かを判定することができる。正しい情報であると判断された場合、情報判定回路617は各回路(例えば、メモリ制御回路622や演算回路623、構造体制御回路624等)に正しいことを示す信号を送信し、その信号を受けた回路は所定の動作を行うことができる。
符号化回路616は、半導体装置601からリーダライタ607へ送信するデータを符号化する。変調回路614は、符号化されたデータを変調し、アンテナ602を介してリーダライタ607へ送信する。
リーダライタへ送信するデータは、メモリが記憶している半導体装置固有のデータや、半導体装置が有する機能により得られたデータである。半導体装置固有のデータとは、例えば、半導体装置が不揮発性のメモリを有し、当該不揮発性のメモリに記憶される個体識別情報等のデータである。半導体装置が有する機能により得られたデータとは、例えば、微小電気機械式装置によって得られたデータや、それらをもとに何らかの演算を行ったデータ等である。
メモリ621は、揮発性メモリ、および不揮発性メモリを有することができ、半導体装置601固有のデータや、微小電気機械式603から得られた情報等を記憶する。図にはメモリ621が一つのみ記載されているが、記憶する情報の種類や、半導体装置601の機能に応じて複数種類のメモリを有することも可能である。メモリ制御回路622は、メモリ621に記憶されている情報を読み出す、およびメモリ621に情報を書き込む場合にメモリ621を制御する。具体的には、書き込み信号、読み出し信号、メモリ選択信号等を生成する、アドレスを指定する、等の動作を行うことができる。
構造体制御回路624は、微小電気機械式装置603を制御するための信号を生成することができる。例えば、リーダライタ607からの命令によって微小電気機械式装置603を制御する場合には、復合化回路615によって復合化された信号をもとに微小電気機械式装置603を制御する信号を生成する。また、メモリ621内に微小電気機械式装置603の動作を制御するプログラム等のデータが記憶されている場合は、メモリ621から読み出したデータをもとに微小電気機械式装置603を制御する信号を生成する。そのほかにも、メモリ621内のデータ、リーダライタ607からのデータ、および微小電気機械式装置603から得られたデータをもとに微小電気機械式装置603を制御するための信号を生成するフィードバック機能を有することも可能である。
演算回路623は、例えば、微小電気機械式装置603から得られたデータの処理を行うことができる。また、上記の構造体制御回路624がフィードバック機能を有する場合の、情報処理等を行うことも可能である。A/D変換回路625は、アナログデータとデジタルデータとの変換を行う回路であり、微小電気機械式装置603へ制御信号を伝達する、または微小電気機械式装置603からのデータを変換して各回路に伝達することができる。信号増幅回路626は、微小電気機械式装置603から得られる微小な信号を増幅してA/D変換回路625へ伝達することができる。
電気回路604は上記に説明した回路等を有することができる。図19では、電気回路が無線通信回路605および処理回路606を有するとしたが、図20を用いて説明した詳細な回路は、どこまでが無線通信回路605でありどこまでが処理回路606と明確に区別することができず、半導体装置作製者の判断にゆだねられる。これは、例えばメモリ621は、無線通信回路605および処理回路606のどちらが有することができるからである。さらに具体的な例を挙げるならば、電気回路604は、半導体装置固有の情報を記憶するための書き換え不可能な不揮発性メモリと、微小電気機械式装置を制御するデータおよび微小電気機械式装置から得られたデータを記憶するための書き換え可能な不揮発性メモリとを有し、書き換え不可能な不揮発性メモリは無線通信回路605とし、書き換え可能な不揮発性メモリを処理回路606と分けることも可能である。
したがって、電気回路604は無線通信を行うための回路である無線通信回路605と微小電気機械式装置603を制御し、リーダライタ607からの命令を処理する処理回路606とを有する。それらの機能を実現するための具体的な回路としては、図20を用いて説明した、電源回路611やメモリ621等を有する。これらの回路が無線通信回路605を構成するか、処理回路606を構成するかは、半導体装置601が有する機能等により変わることがある。
本実施の形態では微小電気機械式装置603として、実施の形態1を用いる例を説明するが、本実施の形態は上記実施の形態と自由に組み合わせて行うことができる。
実施の形態1における導電層117を形成する工程において、アンテナ650を形成する(図21(A)参照)。
また、図21(B)に示すように、第2のシート材125の外側にアンテナ651を形成することもできる。この場合、あらかじめアンテナ651と電気的に接続するような配線652を形成しておく。これにより、無線通信を利用した半導体装置を作製することができる。また、微小電気機械式装置形成部を作製するときに、同時に圧電材料や熱電材料などを用いて発電素子を作製し、半導体装置の駆動電圧を得る構造とすることもできる。
このとき、上記発電素子及びアンテナ651の両方を備えた半導体装置を作製し、安定して電力を供給する構成としてもよい。さらには、微小電気機械式装置が有する微小構造体を構成する薄膜材料やその構造を変化させることで、蓄電機能を有する構造体(蓄電体又はバッテリー)を作製することができる。そして、上記発電素子やアンテナによって得た電力を蓄電体に蓄え、そこから半導体装置に電力を供給することができる。このように本発明によって作製される半導体装置に発光素子や蓄電体を蓄えることによって、回路等に安定した電力を供給することができる。また、一定の電力を供給することにより、半導体装置の無線通信距離や使用時間を長くすることができる。
(実施の形態11)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した半導体装置の具体的な構成および使用の例を、図面を用いて説明する。
ここでは、微小電気機械式装置の動作信号を無線で送信する、または疾病の患部に薬剤を吐出する、危険な薬品の調合を行う等の機能を有する半導体装置の例について説明する。
図22に、本実施の形態における微小電気機械式装置700の構成例を示す。微小電気機械式装置700は、薬剤、薬品等を貯めるタンク701と、薬剤、薬品等を吐出するための吐出口702を備える。また、リーダライタとの無線通信を行うためのアンテナ650が形成されている。
タンク701は、いずれかで開放された空間ともいえる。
微小電気機械式装置700は外部に設置されたリーダライタから放射される電磁波により駆動電力を得て、リーダライタと無線通信を行う。そして、リーダライタより動作信号を受信した微小電気機械式装置700は、微小構造体の第1の構造層および第2の構造層との間に異なる極性の電荷を付与される、つまり電圧を印加され、静電力によって第1の構造層が第2の構造層側へ引きつけられてたわむことにより、タンク701の薬剤、薬品等703を吐出口702より吐出するように動作をする(図23参照)。
図24(A)に示す半導体装置704は、保護層によってコーティングされたカプセル705内に本実施の形態の微小電気機械式装置700が設けられている。また、微小電気機械式装置700の吐出口702からの流路706が設けられている。流路706を設けることなく、微小電気機械式装置700の吐出口702から直接カプセル705外に吐出してもよい。カプセル705と微小電気機械式装置700との間には、充填剤707が満たされていてもよい。
カプセルの表面に設けられた保護層は、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、窒化珪素、酸化珪素、酸窒化珪素、又は窒化炭素を含んでいることが好ましい。カプセルや充填材は公知のものを適宜用いる。カプセルに保護層を設けることで、体内でカプセルや半導体装置が溶解、変性することを防止することが可能である。
さらにカプセル最外面を楕円球状のように丸みを帯びた形状にしておくことによって人体を傷つけることもなく、安全に利用することができる。
本実施の形態の半導体装置704は、人体の中に投入し、疾病の患部に薬剤を注入することができる。また、半導体装置704に物理量や化学量を測定して生体の機能データを検出するセンサや患部細胞をサンプリングする採取体等の付加機能を付けることにより、得られた情報を電気回路によって信号変換、情報処理を行い、無線通信によってリーダライタへ送信することが可能である。半導体装置が有する電気回路の構成によっては、微小電気機械式装置によって得られた情報をもとに、疾病患部を探索して移動する、患部を観察して薬剤の注入をするか否かの判断を行う、等の高度な機能を持たせることも可能である。
図24(B)に示すように、被験者708が半導体装置704を嚥下し、薬剤を投入すべき所定の位置まで体内腔709を移動させる。リーダライタ710により半導体装置704の制御、無線通信を行い、薬剤の吐出を行う。
本実施の形態の半導体装置704は、医療目的に限定されず、遠隔操作可能な吐出装置として幅広く利用することができる。例えば、薬品の調合時に、有害なガスが発生する、爆発の可能性があるなど、作業者に危険が伴う作業において、本実施の形態の半導体装置704の微小電気機械式装置700のタンク701に薬品を充填し、遠隔操作をすることで、薬品の調合を行うことができる。これにより作業者への危険性はかなり低減される。
(実施の形態12)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した半導体装置の具体的な構成および使用の別の例を、図面を用いて説明する。
ここでは、微小電気機械式装置を圧力センサとして用いる半導体装置の例について説明する。
図25(A)に示すように、本実施の形態の微小電気機械式装置801は、第1の導電層802と第2の導電層803とから構成される検知素子804を備えている。また空間816を有する。空間816を有するため、第1の導電層802は静電力や圧力等を受けて可動することができる。すなわち、検知素子804は、第1の導電層と第2の導電層との間の距離が変化する、つまり空間が変形することによる可変容量を備える。
また、空間816は、封止することにより、閉じられても、いずれかで開放されていてもよい。閉空間である場合は、その空間内に気体を封じ込め、基準となる圧力を生じさせて、圧力センサとして使用することができる。
この構造を利用して、検知素子804は、圧力によって第1の導電層802が可動する圧力センサとして利用することができる。
また、微小電気機械式装置801は、リーダライタとの無線通信を行うためのアンテナ805が形成されている。リーダライタから放射される電磁波により駆動電力を得て、電磁波を介してリーダライタと情報の送受信を行う。
図25(B)に、微小電気機械式装置801を圧力センサとして用いる場合の具体例を示す。自動車のタイヤ806の空気圧が低下すると、タイヤ806の変形量が大きくなり、抵抗が増加し、結果として燃費が悪化したり、事故に繋がったりする。本実施の形態の半導体装置では、比較的簡便にかつ日常的に、タイヤ806の空気圧をモニターするシステムを提供することができる。
図25(B)に示すように、微小電気機械式装置801を保護層によってコーティングした半導体装置807をタイヤ806のホイール808部分に設置する。半導体装置807は複数設置すると好ましい。このとき、半導体装置807は互いの間隔が等しくなるように配置する。
そして、半導体装置807にリーダライタ809を近づけ、無線通信を行うことで、タイヤ806の空気圧の情報を得ることができる。リーダライタ809は、車両に搭載してもよい。無線通信技術等は、上記実施の形態10と同様である。
本実施の形態であれば、ガソリンスタンド等の自動車整備工場へ行くことなく、比較的簡便にかつ日常的にタイヤの空気圧をモニターすることができる。車両にリーダライタを搭載した場合、タイヤの空気圧を常時モニターすることができ、パンクを未然に防ぐことができる。